説明

回転型電気部品

【課題】同一の操作軸で回転操作及び押圧操作が可能であり、且つ、回転型電気部品の中央部に他の部品を配置すること。
【解決手段】中空状の軸受け部2を有するハウジング(ケース1、6)と、軸受け部2に回転可能に保持された中空状の操作軸5と、ハウジングに収納され操作軸5の回転を検出する回転検出手段と、ハウジングに収納され操作軸5の軸線方向への押圧操作に伴い駆動されるプッシュスイッチとを備え、操作軸5を軸受け部2の外周部で回転可能に保持すると共に、ハウジングの軸受け部2の外周側に収納部(1b、6b)を環状に設け、環状の収納部(1b、6b)内に回転検出手段及びプッシュスイッチを配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型電気部品に係り、特に押圧操作用のプッシュスイッチを備えたプッシュスイッチ付きの回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセンタープッシュスイッチ付きの回転型電気部品としては、操作軸の軸線方向の移動動作でスイッチをオン、オフさせるプッシュスイッチを備え、操作軸の回転動作により回転操作型エンコーダを操作するようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の回転型電気部品の構造を図11及び図12に示す。図11は、従来の回転型電気部品の断面図であり、図12は、図11に示す回転型電気部品における操作軸を押した状態の断面図である。
【0004】
図11及び図12において、51は金属ダイカスト等からなる軸受であり、その中心孔51Aには、棒状の操作軸52が回転および軸線方向の動きが可能なように嵌合保持されている。この操作軸52の円形嵌合部52Aの前部は、操作用のつまみ53を装着するための操作部52Bとなり、後部には細径溝部52Cが設けられ、軸受51の中心孔51Aよりも大きい外径のC形の止めリング54が装着されて操作軸52の抜けを防止している。
【0005】
また、その後方の非円形部52Dには、エンコーダ部55の回転体56が、回転運動は伝達されるが軸線方向の動きは伝わらないように係合され、さらに後端部52Eは、プッシュ操作型のスイッチ部57のばね性を有する可動接点体58に当接して操作軸52全体が前方へ押された状態となっており、上記のC形の止めリング54が軸受51の後端面51Bに当接している。
【0006】
このプッシュスイッチ付き回転操作型エンコーダの動作は、つまみ53を回転操作して操作軸52を回転させることにより、回転体56が回転運動をしてエンコーダ部55の端子55A部にパルス信号を発生し、また、つまみ53を押して操作軸52を押し込むことにより、図12に示すように、スイッチ部57のばね性を有する可動接点体58の中央部が窪まされて、その下部の可動接点58Aとスイッチ基板59上の固定接点59Aが接触してスイッチ部57の一対の端子57A間がONとなる。
【0007】
そして、つまみ53を押す力を除くと、可動接点体58のばね弾性力により操作軸52が押し戻されて、スイッチ部57の一対の端子57A間がOFFとなり、図11に示す元の状態に戻るものである。
【特許文献1】特開平10−64375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の回転型電気部品においては、操作軸やプッシュスイッチが中央に配置されているため、回転型電気部品の中央部には他の部品が配置できず、例えば、照光用などのLEDや他の電子部品を配置する場合には、回転型電気部品の外側に配置するしかなく、つまみ部の照光性能や、電子部品等の実装自由度に問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みて為されたものであり、同一の操作軸で回転操作及び押圧操作が可能であり、且つ、回転型電気部品の中央部に他の部品を配置することができる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転型電気部品は、中空状の軸受け部を有するハウジングと、前記軸受け部に回転可能に保持された中空状の操作軸と、前記ハウジングに収納され前記操作軸の回転を検出する回転検出手段と、前記ハウジングに収納され前記操作軸の軸線方向への押圧操作に伴い駆動されるプッシュスイッチとを備え、前記操作軸を前記軸受け部の外周部で回転可能に保持すると共に、前記ハウジングの前記軸受け部の外周側に収納部を環状に設け、環状の前記収納部内に前記回転検出手段と前記プッシュスイッチとを配置したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ハウジングの軸受け部の外周側に設けた環状の収納部内に回転検出手段及びプッシュスイッチを配置したことから、ハウジングの中空状の軸受け部の内周側をフリースペースとすることができるので、例えば、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を向上することが可能となる。また、操作軸の回転を検出する回転検出手段と、操作軸の軸線方向への押圧操作に伴い駆動されるプッシュスイッチとを備えたことから、同一の操作軸で回転操作及び押圧操作を受け付けることができるので、良好な操作性を得ることが可能となる。
【0012】
上記回転型電気部品においては、前記ハウジングは、前記軸受け部の軸線方向の前方側に設けられた第1のケースと、後方側に設けられた第2のケースとを有し、前記第1のケース内に前記回転検出手段を配置すると共に、前記第2のケース内に前記プッシュスイッチを配置し、前記第2のケース内には、前記プッシュスイッチを押圧操作する押圧部材と該押圧部材を前記第1のケース側に付勢する付勢部材が設けられ、前記操作軸の軸線方向への前記押圧操作に伴って、前記押圧部材を介して前記プッシュスイッチが操作されると共に、前記ハウジングには前記付勢部材により付勢される前記押圧部材の動きを規制する受け部材が設けられることが好ましい。この場合には、押圧部材を付勢する付勢力が受け部材によって受け止められることから、押圧部材のがたつきを防止できると共に、この付勢力が操作軸に及ぶのを抑制できるので、操作軸における良好な操作性を得ることが可能となる。また、回転検出手段とプッシュスイッチをそれぞれ第1と第2のケースに分けて配置したことから、組立作業性を向上することが可能となる。
【0013】
特に、上記回転型電気部品においては、前記受け部材を前記第1のケースの壁部で構成することが好ましい。この場合には、受け部材を第1のケースの壁部で構成したことから、部品点数を削減すると共に、簡単な構造で押圧部材の動きを規制することが可能となる。
【0014】
