説明

回転つまみのトルク可変機構

【課題】部品点数の増大、コストアップを招くことなく、経年劣化を少なく回転つまみのトルクを可変可能とする。
【解決手段】円形の凹部を有するパネル50と、凹部中央をシャフト32が貫通しシャフト32外周に設けられた第1のネジ部31に螺合するナット40により取り付けられる回転操作部品30と、シャフト32に固定される回転つまみ10と、回転つまみ10の下面に嵌合された第1の弾性部材60と、ナット40の外周の第2のネジ部41に螺合し第1の弾性部材60に対して延在した突起部21を有し第2のネジ部周囲を回動することで突起部21の位置が上下に可動する第2の回転つまみ20と、第2の回転つまみ20の外周と凹部の側壁面とを摺接する第2の弾性部材70と、を備え、第2の回転つまみ20を回転させ、突起部21が第1の弾性部材60を押圧することにより第1の回転つまみ10の回転トルクを可変させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信機等の周波数を可変するために装備されるロータリーエンコーダを操作する回転つまみのトルク可変機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機の周波数等を設定する操作手段として、回転つまみによりロータリーエンコーダを回すことで周波数を連続的に可変する手段が広く知られている。
【0003】
クリック感の無い、滑らかに回転するエンコーダは、周波数を連続的に可変する操作をする場合には最適ではあるものの、意図せずに回転つまみに触ってしまった場合や振動等によりエンコーダが回転してしまい周波数が変わってしまう場合がある。そのため、特許文献1には、回転つまみに摩擦を与えることにより不用意にエンコーダが回転してしまわないようにし、操作時の回転トルクを可変する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−47449公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された回転つまみのトルクの可変機構は、回転操作部品のシャフト周囲に波型ワッシャを配し、回転つまみと共に回転するトルク調整つまみのシャフト軸方向上の位置を移動させることで波型ワッシャを圧縮し、その摩擦によりトルクを可変している。
しかしながら比較的軸に近い箇所の摩擦で大きいトルクを得るためには、外周に近い箇所で摩擦をさせトルクを得る場合と比較して、より大きな摩擦による抵抗を必要とし、そのためにはより大きな圧力を必要とする。
さらに、特許文献1では、回転つまみとトルク調整つまみが共に回転し、トルク調整つまみにより回転つまみのトルクを生じさせる構造のため、回転つまみのトルクの設定を最大としても、回転つまみがトルク調整つまみとずれて回転してはならないため、回転つまみとトルク調整つまみの間には設定トルク以上の圧力をかけておく必要がある。このためトルクを必要としない場合であっても、回転つまみとトルク調整つまみの間の弾性部材は圧縮された状態になっているため、経年劣化で弾性体の反発力が低下する恐れがある。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、部品点数の増大、コストアップ、耐久性の低下を招くことなく、回転つまみのトルク可変機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、
円形状の凹部を有するパネルと、
前記凹部の中心をシャフトが貫通し、前記シャフトの外周に第1のネジ部を有し、前記第1のネジ部に螺合し外周に第2のネジ部を有するナットにより取り付けられる回転操作部品と、
前記シャフトに固定される第1の回転つまみと、
前記第1の回転つまみ下面に嵌合され、前記回転操作部品のシャフトが貫通する穴を有し、前記第1の回転つまみの下面の直径以下の直径を有する円盤状の第1の弾性部材と、
前記第2のネジ部に螺合し、第1の弾性部材の外周近傍の下面に向かって延在した突起部と前記第1の回転つまみの外周の外側に位置する操作部とを有し、前記第2のネジ部周囲を回動することで前記突起部の位置が上下に可動する第2の回転つまみと、
前記第2の回転つまみの外周と前記凹部の側壁面とを摺接する第2の弾性部材と、
を備え、
前記突起部が、前記第1の弾性部財の外周近傍の下面を押圧する力を可変することにより前記第1の回転つまみの回転トルクを可変させるトルク可変機構を提供する。
【0007】
また、本発明は、
前記ナット上端部に外周方向に突出したフランジ部を備え、
前記第2の回転つまみが上方へ移動させられても前記ナットのフランジ部下面と接することにより、前記回転トルクが制限されてもよい。
【0008】
さらに、本発明は、
前記第2の回転つまみを回転させるトルクは、前記第1の回転つまみのトルクを最大にした場合の前記第1つまみの回転トルクより大きくなるように、前記第2の弾性部材による前記第2の回転つまみと前記パネルの摩擦を設定してもよい。
【0009】
さらにまた、本発明は、
