説明

回転型電子部品

【課題】各種電子機器の操作部等に用いられる略円環状の回転型電子部品に関し、他の部品が円環内の位置に配置できる上、吸着による自動実装も可能なものを提供する。
【解決手段】円環状のケース11の内側円筒部11B内に、連結部12Aを介して中央部12Bに繋がる平坦面部12を一体に配したものとし、その中央部12Bの上面を吸着できるようにすると共に、連結部12Aどうしで構成される孔部12Cを介して中空部11A内に配置された他の部品の操作などを可能なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作部等に用いられる回転型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外形が円環状に構成された回転型電子部品を機器の配線基板に実装すると共に、その電子部品の中空部内にあたる配線基板上の位置に他の電子部品(LEDやスイッチなど)を実装して操作部の集中化を図ることが多くなっている。
【0003】
そのような回転型電子部品につき回転型エンコーダを事例として、以下に図面を用いて説明する。
【0004】
図7は従来の回転型エンコーダの断面図、図8は同外観斜視図である。
【0005】
同図において、1は、外形が略円環状に構成された絶縁樹脂製のケースであり、その円環内に構成される中空部1A周囲を囲む内側円筒部1Bは、上方へ突出形成されている。
【0006】
そして、上記ケース1の円環状部分は上方開口の凹部形状になされ、その底部には、金属薄板からなる所定の接点パターンに形成された固定接点板2がインサート成形で固定されている。固定接点板2からの端子5は、ケース1の外方にそれぞれ導出されている。
【0007】
そして、6は、外側円筒部6Aの下端にフランジ部6Bを有する略円環状に形成された絶縁樹脂製の操作体であり、この操作体6は、上記ケース1に対し相対的に回転可能なように、外側円筒部6A内に上記ケース1の内側円筒部1Bを同心で挿通させて組み合わされ、その状態で、フランジ部6Bはケース1の円環状の凹部内に収容されている。また、上記操作体6のフランジ部6B下面には、上記固定接点板2上を摺接する刷子7が固着されている。
【0008】
そして、8は、ケース1の形状に合わせて略円環状に形成された金属板製のカバーであり、上記ケース1の凹部における上方開口部分を平板部8Aで覆うようにケース1上から載せられて、カシメ脚部8Bをケース1の下面側に抱きカシメすることによりケース1に結合されている。ケース1の凹部内に収容された操作体6のフランジ部6Bは、平板部8Aで上方への位置規制が図られている。
【0009】
以上のように構成された従来の回転型エンコーダは、操作体6の外側円筒部6Aを回転操作すると、操作体6がケース1の内側円筒部1Bに対して相対的に回転移動し、その回転移動に伴ってフランジ部6B下面の刷子7が固定接点板2上を弾接摺動していき、端子5を介して操作位置に応じた出力が得られるものであった。
【0010】
そして、その搭載状態としては、使用する電子機器の配線基板上に上記回転型エンコーダを実装すると共に、その中空部1A内の配線基板上の位置にLEDなどの他の部品を実装して使用されることが多いものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−176287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来の回転型エンコーダ(回転型電子部品)は、中空部1Aを略中央位置に有する異形状であったため、実装の自動化、特に吸着して自動実装することが難しかった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、他の部品が円環内の位置に配置できる上、吸着による自動実装も可能な回転型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0015】
本発明の請求項1に記載の発明は、中空部を備えた略円環状の回転型電子部品であって、その中空部部分に自動実装時に用いられる被吸着部が設けられた回転型電子部品であり、中空部内の位置に他の部品の配置ができると共に、被吸着部を吸着して自動実装することもできる回転型電子部品を得ることができるという作用を有する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第一筒部を有する絶縁樹脂製の第一筐体と、その第一筒部の外側に同心に位置する第二筒部を有する絶縁樹脂製の第二筐体とが、互いの筒部どうしを相対的に回転可能に係合されて構成されると共に、その第一筒部内の空間で構成された中空部に、上記第一筐体と一体形成された平坦面部が設けられ、上記平坦面部が被吸着部としてなるものであり、吸着による自動実装可能なものを、部品点数や組み立て工数の増加などなく構成できるという作用を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、中空部内に配される他の部品の配置位置に応じて、平坦面部の所定位置に孔部が設けられたものであり、孔部を介して中空部内の位置に配された他の部