説明

噴霧乾燥装置及びこれを用いた噴霧乾燥方法

【課題】噴霧乾燥装置の噴霧乾燥中に入口温度が経時的に大きく変動しやすく、得られる造粒粉の品質、例えば密度および水分量が大きく変動するという問題があった。
【解決手段】乾燥室1の上方からスラリー2および供給ガスAを供給し、噴霧乾燥して下方から造粒粉を排出する噴霧乾燥装置100であって、前記供給ガスAの排出部の温度を検出するための出口温度検出手段11と、前記供給ガスAの供給部の温度を検出するための入口温度検出手段21と、前記出口温度を制御するための出口温度制御手段10と、前記入口温度を制御するための入口温度制御手段20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、食料品、セラミックスなどのスラリーを噴霧乾燥するための噴霧乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴霧乾燥装置は、薬剤、食料品、セラミックスなどのスラリーを噴霧乾燥し、造粒粉を作製するための装置として知られている。造粒粉の品質を一定に保つため、噴霧乾燥して得られる造粒粉の密度および水分量は、噴霧乾燥の開始時から終了時まで変動が少ないことが求められている。
【0003】
特許文献1には、粉体を混合したスラリー状の液体を噴霧乾燥するための噴霧乾燥装置において、噴霧乾燥装置乾燥室からの空気排出配管内の温度を出口温度として検出し、出口温度を一定に保つようにバーナーの開度を調整する手段を有する噴霧乾燥装置が示されている。
【0004】
特許文献1の噴霧乾燥装置の概略図を図3に示す。セラミックスラリー102は貯蔵されているタンク105よりポンプ104にてスラリー供給管106内を移送され、噴霧乾燥装置200の乾燥室101に供給される。供給されたスラリーは噴霧乾燥装置200の上方に備えたスラリー噴霧装置107にて噴霧乾燥装置200の乾燥室101内に霧状に噴霧される。
【0005】
燃料供給口140から供給された燃料130と燃焼ブロアー160から供給される燃焼用空気150とは、混合されて燃料ガスとなった後、燃料ガスは調整弁170により流量調整されてバーナー180に供給、燃焼される。送風ガスは、送風機230により送られバーナー180に供給され、バーナー180の熱で加熱されて供給ガスとなった後、供給ガスは供給配管を通って乾燥室101内へ供給される。
【0006】
供給ガス供給配管には供給ガス温度を測定するための入口温度計210が取り付けられている。供給ガスにより噴霧されたセラミックスラリー102は乾燥し、得られた粉体が噴霧乾燥装置200の下部排出口より排出される。水分を含んだ空気は排風機330で排出口340から排出される。また噴霧乾燥により発生する粒子のうち、特に微細なものは、サイクロン320で回収される。
【0007】
乾燥室101には、乾燥室101と乾燥室外部との差圧を計測するための圧力計410が取り付けられている。排出管310には温度計測のための出口温度計110が取り付けられている。
【0008】
図4は、噴霧乾燥装置200を用いた噴霧乾燥方法を示したものである。噴霧乾燥装置200は、出口温度設定計120により設定された出口温度設定値と出口温度計110での出口温度の計測値とに差が出た場合、燃料ガスの供給量とバーナー180の温度や熱量を変動させることで出口温度のみを一定にする構造となっていた。
【特許文献1】特開2001−162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の噴霧乾燥装置200は、出口温度を一定に保つことができるものの、入口温度は一定に調整されておらず、その結果、入口温度は経時的に大きく変動することとなり、得られる造粒粉の品質、例えば密度および水分量が大きく変動するという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みなされたもので、その目的は、噴霧乾燥中に噴霧乾燥装置の入口温度と出口温度の変動を共に小さく制御することによって、品質の経時変化が少ない造粒粉を製造することができる噴霧乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、乾燥室の上方からスラリーおよび供給ガスを供給し、噴霧乾燥して下方から造粒粉を排出する噴霧乾燥装置であって、前記供給ガスの排出部の温度を検出するための出口温度検出手段と、前記供給ガスの供給部の温度を検出するための入口温度検出手段と、前記出口温度を制御するための出口温度制御手段と、前記入口温度を制御するための入口温度制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
