説明

嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子のモジュレーター

本発明は、式Iの化合物:または薬学的に許容されるその塩に関する[式中、Rは、COOHまたはCHOHである]。一態様では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩(式中、Rは、上記の通り定義される)と、薬学的に許容される担体またはアジュバントとを包含する医薬組成物に関する。この態様の実施形態はまた、粘液溶解剤、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染薬、抗炎症薬、CFTRモジュレーターまたは栄養剤から選択される追加的な薬剤を含有する医薬組成物を包含してもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2009年3月20日に出願された米国仮特許出願第61/162,130号の米国仮特許出願に対する優先権を主張する。この仮特許出願は、本明細書によりその全体が参照として援用される。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(「CFTR」)のモジュレーター、その組成物およびそれを用いる方法に関する。本発明はまた、CFTRのモジュレーターを使用して疾患を治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
嚢胞性線維症(CF)は、米国で約30000人の小児および成人ならびに欧州で約30000人の小児および成人が罹患している劣性遺伝子疾患である。CF治療の進展にも関わらず、治癒することはない。
【0004】
CFの原因は、様々な組織において塩および水の吸収および分泌の制御を補助すべき上皮性塩素イオンチャネルをコードする嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の変異である。CFTRチャネル開放の確率を高める増強因子として公知の低分子薬物は、CFを治療するための有望な治療戦略の1つを代表している。
【0005】
特にCFTRは、cAMP/ATP媒介されるアニオンチャネルであり、これは、吸収および分泌上皮細胞を包含する様々な細胞種で発現され、そこで、膜を横断するアニオンフラックス、さらには他のイオンチャネルおよびタンパク質の活性を調節する。上皮(epithelia)細胞において、CFTRの正常な機能は、呼吸組織および消化組織を包含する身体全体で電解質輸送を維持するために重要である。CFTRは、それぞれ6回膜貫通へリックスおよびヌクレオチド結合ドメインを含有する膜貫通ドメインのタンデム反復から構成されるタンパク質をコードする約1480個のアミノ酸から構成されている。2つの膜貫通ドメインは、チャネル活性および細胞内輸送を制御する複数のリン酸化部位を有する大きな極性制御(R)ドメインによって連結されている。
【0006】
CFTRをコードする遺伝子は、特定され、配列決定されている(非特許文献1;非特許文献2、非特許文献3を参照されたい)。この遺伝子の欠陥は、ヒトにおいて最も一般的な致死的遺伝疾患である嚢胞性線維症(「CF」)をもたらすCFTRの変異を引き起こす。嚢胞性線維症は、米国では乳児2500人当たり約1人が罹患している。米国の人口全体では、最大1000万人が、明白な発症なしにこの欠陥遺伝子の単一コピーを有している。これに対して、CF関連遺伝子を2コピー有する個体は、慢性肺疾患を包含するCFの衰弱性で致死的作用に苦しんでいる。
【0007】
CF患者において、呼吸器上皮において内因的に発現されるCFTRの変異は、イオンおよび流体輸送の平衡異常を引き起こす頂端側アニオン分泌の低下をもたらす。結果として生じるアニオン輸送の低下は、肺における粘液蓄積の増加と、それに付随した、CF患者に最終的には死をもたらす微生物感染との一因となる。呼吸器疾患に加えて、CF患者は典型的には、胃腸の支障および、治療せずに放置すれば死をもたらす膵臓不全に苦しんでいる。加えて、嚢胞性線維症の男性の大部分は、生殖能力が無く、嚢胞性線維症の女性では、受精率が低下する。CF関連遺伝子の2コピーの重大な作用とは対照的に、CF関連遺伝子を単一コピー有する個体は、コレラおよび下痢から生じる脱水に対して高い抵抗性を示し、おそらくこのことが、集団内でのCF遺伝子の比較的高い発生頻度を説明している。
【0008】
CF染色体のCFTR遺伝子の配列分析により、様々な病因性変異が明らかになっている(非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6;非特許文献7)。今日までに、CF遺伝子において1000を上回る病因性変異が特定されている(http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/app)。最も優勢な変異は、CFTRアミノ酸配列の508位にあるフェニルアラニンの欠失であり、ΔF508−CFTRと一般に称される。この変異は、嚢胞性線維症の症例のうちの約70%で起きており、重度の疾患と関連する。
【0009】
ΔF508−CFTRの残基508の欠失は、新生タンパク質の正確な折りたたみを妨げる。このことにより、変異型タンパク質はERを出られず、形質膜に移動することができなくなる。結果として、膜に存在するチャネルの数は、野生型CFTRを発現する細胞において認められるよりもはるかに少ない。その変異は、輸送障害に加えて、不完全なチャネル開閉をもたらす。膜におけるチャネル数の低下および不完全な開閉は一緒になって、上皮を横断するアニオン輸送の低下をもたらし、不完全なイオンおよび流体の輸送をもたらす(非特許文献8)。しかしながら、研究によって、膜中の少数のΔF508−CFTRは、野生型CFTRよりも低いが、機能し得ることが示されている。(非特許文献9;Denningら、前出;非特許文献10)。ΔF508−CFTRに加えて、不完全な輸送、合成および/またはチャネル開閉をもたらすCFTRにおける他の病因性変異を、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションすれば、アニオン分泌を変化させ、疾患の進行および/または重症度を変更し得るであろう。
【0010】
CFTRは、アニオンに加えて様々な分子を輸送するが、この役割(アニオンの輸送)が、上皮を横断してイオンおよび水を輸送する重要な機構における一要素であることは明らかである。他の要素には、上皮NaチャネルであるENaC、Na/2Cl/K共輸送体、Na−K−ATPaseポンプおよび基底側細胞膜Kチャネルが包含され、これらは、細胞への塩素イオンの取り込みを担っている。
【0011】
これらの要素は一緒に作用して、細胞内でのそれらの選択的発現および局在化を介して、上皮を横断する指向性輸送を達成する。塩素イオン吸収は、頂端側細胞膜に存在するENaCおよびCFTRと、細胞の基底側表面で発現されるNa−K−ATPaseポンプおよびClイオンチャネルとの協調活性によって生じる。管腔側からの塩素イオンの二次的能動輸送は、細胞内塩素イオンの蓄積をもたらし、次いで、これは、Clチャネルを介して受動的に細胞から出て、ベクトル輸送をもたらし得る。基底側表面でのNa/2Cl/K共輸送体、Na−K−ATPaseポンプおよび基底側細胞膜Kチャネルの配列と、管腔側でのCFTRとが、管腔側のCFTRを介した塩素イオンの分泌を調整する。水は、おそらくそれ自体では決して能動的に輸送されないので、上皮を横断するその流れは、ナトリウムおよび塩素イオンの総体流によって生じるわずかな経上皮浸透圧勾配に依存する。
【0012】
上記で検討した通り、ΔF508−CFTRにおける残基508の欠失は、新生タンパク質の正確な折りたたみを妨げ、この変異型タンパク質がERを出られず、形質膜を移動できないようにすると考えられる。結果として、不十分な量の成熟タンパク質が形質膜に存在し、上皮組織内での塩素イオン輸送は、著しく低下する。実際に、ER機構によるABC輸送体の不完全なERプロセッシングのこの細胞現象は、CF疾患に関してだけでなく、幅広い他の単独の遺伝性疾患に関しても、根底にあることが判明している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Gregory,R.J.ら(1990年)、Nature 347号:382〜386頁
【非特許文献2】Rich,D.P.ら(1990年)、Nature 347号:358〜362頁
【非特許文献3】Riordan,J.R.ら(1989年)、Science 245号:1066〜1073頁
【非特許文献4】Cutting,G.R.ら(1990年)、Nature 346号:366〜369頁
【非特許文献5】Dean,M.ら(1990年)、Cell 61巻:863号:870頁
【非特許文献6】Kerem,B−S.ら(1989年)、Science 245号:1073〜1080頁
【非特許文献7】Kerem,B−Sら(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87巻:8447〜8451頁
【非特許文献8】Quinton,P.M.(1990年)、FASEB J.4巻:2709〜2727頁
【非特許文献9】Dalemansら(1991年)、Nature Lond.354号:526〜528頁
【非特許文献10】PasykおよびFoskett(1995年)、J.Cell.Biochem.270号:12347〜50頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、哺乳動物の細胞膜においてCFTRの活性をモジュレートするために使用され得るCFTR活性のモジュレーターおよびその組成物が必要とされている。
【0015】
CFTR活性のそのようなモジュレーターを使用して、CFTRでの変異が原因である疾患を治療する方法が必要とされている。
【0016】
哺乳動物のex vivo細胞膜においてCFTR活性をモジュレートする方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の要旨
一態様では、本発明は、式Iの化合物:
【0018】
【化1】

[式中、Rは、COOHまたはCHOHである]
または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0019】
一実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0020】
【化2】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0021】
別の実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0022】
【化3】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0023】
一態様では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩(式中、Rは、上記の通り定義される)と、薬学的に許容される担体またはアジュバントとを包含する医薬組成物に関する。
【0024】
医薬組成物の一実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0025】
【化4】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0026】
医薬組成物の別の実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0027】
【化5】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0028】
この態様の実施形態はまた、粘液溶解剤、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染薬、抗炎症薬、CFTRモジュレーターまたは栄養剤から選択される追加的な薬剤を含有する医薬組成物を包含してもよい。
【0029】
一態様では、本発明は、生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法を包含し、この方法は、前記生物学的試料を、Rが上記の通り定義される式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む。
【0030】
CFTR活性をモジュレートする方法の一実施形態では、化合物は下式の構造:
【0031】
【化6】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0032】
CFTR活性をモジュレートする方法の別の実施形態では、化合物は下式の構造:
【0033】
【化7】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0034】
別の態様では、本発明はまた、患者において疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、本明細書で定義される通りの組成物の1種を投与することを含み、、前記疾患は、嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、肝臓疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、プロテインC欠損症などの凝固−線維素溶解欠損症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無βリポ蛋白血症などの脂質処理欠損症、I細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ−サックスなどのリソソーム蓄積症、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症(hyperinsulemia)、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ(myleoperoxidase)欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性(neurophyseal)DI、腎性(neprogenic)DI、シャルコー・マリートゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病などの神経変性疾患、ハンチントン病、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋強直性ジストロフィーなどのいくつかのポリグルタミン神経障害、さらに遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠損に起因する)などの海綿状脳症、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患、およびシェーグレン病、骨粗鬆症、オステオペニア、骨治癒および骨成長(骨修復、骨再生、骨吸収の低減および骨沈着の増大を包含)、ゴルハム症候群、先天性筋緊張症(ThomsonおよびBecker型)などの塩素イオンチャネル病、バーター症候群III型、デント病、過剰驚愕症、てんかん、過剰驚愕症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群ならびに線毛の構造および/または機能の遺伝性障害に関する用語である、逆位を伴うPCD(カルタゲナー症候群としても公知)、逆位を伴わないPCDおよび毛様体形成不全を包含する原発性線毛ジスキネジア(PCD)から選択される。
【0035】
疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法の別の実施形態では、その疾患は、CF、COPD、喫煙誘発性COPD、膵炎および鼻副鼻腔炎から選択される。
【0036】
ある種の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症である。
【0037】
疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法の一実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0038】
【化8】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0039】
疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法の別の実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0040】
【化9】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0041】
別の態様では、本発明は、生物学的試料におけるCFTRまたはその断片の活性をin vitroまたはin vivoで測定する際に使用するためのキットを提供し、このキットは、(i)式Iの化合物または上記の実施形態のうちのいずれかを含む組成物;ならびに(ii)a)組成物と生物学的試料とを接触させるステップおよびb)前記CFTRまたはその断片の活性を測定するステップのための説明書を含む。
【0042】
この態様の一実施形態では、キットは、a)追加の組成物と、生物学的試料とを接触させるステップ;b)前記の追加の化合物の存在下での前記CFTRまたはその断片の活性を測定するステップおよびc)追加の化合物の存在下でのCFTRまたはその断片の活性を、式Iの組成物の存在下でのCFTRまたはその断片の密度と比較するステップのための説明書をさらに含む。
【0043】
好ましい実施形態では、キットを、CFTRまたはその断片の密度を測定するために使用する。
【0044】
さらなる好ましい実施形態では、キットを、前記CFTRまたはその断片の密度を測定するために使用し、前記CFTRまたはその断片の活性を比較するステップによって、前記CFTRまたはその断片の密度の測定値を得る。
【0045】
CFTRの活性を測定する際に使用するためのキットの一実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0046】
【化10】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0047】
CFTRの活性を測定する際に使用するためのキットの別の実施形態では、化合物は、下式の構造:
【0048】
【化11】

