説明

回路構成体及び電気接続箱

【課題】小型化が可能であって、搭載スペースに応じて形状を変更可能な回路構成体及び電気接続箱を提供する。
【解決手段】可撓性の回路基板31にリレー35の制御用導電路を形成してなり、リレー35の制御端子35Bを制御用導電路に接続すると共にリレー35の電力端子35Aを回路基板31に形成したスルーホール33に貫通させた状態でリレー35を実装した第1回路構成体30と、基板51に負荷又は電源に至るリレー35の電力用導電路55を形成してなり第1回路構成体30と少なくとも一部が重ねられた第2回路構成体50と、第1回路構成体30のうち第2回路構成体50との重ね合わせ部分に設けられ一端がスルーホール33を貫通した電力端子35Aにろう付け又は溶接によって接続されると共に他端が第2回路構成体50の電力用導電路55に接続された中継導電部材40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路構成体及び電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車等の車両に搭載される電気接続箱として特許文献1に記載のものが知られている。この電気接続箱を構成する回路構成体は、フレキシブル基板を介してリレー等のパワー回路部品とIC等の制御部品とを電気的に接続したものである。フレキシブル基板は、載置板が取り付けられリレーの端子が接続される接続部と、ハード基板が取り付けられ各種制御を行うための複数のIC等を載置した回路部と、接続部と回路部とを連結する連結部とを備えている。連結部で屈曲させ、接続部と回路部を対向状に配することで、一枚のリジット基板上にパワー回路部品と制御部品とを実装していた場合と比較して、回路構成体を小型化したものである。
【0003】
ところで、上記の構成を成立させるには、フレキシブル基板上に電力回路及び制御回路を形成することとなるが、フレキシブル基板の通電許容電流は小さいから、結果としてフレキシブル基板上に実装できるパワー回路部品等の実装部品は限られることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−298286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の適用が難しい比較的大電流が流れる、例えばリレーの実装数が多い大型の回路構成体においても、車室内を広く確保するための小型化が求められている。また、他の搭載部品との干渉を避けたり、デッドスペースを活用して当該電気接続箱を搭載するために、搭載スペースに合わせて電気接続箱全体としての形状を変更できる形状の柔軟性が求められている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化が可能であって、搭載スペースに応じて形状を変更可能な回路構成体及び電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リレーを制御して電源から負荷への電力の通断電を行う回路構成体であって、可撓性の回路基板に前記リレーの制御用導電路を形成してなり、前記リレーの制御端子を前記制御用導電路に接続すると共に前記リレーの電力端子を前記回路基板に形成したスルーホールに貫通させた状態で前記リレーを実装した第1回路構成体と、基板に前記負荷又は前記電源に至る前記リレーの電力用導電路を形成してなり前記第1回路構成体と少なくとも一部が重ねられた第2回路構成体と、前記第1回路構成体のうち前記第2回路構成体との重ね合わせ部分に設けられ一端が前記スルーホールを貫通した前記電力端子にろう付け又は溶接によって接続されると共に他端が前記第2回路構成体の前記電力用導電路に接続された中継導電部材とを有することに特徴を有する。
【0008】
このような構成によれば、リレーの制御用導電路と電力用導電路とをそれぞれ別体の回路構成体に分け、リレーを制御用導電路が形成された可撓性の回路基板に実装する構成とすることで、小型化が可能となり、更に搭載スペースに応じて全体形状を変更可能な回路構成体を提供することができる。詳しく説明すると、回路構成体の大きさに影響を与えるのは、リレー等の実装部品であって、これをどのように配置するかによって回路構成体の全体の大きさ、あるいは形状が決定される。よって、リレーを可撓性の回路基板上に実装し、この回路基板を屈曲させれば、リレーの回路構成体内での空間的な配置を変えることが可能となるから、回路構成体の小型化や搭載スペースに応じた形状の変更が可能となるのである。
【0009】
