説明

回折格子を有する情報記録媒体および情報記録媒体の隠蔽情報認証装置

【課題】表面に回折格子を有する微小な回折格子要素を配した基板の表面平滑性が悪い場合でも、確実に真贋判定を行うことが可能であると共に、所定の隠蔽情報を記録した領域を判別することが困難であって、より一層高度な偽造防止効果を発現するようにした回折格子を有する情報記録媒体およびその情報記録媒体の隠蔽情報認証装置の提供を目的とする。
【解決手段】情報記録媒体は、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個が基板表面に配置されてなり、これらの複数個の回折格子要素は、所定の面積を持つ光源からの照明光の照射に基づく回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔および格子角度が設定されている少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含んでいると共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点の組合せにより所定の隠蔽情報がパターン化されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個が二次元平面に配置されている回折格子を有する情報記録媒体、特に微小な回折格子要素を配した基板面の平滑性が悪い場合でも、内在している隠蔽情報の認証が確実にでき、その真贋判定を行えるようになっていると共に、微小な回折格子要素を配した領域を判別することが困難であり、より一層高度な偽造防止効果を発現し、ディスプレイなどとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加を実現することができるようにした、回折格子を有する情報記録媒体と、この情報記録媒体に隠蔽されている隠蔽情報を認証し、その真贋の判定を確実に行えるようにした情報記録媒体の隠蔽情報認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面状の基板上に、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素(ドット)を画素として複数個配置することにより得られる回折格子パターンを有する、ディスプレイなどの情報記録媒体が多く使用されてきている。
【0003】
この内、2光束干渉による回折格子パターンを有する情報記録媒体は、2光束干渉による微小な干渉縞(以下、回折格子と称す)を、そのピッチ、方向、および光強度を変化させて感光性フィルムに次々と露光して得られるものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
より具体的には、この回折格子パターンは、複数の微小な回折格子要素に分割されていると共に、各回折格子要素の回折格子におけるピッチ、空間周波数、さらには各回折格子要素の並べ方を適宜変化させ、さらに回折格子要素表面の回折格子の方向を各回折格子要素毎に変化させてなるものである。
【0005】
さらに、回折格子パターンを有する情報記録媒体としては、例えば電子ビーム露光装置を用い、コンピュータの制御により、平面状の基板が載置されたXYステージを移動させ、基板の表面に微小な回折格子要素の複数個を絵柄状に記録・配置することにより得られる、所定絵柄の回折格子パターンが形成された情報記録媒体も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
ところで、このような回折格子を有する情報記録媒体の真贋を検証機を用いて判定する方法としては、例えば、微小な回折格子要素(ドット)の配列中に記録してあるパターン情報の部分へレーザー光等を照射して回折光を得、それをセンサーで読み取り、記録し、それに基づき真贋の判定を行う方法が採用されている。
【0007】
また、肉眼では観察できないパターン、もしくは識別できないパターンとして情報を記録しておき、レーザー光を用いた読取装置などを用いてその情報を読み取って真贋判定を行う方法も提案されている。
【0008】
しかしながら、このような方法で真贋の判定を行う場合、判定対象となる情報記録媒体の回折格子パターンが転写箔を利用した転写によって紙上に形成されたような場合には、転写する紙の平坦性が悪いため、転写箔が紙表面の凹凸に沿って曲げられるため、転写箔における回折格子の凹凸状態やパターンが忠実に紙上に転写・再現されず、延いては判定時に正しい再生像を得ることが出来なくなってしまい、情報を明確に読み取ることが困難となっていた。
【0009】
さらに、このような転写によって得られる回折格子を有する情報記録媒体は、特定の領域に情報を記録していることから、拡大鏡などの観察装置で容易に情報を記録している領域を発見することができ、レーザー光を照射する角度さえ解ってしまえば、その情報を基に模造品を作成することも可能となってしまう。
【特許文献1】特開昭60−156004号公報
