説明

回路基板の製造方法

【課題】導電性ペーストによるビア接続を具備する回路基板に対して、極めて容易かつ確実にビア接続が確保できる回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】プリプレグシート11の両面に有機質フィルム12を備え、かつ所望の位置に導電性ペーストが充填された貫通穴13を具備する回路基板の製造方法であって、その貫通穴13において(前記有機質フィルムの穴径rf1、rf2/前記有機質フィルムの厚みtf1、tf2)が3以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に利用される回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・高密度化に伴って、より多くの回路および部品を搭載できる高密度実装が可能な回路基板が開発されている。
【0003】
図7Aから図7Fは従来の回路基板501の製造方法を示す断面図である。
【0004】
図7Aは回路基板を製造するための中間材21の断面図である。中間材21は、プリプレグシート121と、プリプレグシート121の面121A、121Bに熱ロール等を用いたラミネート法により貼り付けられた有機質フィルム22とを有する。プリプレグシート121は、ガラス繊維織布と、そのガラス繊維織布に含浸されたエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂よりなり、熱硬化性樹脂は乾燥等の方法によりBステージ状態にある。
【0005】
次に、図7Bに示すように、レーザ等の加工法により中間材21に貫通穴23を形成した後、中間材21を多孔質シートの上に配置し、その多孔質シートを介して中間材21を吸引する。中間材21を吸引しているときに、貫通穴23に導電性ペースト24を印刷法等で充填する。
【0006】
その後、多孔質シートから中間材21を剥離して、図7Cに示すように、貫通穴23に導電性ペースト24が充填された中間材21が得られる。導電性ペースト24は導電性粒子と熱硬化性樹脂、硬化剤、溶剤などを混練して得られる。
【0007】
次に、図7Dに示すように、有機質フィルム22を剥離して、導電性ペースト24が面121A、121Bから突出するプリプレグシート121が得られる。プリプレグシート121の面121A、121B上に銅箔25が配置される。
【0008】
次に、SUS等の金属中間板でプリプレグシート121と銅箔25を挟み、熱プレスによって加熱加圧することで中間材21は熱硬化して硬化基板122となる。さらに、図7Eに示すように、導電性ペースト24は圧縮されて、銅箔25が電気的に接続されたビア導体124となる。
【0009】
次に、フォトリソエッチング等の方法で銅箔25を所望のパターンに加工して回路配線層26とし、図7Fに示す回路基板501を得る。必要に応じて、回路配線層26と硬化基板122上にソルダーレジストが設けられる。あるいは、必要に応じて回路配線層26にめっき処理等の表面仕上げ処理が施される。
【0010】
図8Aから図8Dは、従来の多層回路基板503の製造方法を示す断面図である。
【0011】
図8Aは、図7Aから図7Fに示す方法で製造された回路基板501であるコア基板31を示す。コア基板31は、図7Fに示す硬化基板122とビア導体124と回路配線層26にそれぞれ対応する硬化基板132とビア導体133と回路配線層32とを有する。
【0012】
図8Bに示すように、図7Dに示すプリプレグシート121と導電性ペースト24とそれぞれ同様のプリプレグシート36と導電性ペースト35とを、コア基板31の両面に位置合わせし、プリプレグシート36上に銅箔34を重ね合わせて熱プレスする。これにより、プリプレグシート36は硬化基板136となり、図8Cに示すような積層硬化物502を得る。
【0013】
さらにフォトリソエッチング等の方法で銅箔34を所望のパターンに加工して回路配線層37を作成し、図8Dに示す多層回路基板503を得る。必要に応じて、回路配線層37と硬化基板136上にソルダーレジストが設けられる。あるいは、必要に応じて回路配線層37にめっき処理等の表面仕上げ処理が施される。
【0014】
さらに、多層回路基板503をコア基板として図8Aから図8Dに示す方法を繰り返すことにより、多層化された回路基板を得ることができる。
【0015】
図9Aから図9Cは、図7Cに示す導電性ペーストが充填された中間材の製造工程を示す断面図である。
【0016】
図7Cに示すプリプレグシート121と同様に、図9Aに示すように、プリプレグシート43の面43A、43Bには有機質フィルム41が貼り付けられており、貫通穴44が形成されている。有機質フィルム41が貼り付けられたプリプレグシート43は多孔質シート45に吸引され、貫通穴44内には導電性ペースト42が吸引され、貫通穴44は導電性ペースト42で充填される。