また、リレーを可撓性の回路基板上に実装する構成とすることで、リレーを平坦な状態の回路基板に実装し、その後屈曲させて所望の形状に形作ることが可能となるから、リレー等の実装部品を実装する作業が容易となる。なお、リレー等の実装部品の実装数が多く通電電流量が大きい回路構成体においても、リレーの制御用導電路と電力用導電路とを別体の回路構成体に分ける本発明の構成を適用可能であるから、実装部品の数に限らず小型化することができ、汎用性に優れている。
【0010】
また、リレーの電力端子と第2回路構成体の電力用導電路とを接続する中継導電部材は、第1回路構成体の第2回路構成体との重ね合わせ部分に設けられ、しかも一端は電力端子にろう付け又は溶接によって接続されているから、電力導電路からリレーの電力端子までの導電路が短くなり、省スペース化、及び経路発熱による回路構成体内の温度上昇を抑えることができる。
【0011】
前記第2回路構成体には前記電力用導電路に連なり前記基板から突出する雄端子金具が設けられ、前記中継導電部材には前記雄端子金具を挿入して接続する接続孔が形成されていてもよい。このような構成によれば、リレーの電力端子から第2回路構成体の電力用導電路までの導電路を更に短縮できるから、更なる省スペース化、及び経路発熱による回路構成体内の温度上昇の抑制が期待できる。また、第1回路構成体と第2回路構成体とを重ね合わせる構成を利用して、リレーの電力端子と電力用導電路に連なる雄端子金具とを中継導電部材を介して簡易な構成で接続することができるから、低コスト化を図ることが可能である。
【0012】
前記雄端子金具は前記電力用導電路を構成する電線を圧入して接続するための圧接端子部を有していてもよい。電力用導電路として電線を用いれば、通電電流を大きくすることができる、言い換えれば大きな電流の通電を許容することが可能となるから、例えば電力用導電路をプリント基板上に配線パターンを形成することにより構成する場合と比較して、通電電流の許容範囲が広がり、汎用性に優れたものとすることができる。
【0013】
また、雄端子金具が電力用導電路として機能する電線を圧入して接続可能な圧接端子部を有するものとすることで、電力用導電路と中継導電部材との接続を簡素化することができる。
【0014】
前記第2回路構成体のうち前記第1回路構成体との重なり部分には、前記リレーの前記電力端子又は前記制御端子を受け入れる凹部又は孔が形成されていてもよい。このような構成とすれば、電力端子又は制御端子を逃がす空間が第2回路構成体に設けられているから、第1回路構成体と第2回路構成体との重ね合わせ部分において、両回路構成体をより近接した状態で重ね合わせることができ、回路構成体の更なる小型化が可能となる。また、第1と第2の回路構成体間の隙間をより小さくすることで、リレーの電力端子から電力用導電路までの導電路も短縮化できるから、経路発熱による回路構成体内の温度上昇の抑制や、中継導電部材の小型化によるコスト低減も期待できる。
【0015】
前記中継導電部材と前記雄端子金具とは同一材質の金属材料からなるものであってもよい。このような構成によれば、中継導電部材と雄端子金具とで熱膨張率が同一となるから、熱応力により両部材の接続部分にクラックが生じるのを低減することができる。これにより、中継導電部材及び雄端子金具を介した電力用導電路とリレーの電力端子間の接続信頼性を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型化が可能であって、搭載スペースに応じて形状を変更可能な回路構成体及び電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の斜視図
【図2】電気接続箱を構成する回路構成体の斜視図
【図3】回路構成体の分解斜視図
【図4】第1回路構成体においてリレー等の実装部品を実装する前の回路基板の斜視図
【図5】第1回路構成体においてリレー等の実装部品を実装した後の回路基板の斜視図
【図6】第2回路構成体の斜視図
【図7】第2回路構成体の単芯線配索部位の拡大平面図
【図8】第2回路構成体に第1回路構成体を組み付ける前の要部拡大断面図
【図9】第2回路構成体に第1回路構成体を組み付けた後の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図9によって説明する。
本実施形態における回路構成体20は、図1に示すように、合成樹脂製のケース11に収容されることで電気接続箱10を構成するものであり、バッテリー等の電源と、ヘッドランプ、ワイパー等の車載電装品との間に接続されて、各種車載電装品への電力の供給及び供給電力の制御等を行うものである。以下、図1及び図2の紙面手前側を前側、紙面奥側を後側、上下方向は図1及び図2の上下方向を基準として説明する。