前記出口温度制御手段および前記入口温度制御手段は、前記供給ガスの供給量を調整することを特徴とする。
【0013】
前記供給ガスは、送風ガスを燃料ガスの燃焼時に発生する熱により加熱して得られるものであることを特徴とする。
【0014】
前記出口温度制御手段は、前記燃料ガスの供給量を調整する手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
前記入口温度制御手段は、前記送風ガスの供給量を調整する手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
前記出口温度制御手段および入口温度制御手段は、両者が連動して前記燃料ガスの供給量および前記送風ガスの供給量を制御することを特徴とする。
【0017】
前記乾燥室内の圧力と大気圧との差を所定値に調整するための圧力制御手段を有することを特徴とする。
【0018】
前記スラリーは、セラミック粉末と液体からなることを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記噴霧乾燥装置を用いた噴霧乾燥方法であって、前記出口温度検出手段により検出した出口温度に基づいて、前記出口温度制御手段により出口温度を所定温度に保持するとともに、前記入口温度制御手段により入口温度を所定温度に制御することを特徴とする。
【0020】
前記スラリーは乾燥室内に一定量で供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、供給ガスの排出部の温度を検出するための出口温度検出手段と、前記供給ガスの供給部の温度を検出するための入口温度検出手段と、前記出口温度を制御するための出口温度制御手段と、前記入口温度を制御するための入口温度制御手段とを有することから、入口温度と出口温度の変動を共に小さくすることができ、その結果、造粒粉の密度および液体含有量の経時変化を少なくすることができる。
【0022】
本発明は、前記出口温度制御手段および前記入口温度制御手段が供給ガスの供給量を調整することで、乾燥室の上方から下方へ供給ガスと共にスラリーが移動しながら乾燥されるため、スラリーの液体蒸発量を長時間にわたってバラツキの少ないものとすることができ、造粒粉の密度と液体含有量の経時変化をさらに少なくすることができる。
【0023】
本発明は、前記供給ガスが送風ガスを燃料ガスの燃焼時の熱によって加熱して得られることから、乾燥室の上方から下方に向かって下降するスラリーの単位時間当たりの液体乾燥速度が変動しにくいため、造粒粉の液体含有量の経時変化をさらに小さくすることができる。
【0024】
これら噴霧乾燥装置を用いた本発明の噴霧乾燥方法は、前記出口温度検出手段により検出した出口温度に基づいて、前記出口温度制御手段により出口温度を所定温度に保持するとともに、前記入口温度制御手段により入口温度を所定温度に制御することから、噴霧乾燥の開始時から終了時まで入口温度および出口温度のばらつきを制御することができるため、密度および液体含有量の経時変化の少ない造粒粉を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の噴霧乾燥装置100を示す概略図であり、図2は本発明の噴霧乾燥装置の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【0027】
図1に示すように、噴霧乾燥装置100は、乾燥室1の上方からスラリー2を噴霧させるとともに、スラリー2を乾燥させるための供給ガスAを供給し、乾燥室1内に噴霧されたスラリー2は乾燥室1の上方から落下しながら、供給ガスAによって乾燥され、乾燥室1の下部で造粒粉3となり排出されるものである。
