説明

回路基板

【課題】コネクタ配置部を傾かせて、コネクタと配線部材の向きを一致させて、コネクタに配線部材を接続可能にする。
【解決手段】中継基板32は、基板本体50にFFC31と接続されるコネクタ54を有している。そして、基板本体50には、コネクタ54が配置されたコネクタ配置部61の外周の一部の連結部63を残して切り欠き51a及び開口52a、53aが形成されており、基板本体50のコネクタ配置部61と回路部62とは、切り欠き51aにより分断されつつ、連結部63によってのみ連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタを介して配線部材と接続される回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な技術分野において、配線部材を接続するコネクタを有するリジッドの回路基板が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のノズルからそれぞれインクを吐出させるインクジェットヘッドに設けられた回路基板(中継基板)について開示されている。このインクジェットヘッドは、複数のノズルが形成された流路ユニットの上面に圧電式のアクチュエータユニットが貼り付けられており、その上方にインクタンクが配置され、インクタンクの上方に回路基板がホルダに固定して配置されている。
【0004】
そして、アクチュエータユニットの上面には、この上面を覆うようにフレキシブルプリント配線板(FPC)が貼り付けられている。このFPCは、アクチュエータユニットの縁を越えて、アクチュエータユニットの上面と平行な面方向に引き出されている。そして、FPCの引き出された端部にフレキシブルフラットケーブル(FFC)が接合されており、このFFCは、面方向と直交する方向(アクチュエータユニットとは反対側の方向)に折り曲げられて、インクタンクの側方を引き回されて、上方に配置された回路基板の基板本体に固定的に設けられたコネクタに接続されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−288957号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1においては、アクチュエータユニットの上面へのFPCの貼り付けずれやFPCとFFCとの接合ずれ、ホルダへの回路基板の位置ずれなどにより、回路基板のコネクタにFFC(配線部材)を接続しようとしたときに、コネクタに対する正規の挿入方向に対して配線部材の向きがずれてしまっていることがある。これでは、コネクタに配線部材を接続させるのが困難になってしまうおそれがある。また、無理に接続しようとすると、接続不良や配線部材のねじれを生じさせてしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、コネクタが配置されたコネクタ配置部を傾かせることで、コネクタを配線部材の向きに一致させて、コネクタに配線部材を接続可能にした回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回路基板は、板状の基板本体と、前記基板本体に設けられており、前記基板本体に向かって引き回された配線部材と接続されるコネクタと、を備えており、前記基板本体には、前記コネクタが配置されたコネクタ配置部の外周の一部の連結部を残して切り欠きが形成されており、前記コネクタ配置部と、前記基板本体の前記コネクタ配置部以外の回路部とは、前記切り欠きにより分断されつつ、前記連結部によってのみ連結されており、前記コネクタ配置部は、前記基板本体の表面と平行な面内で、前記回路部に対して傾き可能となっている。
【0009】
本発明の回路基板によると、コネクタ配置部と回路部との間が連結部を残して切り欠きで切り欠かれているため、コネクタ配置部が、基板本体の面方向と平行な面内で、回路部に対して傾き可能となっている。したがって、コネクタ配置部に設けられたコネクタと配線部材の向きがずれている場合でも、コネクタ配置部を傾かせて、コネクタの挿入口と配線部材の挿入端とを向かい合わせて、配線部材の向きにコネクタの向きを一致させて、コネクタに配線部材を接続させることができる。
【0010】
また、前記基板本体の厚み方向から見た前記コネクタの形状は矩形であり、前記コネクタ配置部は、その全周にわたって前記回路部に取り囲まれており、前記切り欠きは、前記基板本体の厚み方向から見て、前記コネクタの前記矩形の4辺のうち少なくとも3辺の外周に沿って連続的に延びていることが好ましい。
【0011】