または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0049】
式Iの化合物は、これらに限られないが、高い極性、好ましい水溶性、より低い分布体積およびより低い組織浸透などの有利な特性をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
定義
本発明の化合物は、上記で一般的に記載されたものを包含し、本明細書に開示されているクラス、サブクラスおよび種によってさらに説明される。本明細書で使用される場合、別段に示されていない限り、次の定義が適用されることとなる。
【0051】
「ABC輸送体」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の結合ドメインを含むABC輸送体タンパク質またはその断片を意味し、ここで、前記タンパク質またはその断片は、in vivoまたはin vitroで存在する。「結合ドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、モジュレーターに結合し得るABC輸送体上のドメインを意味する。例えば、Hwang,T.C.ら、J.Gen.Physiol.(1998年):111巻(3号)、477〜90頁を参照されたい。
【0052】
「CFTR」という用語は、本明細書で使用される場合、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子または、これらに限られないがΔF508 CFTRおよびG551D CFTRが包含される制御因子活性が可能なその制御因子の変異を意味する(CFTR変異については、例えば、http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/を参照されたい)。
【0053】
「モジュレートする」という用語は、本明細書で使用される場合、測定可能な量で増大または減少させることを意味する。
【0054】
本発明の目的では、化学元素は、元素周期表(CAS version、Handbook of Chemistry and Physics、第75版)に従って同定されている。加えて、有機化学の一般原則は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito:1999年および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、:Smith、M.B.およびMarch,J.編、John Wiley & Sons、New York:2001年に記載されており、これらの内容全体が、参照により本明細書に援用される。
【0055】
本明細書に記載されている通り、例えば、上記で一般に示されている通り、または本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示されている通り、本発明の化合物は、1個または複数の置換基で場合によって置換されている。「場合によって置換されている」という語句は、「置換されているか、または置換されていない」という語句と互換的に使用されることは理解されるであろう。一般に、「置換されている」という用語は、「場合によって」という用語が前にあってもなくても、所定の構造中の水素ラジカルが特定の置換基のラジカルで置換されていることを指す。別段に示されていない限り、場合によって置換されている基は、その基のそれぞれ置換可能な位置に置換基を有してよく、任意の所定の構造において1つより多い位置が、特定の基から選択される1個より多い置換基で置換されてもよい場合、その置換基は、全ての位置において同じか、または異なってよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは好ましくは、安定であるか、または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。「安定な」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物の生成、検出ならびに好ましくはそれらの回収、精製および本明細書で開示されている目的のうちの1つまたは複数のための使用を可能にする条件に供された場合に実質的に変化しない化合物を指す。いくつかの実施形態において、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、40℃以下の温度、水分または他の化学的に反応性の条件の不在下で、少なくとも1週間保持された場合に、実質的に変化しないものである。
【0056】
「保護基」(PG)という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、アルコール、アミン、カルボキシル、カルボニルなどの官能基を、合成手順の間の望ましくない反応に対して保護することが意図されている基を表す。一般に使用される保護基は、参照により本明細書に援用されるGreene and Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版(John Wiley & Sons、New York、1999年)に開示されている。窒素保護基の例には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o−ニトロフェノキシアセチル、α−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイルおよびアラニン、ロイシン、フェニルアラニンなどの保護または非保護のD−アミノ酸、L−アミノ酸またはD,L−アミノ酸などのキラル補助剤などのアシル、アロイルまたはカルバミル基;ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニルなどのスルホニル基;ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニリル)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなどのカルバメート基、ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチルなどのアリールアルキル基ならびにトリメチルシリルなどのシリル基が包含される。好ましいN−保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)である。
【0057】
酸のための有用な保護基の例は、置換アルキルエステル、例えば9−フルオレニルメチル、メトキシメチル、メチルチオメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、メトキシエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、ベンジルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、フェニルアセトキシメチル、トリイソプロプロピルシリルメチル)、シアノメチル、アセトール、フェナシル、置換フェナシルエステル、2,2,2−トリクロロエチル、2−ハロエチル、ω−クロロアルキル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−メチルチオエチル、t−ブチル、3−メチル−3−ペンチル、ジシクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、メタリル、シンナミル(cynnamyl)、フェニル、シリルエステル、ベンジルおよび置換ベンジルエステル、2,6−ジアルキルフェニルエステル、例えばペンタフルオロフェニル、2,6−ジアルキルフェニルである。酸のための好ましい保護基は、メチルまたはエチルエステルである。
【0058】
そのようなアミンおよび酸保護基を付加(一般に「保護」と称されるプロセス)および除去(一般に「脱保護」と称されるプロセス)する方法は、当分野で周知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるP.J.Kocienski、Protecting Groups、Thieme、1994年およびGreene and Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版(John Wiley & Sons、New York、1999年)で入手することができる。
【0059】
別段に述べられていない限り、本発明の化合物の互変異性形態はすべて、本発明の範囲内である。即ち、式Iの化合物は、互変異性体として存在し得る:
【0060】
【化12】

加えて、別段に述べられていない限り、本明細書に示されている構造はまた、1個または複数の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を包含することが意図されている。例えば、水素が重水素もしくは三重水素によって置き換えられていること、または炭素が13Cもしくは14C濃縮炭素によって置き換えられていることを除いて、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、分析ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、または治療薬として有用である。
【0061】
適切な溶媒の例は、これらに限られないが、水、メタノール、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸イソプロピル(IPAc)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、t−ブタノールおよびN−メチルピロリドン(NMP)である。
【0062】
適切なカップリング剤の例は、これらに限られないが、1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−3−エチル−カルボジイミドヒドロクロリド(EDCI)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2−クロロ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−H−ベンゾトリアゾリウム−1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンおよび2−プロパンホスホン酸無水物(T3P(登録商標))である。
【0063】
適切な塩基の例は、これらに限られないが、KCO、N−メチルモルホリン(NMM)、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピル−エチルアミン(DIEA)、ピリジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよびナトリウムメトキシドである。
【0064】
化合物
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物:
【0065】
【化13】

または薬学的に許容されるその塩を包含する
[式中、Rは、COOHまたはCHOHである]。
【0066】
一部の実施形態では、RはCHOHである。
【0067】
一部の実施形態では、RはCOOHである。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、下式の構造の化合物:
【0069】
【化14】

または薬学的に許容されるその塩を包含する。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、下式の構造の化合物:
【0071】
【化15】

または薬学的に許容されるその塩を包含する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物と、薬学的に許容される担体またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、下式の構造の化合物:
【0074】
【化16】

と薬学的に許容される担体またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、下式の構造の化合物:
【0076】
【化17】

と薬学的に許容される担体またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0077】
別の実施形態では、医薬組成物は、粘液溶解剤、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染薬(anti−invective agent)、抗炎症薬、CFTRモジュレーターまたは栄養剤から選択される追加的な薬剤をさらに含む。
【0078】
III.一般的合成
式Iの化合物は、スキーム1に従って合成することができる。
【0079】
【化18】

スキーム1では、カップリング条件下で、式IIのアニリン[式中、RおよびOHは場合によって、および独立に、その上に保護基を有する]を式IIIのカルボン酸中間体と反応させて、式IVの化合物を生じさせる。次いで、1個または複数の保護基を有する式IVの化合物を脱保護して、式Iの誘導体を得ることができる。
【0080】
スキーム1に示されているカップリング反応は、反応物を適切な溶媒に溶かし、場合によって適切な塩基の存在下で、生じた溶液を適切なカップリング試薬で処理することにより、達成することができる。
【0081】
式IIIのキノリン誘導体は、スキーム2に従って合成することができる。
【0082】
【化19】