例えば、上記回転型電気部品において、前記プッシュスイッチは、前記第2のケースに設けられた固定接点と、この固定接点と接離可能に対向した金属板からなる可動接点板とにより構成され、前記付勢部材を前記可動接点板により構成することが好ましい。この場合には、付勢部材をプッシュスイッチの可動接点板で兼ねることができるので、部品点数を削減すると共に、その組立作業性を向上することが可能となる。
【0015】
特に、上記回転型電気部品において、前記プッシュスイッチは、前記操作軸の周方向に間隔をおいて複数設けられていると共に、前記押圧部材は中空部を有する環状に形成され、該中空部を前記軸受け部に挿通して、前記押圧部材を前記軸受け部の外周部に配置することが好ましい。この場合には、プッシュスイッチを周方向に間隔をおいて複数設けたことから、操作軸が傾いた状態で押圧された場合にも、何れかのプッシュスイッチを駆動させることができるので、本回転型電気部品における信頼性を向上することが可能となる。例えば、プッシュスイッチを、操作軸の周方向に間隔をおいて3個以上設けることにより、押圧部材のバランスを確保しながら、確実にプッシュスイッチを駆動させることが可能となる。
【0016】
また、上記回転型電気部品において、前記押圧部材には、前記可動接点板とそれぞれ対向する押圧突起と、位置規制される規制部とが設けられており、前記規制部によって、前記押圧部材が前記第2のケースに位置決めされた状態で、前記押圧突起が複数の前記プッシュスイッチに対応する位置にそれぞれ配置されていることが好ましい。この場合には、位置規制された押圧部材に押圧突起が設けられていることから、例えば、押圧突起により可動接点板の中央部を押圧可能となり、可動接点板の端部が押圧されることに伴う可動接点板の不所望な変形を生じにくくできるので、プッシュスイッチの長寿命化を図ることが可能となる。また、可動接点板が、反転してクリック感触を生起する構成を採る場合には、良好なクリック感触を得ることができる。
【0017】
なお、上記回転型電気部品においては、前記付勢部材を前記軸受け部よりも巻き径が大きなコイルバネで形成し、このコイルバネを前記押圧部材と前記第2のケースの底面との間に配置し、前記コイルバネにより前記押圧部材を前記第1のケース側に付勢するようにしても良い。この場合には、操作軸及びプッシュスイッチの復帰を確実に行うことができると共に、プッシュスイッチがオンとなる荷重を容易に変更することができ、簡単に、様々な回転型電気部品の仕様に対応することが可能となる。
【0018】
また、上記回転型電気部品においては、前記付勢部材を変形可能なスカート部を有するゴム又はエラストマーからなる弾性成形体で形成し、この弾性成形体を前記押圧部材と前記第2のケースの底面との間に配置し、前記弾性成形体により前記押圧部材を前記第1のケース側に付勢するようにしても良い。この場合には、操作軸及びプッシュスイッチの復帰を確実に行うことができると共に、プッシュスイッチがオンとなる荷重を容易に変更することができ、簡単に、様々な回転型電気部品の仕様に対応することが可能となる。また、弾性成形体のスカート部の反転動作によって押圧操作時における良好なクリック感触を簡単に得ることが可能となる。
【0019】
例えば、上記回転型電気部品において、前記回転検出手段は、前記第1のケースに設けられた導電パターンと、この導電パターン上を摺接する摺動子とからなり、前記摺動子は、前記操作軸と共に回転すると共に、前記操作軸の軸線方向の移動を許容する前記第1のケース内に収容された環状の回転体に設けられる。この場合には、導電パターンと、この導電パターン上を摺接する摺動子とによって回転検出手段が構成されることから、簡単な構成で確実に操作軸の回転検出を行うことが可能となる。なお、この場合において、プッシュスイッチは、第2のケースに設けられていることから、操作軸に対する押圧操作が回転検出に影響を及ぼすことはない。
【0020】
また、上記回転型電気部品において、前記回転体の前記摺動子が設けられた面の反対側の面には、複数の凹凸部が形成され、この凹凸部に係脱するローラが板バネに保持されて前記回転体の前記凹凸部側に弾性付勢されるようにしても良い。この場合には、操作軸の回転に伴ってローラを回転体の凹凸部に対して係脱させることができるので、良好なクリック感触を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、同一の操作軸で回転操作及び押圧操作が可能であり、且つ、回転型電気部品の中央部に他の部品を配置することができる回転型電気部品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る回転型電気部品の分解斜視図である。図2は、実施の形態1に係る回転型電気部品の外観を示す斜視図である。なお、以下においては、適宜、図1に示す右方側を「回転電気部品の後方側」又は単に「後方側」と呼び、左方側を「回転電気部品の前方側」又は単に「前方側」と呼ぶものとする。
【0024】
図1において、ハウジングの一部を構成し、第2のケースとして機能するケース1は、例えば、合成樹脂等の絶縁材で構成される。ケース1の中央には前後方向に貫通した中空状の貫通孔1aが設けられている。貫通孔1aの外面側で前方側が略円筒状の軸受け部2を構成する一方、後方側の外面側には有底状で前方側が開口された環状の収納部1bが設けられている。収納部1bの底面には、後方側に凹形状とされた複数(本実施の形態では3つ)のスイッチ保持部1cが設けられている。スイッチ保持部1cは、円形状を有しており、収納部1bの底面において等間隔に配置されている。スイッチ保持部1cの内底面には、導電性を有する金属板からなる中央固定接点1d及び外部固定接点1eが配設されている。なお、ケース1の後方側には、この中央固定接点1d又は外部固定接点1eから導出された外部端子1gが延出されている(図1に不図示、図8参照)。また、収納部1bの底面には、隣接するスイッチ保持部1cの間に複数(本実施の形態では3つ)の軸1fが立設されている。この軸1fは、後述する押圧部材4の移動を規制するものである。
【0025】
収納部1bのスイッチ保持部1cには、導電性を有する薄板金属板からなる可動接点板3が配設される。可動接点板3は、スイッチ保持部1cよりも僅かに小径の円形状を有すると共に、その中央が僅かに前方側に膨らんだドーム形状を有しており、後述する押圧部材4を前方側に付勢する付勢部材を構成する。可動接点板3は、周縁部を外部固定接点1eに接触した状態で配設されると共に、その中央部を中央固定接点1dに対向させた状態で配設される。そして、後述する操作軸5に対する押圧操作に応じて弾性を有する可動接点板3が反転し、中央固定接点1dと接触するように構成されている。また、押圧操作から解放されると、弾性復帰して元の状態に戻る。このような可動接点板3と、中央固定接点1d及び外部固定接点1eとで本実施の形態に係る回転型電気部品のプッシュスイッチS1が構成される(図8参照)。また、可動接点板3は、後述する押圧部材4を付勢する付勢部材として機能する。このため、付勢部材を別途設ける必要がないので、部品点数を削減すると共に、その組立作業性を向上することが可能となる。