【特許文献2】米国特許第5058992号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素を配した基板の表面平滑性が悪い場合でも、確実に真贋判定を行うことが可能であると共に、所定の隠蔽情報を記録した領域を判別することが困難であって、より一層高度な偽造防止効果を発現し、ディスプレイなどとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加を実現することができる、回折格子を有する情報記録媒体およびその情報記録媒体の隠蔽情報認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決すべくなされ、請求項1に記載の発明は、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個が基板表面に配置されており、これらの複数個の回折格子要素は、所定の面積を持つ光源からの照明光の照射に基づく回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔および格子角度が設定されている少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含んでいると共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点における再生情報和により所定の隠蔽情報がパターン化されるようになっていることを特徴とする回折格子を有する情報記録媒体である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回折格子を有する情報記録媒体において、微小な回折格子要素の回折格子の構造が、ブレーズド回折格子形状を含むことを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の回折格子を有する情報記録媒体において、微小な回折格子要素の回折格子の構造が、光散乱要素の凹凸形状を含むことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個が基板表面に配置されており、これらの複数個の回折格子要素は、所定の面積を持つ光源からの照明光が照射されたときの回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔および格子角度が設定されている少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含んでいると共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点における再生情報和により所定の隠蔽情報としてパターン化されるようになっていることを特徴とする回折格子と隠蔽情報を有する情報記録媒体の真贋を認証するための装置であって、所定の面積を持つ光源と、この光源から回折格子要素への照明光に基づく回折光の集光点の組合せによってパターン化される隠蔽情報を読み取るための隠蔽情報読み取り手段と、この隠蔽情報読み取り手段からの情報に基づいて真贋の判定を行う判定手段とを少なくとも具備していることを特徴とする情報記録媒体の隠蔽情報認証装置である。
【0015】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置において、前記所定の面積を持つ光源からの照明光が回折格子要素に照射され、回折
された後に集光する集光点の近傍に回折像を結像するための投影スクリーンが配置されていると共に、この投影スクリーンに結像された回折像を隠蔽情報読み取り手段が読み取って電気信号に変換するようになっていることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置において、前記所定の面積を持つ光源からの照明光が回折格子要素に照射され、回折された後に到達する集光点の近傍に隠蔽情報読み取り手段の撮像レンズの焦点位置が合致するように設定されていることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、請求項7に記載の発明は、請求項4〜6の何れかに記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置において、前記所定の面積を持つ光源が、冷陰極管もしくは発光ダイオードと、反射板と、導光板とを組み合せてなる平面光源であり、その前面に特定形状部分を遮光する遮光手段が設けられていることを特徴とする。
【0018】
さらにまた、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置において、前記特定形状部分を遮光する遮光手段が液晶パネルであることを特徴とする。
【0019】
さらにまた、請求項9に記載の発明は、請求項4〜8の何れかに記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置において、所定の面積を持つ複数個の光源と、各光源を切り替えて所定の回折格子要素群に選択的に照明光を照射するための切り替え手段と、この切り替え手段を動作させて順次回折格子要素群に照明光が照射され、そこで回折された後に集光する集光点のそれぞれを投影するための投影スクリーンと、この投影スクリーンに投影されたそれぞれの集光点の組合せから所定の隠蔽情報のデータを読み取るための読み取り手段とを具備することを特徴とする。
【0020】
さらにまた、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置において、前記所定の面積を持つ複数個の光源の発光面の形状がそれぞれ異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回折格子を有する情報記録媒体は、微小な回折格子要素を配した基板面の平滑性が悪い場合でも、確実に真贋判定を行うことが可能であると共に、微小な回折格子要素を配した領域を判別することが困難であり、より一層高度な偽造防止効果を発現し、ディスプレイなどとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加を実現することができる。
【0022】
また、本発明の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置は、所定の面積を持つ光源で照明することで、真贋の判定を行おうとする情報記録媒体の回折格子要素配置面における凹凸の影響を少なくすることができ、内在する隠蔽情報の認識と判定を確実に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の回折格子を有する情報記録媒体の概略の構成と、この回折格子を有する情報記録媒体の真贋を判定するための情報記録媒体の隠蔽情報認証装置の概略の構成を示す説明図である。
