説明

回路基板、サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブ

【課題】本発明は、2つの導体層を絶縁層で介して積層した積層構造を有する回路基板であって、反りの小さい回路基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された導体層と、上記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する回路基板であって、前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方が、式(1)で表される特定のポリイミド樹脂を含有する、回路基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体層を絶縁層で介して積層した積層構造を有する回路基板に関し、より詳しくは、反りの小さい回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、HDD(ハードディスクドライブ)に用いられる回路基板として、磁気ヘッドスライダ等の素子を実装するサスペンション用基板が知られている。サスペンション用基板の一例として、図7に示すように、金属支持基板101と、金属支持基板101上に形成された絶縁層(ベース絶縁層)102と、絶縁層102上に形成された導体層(配線層)103と、導体層103上に形成された絶縁層(カバー層)104とを有するものが知られている。
【0003】
一方、このような回路基板においては、金属支持基板の熱膨張係数と、絶縁層の熱膨張係数との差により反りが生じるという問題ある。この問題に対して、特許文献1においては、金属支持基板の熱膨張係数と同等の絶縁層用樹脂を用いることにより、反りを小さくすることが開示されている。さらに、特許文献2においては、絶縁層形成材料(図7における絶縁層102を形成する材料)およびカバー層形成材料(図7における絶縁層104を形成する材料)に、それぞれ吸湿膨張係数が低いものを用い、かつ、両者の吸湿膨張係数の差を小さくすることにより、反りを小さくすることが開示されている(特許文献2の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−248142号公報
【特許文献2】特開2008−310946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、導体層を絶縁層で介して積層した積層構造を有する回路基板であって、反りが小さく、かつ原料となるポリイミド樹脂の高い現像性に起因して、精細な回路パターンの基板であっても容易に製造することができる回路基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された導体層と、上記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板であって、
前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方が、下記式(1)で表されるポリイミド樹脂を含有する、回路基板:
【0007】
【化1】

[式中、Rは4価の有機基を示す。
は、同一又は異なって、2価の有機基を示す。
は水素原子又は飽和又は不飽和のイミド環基を示す。
は飽和又は不飽和のイミド環基を示す。]を提供する。
【0008】
本発明においては、前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方に含まれるポリイミド樹脂の末端封止率が10%以上であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記飽和又は不飽和のイミド環基が、下記式(2)で表される基であることが好ましい:
【0010】
【化2】

[式中、Rは、
【0011】
【化3】

(式中、Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、カルボキシル基又は有機基を示す。)
を示す。
mは、自然数を示す。
mが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
2つ以上のRは、これらが結合する炭素原子と共に、環状構造を形成してもよい。]。
【0012】
本発明においては、前記飽和又は不飽和のイミド環基が、下記式(2−1)〜(2−5)のいずれかで表される有機基であることがより好ましい:
【0013】
【化4】

[式中、Rは、同一又は異なって、水素又は有機基を示す。2以上のRは、これらが結合する炭素原子と共に環状構造を形成していてもよい。]。
【0014】
前記飽和又は不飽和のイミド環基は、加熱により分子間で付加反応をする二重結合又は三重結合(架橋性二重結合、三重結合)を有することが好ましい。
【0015】
上記本発明においては、第一絶縁層の線熱膨張係数が金属支持基板の線熱膨張係数よりも大きく、第二絶縁層の線熱膨張係数と金属支持基板の線熱膨張係数との差を0〜4ppm/℃にすることが、回路基板全体として反りを小さくするという観点から、好ましい。
【0016】
上記本発明においては、前記基R、炭素原子、酸素原子及び窒素原子により構成される構造:
【0017】
【化5】

が、下記式(A−1)又は(A−2)
【0018】
【化6】

で表される構造を示すものであることが好ましい。
【0019】
上記発明においては、上記Rで示される2価の有機基が、同一又は異なって、下記式(B−1)〜(B−10)
【0020】
【化7】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素または1価の有機基であり、それぞれ同一でも、異なっていても良い。Rは、同一又は異なって、水素、炭化水素基、又はアルコキシ基を示す。Rは、
【0021】
【化8】

を示す。]
で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0022】
及びRで示される有機基としては、例えば、水素原子、炭化水素、炭化フッ素、アルコキシ基等が挙げられる。R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
及びRで表される炭化水素、炭化フッ素、及びアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6のものが挙げられる。
【0024】
Rで示される炭化水素基及びアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6のものが挙げられる。
【0025】
上記本発明においては、Rで示される上記2価の有機基が、下記式(B−1)、(B−2)、(B−3’)、(B−6)〜(B−10)
【0026】
【化9】

[式中、R’及びR’は、同一又は異なって、水素、メチル基、メトキシ基またはトリフルオロメチル基であり、それぞれ同一でも、異なっていても良い。Rは、同一又は異なって、水素、炭化水素基、またはアルコキシ基を示す。Rは、
【0027】
【化10】

を示す。]
で表される構造のいずれかであることがさらに好ましい。
【0028】
上記発明においては、上記金属支持基板及び上記導体層の材料の線熱膨張係数が10ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましい。
【0029】
上記発明においては、上記金属支持基板の材料がSUS304であり、上記導体層の材料がCuであり、上記第一絶縁層および上記第二絶縁層の材料がポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0030】
上記発明においては、上記第二絶縁層の線熱膨張係数が4.3ppm/℃以上、25.0ppm/℃未満であることが好ましい。
【0031】
上記発明においては、上記第一絶縁層、上記第二絶縁層の湿度膨張係数が、20ppm/%RH以下であることが好ましい。湿度変化による反りを小さくすることができるからである。
【0032】
また、本発明においては、上述した回路基板であることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0033】
本発明によれば、上述した回路基板を用いることで、反りの小さいサスペンション用基板とすることができる。
【0034】
また、本発明においては、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0035】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さいサスペンションとすることができる。
【0036】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0037】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さい素子付サスペンションとすることができる。
【0038】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0039】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0040】
また、本発明は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された導体層と、前記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板における、第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方を製造するための樹脂組成物であって、下記一般式(1’)
【0041】
【化11】

[式中、Rは4価の有機基を示す。
は2価の有機基を示す。
’は水素原子又は飽和もしくは不飽和のイミド環基の前駆体を示す。
’は飽和又は不飽和のイミド環基の前駆体を示す。
10は、水素原子又は1価の有機基を示す。
複数あるR、R、及びR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるポリイミド前駆体を含有する、樹脂組成物を提供する。
【0042】
また、本発明は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された導体層と、前記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板の製造方法であって、
前記導体層に、樹脂組成物を塗布する工程及び
当該塗布した樹脂組成物を加熱硬化して第二絶縁層を形成する工程を含み、
当該樹脂組成物が、前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物である、方法を提供する。
【発明の効果】
【0043】
本発明においては、導体層を絶縁層で介して積層した積層構造を有する回路基板であって、反りの小さい回路基板を得ることができるという効果を奏する。また、本発明の回路基板は、上記特定のポリイミド樹脂を用いて第一絶縁層及び/又は第二絶縁層が形成されている。当該ポリイミド樹脂の高い現像性に起因して、本発明の回路基板は、精細な回路パターンの基板であっても容易に製造することができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の回路基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図5】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図6】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図7】従来の回路基板(サスペンション用基板)の一例を示す概略断面図である。
【図8】製造例14〜21で得られたポリイミド前駆体膜について、末端封止基導入量と、現像液溶解時間及び線熱膨張係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の回路基板、サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0046】
A.回路基板
まず、本発明の回路基板について説明する。本発明の回路基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された導体層と、上記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板であって、前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方が、前述の式(1)で表されるポリイミド樹脂を含有することを特徴とするものである。
【0047】
図1は、本発明の回路基板の一例を示す概略平面図である。より具体的には、サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。図1に示される回路基板20は、ヘッド部側に形成され、素子を実装する素子実装領域11と、テール部側に形成され、外部回路基板との接続を行う外部回路基板接続領域12と、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12の間を電気的に接続する配線層13とを有する。
【0048】
図2は、図1のA−A断面図である。図2における回路基板は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された第一絶縁層2と、第一絶縁層2上に形成された導体層3と、導体層3を覆うように形成された第二絶縁層4とを有する。
【0049】
以下、本発明の回路基板について、構成毎に説明する。
【0050】
1.第一絶縁層
まず、本発明における第一絶縁層について説明する。本発明における第一絶縁層は、金属支持基板上に形成され、金属支持基板および導体層を絶縁する層である。
【0051】
第一絶縁層の材料は、特に限定されるものではないが、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、第一絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。
【0052】
本発明は、前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方が、下記式(1)で表されるポリイミド樹脂(単に、ポリイミド(1)と称する場合がある)を含有することを特徴とする:
【0053】
【化12】