【0017】
その後、図9Bと図9Cに示すように、多孔質シート45が剥がされ、有機質フィルム41がプリプレグシート43から剥がされる。これにより、導電性ペースト42の部分42A、42Bが有機質フィルム41の厚みだけプリプレグシート43の面43A、43Bからそれぞれ突出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
高密度で部品を搭載するために、部品の端子間が狭くなるので配線層のランド径を小さくする必要がある。これに伴い、ビア導体の径は小さくなる。
【0019】
高密度実装により回路配線層やビア導体がファイン化し、さらに薄型化により、上記の製造方法で作製された回路基板501、503ではビア導体と回路配線層との間の接続抵抗が著しく大きくなる場合がある。その例を以下に説明する。
【0020】
図10Aから図10Cは、導電性ペーストが充填された他の中間材153の製造工程を示す断面図である。
【0021】
図9Aに示すプリプレグシート43と同様に、図10Aに示すように、プリプレグシート53の面53A、53Bには有機質フィルム51A、51Bがそれぞれ貼り付けられており、貫通穴54が形成されている。有機質フィルム51A、51Bが貼り付けられたプリプレグシート53は多孔質シート55に吸引され、貫通穴54内には導電性ペースト52が吸引され、貫通穴54は導電性ペースト52で充填される。
【0022】
その後、図10Bに示すように、多孔質シート55が剥がされる。
【0023】
その後、図10Cに示すように、有機質フィルム51A、51Bがプリプレグシート53から剥がされる。これにより、導電性ペースト52の部分52Aが有機質フィルム51Aの厚みだけプリプレグシート53の面53Aから突出している。しかし、有機質フィルム51Bを剥離する時に導電性ペースト52の部分56が有機質フィルム51Bについて導電性ペースト52から離れる場合がある。この場合には、貫通穴54に充填される導電性ペースト52の量が本来充填されるべき量より少なくなる。これにより、回路基板でのビア導体と銅箔との接続抵抗が著しく増大し、これらの間で接続不良が発生する。
【0024】
図11Aから図11Cは、導電性ペーストが充填されたさらに他の中間材163の製造工程を示す断面図である。
【0025】
図9Aに示すプリプレグシート43と同様に、図11Aに示すように、プリプレグシート63の両面には有機質フィルム61が貼り付けられており、貫通穴64が形成されている。有機質フィルム61が貼り付けられたプリプレグシート63は多孔質シート65に吸引され、貫通穴64内には導電性ペースト62が吸引され、貫通穴64は導電性ペースト62で充填される。
【0026】
その後、図11Bに示すように、中間材163を多孔質シート65から剥離する際に、貫通穴64から導電性ペースト62の部分66が抜ける場合がある。この場合には、図11Cに示すように、導電性ペースト62が貫通穴64に充填されず、回路基板において銅箔に接続されるビア導体を作製できない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の回路基板の製造方法は、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有し、熱硬化性樹脂を含む厚さ60μm、80μm、100μm、120μmのいずれかのプリプレグシートを準備するステップと、前記プリプレグシートの前記第1面に第1のフィルムと前記第2面に第2のフィルムを貼り付けるステップと、前記プリプレグシートの前記第1面と前記第2面との間を貫通する貫通穴と、前記貫通穴に連結する前記第1のフィルムの第1の穴と、前記貫通穴に連結する前記第2のフィルムの第2の穴とをレーザにより形成するステップと、前記貫通穴と前記第1の穴と前記第2の穴とに導電性ペーストを充填するステップと、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを前記プリプレグシートから剥離するステップと、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを剥離するステップの後で、前記プリプレグシートの前記第1面に第1の金属箔を重ねて積層体を形成するステップと、前記積層体を硬化させるステップとを含み、前記第1のフィルムの厚みtf1と前記第2のフィルムの厚みtf2は10μm〜30μmの範囲であり、前記第1の穴径rf1と前記第2の穴径rf2は、40μm≦rf1、rf2≦180μmの範囲で、かつ前記穴の径に対する前記フィルムの厚みの比R1=rf1/tf1=rf2/tf2が3.0〜8.0の範囲となるように形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