式IIのアニリン[式中、Rは−CHOHである]は、スキーム3に従って合成することができる。
【0083】
【化20】

式IIのアニリン[式中、Rは−COOHである]は、スキーム4に従って合成することができる。
【0084】
【化21】

使用および使用方法
薬学的に許容される組成物
本発明の一態様では、本明細書に記載の任意の化合物を含み、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを場合によって含む薬学的に許容される組成物を提供する。ある種の実施形態では、これらの組成物は、1種または複数の追加的な治療薬を場合によってさらに含む。
【0085】
また、ある種の本発明の化合物は、治療のために遊離形態で、または適切な場合には、薬学的に許容される誘導体もしくはそのプロドラッグとして存在し得ることは認められるであろう。本発明によれば、薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグには、これらに限られないが、それを必要とする患者に投与すると、直接的または間接的に、本明細書に別段に記載の化合物またはその代謝産物もしくは残存物をもたらし得る薬学的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩または任意の他の付加物もしくは誘導体が包含される。
【0086】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー性応答などを伴うことなく、ヒトおよび下級動物の組織と接触した状態で使用するために適しており、ならびに合理的な利益/リスク比に見合う塩を指す。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントに投与すると、直接的または間接的に、本発明の化合物またはその阻害的に活性な代謝産物もしくは残存物をもたらし得る本発明の化合物の任意の非毒性の塩またはそのエステルの塩を意味する。
【0087】
薬学的に許容される塩は、当分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に援用されるJ.Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1〜19頁において詳細に、薬学的に許容される塩を記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、適切な無機および有機の酸および塩基に由来するものが包含される。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸で、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸で形成されるか、またはイオン交換などの当分野で使用される他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エジシル酸塩(エタンジスルホン酸塩)、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプト酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが包含される。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウムおよびN(C1〜4アルキル)塩が包含される。本発明はまた、本明細書に開示されている化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定している。このような四級化によって、水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが包含される。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成される非毒性アンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンが包含される。
【0088】
上記の通り、本発明の薬学的に許容される組成物は追加的に、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含み、これらには、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に適しているような任意および全ての溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが包含される。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.,1980年)は、薬学的に許容される組成物を製剤化する際に使用される様々な担体およびその調製のための公知の技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的作用を生じるか、または他に、薬学的に許容される組成物の他の成分のいずれかと有害に相互作用することなどによって、任意の従来の担体媒体が、本発明の化合物と非適合性である場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが企図されている。薬学的に許容される担体として働き得る物質のいくつかの例には、これらに限られないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤用ワックスなどの賦形剤;ラッカセイ油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油などのオイル;プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質不含有水;等張性食塩水;リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、さらに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性の適合性滑沢剤が包含され、さらに、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在してよい。
【0089】
化合物および薬学的に許容される組成物の使用
なお別の態様では、本発明は、CFTR変異が関与している状態、疾患または障害を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供する。ある種の実施形態では、本発明は、CFTR活性の不全が関与している状態、疾患または障害を治療する方法を提供し、この方法は、式Iの化合物を含む組成物を、それを必要とする被験体、好ましくは哺乳動物に投与することを含む。
【0090】
別の態様では、本発明はまた、患者において疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、本明細書で定義される通りの組成物の1種を投与することを含み、その際、前記疾患は、嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、肝臓疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、プロテインC欠損症などの凝固−線維素溶解欠損症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無βリポ蛋白血症などの脂質処理欠損症、I細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ−サックスなどのリソソーム蓄積症、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI、腎性DI、シャルコー・マリートゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病などの神経変性疾患、ハンチントン病、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋強直性ジストロフィーなどのいくつかのポリグルタミン神経障害、さらに遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠損に起因する)などの海綿状脳症、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患、およびシェーグレン病、骨粗鬆症、オステオペニア、骨治癒および骨成長(骨修復、骨再生、骨吸収の低減および骨沈着の増大を包含)、ゴルハム症候群、先天性筋緊張症(ThomsonおよびBecker型)などの塩素イオンチャネル病、バーター症候群III型、デント病、過剰驚愕症、てんかん、過剰驚愕症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群ならびに線毛の構造および/または機能の遺伝性障害に関する用語である、逆位を伴うPCD(カルタゲナー症候群としても公知)、逆位を伴わないPCDおよび毛様体形成不全を包含する原発性線毛ジスキネジア(PCD)から選択される。
【0091】
一部の実施形態では、この方法は、患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、この方法は、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。ある種の実施形態では、患者は、ヒトCFTRの変異形態を有する。他の実施形態では、患者は、ヒトCFTRの次の変異:ΔF508、R117HおよびG551Dのうちの1つまたは複数を有する。一実施形態では、この方法は、ヒトCFTRのΔF508変異を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、ヒトCFTRのG551D変異を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、少なくとも1つの対立遺伝子上にヒトCFTRのΔF508変異を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、両方の対立遺伝子上にヒトCFTRのΔF508変異を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、少なくとも1つの対立遺伝子上にヒトCFTRのG551D変異を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、両方の対立遺伝子上にヒトCFTRのG551D変異を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。
【0092】
一部の実施形態では、この方法は、患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、この方法は、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。ある種の実施形態では、患者は、ヒトCFTRの変異形態を有する。他の実施形態では、患者は、ヒトCFTRの次の変異:ΔF508、R117HおよびG551Dのうちの1つまたは複数を有する。一実施形態では、この方法は、ヒトCFTRのΔF508変異を有する患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、ヒトCFTRのG551D変異を有する患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、少なくとも1つの対立遺伝子上にヒトCFTRのΔF508変異を有する患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、両方の対立遺伝子上にヒトCFTRのΔF508変異を有する患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、少なくとも1つの対立遺伝子上にヒトCFTRのG551D変異を有する患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、両方の対立遺伝子上にヒトCFTRのG551D変異を有する患者において嚢胞性線維症の重症度を軽減することを包含し、これは、前記患者に本明細書で定義される通りの組成物のうちの1種を投与することを含む。
【0093】
一部の態様では、本発明は、患者において骨粗鬆症を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0094】
ある種の実施形態では、患者において骨粗鬆症を治療するまたはその重症度を軽減する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0095】
一部の態様では、本発明は、患者においてオステオペニアを治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0096】
ある種の実施形態では、患者においてオステオペニアを治療するまたはその重症度を軽減する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0097】
一部の態様では、本発明は、患者において骨治癒および/または骨修復する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0098】
ある種の実施形態では、患者において骨治癒および/または骨修復する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0099】
一部の態様では、本発明は、患者において骨沈着を増大する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0100】
ある種の実施形態では、患者において骨沈着を増大する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0101】
一部の態様では、本発明は、患者においてCOPDを治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0102】
ある種の実施形態では、患者においてCOPDを治療するまたはその重症度を軽減する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0103】
一部の態様では、本発明は、患者において喫煙誘発性COPDを治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0104】
ある種の実施形態では、患者において喫煙誘発性COPDを治療するまたはその重症度を軽減する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0105】
一部の態様では、本発明は、患者において慢性気管支炎を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0106】
ある種の実施形態では、患者において慢性気管支炎を治療するまたはその重症度を軽減する方法は、前記患者に、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0107】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、嚢胞性線維症を治療する方法を提供し、この方法は、前記哺乳動物に、本発明の化合物を含む組成物を投与するステップを含む。
【0108】
本発明では、化合物または薬学的に許容される組成物の「有効量」は、上記で挙げた疾患、障害または状態のうちの1つまたは複数を治療するまたはその重症度を軽減するのに有効な量である。
【0109】
本発明の別の態様は、患者に、式1の化合物を含む組成物を少なくとも1日1回経口投与することにより、医薬組成物を投与する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、式1の化合物を含む医薬組成物を24時間毎に投与することを含む。別の実施形態では、この方法は、式1の化合物を含む医薬組成物を12時間毎に投与することを含む。さらなる実施形態では、この方法は、式1の化合物を含む医薬組成物を1日3回投与することを含む。なおさらなる実施形態では、この方法は、式1の化合物を含む医薬組成物を4時間毎に投与することを含む。
【0110】
化合物および組成物は、本発明の方法に従って、上記で挙げられた疾患、障害または状態のうちの1つまたは複数を治療するまたはその重症度を軽減するのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与することができる。
【0111】
ある種の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、呼吸器および非呼吸器の上皮の頂端側膜において残留CFTR活性を示す患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するために有用である。上皮表面に残留CFTR活性が存在することは、当分野で公知の方法、例えば、標準的な電気生理学的技術、生化学的技術または組織化学的技術を使用して、容易に検出し得る。このような方法は、in vivoまたはex vivoでの電気生理学的技術、汗もしくは唾液のCl濃度の測定または細胞表面密度をモニタリングするためのex vivoでの生化学的もしくは組織化学的技術を使用して、CFTR活性を同定する。このような方法を使用して、残留CFTR活性は、最も一般的な変異であるΔF508についてホモ接合性またはヘテロ接合性の患者を包含する様々な種々の変異についてヘテロ接合性またはホモ接合性の患者において容易に検出することができる。
【0112】
別の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、薬理学的方法または遺伝子療法の使用で誘発または増強される、残留CFTR活性を有する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するために有用である。このような方法は、細胞表面に存在するCFTRの量を増大させ、それによって、それまで患者に存在しなかったCFTR活性を誘発するか、または患者において残留CFTR活性の既存レベルを増強する。
【0113】
一実施形態では、本発明の化合物および組成物は、残留CFTR活性を示すある種の遺伝子型、例えば、III型変異(調節またはゲート開閉が損傷)、IV型変異(コンダクタンスが変化)またはV型変異(合成が低下)(Lee R.Choo−Kang、Pamela L.、Zeitlin、Type I,II,III,IV,and V cystic fibrosis Transmembrane Conductance Regulator Defects and Opportunities of Therapy;Current Opinion in Pulmonary Medicine 6巻:521〜529頁、2000年)に該当する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するために有用である。残留CFTR活性を示す他の患者の遺伝子型は、これらのクラスのうちの1つについてホモ接合性であるか、またはI型変異、II型変異もしくは分類されない変異を包含する任意の他のクラスの変異とヘテロ接合性である患者を包含する。
【0114】
一実施形態では、本発明の化合物および組成物は、ある種の臨床表現型、例えば、代表的には、上皮の頂端側膜における残留CFTR活性の量と相関している中程度から軽度の臨床表現型に該当する患者において嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するために有用である。このような表現型には、膵臓機能不全を示す患者または突発性膵炎および先天性両側精管欠損症もしくは軽度の肺疾患を有すると診断される患者が包含される。
【0115】
必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全身の健康状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与方法などに応じて、被験体によって変動する。本発明の化合物を好ましくは、投与の容易さおよび投薬の均質性のために、投薬単位形態で製剤化する。「投薬単位形態」という表現は、本明細書で使用される場合、治療される患者に適した薬剤の物理的に別個の単位を指す。しかしながら、本発明の化合物および組成物の合計1日使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることは理解されるであろう。任意の特定の患者または生物についての特定の有効用量レベルは、治療されている障害および障害の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路および使用される特定の化合物の排出速度;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物ならびに医学分野において周知の類似の因子を包含する様々な因子に依存する。「患者」という用語は、本明細書で使用される場合、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0116】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒトおよび他の動物に、治療されている感染の重症度に応じて経口で、直腸に、非経口で、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(散剤、軟膏剤、点眼剤またはパッチなどにより)、頬内に、経口スプレーまたは経鼻噴霧剤としてなどで投与することができる。ある種の実施形態では、本発明の化合物を、1日当たり被験体の体重当たり約0.01mg/kgから約50mg/kg、好ましくは約0.5mg/kgから約25mg/kgの投薬レベルで1日1回または複数回で経口または非経投与して、所望の治療効果を得ることができる。
【0117】
経口投与のための液体剤形には、これらに限られないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が包含される。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば水または他の溶媒などの当分野で通常使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミドなどの可溶化剤および乳化剤、オイル(詳細には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにこれらの混合物を含有してよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および芳香剤などのアジュバントを含むことができる。
【0118】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁剤は、適切な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用する公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3−ブタンジオール中の液剤としての滅菌注射用液剤、懸濁剤または乳剤であってもよい。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液(U.S.P)および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを包含する任意の無刺激性の固定油を使用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製においては使用されている。
【0119】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介しての濾過によって、または使用前に、滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0120】
本発明の化合物の効果を持続させるために、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることが、多くの場合に望ましい。このことは、水溶性の低い結晶質または非晶質物質の液体懸濁剤を使用することによって達成され得る。次いで、化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、さらにこの溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。別法では、非経口投与された化合物形態の吸収の遅延は、オイルビヒクル中に化合物を溶解または懸濁することによって達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が包含される。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロ乳剤中に化合物を捕捉することによって、調製される。
【0121】
直腸または膣投与のための組成物は好ましくは、本発明の化合物と、周囲温度では固体であるが、体温では液体であるので、直腸または膣の内腔で溶けて、活性化合物を放出するカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤または担体とを混合することによって調製することができる坐剤である。
【0122】
経口投与のための固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が包含される。このような固体剤形では、活性化合物を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体および/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアラビアゴムなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤ならびにこれらの混合物と混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0123】
類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、さらには高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤において、充填剤として使用することができる。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらは場合によって、不透明化剤を含有してよく、同様に、有効成分(複数化)を専らまたは優先的に腸管の特定の部位において、場合によって遅延して放出する組成からなってよい。使用され得る包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが包含される。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、さらには高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤において、充填剤として使用することができる。
【0124】
活性化合物はまた、上記の通りの1種または複数の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形態であってもよい。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性化合物を、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合することができる。このような剤形はまた、通常の実施の通り、不活性希釈剤以外の追加的な物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどの打錠滑沢剤および他の打錠補助剤を含んでよい。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。これらは、場合によって、不透明化剤を含有してもよく、同様に、有効成分(複数可)を専らまたは優先的に、腸管の特定の部位において、場合によって遅延して放出する組成からなってよい。使用され得る包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが包含される。
【0125】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形には、軟膏剤、ペースト、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、噴霧剤、吸入剤またはパッチが包含される。活性成分を、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体および任意の必要とされる保存剤または必要とされ得る場合は緩衝剤と混合する。眼科用製剤、点耳剤および点眼剤もまた、本発明の範囲内であることが企図されている。加えて、本発明は、経皮パッチの使用を企図しており、この経皮パッチは、身体への化合物の制御された送達を提供するという追加の利点を有する。このような剤形を、適切な媒体に化合物を溶解または分散させることによって調製する。皮膚を横断する化合物のフラックスを増大させるために、吸収増強剤もまた使用することができる。その速度は、速度制御膜を用意するか、またはポリマーマトリクスもしくはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0126】
CFTRのモジュレーターとして本発明において利用される化合物の活性は、当分野において一般に記載されている方法および本明細書中の実施例に記載されている方法に従ってアッセイすることができる。
【0127】
また、本発明の化合物および薬学的に許容される組成物を併用療法で使用することができる、すなわち、化合物および薬学的に許容される組成物を、1種または複数の他の所望の治療薬または医療手順と同時に、その前にまたはその後に投与することができることは認められるであろう。併用レジームにおいて使用するための特定の療法(治療薬または手順)の組み合わせでは、望ましい治療薬および/または手順の適合性ならびに達成されるべき望ましい治療効果が考慮されるはずである。また、使用される療法が、同じ障害に対して望ましい効果を達成し得る(例えば、本発明の化合物が、同じ障害を治療するために使用される別の薬剤と同時に投与され得る)か、またはそれらが、異なる効果(例えば、任意の有害な作用の制御)を達成し得ることも認められるであろう。本明細書で使用される場合、特定の疾患または状態を治療または予防するために通常投与される追加的な治療薬は、「治療されている疾患または状態に適している」として公知のものである。
【0128】
一実施形態では、追加的な薬剤は、粘液溶解剤、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染薬、抗炎症薬、本発明の化合物以外のCFTRモジュレーターまたは栄養剤から選択される。
【0129】
一実施形態では、追加的な薬剤は、抗生物質である。本明細書で有用な例示的な抗生物質には、トブラマイシン吸入散剤(TIP)を包含するトブラマイシン、アジスロマイシン、アズトレオナムのエアロゾル化形態を包含するアズトレオナム、そのリポソーム製剤を包含するアミカシン、吸入により投与するのに適したその製剤を包含するシプロフロキサシン、そのエアロゾル化製剤を包含するレボフラキサシン(levoflaxacin)および2種の抗生物質、例えば、ホスホマイシンとトブラマイシンとの組み合わせが包含される。
【0130】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、粘液溶解剤である。本明細書で有用な例示的な粘液溶解剤には、Pulmozyme(登録商標)が包含される。
【0131】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、気管支拡張薬である。例示的な気管支拡張薬には、アルブテロール、硫酸メタプロテネロール(metaprotenerol)、酢酸ピルブテロール、サルメテロールまたは硫酸テトラブリン(tetrabuline)が包含される。
【0132】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、肺気道表面液を回復するのに有効である。そのような薬剤は、細胞内外への塩の移動を改善して、肺気道中の粘液をより水和させ、したがって、より容易に排出することを可能にする。例示的なそのような薬剤には、高張食塩水、デヌホソル四ナトリウム([[(3S,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシオキソラン−2−イル]メトキシ−ヒドロキシホスホリル][[[(2R,3S,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソピリミジン−1−イル)−3,4−ジヒドロキシオキソラン−2−イル]メトキシ−ヒドロキシホスホリル]オキシ−ヒドロキシホスホリル]水素ホスフェート)またはブロンキトール(マンニトールの吸入製剤)が包含される。
【0133】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、抗炎症薬、即ち、肺において炎症を低減し得る薬剤である。本明細書で有用な例示的なそのような薬剤には、イブプロフェン、ドコサヘキサエン酸(DHA)、シルデナフィル、吸入グルタチオン、ピオグリタゾン、ヒドロキシクロロキンまたはシマバスタチン(simavastatin)が包含される。
【0134】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、化合物1以外のCFTRモジュレーター、即ち、CFTR活性をモジュレートする効果を有する薬剤である。例示的なそのような薬剤には、アタルレン(「PTC124(登録商標)」;3−[5−(2−フルオロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]安息香酸)、シナプルチド、ランコブチド(lancovutide)、デペレスタット(ヒト組換え好中球エラスターゼ阻害薬)、コビプロストン(7−{(2R,4aR,5R,7aR)−2−[(3S)−1,1−ジフルオロ−3−メチルペンチル]−2−ヒドロキシ−6−オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル}ヘプタン酸)または(3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸が包含される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、(3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸である。
【0135】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、栄養剤である。例示的なそのような薬剤には、Pancrease(登録商標)、Pancreacarb(登録商標)、Ultrase(登録商標)もしくはCreon(登録商標)、Liprotomase(登録商標)(旧Trizytek(登録商標))、Aquadeks(登録商標)を包含するパンクレリパーゼ(パンクレアチング(pancreating)酵素補充)またはグルタチオン吸入が包含される。一実施形態では、追加的な栄養剤は、パンクレリパーゼである。
【0136】
本発明の組成物中に存在する追加的な治療薬の量は、唯一の活性薬剤としてその治療薬を含む組成物において通常投与されるであろう量を超えないであろう。好ましくは、本開示の組成物中での追加的な治療薬の量は、唯一の治療的活性薬剤としてその薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%から100%の範囲であろう。
【0137】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される組成物はまた、プロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステントおよびカテーテルなどの移植可能な医療用デバイスをコーティングするための組成物に組み込むことができる。したがって、本発明は、別の態様では、上記で一般的に記載されていて、ならびに本明細書中のクラスおよびサブクラスにおいて記載されている本発明の化合物ならびに前記の移植可能なデバイスをコーティングするのに適した担体とを含む、移植可能なデバイスをコーティングするための組成物を包含する。さらに別の態様では、本発明は、上記で一般的に記載されていて、ならびに本明細書中のクラスおよびサブクラスにおいて記載されている本発明の化合物と前記の移植可能なデバイスをコーティングするのに適した担体とを含む組成物でコーティングされた移植可能なデバイスを包含する。適切なコーティングおよびコーティングされた移植可能なデバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。コーティングは代表的には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテートおよびこれらの混合物などの生物学的相容性ポリマー物質である。コーティングを場合によって、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはこれらの組み合わせの適切なトップコートによってさらに覆って、組成物に制御放出特性を付与することができる。
【0138】
本発明の別の態様は、生物学的試料または患者(例えば、in vitroまたはin vivo)においてCFTR活性をモジュレートすることに関し、この方法は、式Iの化合物または前記化合物を含む組成物を患者に投与するか、それらと前記生物学的試料とを接触させるステップを含む。「生物学的試料」という用語は、本明細書で使用される場合、限定ではないが、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液もしくは他の体液またはその抽出物を包含する。
【0139】
生物学的試料におけるCFTRのモジュレーションは、当業者に公知の様々な目的のために有用である。このような目的の例には、これらに限られないが、生物学的および病的現象におけるCFTRの研究;ならびにCFTRの新たなモジュレーターの比較評価が包含される。
【0140】
さらに別の実施形態では、in vitroまたはin vivoでアニオンチャネルの活性をモジュレートする方法が提供され、この方法は、前記チャネルと、式Iの化合物とを接触させるステップを含む。好ましい実施形態において、アニオンチャネルは、塩素イオンチャネルまたはビカルボネートチャネルである。他の好ましい実施形態では、アニオンチャネルは、塩素イオンチャネルである。
【0141】
別の実施形態によれば、本発明は、細胞の膜において機能性CFTRの数を増大させる方法を提供し、この方法は、前記細胞と式Iの化合物とを接触させるステップを含む。
【0142】
別の好ましい実施形態によれば、CFTRの活性は、膜貫通電位を測定することによって測定される。生物学的試料中の膜を横断する電位差を測定するための手段は、光学的膜電位アッセイまたは他の電気生理学的方法などの当分野で公知の方法のうちのいずれかを使用し得る。
【0143】
光学的膜電位アッセイは、電位/イオンプローブリーダー(VIPR)(Gonzalez,J.E.、K.Oadesら(1999年)、「Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets」、Drug Discov Today 4巻(9):431〜439頁を参照されたい)などの蛍光変化を測定するための機器と組み合わせて、GonzalezおよびTsien(Gonzalez,J.E.およびR.Y.Tsien(1995年)、「Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells.」、Biophys J 69巻(4号):1272〜80頁およびGonzalez,J.E.およびR.Y.Tsien(1997年);「Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer」、Chem Biol 4巻(4号):269〜77頁を参照されたい)により記載されている電圧感受性FRETセンサを利用する。
【0144】
これらの電圧感受性アッセイは、膜可溶性電圧感受性染料DiSBAC(3)と、形質膜の外側小葉部(outer leaflet)に結合していてFRETドナーとして作用する蛍光リン脂質CC2−DMPEとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の変化に基づく。膜電位(V)の変化は、負に荷電したDiSBAC(3)を形質膜全体に再分布させ、それに応じて、CC2−DMPEからのエネルギー移動の量が変化する。96ウェルまたは384ウェルマイクロタイタープレートにおいて細胞ベースのスクリーニングを行うように設計されている一体化した液体取り扱い機および蛍光検出器であるVIPR(商標)IIを使用して、蛍光放出の変化をモニタリングすることができる。
【0145】
一実施形態では、本発明は、生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法を提供し、この方法は、前記生物学的試料を、Rが上記の通り定義される式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む。
【0146】
一実施形態では、本発明は、生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法を提供し、この方法は、前記生物学的試料を、下記構造の化合物:
【0147】
【化22】