[式中、Rは4価の有機基を示す。
は、同一又は異なって、2価の有機基を示す。
は水素原子又は飽和又は不飽和のイミド環基を示す。
は飽和又は不飽和のイミド環基を示す。]を提供する。
【0054】
本発明においては、前記R及びRにより表される飽和又は不飽和のイミド環基を末端封止基と表現することもある。
【0055】
本発明においては、前記第一絶縁層及び/又は第二絶縁層には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、少なくとも一方の末端が封止されている上記一般式(1)のポリイミドだけでなく、両末端が封止されていないポリイミド、すなわち、下記一般式(1’’)で表されるポリイミドを含んでいてもよい:
【0056】
【化13】

[式中、R及びRは前記に同じ。]。
【0057】
式(1)において、一般に、Rは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
【0058】
で示される4価の有機基としては、テトラカルボン酸二無水物由来のものであれば特に限定されないが、例えば、芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがある。従って、上記ポリイミドにおいて、上記式(1)中に複数あるRのうち少なくとも一部(例えば、33モル%以上)が、下記式(3−1)〜(3−5)で表わされる構造のいずれかであることが好ましい。
【0059】
【化14】

上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。その為、上記式(3−1)〜(3−5)で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、本発明においては33モル%以上含有すれば良く、50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましい。
【0060】
特に、本発明においては、Rが(3−3)及び(3−1)で示される基のいずれかを有すること、すなわち、ポリイミド樹脂が、下記式(A−1)または(A−2)で表される構造のいずれかを含有することが、線熱膨張係数が小さいポリイミド樹脂とする観点から好ましい。反りの小さい回路基板を得ることができるからである。
【0061】
【化15】

さらに、本発明においては、第一絶縁層を構成するポリイミド樹脂が、上記式(A−1)で表される構造を含有することが好ましい。線熱膨張係数が小さいポリイミド樹脂とするだけでなく、低湿度膨張を示すポリイミドとすることができ、より反りの小さい回路基板を得ることができるからである。
【0062】
本発明に用いられるポリイミドに適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、 2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0063】
本発明に用いられるポリイミドの耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
【0064】
なかでも、ポリイミドの線熱膨張係数を金属支持基板や導体層と同等程度にする観点からは、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、線熱膨張係数と入手の容易性やコストとのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物が特に好ましい。また、吸湿膨張を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。つまり、線熱膨張係数と湿度膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’
−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0065】
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物を用いると、ポリイミドの湿度膨張係数が低下する。しかし、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミドの前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
【0066】
酸二無水物として脂環骨格を有する場合、線吸湿膨張係数が小さくなり、紫外線や可視光領域の光に対する透明性が向上するというメリットがある。このことから、高感度の感光性樹脂組成物となる。一方で、ポリイミドとした後の耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミドと比較して劣る傾向にある。
【0067】
一方、本発明に用いられるポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、 ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、 1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
【0068】
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0069】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミドは線熱膨張係数が小さくなる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0070】
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられる。例えば、Rに対応する二価の基として、下記式(4A)により表される基を有するジアミン挙げられる。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0071】
【化16】

(aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
さらに、上記式(4A)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
【0072】
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0073】
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると湿度膨張係数を低減させることができる。しかし、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0074】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、基板との密着性を改善したり最終的に得られるポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
【0075】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
【0076】
また、上記ポリイミドにおいては、上記式(1)中に複数あるRのうち少なくとも一部(例えば、33モル%以上)が下記式(4−1)〜(4−6)で表わされる構造のいずれかであることが好ましい。
【0077】
【化17】

(R11は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、又はスルホン基であり、R12及びR13は1価の有機基、又はハロゲン原子である。)
ここで、R11で示される有機基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、炭化水素、炭化フッ素、エーテル基[−O−(CH−O−]等を挙げることができる。
【0078】
また、R12で示される有機基としては、例えば、水素原子、炭化水素、炭化フッ素基等を挙げることができる。
【0079】
そして、R13で示される有機基としては、例えば、水素原子、炭化水素、炭化フッ素基等を挙げることができる。
【0080】
11、R12及びR13で表される炭化水素及び炭化フッ素としては、例えば、炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6のものが挙げられる。また、R11で表されるエーテル基としては、上記一般式においてn=1〜8、好ましくはn=1〜6であるエーテル基等を挙げることができる。
【0081】
上記のような構造を有する場合、最終的に得られるポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。その為、上記式(4−1)〜(4−6)で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、本発明においては33%以上含有すれば良く、50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましい。
【0082】
前述のように、本発明においては、式(1)で表わされるポリイミド樹脂は、その高分子末端の少なくとも一部が、末端封止剤により封止されており、当該末端封止剤に由来する末端封止基である飽和又は不飽和のイミド環を有する。Rが飽和又は不飽和のイミド環を示す場合の当該イミド環、及びRにより示される飽和・BR>狽ヘ不飽和イミド環としては、例えば、下記式(2)で表される基であることが好ましい:
【0083】
【化18】

[式中、Rは、
【0084】
【化19】

(式中、Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、カルボキシル基又は有機基を示す。)
を示す。
mは、自然数を示す。
mが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
2つ以上のRは、これらが結合する炭素原子と共に、環状構造を形成してもよい。]。
【0085】
又はRで表される末端封止基としては、上記式(2)で表わされる有機基のうち、下記式(2−1)〜(2−5)のいずれかで表されるものが好ましい:
【0086】
【化20】

[式中、Rは、同一又は異なって、水素又は有機基を示す。2以上のRは、これらが結合する炭素原子と共に環状構造を形成していてもよい。]。
【0087】
で示される有機基しては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1〜6のアルキル基)、アルケニル基(例えば、炭素数2〜6のアルケニル基)、アルコキシル基(例えば、炭素数1〜6のアルコキシル基)、アルキニル基(例えば、炭素数2〜6のアルキニル基)、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。また、2以上のRが、これらの結合する炭素原子と共に環状構造を形成する場合、当該環状構造としては、例えば、芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環)、シクロアルカン(例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等)、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等)、ビシクロアルカン(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等)、ビシクロアルケン(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等)等が挙げられる。
【0088】
これらの有機基又は環状構造は、さらに1〜3個の置換基を有していてもよい。有機基及び環状構造が有し得る置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1〜6のアルキル基)、アルケニル基(例えば、炭素数2〜6のアルケニル基)、アルコキシル基(例えば、炭素数1〜6のアルコキシル基)、アルキニル基(例えば、炭素数2〜6のアルキニル基)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)等が挙げられる。
【0089】
前述のように、これらの末端封止基は、加熱により分子間で付加反応をする二重結合又は三重結合(架橋性二重結合、三重結合)を有することが好ましい。ここで、架橋性二重結合及び三重結合としては、非芳香族系の二重結合及び三重結合が挙げられる。
【0090】
また、R又はRで表される末端封止基としては、上記式(2)で表わされる有機基のうち、
【0091】
【化21】

等が好ましい。
【0092】
前述の末端封止基が架橋性二重結合及び/又は三重結合を有する場合、本発明において、「式(1)で表されるポリイミド樹脂を含有する」回路基板には、上記式(1)で表されるポリイミド樹脂がそのままの状態で含まれている回路基板だけでなく、上記架橋性二重結合及び/又は三重結合の一部または全部が架橋された状態で当該ポリイミド樹脂が含まれている回路基板も包含される。
【0093】
本発明において末端封止剤は下記式(C)で表される構造のいずれかを含有することがポリイミド前駆体の現像性向上の観点から好ましい:
【0094】
【化22】