【0025】
回折格子を有する情報記録媒体11は、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の
複数個が基板10の表面に配置されており、これらの複数個の回折格子要素は、所定の面積を持つ光源12からの照明光が照射されたときの回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔および格子角度が設定されている少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含んでいると共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点における再生情報和により所定の隠蔽情報がパターン化されるようになっている。
【0026】
より具体的には、この回折格子を有する情報記録媒体11は、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個(1a、1b、1c、1d)が基板10の表面に配置されており、回折格子要素1a、1bで一つの回折格子要素群を構成しており、回折格子要素1c、1dでもう一つの回折格子要素群を構成している。
【0027】
これらの複数組の回折格子要素群に中、一つの回折格子要素群の回折格子要素1a、1bは、所定の面積を持つ光源12からの照明光が照射されたときの回折光が空間上の同一の集光点14aに集光するように、また、もう一つの回折格子要素群の回折格子要素1c、1dは、所定の面積を持つ光源12からの照明光が照射されたときの回折光が空間上の同一の集光点14bに集光するように、それらの格子間隔および格子角度がそれぞれ設定されている。そして、回折格子を有する情報記録媒体11は、これらの少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含むと共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点における再生情報和により所定の隠蔽情報がパターン化されるようになっている。
【0028】
一方、情報記録媒体の隠蔽情報認証装置は、上記した構成の回折格子を有する情報記録媒体11の真贋を認証するための装置であって、所定の面積を持つ光源12と、この光源12から本発明の回折格子を有する情報記録媒体11上の回折格子要素1a、1b、1c、1dへ照明光を照射することによってのみパターン化される隠蔽情報を読み取るための隠蔽情報読み取り手段15と、この隠蔽情報読み取り手段15からの情報に基づいて真贋の判定を行う判定手段16とを少なくとも具備してなるものである。
【0029】
図1において、平面状の所定の面積を持つ光源12からの照明光は、各回折格子要素1a、1b、1c、1dで設定された回折角度で回折し、空間上の集光点に集光し、投影スクリーン13上に回折像が投影される。この時、回折格子要素1a及び回折格子要素1bで回折した光は、集光点14aに集光し、回折格子要素1c及び回折格子要素1dで回折した光は、集光点14bに集光するように回折格子要素の格子間隔および格子角度を設定してある。
【0030】
また、この回折格子を有する情報記録媒体11の回折格子要素1a、回折格子要素1b、回折格子要素1c及び回折格子要素1d以外の回折格子要素(図示せず)は、集光点1a、集光点1bには集光しないようにしてある。このため、回折格子を有する情報記録媒体11に光源12より照明光を照明することで投影スクリーン13上には上記各回折格子要素からの回折光が集光点14a、集光点14bにそれぞれ集光されて投影され、それらの組合せにより所定の隠蔽情報がパターン化される。
【0031】
本発明の回折格子を有する情報記録媒体においては、上述したように、集光点14a、集光点14bのような、同一点を複数個配置されるようにし、これらの同一点の組合せにより所定の隠蔽情報がパターン化(現出)するようになっていて、隠蔽情報読み取り手段によりその存在が認識できるようになる。図1に示す例では、投影スクリーン13上に隠蔽情報が投影するようになっており、この投影パターンを確認することにより、真贋判定を行うことができる。
【0032】
このような真贋判定を行う場合、情報記録媒体上の回折格子要素が転写箔を利用した転写によって紙上に形成されたような場合には、転写箔上での回折格子要素の凹凸が紙表面の凹凸形状に沿った表面形状となってしまい、それを構成する回折格子要素からの回折光が当初計算された角度では射出されず、レーザー光などの面積の小さいビーム光を入射した場合には、広がりを持った回折光となってしまい、また、射出角度の変動が大きくなり、照射位置を僅かに変えただけでも射出角度が大きく振れてしまうので、回折光の機械読み取りが困難となり、延いては真贋の判定が不正確になってしまう。
【0033】
ところが、図1に示すような構成の隠蔽情報認識装置により、所定の面積を持つ光源(面光源)で照明した場合には、点光源で照明した場合と比較して、基板表面の凹凸形状による射出角度の変動が小さくなり、所望の集光点に回折光が確実に集光するため、撮像素子などの隠蔽情報読み取り手段による読み取りが正確に行われるようになる。
【0034】
また、同一点にその回折光が集光する回折格子要素を基板10上に配置する際に、隠蔽情報のパターン化を担う回折格子要素を不規則に配置することにより、真贋判定を行う情報を記録した領域の判別を困難とすることができる。
【0035】
また、微小な回折格子要素の回折格子構造を、鋸刃状のブレーズド回折格子形状を含むようにすることにより、空間上の同一点以外(−1次回折光や2次回折光)に回折する回折光を少なくすることができ、隠蔽情報の読み取りが確実となり、より正確な真贋判定を行うことができる。