【0026】
押圧部材4は、合成樹脂等の絶縁材で形成され、概して円環形状を有している。押圧部材4には、中央に中空状の挿通孔4aが設けられている。この挿通孔4aが軸受け部2に挿通されることにより押圧部材4が収納部1b内に保持される。また、押圧部材4の外周側には、複数(本実施の形態では3つ)の押圧片4bと、複数(本実施の形態では3つ)の位置規制片4cとが設けられている。押圧片4b及び位置規制片4cは、それぞれ等間隔に設けられ、隣接する押圧片4b(位置規制片4c)の中央に位置規制片4c(押圧片4b)が配置されている。
【0027】
押圧片4bは、可動接点板3に対応する間隔で設けられ、後方側に突出形成された押圧突起4eを有している(図1に不図示、図8参照)。そして、後述する操作軸5に対する押圧操作に応じて、押圧突起4eと対向して配置された可動接点板3を後方側に反転させる。位置規制片4cは、軸1fに対応する間隔に設けられており、この軸1fを収容する孔4dが形成されている。規制部としての孔4dに軸1fを収容することで押圧部材4の移動、詳しくは操作軸5の軸線方向以外の移動が規制される。このように位置規制片4cで位置規制された押圧部材4に押圧突起4eを有する押圧片4bが設けていることから、押圧突起4eにより可動接点板3の中央部を押圧可能となる。これにより、可動接点板3の端部が押圧されて、可動接点板3を不所望に塑性変形しにくくできるので、プッシュスイッチの長寿命化を図ることが可能となる。また、可動接点板3の中央部を押圧することで確実に反転させることができ、良好なクリック感触を得ることができる。
【0028】
操作軸5は、合成樹脂等の絶縁材で中空状の略円筒状に形成されており、やや太径の基台部5aとこの基台部5aの先端側にやや細径の軸部5bとを有している。また、基台部5aと軸部5bの中央には前後に貫通した中空状の挿通孔5cが設けられており、この挿通孔5cが軸受け部2の外周部に回転可能に保持されるものとなっている。軸部5bの外周面には、基台部5aから前方側に軸部5bの中央近傍まで延在する複数(本実施の形態では4つ)のガイド片5dが設けられている。これらのガイド片5dは、後述する回転体7の係合溝7bと係合し、装着時における回転体7をガイドするものである。また、軸部5bの外周面には、基台部5aから僅かに前方側に延在する複数(本実施の形態では4つ)の係合片5eが設けられている。これらの係合片5eは、後述する回転体7の凹部7cと係合し、操作軸5の回転を回転体7に伝達するものである。さらに、係合片5eの前方側には、一定距離を挟んで複数(本実施の形態では4つ)の爪部5fが設けられている。これらの爪部5fは、操作軸5に取り付けられる不図示の操作つまみ等の開口部と係合し、操作つまみ等を保持するものである。
【0029】
ハウジングの一部を構成し、第1のケースとして機能するケース6は、合成樹脂等の絶縁材で形成されており、ケース1と略同一の外形を有し、ケース1の前方側に重ね合わされた状態で配設される。このケース6は、中空状の略円筒状に形成され、中央にやや大径の挿通孔6aを有し、この挿通孔6aの外側に有底状で前方側が開口された環状の収納部6bが設けられている。収納部6bの内底面には、導電性の金属板からなる導電パターン6cが配設されている。また、ケース6の後方側には、この導電パターン6cから導出された外部端子6dが延出されている。
【0030】
回転体7は、合成樹脂等の絶縁材で形成されており、概して円環形状を有している。回転体7には、中央に大径の開口部7aが形成されている。回転体7は、後方側の面を収納部6bの表面に対向させた状態で、収納部6bに配置されている。回転体7の開口部7aの内周面には、複数(本実施の形態では4つ)の係合溝7bと、複数(本実施の形態では4つ)の凹部7cが設けられている。係合溝7bは、操作軸5のガイド片5dと係合するものであり、凹部7cは、操作軸5の係合片5eと係合するものである。これらの係合により、回転体7は、操作軸5とスプライン係合するように構成されている。すなわち、回転体7は、操作軸5と一体的に回転すると共に、操作軸5の軸線方向の移動を許容するものとなっている。また、回転体7の前方側の面には、円環状に複数の凹凸形状を有するカム溝7dが形成されている。このカム溝7dには、後述する板ばね9に保持されたローラ10が弾接することにより、回転体7が回転する際のクリック感触を生起させる複数の凹凸部からなるクリックカム7eが形成されている。
【0031】
また、回転体7の後方側の面には、導電性の薄板金属板からなる複数個の接片8aを有する摺動子片8が固着されている。この摺動子片8の接片8aは、回転型電気部品の後方側に折り曲げられており、後述するように回転体7がケース6の収納部6bに収納された状態においてその先端部が導電パターン6cと接触する。なお、実施の形態1に係る回転型電気部品においては、回転体7、摺動子片8及び導電パターン6cとで回転検出手段S2が構成されている(図8参照)。
【0032】
板ばね9は、弾性を有する金属板(例えば、ステンレスやリン青銅等)からなり、概して円環形状を有している。板ばね9は、その後方側の面が回転体7のカム溝7dに対向する位置に配設される。板ばね9には、中央に中空状の挿通孔9aが設けられている。また、板ばね9における所定位置には、一対のローラ保持部9bが設けられている。ローラ保持部9bは、ローラ10が有するシャフト10aを回転可能に保持することで、ローラ10を回転可能に保持する。また、板ばね9の一対のローラ保持部9bの中間位置には、外周側に突出した一対の取付部9cが設けられている。この取付部9cは、ケース6と後述する取付部材11とによって挟持されて固定される。
【0033】
取付部材11は、金属板を打ち抜き、折り曲げて形成されており、円環状の上板部11aと、この上板部11aから後方側に向けて直角に延出する複数(本実施の形態では6つ)の係合脚片11bとを有している。取付部材11には、中央に中空状の挿通孔11cが設けられている。挿通孔11cは、操作軸5の軸部5bよりも僅かに大径に設けられている。
【0034】
このような構成部品を有する回転型電気部品を組み立てると、図2に示すように、ケース1の前方側にケース6が重ね合され、これらのケース1及びケース6で構成されるハウジングに操作軸5を収容した状態でケース6の前方側から取付部材11が取り付けられる。この場合において、ケース1の収納部1bには、押圧部材4が収容される一方、ケース6の収納部6bには、回転体7及び板ばね9が収容されている。操作軸5の軸部5bは、取付部材11の挿通孔11cから前方側に向けて露出した状態となっている。このように組み立てられた状態において、操作軸5及び回転体7は、ハウジングに対して回転可能に構成される。