[式中、R及びmは前記に同じ。]
当該末端封止剤は、1種単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0095】
上記末端封止剤としては、前述した末端封止基PEPA、ACT、CH、MA、NE等を形成するものが好ましい。すなわち、PEPA、ACT、CH、MA及びNEの対応するイミド結合部分を酸無水基に置換したものに相当する化合物が好ましい。
【0096】
末端封止剤としては、ポリイミド樹脂の末端基を封止できる酸無水物であれば特に限定されないが、酸無水物基を有する化合物であることがポリイミド前駆体の現像性向上の観点から好ましく、例えば、フタル酸無水物、アルキル基含有フタル酸無水物(4−メチルフタル酸無水物、3−メチルフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物等)、ハロゲン化フタル酸無水物(4−クロロフタル酸無水物、4,5−ジクロロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、4−ブロモフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物等)、カルボキシ含有フタル酸無水物(4−カルボキシフタル酸無水物等)、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸無水物、ビニル基含有フタル酸無水物(4−ビニルフタル酸無水物、3−ビニルフタル酸無水物等)、エチニル基含有フタル酸無水物(4−エチニルフタル酸無水物、3−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、3−フェニルエチニルフタル酸無水物、4−ナフチルエチニルフタル酸無水物、3−ナフチルエチニルフタル酸無水物、4−アントラセニルエチニルフタル酸無水物、3−アントラセニルエチニルフタル酸無水物等)等のフタル酸化合物の無水物;3−ナフタレンジカルボン酸無水物、エチニルナフタレンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルナフタレンジカルボン酸無水物、アントラセニルエチニルナフタレンジカルボン酸無水物等のナフタレンジカルボン酸化合物の無水物;1,2−ナフタル酸無水物;2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、エチニルアントラセンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルアントラセンジカルボン酸無水物、アントラセニルエチニルアントラセンジカルボン酸無水物等のアントラセンジカルボン酸化合物の無水物;無水トリメリット酸クロリド;無水コハク酸;ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物;メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物;マレイン酸無水物;cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物;ナジック酸無水物等が挙げられる。これらの酸無水物が芳香環を有する場合、芳香族環上の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの末端封止剤は単独又は2種類以上組み合わせても使用してもよい。
【0097】
ポリアミド酸の高分子末端を酸無水物によって封止する方法は特に限定されないが下記のような方法が例示される。
【0098】
1)アミノ基が末端となるようなポリアミド酸を重合し、高分子となった状態に対して、酸無水物を反応させるもの
2)予め想定される分子量に対応した量だけ、2つのアミノ基のうち片方のアミノ基だけ酸無水物と反応させたジアミンを原料の1部として用いる方法、
1)の方法は、予め所定の粘度になるように分子量が調整されたポリアミド酸を用いることができるので、末端封止をされたポリアミド酸溶液の粘度の制御が行いやすいというメリットがある。
一方2)の方法は、予め酸無水物と反応したジアミンを原料の一部として使うため、重合後に高分子末端に酸無水物残基が相対的に高い割合で導入されるというメリットがある。
【0099】
これらの末端封止剤を添加することにより導入される、末端封止剤由来の末端基の導入量(単に末端封止基導入量又は末端封止率と示すこともある)は特に限定されないが、末端封止剤添加前のポリイミドの末端基量に対して10mol%以上が好ましく、30〜100mol%がより好ましく50〜100mol%が好ましく、67〜100mol%がさらに好ましい。
【0100】
末端封止基導入量は得られたポリアミック酸をH NMRにより測定し、末端の芳香族アミン由来の芳香族プロトンピークの積分値Aと主鎖中の芳香族アミン由来の芳香族プロトンピークの積分値Bから重合度nを求める
n=B/A
重合度nから下記の式により末端芳香族アミン量(末端基)を定量する
(2/n)×100 (mol%)
末端封止反応前の末端芳香族アミン量(C mol%)
末端封止反応後の末端芳香族アミン量(D mol%)
から以下の式のようにして求める
(C−D)/C×100 (%)
末端基の導入率が30%未満の場合、塩基性水溶液に対する溶解性向上や、吸湿膨張率の低減といった効果が低くなる。本発明においてはこれらの特性のうち、吸湿膨張率低減については、末端基の導入率が高いほど効果が高く、塩基性水溶液に対する溶解性については導入率が50%までは、導入率が高いほど、溶解性が良好となり、50%を超えるとほぼ一定となる。
これは、以下の2つのメカニズムが影響していると考えられる。
1)末端基由来のカルボキシル基の効果 : 高分子末端のアミノ基が、酸無水物基とアミノ基の反応から生じた末端アミド酸残基となったことにより、塩基性水溶液に対する溶解性が向上したこと
2)分子鎖中のアミド酸のカルボキシル基と分子末端のアミノ基は、分子鎖間でイオン的に相互作用しており、ポリアミド酸は、擬似的な架橋構造を形成している。このような擬似架橋体を形成していると、塩基性水溶液に触れても、ゲル状になり、塩基性溶液への溶解速度が遅くなる。そこで、末端基を導入するとカルボキシル基と塩形成しにくいアミド酸構造となるため、擬似的な架橋体を形成せず、塩基性水溶液に対する溶解速度が向上する。
【0101】
これらの末端封止剤の添加量は、特に限定されないが、末端基導入量が上記範囲となるような量が好ましい。例えば、末端封止剤添加前のポリイミドの末端基量に対して30〜100mol%、65〜100mol%添加するのが好ましく、83〜100mol%添加するのがより好ましい。
【0102】
これらの末端封止剤を用いることによって、現像性を高めることができるため非常に有用である。より具体的には、上記末端封止剤を用いることにより、より短い時間で、現像処理を行うことができる。従って、同様の現像条件を採用した場合、末端封止剤を用いた実施形態は膜の溶解がより充分に行われているため、乾燥後の発埃がより抑えられるため好ましい。これは(式C−1)に示すように末端封止基に含まれるカルボキシル基によりアルカリ性水溶液(現像液)に対する溶解性が向上したものと考えられる。また、加熱後末端基は(式C−2)にように主鎖と同様のイミド基となり、吸湿性の高い置換基であるカルボキシル基が消失する、このため、現像時は塩基性水溶液に対して溶解性が高く、一方で、イミド化後は吸水性を抑制することができ湿度膨張係数が小さくなる。
【0103】
【化23】

[式中、R、R、R及びmは前記の通り]
また、これらの末端封止剤のうち、二重結合又は三重結合を有するものが加熱によって分子間で付加反応するため好ましい。加熱温度領域は100〜400℃が望ましく、140〜370℃がより望ましく、180〜350℃がさらにより望ましい。このような二重結合又は三重結合を有する末端封止剤としては、例えば、4−ビニルフタル酸無水物、3−ビニルフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、3−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、3−フェニルエチニルフタル酸無水物、エチニルナフタレンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルナフタレンジカルボン酸無水物、エチニルアントラセンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルアントラセンジカルボン酸無水物、4−ナフチルエチニルフタル酸無水物、3−ナフチルエチニルフタル酸無水物、4−アントラセニルエチニルフタル酸無水物、3−アントラセニルエチニルフタル酸無水物、アントラセニルエチニルナフタレンジカルボン酸無水物、アントラセニルエチニルアントラセンジカルボン酸無水物(これらの芳香族環上の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、マレイン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナジック酸無水物等が挙げられる。
【0104】
末端封止剤として、二重結合又は三重結合を有するものを用いることにより、ポリイミドの分子鎖が加熱により分子間で付加反応し架橋される。その結果、現像性が高いだけでなく、ポリイミド膜の湿度膨張率を低減することができるため好ましい。ポリイミドの分子鎖が互いに化学結合によって、連結されることにより、水分子のポリイミド膜内部へ浸透が抑制されているためではないかと推測される。本発明のサスペンション用基板は、素子とディスクとを非常に近接させ、かつ接触しない状態で保持させる必要があるため非常に高い形体安定性が所望される。従って、湿度膨張による変形が抑えられた当該実施形態は好ましい。これは先に述べた末端封止により加熱後末端基はイミド基となり低吸水性、低湿度膨張が期待される。さらに、反応性が高くより密な架橋構造を形成できる非芳香族系の二重結合や三重結合を有するものがより好ましく、なかでも三重結合を有するものがより密な架橋構造を形成するので特に好ましい。
【0105】
さらに、本発明においては、上記2価の有機基が、下記式(B−1)〜(B−10)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0106】
【化24】