これにより、ファイン化されたビア導体が金属箔に確実かつ安定に接続された回路基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態における中間材の断面図
【図2】実施の形態における中間材の拡大断面図
【図3A】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3B】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3C】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3D】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3E】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3F】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3G】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図3H】実施の形態による回路基板の製造方法を示す断面図
【図4】実施の形態による回路基板の試料の評価結果を示す図
【図5】実施の形態における回路基板を成形する温度プロファイルと圧力プロファイルを示す図
【図6A】実施の形態における多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図6B】実施の形態における多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図6C】実施の形態における多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図6D】実施の形態における多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図7A】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図7B】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図7C】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図7D】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図7E】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図7F】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図8A】従来の多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図8B】従来の多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図8C】従来の多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図8D】従来の多層回路基板の製造方法を示す断面図
【図9A】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図9B】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図9C】従来の回路基板の製造方法を示す断面図
【図10A】従来の他の回路基板の製造方法を示す断面図
【図10B】従来の他の回路基板の製造方法を示す断面図
【図10C】従来の他の回路基板の製造方法を示す断面図
【図11A】従来のさらに他の回路基板の製造方法を示す断面図
【図11B】従来のさらに他の回路基板の製造方法を示す断面図
【図11C】従来のさらに他の回路基板の製造方法を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の実施の形態による回路基板を製造するための中間材1001の断面図である。中間材1001は、プリプレグシート11と、プリプレグシート11の面11A、11Bにそれぞれ貼り付けられた有機質フィルム12A、12Bとを備える。プリプレグシート11には面11A、11B間を貫通する貫通穴13が形成されている。有機質フィルム12A、12Bの貫通穴13が開口する部分に穴112A、112Bがそれぞれ形成されている。
【0031】
すなわち、中間材1001には、貫通穴13と、貫通穴13に連結する穴112A、穴112Bよりなる貫通穴1001Aが形成されている。貫通穴1001Aには導電性ペースト15が充填されている。