【0028】
本発明の噴霧乾燥装置100では、供給ガスAの排出部の温度を検出するための出口温度検出手段11と、前記供給ガスAの供給部の温度を検出するための入口温度検出手段21と、前記出口温度を制御するための出口温度制御手段10と、前記入口温度を制御するための入口温度制御手段20とを有し、噴霧乾燥中の出口温度、入口温度を所定値になるように制御することができる。
【0029】
この噴霧乾燥装置100の各構造、手段について詳細を説明する。
【0030】
スラリー2は、例えば、セラミック粉末と液体との混合物、食品の原料粉末と水との混合物、医薬用原料粉末と液体との混合物などがある。スラリー2に含まれる液体は、水、エタノール、メタノールなどのうち少なくとも1種から選ばれるものであり、タンク5内のスラリー2を乾燥室1内に供給する手段としては、タンク5内で撹拌されるスラリー2をポンプ4の圧力でスラリー供給管6内を移送させる。移送されたスラリー2は、乾燥室1の上方に備えたスラリー噴霧装置7にて乾燥室1内へ霧状に噴霧する。スラリー2の供給流量は、流量計8にて測定され、設定したスラリー2の流量と差が生じた場合にはポンプ4のモータ回転数を変化させることで流量を調整する。
【0031】
次いで、供給ガスAの供給方法について説明する。供給ガスAは、出口温度制御手段10によって供給される燃料ガスBをバーナー18に送り、入口温度制御手段20によって供給される送風ガスCをバーナー18の熱で加熱して得られた高温のガスである。燃料ガスBは、LPGやLNGの燃料13と燃料用送風機16にて供給される燃焼用空気15を混合させて得られるガスである。送風ガスCは、スラリー2に含まれる液体が水の場合は、空気が用いられ、スラリー2に含まれる液体がエタノールやメタノールなどの有機性液体を含む場合は、窒素ガスが用いられる。なお、送風ガスCの加熱手段はバーナー18による燃焼に限定されることはなく、送風ガスCをヒータ等によって高温にして供給ガスAを得てもよい。
【0032】
供給ガスAは、出口温度制御手段10および入口温度制御手段20によって、その供給量を調整され、これによって供給ガスAの排出部の出口温度と、供給ガスAの供給部の入口温度のそれぞれを所定値に保持するように制御する。
【0033】
出口温度制御手段10は、図1において乾燥室1から排出する供給ガスAの排出部の温度(出口温度)を検出する出口温度計からなる出口温度検出手段11と、出口温度を所定温度に設定するための出口温度設定計12とを有し、さらに、燃料ガスBを調整、供給するための手段である、燃料13と、燃料13を供給するための燃料供給口14と、燃焼用空気15と、燃焼用空気15を供給するための燃焼用空気送風機16と、燃料13と燃焼用空気15との混合比を調整する調整弁17と燃料ガスBを燃焼させるためのバーナー18とを備えるものであり、燃料ガスBの供給量は調整弁17に取り付けられた燃料用の開閉弁および燃焼用空気15の開閉弁の開閉状態を変化させることにより調整することができる。
【0034】
燃料ガスBは、燃料13と燃焼用空気15との混合比を調整弁17で調整するものであるが、燃料13と燃焼用空気15の比率は、燃料13にLNGを用いた場合、体積比で燃料13:燃焼用空気15=1:6〜1:15であることが好ましい。
【0035】
供給ガスAを乾燥室1外へ排出するための排出手段30を備えており、この排出手段30は、乾燥室1の下方側面から延出される排気管31と、排気管31の途中に設けられた排出用サイクロン32と、排風機33と、排気口34とからなる。出口温度検出手段10である出口温度計11は、この排気管31の先端部に備えられている。また、排出用サイクロン32は、噴霧乾燥により発生する粒子のうち、特に微細なものを回収するための装置であり、排風機33は、乾燥室1から排気口34へ供給ガスAを排気させるとともに、排出用サイクロン32にて特に微細な粒子を回収する作用を成す。
【0036】
入口温度制御手段20は、乾燥室1に供給する供給ガスAの供給部における温度(入口温度)を検出する入口温度計からなる入口温度検出手段21と、入口温度を所定温度に設定するための入口温度設定計22とを有し、さらに、送風ガスCを供給するための送風ガス送風機23備えるものであり、送風ガスCの供給量を送風ガス送風機23により調整することができる。
