説明

回転検出器

【課題】ロータと多重巻ユニットの間の歯車のギヤ結合における定義されない遊びが、最低限に抑えられる回転検出器を得る。
【解決手段】ハウジングと、ハウジングの中へ突入する測定されるべき駆動軸と回転不能に結合され、その角度位置が1回転の間に測定されるロータと、ハウジングに支承され、ロータが回転した回数を測定する多重巻ユニットとを有している。多重巻ユニットは、ロータと結合された駆動平歯車10および多重巻ユニットの被駆動平歯車12を有する歯車伝動装置を介して、ロータと連結されている。一方の平歯車10では、2つ目ごとの歯16の頭部がピッチ円まで短縮されている。他方の前記平歯車12では、2つ目ごとの歯溝18の底面がピッチ円まで充填されている。平歯車10、12は斜めに歯が切られており、はすば歯形の傾斜角は常に少なくとも1つの歯16が係合するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている回転検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転検出器は、回転部品の角度位置を測定するために用いられ、場合により角度位置に依存する量、たとえば回転速度、回転加速度などを測定するために用いられる。角度位置が測定されるべき駆動軸とロータが結合され、このロータの角度位置が1回転の間に光学式、磁気式、容量式、または誘導式に走査されて検出される。複数回の回転にわたって角度位置を測定できるようにするために、ロータが回転した回数を測定する多重巻ユニットが設けられている。多重巻ユニットは、減速ギヤを介してロータと連結されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
このような回転検出器では、ロータを支持する駆動軸と多重巻ユニットとが両方とも回転検出器のハウジングに支承されており、それにより、ロータと多重巻ユニットの間のギヤ結合のために、ロータと結合された駆動平歯車と、多重巻ユニットの被駆動平歯車とが常に正確に歯で係合するようになっている。
【0004】
回転検出器のハウジングでロータを支持する駆動軸の独自の支承部が、コスト上の理由にから省略されている回転検出器も知られている(たとえば特許文献2)。この回転検出器は、ロータとともに、測定されるべき駆動軸に直接組み付けられる。ロータは、ハウジングの中へ突入しているがハウジングで支承はされていない駆動軸に着座しており、それに対して、多重巻ユニットはハウジングに支承されているので、ロータと結合された駆動平歯車と、被駆動平歯車との間の歯の係合が、歯形のいっそう激しい磨耗につながりかねない取付公差を有しているという問題が生じる。
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10060574A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第10158223A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた分野の回転検出器をさらに改良して、ロータと多重巻ユニットの間の歯車のギヤ結合における定義されない遊びが、最低限に抑えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によると、請求項1の構成要件を有する回転検出器によって解決される。
本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明による回転検出器では、ロータと結合された駆動平歯車と、これによって駆動される、後置された多重巻ユニットの平歯車とは、これらの平歯車のうち一方のそれぞれ2つ目ごとの歯が歯形のピッチ円の半径まで短縮されているのに対して、これらの平歯車の他方では2つ目ごとの歯溝の底面がそれぞれピッチ円の半径まで充填されているように構成されている。このとき、平歯車の歯形ははすば歯形として構成されており、このはすば歯形は一重または二重のはすば歯形であってよい。このはすば歯形の傾斜角とモジュールは、両方の平歯車がそれぞれ少なくとも1つの歯で係合するように選択されている。
【0009】
このような歯形の構成により、両方の平歯車はそれぞれ少なくとも1つの完全な歯と完全な歯溝とで互いに係合して、正確な回転運動を伝達することになる。さらに、これと同様に両方の平歯車はいつの時点においても、短縮された歯が充填された歯溝の上に着座している。相互に着座するこのような領域の面は、互いに転動する歯形のかみあいピッチ円に相当する、歯形のピッチ円にそれぞれ位置している。したがって、これらの短縮された歯と充填された歯溝の領域では、2つの平歯車が転がり運動で互いに転動し、それにより、互いに係合する両方の平歯車は各々の完全な歯ないし歯溝の領域でも、歯形のかみあいピッチ円で正確に係合する。
【0010】
ピッチ円ないしかみあいピッチ円の面における平歯車のこのような相互の支持は、歯の係合を惹起するそれぞれの完全な歯の歯面の間の接触点が、取付公差の結果として半径方向へ移動する可能性がなくなるように作用する。このような移動は、接触点において、磨耗を促進する半径方向の摺動を歯面が行うことにつながってしまう。
【0011】
互いにか噛み合う平歯車の、このような相互の転動による支持を確実に保証するために、両方の平歯車は、これらの平歯車の軸を結ぶ線の方向に作用するばね力によって、相互に初期応力をかけられているのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面に示した実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