(式中、R及びRは、水素または1価の有機基であり、それぞれ同一でも、異なっていても良い。Rは、同一又は異なって、水素、炭化水素基、又はアルコキシ基を示す。Rは、
【0107】
【化25】

を示す。)
また、本発明においては、上記2価の有機基が、下記式(B−1)〜、(B−2)、(B−3’)、(B−6)−(B−10)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0108】
【化26】

[式中、R’及びR’は、水素、メチル基、メトキシ基またはトリフルオロメチル基であり、それぞれ同一でも、異なっていても良い。Rは、同一又は異なって、水素、炭化水素基、またはアルコキシ基を示す。Rは、
【0109】
【化27】

を示す。]。
【0110】
本発明に用いるポリイミド前駆体の数平均分子量は溶解性や末端封止の効果、膜の脆弱性の観点から10000から500000が望ましく、12000〜300000がより望ましく、15000〜100000がもっとも望ましい。
数平均分子量の測定にはNMR測定により高分子末端の置換基と主鎖の置換基から末端基定量法を用いる方法がある。また、溶液の蒸気圧・浸透圧・沸点がそのモル濃度および質量モル濃度に依存することを利用した測定法もある。本発明ではHNMRにより末端基を定量する方法により数平均分子量を算出した。
【0111】
上記のポリイミドに加えて必要に応じて適宜、接着性のポリイミドなどと組み合わせて、本発明における第一絶縁層として用いてもよい。
【0112】
また、上記のポリイミドを感光性ポリイミドとして利用する際には、公知の手法を用いることができる。たとえば、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し得られるポリイミド前駆体に、光ラジカル開始剤を混合し、溶剤現像ネガ型感光性ポリイミドとするもの、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミドとするもの、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミドとするものなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0113】
これらの感光性ポリイミドはポリイミドの重量に対して15%〜35%の感光性付与成分が添加されている。その為、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、感光性付与成分由来の残差がポリイミド中に残存する。その為、本発明においては、非感光性ポリイミドを用いることが好ましい。
【0114】
また、本発明においては、第一絶縁層の線熱膨張係数が、金属支持基板の線熱膨張係数よりも大きいことが好ましい。本発明における「線熱膨張係数」とは、温度の変化に対する、材料の長さの変化率をいう。さらに、「材料の長さ」とは、材料が各温度となった際の材料の長さをいい、「材料の長さの変化率」とは、各材料の温度が変化した際の、長さの変化(変化後の材料の長さから変化前の材料の長さの差)を、基準の温度における材料の全長で除した値をいう。一般に基準の温度は23℃である。
【0115】
ここで、第一絶縁層の線熱膨張係数と、金属支持基板の線熱膨張係数との差は、0ppm/℃であることが好ましいが、材料選定において線熱膨張係数がずれたものを使用せざるを得ない場合がある。そこで、本発明においては、第一絶縁層の線熱膨張係数が金属支持基板の線熱膨張係数よりも大きい場合を想定している。第一絶縁層の線熱膨張係数と、金属支持基板の線熱膨張係数との差は、13ppm/℃以下であることが好ましく、8ppm/℃の範囲内であることがより好ましく、5ppm/℃の範囲内であることがさらに好ましい。上記の差が大きすぎると、第一絶縁層の線熱膨張係数の影響を、第二絶縁層が緩和することが困難になる可能性があるからである。また、両者の差は、通常0ppm/℃よりも大きく、後述する実施例に記載するように、両者の差が3ppm/℃以上であっても、反りを十分に小さくすることが可能である。
【0116】
また、第一絶縁層の線熱膨張係数の具体的な値は、金属支持基板の線熱膨張係数との差により規定されるものである。例えば、金属支持基板の材料がSUS304(線熱膨張係数:17.3ppm/℃)である場合、第一絶縁層の線熱膨張係数は、17.3ppm/℃よりも大きければ特に限定されるものではないが、例えば30.3ppm/℃以下であることが好ましく、25.3ppm/℃以下であることがより好ましく、22.3ppm/℃以下であることがさらに好ましい。
【0117】
また、第一絶縁層の湿度膨張係数は、より小さいことが好ましい。湿度変化による反りを小さくすることができるからである。第一絶縁層の湿度膨張係数は、例えば20ppm/%RH以下であることが好ましく、12ppm/%RH以下であることがより好ましい。
【0118】
ここで、湿度膨張係数の測定方法について下記に記載する。
【0119】
まず、温度を25℃に固定し、湿度を15%RH、20%RH、50%RHと変化させる。その後、湿度20%RHと50%RHの伸び量から湿度1%あたりの伸びを計算し、湿度膨張係数(CHE)とする。なお、計算式は次式の通りである。
【0120】
湿度膨張係数=湿度1%あたりの伸び/初期長×10[ppm/%Rh]
=湿度20%RH〜50%RHの伸び量/30/初期長×10[ppm/%Rh]
1)サンプル形態
サンプルサイズ 幅5mm×長さ15mm(掴み+5mm)
厚み 7〜8μm程度
初期状態 十分に乾燥した状態
2)測定条件
装置 RIGAKU製 S−TMA(湿度発生装置付きTMA)
加重 5g
温度 25℃
3)測定方法
1.サンプルの環境が湿度15%RHで安定し、サンプル長が一定となり変化しなくなってから、0.5h以上保持
2.次にサンプルの環境が湿度20%RHで安定し、サンプル長が一定となり変化しなくなってから、0.5h以上保持(サンプル長を測定)
3.引き続いてサンプルの環境が湿度50%RHで安定し、サンプル長が一定となり変化しなくなってから、0.5h以上保持(サンプル長を測定)
4.湿度20%時と湿度50%時の値の差を計算し、1/30して湿度1%あたりの伸び量を出す
5.湿度1%あたりの伸び量を初期長(15mm)で割り、変化率とする
第一絶縁層の厚さは、金属支持基板および導体層の間に所望の絶縁性を発揮できる程度の厚さであれば特に限定されるものではないが、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0121】
2.第二絶縁層
次に、本発明における第二絶縁層について説明する。本発明における第二絶縁層は、導体層上に形成される層である。通常は、導体層を覆うように第二絶縁層が形成される。
【0122】
第二絶縁層の材料は、特に限定されるものではないが、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、第二絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。
【0123】
本発明においては、前記第二絶縁層が前述の一般式(1)で表わされるポリイミド樹脂を有することが好ましい。
【0124】
本発明においては、第二絶縁層の線熱膨張係数が金属支持基板の線熱膨張係数と同等かより小さいことが好ましい。この場合、第二絶縁層の線熱膨張係数と、金属支持基板の線熱膨張係数との差は、13ppm/℃以下であることが好ましく、8ppm/℃以下であることがより好ましく、5ppm/℃以下であることがさらに好ましく、0〜4ppm/℃であることが最も好ましい。線熱膨張係数の差を上記の上限値以下とすることにより、第一絶縁層の線熱膨張係数の影響を緩和しつつ、逆方向の反りの発生を抑制するため好ましい。また、両者の差は、通常0ppm/℃よりも大きい。
【0125】
本明細書中において、「第二絶縁層の線熱膨張係数と、金属支持基板の線熱膨張係数との差が0〜4ppm/℃である」とは、上記第二絶縁層の線熱膨張係数の値が、金属支持基板の線熱膨張係数よりも0から4ppm/℃高いことを意味する。
【0126】
本発明によれば、第二絶縁層の線熱膨張係数と金属支持基板の線熱膨張係数との差を上記の範囲に設定することにより、第一絶縁層の線熱膨張係数が金属支持基板の線熱膨張係数よりも大きく、反りが生じやすい状態であっても、反りの小さい回路基板とすることができるため好ましい。従来、市販の三層材(金属支持基板/第一絶縁層/導体層からなる積層部材)は、第一絶縁層の線熱膨張係数が金属支持基板の線熱膨張係数よりも大きい場合がある。このような三層材を用いて回路基板を作製すると、後に形成する第二絶縁層の線熱膨張係数の影響により、反りが顕著に生じやすい。これに対して、本発明においては、第一絶縁層の線熱膨張係数の影響を緩和するという観点から、第二絶縁層の線熱膨張係数と金属支持基板の線熱膨張係数との差を上記の範囲とすることにより反りを小さくすることができるため好ましい。
【0127】
また、第二絶縁層の線熱膨張係数の具体的な値は、金属支持基板の線熱膨張係数との差により規定されるものである。例えば、金属支持基板の材料がSUS304(線熱膨張係数:17.3ppm/℃)である場合、第二絶縁層の線熱膨張係数は、例えば4.3ppm/℃以上、21.3ppm/℃未満であることが好ましく、9.3ppm/℃以上、21.3ppm/℃未満であることがより好ましく、12.3ppm/℃以上、21.3ppm/℃未満であることがさらに好ましい。
【0128】
