説明

回線監視システム

【課題】
装置の通信性能及びネットワーク品質を低下させずに回線の状態を監視することが可能な回線監視システムを提供することにある。
【解決手段】
回線監視要求部3は回線の監視を行うために、PHYアクセス制御部6にPHYアクセスを要求する。PHYアクセス制御部6は、回線監視要求部3からのPHYアクセス要求を制御してPHY20に対してアクセスを行うとともに、アクセス要求情報に対するPHYマネジメントレジスタのリードデータを、回線監視要求部3、回線状態判定部4に送信する。回線状態判定部4は、PHYアクセス制御部6から受信したデータをもとに、リンクアップ/リンクダウンの判定を行い、その判定結果を中央処理装置10へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置において回線の状態を監視する回線監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク装置における回線の状態監視は、中央処理装置がOSI参照モデルの物理層(第1層)を制御するデバイスであるPHYのマネジメントレジスタをリードすることで回線の状態を監視し、リンクアップ/ダウン判定または回線状態の統計情報を採取していた。例えば、イーサネット(登録商標)のリンクアップ/ダウン判定を行う場合、IEEE802.3で規定されるPHYマネジメントレジスタのアドレス1:Statusレジスタに含まれるリンクステータスビットを監視することで行うことができる。また、特許文献1には、送信フレーム毎に送信完了予測タイマをもって制御する技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001-156837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ネットワーク装置一台に収容するポート数は、飛躍的に多くなっている。そのため、従来方式での監視を行うと、ポート数の増加に伴い中央処理装置が行う回線監視処理の負荷が高くなってしまい、中央処理装置が行っているルーティング処理等の性能が落ちてしまう問題が発生する。また、短い間隔で回線のリンクアップ/ダウンの繰り返しが発生した場合、該当する回線の運用処理/閉塞処理が多発してしまうことで、中央処理装置の負荷が高くなり、かつ、閉塞状態へ移行してしまうと運用状態へ移行するまで該当回線の通信が停止してしまうことによってネットワークの性能悪化、品質低下を引き起こす要因となってしまう。また、10ギガイーサネット等の高速通信技術の登場によるネットワークの高速化にともない1秒あたりに送信できるフレーム数が増加したことによって、送信フレーム毎に送信完了予測タイマをもって制御する方式を実現するのは困難である。
【0005】
本発明の目的は、回線監視処理によって中央処理装置の負荷を低減し、ネットワーク装置の性能を改善する回線監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、回線の監視を行うためにPHYアクセスを要求する回線監視要求部、リンクアップ/ダウンの判定及び判定結果を中央処理装置へ通知する回線状態判定部、回線状態の統計情報を採取する統計情報格納部、中央処理装置からのアクセスを制御するアクセス制御部、中央処理装置と回線監視要求部からのPHYアクセス要求を制御してPHYアクセスを行うPHYアクセス制御部で構成される回線監視制御部がネットワークの回線監視を行う構成を採用する。
【0007】
また、PHYのマネジメントレジスタが任意の回数連続してリンクアップまたはダウンを示す場合に回線状態を確定して中央処理装置に通知する構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回線の状態監視、リンクアップ/ダウン判定または回線状態の統計情報採取を中央処理装置で行わずに回線監視制御部が行うため、回線監視処理にかかわる中央処理装置の負荷を低減することが可能となり、ネットワーク装置に収容するポート数を容易に増加させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である回線監視システムにおけるネットワーク装置40の構成例を示す。図1において、40はネットワーク装置、10は中央処理装置、30A〜30Bはイーサネット等の回線インタフェースを制御するネットワークインタフェース機構(以下、NIFと称する)、1A〜1Bは回線の監視を行う回線監視制御部、50A〜50Hはネットワーク装置に収容されるポート、60A〜60Hはネットワーク回線、70A〜70Hは回線監視処理のアクセス経路、80A〜80Bは回線状態変化通知である。
【0011】
図2は、図1におけるNIF30の詳細な構成例を示す。図1では、NIFを2つ含む構成なので、NIFを30Aと30Bに区別したが、図2では、説明の便宜のために、1つのNIF30について説明する。従って、図1におけるアルファベット付きの番号(例えば30A、1A)と、図2におけるアルファベット無しの番号(例えば30、1)とは、それぞれ対応する構成である。
【0012】