【0019】
ケース11内には、図2に示すように、回路構成体20を構成する第1回路構成体30と、第1回路構成体30の背面側に重畳配置される第2回路構成体50、及びその他の構成部材として、外部接続ブロック21とを備えている。外部接続ブロック21は、図2における第1回路構成体30の右端部に取り付けられたコネクタブロック22と、第1回路構成体30の下端部に取り付けられたヒューズブロック25、第2回路構成体50の電線配索板51(基板に相当する)に取り付けられた第2コネクタブロック54等から構成されている。
【0020】
コネクタブロック22は、ハウジング23とハウジング23から突出する複数のコネクタ端子24を備えており、コネクタ端子24は、後述する第1回路構成体30の回路基板31に形成された導電路に連なるスルーホール32に挿通されることで導電路に接続されている。
【0021】
ヒューズブロック25は、図3に示すように、第1回路構成体30の回路基板31下端部に実装された複数のリレー35に接続されるものである。本実施形態におけるリレー35は、メカニカルリレーであって、一対の電力端子35Aと一対の制御端子35Bとを備えている。制御端子35Bはコイルに接続されており、後述する制御用導電路からの出力によって電圧が印加されることにより、電力端子35A間の通断電を制御する一般的な構成である。制御端子35Bは、回路基板31に形成された導電路のうちの制御用導電路(図示せず)に接続され、電力端子35Aは回路基板31、及び回路基板31背面に配された中継導電部材40を貫通し、中継導電部材40に電気的に接続されている。
【0022】
ヒューズブロック25は、回路基板31の下方に重畳配置される扁平な長方形状のハウジング26と、ハウジング26から上方に突出する複数の雄端子27及び複数の接続端子28、ハウジング26から下方に突出して図示しないヒューズが差し込まれる複数のヒューズ端子29とを備えている。雄端子27は中継導電部材40、及び回路基板31を貫通し、中継導電部材40に電気的に接続されている。接続端子28は、第2回路構成体50の図示しない雌端子に嵌合することで、その第2回路構成体50に配索した単芯線55(電力用導電路に相当する)に電気的に接続されている。これにより、第2回路構成体50の単芯線55によって構成されている電力用導電路の一部は、ヒューズブロック25のヒューズ及びリレー35を通って再び第2回路構成体50側に戻るようになっている。なお、中継導電部材40を介したリレー35と制御用導電路、電力用導電路としての単芯線55の接続構造は、第1回路構成体30と第2回路構成体50との接続構造と同じであるため、後ほど詳細に説明する。
【0023】
第1回路構成体30は、回路基板31と、回路基板31上に実装されるリレー35及びその他多数の電子部品36、各種コネクタ37とから構成されている。電子部品36としては、MOSFET等のスイッチング素子やIC等が例示され、電子部品36及び各種コネクタ37の端子は対応する回路基板31の導電路に接続されている。
【0024】
回路基板31は、フレキシブル基板様の可撓性を有し、ポリイミドの絶縁フィルム上の両面に厚さが35μmの圧延銅箔をラミネート法にて貼り付けて複合させた二層基板を用いた場合が例示され、その片面又は両面に導体パターンがプリントされることにより図示しない導電路が形成されている。なお、この導電路には、リレー35の制御端子35Bに接続される制御用導電路も含まれている。そして、これらの導電路に連なるように、各所にスルーホール32が形成され、リレー35やコネクタ37の端子を貫通させた状態でスルーホール実装により回路接続がなされている。このような回路基板31は、主に電子部品36が実装された制御部31Aと、リレー35が実装されたリレー部31B、制御部31Aとリレー部31Bとに連なる連結部31Cとに区画される。
【0025】
さて、リレー部31Bにおいては、上記スルーホール32とは別に、回路接続されていない貫通孔として、リレー35の電力端子35Aを貫通する電力端子貫通孔33(スルーホールに相当する)、第2回路構成体50に設けられた中継端子60(雄端子金具に相当する)を貫通させる中継端子貫通孔34(スルーホールに相当する)が複数形成されている。
【0026】