また、第二絶縁層の湿度膨張係数は、より小さいことが好ましい。湿度変化による反りを小さくすることができるからである。第二絶縁層の湿度膨張係数は、例えば20ppm/%RH以下であることが好ましく、12ppm/%RH以下であることがより好ましい。
【0129】
好ましい実施形態において、第二絶縁層は、前述の式(1)で表されるポリイミド樹脂を含有する。当該ポリイミド樹脂の構造、含有量、製造方法等は、前述の通りである。
【0130】
3.導体層
次に、本発明における導体層について説明する。本発明における導体層は第一絶縁層上に形成される層である。
【0131】
導体層の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅(Cu:圧延銅、電解銅)等を挙げることができる。なお、銅の線熱膨張係数は、通常、16.7ppm/℃である。導体層の厚さは、特に限定されるものではないが、それぞれ、例えば1μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、3μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。また、導体層の線幅は、特に限定されるものではないが、それぞれ、例えば10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、15μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0132】
さらに、導体層の表面は、Niめっき、Auめっき等により保護めっき層が形成されていても良い。劣化(腐食等)を効果的に防止できるからである。保護めっき層の厚さは、5μm以下であることが好ましく、1μm〜2μmの範囲内であることがより好ましい。
【0133】
導体層の機能は、特に限定されるものではない。上記機能の具体例としては、信号伝送配線としての機能、グランド配線としての機能、電源配線等を挙げることができる。特に、本発明の回路基板がサスペンション用基板である場合、上記の機能の具体例としては、ライト配線またはリード配線としての機能、フライトハイトコントロール用配線としての機能、グランド配線としての機能、電源配線としての機能、センサー用配線としての機能、アクチュエータ用配線としての機能、熱アシスト用配線としての機能、マイクロ波アシスト用配線としての機能等を挙げることができる。また、本発明においては、導体層が、それぞれ複数形成されていても良い。
【0134】
4.金属支持基板
次に、本発明における金属支持基板について説明する。本発明における金属支持基板は、回路基板の支持体として機能するものである。また、本発明の回路基板がサスペンション用基板である場合は、金属支持基板が所定のばね性を有することが好ましい。
【0135】
金属支持基板の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼を挙げることができ、中でもSUS304(線熱膨張係数:17.3ppm/℃)、SUS410(線熱膨張係数:10.4ppm/℃)、SUS430(線熱膨張係数:10.4ppm/℃)、SUS630(線熱膨張係数:11.6ppm/℃)等を挙げることができ、特に、SUS304が好ましい。特に本発明においては、金属支持基板および導体層の材料の線熱膨張係数が10ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましい。
【0136】
金属支持基板の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば3μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。金属支持基板の厚さが薄すぎると、機械的強度が低下する可能性があり、金属支持基板の厚さが厚すぎると、剛性が高くなり過ぎる可能性があるからである。また、金属支持基板の厚さが薄いほど、より各絶縁層の線熱膨張係数のコントロールを精密に行う必要がある。
【0137】
回路基板における金属支持基板の残存割合は、特に限定されるものではないが、例えば30%以上であることが好ましく、30%〜60%の範囲内であることがより好ましい。なお、金属支持基板の残存割合とは、回路基板の平面視面積に占める、金属支持基板の平面視面積の割合をいう。また、回路基板の平面視面積とは、回路基板の外径線によって囲まれる面積であり、内部に貫通孔が形成されている場合は、その貫通孔の平面視面積をも含むものである。
【0138】
5.回路基板
本発明の回路基板は、上述した、金属支持基板、第一絶縁層、導体層および第二絶縁層を有するものである。中でも、本発明の回路基板は、金属支持基板の材料がSUS304であり、導体層の材料がCuであり、第一絶縁層および第二絶縁層の材料がポリイミド樹脂であり、さらに、第二絶縁層を構成するポリイミド樹脂が同じ材料であり、さらに、金属支持基板の厚さが16μm〜22μの範囲内であり、第一絶縁層の厚さが6μm〜12μmの範囲内であり、導体層の厚さが7μm〜16μmの範囲内であり、導体層上に形成された第二絶縁層の厚さが2μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。
【0139】
また、本発明の回路基板の用途は、特に限定されるものではないが、サスペンション用基板、デジタルスチルカメラ用基板、デジタルビデオカメラ用基板、携帯電話用基板、携帯用パーソナルコンピューター用基板、液晶テレビ用基板、液晶表示素子用ドライバ基板、カセットデッキ用基板、CDプレーヤー用基板、DVDプレーヤー用基板、ブルーレイプレーヤー用基板、コピー機用基板、ファックス用基板、人工衛星用基板、ミサイル用基板、ジェット戦闘機用基板等を挙げることができる。
【0140】
また、本発明の回路基板を製造する方法は、上述した回路基板を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。回路基板の製造方法の一例について図3を用いて説明する。なお、図3は、図2と同様に回路基板の概略断面図である。
【0141】
図3においては、まず、金属支持基板1X、第一絶縁層2Xおよび導体層3Xがこの順に積層した積層部材を準備する(図3(a))。次に、積層部材の両面にドライフィルムレジスト(DFR)を配置し、露光現像を行うことにより、所定のレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出する部分をウェットエッチングし、金属支持基板1および導体層3を形成する(図3(b))。その後、導体層3を覆うように、前述の式(1)で表されるポリイミド樹脂を含む第二絶縁層4を形成する(図3(c))。第二絶縁層4の材料が感光性材料である場合は、露光現像により所定のパターンを形成することができる。一方、第二絶縁層4の材料が非感光性材料である場合は、DFRを用いて所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する部分をウェットエッチングすることにより、所定のパターンを形成することができる。これにより、回路基板を得ることができる。本発明において、導体層、金属支持基板、完全にイミド化した絶縁(ポリイミド)層をパターン形成のために溶解することをエッチングとし、ポリイミド前駆体をパターン形成のために溶解させることを現像と表現する。
【0142】
ポリアミド酸に代表されるポリイミド前駆体は、有機溶媒や、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などの低濃度の塩基性水溶液に対して易溶である。これはポリアミド酸の場合、分子骨格中に有しているカルボキシル基の作用に依存する部分が大きい。
【0143】
一方、イミド化し、ポリイミドとなったものについては、有機溶媒に難溶であり、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などの低濃度の塩基性水溶液には溶解しない。そのため、イミド化された後のポリイミドを選択的に除去するには、アルカリーアミン系などの高濃度の塩基性(水)溶液をもちいて、ポリイミド自体を分解しながら除去する必要がある。つまり、選択的に除去する場合でも、その溶解メカニズムが異なるため、本発明においては区別して表記する。
【0144】
また、金属支持基板1X、第一絶縁層2Xおよび導体層3Xがこの順に積層した積層部材を準備する代わりに、金属支持基板上に第一絶縁層2Xを形成する工程、及び第一絶縁層2X上に導体層3Xを形成する工程を行う以外、上記方法に従い回路基板を製造することもできる。この場合、第一絶縁層2Xは、前記第二絶縁層4の製法と同様にして製造することができる。また導体層3Xの製造方法は、自体公知の方法を適宜採用することができる。
【0145】
A’.第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方を製造するための樹脂組成物
また、本発明は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された導体層と、前記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板における、第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方を製造するための樹脂組成物であって、下記一般式(1’)
【0146】
【化28】