これによると、コネクタ配置部の全周が回路部に囲まれており、コネクタの基板本体の厚み方向からみた形状が矩形である場合には、基板本体にコネクタの矩形の4辺のうち少なくとも3辺の外周に沿って連続的に延びた切り欠きを形成し、残りの1辺を連結部にすることにより、コネクタ配置部を、基板本体の面方向と平行な面内で、回路部に対して傾き可能なものとすることができる。
【0012】
さらに、前記基板本体は、可撓性材料からなるフレキシブル層と、前記フレキシブル層と積層され、非可撓性材料からなるリジッド層と、を備えており、前記連結部は、前記フレキシブル層のみからなり、前記リジッド層には、前記コネクタ配置部と前記回路部とを分断する第1切り欠きが形成されており、前記フレキシブル層には、前記コネクタ配置部及び前記回路部を連結する前記連結部を残して、前記コネクタ配置部の外周を取り囲む第2切り欠きが形成されていることが好ましい。
【0013】
これによると、コネクタ配置部が、可撓性を有するフレキシブル層からなる連結部においてのみ回路部とつながっている。そのため、連結部を撓ませることが可能となり、コネクタ配置部を回路部に対して簡単に大きな変位量で傾かせることができる。
【0014】
加えて、前記連結部は、前記コネクタ配置部よりも前記コネクタの前記配線部材が挿入される側に配置されて、前記コネクタ配置部と前記回路部とをつなげていることが好ましい。
【0015】
これによると、コネクタ配置部を傾かせたときに、コネクタ配置部が配線部材に近づく方向に移動することとなる。そのため、コネクタと配線部材の向きがずれつつ、配線部材がコネクタに届かない場合でも、コネクタ配置部を傾かせながら配線部材に近づけることで、コネクタに配線部材を接続させることができる。
【0016】
また、前記基板本体には、前記コネクタに接続された複数の配線が形成されており、前記複数の配線は、前記基板本体の厚み方向から見て、前記連結部を通って前記回路部から複数の方向に分かれて引き回されていることが好ましい。
【0017】
これによると、基板本体にコネクタ配置部と回路部とを分断する切り欠きを形成した場合、切り欠きを形成した部分には配線を引き回すことができず、全ての配線は連結部を通って引き回されることになり、配線の引き回し自由度は低くなる。しかしながら、本発明では、複数の配線が、基板本体の厚み方向から見て、コネクタとの接続部分から複数方向に分かれて引き回されているため、配線の引き回し自由度を高くして、複数の配線を引き回すことができる。
【0018】
そして、電子機器に前記配線部材を介して給電するとともに駆動用の信号を送る回路基板であって、前記複数の配線は、前記電子機器に給電するための給電線と、前記電子機器に前記信号を伝送するための信号線と、を含んでおり、前記給電線と前記信号線とが、前記基板本体の厚み方向から見て、前記連結部を通って前記回路部から互いに異なる方向に分かれて引き回されていることが好ましい。
【0019】
これによると、給電線と信号線とが、互いに異なる方向に分かれて引き回されているので、給電線と信号線とが互いに離隔して配置されることとなり、信号線に沿って伝送される信号に給電線からノイズが入ってしまうのを防止することができる。
【0020】
また、前記基板本体には、前記コネクタに接続された複数の配線、及び、スルーホールが形成されており、前記複数の配線のうち、一部の配線は、前記コネクタが接続された一方の面を引き回されており、残りの配線は、それぞれ異なる前記スルーホールを介して前記一方の面と反対側の他方の面に引き出されて、前記他方の面を引き回されていてもよい。
【0021】
これによると、基板本体にコネクタ配置部と回路部とを分断する切り欠きを形成した場合、切り欠きを形成した部分には配線を引き回すことができず、全ての配線は連結部を通って引き回されることになり、配線の引き回し自由度は低くなる。しかしながら、本発明では、複数の配線が基板本体の互いに異なる面に分かれて引き回されているため、配線の引き回し自由度を高くして、複数の配線を引き回すことができる。
【0022】
そして、電子機器に前記配線部材を介して給電するとともに駆動用の信号を送る回路基板であって、前記複数の配線は、前記電子機器に給電するための給電線と、前記電子機器に前記信号を伝送するための信号線と、を含んでおり、前記給電線と前記信号線は、前記一方の面と前記他方の面のそれぞれ互いに異なる面を引き回されていてもよい。
【0023】
これによると、給電線と信号線とが、基板本体のそれぞれ互いに異なる面に分かれて引き回されているので、給電線と信号線とが、基材本体の厚み方向に互いに離隔して配置されることとなり、信号線に沿って伝送される信号に給電線からノイズが入ってしまうのを防止することができる。