回路基板31の背面における所定の位置には、図4及び図8、図9に示すように、中継導電部材40が銀ペースト等の導電接着剤45により接合されている。この中継導電部材40は、銅又は銅合金製の平板からなり、表面にはスズメッキが施されている。中継導電部材40は、その両端に貫通孔を有し、それぞれリレー側連通孔41、中継端子側連通孔42(接続孔に相当する)とされている。リレー側連通孔42は、電力端子貫通孔33に連通しており、これらをリレー35の電力端子35Aが貫通している。また、中継端子側連通孔42は、中継端子貫通孔34に連通しており、第2回路構成体50の単芯線55に接続される中継端子60がこれらを貫通している。よって、リレー35の電力端子35Aは、中継導電部材40、中継端子60を介して、後述する第2回路構成体50の単芯線55に回路接続されている。なお、回路基板31は、図5に示すように、平坦な状態でリレー35等を実装後、図2に示すように、第2回路構成体50に対応するように連結部31C等で屈曲され、車両等に搭載される。
【0027】
第2回路構成体50は、単芯線配索板51(基板に相当する)と、単芯線配索板51に配索された複数の単芯線55と、単芯線55に接続され単芯線配索板51から前方に突出する中継端子60とを備えている。単芯線配索板51は、合成樹脂製であって、回路基板31の制御部31Aに対向配置される第1配索板51Aと、リレー部31Bに対向配置される第2配索板51Bからなる。第1配索板51Aと第2配索板51Bとは、その後面(背面)に配索される単芯線55によって屈曲可能に接続されている。各配索板51A,51Bは平面視方形の扁平な箱状をなし、前部は第1回路構成体30の回路基板31に対向する平板状を呈し、後部は後方に向かってその内面を外部に開放した態様をなしている。このうち、第2配索板51Bの前面には、その上部に重畳配置される回路基板31のリレー部31Bから後方に向かって突出するリレー35の電力端子35A及び制御端子35Bを逃がす凹部51Cが凹設されている。
【0028】
この単芯線配索板51の後面には、図7に示すように、複数の単芯線55が配索されている。単芯線55は、芯線を合成樹脂製の絶縁層で被覆してなる被覆電線であって、その導体外径は通電電流量に応じて適宜変更可能とされている。単芯線配索板51の背面には、単芯線55がプリント配線される代わりに、電力用導電路として、回路状に配索されている。具体的には、単芯線配索板51の背面には、単芯線55を保持する複数組の保持部52が突設されており、この各保持部52間に単芯線55を配することで、配索経路がガイドされている。この単芯線55の配索経路には、保持部52とは別に、中継端子60が突設されている。
【0029】
この中継端子60は、単芯線配索板51に対して圧入又はインサート成形により板面を貫通した状態に保持されている。中継端子60は、中継導電部材40と同じ銅又は銅合金製であって、全体として音叉形状をなしている。即ち、第1回路構成体30の回路基板31に面する前側に突出する前部は棒状に延びる雄端子部61とされ、単芯線55が配索された後側に突出する後部は雄端子部61から二股に分かれた圧接端子部62とされている。二股に分かれた圧接端子部62は、一対の圧接刃からなり、圧接刃間に単芯線55を後方から圧入することで、単芯線55を圧接端子部62に圧接させ、単芯線55の絶縁被覆が破られることで、その芯線と圧接端子部62とが電気的に接続される。
【0030】
第1配索板51Aからは前方に向かって複数の様々な態様のバスバー53が突設されている。これらは、第1配索板51Aの後面において単芯線55に接続され、第1回路構成体30に組み付ける状態においては、図2に示すように、回路基板31の制御部31Aを貫通して図示しない相手側の端子と接続可能に突設されている。
【0031】
第2配索板51Bには、図6に示すようにその右側方から、第2コネクタブロック54が接続されている。第2コネクタブロック54は、第1回路構成体30に接続されるコネクタブロック22と同様に、ハウジング54Aとハウジング54Aから突出する複数のコネクタ端子54Bとを備えている。コネクタ端子54Bは、単芯線55に接続され、第2コネクタブロック54の図示しない相手側端子が電源側に接続されることで、単芯線55に電力が供給される構成である。
【0032】
続いて、本実施形態の電気接続箱10の組付方法及び作用について説明する。
まず、図4に示すフラットな状態の回路基板31にリレー35、外部接続ブロック21のうちのコネクタブロック22、各種コネクタ37を実装する。具体的には、リレー35の制御端子35Bをスルーホール32に挿通し、同電力端子35Aを電力端子挿通孔33に挿通する。また、外部接続ブロック21、各種コネクタ37の各種端子も、同様に対応するスルーホール32に挿通する。その後、フロー方式によりはんだ付けを行う(図5参照)。このうち、リレー部31Bにおいては、図8に示すように、リレー35の電力端子35Aが電力端子貫通孔33及び中継導電部材40のリレー側連通孔41を挿通し、制御端子35Bがスルーホール32を挿通し、それぞれ電力端子貫通孔33及びスルーホール32に対して、フローはんだ付けされた状態にある。このように、回路基板31がフラットな状態において、リレー35等の実装部品を実装することにより、その実装作業が容易となり、特にフローはんだ付けを容易に行うことができる。
