説明

回動軸線のまわりに回動可能なフラップの回動装置

【課題】フラップを閉じたときに確実に一様な隙間が形成されるようにしてヒンジの磨耗を低減させるようにする、フラップを回動させるための低コストの装置を提案する。
【解決手段】回動軸線のまわりに回動可能なフラップ(4)、特に自動車のフラップを回動させるための装置であって、前記フラップ(4)の片側に配置される第1の操作装置(10)と、フラップ(4)の反対側に配置される第2の操作装置(13)とを備え、両操作装置(10,13)はフラップ調整距離の第1の部分で実質的に同じ駆動力を有し、フラップ調整距離の第2の部分で実質的に異なる駆動力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動軸線のまわりに回動可能なフラップ、特に自動車のフラップを回動させるための装置であって、フラップの片側に配置される第1の操作装置と、フラップの反対側に配置される第2の操作装置とを備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は長年にわたって自動車産業で使用されている。フラップ、特に自動車に使用するためのリヤフラップには、パワーアシストのために好ましくは引張りばね、圧縮ばね、またはガススプリングが装備される。リヤフラップの快適な開閉を可能にするパワーアシスト以外に、ガススプリングまたはガスダンパーによる速度制御、緩衝力補助も提供される。
【0003】
リヤフラップに適用する際、パワーアシスト用の引張りばね(エネルギーアキュムレータ)と開口運動を制御するためのガススプリングまたはガスダンパーとを同時に使用すると、これらの要素は互いに反作用する。その際にヒンジに作用する力は、引張りばね力とダンパー力との差である。リヤフラップに適用する際には2つのばねを使用するのが好ましく、すなわちヒンジ片側につき1つのばねを使用するのが好ましい。緩衝用には1つのガススプリングまたは1つのダンパーで十分である。これは、ヒンジ片側では緩衝力を差し引いた引張りばね力が作用し、他のヒンジ側では引張りばね力だけが作用することを意味する。このように異なる作用力がヒンジに対して作用するため、リヤフラップに反りを生じさせ、リヤフラップを閉じたときに隙間寸法が異なってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上述の欠点を解消し、フラップを閉じたときに確実に一様な隙間が形成されるようにしてヒンジの磨耗を低減させるようにする、フラップを回動させるための低コストの装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、両操作装置がフラップ調整距離の第1の部分で実質的に同じ駆動力を有し、フラップ調整距離の第2の部分で実質的に異なる駆動力を有していることによって解決される。
【0006】
この場合、フラップ調整距離の第1の部分が、フラップが閉じるときのフラップ調整距離に実質的に対応している領域に対応しているように構成してよい。
【0007】
あるいは、フラップ調整距離の第1の部分が、フラップが完全に開くときのフラップ調整距離に実質的に対応している領域内まで延在しているように構成してもよい。
【0008】
本発明によれば、前記操作装置はそれぞればね装置を含む。
【0009】
本発明によれば、前記操作装置のうち一方の操作装置は、引張り力を持つばね装置と、圧縮力を持つピストンシリンダアッセンブリとを含む。
【0010】
ピストンシリンダアッセンブリがガススプリングを含んでいると好ましい。
【0011】
あるいは、ピストンシリンダアッセンブリがダンパーを含んでいてもよい。ダンパーは
押し出し力も提供することができる。
【0012】
他の有利な実施態様によれば、ピストンシリンダアッセンブリはその圧縮力に反作用するばね装置を含む。
【0013】
ピストンシリンダアッセンブリのばね装置がフラップ調整距離の第1の部分に対応する領域で作用すると有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、車体2とトランクルーム3を閉鎖させるフラップ4とを備えた自動車1を示している。フラップ4は、2つの回動用湾曲体5と6および車体2に配置されている2つの回動用ヒンジ7と8を介して、回動軸線9のまわりを回動可能に枢着されている。
【0016】
第1の操作装置10は、その一方の端部において回動用湾曲体5に設けられたトランクルーム3内部の接続要素11と、当該操作装置10の接続要素11とは逆側の端部に配置されたトランクルーム内部の他の接続要素12とによって、車体2に回転運動可能に係止されている。第2の操作装置13は、その一方の端部において回動用湾曲体6に設けられたトランクルーム3内部の接続要素14と、当該操作装置13の接続要素14とは逆側の端部に配置されたトランクルーム内部の他の接続要素15とによって、車体2に回転運動可能に係止されている。