【0024】
また、電子機器に前記配線部材を介して給電するとともに駆動用の信号を送る回路基板であって、前記複数の配線は、前記電子機器に給電するための給電線と、前記電子機器に前記信号を伝送するための信号線と、を含んでおり、前記給電線と前記信号線のそれぞれの少なくとも一部が、前記スルーホールを介して前記他方の面に引き出されており、前記給電線を引き出すためのスルーホールの径が、前記信号線を引き出すためのスルーホールの径よりも大きくてもよい。
【0025】
これによると、信号線を引き出すためのスルーホールについては、その径を小さくして、配線を引き回せる領域を大きくしつつ、一方、給電線を引き出すためのスルーホールについては、その径を大きくして、電気抵抗を小さくして、電位を安定させることができる。
【発明の効果】
【0026】
コネクタ配置部に設けられたコネクタと配線部材の向きがずれている場合でも、コネクタ配置部を傾かせて、コネクタの挿入口と配線部材の挿入端とを向かい合わせて、配線部材の向きにコネクタの向きを一致させて、コネクタに配線部材を接続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すキャリッジの紙送り方向に沿った縦断面図である。
【図3】流路ユニット及びアクチュエータを含むインクジェットヘッドの要部の分解斜視図である。
【図4】中継基板の平面図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】コネクタへのFFCの接続について説明する図である。
【図7】変形例1における中継基板の平面図である。
【図8】変形例2における中継基板の平面図である。
【図9】変形例3における中継基板の平面図である。
【図10】変形例4における中継基板について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本実施形態について説明する。本実施形態は、インクジェットヘッドのノズルから記録用紙に対してインクを吐出して記録用紙に文字や画像など記録するインクジェットプリンタに設けられた中継基板に本発明を適用した一例である。
【0029】
まず、インクジェットプリンタについて説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、所定の走査方向(図1の左右方向)に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3と、記録用紙Pを走査方向と直交する紙送り方向に搬送する搬送機構5などを備えている。
【0030】
キャリッジ2は、走査方向(図1の左右方向)に平行に延びる2本のガイド軸13に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行にともなって走査方向に移動するようになっている。
【0031】
このキャリッジ2には、インクジェットヘッド3が搭載されており、キャリッジ2の走行にともなって走査方向に移動する。インクジェットヘッド3の複数のノズル15から、搬送機構5により図1の下方(紙送り方向)に搬送される記録用紙Pに対してインクを吐出することで、記録用紙Pに所望の文字や画像などが記録される。
【0032】
搬送機構5は、インクジェットヘッド3よりも紙送り方向上流側に配置された給紙ローラ7と、インクジェットヘッド3よりも紙送り方向下流側に配置された排紙ローラ8とを有している。給紙ローラ7と排紙ローラ8は、それぞれ、給紙モータ9と排紙モータ10により回転駆動される。そして、この搬送機構5は、給紙ローラ7により、記録用紙Pを図1の上方からインクジェットヘッド3へ搬送するとともに、排紙ローラ8により、インクジェットヘッド3のインクジェットヘッド3によって文字や画像などが記録された記録用紙Pを図1の下方へ排出する。
【0033】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2は、図1に示すキャリッジの紙送り方向に沿った縦断面図である。図3は、流路ユニット及びアクチュエータを含むインクジェットヘッドの要部の分解斜視図である。図2、図3に示すように、キャリッジ2は、ホルダ23とホルダ23に着脱自在に取りつけられたヘッドカバー29を有しており、その内部にインクジェットヘッド3が収容されている。インクジェットヘッド3は、インクを貯留するインクタンク20と、このインクタンク20の下方に配置され、図示しないインク流路が形成された流路ユニット21と、この流路ユニット21の上面に接着されたアクチュエータ22とを有している。
【0034】