【0037】
これら出口温度制御手段10、入口温度制御手段20は、それぞれの出口温度計からなる出口温度検出手段11、入口温度計からなる入口温度検出手段21で計測した温度が、出口温度設定計12、入口温度設定計22の各設定温度からずれた場合には、出口温度、入口温度が設定温度となるよう制御される仕組みである。
【0038】
入口温度の制御は、送風ガスCの供給量を減らすことで入口温度を上昇させる方法、送風ガスCの供給量を増やすことで入口温度を降下させる方法により制御でき、送風ガスCの供給量は、送風機23のモータの回転数をインバータ制御することで増減することができる。
【0039】
出口温度の制御は、燃料13と燃焼用空気15の混合比を調整する方法、燃料13と燃焼用空気15の供給量を変化させる方法、バーナー18の温度や熱量を調整する方法がある。また、送風ガスCの送風量を変えない場合、バーナー18の熱量を上昇させることで出口温度は上がり、バーナー18の熱量を下げれば出口温度は下がる傾向にある。
【0040】
また、出口温度制御手段10および入口温度制御手段20は、両者が連動して供給ガスAの供給量制御することができるため、造粒粉3の密度と造粒粉3の液体含有量の経時変化をより小さくすることができる。
【0041】
このように、入口温度と出口温度の経時的な変動を共に小さくするよう制御しているので、噴霧乾燥により得られる造粒粉3の密度および液体含有量の経時変化を少なくすることができる。
【0042】
さらに、乾燥室1の内部の圧力と大気圧の差圧を測定、調整するための圧力調整手段40を備え、この圧力調整手段40は、圧力計41と、乾燥室1内の圧力を設定するための乾燥室内圧力設定計42と、排風機33とを備え、乾燥室1内の圧力と圧力計41取付部の大気圧との差を測定し、排風機33のモータの回転数をインバータ制御することで増減させることによって、所定の値にすることができ、排気用の排風機33と共通の排気口34とすればよい。
【0043】
次いで、図2を用いて本発明の噴霧乾燥装置100を用いた噴霧乾燥方法を説明する。
【0044】
本発明の噴霧乾燥方法は主に以下の(1)〜(9)の順で行う。
【0045】
(1)出口温度設定計11で出口温度を、入口温度設定計21で入口温度をそれぞれ所定値に設定し、乾燥室内圧力設定計42で乾燥室1内と乾燥室1外の差圧を設定する。
【0046】
(2)送風機23を起動し、乾燥室1内に送風する。排風機33を起動し、排気口34から排気する。
【0047】
(3)燃料ガスBをバーナー18にて燃焼させる。
【0048】
(4)出口温度を出口温度計からなる出口温度検出手段11で計測する。燃料ガスBの燃料13と燃焼用空気15の混合比およびそれらの供給量を変更して、出口温度の設定値と計測値が同じになるようにこれ以降制御し続ける。出口温度を制御すると同時に、乾燥室1内と外部の差圧を制御する。乾燥室内圧力設定計42で設定された差圧となるように排風機33のモータの回転数をインバータ制御することにより、差圧の設定値と計測値が一致するように、これ以降制御し続ける。
【0049】
(5)送風機23のモータの回転数をインバータ制御により変更することによって送風ガスCの供給量を変更し、入口温度の設定値と計測値とが同じになるように、これ以降制御し続ける。
【0050】
(6)スラリー噴霧装置7を起動する。
【0051】
(7)スラリー噴霧装置7へのスラリー2の供給量を設定し、スラリー2をスラリー噴霧装置7から噴霧する。スラリー2の供給量の設定値と、流量計8で計測された計測値とが一致するように、スラリー供給用のポンプ4のモータの回転数を変更することで、これ以降制御し続ける。
【0052】
(8)出口温度、入口温度、差圧、スラリー2の供給量のそれぞれの設定値と計測値が同じになるように、それぞれを制御しながら、スラリー2を噴霧乾燥して、造粒粉3を作製する。造粒粉3は、乾燥室1の下部から適宜回収する。
【0053】
(9)噴霧乾燥が終了したら、バーナー3、送風機23、排風機33、スラリーの噴霧装置7を停止する。