図2において、1は回線の監視を行う回線監視制御部、2は中央処理装置10から回線監視制御部2またはPHY20へのアクセスを制御するアクセス制御部、3は回線監視をするためにPHYマネジメントレジスタへのアクセスを要求する回線監視要求部、3aは回線監視要求部3からPHYマネジメントレジスタへのリードアクセス要求及びPHYマネジメントレジスタアドレスを指定するアクセス要求情報、3bは回線監視要求部3からのアクセス要求情報3aに対するPHYマネジメントレジスタのリードデータ、4はPHYマネジメントレジスタの情報をもとに回線の状態を判定する回線状態判定部、5はPHYマネジメントレジスタの情報をもとに回線状態の統計情報を格納する統計情報格納部、6はアクセス制御部2を介して要求される中央処理装置からのPHYアクセス要求と、回線監視要求部3からのPHYアクセス要求とを制御するPHYアクセス制御部、10は中央処理装置、20はOSI参照モデルの物理層を制御するデバイスであるPHY、80は回線状態変化通知である。
【0013】
中央処理装置10は、アクセス制御部2を介して、回線状態判定部4に対して、リンクアップ判定条件およびリンクダウン判定条件を指定する。また、中央処理装置部10は、アクセス制御部2を介して、回線監視要求部3に対して、アクセスするPHYマネジメントレジスタのアドレス及びアクセス周期時間を指定する。また、中央処理装置部10は、アクセス制御部2を介して、統計情報格納部5に対して、統計採取するPHYマネジメントレジスタのアドレスを指定する。これらの設定の完了後に、中央処理装置10は、回線監視要求部3に対して回線監視の実行を指示する。回線監視要求部3は、中央処理装置部10から回線監視の指示を受けると、PHYマネジメントレジスタのアクセスを開始する。
【0014】
統計情報格納部5は、回線監視要求部3からのアクセス要求情報3aに対するPHYマネジメントレジスタのリードデータ3bをPHYアクセス制御部6から受け取ると、中央処理装置10から指定されたPHYマネジメントレジスタのステータス情報を統計情報としてカウントし格納する。統計情報格納部5は、保持している統計情報を、中央処理装置10からの要求により、アクセス制御部2を介して中央処理装置10へ通知する。
【0015】
アクセス制御部2は、中央処理装置10からのアクセス要求が回線監視要求部3に対する要求であるか、または回線状態判定部4、統計情報格納部5、PHY20に対する要求かを判定し、各アクセス対象へのアクセスを行う。
【0016】
PHYアクセス制御部6は、中央処理装置部10または回線監視要求部3からのPHYアクセス要求に従い、PHY20のマネジメントレジスタにアクセスを行う。また、PHYアクセス制御部6は、回線監視要求部3、回線状態判定部4、統計情報格納部5に対して、PHYマネジメントレジスタのリードデータ3bを送信する。
【0017】
図3は、回線監視要求部3が行う処理フローの例を示す。回線監視要求部3は、まず、PHYマネジメントレジスタのアクセス周期間隔を中央処理装置10から受信し記憶する(S301)。次に、アクセスするPHYマネジメントレジスタのアドレスを中央処理装置10から受信し記憶する(S302)。次に、アクセス周期のタイミングを計るためのタイマを開始する(S303)。回線監視要求部3は、ステップ302で記憶したアドレスの中から、アクセスするPHYマネジメントレジスタのアドレスを選択し(S304)、アクセス要求情報3aをPHYアクセス制御部6へ発行する(S305)。このとき、アクセス要求情報3aを回線状態判定部4及び統計情報格納部5へも送信することで、アクセスするPHYマネジメントレジスタのアドレスを回線状態判定部4及び統計情報格納部5に通知する。
【0018】
ステップ305に示す処理によって、PHYアクセス制御部6が回線監視要求部3からのアクセス要求情報3aを受信すると、PHYアクセス制御部6は、PHY20へアクセスを行い、PHYマネジメントレジスタのリードデータ3bを回線監視要求部3、回線状態判定部4、統計情報格納部5に送信する。
【0019】
回線監視要求部3は、PHYアクセス制御部6から、このリードデータ3bを受信したか否かを判断する(S306)。受信した場合は、ステップ307へ進む。受信しない場合は、受信するまで待機する(S306:No)。
【0020】
ステップ306で、リードデータ3bを受信すると(S306:Yes)、回線監視要求部3は、ステップS302において中央処理装置10から指定されたレジスタのアドレスへのアクセスを全て完了したかを判定する(S307)。全てのレジスタをアクセス完了していない場合(S307:No)、ステップ304へ戻り、全てのレジスタのアクセスが完了するまでPHYマネジメントレジスタのアクセスを繰り返す(S304〜S306)。全てのレジスタへのアクセスを完了した場合(S307:Yes)、回線監視要求部3は、ステップ303で開始したタイマがステップ301で中央処理装置10から指定されたアクセス周期間隔の時間を超えたか否かを判断する(S308)。アクセス周期間隔の時間を超えた場合は(S308:Yes)、ステップ303で開始したタイマをクリアし(S309)、ステップS303へ戻り、回線状態監視を繰り返す。回線監視要求部3が行う図3の処理は、中央処理装置10からの回線監視処理停止の指示で停止する。
【0021】
回線状態判定部4は、回線監視要求部3からのアクセス要求情報3aに対するPHYマネジメントレジスタのリードデータ3bをPHYアクセス制御部6から受け取ると、回線のリンク状態の判定を行う。アクセス要求情報3aが、リンク状態を示すアドレスのPHYマネジメントレジスタのアクセス要求である場合、PHYマネジメントレジスタのリードデータ3bにはリンクステータス情報が含まれるため、回線状態判定部4は、PHYマネジメントレジスタのリードデータ3bを受信すると、リードデータ3bに含まれるリンクステータス情報を読み取り、回線のリンク状態を検出する。このリンク状態が、中央処理装置10から指定された回数連続して検出した場合、該当回線のリンクアップまたはリンクダウンと判定する。