【0032】
すなわち導電性ペースト15は穴112A、112Bと貫通穴13に充填されている。
【0033】
有機質フィルム12A、12Bは、厚さtf1、tf2をそれぞれ有し、穴112A、112Bは径rf1、rf2をそれぞれ有する。プリプレグシート11は厚さt1を有し、貫通穴13は最小径rminを有する。中間材1001の厚みt0は以下で表される。
【0034】
t0=t1+tf1+tf2
実施の形態では、rf1/tf1およびrf2/tf2が3以上であり、かつrmin/t0が1.5以下である。この条件を満たす中間材1001では、図10Cに示すように導電性ペースト52の一部が有機質フィルム51A、51Bに付いて取られる現象や、図11Cに示すように導電性ペースト62が多孔質シート65に付いて抜ける現象が起こることを防止できる。
【0035】
有機質フィルム12A、12Bの厚みtf1、tf2は5μm以上30μm以下であることが好ましい。厚みtf1、tf2が5μmより小さいと有機質フィルム12A、12Bは、プリプレグシート11から剥がされる際に破断する場合がある。厚みtf1、tf2が30μmを超えると、図10Cに示すように、導電性ペースト52の一部が有機質フィルム51A、51Bに取られる場合がある。
【0036】
図2は、中間材1001の拡大断面図である。プリプレグシート11は、ガラス繊維織布よりなる補強材211と、補強材211に含浸されたエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂311よりなる。熱硬化性樹脂311は乾燥等の方法によりBステージ状態にある。
【0037】
有機質フィルム12Aは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート等の樹脂フィルムよりなる芯材312Aと、芯材312A上に設けられた離型剤層412Aとを有する。離型剤層412Aは熱硬化性樹脂により形成されてもよい。離型剤層412Aにより、有機質フィルム12Aはプリプレグシート11から容易に剥離できる。
【0038】
離型剤層412Aがプリプレグシート11の面11Aに接するように、有機質フィルム12Aはプリプレグシート11の面11A上に設けられる。同様に、有機質フィルム12Bは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート等の樹脂フィルムよりなる芯材312Bと、芯材312B上に設けられた離型剤層412Bとを有する。離型剤層412Bは熱硬化性樹脂により形成されてもよい。離型剤層412Bにより、有機質フィルム12Bはプリプレグシート11から容易に剥離できる。離型剤層412Bがプリプレグシート11の面11Bに接するように、有機質フィルム12Bはプリプレグシート11の面11B上に設けられる。
【0039】
プリプレグシート11の熱硬化性樹脂311の軟化温度は導電性ペースト15が硬化し始める反応開始温度より低いことが好ましい。プリプレグシート11の加熱成形時において、プリプレグシート11が軟化している状態で貫通穴13内の導電性ペースト15を1次的に十分圧縮した後に導電性ペースト15が硬化し始める。したがって、導電性ペースト15が硬化して得られたビア導体により回路配線層が確実に電気的に接続される。
【0040】
導電性ペースト15は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを少なくとも含む混合物よりなる。その導電性粒子は、金、銅、銀、インジウム、はんだ等の金属であることが好ましく、それらの合金でもよい。また、その導電性粒子は、それらの金属に覆われた球状物質よりなる粒子でもよい。導電性ペースト15は、常温においては軟化している。また、導電性ペースト15の熱硬化性樹脂は液状のエポキシ樹脂を主成分とすることが好ましく、この材料により導電性ペースト15を高生産性で充填でき、ビア導体と回路配線層とを確実に接続できる。
【0041】
プリプレグシート11の補強材211を無機質材料で形成する場合、補強材211はガラス繊維織布あるいはガラス繊維不織布、またはこれらの複合材よりなることが好ましく、この材料よりなる補強材211により高剛性の回路基板を高コストパフォーマンスで得られる。
【0042】
プリプレグシート11の熱硬化性樹脂311は30〜80phrの無機フィラーを含むことがより好ましい。無機フィラーの含有量を調整することによりプリプレグシート11の加熱成形時において熱硬化性樹脂311の流動性を効果的に制御することができるので、導電性ペースト15よりなるビア導体を回路配線層と確実に接続できる。無機フィラーは、シリカ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等の非導電性無機質部材よりなり、好ましくは直径10μm以下の任意の形状を有する。