【0054】
噴霧乾燥装置100を用いて噴霧乾燥されるスラリー2は、セラミック粉末と液体からなるものであると、密度と液体含有量の経時変化が共に少ないセラミック粉末の造粒粉3が得られるので、この造粒粉3を一定圧力で加圧成形して多数の成形体を成形した場合、成形体の密度のばらつきが小さくなるからである。特に、噴霧乾燥装置100を用いて噴霧乾燥されるスラリー2がセラミック粉末と液体からなる場合、セラミック粉末はアルミナを主成分とする粉末であることが好ましい。特に、アルミナを主成分とする粉末はセラミック粉末の中でも大量生産されている粉末であるため、大型の噴霧乾燥装置が必要となっている。従来、噴霧乾燥装置が大型になる程、入口温度と出口温度の両方を同時に制御することが難しくなる傾向にあるものの、大型の噴霧乾燥装置を本発明の装置を用いれば、入口温度、出口温度の両方の経時変化を共に小さくすることができるため、得られるアルミナを主成分とする粉末の造粒粉は、密度と液体含有量のばらつきを十分に小さくすることができる。
【実施例】
【0055】
次いで本発明の実施例について説明する。
【0056】
先ず、内径6.2m、高さ8.3mの大きさの乾燥室を有する図1に示すような噴霧乾燥装置を準備した。噴霧乾燥装置の各種制御手段の実施状態、条件を表1に示す如くそれぞれ変更した試料No.1〜4の装置を準備した。
【0057】
各装置を用いて有機結合剤としてポリビニルアルコールとポリエチレングリコールを溶解させた水と、平均粒径1μmのアルミナ粉末とを混合し、スラリーを作製した。
【0058】
上述の(1)〜(9)の方法で、出口温度制御手段、入口温度制御手段、圧力調整手段を有し、噴霧乾燥中の出口温度、入口温度を所定値になるように制御した状態で以下のスラリーの供給を開始した。各条件は以下の通りである。
【0059】
スラリー供給流量4L/分、設定差圧−4.9Pa、出口温度設定値80℃、入口温度設定値290℃の条件でスラリーを10時間噴霧乾燥して造粒粉を作製した。
【0060】
噴霧乾燥中の入口温度、出口温度、差圧、噴霧乾燥により得られた造粒粉の嵩密度、残水率の経時変化を測定した。
【0061】
なお、噴霧乾燥中の入口温度、出口温度はそれぞれ入口温度計、出口温度計にて、差圧は圧力計41にて測定し、得られた造粒粉の嵩密度、残水率を測定した。嵩密度、残水率の測定方法として、嵩密度はJIS K 6721に準拠して嵩比重測定器を利用し噴霧乾燥後の造粒粉の嵩密度を測定した。また、残水率については噴霧乾燥後の造粒粉7〜8gを電子式水分計((株)島津製作所製、型番:EB−280MOC)を利用し測定した。
【0062】
その結果を表2、3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【0063】
出口温度制御手段、入口温度制御手段を有する本発明の噴霧乾燥装置(No.4)は、入口温度が294〜296℃、出口温度が85〜86℃、差圧が−4.8Paといずれも経時変化が少なかった。得られた造粒粉のゆるめ嵩密度は、1.08〜1.10g/cmと経時変化が小さかった。造粒粉の残水率は、0.09〜0.10質量%と経時変化にともなう変化もわずかなものであった。
【0064】
一方、比較例である噴霧乾燥装置の入口温度のみを自動制御した装置(No.1)は、入口温度は289〜292℃と経時変化が小さいものの、出口温度は76〜85℃と大きく経時変化し、差圧も−4.6〜−4.8Paと経時変化が大きかったため、得られた造粒粉の嵩密度が1.08−1.15g/cmとばらつき、残水率も0.07−0.10質量%と大きくばらついていた。入口温度と差圧のみを制御した装置(No.2)は、入口温度は289〜291℃と経時変化が小さいものの、出口温度が79〜84℃と大きく経時変化したため、得られた造粒粉の嵩密度が1.06〜1.11g/cmとばらつき、残水率も0.09−0.13質量%と大きくばらついていた。また、出口温度と差圧のみを制御した装置(No.3)は、出口温度は84〜86℃と経時変化が小さかったものの、入口温度が290〜300℃と大きく経時変化したため、造粒粉の嵩密度が1.05〜1.10g/cmとばらつき、残水率も0.06〜0.10質量%と大きくばらついたものであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の噴霧乾燥装置を示す概略図である。