[式中、Rは4価の有機基を示す。
は2価の有機基を示す。
’は水素原子又は飽和もしくは不飽和のイミド環基の前駆体を示す。
’は飽和又は不飽和のイミド環基の前駆体を示す。
10は、水素原子又は1価の有機基を示す。
複数あるR、R及びR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるポリイミド樹脂前駆体を含有する樹脂組成物を提供する。
【0147】
ここで、R’及びR’で示される飽和もしくは不飽和のイミド環基の前駆体としては、例えば、
【0148】
【化29】

[式中、R及びmは前記に同じ。
14は、水素原子又は1価の有機基を示す。)]
が挙げられる
14で示される有機基としては、水素原子、炭化水素、炭化フッ素等が挙げられる。
【0149】
14で表される有機基が炭化水素又は炭化フッ素の場合、例えば、炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6のものが挙げられる。
【0150】
A’’.回路基板の製造方法
また、本発明は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された導体層と、前記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板の製造方法であって、
前記導体層に、樹脂組成物を塗布する工程及び
当該塗布した樹脂組成物を加熱硬化して第二絶縁層を形成する工程を含み、
当該樹脂組成物が、前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物である、方法を提供する。
【0151】
当該方法においては、まず、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された導体層とからなる積層体に、一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を、塗布する工程を含む。
【0152】
塗布したポリイミド前駆体含有樹脂組成物に、必要に応じて現像処理を行う。現像処理の操作は、自体公知の方法を利用して適宜行うことができる。
【0153】
次いで、ポリイミド前駆体含有樹脂組成物を加熱硬化して、第二絶縁層を形成する。
【0154】
6.その他の実施態様
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された導体層と、上記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する回路基板であって、上記金属支持基板および上記導体層の線熱膨張係数の平均をCTE(ppm/℃)とした場合に、上記第一絶縁層および上記第二絶縁層の線熱膨張係数が、いずれも、CTE±13(ppm/℃)の範囲内にあることを特徴とする回路基板を提供することができる。
【0155】
本発明によれば、回路基板を構成する各部材の線熱膨張係数を、できるだけ近づけることにより、反りの小さい回路基板とすることができる。なお、回路基板を構成する各部材の詳細やその他の事項については、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0156】
B.サスペンション用基板
次に、本発明のサスペンション用基板について説明する。本発明のサスペンション用基板は、上述した回路基板である・BR>アとを特徴とするものである。
【0157】
上述した図1および図2は、本発明のサスペンション用基板を説明する模式図である。本発明においては、図1および図2に示すように、導体層3が、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12の間を電気的に接続する配線層であることが好ましい。低インピーダンス化が容易だからである。なお、導体層3は、また、導体層3は、ライト配線であっても良く、リード配線であっても良いが、ライト配線であることが好ましい。ライト配線では、特に低インピーダンス化が求められているからである。さらに、本発明においては、図2に示すように、金属支持基板1が、平面視上導体層3下に開口領域を有していても良い。これにより、電気信号(特に高周波信号)が導電性の低い金属支持基板を伝送することで伝送ロスが大きくなることを防止できる。
【0158】
本発明によれば、上述した回路基板を用いることで、反りの小さいサスペンション用基板とすることができる。なお、回路基板については、上記「A.回路基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0159】
C.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするものである。
【0160】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さいサスペンションとすることができる。
【0161】
図4は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図4に示されるサスペンション40は、上述したサスペンション用基板20と、素子実装領域11が形成されている表面とは反対側のサスペンション用基板20の表面に備え付けられたロードビーム30とを有するものである。
【0162】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板を有し、通常は、さらにロードビームを有する。サスペンション用基板については、上記「B.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ロードビームは、一般的なサスペンションに用いられるロードビームと同様のものを用いることができる。
【0163】
D.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とするものである。
【0164】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さい素子付サスペンションとすることができる。
【0165】
図5は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図5に示される素子付サスペンション50は、上述したサスペンション40と、サスペンション40の素子実装領域11に実装された素子41とを有するものである。
【0166】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子を有するものである。サスペンションについては、上記「C.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、素子実装領域に実装される素子としては、例えば、磁気ヘッドスライダ、アクチュエータ、半導体等を挙げることができる。また、上記アクチュエータは、磁気ヘッドを有するものであっても良く、磁気ヘッドを有しないものであっても良い。
【0167】
E.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0168】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0169】
図6は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図6に示されるハードディスクドライブ60は、上述した素子付サスペンション50と、素子付サスペンション50がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク51と、ディスク51を回転させるスピンドルモータ52と、素子付サスペンション50の素子を移動させるアーム53およびボイスコイルモータ54と、上記の部材を密閉するケース55とを有するものである。
【0170】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「D.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0171】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0172】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0173】
[合成例1]
パラフェニレンジアミン(PPD)5.41g(50mmol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)10.0g(50mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、203gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した、その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
[合成例2〜4]
以下の表1に示す配合比を用いた以外は合成例1に示すのと同様の方法で、反応温度、および溶液の濃度が17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整し、ポリイミド前駆体溶液2〜4を得た。
【0174】
[合成例5]
PPD80mmolとODA20mmolとを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水NMPに溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら当該溶液を撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、当該溶液に、少しずつ30分かけてBPDA99mmolを添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。溶液を1gサンプリングして脱水NMP2gで希釈した。その溶液をアセトン50mlに再沈殿した。沈殿物はろ別し、H NMRで減圧乾燥した沈殿物の末端基量を算出した。残りの溶液に、末端封止剤として無水フタル酸(PA)を末端基量に対して100mol%投入し1時間50℃で撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液5を得た。
【0175】
[合成例6]
<架橋性末端封止ポリイミド前駆体>
PPD20mmolと、ODA80mmolとを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水NMPに溶解させ窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけてBPDA99mmolを添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。溶液を1gサンプリングして脱水NMP2gで希釈した。その溶液をアセトン50mlに再沈殿した。沈殿物はろ別し、H NMRで減圧乾燥した沈殿物の末端基量を算出した。残りの溶液に架橋性末端封止剤として4−フェニルエチニルフタル酸(PEPA)無水物を末端基量に対して100mol%投入し1時間50℃で撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液21を得た。ポリイミド前駆体溶液21の末端基導入量は、前述の<末端封止基導入量算出>に記載の方法に従い算出した。
【0176】
[合成例7〜13]
下記表1に示すようにジアミンの組成を適宜変更し、架橋性末端封止剤である4−フェニルエチニルフタル酸(PEPA)を適宜変更する以外は合成例6に示すのと同様の方法で、ポリイミド前駆体溶液7〜13を得た。架橋性末端封止剤の説明を、表2に示す。
4,4'-ジアミノジフェニルメタン:DDM
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

[合成例17〜23]
末端封止剤である無水フタル酸の下記表3に示す量添加する以外は合成例5に示すのと同様の方法で、ポリイミド前駆体溶液14〜20を得た。
【0179】
<末端封止基導入量算出>
ポリイミド前駆体溶液15〜20の末端封止基導入量を以下のようにして算出した:
ポリイミド前駆体溶液15〜20を1gサンプリングしてNMP2gで希釈した。その溶液をアセトン50mlに再沈殿した。沈殿物はろ別し、H NMRで減圧乾燥した沈殿物の末端封止基導入量を算出した。
【0180】
【表3】