または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む。
【0148】
一実施形態では、本発明は、生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法を提供し、この方法は、前記生物学的試料を、下記構造の化合物:
【0149】
【化23】

または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む。
【0150】
一実施形態では、本発明は、患者において疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供し、この方法は、前記患者に、Rが上記の通り定義される有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩を投与することを含み、その際、前記疾患は、嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、肝臓疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、プロテインC欠損症などの凝固−線維素溶解欠損症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無βリポ蛋白血症などの脂質処理欠損症、I細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ−サックスなどのリソソーム蓄積症、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI、腎性DI、シャルコー・マリートゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病などの神経変性疾患、ハンチントン病、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋強直性ジストロフィーなどのいくつかのポリグルタミン神経障害、さらに遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠損に起因する)などの海綿状脳症、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患またはシェーグレン病から選択される。
【0151】
一実施形態では、この方法は、患者において疾患を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、この方法は、前記患者に、下記構造を有する化合物:
【0152】
【化24】

または薬学的に許容されるその塩を有効量で投与することによる。
【0153】
別の実施形態では、この方法は、患者において疾患を治療するまたはその重症度を軽減することを包含し、この方法は、前記患者に、下記構造を有する化合物:
【0154】
【化25】

または薬学的に許容されるその塩を有効量で投与することによる。
【0155】
別のさらなる態様では、疾患は、嚢胞性線維症である。
【0156】
別の態様では、本発明は、生物学的試料におけるCFTRまたはその断片の活性をin vitroまたはin vivoで測定する際に使用するためのキットを提供し、このキットは、(i)式Iの化合物または上記の実施形態のうちのいずれかを含む組成物;ならびに(ii)a)組成物と生物学的試料とを接触させるステップおよびb)前記CFTRまたはその断片の活性を測定するステップのための説明書を含む。
【0157】
一実施形態では、キットは、a)追加の組成物と、生物学的試料とを接触させるステップ;b)前記の追加の化合物の存在下での前記CFTRまたはその断片の活性を測定するステップおよびc)追加の化合物の存在下でのCFTRの活性を、式Iの組成物の存在下でのCFTRの密度と比較するステップのための説明書をさらに含む。
【0158】
好ましい実施形態では、キットを、CFTRの密度を測定するために使用する。
【0159】
一実施形態では、キットは、下記構造を有する化合物:
【0160】
【化26】

または薬学的に許容されるその塩を含む組成物を含む。
【0161】
一実施形態では、キットは、下記構造を有する化合物:
【0162】
【化27】

または薬学的に許容されるその塩を含む組成物を含む。
【0163】
本明細書に記載の本発明が、より完全に理解され得るように、下記の実施例を示す。これらの実施例は、例示を目的にしているに過ぎず、いかなる様式においても本発明を限定するものとは解釈され得ないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0164】
実施例
調製1:4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(26)の全合成
【0165】
【化28】

エチル4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート(25)を調製する手順
【0166】
【化29】

エタノールを除去するための表面下(subsurface)N流と共に、化合物23(4.77g、47.7mmol)を化合物22(10g、46.3mmol)に30℃未満で0.5時間滴下して加えた。次いで、溶液を100〜110℃に加熱し、2.5時間撹拌した。60℃未満に混合物を冷却した後に、ジフェニルエーテルを加えた。エタノールを除去するための表面下N流と共に、生じた溶液を、228〜232℃に加熱しておいたジフェニルエーテルに1.5時間滴下して加えた。混合物を228〜232℃でさらに2時間撹拌し、100℃未満に冷却し、次いで、ヘプタンを加えて、生成物を沈澱させた。生じたスラリーを30℃で0.5時間撹拌した。次いで、固体を濾過し、ケーキをヘプタンで洗浄し、真空乾燥させて、化合物25を茶色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 12.25 (s), δ 8.49 (d), δ 8.10 (m), δ 7.64 (m), δ 7.55 (m), δ 7.34 (m), δ 4.16 (q), δ 1.23 (t).
4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(26)を調製する手順
【0167】
【化30】

方法1
化合物25(1.0当量)をHCl(10.0当量)およびHO(11.6体積)の溶液に懸濁させた。スラリーを85〜90℃に加熱したが、別の温度もまた、この加水分解ステップに適している。例えば、加水分解は別法では、約75から約100℃の温度で行うことができる。場合によっては、加水分解を約80から約95℃の温度で行う。他では、加水分解ステップを約82から約93℃(例えば、約82.5から約92.5℃または約86から約89℃)の温度で行う。85〜90℃で約6.5時間撹拌した後に、反応物を反応の完了に関してサンプリングした。撹拌を、加水分解に適した任意の温度下で行うことができる。次いで、溶液を20〜25℃に冷却し、濾過した。反応器/ケーキをHO(2体積×2)ですすいだ。次いで、pH≧3.0になるまで、ケーキを2体積のHOで洗浄した。次いで、ケーキを真空下、60℃で乾燥させて、化合物26を得た。
【0168】
方法2
化合物25(11.3g、52mmol)を10%NaOH(水溶液)(10mL)およびエタノール(100mL)の混合物に加えた。溶液を16時間還流加熱し、20〜25℃に冷却し、次いで、8%HClを用いて、pHを2〜3に調節した。次いで、混合物を0.5時間撹拌し、濾過した。ケーキを水(50mL)で洗浄し、次いで、真空乾燥させて、化合物26を茶色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 15.33 (s), δ 13.39 (s), δ 8.87 (s), δ 8.26 (m), δ 7.87 (m), δ 7.80 (m), δ 7.56 (m).
(実施例1)
N−(2−tert−ブチル−5−ヒドロキシ−4−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(27)の全合成
化合物27を合成するスキーム全体を、続いて、各合成中間体を合成するための手順を下記に示す。
【0169】
【化31】

2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンズアルデヒド(2)を調製する手順
【0170】
【化32】

化合物1(700g、4.66mol)のCHCN(7.0L)中の撹拌溶液に、MgCl(887g、9.32mol)、パラ−ホルムアルデヒド(1190g)およびTEA(2.5L、17.9mol)をN下で加えた。混合物を5時間還流加熱した。室温に冷却した後に、氷水2Lを、続いて、3MのHCl(水溶液)6Lを混合物に加えた。溶液が透明になるまで、懸濁液を撹拌し続けた。有機層を分離し、水層をMTBE(3L×3)で抽出した。有機層を合わせ、乾固するまで濃縮した。残渣をMTBE(4000mL)に溶解し、水(1000mL×2)およびブライン(1000mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、次いで、濃縮して、化合物2を薄黄色の固体として得、これを、さらに乾燥または精製することなく、次の反応で使用した。H NMR (CDCl; 400 MHz) δ 10.86 (s), δ 9.89 (s), δ 7.59 (m), δ 7.51 (d), δ 6.94 (d), δ 10.61 (s).
2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルベンズアルデヒド(3)を調製する手順
【0171】
【化33】

化合物2(614.5g、3.33mol)のDMF(3.5L)中の撹拌溶液に、KCO(953g、6.90mol)および塩化ベンジル(480g、3.80mol)を加えた。混合物を90℃に加熱し、3時間撹拌し続けた。懸濁液を室温に冷却し、次いで、MTBE(2L)を、続いて、水(12L)を加えた。次いで、混合物を10分間撹拌し、水層を分離し、MTBE(2L×3)で抽出した。有機層を合わせ、水(2L×2)およびブライン(1.5L×1)で洗浄し、濃縮して、化合物3を薄黄色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 10.42 (s), δ 7.71 (m), δ 7.51 (m), δ 7.43 (m), δ 7.35 (m), δ 7.24 (m), δ 5.27 (s), δ 1.26 (s).
2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルベンジルアルコール(4)を調製する手順
【0172】
【化34】