【0022】
ここで、リンクアップまたはリンクダウンと判定した結果、リンクの状態がアップからダウンへ、またはダウンからアップへと変化した場合、回線状態判定部4は、中央処理装置10に対して、回線状態変化の通知を行う(回線状態変化通知80)。回線状態判定部4から回線状態変化通知80を受けた中央処理装置10は、回線状態判定部4が判定したリンク状態に従い、該当回線の運用処理または閉塞処理を実施する。
【0023】
このように、ある回線のリンク状態を所定回数連続して検出した場合に、その回線のリンクアップまたはリンクダウンと判断し、リンク状態に応じてその回線の運用処理または閉塞処理を行うことにより、リンクアップ/ダウンのばたつきによる該当回線の運用処理/閉塞処理の多発を防ぐことが可能になる。
【0024】
以上、説明したように、本実施形態によれば、回線状態の監視、統計情報の採取を中央処理装置10を介さずに行うことができ、また、PHYのマネジメントレジスタが任意の回数連続してリンクアップまたはダウンを示す場合に回線状態を確定して中央処理装置に通知することで、リンクアップ/ダウンのばたつきによる該当回線の運用処理/閉塞処理の多発を防ぐことが可能となる。よって、中央処理装置10の回線監視及び制御にかかる処理の負荷が軽減されることで、ネットワーク装置の通信処理性能を低下させずにポート数を増やすことが可能となる。
【0025】
また、送信フレーム毎に監視する必要がないため、高速ネットワークに接続するネットワーク装置においても実現可能な構成である。
【0026】
また、回線監視制御部1がネットワークの回線を監視することによって、ポート数の増加により中央処理装置のリソースを圧迫する回線監視処理が増加することはないため、容易にポート数を増やすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態であるネットワーク装置の構成の一例を示した図である。
【図2】図1のネットワーク装置における回線監視制御部の詳細な構成の一例を示した図である。
【図3】回線監視要求部3の処理フローの例を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1、1A〜1B:回線監視制御部、2:アクセス制御部、3:回線監視要求部、3a:アクセス要求情報、3b:PHYマネジメントレジスタのリードデータ、4:回線状態判定部、5:統計情報格納部、6:PHYアクセス制御部、10:中央処理装置部、20:PHY、30、30A〜30B:NIF、40:ネットワーク装置、50A〜50H:ポート、60A〜60H:ネットワーク回線、70A〜70H:回線監視処理のアクセス経路、80、80A〜80B:回線状態変化通知

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク回線を監視する回線監視システムにおいて、
中央処理装置と通信を行い、該中央処理装置からのアクセス要求を制御するアクセス制御部と、
前記アクセス制御部からの回線アクセス要求に従い、回線の監視を行うためにPHYアクセスを要求する回線監視要求部と、
PHYと通信を行い、該回線監視要求部からのPHYアクセス要求を受信して、前記PHYに対してアクセスを行うPHYアクセス制御部と、
該PHYアクセス制御部によるPHYアクセス情報を受信し、回線状態を判定する回線状態判定部とを備えることを特徴とする回線監視システム。
【請求項2】
前記PHYアクセス制御部は、前記PHYのマネジメントレジスタにアクセスを行い、
前記回線状態判定部が前記PHYアクセス制御部から受信するPHYアクセス情報は、前記PHYのマネジメントレジスタのリードデータを含み、
該リードデータに含まれるステータス情報が、所定回数連続して同じステータス情報である場合に、前記回線状態判定部は、前記所定回数連続するステータス情報に基づいて回線状態を判定し、
前記回線状態判定部は、該判定結果を前記中央処理装置に送信することを特徴とする請求項1記載の回線監視システム。
【請求項3】
前記回線監視要求部は、前記PHYアクセス制御部から送信されるPHYのマネジメントレジスタのリードデータを受信し、前記中央処理装置から指定されたレジスタへのアクセスが完了したか否かを判断することを特徴とする請求項2記載の回線監視システム。
【請求項4】
前記回線監視システムはさらに、
前記PHYアクセス制御部から送信されたステータス情報を格納する統計情報格納部を備え、
該統計情報格納部は、前記中央処理装置からの要求により、前記ステータス情報を、前記アクセス制御部を介して前記中央処理装置に送信することを特徴とする請求項2記載の回線監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−22188(P2008−22188A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191071(P2006−191071)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(504411166)アラクサラネットワークス株式会社 (315)
【Fターム(参考)】