【0017】
第1の操作装置10は、コイル引張りばねとして形成されたばね装置16と、該ばね装置16によって取り囲まれているピストンシリンダアッセンブリ17と、を含んでおり、第2の操作装置13は、同様にコイル引張りばねとして形成されたばね装置18を含んでいると好ましい。
【0018】
図2に示した操作装置10は、好ましくは加圧状態にある液体で充填されたシリンダ19と、該シリンダ19を第1の作業室20と第2の作業室21とに分割するピストン22と、該ピストン22に固定され、第1の作業室20と案内密封パック24とを貫通してシリンダ19から突出するピストン棒23と、を備えるピストンシリンダアッセンブリ17を有する。
【0019】
ピストンシリンダアッセンブリ17は絞り装置を有し、該絞り装置は、ピストン22に設けた図示していない管路または穴および/またはシリンダ19の内面で軸線方向に延在している1個または複数個の溝によって設けられる。
【0020】
ピストン棒23の自由端にはばね受容部25が配置され、シリンダ19の、ピストン棒23の自由端とは逆側の端部には他のばね受容部26が配置されている。ばね装置16は、これらのばね受容部を介してピストンシリンダアッセンブリ17と結合される。さらにピストン棒23の自由端にはねじ山28が形成され、またシリンダの端部にはねじ山29が形成されており、これらのねじ山に、図1に図示した接続要素11と12(たとえばボールソケットまたはヒンジアイとして形成されている)を螺合させることができる。
【0021】
案内密封パック24とピストン22との間にはばね装置27が配置されている。ばね装置27は、たとえば、コイル圧縮ばねと、ピストンシリンダアッセンブリ17の圧縮力または押し出し力に反作用する1個または複数個の皿ばねまたは他の弾性要素とを含んでいる。
【0022】
図3は、力の経過とフラップ調整距離との関係を示すグラフである。グラフの左側、すなわち弾性力が最小になっている側は、フラップ4が開いた状態に相当しており、グラフの右側、すなわちばね力が最大になっている側は、フラップ4の閉じた状態に相当している。力曲線30は第1の操作装置10に配置されているピストンシリンダアッセンブリ17の力の経過を示し、力曲線31は第1の操作装置10の力の経過、すなわちばね装置16とピストンシリンダアッセンブリ17の力の経過を示し、力曲線32は第2の操作装置13の力の経過を示している。力曲線32と31の力の値の差が力曲線30の力の値に相当していることは明らかである。
【0023】
図4は、力の変化または力曲線30と32を、図3に図示した力曲線と同一の符号により対応させたグラフを示している。しかし、力曲線31はピストンシリンダアッセンブリ内にばね装置27が組み込まれた第1の操作装置10の力の経過を示している。なお、力曲線部分31a,31b,31cは異なるばね装置27の力の経過に対応している。
【0024】
力曲線部分31bを示すばね装置27は、ピストン22がシリンダ19に配置されているねじ山29の方向に移動したときにピストンに作用し、力曲線部分31aを示すばね装置27よりも長い距離にわたって力を行使する。力曲線部分31cを示すばね装置27は、力曲線部分31aまたは31bを示すばね装置27に対し対応して振舞う。
【0025】
ピストンシリンダアッセンブリ17は、押し出し位置で約100−120Nの力Fを有しているのが理想的である。この力は密封性と緩衝特性とを保証するために必要である。ピストンシリンダアッセンブリ17はその力Fを押し出し方向に行使し、これに対し引張りばねとして構成されているばね装置16は力Fで収縮することにより引張り作用を及ぼし、あるいはピストンシリンダアッセンブリ17に対して引き込み作用を及ぼす。したがって、操作装置10が配置されているヒンジ側での全有効力Fは、操作装置13が配置されているヒンジ側での力Fよりも力Fだけ小さい。
【0026】
このような作用を解消するため、ピストンシリンダアッセンブリ17には、案内密封パック24とピストン22との間に配置されたばね要素27が組み込まれている。リヤフラップ4を閉じると、操作装置10が長くなり、したがってばね装置16と組み込まれているピストンシリンダアッセンブリ17が長くなる。その際、ピストンシリンダアッセンブリ17に組み込まれているばね装置27が圧縮し、よってピストン22のピストン棒23側に押圧力Fを生成させる。この押圧力は、ピストンシリンダアッセンブリ17内で作用する、ピストン22のピストン棒23とは逆の側での押し出し力Fと同じ大きさであるのが好ましい。これにより、第1の操作装置10の押し出し位置での力平衡が生じる。
【0027】
ピストンシリンダアッセンブリ17に組み込まれているばね装置27は、ピストンシリンダアッセンブリ17が押し出される領域でのみ作用するのが好ましい。ピストンシリンダアッセンブリ17が押し込まれると、ばね要素27が弛緩し、ピストン22のピストン棒23とは逆の側で圧力によって作用する力Fを及ぼす。