【0043】
プリプレグシート11の補強材211を有機質材料で形成する場合、ポリイミド、アラミド等の有機質フィルム、アラミド織布、アラミド不織布の少なくとも1つよりなることが好ましく、回路基板を高周波回路に用いることができかつ軽量にできる。この場合のプリプレグシート11の熱硬化性樹脂311は、エポキシ樹脂を主成分とすることがコストパフォーマンスに優れ最も好ましいが、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂等の他の樹脂を主成分としてもよい。
【0044】
中間材1001とそれを用いた回路基板1004の製造方法について説明する。図3Aから図3Hは中間材1001とそれを用いた回路基板1004の製造方法を示す断面図である。
【0045】
250mm角、厚み約40μmのガラス繊維織布に、軟化点が70℃、粒径が2〜8μmの水酸化アルミニウムを50phr含む熱硬化性エポキシ樹脂を70wt%含浸させて半硬化させ、厚み60μmのプリプレグシート11を準備する。離型剤を有する厚み10〜30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム12A、12Bを準備する。
【0046】
図3Aに示すように、プリプレグシート11の面11A、11B上に離型剤が接するようにPETよりなる有機質フィルム12A、12Bを約100℃に加温されたロールラミネーターでそれぞれ熱圧着して貼り付け、有機質フィルム12A、12Bの面212A、212Bが露出する中間材1001を得る。
【0047】
次に、図3Bに示すように、有機質フィルム12A、12Bが貼り付けられたプリプレグシート11に炭酸ガスレーザで面212A、212B間を貫通する貫通穴1001Aを形成する。
【0048】
図1にも示すように、貫通穴1001Aは、プリプレグシート11の面11A、11B間を貫通する貫通穴13と、有機質フィルム12A、12Bをそれぞれ貫通する貫通穴112A、112Bよりなる。貫通穴112A、112Bの径は50〜180μmであり、貫通穴13の最小径は40μm〜170μmである。
【0049】
その後、図3Cに示すように、中間材1001をセルロース等の多孔質材料からなる多孔質シート155上に、面212Bがシート155に接するように配置し、多孔質シート155を介して中間材1001を真空ポンプで吸引する。
【0050】
中間材1001を真空ポンプで吸引しながら、貫通穴1001Aに導電性ペースト15をスキージで充填した後、多孔質シート155を剥がして、図3Dに示すように、導電性ペースト15が充填された貫通穴1001Aを有する中間材1001を得る。
【0051】
導電性ペースト15は、溶剤を含まない熱硬化型エポキシ樹脂と銅粉とを主成分として含有し、酸無水物系の硬化剤をさらに含有する。85重量%の銅粉と12.5重量%の熱硬化型エポキシ樹脂と2.5重量%の硬化剤とを3本ロールにて十分に混練して導電性ペースト15を作製する。導電性ペースト15が硬化し始める反応開始温度は120℃である。
【0052】
次に、導電性ペースト15がプリプレグシート11の面11A、11Bから突出するように、中間材1001から有機質フィルム12A、12Bを剥離する。その後、図3Eに示すように、プリプレグシート11の面11A、11Bに厚さ14μmの銅箔等の金属箔125A、125Bをそれぞれ重ねて、図3Fに示す積層体1002を作製する。実施の形態では、金属箔125Aは128g/mの質量厚さを有する。
【0053】
積層体1002を約1mm厚のSUS304板上に配置し、それらをプレート上に設置する。その後、積層体1002を真空熱プレス機に投入して金属中間板である2枚のSUS304板で挟み、プリプレグシート11の熱硬化性樹脂311(図2)が硬化する温度で加熱しながらプレスして図3Gに示す回路基板1003を作製する。プリプレグシート11が加熱加圧される際に軟化すると、その加圧により導電性ペースト15が収縮する。回路基板1003は、プリプレグシート11が硬化して得られた硬化基板161と、硬化基板161の面161A、161B上にそれぞれ設けられた金属箔125A、125Bと、導電性ペースト15が硬化して得られたビア導体162とを備える。ビア導体162は金属箔125A、125Bに接続され、硬化基板161の面161A、161B間を貫通する貫通穴1161内に設けられている。
【0054】
図5は、回路基板1003を作製するために、積層体1002を加熱し加圧する際の温度プロファイルQ1と圧力プロファイルPQ1である。プリプレグシート11の熱硬化性樹脂311の軟化温度は導電性ペースト15が硬化し始める反応開始温度より低い。プリプレグシート11はBステージの半硬化状態であり、熱を加えると一旦軟化した後に硬化する。