【0035】
以下、本実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てる工程について図3〜図7を用いて説明する。なお、以下に示す回転型電気部品を組み立てる工程については一例を示したものであり、必ずしもこの工程に限定されるものではく、適宜変更が可能である。
【0036】
本実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てる際には、まず、ケース1のスイッチ保持部1cに可動接点板3を配置する。図3は、実施の形態1に係る回転型電気部品のケース1に可動接点板3を配置した場合の正面図である。図3に示すように、可動接点板3は、収納部1bにおいて、周方向に等間隔(等角度間隔)に配置されている。このように配置される可動接点板3に対して、軸1fは、隣接する可動接点板3の中央に等間隔に設けられている。
【0037】
このように本回転型電気部品においては、収納部1bの底面に等間隔に可動接点板3(プッシュスイッチS1)を配置することにより、操作軸5が傾いた状態で押圧された場合においても、いずれかのプッシュスイッチS1を駆動させるようにして信頼性を向上させている。特に、本回転型電気部品においては、可動接点板3(プッシュスイッチS1)を3つ以上配置することにより、プッシュスイッチS1のバランスを確保しながら駆動できるように構成している。
【0038】
次に、押圧部材4の挿通孔4aに軸受け部2を挿通させてケース1の収納部1bに配置する。このとき、収納部1bにおいて、位置規制片4cの孔4dが底面の軸1fを収容すると共に、押圧片4bが可動接点板3に対応する位置に配置されるように押圧部材4を収納部1bに配置する。図4は、実施の形態1に係る回転型電気部品のケース1に押圧部材4を配置した場合の正面図である。図4に示すように、押圧部材4は、軸受け部2の外周近傍に、押圧片4bに設けた押圧突起4eを可動接点板3の中央部にそれぞれ対応させた状態で、配置される。なお、この場合には、位置規制片4cの孔4dで底面の軸1fを収容するだけで、押圧片4bの押圧突起4eを可動接点板3に対応する位置に配置することができる。
【0039】
このように位置規制片4cの孔4dで底面の軸1fを収容した場合には、操作軸5が回転した場合においても、押圧部材4がこれに伴って回転するのを防止でき、確実に操作軸5に対する押圧操作に応じてプッシュスイッチS1を駆動することが可能となる。
【0040】
次に、操作軸5の円筒形状部の内側に軸受け部2を収容するようにケース1に操作軸5を取り付ける。図5は、実施の形態1に係る回転型電気部品のケース1に操作軸5を取り付けた場合の斜視図である。図5に示すように、操作軸5は、内部に軸受け部2を収容した状態で、押圧部材4の前方側に当接して取り付けられる。この場合において、操作軸5は、軸受け部2に回転可能に保持されている。そして、操作軸5が回転すると、操作軸5の後方側の端部が押圧部材4の前方側の面と摺接するものとなっている。
【0041】
次に、挿通孔6aに操作軸5を挿通させてケース1の前方側に重ねるようにケース6を取り付ける。図6は、実施の形態1に係る回転型電気部品のケースを重ね合わせた場合の斜視図である。図6に示すように、ケース6は、挿通孔6aを介して前方側に操作軸5を突出させた状態でケース1に取り付けられ、ケース1と一体化した状態となる。ケース6の収納部6bは、操作軸5の基台部5a近傍に配置される。なお、この場合において、操作軸5の外周面に形成されたガイド片5d及び係合片5eは、収納部6b内において、ケース6から前方側に突出した状態となっている。また、導電パターン6cから導出される外部端子6dは、ケース1よりも後方側に延出した状態となっている。
【0042】
次に、前方側に開口したケース6の収納部6bに対して、後方側の面に摺動子片8を固着させた状態の回転体7を収納すると共に、この回転体7のカム溝7dに対向するように板ばね9を取り付ける。具体的には、後方側の面に摺動子片8を固着させた状態の回転体7の係合溝7bにガイド片5dを対応させると共に、凹部7cに係合片5eを対応させて回転体7を後方側に押し込むことにより、当該回転体7を収納部6bに収納する。このとき、回転体7の後方側の面に固着された摺動子片8は、ケース6に設けられた導電パターン6cと接触した状態となる。
【0043】
そして、収納部6bにおいて、ローラ10をローラ保持部9bに保持させた状態の板ばね9を回転体7のカム溝7dに対向するように板ばね9を配置する。なお、板ばね9は、例えば、後述する工程によりケース6の外壁部の前方側の端面に固定される。図7は、実施の形態1に係る回転型電気部品のケース6の収納部6bに回転体7及び板ばね9を収納した場合の斜視図である。図7に示すように、回転体7は、係合溝7bでガイド片5dを収容すると共に、凹部7cで係合片5e収容した状態で収納部6bに収納される。また、板ばね9は、ローラ保持部9bで保持したローラ10がクリックカム7eに対して係脱するように、回転体7と対向配置される。
【0044】
そして、このように回転体7及び板ばね9が収納部6bに収納された状態のハウジングに対して取付部材11が前方側から取り付けられることで、本実施の形態に係る回転型電気部品が組み立てられる。なお、取付部材11の取り付けの際、板ばね9の取付部9cは、ケース6の外壁部の前方側の端面と取付部材11の上板部11aの後方側の面とで挟持される。これにより、板ばね9がハウジング(ケース6)に対して固定されたものとなる。以上のような工程により、回転型電気部品が図2に示す状態とされ、操作軸5を介して使用者からの回転操作及び押圧操作を受け付けることができるように構成されている。
【0045】
ここで、本実施の形態に係る回転型電気部品の内部構成について説明する。図8は、実施の形態1に係る回転型電気部品の断面図である。なお、図8においては、板ばね9に保持された一対のローラ10に沿って切断した場合の断面図を示している。なお、図8においては、同図に示す下方側が回転型電気部品の後方側に対応し、同図に示す上方側が回転型電気部品の前方側に対応する。
【0046】
図8に示すように、本実施の形態に係る回転型電気部品において、ケース6は、ケース1の収納部1bの開口部を閉じるようにケース1に重ねられている。そして、この収納部1bに押圧部材4が配設されている。押圧部材4の後方側(同図に示す下方側)には、可動接点板3が配置されており、この可動接点板3の付勢力により押圧部材4が前方側(図8に示す上方側)に付勢されている。この場合において、押圧部材4の前方側の面は、ケース6の後方側の壁部と当接しており、このケース6の後方側の壁部が押圧部材4の受け部材を構成するものとなっている。すなわち、可動接点板3によって前方側に付勢された押圧部材4の動き(操作軸5の軸線方向の動き)が、ケース6の後方側の壁部からなる受け部材によって規制(制限)されている。