化合物3(974g、3.63mol)のMeOH(4000mL)中の撹拌懸濁液に、NaBH(121g、3.20mol)を0〜20℃で徐々に加えた。溶液を15℃で3時間撹拌し続け、次いで、0℃に冷却した。2NのHCl(水溶液)(1300mL)を20℃未満で滴下して加えた。次いで、溶液を濾過し、乾固するまで蒸発させ、残渣をMTBE(5L)に溶解した。次いで、溶液を水(2L×2)およびブライン(1.5L×1)で洗浄した。溶媒を蒸発させて、化合物4を薄黄色の固体として得、これをさらに精製することなく、次の反応で使用した。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.40 (m), δ 7.32 (m), δ 7.17 (m), δ 6.91 (m), δ 5.09 (s), δ 5.00 (t), δ 4.56 (d), δ 1.26 (s).
2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルベンジルクロリド(5)を調製する手順
【0173】
【化35】

化合物4(963g、3.56mol)の無水DCM(2000mL)中の撹拌溶液に、SOCl(535g、4.5mol)を0℃で徐々に加えた。混合物を20℃で2時間撹拌し、次いで、真空濃縮して、化合物5をオイルとして得、これをさらに乾燥または精製することなく、次の反応で使用した。
【0174】
2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルベンジルニトリル(6)を調製する手順
【0175】
【化36】

化合物5(1045g、3.54mol)の無水DMF(1000mL)中の撹拌溶液に、KCN(733g、11.3mol)を加えた。混合物を35℃で24時間撹拌し、次いで、水(10L)に注いだ。酢酸エチル(4L)を加え、混合物を30分間撹拌した。次いで、有機層を分離し、水層を酢酸エチル(3000mL×2)で抽出した。有機層を合わせ、水(4L×2)およびブライン(3L×1)で洗浄し、次いで、真空濃縮して、化合物6を黄色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.51 (m), δ 7.37 (m), 7.02 (d), δ 5.17 (s), δ 3.88 (s), 1.26 (s).
2−(2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパンニトリル(7)を調製する手順
【0176】
【化37】

NaH(86g、2.15mol、鉱油中60%)のDMF(1000mL)の撹拌懸濁液に、化合物6(100.0g、0.358mol)のDMF(500mL)溶液を20℃で滴下して加えた。30分間撹拌した後に、DMF(500mL)中のMeI(205g、1.44mol)を30℃未満で2時間かけて滴下して加えた。懸濁液を25〜30℃で1.5時間撹拌し、次いで、ガスが生じなくなるまで、氷(100g)を徐々に加えた。2NのHClを徐々に加えることにより、pHを約7に調節した。混合物を水(4L)およびMTBE(2L)で希釈した。有機層を分離し、水層をMTBE(500mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、次いで、真空濃縮して、化合物7を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.56 (m), δ 7.40 (m), δ 7.34 (m), δ 7.10 (d), δ 5.21 (s), δ 1.73 (s), δ 1.27 (s).
2−(2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(8)を調製する手順
【0177】
【化38】

化合物7(20g、0.065mol)のトルエン(300mL)中の撹拌溶液に、DIBAH(80mL、トルエン中1M)を約−60〜−50℃で滴下して加えた。2時間撹拌した後に、6NのHCl(300mL)を反応混合物に加え、撹拌を30分間継続した。次いで、有機層を分離し、2NのHCl、続いて、NaHCO溶液、次いで、ブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空濃縮して、化合物8をオイルとして得た。生成物をさらに精製することなく、次の反応で使用した。H NMR (CDCl; 400 MHz) δ 9.61 (s), δ 7.36 (m), δ 7.25 (m), δ 6.87 (m), δ 5.06 (m), δ 1.43 (s), δ 1.33 (s).
2−(2−(ベンジルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オール(9)を調製する手順
【0178】
【化39】

化合物8(9.21g、0.030mol)のMeOH(150mL)中の撹拌溶液に、NaBH(2.3g、0.061mol)を0℃で徐々に加えた。混合物を20℃で3時間撹拌した後に、6NのHCl12mLを加え、混合物をさらに30分間撹拌した。次いで、溶液を元の体積の約1/4まで濃縮し、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、次いで、真空濃縮して、化合物9を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.47 (m), δ 7.42 (m), δ 7.34 (m), δ 7.28 (m), δ 7.16 (m), δ 6.94 (m), δ 5.08 (s), δ 4.45 (t), δ3.64 (d), δ 1.28 (s), δ 1.25 (s).
2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オール(10)を調製する手順
【0179】
【化40】

MeOH(200mL)中のPd(OH)(1g)および化合物9(9.26g、0.030mol)を水素下、20〜30psi圧力で16〜18時間撹拌した。次いで、混合物をCelite(登録商標)で濾過し、濾液を濃縮して化合物10を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 9.16 (s), δ 7.16 (d), δ 7.00 (m), δ 6.65 (m), δ 4.71 (t), δ 3.62 (d), δ 1.27 (s), δ 1.22 (s).
1−((メチルカルボキシ)オキシ)−2−(1−((メチルカルボキシ)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチルベンゼン(11)を調製する手順
【0180】
【化41】

化合物10(23.2g、0.10mol)、DMAP(1.44g)およびDIEA(72.8g、0.56mol)の無水DCM(720mL)中の撹拌溶液に、DCM(160mL)中のクロロギ酸メチル(43.5g、0.46mol)を0℃で滴下して加えた。混合物を20℃で16時間撹拌した後に、これを水、1NのHClおよびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc:石油エーテル)を使用して精製して、化合物11を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.32 (m), δ 7.10 (d), δ 4.26 (s), δ 3.84 (s), δ 3.64 (s), δ 1.31 (s), δ 1.28 (s).
1−((メチルカルボキシ)オキシ)−2−(1−((メチルカルボキシ)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−5−ニトロベンゼン(12)を調製する手順
【0181】
【化42】

化合物11(32g、0.095mol)のDCM(550mL)中の撹拌溶液に、98%HSO(43g、0.43mol)を0℃で滴下して加えた。0℃で20分間撹拌した後に、65%HNO(16.2g、0.17mol)を混合物に0℃で滴下して加えた。次いで、混合物を1〜10℃で4時間撹拌し、次いで、氷水(200mL)を加えた。水層を分離し、DCM(200mL×3)で抽出し、合わせた有機層を水(水溶液)、NaHCOおよびブラインで洗浄し、次いで、MgSOで乾燥させ、真空濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc:石油エーテル)を介して精製して、粗製化合物12をオイルとして得た。
【0182】
2−tert−ブチル−5−((メチルカルボキシ)オキシ)−4−(1−((メチルカルボキシ)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル)アニリン(13)を調製する手順
【0183】
【化43】

Pd/C(2.6g)および化合物12(14g、粗製)をMeOH(420mL)中、室温、水素下、20〜30psi圧力で16〜18時間撹拌した。混合物をkieselguhr(登録商標)で濾過し、濾液を真空濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:10のEtOAc:石油エーテル)を介して精製して、化合物13を灰色の固体として得た。H NMR (CDCl; 400 MHz) δ 7.26 (s), δ 7.19 (s), δ 4.26 (s), δ 3.89 (s), δ 3.74 (s), δ 1.40 (s), δ 1.35 (s).
N−(2−tert−ブチル−5−((メチルカルボキシ)オキシ)−4−(1−((メチルカルボキシ)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(14)を調製する手順
【0184】
【化44】

化合物26(5.0g、0.026mol)の無水DMF(120mL)中の撹拌溶液に、EDCI(5.6g、0.029mol)、HOBT(3.8g、0.028mol)およびDIEA(6.6g、0.051mol)を0℃で加えた。1時間撹拌した後に、混合物に化合物13(3.0g、0.008mol)のDCM(30ml)溶液を0℃で滴下して加えた。混合物を25℃で72時間撹拌し、次いで、真空濃縮した。残渣をEtOAc(225mL)に溶解し、水(120mL×1)、1NのHCl(120mL)およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:1のEtOAc:石油エーテル)を介して精製して、化合物14を白色の固体として得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ 12.34 (s, 1H), 11.58 (s, 1H), 9.07 (s, 1H), 8.42 (d, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 6.72 (s, 1H), 4.34 (s, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 1.41 (s, 9H), 1.40 (s, 6H).
N−(2−tert−ブチル−5−ヒドロキシ−4−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(27)を調製する手順
【0185】
【化45】

KOH(1.2g、0.02mol)のMeOH(80mL)中の撹拌溶液に、化合物14(1.9g、0.0036mol)を0℃で加えた。5〜15℃で2〜3時間撹拌した後に、混合物を乾固するまで濃縮した。次いで、残渣を水(10mL)中で粉砕し、濾過し、DCMで洗浄し、24時間真空乾燥させて、化合物27を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 12.77 (s), δ 8.86 (s), δ 8.20 (d), δ 7.55 (d), δ 7.42 (t), δ 7.16 (q), δ 7.02 (s), δ 6.85 (m), δ 3.55 (s), δ 1.55 (s), δ 1.35 (s), δ 1.27 (s).MS実測値(M+H) 409.2。
【0186】
(実施例2)
N−(2−tert−ブチル−5−ヒドロキシ−4−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(27)の別の全合成
【0187】
【化46】

メチル2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル)−2−メチルプロパノエート(38)を調製する手順:
【0188】
【化47】

2−ブロモ−4−tert−ブチル−5−ニトロフェノール(15.00g、54.72mmol)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(1.422g、2.783mmol)、フッ化亜鉛(2.82g、27.27mmol)、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール(MTDA)(19.35g、111.0mmol)およびジメチルホルムアミド(150mL)の混合物を70℃で18時間加熱した。混合物を室温に冷却し、水で希釈した。1時間撹拌した後に、水相をMTBEで抽出した。有機相を真空乾燥させて、粗製生成物を茶色の固体として得た。n−ヘプタン中で粉砕することにより、生成物の精製を達成した。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 10.38 (s, 1H); 7.37 (s, 1H); 6.79 (s, 1H); 3.54 (s, 3H); 1.45 (s, 6H); 1.32 (s, 9H)
4−tert−ブチル−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−5−ニトロフェノール(39)を調製する手順:
【0189】
【化48】

THF中1Mの水素化アルミニウムリチウム溶液(11.80mL、11.80mmol)をメチル2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル)−2−メチルプロパノエート(5.36g、18.15mmol)のTHF(50mL)溶液に加えた。混合物を周囲温度で3時間撹拌し、次いで、メタノールで希釈した。混合物を1NのHCl(pH1〜2)で酸性化し、水相をMTBEで抽出した。有機相を真空乾燥させて、4−tert−ブチル−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−5−ニトロフェノールを得、これをさらに精製することなく、次のステップで使用した。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 10.12 (s, 1H); 7.37 (s, 1H); 6.80 (s, 1H); 4.77 (s, 1H); 3.69−3.65 (m, 2H); 1.30 (s, 9H); 1.29 (s, 6H)
4−tert−ブチル−2−(2−メトキシカルボニルオキシ−1,1−ジメチル−エチル)−5−ニトロ−フェニル]メチルカルボネート(12)を調製する手順
【0190】
【化49】

4−tert−ブチル−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−5−ニトロフェノール(1.92g、7.18mmol)、トリエチルアミン(1.745g、17.24mmol)およびジメチルアミノピリジン(87.74mg、0.718mmol)のジクロロメタン(30mL)中の溶液に0℃で、クロロギ酸メチル(2.376g、25.14mmol)を徐々に投入し、その際、温度を5℃未満に維持した。添加の後に、混合物を周囲温度に加温し、HPLCにより出発物質の完全な変換が示されるまで、(2〜8時間)撹拌した。反応混合物を水で希釈し、1NのHClで酸性化した(pH1〜2)。水相をDCMで抽出し、合わせた有機相を真空乾燥させた。粗製のコハク色の半固体をメタノールおよびジクロロメタンから再結晶化させて、表題化合物を黄色の結晶質固体として得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 7.67 (s, 1H); 7.52 (s, 1H); 4.30 (s, 2H); 3.86 (s, 3H); 3.64 (s, 3H); 1.35 (s, 9H); 1.35 (s, 6H)
5−アミノ−4−tert−ブチル−2−(2−メトキシカルボニルオキシ−1,1−ジメチル−エチル)フェニル]メチルカルボネート(13)を調製する手順:
【0191】
【化50】

[4−tert−ブチル−2−(2−メトキシカルボニルオキシ−1,1−ジメチル−エチル)−5−ニトロ−フェニル]メチルカルボネート(1.27g、3.313mmol)およびPd/C(75mg、0.035mmol)のメタノール(50mL)中の混合物を窒素でパージした。フラスコを水素でパージした後に、混合物を周囲温度および圧力で18時間水素化した。溶液をCelite(登録商標)で濾過し、真空乾燥させて、生成物を固体として得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 6.99 (s, 1H); 6.39 (s, 1H); 4.92(s, 2H); 4.13 (s, 2H); 3.82 (s, 3H); 3.65 (s, 3H); 1.32 (s, 9H); 1.23 (s, 6H)
N−(2−tert−ブチル−5−ヒドロキシ−4−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(27)を調製する手順:
【0192】
【化51】