【0028】
しかし、使用例に応じては、ばね装置27の力Fは、ピストンシリンダアッセンブリ17内に生じる押し出し力による力よりも大きく、あるいは小さく選定してよい。
【0029】
また、ばね装置27の、ピストンシリンダアッセンブリ17の行程を介して作用する付加的な力Fは可変に構成されてもよい。力Fは、ピストンシリンダアッセンブリ17の押し出し位置で有効であると有利であるが、しかしたとえば一定の手動操作力レベルを得るために、ピストンシリンダアッセンブリ17の全行程にわたって拡張してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】フラップを回動させるための装置を備えた自動車のリヤ領域の一部分の斜視図である。
【図2】操作装置の断面図である。
【図3】技術水準によるフラップの開口角度と力の経過との関係を示すグラフである。
【図4】本発明によるフラップの開口角度と力の経過との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 自動車
2 車体
3 トランクルーム
4 フラップ
5 回動用湾曲体
6 回動用湾曲体
7 回動用ヒンジ
8 回動用ヒンジ
9 回動軸線
10 第1の操作装置
11 接続要素
12 接続要素
13 第2の操作装置
14 接続要素
15 接続要素
16 ばね装置
17 ピストンシリンダアッセンブリ
18 ばね装置
19 シリンダ
20 第1の作業室
21 第2の作業室
22 ピストン
23 ピストン棒
24 案内密封パック
25 ばね受容部
26 ばね受容部
27 ばね装置
28 ねじ山
29 ねじ山
30 力曲線
31 力曲線
31a 力曲線部分
31b 力曲線部分
31c 力曲線部分
32 力曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸線のまわりに回動可能なフラップ、特に自動車のフラップを回動させるための装置であって、
前記フラップの片側に配置される第1の操作装置と、前記フラップの反対側に配置される第2の操作装置と、を備え、
前記第1と第2の操作装置(10,13)がフラップ調整距離の第1の部分で実質的に同じ駆動力を有し、フラップ調整距離の第2の部分で実質的に異なる駆動力を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記フラップ調整距離の第1の部分が、前記フラップが閉じるときのフラップ調整距離に実質的に対応している領域に対応していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フラップ調整距離の第1の部分が、前記フラップが完全に開くときのフラップ調整距離に実質的に対応している領域内まで延在していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1と第2の操作装置(10,13)がそれぞればね装置(16,18)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1と第2の操作装置のうち一方の操作装置(10)が、引張り力を有するばね装置(16)と、圧縮力を有するピストンシリンダアッセンブリ(17)と、を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ピストンシリンダアッセンブリ(17)がガススプリングを含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ピストンシリンダアッセンブリ(17)がダンパーを含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記ピストンシリンダアッセンブリ(17)がその圧縮力に反作用するばね装置(27)を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ピストンシリンダアッセンブリの前記ばね装置(27)が前記フラップ調整距離の第1の部分に対応する領域で作用することを特徴とする請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−302922(P2008−302922A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144921(P2008−144921)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(593136649)スタビルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (27)
【氏名又は名称原語表記】Stabilus GmbH
【住所又は居所原語表記】Wallersheimer Weg 100, D−56070 Koblenz Germany
【Fターム(参考)】