【0036】
さらに、微小な回折格子要素の回折格子構造を、光散乱要素の凹凸形状を含むようにすることにより、回折光と散乱光とを組み合わせることができ、回折格子要素の配列をより複雑にすることができ、回折格子要素の配列から特定パターンを解読することをより困難とすることができる。
【0037】
一方、図2は本発明の他の隠蔽情報認証装置の概略の構成とこの装置を用いて行う隠蔽情報の認証方法を模式的に示す説明図である。
【0038】
この隠蔽情報認証装置は、所定の面積を持つ複数個の光源22、23と、各光源22、23を切り替えて所定の回折格子要素群に照明光を照射するための切り替え手段19a、19bと、この切り替え手段19a、19bをそれぞれ動作させて順次回折格子要素群毎に照明光を照射させ、回折された後に集光する集光点のそれぞれを投影するための投影スクリーン24と、この投影スクリーン24に投影されたそれぞれの集光点28a、28bの組合せから所定の隠蔽情報のデータを読み取るための隠蔽情報読み取り手段(レンズ25、撮像素子26等)とを少なくとも具備してなるものである。
【0039】
光源22と光源23はそれぞれ異なる形状の面積を持った平面状の光源である。光源22より照射された照明光は、回折格子要素2aと回折格子要素2bによって回折し、集光点28aに集光する。また、光源23より照射された照明光は、回折格子要素2cと回折格子要素2dによって回折し、集光点28bに集光する。
【0040】
空間上の集光点28a、集光点28bの近傍には投影スクリーン24が配置されていて、そこに回折像が投影され、それらの組合せにより隠蔽情報がパターン化されるようになっている。このようにしてパターン化される隠蔽情報はその構造が、図1で示したものよりも複雑であり、その解読をより一層困難とすることができる。
【0041】
集光点28a、28bの組合せによってパターン化されてなる隠蔽情報は、隠蔽情報読み取り手段を構成するレンズ25を介して、投影スクリーン24に投影された像を隠蔽情
報27として撮像素子26上に記録する。そして、この記録データから所期の演算を行い、判定手段29により真贋の判定を行うことができる。
【0042】
この隠蔽情報認証装置においても、光源22と光源23は面積を持つ光源としたことにより、真贋の判定を行おうとする情報記録媒体の回折格子要素からの回折光の射出角度の変動が小さくなり、投影スクリーン24に真贋の判定が確実に行い得る隠蔽情報がパターン化して投影されるようになる。
【0043】
また、図1に示した例で説明したのと同様に、同一点に集光する回折格子要素を基板20上に配置する際に、隠蔽情報のパターン化を担う回折格子要素を不規則に配置することにより、情報記録媒体21においては、真贋判定を行う情報を記録した領域を判別することが困難となる。
【0044】
また、隠蔽情報を読み取る方法として、光源22と光源23を同時に照射せずに、切り替え手段19aを作動させて、まず、光源22のみから照明光を照射し、回折格子要素2a、2bで回折した光を集光点28aに集光させ、回折像を投影スクリーン24に投影し、撮像素子26で隠蔽情報の一方のデータとして読み取る。次に、切り替え手段19bを作動させて、光源23のみから照明光を照射し、回折格子要素2c、2dで回折した光を集光点28bに集光させ、回折像を投影スクリーン24に投影し、撮像素子26で隠蔽情報のもう一方のデータとして読み取るようにする。そして、これらの2つの読み取りデータを用いて、各データ間の演算処理を行うなどして、判定手段29で真贋判定を行うようにすることで、一層高度な真贋の判定を行うことができる。
【0045】
他方、図3は本発明のさらに他の隠蔽情報認証装置の概略の構成とこの装置を用いて行う隠蔽情報の認証方法を模式的に示す説明図である。
【0046】
図3に示す隠蔽情報認証装置において、回折格子を有する情報記録媒体31を照明する光源は、発光ダイオード32から射出した光を導光反射板33で均一な面光源とした後、液晶パネル34を透過させた光で回折格子要素を照明するような構成のものである。要するに、この光源は特定形状部分を遮光する手段が設けられている。
【0047】
そして、この光源から回折格子要素3a、回折格子要素3b、回折格子要素3c、回折格子要素3dのそれぞれに照射された照明光は各回折格子要素で回折され、空間上の集光点36に集光する。
【0048】
集光点36の近傍にはレンズ35がその焦点位置が合致するように配置されていて、隠蔽情報読み取り手段の撮像素子37に隠蔽情報38を直接結像することができるようになっている。撮像素子37では画像データとして取り込み、この画像データから所定の演算を行うことで、判定手段39で真贋判定を行うことができる。
【0049】
ここで、導光反射板33は面積を持った光源として作用し、液晶パネル34を透過した照明光(平面光源からの光)で回折格子要素を照明することにより、真贋の判定を行おうとする情報記録媒体の回折格子要素からの回折光の射出角度の変動が小さくなり、投影スクリーン24に真贋の判定が確実に行い得る隠蔽情報がパターン化して投影されるようになる。
【0050】
また、液晶パネル34にパターン表示を行うことで、光源の大きさ、形状、位置を自由に設定することが可能となり、これらの光源の切り替えにより複数の隠蔽情報をパターン化させ、その情報を撮像素子から取り込み、所定の演算処理を行い真偽判定を行うことが可能となる。すなわち、複雑な光源形状の設定が可能となり、より高度な隠蔽情報の認証
を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の回折格子パターンを有する情報記録媒体の概略の構成と、この回折格子パターンを有する情報記録媒体の真贋を判定するための情報記録媒体の隠蔽情報認証装置の概略の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の回折格子パターンを有する情報記録媒体の真贋を判定するための情報記録媒体の隠蔽情報認証装置の他の構成を示す説明図である。