インクタンク20は、上方開放状のホルダ23内に固定的に設けられており、このインクタンク20の内部には、4色のインクをそれぞれ貯留する4つのインク室(図示省略)が形成されており、図示しない4つのインクカートリッジからそれぞれインクが供給される。
【0035】
図2、図3に戻って、流路ユニット21は、複数枚の金属プレートが積層された構造を有しており、その上面に4色のインクにそれぞれ対応した平面視楕円形の4つのインク供給穴24が形成されている。また、流路ユニット21は、その内部に複数のノズル15に連通する複数のインク流路(図示せず)が形成されており、これら複数のインク流路にインクタンク20に形成されたインク室内のインクがインク供給穴24を介してそれぞれ供給されるようになっている。複数のノズル15は、紙送り方向に複数並べて配置されてノズル列を形成しているとともに、このノズル列が走査方向に4列配列されており、ノズル列ごとにシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックのインクが吐出される。
【0036】
また、流路ユニット21は、ホルダ23の下面に形成された開口部23aに、複数のノズル15が形成された面を露出するようにして装着されており、記録用紙Pに記録する際には、複数のノズル15から下方へインクが吐出される。
【0037】
アクチュエータ22は、圧電式のアクチュエータであり、積層された複数枚の圧電シート25と、流路ユニット21内に形成された複数の圧力室にそれぞれ対応して圧電シート25の上面に設けられ、且つ、4列のノズル15にそれぞれ対応した4列の複数の個別電極26とを有している。アクチュエータ22の上面には、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)30が接着され、このFPC30はアクチュエータ22からその上面と平行な一方向(図2の左方)に引き出されている。FPC30の上面には、ドライバIC28が実装されており、ドライバIC28と複数の個別電極26とがFPC30により電気的に接続されている。
【0038】
そして、ドライバIC28からFPC30を介して複数の個別電極26に対して、所定の駆動電位とGND電位からなるパルス状の駆動信号が選択的に供給されると、その個別電極26に対応する圧電シート25の部分が変形することにより流路ユニット21のインク流路内の圧力が上昇し、対応するノズル15から下方へインクが吐出される。
【0039】
このFPC30には、フレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable:FFC)31が接合されており、このFFC31により、FPC30に実装されたドライバIC28とホルダ23内に固定して設けられた中継基板32とが電気的に接続されている。この中継基板32は、インクジェットプリンタ1全体の制御を司る制御装置(図示省略)と電気的に接続されており、中継基板32は、制御装置から送信された画像データを例えばICなどの回路素子部59(図4参照)により、インクジェットヘッド3の吐出動作用のシリアル信号に変換して、ドライバIC28へ伝送する。また、中継基板32は、制御装置からドライバIC28へ給電する。すなわち、中継基板32に形成された配線70、71(図4参照)としては、ドライバIC28の駆動電源線、グランド線などの給電線、及び、記録データ信号線、転送クロック信号線及びラッチ信号線などの信号線が挙げられる。
【0040】
ドライバIC28は、中継基板32から伝送されたシリアル信号をパラレル信号に変換して上述したパルス状の駆動信号を生成し、複数の個別電極26に対して生成した駆動信号を供給するものである。ドライバIC28や中継基板32は、上方開放状のホルダ23内に収容され、さらに、このホルダ23の上側はホルダ23に着脱自在に取りつけられたヘッドカバー29により覆われている。
【0041】
次に、中継基板32について詳細に説明する。図4は、中継基板の平面図である。図5は、図4のB−B線断面図である。なお、図5においては、中継基板に形成された複数の配線のうち一部の配線のみを図示している。図4、図5に示すように、中継基板32(回路基板)は、いわゆるリジッドフレキシブル基板であり、フレキシブル層51及び2枚のリジッド層52、53からなる基板本体50と、フレキシブル層51に設けられた、平面視で矩形のコネクタ54とを有している。なお、本実施形態においては、リジッド層53は、設けられていても設けられていなくてもよい。
【0042】
フレキシブル層51は、例えば、ポリイミドフィルムなどの電気絶縁性のフィルム材からなり、帯状をしている。2枚のリジッド層52、53は、例えば、ガラスエポキシ基板などの電気絶縁性の非可撓性基板からなり、フレキシブル層51を厚み方向両側から挟んでおり、帯状をしている。