[5−アミノ−4−tert−ブチル−2−(2−メトキシカルボニルオキシ−1,1−ジメチル−エチル)フェニル]メチルカルボネート(103mg、0.29mmol)、4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(50mg、0.26mmol)およびピリジン(42mg、0.53mmol)の2−MeTHF(3.0mL)中の混合物に、T3Pを2−MeTHF中の50重量%溶液(286mg、0.45mmol)として投入した。混合物を50℃に18時間加熱した。周囲温度に冷却した後に、混合物を水で希釈した。有機相を分離し、再び水で洗浄した。ナトリウムメトキシド(39mg、0.72mmol)を有機相に投入し、溶液を2時間撹拌した。反応物を1NのHClでクエンチし、相を分離した後に、有機相を0.1NのHClで洗浄した。次いで、有機相を真空乾燥させて、化合物27を固体として得た。H−NMRスペクトルは、上記で報告されたものと一致した。
【0193】
(実施例3)
2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド)フェニル)−2−メチルプロパン酸(28)の全合成:
【0194】
【化52】

2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパンニトリル(15)を調製する手順
【0195】
【化53】

Pd(OH)/C(2.0g)および化合物7(20.0g、0.104mol)をMeOH(150mL)中、室温、水素下、10psi圧力で16〜18時間撹拌した。次いで、混合物をCelite(登録商標)パッドで濾過し、濾液を濃縮して、化合物15を得、これをさらに精製することなく、次の反応で使用した。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 9.83 (s), δ 7.24 (s), δ 7.18 (m), δ 6.80 (m), δ 1.71 (s), δ 1.24 (s).
4−tert−ブチル−2−(2−シアノプロパン−2−イル)フェニルメチルカルボネート(16)を調製する手順
【0196】
【化54】

化合物15(126.6g、0.564mol)、DMAP(6.0g)およびDIEA(188g、1.46mol)の無水DCM(1500mL)中の撹拌混合物に、無水DCM(300mL)中のクロロギ酸メチル(110g、1.17mol)を0℃で2時間以内で滴下して加えた。0℃で12時間撹拌した後に、氷水(1.5L)を加え、混合物を0℃で30分間撹拌した。有機層を分離し、1NのHCl、水およびブラインで洗浄した。DCM溶液をMgSOで乾燥させ、真空濃縮して、化合物16を黄色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.47 (m), δ 7.39 (d), δ 7.24 (d), δ 3.84 (s), δ 1.71 (s), δ 1.30 (s).
2−(1−アミノ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−5−ニトロフェニルメチルカルボネート(17)を調製する手順
【0197】
【化55】

化合物16(10.0g、36.3mmol)およびKNO(5.51g、54.5mmol)のDCM(1000mL)中の撹拌混合物に、98%HSO(145.4g、1.45mol)を0℃で滴下して加えた。混合物を30℃で4日間撹拌した。次いで、HSO層を分離し、氷水(50g)に注ぎ、次いで、DCM(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水、NaHCO水溶液およびブラインで洗浄し、次いで、MgSOで乾燥させ、真空濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc 20:1→10:1→5:1→3:1)を介して精製して、化合物17を黄色の固体として得た。H NMR (CDCl; 400 MHz) δ 8.05 (s), δ 7.74 (s), δ 7.61 (s), δ 7.32 (s), δ 5.32 (s), δ 3.91 (s), δ 3.92 (s), δ 1.62 (s), δ 1.59 (s), δ 1.42 (s), δ 1.38 (s).
2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル)−2−メチルプロパン酸(18)を調製する手順
【0198】
【化56】

化合物17(7.3g、21.6mmol)のメタノール(180mL)中の混合物に、水(18mL)およびNaOH(8.64g、216mmol)を加えた。溶液を加熱し、3日間還流で維持した。溶媒を真空蒸発させ、残渣を水140mLに溶解した。次いで、2NのHClを加えることにより、溶液をpH2まで酸性化した。水相を酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、合わせた有機相を水およびブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで、濃縮して、化合物18を黄色の固体として得、これをさらに精製することなく、次の反応で使用した。
【0199】
5−tert−ブチル−3,3−ジメチル−6−ニトロベンゾフラン−2(3H)−オン(19)を調製する手順
【0200】
【化57】

化合物18(7.10g、25.2mmol)の無水THF710mL溶液に、EDCI(14.5g、75.6mmol)を加えた。生じた懸濁液を30℃で一晩撹拌した。沈澱物を濾過し、DCMで十分に洗浄した。濾液を乾固するまで濃縮し、残渣をDCM(100mL)に溶解した。溶液を水(50mL×2)およびブライン(50mL×1)で洗浄した。次いで、DCM層を無水NaSOで乾燥させ、濃縮して、粗製生成物を得、これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc 200:1→100:1→50:1)を介して精製して、化合物19を白色の固体として得た。H NMR (CDCl; 400 MHz) δ 7.36 (s), δ 7.10 (s), δ 1.53 (s), δ 1.41 (s).
6−アミノ−5−tert−ブチル−3,3−ジメチルベンゾフラン−2(3H)−オン(20)を調製する手順
【0201】
【化58】

Pd/C(1.50g)および化合物19(3.00g、1.14mmol)をTHF(1500mL)に、25℃、水素下、30psiで4時間懸濁させた。次いで、混合物をCelite(登録商標)パッドで濾過し、濾液を真空濃縮して、化合物20を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 7.05 (s), δ 6.49 (s), δ 5.01 (s), δ 1.35 (s), δ 1.33 (s).
N−(5−tert−ブチル−3,3−ジメチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−6−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(21)を調製する手順
【0202】
【化59】

HATU(17.6g、46.3mol)および化合物26(8.36g、44.2mmol)の無水アセトニトリル(1L)懸濁液を室温で1時間撹拌した。化合物20(3.40g、14.6mmol)を懸濁液に加え、次いで、DIEA(11.5g、89.0mmol)を滴下して加えた。混合物を45℃で4日間撹拌した。生じた沈澱物を濾過し、DCMで十分に洗浄した。濾液を乾固するまで濃縮し、残渣をDCM(200mL)に溶解し、1NのHCl(200mL×2)で、続いて、5%NaHCO水溶液(200mL×3)で、次いで、ブライン(200mL×1)で洗浄した。次いで、混合物をNaSOで乾燥させ、真空濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl/MeOH 100:1→50:1)を介して精製して、化合物21を薄黄色の固体として得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 12.96 (d J 6.4 Hz, 1H); 12.1 (s, 1H); 8.9 (d, J 6.4Hz, 1H); 8.33 (d, J 8Hz, 1H); 7.84−7.75 (m, 2H); 7.55−7.48 (m, 3H); 1.47 (s, 6H); 1.45 (s, 9H).
2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド)フェニル)−2−メチルプロパン酸(28)を調製する手順
【0203】
【化60】

化合物21(0.9g、2.45mmol)のMeOH(50mL)の撹拌溶液に、NaOH(1.5g、37.5mmol)を0℃で加えた。40℃で16時間撹拌した後に、溶媒を真空蒸発させ、次いで、残渣をHO(50ml)に溶解した。沈澱物を濾過し、濾液をDCM(100mL×1)および酢酸エチル(100mL×1)で洗浄した。水層を2NのHClでpH1〜2まで酸性化した。沈澱物を濾過し、HO(80mL)およびヘプタン(50mL)で洗浄した。これを真空乾燥させて、化合物28を白色の固体として得た。H NMR (DMSO−d; 400 MHz) δ 12.85 (s), δ 11.84 (s), δ 11.77 (s), δ 9.39 (s), δ 8.86 (s), δ 8.33 (s), δ 7.79 (m), δ 7.52 (m), δ 7.18 (s), δ 7.09 (s), δ 1.44 (s), δ 1.40 (s).MS実測値(M+H) 423.08
(実施例4)
N−(2−tert−ブチル−5−ヒドロキシ−4−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(27)の第2の別の合成
【0204】
【化61】

50mLの3つ口丸底フラスコに、電磁攪拌機、窒素気泡管および熱電対を備え付けた。化合物21(514mg、1.27mmol)および2−MeTHF(4mL)をフラスコに投入した。反応混合物を室温で撹拌した。HPLCを使用してモニターして、変換率100%が達成されるまで、水素化アルミニウムリチウム(204mg、6.6mmol)を固体として加えた。2,3−ジヒドロキシブタンジオン酸カリウムナトリウム四水和塩(400g/L溶液を50mL)およびMTBE(50mL)を反応混合物に加えた。生じた溶液を15分間撹拌し、次いで、15分間放置した。有機層を分離し、酒石酸を加えることにより、水層のpHを約6〜7のpHに調節した。水層をMTBEで抽出した。有機層を濃縮し、高真空下で乾燥させて、表題化合物をオフホワイト色の粉末として得た。H−NMRスペクトルは、上記で報告されたものと一致した。
【0205】
(実施例5)
2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド)フェニル)−2−メチルプロパン酸(28)の別の全合成:
【0206】
【化62】

炭酸2−ブロミド,4−tertブチルフェニルエステルメチルエステル(35)を調製する手順
【0207】
【化63】

2Lの三つ口丸底フラスコに、機械攪拌機、窒素気泡管および熱電対を備え付けた。2−ブロモ−4−tertブチルフェノール(50g、211.7mmol)を、続いて、DCM(1.75L)、DMAP(1.29g、10.58mmol)およびEtN(44.3mL、317.6mmol)を加えた。反応混合物を0℃に冷却した。クロロギ酸メチル(19.62mL、254mmol)を反応混合物に滴下して加えた。撹拌しながら、混合物を室温に一晩加温した。反応が完了したら、混合物を焼結漏斗を介して濾過した。濾液を1L分液漏斗に移した。クエンチのために、1NのHCl(300mL)を濾液に加え、有機層を分離した。次いで、有機層を飽和NaHCO291mLおよび水100mLの混合物で洗浄した。層を分離したが、水層は約8のpHを有すると決定された。有機層を濃縮し、高真空下で約16時間乾燥させて、表題化合物を透明な黄色のオイルとして得、これを、さらに精製することなく次のステップで使用した。H−NMR (400MHz. DMSO−d6) 7.66 (d, J 2.0 Hz, 1H), 7.46 (dd, J 8.4, 2.0 Hz, 1H), 7.32 (d, J 8.4 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 1.28 (s, 9H)
(2−ブロモ−4−tert−ブチル−5−ニトロ−フェニル)メチルカルボネート(36)を調製する手順
【0208】
【化64】

2Lの三つ口丸底フラスコに、機械攪拌機、窒素気泡管および熱電対を備え付けた。化合物35(176g、612.9mmol)および濃硫酸(264mL)をフラスコに投入した。反応混合物を−5℃〜0℃に冷却した。硝酸(28.6mL、612.9mmol)を滴下して加え、反応混合物を0℃で2時間撹拌した。完了したら、水(264mL)を、続いて、MTBE(264mL)を加えた。溶液を15分間撹拌し、次いで、15分間放置した。有機層を分離し、濃縮し、高真空下で乾燥させて、表題化合物を暗茶色のオイルとして得、これを、これをさらに精製することなく、次のステップで使用した。H−NMR (400MHz. DMSO−d6) 7.96 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 3.89 (s, 3H), 1.34 (s, 9H)
2−ブロモ−4−tert−ブチル−5−ニトロ−フェノール(37)を調製する手順
【0209】
【化65】

(2−ブロモ−4−tert−ブチル−5−ニトロ−フェニル)メチルカルボネート(72.9g、219.5mmol)を反応器に投入し、DCM(291.6mL)を加えた。氷浴を使用して、黄色の反応溶液を冷却した。ナトリウムメトキシド(67.04g、5.4Mを69.11mL、373.2mmol)を少量ずつ2.2〜6.9℃で加えた。添加が完了した後に、反応物を周囲温度に徐々に加温した。完了したら、反応物を0℃に冷却し、1MのHCl(373.2mL、373.2mmol)でクエンチした。二相混合物を20分間撹拌し、分液漏斗に移した。有機層を分離し、水(300mL)で、続いて、ブライン(300ml)で洗浄した。有機層を濃縮し、粗製の生成物を高真空下で乾燥させた。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)分離を使用してBerger MultiGram III(Mettler Toledo AutoChem、Newark DE)で、生成物をさらに精製した。方法条件は、Princeton Chromatography製のPPUカラム(30×150)で250mL/分の20%メタノール、100バール、35C、220nmであった。55〜70mg/mL溶液の3.5mL注入物を注入した。SFC ProNTo ソフトウェアを使用して、データを集めた。SFC精製から得られた精製生成物は、メタノール溶媒和物であった。メタノールを除去するために、共沸蒸留を行った。暗黄色の固体である2−ブロモ,4−tertブチル,5−ニトロフェノールメタノール溶媒和物、(111.3g、.59.9mmol)を1L丸底フラスコに投入し、続いて、ヘプタン(500mL)を投入した。スラリーを64℃に加熱して、透明な溶液を得た。溶媒を減圧下(649mbar)で30分間蒸留し、次いで、乾固するまでストリッピングした。MeOHがH−NMRにより検出されなくなるまで、この手順を3回繰り返した。生成物を高真空下で16時間乾燥させて、生成物を暗黄色の半固体として得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 11.2 (bs, OH), 7.69 (s, 1H); 7.03 (s, 1H); 1.30 (s, 9H)
5−tert−ブチル−3,3−ジメチル−6−ニトロベンゾフラン−2(3H)−オン(19)を調製する手順
【0210】
【化66】