【0055】
まず、積層体1002を投入して、真空プレス機の温度を温度T11(50℃)から樹脂311の軟化温度T1(70℃)に所定の期間P1、例えば30分だけ維持する。温度が温度T1になった時から5MPaの圧力を積層体1002に加える。期間P1では樹脂311が軟化するが導電性ペースト15は硬化しないので、加えた圧力により導電性ペースト15を効率的に圧縮できる。
【0056】
真空熱プレス機の温度を温度T1に期間P1だけ維持した後から、期間P2の間に5℃/minの昇温速度で加熱プレス機の温度を温度T2(130℃)に上昇して維持する。温度T2は、導電性ペースト15の反応開始温度より高く樹脂311の硬化温度より低いので、期間P2では導電性ペーストが硬化するが樹脂311は硬化しない。
【0057】
期間P2では、樹脂311が硬化していないので、プリプレグシート11を確実に成型できる。さらに、期間P2より前の期間P1でプリプレグシート11の樹脂311が軟化している状態で導電性ペースト15が十分圧縮された後に硬化し始める。したがって、導電性ペースト15が硬化して得られたビア導体162では導電粒子の密度が高くなるので、ビア導体162は高導電性を有し、かつ金属箔125A、125Bに確実に電気的に接続される。
【0058】
真空熱プレス機の温度を温度T2に維持した後から期間P3の間に5℃/minの昇温速度で加熱プレス機の温度を温度T3(200℃)に上昇して維持する。温度T3では樹脂311は硬化し、プリプレグシート11は硬化基板161になる。
【0059】
真空熱プレス機の温度を温度プロファイルQ1で変化させたときに、プリプレグシート11の温度はプロファイルQ2に示すように変化する。期間P1〜P3を通して、積層体1002には5MPaの圧力が加えられて、プリプレグシート11と金属箔125A、125Bが圧着される。
【0060】
次に、図3Hに示すように、回路基板1003の金属箔125A、125Bをフォトリソエッチング法でそれぞれパターン化して回路配線層126A、126Bを形成して回路基板1004が得られる。
【0061】
上記の方法で試料1〜7の7種類の各10枚の積層体1002の試料を作製し、1枚の積層体1002の試料を分割して6枚の回路基板1003の試料を作製した。回路基板1003の試料は500個のビア導体162を有する。これらの試料のビア導体162の評価結果を図4に示す。
【0062】
図4は試料のプリプレグシート11の厚さt1と有機質フィルム12A、12Bの厚さtf1、tf2、貫通穴112A、112Bの径rf1、rf2、貫通穴13の最小径rminと、1つのビア導体162の金属箔125A、125B間の抵抗とを示す。実施の形態では、ビア導体162が正常に形成された場合に抵抗R1は10mΩ以下になるので、この値を金属箔125A、126がビア導体162により正常に接続されたか否かを判定する基準とした。図4は以下で表される比R1と比R2を示す。
【0063】
R1=rf1/tf1=rf2/tf2
R2=rmin/(t1+tf1+tf2)
試料1、3〜5、7の抵抗は10mΩ以下で正常にビア導体162が形成されて金属箔125A、125Bに接続されているが、試料2、6の抵抗が10mΩを超えており正常にビア導体126が金属箔125A、125Bに接続されていなかった。
【0064】
試料2の抵抗は、基準である10mΩを遥かに超える数百Ωであった。試料2は、プリプレグシート11の厚みt1と貫通穴13の最小径rmin、貫通穴112A、112Bの径rf1、rf2が試料1と同じであるが、有機質フィルム12A、12Bの厚みtf1、tf2が試料1より大きい。試料2のビア導体162の断面を研磨し解析すると、導電性ペースト15の充填量が少ないことが判明した。さらに、剥がした後の有機質フィルム12A、12Bの貫通穴112A、112Bに導電性ペーストが付着しており、図10Cに示す不良を確認できた。試料2の比R1は3未満なので、図10Cに示す不良により、ビア導体162が金属箔125A、125Bと正常に接続されていない。
【0065】
図10Cに示す不良は、有機質フィルム12A、12Bの穴112A、112Bの壁面に対する導電性ペースト15のせん断強度が、導電性ペースト15のバルク強度を上回る場合に発生する。有機質フィルム12A、12Bの貫通穴112A、112Bの径rf1、rf2の有機質フィルム12A、12Bの厚みtf1、tf2に対する比R1が3以上であれば、有機質フィルム12A、12Bの穴112A、112Bの壁面に対する導電性ペースト15のせん断強度を導電性ペースト15のバルク強度より小さくすることができるので、図10Cに示す不良を無くすことができる。
【0066】