【0047】
このように本回転型電気部品においては、押圧部材4を付勢する可動接点板3による付勢力が受け部材によって受け止められることから、押圧部材4のがたつきを防止できると共に、この付勢力が押圧部材4と当接状態にある操作軸5に及ぶのを抑制できるので、操作軸5における良好な操作性を得ることが可能となる。特に、受け部材をケース6の後方側の壁部で構成しているので、部品点数を削減すると共に、簡単な構造で押圧部材4の動きを規制することが可能となる。
【0048】
また、取付部材11は、ケース6の収納部6bの開口部を閉じるように前方側からケース6に取り付けられる。そして、この収納部6bに回転体7が配設されている。回転体7は、後方側から操作軸5の基台部5aを収容可能な形状を有しており、この基台部5aに接触した状態あるいは当接可能に近接した状態で保持される。そして、係合溝7bまたは凹部7cが形成されていない回転体7の内周部と基台部5aの前方側の面とが当接することで、操作軸5の前方側への移動が制限されている。このとき、回転体7の後方側の面は、導電パターン6cと対向配置されており、そこに固着された摺動子片8の切片8aがこの導電パターン6cに接触するように構成されている。そして、このように配設された回転体7の前方側に、ローラ10を保持した板ばね9が取り付けられる。この場合において、ローラ10は、その外周面を回転体7のクリックカム7eに接触させた状態で板ばね9に保持されている。なお、板ばね9は、一対の取付部9cが取付部材11の対向する2つの係合脚片11bに位置決めされると共に、ローラ保持部9bを変位可能な状態で、ケース6と取付部材11との間に挟持されている。
【0049】
次に、本実施の形態に係る回転型電気部品の動作について説明する。操作者により操作軸5に対して回転操作が行われると、操作軸5に装着された回転体7が操作軸5と共に回転する。このとき、回転体7に固着された摺動子片8の切片8aが、ケース6の導電パターン6cを摺動することにより、回転角度に則した所望の検出信号が外部端子6dから出力される。この場合において、回転体7が回転すると、クリックカム7eに接触した状態で保持されているローラ10がクリックカム7eに対して係脱することにより、クリック感触を操作者に与えることが可能となっている。
【0050】
一方、操作者により操作軸5に対して押圧操作が行われると、操作軸5の後方側への移動に伴って押圧部材4も後方側に移動する。押圧部材4が後方側に移動すると、押圧片4bの押圧突起4eにより可動接点板3が押圧される。そして、一定位置以上に可動接点板3が押圧されると、これが反転し、可動接点板3の後方側の中央部が中央固定接点1dと接触する。これにより、可動接点板3と中央固定接点1d及び外部固定接点1eとが導通状態となり、外部端子1gからオン信号が出力される。そして、操作軸5に対する押圧操作が解除されると、可動接点板3の弾性復帰力により押圧部材4が前方側に付勢され、可動接点板3を介した中央固定接点1dと外部固定接点1eとの導通状態が解除される。これにより、外部端子1gからオフ信号が出力される。この場合において、可動接点板3が反転(又は復帰)すると、クリック感が生起され、クリック感触を操作者に与えることが可能となっている。
【0051】
このように実施の形態1に係る回転型電気部品おいては、ハウジングの軸受け部2の外周側に設けた環状の収納部6b、収納部1b内に、それぞれ回転検出手段S2及びプッシュスイッチS1を配置したことから、ハウジングの中空状の軸受け部2の内周側をフリースペースとすることができるので、例えば、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を向上することが可能となる。そして、操作軸5の回転を検出する回転検出手段S2と、操作軸5の軸線方向への押圧操作に伴い駆動されるプッシュスイッチS1とを備えたことから、同一の操作軸5で回転操作及び押圧操作を受け付けることができるので、良好な操作性を得ることが可能となる。
【0052】
特に、本実施の形態に係る回転型電気部品においては、プッシュスイッチS1及び回転検出手段S2を、それぞれケース1の収納部1b、ケース6の収納部6bに分けて配置したことから、組立作業性を向上することが可能となる。また、プッシュスイッチS1の前方側に回転検出手段S2を配設して、プッシュスイッチS1と回転検出手段S2とを、操作軸5の軸線方向に沿って積層するように配置した構成としている。これにより、ハウジングの形状、すなわち、収納部1b、6bの幅寸法を大きくすることなく、軸受け部2の内周側に所望の大きさのフリースペースを確保することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態に係る回転型電気部品においては、回転体7、導電パターン6c及び摺動子片8によって回転検出手段S2を構成していることから、簡単な構成で確実に操作軸5の回転検出を行うことが可能となる。なお、この場合において、プッシュスイッチS1は、ケース1に設けられていることから、操作軸5に対する押圧操作が回転検出に影響を及ぼすことはない。
【0054】
さらに、本実施の形態に係る回転型電気部品においては、回転体7の前方側の面に、複数のクリックカム7eを形成し、このクリックカム7eに係脱するローラ10が板バネ9に保持されて当該クリックカム7e側に弾性付勢するように構成していることから、操作軸5の回転に伴ってローラ10を回転体7のクリックカム7e対して係脱させることができるので、良好なクリック感触を得ることが可能となる。
【0055】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る回転型電気部品は、回転検出手段の一部の構成及びプッシュスイッチS1の構成が異なる点で実施の形態1に係る回転型電気部品と相違する。以下、実施の形態2に係る回転型電気部品の構成について、実施の形態1に係る回転型電気部品との相違点を中心に説明する。図9は、実施の形態2に係る回転型電気部品の構成を説明するための断面図である。なお、図9において、実施の形態1に係る回転型電気部品と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図9に示すように、実施の形態2に係る回転型電気部品は、回転及び押圧操作可能な中空状の操作軸5と、この操作軸5を回転可能に保持する中空状の軸受け部2を有すると共に、操作軸5の押圧動作によって駆動されるプッシュスイッチS1が配設されたケース1と、このケース1の前方側(図9に示す上方側)に配置され、操作軸5の回転操作によって回転する回転検出手段S2が配設されたケース6とから主に構成されている。ケース1とケース6とでハウジングが構成されるのは、実施の形態1と同様である。