【図2】本発明の噴霧乾燥装置の制御フローチャートである。
【図3】従来の噴霧乾燥装置を示す概略図である。
【図4】従来の噴霧乾燥装置の制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1,101 :乾燥室
2,102 :スラリー
3 :造粒粉
4,104 :ポンプ
5,105 :タンク
6,106 :スラリー供給管
7,107 :スラリー噴霧装置
8,108 :流量計
10 :出口温度制御手段
11,110:出口温度計
12,120:出口温度設定計
13,130:燃料
14,140:燃料供給口
15,150:燃焼用空気
16,160:燃料用送風機
17,170:調整弁
18,180:バーナー
20 :入口温度制御手段
21,210:入口温度計
22 :入口温度設定計
23,230:送風機
30 :排気手段
31,310:排気管
32,320:排風用サイクロン
33,330:排風機
33,340:排気口
40 :圧力調整手段
41,410:圧力計
42,420:乾燥室内圧力設定計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室の上方からスラリーおよび供給ガスを供給し、噴霧乾燥して下方から造粒粉を排出する噴霧乾燥装置であって、前記供給ガスの排出部の温度(出口温度)を検出するための出口温度検出手段と、前記供給ガスの供給部の温度(入口温度)を検出するための入口温度検出手段と、前記出口温度を制御するための出口温度制御手段と、前記入口温度を制御するための入口温度制御手段とを有することを特徴とする噴霧乾燥装置。
【請求項2】
前記出口温度制御手段および前記入口温度制御手段は、前記供給ガスの供給量を調整することを特徴とする請求項1に記載の噴霧乾燥装置。
【請求項3】
前記供給ガスは、送風ガスを燃料ガスの燃焼時に発生する熱により加熱して得られるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の噴霧乾燥装置。
【請求項4】
前記出口温度制御手段は、前記燃料ガスの供給量を調整する手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項5】
前記入口温度制御手段は、前記送風ガスの供給量を調整する手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項6】
前記出口温度制御手段および入口温度制御手段は、両者が連動して前記燃料ガスの供給量および前記送風ガスの供給量を制御することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項7】
前記乾燥室内の圧力と大気圧との差を所定値に調整するための圧力制御手段を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項8】
前記スラリーは、セラミック粉末と液体からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の噴霧乾燥装置を用いた噴霧乾燥方法であって、前記出口温度検出手段により検出した出口温度に基づいて、前記出口温度制御手段により出口温度を所定温度に保持するとともに、前記入口温度制御手段により入口温度を所定温度に制御することを特徴とする噴霧乾燥方法。
【請求項10】
請求項1〜8の何れかに記載の噴霧乾燥装置を用いた噴霧乾燥方法であって、前記スラリーは乾燥室内に一定量で供給されることを特徴とする噴霧乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−182911(P2008−182911A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17312(P2007−17312)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】