説明

噴霧器具

【課題】コンクリート構造物に接近する手段を要せず、コンクリート構造物に霧状物を噴射することができる噴霧器具を提供する。
【解決手段】噴霧器具1は、防錆剤などの霧状物を噴射する缶スプレーを取付け可能な一方の端部を有すると共に第1の棒体2Aおよび第2の棒体2Bによって伸縮可能な棒体2と、棒体2の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に缶スプレーからの霧状物の噴射を操作可能に構成された第1の噴射レバー3と、棒体2の一方の端部に取付けられる缶スプレー9と、棒体2を缶スプレー9に着脱可能に取付ける取付ジグ8と、棒体2の他方の端部に取付けられるゴム部材11とを備える。第1の噴射レバー3に隣接して第1の棒体2Aに把持部材6が取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴霧器具に関する。詳しくは、露出した鉄筋の防錆を行うための噴霧器具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は長年経過すると劣化し、補修が必要となる。この劣化現象の一つとして、鉄筋の腐食による膨張圧でコンクリートにひび割れを発生させたり、コンクリートを剥離させたりする現象がある。
【0003】
また、鉄筋の腐食は、下側の引張り鉄筋に現れる特徴があり、鉄筋コンクリート橋、道路橋などでこのような被害が多い。
従来、このようなコンクリート構造物の補修方法として、例えば特許文献1には、欠陥を含む構造部材の一部を切削して、切削により低下した構造物の強度を肉盛溶接で回復させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−62893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法も含めて、従来は、補修対象箇所に接近して、溶接をしたり、防錆塗装をしたりしており、補修対象箇所に接近できない場合には、塗装処理などが行えないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、コンクリート構造物に接近する手段を要せず、コンクリート構造物に霧状物を噴射することができる噴霧器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の噴霧器具は、霧状物を噴射する噴霧器具本体を取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体と、該棒体の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に前記噴霧器具本体からの霧状物の噴射を操作可能に構成された操作部材とを備える。
【0008】
ここで、霧状物を噴射する噴霧器具本体を取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体によって、一方の端部に取付けられた噴霧器具本体を、遠方からコンクリート構造物に接近させることや、コンクリート構造物に接近できないとき若しくは足場が必要な時も容易に棒体を伸ばしてコンクリート構造物に噴霧器具本体を接近させることができる。
また、棒体の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に噴霧器具本体からの霧状物の噴射を操作可能に構成された操作部材によって、作業員は遠方に居ながら、コンクリート構造物に接近させた噴霧器具本体から霧状物を噴射することができる。
【0009】
また、本発明の噴霧器具は、棒体の一方の端部に取付けられる噴霧器具本体を備えることができる。
【0010】
さらに、本発明の噴霧器具は、棒体を噴霧器具本体に着脱可能に取付ける取付部材を備える場合、噴霧器具本体の内容物がなくなったときでも、新しい噴霧器具本体へ取り替えることができる。
【0011】
また、本発明の噴霧器具において、取付部材は、噴霧器具本体を上下左右方向へ動かす構成とされる場合、橋の裏側などのように、電線などの障害物があっても、補修対象箇所に噴霧器具本体を接近させやすくなる。
【0012】
また、本発明の噴霧器具は、棒体の他方の端部に取付けられる滑り止め部材を備える場合、長時間の作業で作業員の手が汗ばんでも、安定して噴霧作業を続けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る噴霧器具によって、コンクリート構造物に接近する手段を要せず、コンクリート構造物に霧状物を噴射することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の噴霧器具の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の噴霧器具の取付ジグによる缶スプレーの動きの一例を説明するための概略側面図である。
【図3】本発明の噴霧器具の取付ジグによる缶スプレーの動きの一例を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明の噴霧器具の一例を示す概略図である。
本発明の噴霧器具1は、防錆剤などの霧状物を噴射する缶スプレー(噴霧器具本体の一例である。)を取付け可能な一方の端部を有すると共に第1の棒体2Aおよび第2の棒体2Bによって伸縮可能な棒体2を備える。
また、噴霧器具1は、棒体2の一方の端部から離れた位置(他方の端部に近い位置)に取付けられると共に缶スプレーからの霧状物の噴射を操作可能に構成された第1の噴射レバー(操作部材の一例である。)3を備える。また、第1の噴射レバー3に隣接して第1の棒体2Aに把持部材6が取付けられている。
さらに、噴霧器具1は、棒体2の一方の端部に取付けられる缶スプレー9を備える。
また、噴霧器具1は、棒体2を缶スプレー9に着脱可能に取付ける取付ジグ(取付部材の一例である。)8を備える。
また、噴霧器具1は、棒体2の他方の端部に取付けられるゴム部材(滑り止め部材の一例である。)11を備える。
また、噴霧器具1は、一端が伸縮自在のゴム製のアタッチメント15によって缶スプレー9に着脱可能に取付けられると共に他端がカラビナ状軽量金具14によって着脱可能に取付ジグ8に取付けられるロック式落下防止ロープ13を備える。
【0016】
また、第1の噴射レバー3は、取付ジグ8に取付けられた第2の噴射レバー4と連結棒5によって連結しており、作業員が把持部材6を持ちながら第1の噴射レバー3を棒体2の他方の端部側へ引くと、第2の噴射レバー4も棒体2の他方の端部側へ引かれる。そして、第2の噴射レバー4が棒体2の他方の端部側へ引かれると、缶スプレー9の上部にある噴射口10が押されて、霧状物が噴射口10から噴射される。
また、取付ジグ8にはロック穴12が形成されており、ロック式落下防止ロープ13のカラビナ状軽量金具14が、ロック穴12に通される。