【0057】
操作軸5において、基台部5aの外周面には、少なくとも一対の凹凸状に形成された第1係合部5gが設けられており、また、基台部5aの後方側(図9に示す下方側)には、環状或いは複数個の下方に突出した当接突起5hが設けられている。
【0058】
ケース1において、収納部1bの底面側には、隔壁1hを挟んで軸受け部2側にバネ保持部1i、反対側にスイッチ保持部1jがそれぞれ環状に設けられている。また、スイッチ保持部1jの内底面には、導電性の金属板からなりプッシュスイッチS1を構成する一対の固定接点(中央固定接点、外部固定接点)1kが配設されており、ケース1の後方側には固定接点1kから導出された外部端子1lが延出されている。
【0059】
ここで、固定接点1k(プッシュスイッチS1)は、操作軸5の軸線を挟んで複数個形成されるものとなっている。このように、プッシュスイッチS1を操作軸5の軸線を挟んで複数個設けるようにしたので、操作軸5が傾いて押圧された場合にも、何れかのプッシュスイッチS1が駆動されるため信頼性が向上するものとなっている。また、収納部1bの外周を形成する外壁部1mには、ケース6の収納部6bから導出された外部端子6dを係止する係止突部1nが設けられている。
【0060】
収納部1bのスイッチ保持部1jには、固定接点1kに対向して導線性の薄板金属板からなる可動接点板12が載置されており、この可動接点板12の接片12aの上面側には、可撓性を有するゴム或いはエラストマーからなる駆動バネ13が配設されている。また、駆動バネ13の前方側には、押圧部材14が配設されており、この押圧部材14が操作軸5により押圧されることにより駆動バネ13が押圧され、可動接点板12の接片12aと固定接点1kが接触されてプッシュスイッチS1がオンするようになっている。
【0061】
また、バネ保持部1iには、付勢部材であるコイルバネ15が配設されている。このコイルバネ15は、軸受け部2よりも巻き径が大きなコイル状に巻回されて形成され、巻回部が軸受け部2の外周部に配置されて押圧部材14を付勢するものとなっている。
【0062】
押圧部材14は、合成樹脂等の絶縁材で形成され、中央に中空状の挿通孔14aが設けられており、この挿通孔14aが軸受け部2に挿通されることにより押圧部材14が収納部1b内に保持されている。また、押圧部材14には、挿通孔14a側に設けられた凹状のバネ受け部14bと、外周側に設けられた凸状の駆動部14cと、両者の中間に設けられたストッパ部14dとを有している。そして、押圧部材14は、バネ保持部1iに一端が保持されたコイルバネ15の他端がバネ受け部14bに当接され、駆動部14cの先端が駆動バネ13と対向した状態で収納部1b内に保持されている。この時、押圧部材14は,コイルバネ15の付勢力でケース6側に付勢された状態となっている。
【0063】
この時、押圧部材14の前方側がケース6後方側の壁部と当接しており、このケース6の後方側の壁部が押圧部材14の受け部材を構成するものとなっている。すなわち、コイルバネ15によって前方側に付勢された押圧部材14の動き(操作軸5の軸線方向の動き)が、ケース6の後方側の壁部からなる受け部材によって規制(制限)されている。
【0064】
このように、押圧部材14を介してプッシュスイッチS1が操作され、この押圧部材14をケース6側に付勢するコイルバネ15が設けられ、ハウジングにはコイルバネ15により付勢される押圧部材14が当接して押圧部材14の動きを制限する受け部材としてケース6を設けるようにしている。これにより、押圧部材14を付勢する付勢力がこの受け部材としてのケース6によって受け止められるため、この付勢力が操作軸5に及ぶことがないので、操作軸5の操作性が良好となる。また、受け部材をケース6の後方側の壁部で構成したことから、構造が簡易となり、部品点数の削減が図れるものとなる。
【0065】
また、押圧部材14を中空状に形成し、この中空部に軸受け部2を挿通して押圧部材14を軸受け部2の外周部に配置するようにしたので、簡単な構造で確実に位置決めされ、且つ、安定した押圧操作が得られるものとなっている。
【0066】
さらに、コイルバネ15を押圧部材14とケース1の底面との間に配置し、このコイルバネ15により押圧部材14をケース6側に付勢するようにしたので、操作軸5及び押圧部材14の復帰を確実に行えると共に、プッシュスイッチS1がオンとなる荷重を容易に変更することができ、バラエティー対応が簡単に行えるものとなっている。
【0067】
ケース6においては、挿通孔6aの外側に環状壁部6eを介して有底状で前方(上面)側が開口された円環状の収納部6bが設けられている。なお、環状壁部6eの高さは、収納部6bの外周を形成する外壁部6fの高さに対して低い、略半分弱の高さに形成されており、この環状壁部6eの上面側で挿通孔6aと収納部6bとが連通されて繋がった状態となっている。また、収納部6bの内底面に配設された導電パターン6cから導出された外部端子6dは、ケース6とケース1の外壁部6fと1mに沿ってハウジングの後方側に延出され、ケース1の係止突部1nに係止されて保持されている。
【0068】
また、ケース6の挿通孔6aには、軸受け部2に挿通された操作軸5の基台部5aが配設されており、基台部5aの後方側の当接突部5hがケース1の収納部1bに配設された押圧部材14の前方側の面に当接されている。そして、操作軸5の押圧(押し下げ)操作に伴って、当接突部5hにより押圧部材14が付勢部材であるコイルバネ15の付勢力に抗して押し下げられ、駆動部14cの先端が駆動バネ13を押圧することにより下方に配設された可動接点板12の接片12aが押圧され、固定接点1kと接触することによりプッシュスイッチS1がオンするようになっている。この時、押圧部材14の中央に設けられたストッパ部14dと、収納部1bの底面側に設けられた隔壁1hとが当接することにより押圧部材14の下降は停止され、可動接点板12の変形を防止するようになっている。
【0069】
さらに、ケース6の収納部6bには、中央に大径の開口部16aを有する円盤状の回転体16が配設されている。この回転体16は、合成樹脂等の絶縁材からなり、後方側の面を収納部6bの環状壁部6eの前方側の面に載置した状態で収納部6bと挿通孔6aとの連通部に配置されている。また、回転体16の開口部16aの内周面には、少なくとも一対の凹凸状に形成された第2係合部16bが設けられており、この第2係合部16bが、対向して配置された操作軸5の基台部5aの外周面に設けられた凹凸状の第1係合部5gと係合されている。この係合により、回転体16は,操作軸5とスプライン係合されるものとなっている。