【0043】
2枚のリジッド層52、53には、長さ方向端部よりもやや中央寄りの領域に、コネクタ54の外形よりも一回り大きな矩形状の開口52a、53aが形成されており、開口52a、53aからフレキシブル層51の両面が露出している。
【0044】
また、フレキシブル層51の開口52aから露出した表面51bには、平面視で開口52aの略中央に、リジッド層52、53の開口52a、53aを形成する端面と隙間をあけて、コネクタ54が配置されている。さらに、フレキシブル層51には、コネクタ54が配置された部分及びその外周の一部を残して切り欠き51aが形成されている。切り欠き51aは、コネクタ54の矩形の4辺のうち3辺の外周及び残り1辺の残った部分を挟んだ両側に沿って連続的に延びている。
【0045】
すなわち、中継基板32は、フレキシブル層51のコネクタ54が配置された部分からなるコネクタ配置部61と、リジッド層52及びリジッド層52と重なったフレキシブル層51の部分からなる回路部62と、フレキシブル層51のコネクタ配置部61と回路部62をつなぐ部分からなり、コネクタ配置部61よりも狭い幅の連結部63とを有している。そして、中継基板32のコネクタ配置部61は、その周囲を回路部62に取り囲まれて切り欠き51aにより分断されており、連結部63によってのみ連結されている。
【0046】
そして、中継基板32のコネクタ54には、中継基板32の長さ方向に沿って図4の矢印方向から引き回されたFFC31が接続されている。また、連結部63は、平面視でFFC31と重なって配置されており、コネクタ配置部61は、コネクタ54へFFC31を挿入する側において連結部63により回路部62と連結されている。
【0047】
また、フレキシブル層51には、コネクタ54に接続された複数の配線70が形成されている。複数の配線70は、コネクタ54に接続されて、コネクタ配置部61から連結部63を介して回路部62との連結端を越えて延在している。そして、リジッド層52に形成されたスルーホール55に接続されて、フレキシブル層51の表面51b(フレキシブル層51とリジッド層52の間)からリジッド層52の表面52bに引き出されている。
【0048】
そして、リジッド層52の表面52bには、スルーホール55と接続された複数の配線71が形成されており、フレキシブル層51の配線70とリジッド層52の配線71とは、スルーホール55を介して電気的に接続されている。
【0049】
複数の配線71は、図4の上方と図4の下方の互いに逆方向に分かれて引き回されている。そして、図4の上方に引き回された配線71a、71bは、上述した給電線となっており、図4の下方に引き回された配線71c〜71fは、上述した信号線となっており、給電線と信号線とで互いに逆方向に分かれて引き回されている。
【0050】
ここで、例えば、アクチュエータ22へのFPC30の貼り付けずれやFPC30とFFC31との接合ずれ、中継基板32のホルダ23への位置ずれなどが生じていると、図6(a)に示すように、固定的に配置された中継基板32に設けられたコネクタ54にFFC31を接続しようとしたときに、コネクタ54とFFC31の向きがずれてしまっていることがある。
【0051】
このような場合に、本実施形態では、フレキシブル層51のコネクタ配置部61が、その周囲の4辺のうち3辺を切り欠き51aにより連続的に回路部62と分断されており、1辺の一部のみが連結部63により回路部62と連結されている。したがって、コネクタ配置部61は、フレキシブル層51の表面51bと平行な面内で、回路部62に対して傾き可能となる。そのため、コネクタ配置部61に設けられたコネクタ54とFFC31の向きがずれている場合でも、図6(b)に示すように、コネクタ配置部61を傾かせて、コネクタ54の挿入口をFFC31の挿入端と向かい合わせることで、FFC31の向きにコネクタ配置部61の向きを一致させて、コネクタ54にFFC31を接続させることができる。
【0052】
このとき、コネクタ配置部61が、可撓性を有するフレキシブル層51からなる連結部63においてのみ回路部62とつながっている。そのため、連結部63を撓ませることで、コネクタ配置部61を回路部62に対して簡単且つ大きな変位量で傾かせることができる。
【0053】
また、コネクタ配置部61は、コネクタ54へFFC31を挿入する側において、連結部63を介して回路部62につながっている。そのため、コネクタ配置部61を傾かせたときに、コネクタ配置部61が図6(a)に示す破線の軌跡に沿ってFFC31に近づく方向に移動することとなる。したがって、FFC31の向きがコネクタ54に対してずれつつ、FFC31がコネクタ54に届かない場合でも、コネクタ配置部61を傾かさせながらFFC31に近づけることで、コネクタ54にFFC31を接続させることができる。