品の操作などが可能になると共に、孔部が肉盗みとしても作用して平坦面部などの不要なヒケや反りなどの発生も低減できるという作用を有する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第一筒部を有する絶縁樹脂製の第一筐体と、その第一筒部の外側に同心に位置する第二筒部を有する絶縁樹脂製の第二筐体とが、互いの筒部どうしを相対的に回転可能に係合されると共に、その第一筒部内の空間で中空部が構成され、被吸着部が、上記第一筒部または上記第二筒部に結合された取り外し可能な蓋部で構成されたものであり、筐体の形状などを大きく変えることなく簡単に構成できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、略円環状の内側に構成される中空部部分に自動実装時に用いられる被吸着部を設けたものとしたため、他の部品が円環内の位置に配置できる上、吸着による自動実装も可能な回転型電子部品が得られるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき、従来と同様に回転型エンコーダを事例として説明する。なお、従来と同一構成の部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転型電子部品である回転型エンコーダの断面図、図2は同外観斜視図、図3は同上面図である。
【0022】
同図において、11は、絶縁樹脂製のケースであり、その形状としては、外周部が略円環状に構成され、その円環内にて構成される中空部11A周囲を囲む内側円筒部11Bは上方へ突出形成されていると共に、その内側円筒部11B内の上部位置には、平坦面部12が一体で設けられている。なお、このケース11が請求項における第一筐体に相当し、また、内側円筒部11Bが同じく請求項における第一筒部に相当する。
【0023】
そして、その平坦面部12は、図2および図3からも判るように、内側円筒部11Bの上端内周面から内側に突設された四つの連結部12Aと、その連結部12Aに繋がる中央部12Bからなり、隣り合う連結部12Aどうしの間の領域は、それぞれ孔部12Cとして形成されている。
【0024】
この平坦面部12における中央部12B上面が、実装時における被吸着部としてなり、中空部11A内における配置高さや位置や配設面積などは、使用される吸着ヘッド31(図1および図3内に二点鎖線で記載)や中空部11A内に配置される他の部品の配置位置などによって設定されている。
【0025】
そして、上記ケース11の略円環状の外周部は、上方開口の凹部に構成され、その凹部の底部には、所定の接点パターンに形成された固定接点板2がインサート成形により固定されている。固定接点板2からの端子5は、ケース11の外方にそれぞれ導出されている。
【0026】
そして、その固定接点板2上を弾接摺動する刷子7がフランジ部6B下面に固着された操作体6(請求項における第二筐体に相当)は、従来同様に外側円筒部6A(請求項における第二筒部に相当)内に上記ケース11の内側円筒部11Bを同心で挿通させて相対的に回転可能なように組み合わされている。上記フランジ部6Bは、上記ケース11の凹部内に収容され、凹部の上方開口部分は、カシメ脚部8Bがケース11の下面側でカシメられることによりケース11に結合されたカバー8の平板部8Aで覆われている。
【0027】
以上のように本発明による回転型エンコーダ(回転型電子部品)は構成されている。
【0028】
そして、その動作は、操作体6の外側円筒部6Aを回転操作すると、操作体6がケース11の内側円筒部11Bに対し相対的に回転移動し、その回転移動に伴ってフランジ部6B下面の刷子7が固定接点板2上を弾接摺動していき、端子5を介して操作位置に応じた出力が得られるものである。
【0029】
そして、当該回転型エンコーダは、上述したように、吸着ヘッド31によって平坦面部12における中央部12B上面を吸着して使用機器の配線基板上に自動実装することができるため、機器の組み立て工数の低減化が図れる。なお、平坦面部12における中央部12Bが中空部11A内の位置に配置されているため、その吸着状態としても安定的で、これも機器側の管理の簡素化などに寄与するものである。
【0030】
次に、当該回転型エンコーダ(回転型電子部品)をエアコンの温度調整部に用いた事例について図面を用いて説明する。
【0031】
図4に示すように、当該構成のものは、上記に説明した回転型エンコーダを、機器の配線基板41に実装すると共に、専用の操作つまみ61が結合されて構成されている。この操作つまみ61としては、図5の上面図に示すように、上面中央部分における上方領域が略半円の温度視認部62として構成されていると共に、下方領域に押しボタン部63を備え、さらに上記温度視認部62および押しボタン部63により構成された円形領域部分の外周部には、上記両者とは独立して回転操作可能なリング可動部64を有している。そして、上記リング可動部64が、図4に示すように、当該回転型エンコーダにおける操作体6の外側円筒部6Aに共廻り可能なように結合されている。
【0032】