ジフルオロ亜鉛(6.093g、58.92mmol)を丸底フラスコに加え、これを窒素でフラッシュした。次いで、Pd(tBuP)(2g、3.835mmol)を窒素流下で加えた。次いで、DMF(80.75mL)に溶解した2−ブロモ−4−tert−ブチル−5−ニトロ−フェノール(16.15g、58.92mmol)をフラスコに加えた。反応混合物は、オレンジ色の懸濁液であった。(1−メトキシ−2−メチル−プロパ−1−エノオキシ)トリメチルシラン(21.61g、25.13mL、117.8mmol)を混合物に加え、生じた混合物を80℃に加熱し、16時間撹拌した。完了したら、反応混合物を周囲温度に冷却し、Celite(登録商標)で濾過した。フィルターケーキをMTBE(536.0mL)で洗浄し、水(893.3mL)を濾液に加えた。混合物を15分間撹拌し、さらに15分間沈降させた。層を分離し、0.5MのHCl(500mL、250.0mmol)を有機相に加えた。層を分離し、有機層を水(500mL)で洗浄した。層を分離し、有機層をNaCl(500mL;8重量%)で洗浄した。有機層を分離し、溶媒を真空中で除去した。粗製の生成物が茶色の結晶質固体として得られ、次いでこれをシリカプラグで、溶離剤としてヘキサン:MTBEの20:1〜10:1を使用して精製した。生成物を含有するフラクションを合わせ、溶媒を真空除去して、純粋な生成物を白色の結晶質固体として得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 7.80 (s, 1H); 7.62 (s, 1H); 1.49 (s, 6H); 1.34 (s, 9H)
6−アミノ−5−tert−ブチル−3,3−ジメチルベンゾフラン−2(3H)−オン(20)を調製する手順
【0211】
【化67】

炭素上のパラジウム(湿潤;5重量%)を丸底フラスコに窒素流下で入れた。次いで、5−tert−ブチル−3,3−ジメチル−6−ニトロ−ベンゾフラン−2−オン(4.7g、17.85mmol)を容器に加えた。次いで、窒素雰囲気下で、メタノール(120mL)を容器に慎重に投入した。次いで、容器をNでパージし、排気し、次いで、水素ガスを投入した。容器を排気し、水素ガスを再投入し、次いで、連続的な水素ガス流を導入した。完了の後に、反応物をCelite(登録商標)で濾過し、ケーキをMeOH(300ml)で洗浄した。溶媒を真空中で除去し、生成物を高真空下で乾燥させて、白色の結晶質固体を得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 7.05 (s, 1H); 6.48 (s, 1H); 5.02 (s, 2H, NH); 1.34 (s, 6H); 1.30 (s, 9H)
N−(5−tert−ブチル−3,3−ジメチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−6−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(21)を調製する手順
【0212】
【化68】

反応容器に、化合物26(2.926g、15.43mmol)、化合物20(4.32g、18.52mmol)、2−MeTHF(35.99mL)を、続いて2−MeTHF中50%のTP(13.36g、21.00mmol)を投入した。ピリジン(2.441g、2.496mL、30.86mmol)を加え、懸濁液を47.5℃±5℃で18時間加熱した。完了の後に、反応物を周囲温度に冷却し、2−MeTHF(36)および水(30ml)を加えた。層を分離し、有機層を10重量%のクエン酸溶液(30ml)、水(30ml)で、およびNaHCO(20ml)で2回洗浄した。有機層をブライン(50ml)で洗浄し、分離し、溶媒を真空除去した。粗製の生成物をMTBE(100ml)に溶解し、ヘキサン(200ml)を貧溶媒として加えた。固体が沈澱し、生じたスラリーを2時間撹拌した。吸引濾過により固体を集め、ケーキをヘキサンで洗浄した。生じた生成物を真空炉中、55℃で、窒素ブリードを用いて乾燥させて、表題化合物をベージュ色の固体として得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 12.96 (d J 6.4 Hz, 1H); 12.1 (s, 1H); 8.9 (d, J 6.4Hz, 1H); 8.33 (d, J 8Hz, 1H); 7.84−7.75 (m, 2H); 7.55−7.48 (m, 3H); 1.47 (s, 6H); 1.45 (s, 9H).
2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド)フェニル)−2−メチルプロパン酸(28)を調製する手順
【0213】
【化69】

化合物26(81.30mg、0.4288mmol)および化合物20(110mg、0.4715mmol)を丸底フラスコに投入した。次いで、2−MeTHF(1mL)を、続いて、2−MeTHF中50%のTP(371.4mg、0.5836mmol)および2−MeTHF中のピリジン(67.84mg、69.37μL、0.8576mmol)を加えた。懸濁液を47.5℃±5℃で一晩加熱した。完了の後に、反応物を周囲温度に冷却した。2−MeTHF(1.014mL)および水(811.2μL)を加えた。層を分離し、有機層を水(811.2μL)で、またNaHCO(2ml)で2回洗浄した。有機層を丸底フラスコに移した。水(2mL)に溶解したLiOH(38.6mg、0.9mmol)を加え、反応物を45℃に加熱した。完了の後に、層を分離し、有機層を廃棄した。水層を氷浴で冷却し、pHが約3〜4のpHに達するまで、塩酸(1.0Mを10.72mL、10.72mmol)を溶液に加えた。水層を2−MeTHF(5ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、ブライン(5ml)で洗浄した。有機層を分離し、溶媒を真空中で除去した。生じた固体を真空炉中、窒素ブリードを用いて50℃で乾燥させて、表題化合物を得た。H−NMR (400MHZ, DMSO−d6) δ 12.89 (d, J 6.8 Hz, 1H); 11.84 (s, 1H); 11.74 (s, 1H); 9.36 (s, 1H); 8.87−8.61 (d, J 6.4 Hz ,1H); 8.34−8.32 (d, J 9.1 Hz 1H); 7.83−7.745 (m, 2H); 7.17−7.09 (m, 1H); 7.17 (s, 1H); 7.09 (s, 1H); 1.43 (s, 6H); 1.40 (s, 9H)
(実施例6)
N−(2−tert−ブチル−5−ヒドロキシ−4−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)フェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(27)および2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−4−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド)フェニル)−2−メチルプロパン酸(28)を生合成する手順
【0214】
【化70】