【0033】
次に、第1回路構成体30を第2回路構成体50に組み付ける。即ち、図3に示すように、第2回路構成体50の第1配索板51Aに対して、対応する第2回路構成体50の制御部31Aを、同様に第2配索板51Bに対して、対応するリレー部31Bを重ね合わせる。具体的には、第1配索板51Aは、突設されたバスバー53を制御部31Aに貫通させることで、第1配索板51A上に制御部31Aを重畳配置させることができる。また、第2配索板51Bは、図8に示すように、中継端子60の雄端子部61を中継導電部材40の中継端子側連通孔42、これに連通する中継端子貫通孔34を貫通させることで、第2配索板51B上にリレー部31Bを重畳配置させることができる。
【0034】
そして、少なくとも、中継端子60の貫通部位、及びリレー35の電力端子35Aの貫通部位、及び制御端子35Bの貫通部位を、再びフローはんだ付けすることにより、中継端子60の中継導電部材40に対する導通、及びリレー35の電力端子35Aの中継導電部材40に対する導通を確保することができる。この際、図9に示すように、第2配索板51Bの前面には凹部51Cが凹設されているから、中継導電部材40よりも突出したリレー35の電力端子35A、制御端子35Bを逃がし、回路基板31のリレー部31Bと、電線配索板51の第2配索板51Bとを中継導電部材40に密着するように重畳配置することができる。このように、凹部51Cを設けることで、第1回路構成体30の制御用導電路と第2回路構成体50の単芯線55(電力用導電路)との配索距離を縮め、薄型化(省スペース化)、及び経路発熱による回路構成体20内の温度上昇の抑制することができる。
【0035】
続いて、回路基板31のリレー部31Bに取り付けられたコネクタブロック22は、そのコネクタブロック22が実装された回路基板31を前方に向かって略直角に折り曲げることでリレー35に対して横並びに配置される(図2参照)。同様に、リレー部31Bの下端部を実装されたリレー35ごと、前方に向かって略直角に折り曲げる。そして、ヒューズブロック25の雄端子27を対応する中継端子貫通孔34に挿通させ、接続端子28を電線配索板51(第2配索板51B)の単芯線55に接続することで、ヒューズブロック25を電力用導電路としての単芯線55及びリレー35に接続することができる。なお、雄端子27とリレー35の電力端子35Aとは、上記した中継端子60とリレー35の電力端子35Aと同様に、中継導電部材40を介して接続しており、その組付方法や作用については、同様であるため、説明を省略する。
【0036】
その後、第1回路構成体30と第2回路構成体50を同時に折り曲げる。その屈曲部位は、図2に示すように、第2回路構成体50において第1配索板51Aと第2配索板51Bとを接続した単芯線55の露出部位と、それに重畳する回路基板31の連結部31Cである。第2配索板51B及びそれに重畳するリレー部31Bを基準として、第1配索板51A及びそれに重畳する制御部31Aを後方に向かって、略直角に折り曲げる。このようにして回路構成体20の全体形状がL字状をなした状態で、ケース11を取り付けることで、電気接続箱10の組付けが完了する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、少なくともリレー35の制御用導電路と電力用導電路としての単芯線55とをそれぞれ第1回路構成体30と第2回路構成体50とに分けることで、第1回路構成体30を可撓性の回路基板31からなるものとすることができる。つまり、リレー35の電力用導電路と制御用導電路とを同一の基板内に配索する場合、プリント基板にあっては、特に電力用導電路に通電する電流量が大きくなるため、フレキシブル基板のような可撓性を有する板厚の薄い回路基板を用いることが困難であった。しかしながら、本実施形態のようにリレー35の制御用導電路のみを第1回路構成体30の回路基板31に形成し、電力用導電路としての単芯線55を第2回路構成体50の電線配索板51に配索させることで、回路基板31を可撓性を有する板厚の薄い基板とすることが可能となる。
【0038】