前記第1の弾性部材は、前記第2のつまみの操作によって前記突起部が前記第1の弾性部材の外周近傍に押圧する箇所の弾性が他の箇所の弾性より小さい構造としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経年劣化の少ないトルク可変機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るトルク可変機構の一実施形態を示す断面図である。
【図2】一実施形態のトルク可変機構のトルクを最大に設定した場合の断面図である。
【図3】一実実施例のトルク可変機構で、弾性部材の弾性を一様にした場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の回転つまみのトルク可変機構について添付図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転つまみのトルク可変機構の断面図である。
図1において、パネル50は円形状の凹部を有する。回転操作部品30が、パネル50の凹部中心部を回転操作部品30のシャフト32およびネジ部31が貫通している。
回転操作部品30はネジ部31に螺合するナット40によりパネル50に取り付けられている。
またナット40は、外周にネジ部41を有し、上端に外周方向へ突出したフランジ部42を有する。
回転操作つまみ10は底部中央に凹部11を有し、回転操作部品30のシャフト32が嵌合されている。さらに回転つまみ10の底部には、凹部11の周囲に環状の凹部12を有し、シャフト32が貫通する穴を有し回転つまみの直径以下の直径の円盤状の弾性部材60が嵌合している。
弾性部材60は、外周近傍の部位に他の箇所より弾性を小さくした構造の外周部61を有する。
【0014】
トルク調整つまみ20は、回転つまみ10の外側に位置する操作部22を有し、外周に環状の弾性部材70を備える。弾性部材70はパネル50の凹部の側部壁面と摺接する。
またトルク調整つまみ20は、ナット40のネジ部41と螺合し、回転させることにより、パネル50の凹部の底に接する位置から、フランジ部42の下面に接する位置まで上下に可動する。またトルク調整つまみ20には弾性部材60の外周部61の方向に延在した突起部21を有する。
突起部21は、トルク調整つまみ20の位置が上昇した場合に外周部61を押圧する。
【0015】
図1は、トルク調整つまみ20の下面がパネル50の凹部の底面に接した状態である。
トルク調整つまみ20の突起部21は、外周部61を押圧していない。この場合回転つまみ10は、回転操作部品30のシャフト32を回すに必要なトルクのみで回すことが可能であり、最もトルクが小さい状態である。
【0016】
図2は、トルク調整つまみ20の上面がナット40のフランジ部42の下面に接した状態である。
トルク調整つまみ20の突起部21は、回転操作つまみ10に嵌合された弾性部材60の外周部61を押圧し、回転操作つまみ10を回転させる場合に摩擦が生じる。
この摩擦により回転操作つまみ60を回転させる際のトルクが、図1と比較して増大する。
【0017】
回転つまみ10を回転させる際に生じるトルクは、トルク調整つまみ20の突起部21と回転つまみ10に嵌合した弾性部材60の外周部61との摩擦により変化する。
この摩擦は、トルク調整つまみ20の突起部21が外周部61を押圧し、外周部61を変形させる圧力により変化し、またこの圧力はトルク調整つまみ20の上下位置により変化する。
トルク調整つまみ20は、ナット40の外周のネジ部41に螺合しているため、回転させることによりその位置が上下する。
これらの関係により、トルク調整つまみ20を回すことにより、回転つまみ10のトルクを可変することができる。
【0018】
トルク調整つまみ20を回し、その位置を上方にするほど、回転つまみ10に生じるトルクは増大する。外周部61は、図1および図2では、弾性部材60の外周直近の上面側の一部が切り欠かれ、下面側が外周方向に突出した構造としている。突起部21の押圧により外周部61の下面の突出した部位のみが変形する圧力の範囲では、回転つまみ10とシャフト32との嵌合にストレスが生じるような圧力は生じない。
しかしながら回転つまみ10の底部より圧力を与える構造の為、その圧力が過剰な場合には、外周部61がつぶれ、回転つまみ10を突き上げ、回転つまみ10とシャフト32との嵌合にストレスを生じさせることになる。
そのため、トルク調整つまみ20の上方への移動は、ナット40の上部のフランジ部42との接触により制限される。
このフランジ部41との接触により、回転つまみ10への底部からの突き上げが規制され、回転つまみ10とシャフト32との嵌合に過剰なストレスがかかないように規制される。
このフランジ部42によりトルク調整つまみ20の上方への移動が規制された位置が、回転つまみ10に与えるトルクが最大となる。
【0019】
同じトルクを得るには、摩擦が生じる箇所が回転の中心より離れた箇所ほど小さくてよいのは周知である。
また摩擦を生じさせる材質が同じならば、その材質同士の圧力が小さい方が摩擦は小さいのも周知である。
これらのことから、回転つまみ10の外周に近い箇所にてトルクを得るための摩擦を生じさせる方が、必要なトルクを生じさせるための圧力は小さくてよい。
また、圧力が小さくて済むため、摩擦を生じさせる箇所の経年劣化が少なくなる。