【図3】本発明の回折格子パターンを有する情報記録媒体の真贋を判定するための情報記録媒体の隠蔽情報認証装置のさらに他の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1a、1b、1c、1d・・・回折格子要素
2a、2b、2c、2d・・・回折格子要素
3a、3b、3c、3d・・・回折格子要素
10、20、30・・・基板
11、21、31・・・回折格子を有する情報記録媒体
12、22、23・・・光源
14a、14b、28a、28b、36・・・集光点
13、24・・・投影スクリーン
16、29、39・・・判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個が基板表面に配置されており、これらの複数個の回折格子要素は、所定の面積を持つ光源からの照明光の照射に基づく回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔および格子角度が設定されている少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含んでいると共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点における再生情報和により所定の隠蔽情報がパターン化されるようになっていることを特徴とする回折格子を有する情報記録媒体。
【請求項2】
微小な回折格子要素の回折格子の構造が、ブレーズド回折格子形状を含むことを特徴とする請求項1に記載の回折格子を有する情報記録媒体。
【請求項3】
微小な回折格子要素の回折格子の構造が、光散乱要素の凹凸形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の回折格子を有する情報記録媒体。
【請求項4】
表面に回折格子を有する微小な回折格子要素の複数個が基板表面に配置されており、これらの複数個の回折格子要素は、所定の面積を持つ光源からの照明光が照射されたときの回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔および格子角度が設定されている少なくとも2個以上の回折格子要素の組合せになる回折格子要素群の複数組を含んでいると共に、各回折格子要素群に対応する空間上の同一集光点における再生情報和により所定の隠蔽情報としてパターン化されるようになっていることを特徴とする回折格子を有する情報記録媒体の真贋を認証するための装置であって、所定の面積を持つ光源と、この光源から回折格子要素への照明光に基づく回折光の集光点の組合せによってパターン化される隠蔽情報を読み取るための隠蔽情報読み取り手段と、この隠蔽情報読み取り手段からの情報に基づいて真贋の判定を行う判定手段とを少なくとも具備していることを特徴とする情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。
【請求項5】
前記所定の面積を持つ光源からの照明光が回折格子要素に照射され、回折された後に集光する集光点の近傍に回折像を結像するための投影スクリーンが配置されていると共に、この投影スクリーンに結像された回折像を隠蔽情報読み取り手段が読み取って電気信号に変換するようになっていることを特徴とする請求項4記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。
【請求項6】
前記所定の面積を持つ光源からの照明光が回折格子要素に照射され、回折された後に到達する集光点の近傍に隠蔽情報読み取り手段の撮像レンズの焦点位置が合致するように設定されていることを特徴とする請求項4記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。
【請求項7】
前記所定の面積を持つ光源が、冷陰極管もしくは発光ダイオードと、反射板と、導光板とを組み合せてなる平面光源であり、その前面に特定形状部分を遮光する遮光手段が設けられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。
【請求項8】
前記特定形状部分を遮光する遮光手段が液晶パネルであることを特徴とする請求項7に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。
【請求項9】
所定の面積を持つ複数個の光源と、各光源を切り替えて所定の回折格子要素群に選択的に照明光を照射するための切り替え手段と、この切り替え手段を動作させて順次回折格子要素群に照明光が照射され、そこで回折された後に集光する集光点のそれぞれを投影するための投影スクリーンと、この投影スクリーンに投影されたそれぞれの集光点の組合せか
ら所定の隠蔽情報のデータを読み取るための隠蔽情報読み取り手段とを具備することを特徴とする請求項4〜8に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。
【請求項10】
前記所定の面積を持つ複数個の光源の発光面の形状がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項9に記載の情報記録媒体の隠蔽情報認証装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−155292(P2006−155292A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345790(P2004−345790)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】