試料6はビア導体162と金属箔125A、125Bとが完全に断線していることに相当する抵抗を有していた。試料6は、試料1、2と同様にプリプレグシート11の厚みt1および貫通穴112A、112B、13の径rf1、rf2、rminは試料7と同じであるが、有機質フィルム12A、12Bの厚みtf1、tf2が試料7と異なる。良品である試料7の有機質フィルムの厚さtf1、tf2が試料6のそれらより大きい。試料6のビア導体162の断面を解析すると、貫通穴1001Aに導電性ペースト15が充填されていないことが判明した。導電性ペースト15を貫通穴1001Aに充填するために用いた多孔質シート155(図3C)に貫通穴1001Aと同じ大きさの導電性ペースト15が付着していた。この結果から、比R2が1.5を超えているので、図11Bに示す不良が発生してビア導体162がほとんど形成されなかった。
【0067】
比R1が3である試料3と、比R2が1.5である試料5では、上記の不良は発生せず、抵抗は10mΩ以下であった。
【0068】
図11Bに示す不良は、導電性ペースト15と多孔質シート155との密着強度が、導電性ペースト15のバルク強度を上回る場合に発生する。貫通穴13の最小径rminの中間材1001の厚みt0に対する比R2が1.5以下であれば、導電性ペースト15と多孔質シート155との密着強度を導電性ペースト15のバルク強度より小さくできるので、図11Bに示す不良は発生しない。
【0069】
本実施の形態では、プリプレグシート11の厚みt1が60μmの回路基板につき説明したが、プリプレグシート11の厚みt1が例えば80μm、100μm、120μmであっても同様の結果が得られた。
【0070】
ビア導体162はスルーホール、バンプ、フィルドめっき等の導電性ペースト15を用いる方法以外の方法で形成してもよい。スルーホールでビア導体162を形成する場合は、スルーホールの空洞に樹脂を充填するか、あるいは蓋めっきすることが好ましい。
【0071】
図6Aから図6Dは、実施の形態による多層回路基板1006の製造方法を示す断面図である。
【0072】
図6Aは、図3Aから図3Hに示す方法で製造された回路基板1004であるコア基板531を示す。コア基板531は、図3Hに示す硬化基板161とビア導体162と回路配線層126A、126Bにそれぞれ対応する硬化基板632とビア導体633と回路配線層532A、532Bとを有する。
【0073】
図6Bに示すように、図3Eに示すプリプレグシート11と導電性ペースト15とそれぞれ同様のプリプレグシート536と導電性ペースト535とを、回路配線層532Aに導電性ペースト535が当接するように位置合わせして、コア基板531の面531Aに重ねる。
【0074】
また、図3Eに示すプリプレグシート11と導電性ペースト15とそれぞれ同様のプリプレグシート2536と導電性ペースト2535とを、回路配線層532Bに導電性ペースト2535が当接するように位置合わせして、コア基板531の面531Bに重ねる。プリプレグシート536上に銅箔534を重ね合わせ、かつプリプレグシート2536上に銅箔2534を重ね合わせて積層体を形成する。その積層体を2枚の金属中間板701で挟んで熱プレスする。
【0075】
これにより、プリプレグシート536、2536はそれぞれ硬化基板636、2636となり、かつ導電性ペースト535、2535はそれぞれビア導体5535、6535となり、図6Cに示すような積層硬化物1005を得る。
【0076】
金属中間板701の熱膨張係数(線膨張係数)がコア基板531の熱膨張係数(線膨張係数)と実質的に同じであることが好ましく、これにより積層体の熱プレス時でのコア基板531の破損を防ぐことができる。コア基板531の硬化基板161がガラスエポキシからなる場合、SUS304やSUS301はガラスエポキシと実質的に同じ熱膨張係数(線膨張係数)を有するので、金属中間板701としてSUS304あるいはSUS301を用いることが好ましい。
【0077】
さらにフォトリソエッチング等の方法で銅箔534、2534を所望のパターンに加工して回路配線層537、2537を作製し、図6Dに示す多層回路基板1006を得る。必要に応じて、回路配線層537、2537と硬化基板636、2636上にソルダーレジストが設けられる。あるいは、必要に応じて回路配線層537、2537にめっき処理等の表面仕上げ処理が施される。
【0078】
さらに、多層回路基板1006をコア基板として図6Aから図6Dに示す方法を繰り返すことにより、多層化された回路基板を得ることができる。
【0079】
コア基板531の回路配線層532A、532Bの面5532A、5532Bは粗面であることが好ましい。粗面である面5532A、5532Bは、銅箔534、2534として面粗化箔を使用するか、CZ処理等の化学研磨あるいはサンドブラスト等の物理研磨で金属箔534、2534の面を粗化してもよい。粗化された面5532A、5532Bに導電性ペースト535、2535すなわちビア導体5535、6535が当接することで、銅箔534、2534はビア導体5535、6535にそれぞれ確実に接続される。