そして、上記温度視認部62には、温度バー表示62Aなどがなされている。その温度バー表示62Aへの操作位置を視認するための指標部64Aはリング可動部64に配されている。
【0033】
一方、上記押しボタン部63は、透光樹脂により構成された透光窓部63Aを備えると共に、その下面から下方に向けて延設された押圧部63Bを有する。そして、透光窓部63Aと押圧部63Bは、平坦面部12に設けられた孔部12Cを介して中空部11A内にあたる配線基板41上の位置に配されたLED71とプッシュスイッチ72にそれぞれ上下で対向状態になるようにして配されている。なお、図4においては、プッシュスイッチ72の端子の図示を省略している。
【0034】
上記構成であれば、平坦面部12に設けた孔部12Cを介して、当該中空部11A内の位置に配されたLED71で透光窓部63Aを照光したり、また押しボタン部63への押し下げ操作によって下方に移動していく押圧部63Bで当該中空部11A内の位置に配されたプッシュスイッチ72への操作が可能となる。
【0035】
なお、上記孔部12Cは、上記のように利用できる上、当該回転型エンコーダにおけるケース11の形成時などにおいては、肉盗みとしても作用するので平坦面部12などの不要なヒケや反りの発生も低減でき、ケース11としても高精度で高品質なものが得られるようになる。また、上記に説明した回転型エンコーダの構成であれば、従来のものと同じ部品点数で済み、かつその組み立て工数などの増加もなく好ましい。
【0036】
そして、本発明は、上記構成のもののみに限られることはなく、例えば、図6に示すように、従来のものに対し、取り外し可能な蓋部81を装着し、吸着による配線基板への実装後にその蓋部81を取り外すものも含まれる。このものは、従来のものに対し形状などを殆ど変える必要もなく、簡単に構成することができる。なお、蓋部81を内側円筒部11Bや外側円筒部6Aに係止させる構成であれば、製品外形が不要に大きくなることもなく好ましい。
【0037】
なお、上記に説明した回転型エンコーダに限らず、回転型可変抵抗器や回転型スイッチなどの中空部を備えた回転型電子部品全般に対し、その中空部部分に被吸着部を有するものは本発明の範疇に入る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による回転型電子部品は、円環状の内側部分にあたる中空部部分に自動実装時に用いられる被吸着部を有する構成としたため、他の部品が円環内の位置に配置できる上、吸着による自動実装も可能なものにできるという効果を有し、各種電子機器の操作部を構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態による回転型電子部品である回転型エンコーダの断面図
【図2】同外観斜視図
【図3】同上面図
【図4】同回転型エンコーダの使用事例を示す断面図
【図5】同回転型エンコーダに装着された操作つまみの上面図
【図6】同本発明によるものの変形事例を示す外観斜視図
【図7】従来の回転型エンコーダの断面図
【図8】同外観斜視図
【符号の説明】
【0040】
2 固定接点板
5 端子
6 操作体
6A 外側円筒部
6B フランジ部
7 刷子
8 カバー
8A 平板部
8B カシメ脚部
11 ケース
11A 中空部
11B 内側円筒部
12 平坦面部
12A 連結部
12B 中央部
12C 孔部
31 吸着ヘッド
41 配線基板
61 操作つまみ
62 温度視認部
62A 温度バー表示
63 押しボタン部
63A 透光窓部
63B 押圧部
64 リング可動部
64A 指標部
71 LED
72 プッシュスイッチ
81 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を備えた略円環状の回転型電子部品であって、その中空部部分に自動実装時に用いられる被吸着部が設けられた回転型電子部品。
【請求項2】
第一筒部を有する絶縁樹脂製の第一筐体と、その第一筒部の外側に同心に位置する第二筒部を有する絶縁樹脂製の第二筐体とが、互いの筒部どうしを相対的に回転可能に係合されて構成されると共に、その第一筒部内の空間で構成された中空部に、上記第一筐体と一体形成された平坦面部が設けられ、上記平坦面部が被吸着部としてなる請求項1記載の回転型電子部品。
【請求項3】
中空部内に配される他の部品の配置位置に応じて、平坦面部の所定位置に孔部が設けられた請求項2記載の回転型電子部品。
【請求項4】
第一筒部を有する絶縁樹脂製の第一筐体と、その第一筒部の外側に同心に位置する第二筒部を有する絶縁樹脂製の第二筐体とが、互いの筒部どうしを相対的に回転可能に係合されると共に、その第一筒部内の空間で中空部が構成され、被吸着部が、上記第一筒部または上記第二筒部に結合された取り外し可能な蓋部で構成された請求項1記載の回転型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−222002(P2006−222002A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35595(P2005−35595)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】