【0054】
また、中継基板32にコネクタ配置部61と回路部62とを分断する切り欠き51aを形成した場合、切り欠き51aを形成した部分には配線を引き回すことができず、全ての配線は連結部63を通って引き回されることになり、配線の引き回し自由度は低くなる。しかしながら、本実施形態では、複数の配線が、基板本体の厚み方向から見て、コネクタ54との接続部分から図4の上方向と下方向の異なる方向に分かれて引き回されており、配線の引き回し自由度を高くして、複数の配線を引き回すことができる。
【0055】
このとき、給電線である配線71a、71bと信号線である配線71c〜71fが、連結部63から引き出された後、互いに異なる方向に引き回されているので、給電線である配線71a、71bと信号線である配線71c〜71fとが互いに離隔して配置されることとなり、信号線に沿って伝送される信号に給電線からノイズが入ってしまうのを防止することができる。
【0056】
次に、上述した実施形態に種々の変形を加えた変更形態について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0057】
本実施形態においては、中継基板32のコネクタ配置部61と回路部62は、コネクタ54へFFC31を挿入する側において連結部63を介してつながっているが、コネクタ配置部61と回路部62をつなげる位置は、コネクタ54へFFC31を挿入する側に限らずいなかる位置であってもよい(変形例1)。例えば、図7に示すように、中継基板132のコネクタ配置部161と回路部162は、コネクタ54へFFC31を挿入する側とは反対側に配置された連結部163を介してつながっていてもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、コネクタ配置部61は、その全周にわたって回路部62に取り囲まれていたが、外周の少なくとも一部が囲まれて、その一部に沿って連結部63を残して切り欠き51aが形成されていればよい(変形例2)。コネクタ54が平面視で矩形の場合を例に挙げて説明する。例えば、図8(a)に示すように、中継基板232のコネクタ配置部261は、平面視で矩形の基板本体250の一方端部に形成されており、回路部262に3方が囲まれて、連結部263を残して切り欠き251aが形成されていてもよい。
【0059】
また、図8(b)に示すように、中継基板332のコネクタ配置部361は、平面視で矩形の基板本体350の角に形成されており、回路部362に2方が囲まれて、連結部363を残して切り欠き351aが形成されていてもよい。さらに、図8(c)に示すように、中継基板432のコネクタ配置部461は、平面視で矩形の基板本体450の一方端部全域に形成されており、回路部462に1方のみが囲まれて、連結部463を残して切り欠き451aが形成されていてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態においては、中継基板32の回路部62はフレキシブル層51とリジッド層52、53とからなり、コネクタ配置部61及び連結部63はフレキシブル層51からなり、連結部63は可撓性を有しており、連結部63が撓んで回路部62に対してコネクタ配置部61を傾かせていたが、図9に示すように、中継基板532は、1枚のリジッド基板551からなり、コネクタ54が配置されたコネクタ配置部561と回路部562とは連結部563を残して切り欠き551aによって分断されていてもよい。この場合でも、コネクタ配置部561に対して力を加えると、コネクタ配置部561と回路部562との間には切り欠き551aが形成されているため、回路部562に対してコネクタ配置部561を傾かせることができる。
【0061】
また、本実施形態においては、コネクタ配置部61から連結部63を介して引き回された全ての配線71をリジッド層52の表面52b内で図4の上方向と下方向の異なる方向に分かれて引き回していたが、例えば、図10(a)に示すように、回路部662の連結部663との連結端近傍におけるスペースが狭く、一表面内だけでは全ての配線を引き回すことが困難な場合には、異なる面に分かれて引き回してもよい(変形例4)。図10(a)は、変形例4における中継基板の平面図であり、図10(b)は、図10(a)のC−C線断面図である。
【0062】