そして、この回路基板31にリレー35等の実装部品の多くを実装することで、小型化を図ることができ、更には搭載スペースに応じて、その全体形状を変更可能な回路構成体20及び電気接続箱10を提供することができる。即ち、回路構成体20の大きさに影響を与えるのは、リレー35等の実装部品であって、これをどのように配置するかによって回路構成体20の全体の大きさ、あるいは形状が決定される。よって、リレー35を可撓性の回路基板31上に実装し、この回路基板31を屈曲させれば、リレー35の回路構成体20内での空間的な配置を変えることが可能となるから、回路構成体20の小型化や搭載スペースに応じた形状の変更が可能となるのである。
【0039】
また、リレー35等の実装部品を可撓性の回路基板31上に実装する構成とすることで、リレー35等の実装部品をフラットな状態の回路基板31に実装し、その後屈曲させて所望の形状に形作ることが可能となるから、リレー35等の実装部品を実装する作業が容易となる。なお、リレー等の実装部品の実装数が多く通電電流量が大きい回路構成体においても、リレーの制御用導電路と電力用導電路とを別体の回路構成体に分ける本実施形態の構成を適用可能であるから、実装部品の数に限らず小型化することができ、汎用性に優れている。
【0040】
また、リレー35の電力端子35Aと第2回路構成体50の単芯線55とを接続する中継導電部材40は、第1回路構成体30の第2回路構成体50との重ね合わせ部分、例えば回路基板31のリレー部31Bの後面に設けられている。そして、中継導電部材40の一端にはリレー用連通孔41が、他端には中継端子側連通孔42が設けられ、これにリレー35の電力端子35A、他端を単芯線55に接続した中継端子60の雄端子部61がそれぞれ挿通され、フローはんだ付けにより電気的に接続された構成をなす。これらの中継導電部材40を介した接続構造により、電力導電路である単芯線55からリレー35の電力端子35Aまでの導電路を短縮することができ、省スペース化、及び経路発熱による回路構成体20内の温度上昇を抑えることができる。
【0041】
そして、上記省スペース化、及び経路発熱による回路構成体20内の温度上昇の抑制といった効果は、中継導電部材40及び中継端子60の構成だけによるものでなく、制御用導電路を有する第1回路構成体30と、電力用導電路としての単芯線55を有する第2回路構成体50とを重ね合わせる構成としたことによるものでもある。このように、上記導電路を簡易な構成とし、短縮することで、低コスト化を図ることも可能である。
【0042】
また、電力用導電路として単芯線55を利用することで、通電許容電流を大きくすることが可能となるから、例えば、電力用導電路をプリント基板上にプリント配線することにより構成する場合と比較して、通電電流の許容範囲が広がり、より汎用性に優れたものとすることができる。
【0043】
また、中継端子60の一端を単芯線55を圧入して接続可能な圧接端子部62とすることで、単芯線55と中継導電部材40との接続を簡素化することが可能である。
【0044】
また、電線配索板51の少なくとも第2配索板51Bの前面には凹部51Cが設けられているから、重畳配置される回路基板31のリレー部31Bから突出するリレー35の電力端子35A及び制御端子35Bを逃がすことができ、回路基板31後面に接合された中継導電部材40に対して隙間なく第2配索板51Bを密着させることが可能となる。これにより、少なくともリレー部31B及び第2配索板51Bの重畳部位において板厚を薄くすることが可能となるから、小型化が期待できる。また、中継導電部材40と単芯線55とをより近接させることが可能となるから、この両部材を接続する中継端子60の全長を短くすることが可能となり、中継端子60の発熱による回路構成体20内の温度上昇の抑制、中継端子60の材料費低減による低コスト化が期待できる。
【0045】
また、中継導電部材40と中継端子60とは同一材質の、銅又は銅合金製であるから、熱膨張率が同一となることで、中継端子60の雄端子部61と、中継導電部材40の中継端子側挿通孔42とのはんだ付け部分において、熱応力によりクラックが生じるのを低減することができる。これにより、中継導電部材40及び中継端子60を介した単芯線55とリレー35の電力端子35A間の接続信頼性を高めることができる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
(1)上記した実施形態では、第1回路構成体30及び第2回路構成体50は主に、連結部31C及びそれに重畳する単芯線55の露出部位において屈曲されていたが、これに限られず、複数個所で屈曲される構成であってもよい。また、角度や曲げ方向も限定されず、電気接続箱の搭載スペースに合わせてその形状を適宜変更可能なものとしてもよい。