回転検出器は、たとえば一般的にはモータ等へ定置に組み付けられるハウジングを有している。角度位置を測定されるべき駆動軸、たとえばモータの軸は、回転検出器のハウジングの中へ突入している。駆動軸の上には、たとえばインクリメント式または絶対的にコーディングされ、ハウジングに配置された走査部によってロータの1回転の間に角度位置が検出されるロータが着座している。さらにハウジングには、複数回の回転にわたって角度位置を検出できるようにするために、ロータが回転した回数を測定する多重巻ユニットが支承されている。
【0013】
以上の限りにおいて、回転検出器は公知の従来技術に対応している。回転検出器は、従来技術から公知となっているあらゆる任意の形態で構成されていてよい。したがって、このようなそれ自体公知の構成要件に関する回転検出器の図示および説明は必要をみない。
【0014】
ロータが回転した回数を多重巻ユニットによって検出するために、第1のはすば平歯車10がロータと回転不能に結合されている。この平歯車10は駆動歯車として、多重巻ユニットのギヤの入力歯車である第2の被駆動はすば平歯車12と歯で係合している。両方の平歯車10および12の歯形14は、傾斜角およびモジュールに関して互いに呼応している。
【0015】
従来式の歯形14と比べて、平歯車10および12における歯形14の歯16および歯溝18は、次のような仕方で改変されている。
【0016】
一方の平歯車、すなわち図示した例における平歯車10では、それぞれ2つ目ごとの歯16が頭部の高さに関してピッチ円の半径まで短縮されており、その様子は、図2の拡大部分図における歯20に見ることができる。それに対して他方の平歯車、すなわち図示した例では第2の平歯車12は、2つ目ごとの歯溝22の底面がピッチ円の半径まで充填されており、その様子は図3の部分拡大図に見ることができる。
【0017】
その様子が図4に示されるように、平歯車10および12が係合しているとき、完全な歯16は完全な歯溝18にそれぞれ噛み合うのに対して、これと1ピッチだけオフセットされて、短縮された歯20が充填された歯溝22にそのつど当たる。互いに噛み合う完全な歯16と歯溝18は、駆動平歯車10による被駆動平歯車12の回転駆動を惹起する。短縮された歯20と充填された歯溝22は、半径方向で互いに支持しあう面によって相互に転動し、この面は、たとえばインボリュート歯形の場合に当てはまるように、歯形14のかみあいピッチ円と一致するピッチ円に位置している。
【0018】
平歯車10および12の歯形14が、短縮された歯20および充填された歯溝22にもかかわらず常に係合するようにするために、歯形14の傾斜角αおよびそのモジュールは、常に少なくとも1つの歯16が完全な歯溝18と係合するように選択されており、その様子は図4の部分拡大図に明示されている。図1の例では、傾斜角αは45°で示されている。
【0019】
完全な歯16と歯溝18は回転駆動を惹起する。短縮された歯20と充填された歯溝22に基づき、平歯車10および12は常に転動しながらかみあいピッチ円で互いに支持し合うので、常に最善の歯の係合が遊びの公差に関わりなく保証されることになる。これに加えて、平歯車10および12が、常に、それぞれの短縮された歯20および充填された歯溝22によって転動しながら当接することを保証するために、平歯車10および12は、それぞれの軸を結ぶ線の方向へ、平歯車10および12を相互に押圧するばね力によって追加的に初期応力をかけられていてよく、その様子は図4に矢印24で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一方の平歯車を示す半径方向の平面図である。
【図2】一方の平歯車を示す部分拡大斜視図である。
【図3】他方の平歯車を示す部分拡大斜視図である。
【図4】互いに噛み合う平歯車を示す部分拡大斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングの中へ突入する測定されるべき駆動軸と回転不能に結合され、その角度位置が1回転の間に測定されるロータと、前記ハウジングに支承され、前記ロータが回転した回数を測定する多重巻ユニットとを有しており、前記多重巻ユニットは前記ロータと結合された駆動平歯車(10)および前記多重巻ユニットの被駆動平歯車(12)を有する歯車伝動装置を介して前記ロータと連結されている回転検出器において、
一方の前記平歯車(10)では2つ目ごとの歯(16)の頭部がピッチ円まで短縮されており、他方の前記平歯車(12)では2つ目ごとの歯溝(18)の底面がピッチ円まで充填されており、前記平歯車(10,12)は斜めに歯が切られており、はすば歯形(14)の傾斜角(α)は常に少なくとも1つの歯(16)が係合するように設定されていることを特徴とする回転検出器。
【請求項2】
前記平歯車(10,12)はそれぞれの軸を結ぶ線の方向に作用するばね力によって相互に初期応力をかけられていることを特徴とする、請求項1に記載の回転検出器。
【請求項3】
前記駆動軸は独自の支承部なしで前記ハウジングの中へ突入していることを特徴とする、請求項1または2に記載の回転検出器。
【請求項4】
前記平歯車(10,12)の前記はすば歯形(14)はインボリュート歯形であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の回転検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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