具体的には、図10(a)、(b)に示すように、フレキシブル層651には、上述した実施形態と同様に、コネクタ54に接続された複数の配線670が形成されている。複数の配線670は、コネクタ54に接続されて、コネクタ配置部661から連結部663を介して回路部662との連結端を越えて延在している。そして、一部の配線670は、信号線となっており、リジッド層652に形成されたスルーホール655に接続されて、フレキシブル層651の表面651bからリジッド層652の表面652bに引き出されている。そして、リジッド層652の表面652bには、スルーホール655と接続された複数の配線671が形成されており、フレキシブル層651の一部の配線670とリジッド層652の配線671とは、スルーホール655を介して電気的に接続されている。
【0063】
また、残りの配線670は、給電線となっており、フレキシブル層651及びリジッド層653に形成されたスルーホール656に接続されて、フレキシブル層651の表面651bからリジッド層653の表面653bに引き出されている。そして、リジッド層653の表面653bには、スルーホール656と接続された複数の配線672が形成されており、フレキシブル層651の残りの配線670とリジッド層653の配線672とは、スルーホール656を介して電気的に接続されている。すなわち、信号線はリジッド層652の表面652bを引き回されており、給電線はリジッド層653の表面653bを引き回されており、信号線と給電線とで互いに異なる面に分かれて引き回されている。
【0064】
なお、給電線を引き出すためのスルーホール656の径が、信号線を引き出すためのスルーホール655の径よりも大きくなっている。これによると、信号線を引き出すためのスルーホールについては、その径を小さくして、配線を引き回せる領域を大きくしつつ、一方、給電線を引き出すためのスルーホールについては、その径を大きくして、電気抵抗を小さくして、電位を安定させることができる。
【0065】
これによると、複数の配線が、基板本体の互いに異なる面に分かれて引き回されているため、配線の引き回し自由度を高くして、複数の配線を引き回すことができる。このとき、給電線と信号線が、連結部663から引き出された後、互いに異なる面に引き回されているので、給電線と信号線が互いに離隔して配置されることとなり、信号線に沿って伝送される信号に給電線からノイズが入ってしまうのを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、コネクタ配置部61は、フレキシブル層51のみから形成されていたが、リジッド層52、53が積層されており、リジッド層52の上面にコネクタ54が配置されていてもよい。この場合、リジッド層52にスルーホールを形成して、コネクタに接続されて引き回された配線をスルーホールを介してフレキシブル層51の表面に引き出した上で、連結部63を介して回路部62に引き回す。
【0067】
さらに、本実施形態においては、フレキシブル層51に形成された切り欠き51aとリジッド層52、53に形成された開口52a、53aは、コネクタ54の外形に沿った矩形をしていたが、コネクタ配置部61を回路部62との間に、コネクタ配置部61が傾き可能な分だけ隙間があれば、その形状は任意の形状であってよい。
【0068】
また、本実施形態においては、コネクタ54はフレキシブル層51の表面51bと平行な面方向を向いており、この面方向からFFC31が挿入されていたが、コネクタ54は例えばフレキシブル層51の表面51bと直交する方向を向いており、この直交する方向からFFC31が挿入されるなど任意の方向を向いていてもよい。この場合でも、コネクタ配置部61に設けられたコネクタ54に対してFFC31の向きがずれている場合でも、コネクタ配置部61を傾かせて、FFC31の向きにコネクタ配置部61の向きを一致させて、コネクタ54にFFC31を接続させることは可能である。
【0069】
また、本実施形態においては、インクジェットプリンタに設けられ、制御基板とFFCをつなぐ中継基板に本発明を適用したが、本発明の適用対象は、このような中継基板に限らず、配線部材と接続されるコネクタを有する回路基板であれば、いかなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 インクジェットプリンタ
32 中継基板
54 コネクタ
61 コネクタ配置部
62 回路部
63 連結部
50 基板本体
30 FPC
31 FFC
51 フレキシブル層
52、53 リジッド層
51a 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基板本体と、