【0017】
また、第1の棒体2Aの内部には空洞が形成されており、第2の棒体2Bがこの空洞内をスライドすることで棒体2が伸縮する。また、第1の棒体2Aに取付けられた回転ロック部材7は、所定の位置で第2の棒体2Bを固定する。
【0018】
ここで、本発明の噴霧器具が、霧状物を噴射する噴霧器具本体を取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体と、棒体の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に噴霧器具本体からの霧状物の噴射を操作可能に構成された操作部材とを備えていれば、必ずしも取付ジグを備えていなくてもよい。しかし、噴霧器具が取付ジグを備えていれば、噴霧器具本体の内容物がなくなったときでも、新しい噴霧器具本体へ取り替えることができるので好ましい。
【0019】
また、本発明の噴霧器具が、霧状物を噴射する噴霧器具本体を取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体と、棒体の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に噴霧器具本体からの霧状物の噴射を操作可能に構成された操作部材とを備えていれば、必ずしもゴム部材を備えていなくてもよい。
【0020】
図2は、本発明の噴霧器具の取付ジグによる缶スプレーの動きの一例を説明するための概略側面図である。また、図3は、本発明の噴霧器具の取付ジグによる缶スプレーの動きの一例を説明するための概略平面図である。なお、図2及び図3において、ロック式落下防止ロープなどは省略する。
取付ジグ8は、ユニバーサルジョイント(図示せず。)によって、図2に示されるように上下方向へ缶スプレー9を動かしたり、図3に示されるように左右方向へ缶スプレー9を動かしたりすることができる。なお、缶スプレーを上下左右方向へ動かすことができれば、必ずしもユニバーサルジョイントを利用しなくてもよく、他の部材を利用してもよい。また、缶スプレー9を上下左右方向へ動かすことができれば、例えば把持部材6付近に設けられたボタンなどを操作して電動で缶スプレー9を動かすようにしてもよい。
【0021】
ここで、本発明の噴霧器具が、霧状物を噴射する噴霧器具本体を取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体と、棒体の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に噴霧器具本体からの霧状物の噴射を操作可能に構成された操作部材とを備えていれば、必ずしも取付ジグは缶スプレーを上下左右方向へ動かす構成とされていなくてもよい。しかし、取付ジグが缶スプレーを上下左右方向へ動かす構成とされていれば、障害物があっても、棒体の長さ方向とは異なる方向へ缶スプレーを向けることができるので、コンクリート構造物の補修対象箇所に缶スプレーを接近させやすくなり、好ましい。
【0022】
以上のように、本発明の噴霧器具は、缶スプレーを取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体を備えるので、缶スプレーを、遠方からコンクリート構造物に接近させることや、コンクリート構造物に接近できないとき若しくは足場が必要な時も容易に棒体を伸ばしてコンクリート構造物に缶スプレーを接近させることができる。
また、本発明の噴霧器具は、棒体の一方の端部から離れた位置(他方の端部に近い位置)に取付けられると共に缶スプレーからの霧状物の噴射を操作可能に構成された第1の噴射レバーを備えるので、作業員は、地面に立ちながらコンクリート構造物例えば高い位置にある橋梁の下面や側面に接近させた缶スプレーから霧状物を噴射することができる。
よって、コンクリート構造物に接近する手段を要せず、コンクリート構造物に霧状物を噴射することができる。
【0023】
また、伸縮可能な棒体の一端に缶スプレーが取付けられ、さらに棒体の一端から離れた位置に噴射を操作可能な第1の噴射レバーが取付けられているので、作業員は、梯子や高所作業車などを用いることなく、棒体を持って高い位置にある橋梁の下面や側面に缶スプレーを近づけて、一人で露出した鉄筋に防錆処理を行うことができる。これにより、一人での作業が可能となり、作業時間の短縮を図ることができると共に、人件費の削減や高所作業車などの準備費用を削減できる。
【0024】
また、取付ジグによって、着脱可能に缶スプレーを棒体の一端に取付けているので、市販の缶スプレーを使用でき、特殊な技術を必要としない。
【0025】
また、第1の噴射レバーによって、缶スプレーの噴射口付近に直接触れなくても噴射が可能であるため、作業員の手が汚れる心配がない。
【0026】
また、意図せずして取付ジグから缶スプレーが外れても、ロック式落下防止ロープによって、完全に取付ジグと缶スプレーとが分離することを防ぐことができ、高所から缶スプレーが落下して第三者などへ被害を与える心配もない。
【符号の説明】
【0027】
1 噴霧器具
2 棒体
2A 第1の棒体
2B 第2の棒体
3 第1の噴射レバー
4 第2の噴射レバー
5 連結棒
6 把持部材
7 回転ロック部材
8 取付ジグ
9 缶スプレー
10 噴射口
11 ゴム部材
12 ロック穴
13 ロック式落下防止ロープ
14 カラビナ状軽量金具
15 アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧状物を噴射する噴霧器具本体を取付け可能な一方の端部を有すると共に伸縮可能な棒体と、
該棒体の一方の端部から離れた位置に取付けられると共に前記噴霧器具本体からの霧状物の噴射を操作可能に構成された操作部材とを備える
噴霧器具。
【請求項2】
前記棒体の一方の端部に取付けられる噴霧器具本体を備える
請求項1に記載の噴霧器具。
【請求項3】
前記棒体を前記噴霧器具本体に着脱可能に取付ける取付部材を備える
請求項1または請求項2に記載の噴霧器具。
【請求項4】
前記取付部材は、前記噴霧器具本体を上下左右方向へ動かす構成とされる
請求項3に記載の噴霧器具。
【請求項5】
前記棒体の他方の端部に取付けられる滑り止め部材を備える
請求項1〜4のいずれか1つに記載の噴霧器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−539(P2011−539A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145496(P2009−145496)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509146665)有限会社フォーテック (3)
【Fターム(参考)】