[評価1]
ポリイミドフィルムの製造(A)
上記ポリイミド前駆体溶液1〜14を、ガラス上に貼り付けたユーピレックスS 50S(商品名:宇部興産)フィルムに塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、乾燥させた後、剥離し、膜厚15〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃1時間、熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9〜15μmポリイミド1〜14のフィルムを得た(以下、ポリイミド1A〜14Aと示す)。
【0181】
<線熱膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μmとし、100℃から200℃の間の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
【0182】
<湿度膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。湿度膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値を、サンプル長で割った値を湿度膨張係数(C.H.E.)とした。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μmとした。これらの評価結果は後述する表4に示す。
【0183】
[製造例1]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持基板、線熱膨張係数17.3ppm/℃)、厚さ10μmのポリイミド樹脂層(第一絶縁層、線熱膨張係数21.0ppm/℃)、厚さ5μmの電解銅層(導体層、線熱膨張係数16.7ppm/℃)を有する積層部材を準備した。
【0184】
次に、SUS側で位置精度が重要な治具孔と、電解銅側で目的とする導体層とを形成できるように、ドライフィルムを用いて同時にパターニングし、パターン状のレジストを形成した。その後、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。ここでは、ドライフィルムを同時にパターニングすることで、SUS側および導体層側の両面の位置精度を向上させることができる。
【0185】
次に、パターニングされた導体層上に、上述した合成例1で得たポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、乾燥後、レジスト製版し同時にポリイミド前駆体膜を現像し、その後、窒素雰囲気下、加熱することにより硬化(イミド化)させ、ポリイミド1からなる第二絶縁層を形成した。第二絶縁層は導体層を覆うように形成され、導体層上に形成された第二絶縁層の厚さは10μmであった。
【0186】
[製造例2〜5、11〜13]
第二絶縁層を形成するため、合成例1で得たポリイミド前駆体溶液1の代わりに、合成例2〜14で得たポリイミド前駆体2〜5、11〜13を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、回路基板を得た。
【0187】
[評価2]
製造例2、5、11及び12で得られた回路基板の平均反り量を測定した。反りの測定は、加工シートから長さ50mmの回路基板を1ピース切断し、銅配線面を上面にして定盤上に置き、定盤表面から垂直方向に回路基板の先端までの距離を高精度定規で測定することにより行った。なお、測定は、温度25℃、湿度50%RHの条件で行った。また、測定サンプル数はそれぞれn=5とし、平均反り量が0以上、2未満のものを◎、2以上、5mm未満のものを○、5mm以上のものを×とした。その結果を表4に示す。
【0188】
【表4】

表4の結果から、第二絶縁層を構成するポリイミド樹脂の線熱膨張係数が、金属支持基板(SUS)の線熱膨張係数(17.3ppm/℃)に近い場合に効果的に反りを低減できることが確認できた。[評価2]においてはポリイミド樹脂の線熱膨張が19.0ppmから18.6ppmであったので平均反り量が2mm以下となり非常に良好な結果を示した。
【0189】
[製造例14〜21]
ポリイミド前駆体溶液2、5〜10をクロムガラス基板上にスピン塗布にて塗工し、80℃60分間乾燥させた。膜厚20±1μmのポリイミド前駆体膜を得た。
【0190】
[評価3]
<現像溶解時間>
上記製造例14〜21で得られたポリイミド前駆体膜のそれぞれについて、以下のようにして現像溶解時間を測定した。ポリイミド前駆体膜を現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム1%水溶液)に液温25℃に調整し、浸漬させた。その後、純水で30秒間リンス後、窒素ガスを噴き付け乾燥させた。現像溶解時間はすべての膜が溶解した現像液での浸漬時間とした。
【0191】
<線熱膨張係数>
ポリイミドフィルムの製造(B)
上記ポリイミド前駆体溶液15〜25を、ガラス基板上に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた。その後、塗工されたガラス基板を窒素雰囲気下350℃1時間、熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)した。得られた塗工基板を純水に浸漬し、ポリイミドフィルムを基板から剥離した。膜厚9〜15μmポリイミド15〜25のフィルムを得た(以下、ポリイミド15B〜25Bと示す)。
【0192】
ポリイミドフィルム15B〜20Bについて、前述の方法により、線熱膨張係数を測定した。結果を図8に示す。より具体的には、図8には、末端基導入量に対する現像溶解時間と線熱膨張係数の結果を示す。ポリイミド前駆体15〜20のポリイミド膜の線熱膨張係数は末端封止基導入量が68.2%から80.2mol%では線熱膨張係数は18.4から18.7ppm/℃で一定で導入量が65mol%以下では低下した。これらのように、末端基導入量を変化させることにより10ppm〜30ppm/℃の範囲で調整することができる。そして、同様に現像液溶解時間は末端封止基導入量が50mol%以上100mol%以下では4分間であった。後述の[評価4]に示すように、末端封止基導入量が0の場合、現像液溶解時間は15分間であることから、末端封止基を導入することにより、所望の線熱膨張係数を得つつ現像性をより高めることができることが分かる。
【0193】
[評価4]
ポリイミド前駆体溶液2、前駆体溶液5及び6から10をそれぞれ用い、前述の[評価3]と同様にして現像溶解時間を測定した。
【0194】
次に、前駆体溶液2を用いる以外、上記ポリイミドフィルムの製造(B)の方法を用いて、ポリイミドフィルムを得た(以下、ポリイミド2Bと示す)。
【0195】
そして、湿度膨張係数については、ポリイミド2B、5B及び6B〜10Bを用いて評価を行った。湿度膨張係数を測定方法は、[評価1]<湿度膨張係数>に記載の方法により行った。下記表5及び6に、各前駆体溶液についての現像溶解時間、及び各ポリイミドフィルムの湿度膨張係数を示す。
【0196】
【表5】

【0197】
【表6】

上記表5から明らかなように、末端基が封止されていないアミン末端のポリイミド前駆体2は現像溶解時間が15分で有るのに対し、末端基、架橋性末端基を導入した前駆体溶液16、21〜25を用いた場合、それぞれ4分と、現像溶解時間が短縮することができた。
【0198】
ポリイミド膜の湿度膨張率が低い前駆体溶液から得られる回路基板は湿度に対する反りが低いことを示す。前駆体溶液16及び21は、末端基、架橋性末端基の導入量は同程度であるが、湿度膨張係数は、前駆体溶液16を用いた場合9.7ppm/%RHであるのに対し、前駆体溶液21を用いた場合8.2ppm/%RHとなった。これらのことから、架橋性末端基を導入することにより、湿度膨張係数を低減することができることが分かる。尚、本発明が属するハードディスクドライブに用いるサスペンション用基板は、サスペンションの先端にある素子とディスクとの間隔を非常に近接させつつ接触しないように保持させるために、非常に高い形体安定性を必要とされる。従って湿度膨張係数を約1.5ppm/%RH低減させたことは非常に有用である。
[合成例21]
<酸性末端ポリイミド前駆体>
BPDA100mmolを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水NMPに分散させた。次にPPD19mmolと、ODA75mmolとを投入した。窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。そこへ、少しずつPPDとODAを添加した、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液24を得た。この方法により末端が酸無水物残基のポリイミド前駆体溶液を得た。
ポリイミドフィルムの製造(B)で製造したポリイミド膜を温度85℃湿度85%RHの環境下に24時間放置した。その後ポリイミド膜を乾燥した。湿度膨張係数については、ポリイミド2B、5B及び21Bを用いて評価を行った。湿度膨張係数を測定方法は、[評価1]<湿度膨張係数>に記載の方法により行った。下記表7に各ポリイミドフィルムの湿度膨張係数を示す。
【0199】
【表7】

上記、表7より酸無水物残基が末端であるポリイミド膜21Bは湿度膨張率が大きくなる。空気中の水分により酸無水物残基はカルボキシル基となり吸湿性が大きくなったものと考えられる。ポリイミド膜21Bを回路基板に使用した場合湿度による反りが出やすくなる。また、末端が酸性のカルボキシル基になることで銅配線を腐食し、絶縁信頼性が低下する懸念もある。ポリイミド膜5Bのように末端封止したポリイミド膜は湿度による反りや絶縁信頼性低下の懸念がなく回路基板用途に有用である。
【0200】
これらの結果から、前述の式(1)で表わされるポリイミド樹脂を絶縁層に用いた場合、積層体の回路基板は、回路基板の反りが小さく、その製造の際、短時間で現像することができ、かつ得られた高温高湿度の環境に放置しても膨張しにくいという優れた効果を併せもつことが分かる。
【0201】
[合成例22、23]
表8に示す配合比を用いた以外は合成例1に示すのと同様の方法で、ポリイミド前駆体22、23を得た。