【0048】
(2)上記した実施形態では、リレー35等の実装部品の接続はフローはんだ付けによりなされていたが、これに限られず、例えば、その他のろう付けや溶接によって接続されるものであってもよい。溶接により実装部品を接続するものとすれば、その接続信頼性を更に高めることが可能である。
【0049】
(3)上記した実施形態では、単芯線55により電力用導電路を形成したが、これに限られず、例えばプリント基板に配線パターンを形成することにより電力用導電路を形成するものであってもよい。必要とされる通電電流量が小さい場合には、単芯線55を用いるよりも、低コスト化が期待できる。
【0050】
(4)上記した実施形態では、単芯線55と中継導電部材40とを中継端子60により接続する構成としたが、これに限られず、例えば中継導電部材をバスバー状のものとして、その端部が直接単芯線55に接続されるような構成であってもよい。
【0051】
(5)上記した実施形態では、第2配索板51B上にリレー35の電力端子35A及び制御端子35Bを逃がす凹部51Cが形成されていたが、これに限られず、貫通孔を形成することにより、リレーの電力端子及び制御端子を受け入れる構成とされていてもよい。
【0052】
(6)上記した実施形態では、中継導電部材40と中継端子60とは銅又は銅合金製の同一材料から構成されていたが、これに限られず、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…電気接続箱
11…ケース
20…回路構成体
30…第1回路構成体
31…回路基板
32…スルーホール
33…電力端子貫通孔(スルーホール)
34…中継端子貫通孔(スルーホール)
35…リレー
35A…電力端子
35B…制御端子
40…中継導電部材
41…リレー側連通孔
42…中継端子側連通孔(接続孔)
50…第2回路構成体
51…電線配索板(基板)
51C…凹部
55…単芯線(電力用導電路)
60…中継端子(雄端子金具)
61…雄端子部
62…圧接端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーを制御して電源から負荷への電力の通断電を行う回路構成体であって、
可撓性の回路基板に前記リレーの制御用導電路を形成してなり、前記リレーの制御端子を前記制御用導電路に接続すると共に前記リレーの電力端子を前記回路基板に形成したスルーホールに貫通させた状態で前記リレーを実装した第1回路構成体と、
基板に前記負荷又は前記電源に至る前記リレーの電力用導電路を形成してなり前記第1回路構成体と少なくとも一部が重ねられた第2回路構成体と、
前記第1回路構成体のうち前記第2回路構成体との重ね合わせ部分に設けられ一端が前記スルーホールを貫通した前記電力端子にろう付け又は溶接によって接続されると共に他端が前記第2回路構成体の前記電力用導電路に接続された中継導電部材とを有する回路構成体。
【請求項2】
前記第2回路構成体には前記電力用導電路に連なり前記基板から突出する雄端子金具が設けられ、前記中継導電部材には前記雄端子金具を挿入して接続する接続孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の回路構成体。
【請求項3】
前記雄端子金具は前記電力用導電路を構成する電線を圧入して接続するための圧接端子部を有することを特徴とする請求項2記載の回路構成体。
【請求項4】
前記第2回路構成体のうち前記第1回路構成体との重なり部分には、前記リレーの前記電力端子又は前記制御端子を受け入れる凹部又は孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の回路構成体。
【請求項5】
前記中継導電部材と前記雄端子金具とは同一材質の金属材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の回路構成体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の回路構成体と、前記回路構成体を収容するケースと、を備えた電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228082(P2012−228082A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94010(P2011−94010)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】