【0020】
よって、トルク調整つまみ20の突起部21が弾性部材60を押圧する外周部61は回転つまみ10の下面外周の近傍のため、圧力が小さくても十分に回転つまみのトルクが得られる。ことから外周部61は変形が容易な構造もしくは材質としてもよい。
【0021】
外周部61は、図1では、弾性部材60の外周近傍の上面を切り欠いた構造としているが、弾性を下げる構造であれば手段は問わない。突起部21が押圧する箇所のみ弾性が下がるように二色成型された異なる材質を用いた部材でもよい。
【0022】
回転つまみ10にトルクが生じるように設定し回転つまみ10を回した場合、弾性部材60を介してトルク調整つまみ20に対しても回転させる力が生じる。
しかし、トルク調整つまみ20の外周にはパネル50の凹部の側壁との間に弾性部材70が介在する。
この弾性部材70は圧縮されおり、圧縮された圧力によってトルク調整つまみ20は回転する際に摩擦を生じる。
パネル50とトルク調整つまみ20外周のクリアランス、そして弾性部材70の材質および大きさを適切にすることによって、回転つまみ10に与えられる最大トルクより大きくなるように、トルク調整つまみ20を回す際のトルクは設定される。
そのため、回転つまみ10を回してもトルク調整つまみ20が共に回ってしまうことはない。
【0023】
トルク調整つまみ20を回すトルクの方が、回転つまみ10に与えられる最大トルクより大きい。
回転つまみ10がトルクを生じるための摩擦が行われる箇所が、回転つまみの下面外周近傍となるのに対し、トルク調整つまみ20は外周に配置した弾性部材70により行われる。
このためトルク調整つまみ20の摩擦を発生させる箇所の方がより回転の中心より離れているため、仮に回転つまみ10とトルク調整つまみ20が同じ摩擦力であったとしてもトルク調整つまみの方がトルクは大きくなる。よって弾性部材70にかかる圧力は小さくて済むことになる。そのため経年劣化は少なくなる。
【0024】
弾性部材60と回転つまみ10は嵌合されているが、双方の接触面を接着してもよく、双方の接触面に一方に凸他方に凹を設け擦動しないようにしてもよい。
【0025】
また、図3に示すように回転つまみ10のトルクの可変範囲が適切であれば、弾性部材60の外周部の弾性を下げずに一様にしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…回転つまみ、11…凹部(シャフト32用)、12…凹部(弾性部材60用)、20…トルク調整つまみ、21…突起部、22…操作部、30…回転操作部品(エンコーダ)、31…ネジ部、32…シャフト、40…ナット、41…ネジ部、42…フランジ部、50…パネル、60…弾性部材、61…外周部、70…弾性部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状の凹部を有するパネルと、
前記凹部の中心をシャフトが貫通し、前記シャフトの外周に第1のネジ部を有し、前記第1のネジ部に螺合し外周に第2のネジ部を有するナットにより取り付けられる回転操作部品と、
前記シャフトに固定される第1の回転つまみと、
前記第1の回転つまみ下面に嵌合され、前記回転操作部品のシャフトが貫通する穴を有し、前記第1の回転つまみの下面の直径以下の直径を有する円盤状の第1の弾性部材と、
前記第2のネジ部に螺合し、第1の弾性部材の外周近傍の下面に向かって延在した突起部と前記第1の回転つまみの外周の外側に位置する操作部とを有し、前記第2のネジ部周囲を回動することで前記突起部の位置が上下に可動する第2の回転つまみと、
前記第2の回転つまみの外周と前記凹部の側壁面とを摺接する第2の弾性部材と、
を備え、
前記突起部が、前記第1の弾性部財の外周近傍の下面を押圧する力を可変することにより前記第1の回転つまみの回転トルクを可変させるトルク可変機構。
【請求項2】
前記ナット上端部に外周方向に突出したフランジ部を備え、
前記第2の回転つまみが上方へ移動させられても前記ナットのフランジ部下面と接することにより、前記回転トルクが制限される請求項1に記載のトルク可変機構。
【請求項3】
前記第2の回転つまみを回転させるトルクは、前記第1の回転つまみのトルクを最大にした場合の前記第1のつまみの回転トルクより大きくなるように、前記第2の弾性部材による前記第2の回転つまみと前記凹部との摩擦を設定したことを特徴とする請求項1および請求項2に記載のトルク可変機構
【請求項4】
前記第1の弾性部材は、前記第2のつまみの操作によって前記突起部が前記第1の弾性部材の外周近傍に押圧する箇所の弾性が他の箇所の弾性より小さい構造としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトルク可変機構。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−192477(P2011−192477A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56406(P2010−56406)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】