前記基板本体に設けられており、前記基板本体に向かって引き回された配線部材と接続されるコネクタと、を備えており、
前記基板本体には、前記コネクタが配置されたコネクタ配置部の外周の一部の連結部を残して切り欠きが形成されており、
前記コネクタ配置部と、前記基板本体の前記コネクタ配置部以外の回路部とは、前記切り欠きにより分断されつつ、前記連結部によってのみ連結されており、
前記コネクタ配置部は、前記基板本体の表面と平行な面内で、前記回路部に対して傾き可能となっていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記基板本体の厚み方向から見た前記コネクタの形状は矩形であり、
前記コネクタ配置部は、その全周にわたって前記回路部に取り囲まれており、
前記切り欠きは、前記基板本体の厚み方向から見て、前記コネクタの前記矩形の4辺のうち少なくとも3辺の外周に沿って連続的に延びていることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記基板本体は、可撓性材料からなるフレキシブル層と、前記フレキシブル層と積層され、非可撓性材料からなるリジッド層と、を備えており、
前記連結部は、前記フレキシブル層のみからなり、
前記リジッド層には、前記コネクタ配置部と前記回路部とを分断する第1切り欠きが形成されており、
前記フレキシブル層には、前記コネクタ配置部及び前記回路部を連結する前記連結部を残して、前記コネクタ配置部の外周を取り囲む第2切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記連結部は、前記コネクタ配置部よりも前記コネクタの前記配線部材が挿入される側に配置されて、前記コネクタ配置部と前記回路部とをつなげていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記基板本体には、前記コネクタに接続された複数の配線が形成されており、
前記複数の配線は、前記基板本体の厚み方向から見て、前記連結部を通って前記回路部から複数の方向に分かれて引き回されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項6】
電子機器に前記配線部材を介して給電するとともに駆動用の信号を送る回路基板であって、
前記複数の配線は、前記電子機器に給電するための給電線と、前記電子機器に前記信号を伝送するための信号線と、を含んでおり、
前記給電線と前記信号線とが、前記基板本体の厚み方向から見て、前記連結部を通って前記回路部から互いに異なる方向に分かれて引き回されていることを特徴とする請求項5に記載の回路基板。
【請求項7】
前記基板本体には、前記コネクタに接続された複数の配線、及び、スルーホールが形成されており、
前記複数の配線のうち、一部の配線は、前記コネクタが接続された一方の面を引き回されており、残りの配線は、それぞれ異なる前記スルーホールを介して前記一方の面と反対側の他方の面に引き出されて、前記他方の面を引き回されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項8】
電子機器に前記配線部材を介して給電するとともに駆動用の信号を送る回路基板であって、
前記複数の配線は、前記電子機器に給電するための給電線と、前記電子機器に前記信号を伝送するための信号線と、を含んでおり、
前記給電線と前記信号線は、前記一方の面と前記他方の面のそれぞれ互いに異なる面を引き回されていることを特徴とする請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
電子機器に前記配線部材を介して給電するとともに駆動用の信号を送る回路基板であって、
前記複数の配線は、前記電子機器に給電するための給電線と、前記電子機器に前記信号を伝送するための信号線と、を含んでおり、
前記給電線と前記信号線のそれぞれの少なくとも一部が、前記スルーホールを介して前記他方の面に引き出されており、
前記給電線を引き出すためのスルーホールの径が、前記信号線を引き出すためのスルーホールの径よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の回路基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−216566(P2012−216566A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78903(P2011−78903)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】