【0070】
また、この回転体16の後方側の面には、導電性の薄板金属板からなる複数個の接片8aを有する摺動子片8が固着されており、この摺動子片8の接片8aが収納部6bの内底面に配設された導電パターン6cと接触している。そして、操作軸5に対する回転操作に伴って、回転体16が共回りすることで摺動子片8の接片8aと導電パターン6cとが摺接され、所望の検出信号が外部端子6dから出力されるものとなっている。実施の形態2においては、これらの回転体16、摺動子片8及び導電パターン6cで回転検出手段S2が構成されている。なお、図9には、図示していないが、回転体16の前方側の面には、実施の形態1と同様に、板ばね9が対向配置される部分のカム溝が設けられ、このカム溝を板ばねに保持されたローラ10が係脱することにより回転体16が回転する際のクリック感触を生起するものとなっている。
【0071】
このように実施の形態2に係る回転型電気部品においては、操作軸5を軸受け部2の外周部で回転可能に保持すると共に、軸受け部2の外周側に収納部1b、6bを環状に設け、環状の収納部1b、6b内に回転検出手段S2及びプッシュスイッチS1とを配置したことから、ハウジングの中空状の軸受け部2の内周側をフリースペースとすることができるので、例えば、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することが可能となり、つまみ部の照光性能や電子部品の実装自由度が向上されるものとなる。また、同一の操作軸5で回転操作と押圧操作ができるので、良好な操作性が得られるものとなっている。
【0072】
特に、実施の形態2に係る回転型電気部品においては、付勢部材を軸受け部2よりも巻き径が大きなコイルバネ15で形成し、このコイルバネ15を押圧部材14とケース1の底面との間に配置し、コイルバネ15により押圧部材14をケース6に付勢している。これにより、操作軸5及びプッシュスイッチS1の復帰を確実に行うことができると共に、プッシュスイッチS1がオンとなる荷重を容易に変更することができ、簡単に、様々な回転型電気部品の仕様に対応することが可能となる。
【0073】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る回転型電気部品は、プッシュスイッチS1、押圧部材14及び付勢部材の構成が一部異なる点で実施の形態2に係る回転型電気部品と相違する。以下、実施の形態3に係る回転型電気部品の構成について、実施の形態2に係る回転型電気部品との相違点を中心に説明する。図10は、実施の形態3に係る回転型電気部品の構成を説明するための断面図である。なお、図10において、図9と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図10に示すように、実施の形態3に係る回転型電気部品において、収納部1bには、可動接点板12の接片12aの前方側に、可撓性を有するゴム或いはエラストマーからなり、軸受け部2を挿通される中空部を備えた環状の弾性成形体17が配設されている。また、弾性成形体17の前方側には、押圧部材18が配設されている。この押圧部材18が操作軸5により押圧されることにより弾性成形体17が押圧され、可動接点板12の接片12aと固定接点1kが接触されてプッシュスイッチS1がオンするようになっている。
【0075】
弾性成形体17は、押圧部材18の後方側の面と当接する押圧部17aと、押圧部17aから収納部1bの内底面側に末広がりに拡開するスカート部17bと、押圧部17aの後方側に突出する駆動部17cとを有しており、この駆動部17cの先端が可動接点板12の接片12aと対向した状態で収納部1b内に配置されている。また、弾性成形体17は、付勢部材(復帰部材)を構成しており、押圧部材18が操作軸5により押圧されるのに伴ってスカート部17bが弾性変形し、このスカート部17bの復元力によって押圧部材18を前方側へ付勢するものとなっている。また、弾性成形体17が押圧部材18によって押圧されて、スカート部17bが弾性変形する際に、このスカート部17bが反転動作するように構成されており、この反転動作によって操作軸5の押圧操作時のクリック感を生起するものとなっている。
【0076】
押圧部材18は、合成樹脂等の絶縁材で形成され、中央に中空状の挿通孔18aが設けられており、この挿通孔18aが軸受け部2に挿通されることにより押圧部材18が収納部1b内に保持されている。また、押圧部材18には、外周側に凸状のストッパ部18bが設けられており、このストッパ部18bと収納部1bの内周縁部に設けられた段部1oとが当接することにより、押圧部材18の後方側への移動が停止されるものとなっている。また、付勢部材(復帰部材)である弾性成形体17の付勢力で押圧部材18の前方側の面がケース6の後方側の面と当接することにより、押圧部材18の軸線方向における前方側の動きが規制されており、このケース6の下面側の壁部が押圧部材18の受け部材を構成するものとなっている。
【0077】
このように実施の形態3に係る回転型電気部品においては、付勢部材を可撓性を有するゴム又はエラストマーからなる弾性成形体17で形成し、この弾性成形体17を押圧部材18とケース1の底面との間に配置し、弾性成形体17により押圧部材18をケース6側に付勢するようにしている。これにより、ゴム又はエラストマーのスカート部17bの反転動作により、操作軸5に対する押圧操作時のクリック感が簡単に得られるものとなっている。また、弾性成形体17を中空状に形成し、この中空部に軸受け部2を挿通して弾性成形体17を軸受け部2の外周部に配置するようにしたので、簡単な構造で確実に位置決めされ、且つ、安定した反転動作が得られるものとなっている。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態1に係る回転型電気部品の分解斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る回転型電気部品の外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースに可動接点板を配置した場合の正面図である。
【図4】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースに押圧部材を配置した場合の正面図である。
【図5】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースに操作軸を取り付けた場合の斜視図である。
【図6】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースを重ね合わせた場合の斜視図である。