Streptomyces rimosus(DSM 40260)を、DSMZから冷凍培養物として購入した。この培養物を斜面寒天に接種するために使用し、その斜面寒天を、4℃で維持および貯蔵した。酵母エキス(4g/L)、麦芽エキス(10g/L)およびダイズ粉(5g/L)を含有する酵母エキス−麦芽エキスペプトン(YMP)培地を調製し、130℃で60分間滅菌した。YMP培地1Lを含有する5つのフラスコに直接、斜面寒天からのS.rimosusを接種した。30℃で、約100rpmで穏やかにかき混ぜながら2〜3日間培養物を増殖させた。これらの条件下で、濁った溶液か、またはフラスコの底部に凝集している球状微粒子である2種の増殖タイプが観察された。後者の増殖タイプは、化合物27へのより高い変換をもたらすことが判明している。次いで、細胞を遠心分離し、収集し、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1Lを含有する2つのフラスコに再懸濁させた。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50mL中の化合物34 5.0gをフラスコに加えた。反応を、約100rpmで穏やかにかき混ぜながら30℃で24時間進行させると、この時点で、化合物27 7.59%および化合物28 1.17%の変換率がHPLCにより示された。
【0215】
両方のフラスコを合わせ、3500rpmで10分間遠心分離し、メタノール500mLに再懸濁させた。この懸濁液を30分間激しく撹拌し、次いで再び、6000rpmで10分間遠心分離した。有機層を集め、このプロセスを2回繰り返した。メタノール抽出物を真空濃縮して、固体物質をそれぞれ2.50g、1.57gおよび1.11g得た。これらの抽出物からの固体は、化合物34 74.78〜91.96%、化合物27 7.66〜19.73%および化合物28 0.39〜5.49%を含有することが判明した。生物的酸化生成物から化合物34部分を選び出そうとする場合には、初めの2回の抽出からの固体を合わせ、メタノール250mLに懸濁させ、1時間激しくかき混ぜ、真空濾過した。化合物27および28が濾液中で濃縮される一方で(それぞれ22.09%および6.14%)、固体も同様になお、化合物27(8.96%)および化合物28(0.50%)を含有した。
【0216】
溶解した固体を約2.2g含有するメタノール濾液をシリカ4.5gに吸着させ、フラッシュクロマトグラフィーにより、100%ジクロロメタンから88:12のジクロロメタン/メタノールへの勾配を使用して精製した。化合物27を含有するフラクションを真空濃縮し、凍結乾燥を介してさらに乾燥させて、化合物27(HPLCによると純度98.5%)130mgを得た。不純な化合物28を含有するフラクションもまた真空濃縮して、固体10mg未満を得た。
【0217】
細胞ペレットをメタノール500mLに再懸濁させ、BeadBeater中で均質化して、細胞をバラバラに壊し、残った生成物があればそれを回収した。均質化された懸濁液を6000rpmで10分間遠心分離することにより、有機層を得た。これを、3回目の抽出から得られた固体および初めの2回の抽出のスラリー濃縮物から濾過された固体に加え、還流下で一晩スラリー化した。次いで、スラリーを冷却し、吸引濾過して、固体1.99gを得た。固体をメタノール300mLに再溶解させ、次いでこれを、シリカ約5gに吸着させ、フラッシュクロマトグラフィーにより、100%ジクロロメタンから94:6のジクロロメタン/メタノールへの勾配を使用して精製して、化合物34および化合物27、さらに他の不純物を含有する固体820mgを得た。これを、さらなる段階的な溶媒勾配(100%DCMから6%MeOH/94%DCMの混合物まで)を使用して再カラム処理して、化合物27をさらに89mg得た。H−NMRスペクトルは、上記で報告されたものと一致した。
【0218】
(実施例7)
pH7.4での溶解性を試験するための一般的手順
高スループットフラスコ振盪アッセイを使用して、pH7.4緩衝液中への化合物の溶解性を決定した。溶液中での化合物の濃度を算出するために、化合物1種当たり2つの条件に供した:100%DMSO中300μMおよび2%DMSOの存在を伴うpH7.4リン酸緩衝液中200μM。各試料を一晩振盪させ、次いで、HPLC−UVに注入し、次の条件を使用してピーク面積を決定した:Phenomenex 00A−4251−B0−30×2.00mm Luna 3u C18(2)100Aカラム;流速0.8mL/分;注入体積20μL;0.1%のギ酸を含むHPLCグレードの水および0.1%のギ酸を含むHPLCグレードのアセトニトリル移動相;ピーク面積は254nmで決定。次の式:濃度=(ピーク面積 pH7.4)/(ピーク面積 300μMのDMSO標準条件)×標準条件の300μM濃度を使用して、溶解性をμMで算出した。該当するピークを緩衝液条件において、300μMのDMSO標準条件での最大面積ピークの保持時間(RT)を元に同定した。
【0219】
活性アッセイ
(実施例8)
活性アッセイのための一般的手順
化合物のΔF508−CFTR増強特性を検出および測定するためのアッセイ
化合物のΔF508−CFTRモジュレーション特性をアッセイするための膜電位光学的方法
NIH 3T3細胞において機能性ΔF508−CFTRの増加についての読出しとして蛍光プレートリーダー(例えば、FLIPR III、Molecular Devices,Inc.)を使用して膜電位の変化を測定するために、このアッセイは蛍光電圧検出色素を利用する。応答の駆動力は、細胞を化合物で予め処理し、続いて電圧検出色素を負荷した後に、単一の液体を添加するステップによってチャネルを活性化させることに関連して、塩素イオン勾配が生じることである。
【0220】
増強因子化合物の特定
ΔF508−CFTRの増強因子を特定するために、二重添加HTSアッセイフォーマットを開発した。このHTSアッセイは、温度補正されたΔF508 CFTR NIH 3T3細胞におけるΔF508 CFTRの開閉(伝導性)の増加についての測定値としてFLIPR IIIで膜電位の変化を測定するために、蛍光電圧検出染料を利用する。応答のための駆動力は、細胞を増強因子化合物(またはDMSOビヒクル対照)で予め処理し、続いて、再分布色素を負荷した後に、FLIPR IIIなど蛍光プレートリーダーを使用して単一の液体を添加するステップにおいてフォルスコリンでチャネルを活性化させることに関連したClイオン勾配である。
【0221】
溶液
浴溶液#1:(mMで)160のNaCl、4.5のKCl、2のCaCl、1のMgCl、10のHEPES、pH7.4(NaOHで)。
【0222】
塩素イオン不含有浴溶液:浴溶液#1中の塩化物塩を、グルコン酸塩で置換する。
【0223】
細胞培養
ΔF508−CFTRを安定発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、膜電位の光学的測定のために使用する。細胞を、37℃、CO5%および湿度90%中、2mMのグルタミン、10%のウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strepおよび25mMのHEPESを補充されたダルベッコ変法イーグル培地中、175cm培養フラスコ内で維持した。全ての光学的アッセイに関して、細胞を、384ウェルマトリゲルコーティングプレートに、約20000/ウェルで播種し、37℃で2時間培養し、その後、増強因子アッセイのために27℃で24時間培養した。補正アッセイのために、細胞を27℃または37℃で、化合物と共に、および化合物を伴わずに16〜24時間培養する。化合物のΔF508−CFTRモジュレーション特性をアッセイするための電気生理学的アッセイ。
【0224】
1.Ussingチャンバーアッセイ
光学アッセイにおいて特定したΔF508−CFTRモジュレーターをさらに特徴付けるために、Ussingチャンバー実験をΔF508−CFTRを発現する分極した気道上皮細胞で行った。非CF気道上皮およびCF気道上皮を、気管支組織から単離し、既に記載されている通りに培養し(Galietta,L.J.V.、Lantero,S.、Gazzolo,A.、Sacco,O.、Romano,L.、Rossi,G.A.およびZegarra−Moran,O.(1998年)、In Vitro Cell.Dev.Biol.34巻、478〜481頁)、NIH3T3順化培地を予めコーティングしたCostar(登録商標)Snapwell(商標)フィルター上に播種した。4日後、頂端側培地を除去し、使用する前に、細胞を気相液相界面で>14日間増殖させた。これは、気道上皮に特徴的な形態である十分に分化した線毛円柱細胞の単層を生じた。非CF HBEを、既知の肺疾患を何ら有さない非喫煙者から単離した。CF−HBEを、ΔF508−CFTRについてホモ接合性の患者から単離した。
【0225】
Costar(登録商標)Snapwell(商標)細胞培養挿入物上で増殖させたHBEを、Ussingチャンバー(Physiologic Instruments,Inc.、San Diego,CA)に置き、基底側から頂端側へのCl勾配(ISC)の存在下で経上皮抵抗および短絡電流を、電圧−クランプシステム(Department of Bioengineering,University of Iowa、IA)を使用して測定した。簡潔には、HBEを電圧−クランプレコーディング条件(Vhold=0mV)下で、37℃で試験した。基底側溶液は(mM単位で)145のNaCl、0.83のKHPO、3.3のKHPO、1.2のMgCl、1.2のCaCl、10のグルコース、10のHEPES(NaOHでpHを7.35に調節)を含有し、頂端側溶液は(mM単位で)145のグルコン酸Na、1.2のMgCl、1.2のCaCl、10のグルコース、10のHEPES(NaOHでpHを7.35に調節)を含有した。
【0226】
増強因子化合物の特定
代表的なプロトコルは、基底側から頂端側への膜Cl濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、通常のリンゲル液を基底側膜では使用したが、それに対して、頂端側NaClを、等モルのグルコン酸ナトリウム(NaOHでpH7.4に滴定)に置き換えて、上皮を横断する大きなCl濃度勾配を得た。フォルスコリン(10μM)および全ての試験化合物を、細胞培養挿入物の頂端側に添加した。推定ΔF508−CFTR増強因子の効力を、既知の増強因子ゲニステインのものと比較した。
【0227】
2.パッチ−クランプレコーディング
ΔF508−NIH3T3細胞における全Cl電流を、既に記載されている通りの穿孔パッチレコーディング配置を使用してモニタリングした(Rae,J.、Cooper,K.、Gates,P.およびWatsky,M.(1991年)、J.Neurosci.Methods 37巻、15〜26頁)。電圧−クランプレコーディングを、Axopatch 200Bパッチ−クランプ増幅器(Axon Instruments Inc.、Foster City、CA)を使用して22℃で行った。ピペット液は(mM単位で)、150のN−メチル−D−グルカミン(NMDG)−Cl、2のMgCl、2のCaCl、10のEGTA、10のHEPESおよび240μg/mlのアンホテリシン−B(HClでpHを7.35に調節)を含有した。細胞外培地は(mM単位で)、150のNMDG−Cl、2のMgCl、2のCaCl、10のHEPES(HClでpHを7.35に調節)を含有した。パルス発生、データ獲得および分析を、Clampex 8(Axon Instruments Inc.)と共にDigidata 1320 A/Dインターフェースを備えたPCを使用して行った。ΔF508−CFTRを活性化させるために、10μMのフォルスコリンおよび20μMのゲニステインを浴に添加し、電流−電圧関係を、30秒毎にモニタリングした。
【0228】
増強因子化合物の特定
ΔF508−CFTRを安定発現するNIH3T3細胞においてΔF508−CFTR増強因子が巨視的なΔF508−CFTR Cl電流(IΔF508)を増大する能力もまた、穿孔パッチレコーディング技術を使用して調査した。光学的アッセイから特定された増強因子は、光学的アッセイにおいて観察された類似の有効性および効力と共に、IΔF508において用量依存性上昇をもたらした。試験した全ての細胞において、増強因子適用の前およびその間の逆転電位は、約−30mVであり、これは、算出されたECl(−28mV)であった。
【0229】
細胞培養
ΔF508−CFTRを安定発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、全細胞レコーディングのために使用する。細胞を、37℃、CO5%および湿度90%中、2mMのグルタミン、10%のウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strepおよび25mMのHEPESを補充されたダルベッコ変法イーグル培地中、175cm培養フラスコ内で維持する。全細胞レコーディングに関して、2500〜5000細胞を、ポリ−L−リジンコーティングしたガラス製カバースリップ上に播種し、増強因子の活性を試験するために使用する前に、27℃で24〜48時間培養し;補正因子(corrector)の活性を測定するために、補正化合物と共に、または補正化合物を伴わずに37℃でインキュベートした。
【0230】
3.単一チャネルレコーディング
wt−CFTRおよびNIH3T3細胞において発現される温度補正されたΔF508−CFTRの開閉活性を、既に記載されている通り(Dalemans,W.、Barbry,P.、Champigny,G.、Jallat,S.、Dott,K.、Dreyer,D.、Crystal,R.G.、Pavirani,A.、Lecocq,J−P.、Lazdunski,M.(1991年)、Nature 354号、526〜528頁)、Axopatch 200Bパッチ−クランプ増幅器(Axon Instruments Inc.)を使用し、切取りインサイドアウト膜パッチレコーディングを使用して観察した。ピペットは(mMで):150のNMDG、150のアスパラギン酸、5のCaCl、2のMgClおよび10のHEPES(トリス塩基でpHを7.35に調節)を含有した。浴は(mM単位で):150のNMDG−Cl、2のMgCl、5のEGTA、10のTESおよび14のトリス塩基(HClでpHを7.35に調節)を含有した。切取った後、1mMのMg−ATP、75nMのcAMP依存性プロテインキナーゼの触媒サブユニット(PKA;Promega Corp.Madison、WI)および10mMのNaFを添加して、プロテインホスファターゼを阻害することによって、wt−CFTRおよびΔF508−CFTRの両方を活性化させたが、これは、電流停止を防止した。ピペット電位を80mVで維持した。チャネル活性を、≦2の活性チャネルを含有する膜パッチから分析した。実験経過の間、同時開口の最大数が活性チャネルの数を決定した。単一チャネル電流振幅を決定するために、ΔF508−CFTR活性の120秒からレコーディングされたデータを、100Hzで「オフライン」でフィルタリングし、次いで、Bio−Patch Analysisソフトウェア(Bio−Logic Comp.France)を使用して、多重ガウス関数と適合させた全点振幅のヒストグラムを構築するために使用した。全微視的電流および開口確率(P)を、チャネル活性の120秒から決定した。Pを、Bio−Patchソフトウェアを使用して、または関係式P=I/i(N)(式中、I=平均電流、i=単一チャネル電流振幅、およびN=パッチにおいて活性なチャネルの数)から決定した。
【0231】
細胞培養
ΔF508−CFTRを安定発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、切取り膜パッチ−クランプレコーディングのために使用する。細胞を、37℃、CO5%および湿度90%中、2mMのグルタミン、10%のウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strepおよび25mMのHEPESを補充されたダルベッコ変法イーグル培地中、175cm培養フラスコ内で維持する。単一チャネルレコーディングに関して、2500〜5000細胞を、ポリ−L−リジンコーティングされたガラス製カバースリップ上に播種し、使用前に、27℃で24〜48時間培養した。
【0232】
化合物27および28を、溶解性に関しては実施例3に示されている手順を使用して、そして活性に関しては実施例4のアッセイに示されている手順を使用して試験した。結果を表1に示す。化合物活性は、EC50(またはIC50)が2.0μM未満であると測定された場合には「+++」で、活性が2μMから5.0μMであると測定された場合には「++」で、活性が5.0μMを超えると測定された場合には「+」で、そしてデータが得られなかった場合には「−」で示されている。効力は、効力が100%を超えると算出された場合には「+++」で、効力が100%から25%であると算出された場合には「++」で、効力が25%未満であると算出された場合には「+」で、そしてデータが得られなかった場合には「−」で示されている。
【0233】
【表1】

他の実施形態
個々の刊行物または特許出願がそれぞれ具体的におよび個別に参照により援用されると示されているのと同じ程度で、本開示に挙げられている刊行物および特許は全て、参照により本明細書に援用される。参照により援用される特許または刊行物のいずれかにおける用語の意味が、本開示において使用されている用語の意味と矛盾する場合には、本開示における用語の意味が支配的であることが意図されている。さらに、前記説明は、本発明の単なる例示的実施形態を開示および記載している。当業者であれば、そのような説明および添付の図面および特許請求の範囲から、下記の特許請求の範囲で定義されている本発明の意図および範囲から逸脱することなく、様々な変化、変更および変法を本発明の範囲内において行うことができることを容易に理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化71】

または薬学的に許容されるその塩
[式中、Rは、COOHまたはCHOHである]。
【請求項2】
RがCHOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
RがCOOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下式の構造の化合物:
【化72】

または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
下式の構造の化合物:
【化73】

または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの化合物と;
薬学的に許容される担体またはアジュバントとを
含む医薬組成物。
【請求項7】
下式の構造を有する化合物:
【化74】

と薬学的に許容される担体またはアジュバントとを含む医薬組成物。
【請求項8】
下式の構造を有する化合物:
【化75】

と薬学的に許容される担体またはアジュバントとを含む医薬組成物。
【請求項9】
粘液溶解剤、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染薬、抗炎症薬、CFTRモジュレーターまたは栄養剤から選択される追加的な薬剤をさらに含む、請求項6から8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法であって、前記生物学的試料を、請求項1に記載の式Iの化合物と接触させるステップを含む方法。
【請求項11】
生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法であって、前記生物学的試料を、下式の構造の化合物:
【化76】

または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む方法。
【請求項12】
生物学的試料においてCFTR活性をモジュレートする方法であって、前記生物学的試料を、下式の構造の化合物:
【化77】

または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む方法。
【請求項13】
患者において疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法であって、前記患者に有効量の請求項1に記載の式Iの化合物を投与することを含み、ここで、前記疾患は、嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、肝臓疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、プロテインC欠損症などの凝固−線維素溶解欠損症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無βリポ蛋白血症などの脂質処理欠損症、I細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ−サックスなどのリソソーム蓄積症、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI、腎性DI、シャルコー・マリートゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病などの神経変性疾患、ハンチントン病、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋強直性ジストロフィーなどのいくつかのポリグルタミン神経障害、さらに遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠損に起因する)などの海綿状脳症、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患またはシェーグレン病から選択される方法。
【請求項14】
前記式Iの化合物が下式の構造:
【化78】

を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式Iの化合物が下式の構造:
【化79】

を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記疾患が嚢胞性線維症である、請求項13から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
生物学的試料においてCFTRまたはその断片の活性をin vitroまたはin vivoで測定する際に使用するためのキットであって、
i.請求項1に記載の式Iの化合物を含む組成物;ならびに
ii.説明書であって
a.前記組成物と前記生物学的試料とを接触させるステップ;および
b.前記CFTRまたはその断片の活性を測定するステップ
のための説明書を含むキット。
【請求項18】
i.追加の化合物と、前記生物学的試料とを接触させるステップ;
ii.前記の追加の化合物の存在下での前記CFTRまたはその断片の活性を測定するステップ;および
iii.前記追加の化合物の存在下での前記CFTRまたはその断片の活性を、式Iの組成物の存在下での前記CFTRまたはその断片の活性と比較するステップ
のための説明書をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記CFTRまたはその断片の活性を比較する前記ステップが、前記CFTRまたはその断片の密度の測定値をもたらす、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記式Iの化合物が下式の構造:
【化80】

を有する、請求項17から19のいずれかに記載のキット。
【請求項21】
前記式Iの化合物が下式の構造:
【化81】

を有する、請求項17から19に記載のキット。

【公表番号】特表2012−521361(P2012−521361A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501021(P2012−501021)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/028062
【国際公開番号】WO2010/108155
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】