[合成例24〜30]
表8に示す配合比を用いた以外は合成例5に示すのと同様の方法で、末端封止されたポリイミド前駆体24〜30を得た。

[合成例31〜32]
表8に示す配合比を用いた以外は合成例6に示すのと同様の方法で、反応性末端PEPAを有するポリイミド前駆体31〜32を得た。
【0202】
【表8】

[合成例33〜35]
合成例5に従い表8に示すポリイミド前駆体25と同様のモル比で合成を行うが、BPDA量を96mol%から少量ずつ添加していき数平均分子量を16000、26000、32000まで反応させたポリイミド前駆体をそれぞれ得た。末端基量の計算は合成例5と同様に行い、残りの溶液に末端封止剤として無水フタル酸(PA)を末端基量に対して100mol%投入して1時間50℃で攪拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体33、34、35を得た。

[合成例36〜40]
合成例5に従い表8に示すポリイミド前駆体25と同様のモル比で合成を実施、BPDA量を98mol%まで少量ずつ添加していき合成例5と同様に末端基量の定量を実施。 定量された末端基量に対して105、80、70、60、50mol%の無水フタル酸(PA)を投入、1時間50℃で攪拌後に室温まで冷却、ポリイミド前駆体36、37、38、39、40を得た。

<数平均分子量>
合成例5に記載されている末端基量の算出方法に従い、末端基量を計算。 末端基量から重合度を計算、これにポリマー1ユニットの分子量をかけて数平均分子量を算出した。

<末端封止率>
前述の方法により、末端封止反応前後の末端封止量の比から末端封止率を計算した。

<現像溶解時間>
製造例14〜21と同様にポリイミド前駆体22〜40を用いてポリイミド前駆体膜を得た。評価3と同様の条件により評価を実施、現像溶解時間を求めた。末端封止されていないポリイミド前駆体22、23の結果を比較例2〜3に、末端封止されたポリイミド前駆体24〜40の結果は実施例7〜23に数平均分子量、末端封止率と共に記載する。

<線熱膨張係数><湿度膨張係数>
ポリイミドフィルムの製造(B)に従いポリイミド前駆体22〜40のフィルムポリイミド22B〜40Bを得た。

前述の方法により線熱膨張係数CTE、湿度膨張係数CHEの測定を実施した。これらの評価結果をまとめて表10に示す。
【0203】
【表9】

【0204】
【表10】

<積層体構造の反り量評価>
製造例1に従いポリイミド前駆体1の代わりにポリイミド前駆体24〜27を用いて回路基板を得た。さらに評価2の条件に従い基板反り量を測定した。結果を表11に示す。
【0205】
【表11】

上記、実施例7〜23より末端に末端封止剤を反応させたポリイミド前駆体は短い時間で現像が可能で製造工程の短縮、現像液の節約を図ることが可能となり製造工程上のメリットが大きい。比較例2〜3の結果では末端封止剤を反応させない場合に現像速度が非常に遅くなってしまうことが示されている。ポリイミド27、28の結果ではジアミンを3種混合して用いても他の末端封止したポリイミド前駆体と同様の現像溶解時間が得られることが示されている。ポリイミド29〜30の結果ではさらにODA、DDM以外のジアミンを用いても末端封止することにより良好な現像性が得られることが示されている。さらにポリイミド30〜32では架橋性末端の場合に良好な現像性と合わせてCHEの低減効果も得られることが改めて示された。ポリイミド33〜40では様々な数平均分子量、末端封止率を有している場合でも末端封止されていない場合よりも良好な現像性が得られ、さらに表10からCTE、CHEも大きく変化しないことが示されている。実際にこれらのポリイミド前駆体を用いて積層体構造の作成を試みたが、表11に示される通りにいずれの場合も反りの小さい積層体構造として望ましいものが得られている。これらのことから、末端封止することにより様々なジアミンを用いても良好な現像性が得られ、且つ線熱膨張や湿度膨張に悪影響を与えることなく積層体構造の製造に好適に用いることができる。
【0206】
本特許のポリイミド前駆体によれば現像時間の短縮という製造工程上の大きなメリットがあり、且つ反りの抑えられた積層体構造の製造が可能になる。
【符号の説明】
【0207】
1…金属支持基板、 2…第一絶縁層、 3…導体層、 4…第二絶縁層、 11…素子実装領域、 12…外部回路基板接続領域、 13…配線層、 20…回路基板 30…ロードビーム、40…サスペンション、41…素子、50…素子付サスペンション、51…ディスク、52…スピンドルモータ、53…アーム、54…ボイスコイルモータ、55…ケース、60…ハードディスクドライブ、101…金属支持基板、102…絶縁層(ベース絶縁層)、103…導体層、104…絶縁層(カバー層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された導体層と、前記導体層上に形成された第二絶縁層とを有する四層構造の回路基板であって、
前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方が、下記式(1)で表されるポリイミド樹脂を含有する、回路基板:
【化1】

[式中、Rは4価の有機基を示す。
は、同一又は異なって、2価の有機基を示す。
は水素原子又は飽和もしくは不飽和のイミド環基を示す。
は飽和又は不飽和のイミド環基を示す。]。
【請求項2】
前記第一絶縁層及び第二絶縁層の少なくとも一方に含まれるポリイミド樹脂の末端封止率が10mol%以上である、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記飽和又は不飽和のイミド環基が、下記式(2)で表される、請求項1又は2に記載の回路基板:
【化2】

[式中、Rは、
【化3】

(式中、Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、カルボキシル基又は有機基を示す。

を示す。
mは、自然数を示す。
mが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
2つ以上のRは、これらが結合する炭素原子と共に、環状構造を形成してもよい。]。
【請求項4】
前記飽和又は不飽和のイミド環基が、下記式(2−1)〜(2−5)のいずれかで表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路基板:
【化4】

[式中、Rは、同一又は異なって、水素又は有機基を示す。2以上のRは、これらが結合する炭素原子と共に環状構造を形成していてもよい。]。
【請求項5】
前記飽和又は不飽和のイミド環基が架橋性二重結合又は架橋性三重結合を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記第一絶縁層の線熱膨張係数が、前記金属支持基板の線熱膨張係数よりも大きく、
前記第二絶縁層の線熱膨張係数と前記金属支持基板の線熱膨張係数との差が0〜4ppm/℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項7】
前記R、炭素原子、酸素原子及び窒素原子により構成される構造:
【化5】

が、下記式(A−1)又は(A−2)
【化6】

で表される構造を示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項8】
前記Rで示される2価の有機基が、同一又は異なって、下記式(B−1)〜(B−10)
【化7】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素または1価の有機基を示す。Rは、同一又は異なって、水素、炭化水素基、又はアルコキシ基を示す。Rは、
【化8】

を示す。]
で表される構造のいずれかを示す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項9】
前記Rで示される2価の有機基が、同一又は異なって、下記式(B−1)、(B−2)、(B−3’)、(B−6)〜(B−10)
【化9】

[式中、R’及びR’は、同一又は異なって、水素、メチル基、メトキシ基またはトリフルオロメチル基を示す。Rは、同一又は異なって、水素、炭化水素基、またはアルコキシ基を示す。Rは、
【化10】

を示す。]
で表される構造のいずれかを示す、請求項8に記載の回路基板。
【請求項10】
前記金属支持基板及び前記導体層の材料の線熱膨張係数が10ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であり、前記第二絶縁層の材料がポリイミド樹脂である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項11】
前記金属支持基板の材料がSUS304であり、前記導体層の材料がCuであり、前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層の材料がポリイミド樹脂である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項12】
前記第二絶縁層の線熱膨張係数が、4.3ppm/℃以上、21.3ppm/℃未満である、請求項11に記載の回路基板。
【請求項13】
前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層の湿度膨張係数が、20ppm/%RH以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の回路基板である、サスペンション用基板。
【請求項15】
請求項14に記載のサスペンション用基板を含むサスペンション。
【請求項16】
請求項15に記載のサスペンションと、前記サスペンションの素子実装領域に実装された素子とを有する素子付サスペンション。
【請求項17】
請求項16に記載の素子付サスペンションを含むハードディスクドライブ。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101741(P2013−101741A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229015(P2012−229015)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】