【図7】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースの収納部に回転体及び板ばねを収納した場合の斜視図である。
【図8】実施の形態1に係る回転型電気部品の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る回転型電気部品の構成を説明するための断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る回転型電気部品の構成を説明するための断面図である。
【図11】従来の回転型電気部品の断面図である。
【図12】図11に示す回転型電気部品における操作軸を押した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 ケース(第2のケース)
1a 貫通孔
1b 収納部
1c スイッチ保持部
1d 中央固定接点
1e 外部固定接点
1f 軸
1g 外部端子
1h 隔壁
1i バネ保持部
1j スイッチ保持部
1k 固定接点
1l 外部端子
1m 外壁部
1n 係止突部
1o 段部
2 軸受け部
3 可動接点板(付勢部材)
4 押圧部材
4a 挿通孔
4b 押圧片
4c 位置規制片
4d 孔(規制部)
4e 押圧突起
5 操作軸
5a 基台部
5b 軸部
5c 挿通孔
5d ガイド片
5e 係合片
5f 爪部
5g 第1係合部
5h 当接突起
6 ケース(第1のケース)
6a 挿通孔
6b 収納部
6c 導電パターン
6d 外部端子
6e 環状壁部
6f 外壁部
7 回転体
7a 開口部
7b 係合溝
7c 凹部
7d カム溝
7e クリックカム
8 摺動子片
8a 接片
9 板ばね
9a 挿通孔
9b ローラ保持部
9c 取付部
10 ローラ
10a シャフト
11 取付部材
11a 上板部
11b 係合脚片
11c 挿通孔
12 可動接点板
12a 接片
13 駆動バネ
14 押圧部材
14a 挿通孔
14b バネ受け部
14c 駆動部
14d ストッパ部
15 コイルバネ(付勢部材)
16 回転体
16a 開口部
16b 第2係合部
17 弾性成形体(付勢部材)
17a 押圧部
17b スカート部
17c 駆動部
18 押圧部材
18a 挿通孔
18b ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の軸受け部を有するハウジングと、前記軸受け部に回転可能に保持された中空状の操作軸と、前記ハウジングに収納され前記操作軸の回転を検出する回転検出手段と、前記ハウジングに収納され前記操作軸の軸線方向への押圧操作に伴い駆動されるプッシュスイッチとを備え、前記操作軸を前記軸受け部の外周部で回転可能に保持すると共に、前記ハウジングの前記軸受け部の外周側に収納部を環状に設け、環状の前記収納部内に前記回転検出手段と前記プッシュスイッチとを配置したことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記軸受け部の軸線方向の前方側に設けられた第1のケースと、後方側に設けられた第2のケースとを有し、前記第1のケース内に前記回転検出手段を配置すると共に、前記第2のケース内に前記プッシュスイッチを配置し、前記第2のケース内には、前記プッシュスイッチを押圧操作する押圧部材と該押圧部材を前記第1のケース側に付勢する付勢部材が設けられ、前記操作軸の軸線方向への前記押圧操作に伴って、前記押圧部材を介して前記プッシュスイッチが操作されると共に、前記ハウジングには前記付勢部材により付勢される前記押圧部材の動きを規制する受け部材が設けられたことを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記受け部材を前記第1のケースの壁部で構成したことを特徴とする請求項2記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記プッシュスイッチは、前記第2のケースに設けられた固定接点と、この固定接点と接離可能に対向した金属板からなる可動接点板とにより構成され、前記付勢部材を前記可動接点板により構成したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記プッシュスイッチは、前記操作軸の周方向に間隔をおいて複数設けられていると共に、前記押圧部材は中空部を有する環状に形成され、該中空部を前記軸受け部に挿通して、前記押圧部材を前記軸受け部の外周部に配置したことを特徴とする請求項4記載の回転型電気部品。
【請求項6】
前記押圧部材には、前記可動接点板とそれぞれ対向する押圧突起と、位置規制される規制部とが設けられており、前記規制部によって、前記押圧部材が前記第2のケースに位置決めされた状態で、前記押圧突起が複数の前記プッシュスイッチに対応する位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項5記載の回転型電気部品。
【請求項7】
前記付勢部材を前記軸受け部よりも巻き径が大きなコイルバネで形成し、このコイルバネを前記押圧部材と前記第2のケースの底面との間に配置し、前記コイルバネにより前記押圧部材を前記第1のケース側に付勢したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の回転型電気部品。
【請求項8】
前記付勢部材を変形可能なスカート部を有するゴム又はエラストマーからなる弾性成形体で形成し、この弾性成形体を前記押圧部材と前記第2のケースの底面との間に配置し、前記弾性成形体により前記押圧部材を前記第1のケース側に付勢したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の回転型電気部品。
【請求項9】
前記回転検出手段は、前記第1のケースに設けられた導電パターンと、この導電パターン上を摺接する摺動子とからなり、前記摺動子は、前記操作軸と共に回転すると共に、前記操作軸の軸線方向の移動を許容する前記第1のケース内に収容された環状の回転体に設けられることを特徴とする請求項2記載の回転型電気部品。
【請求項10】
前記回転体の前記摺動子が設けられた面の反対側の面には、複数の凹凸部が形成され、この凹凸部に係脱するローラが板バネに保持されて前記回転体の前記凹凸部側に弾性付勢されることを特徴とする請求項9記載の回転型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−112975(P2008−112975A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229548(P2007−229548)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】