【0080】
上述のように、実施の形態による中間材1001での導電性ペースト15で形成されたビア導体162により、回路配線層126A、126Bが安定かつ確実に接続された回路基板1004が得られる。
【0081】
さらに、実施の形態による回路基板1004により、ビア導体で確実に全層が接続された、高密度実装に適した多層回路基板が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明により、ファイン化されたビア導体が金属箔に確実かつ安定に接続された回路基板が得られる。
【符号の説明】
【0083】
11 プリプレグシート
12A 有機質フィルム(第1のフィルム)
12B 有機質フィルム(第2のフィルム)
13 貫通穴
15 導電性ペースト
112A 穴(第1の穴)
112B 穴(第2の穴)
125A 金属箔(第1の金属箔)
125B 金属箔(第2の金属箔)
211 補強材
311 (熱硬化性)樹脂
412A 離型剤層(第1の離型剤層)
412B 離型剤層(第2の離型剤層)
531 コア基板
701 金属中間板
1001 中間材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有し熱硬化性樹脂を含む厚さ60μm、80μm、100μm、120μmのいずれかのプリプレグシートを準備するステップと、
前記プリプレグシートの前記第1面に第1のフィルムと前記第2面に第2のフィルムを貼り付けるステップと、
前記プリプレグシートの前記第1面と前記第2面との間を貫通する貫通穴と、前記貫通穴に連結する前記第1のフィルムの第1の穴と、前記貫通穴に連結する前記第2のフィルムの第2の穴とをレーザにより形成するステップと、
前記貫通穴と前記第1の穴と前記第2の穴とに導電性ペーストを充填するステップと、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを前記プリプレグシートから剥離するステップと、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを剥離するステップの後で、前記プリプレグシートの前記第1面に第1の金属箔を重ねて積層体を形成するステップと、
前記積層体を硬化させるステップとを含み、
前記第1のフィルムの厚みtf1と前記第2のフィルムの厚みtf2は10μm〜30μmの範囲であり、
前記第1の穴径rf1と前記第2の穴径rf2は、40μm≦rf1、rf2≦180μmの範囲で、かつ前記穴の径に対する前記フィルムの厚みの比R1=rf1/tf1=rf2/tf2が3.0〜8.0の範囲となるように形成されることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記積層体を硬化させるステップは、
第1の温度で前記積層体を加熱するステップと、
前記第1の温度で前記積層体を加熱するステップの後で、前記第1の加熱温度より高い第2の温度で前記積層体を加熱するステップと、
前記第2の温度で前記積層体を加熱するステップの後で、前記第2の温度より高い第3の温度で前記積層体を加熱するステップと、
を含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記プリプレグシートは樹脂を含み、
前記第1の温度は、前記プリプレグシートの前記樹脂の軟化点近傍の温度である、請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記積層体を形成するステップは、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを剥離するステップの後で、前記プリプレグシートの前記第2面にコア基板を重ねるステップを含み、
前記積層体を硬化させるステップは、
前記積層体を金属中間板で挟むステップと、
前記金属中間板で挟んだ前記積層体を加熱加圧するステップと、
を含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公開番号】特開2012−15562(P2012−15562A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230475(P2011−230475)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2007−550143(P2007−550143)の分割
【原出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】