説明

回転状態検出装置

【課題】 部品点数の増大を招くことなくトルクと回転数の両方を検出可能な回転状態検出装置を提供すること。
【解決手段】 回転体に作用するトルクにより変形する部材の歪量に応じた電気信号を検出する電気信号検出手段と、電気信号検出手段により検出された電気信号の振幅から前記回転体に作用するトルクを算出すると共に、前記電気信号の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を算出する回転状態検出手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の運動状態を検出する回転状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、回転体のトルクを検出する装置として、磁歪式のトルクセンサを備えた構成が開示されている。また、一般に、回転体に凹凸部材等を設け、この凹凸の変化によるソレノイド磁界の変化を検出することで、回転体の回転速度を検出する回転センサ等が知られている。これにより、回転体のトルクと回転数を検出することで回転状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−172430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、トルクを検出しているのみであり、回転数は別途回転数センサを備えなければならず、部品点数の増加を招くという問題があった。
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、部品点数の増大を招くことなくトルクと回転数の両方を検出可能な回転状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、回転体に作用するトルクにより変形する部材の歪量に応じた電気信号を検出する電気信号検出手段と、電気信号検出手段により検出された電気信号の振幅から前記回転体に作用するトルクを算出すると共に、前記電気信号の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を算出する回転状態検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、1つの電気信号からトルクと回転数の両情報を検出することが可能となり、トルクセンサと回転数センサを個別に設ける必要が無く、部品点数を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の回転状態検出装置が適用されたファイナルドライブ機構の拡大断面図である。
【図2】実施例1の回転状態検出装置が装着された自動変速機の概略構成を表す図である。
【図3】実施例1のベアリングの拡大部分断面図である。
【図4】実施例1のベアリングの拡大部分断面図である。
【図5】実施例1の電気信号の時間変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の回転状態検出装置が適用されたファイナルドライブ機構の拡大断面図である。このファイナルドライブ機構16は、自動変速装置の出力部材となるリダクションギア34に噛合されたファイナルギア36と、ボルト45によってカバー46とともにファイナルギア36に固定されたデフキャリア41とを備えている。カバー46はフランジ状に形成されており、小径の円筒部46aの外周面とケース47(支持部材)との間に装着されたベアリング48(ころ軸受け)によって回動自在に支持されている。ベアリング48は、図4に示すとおり、円筒部46aに対して圧入固定されたインナレース48aと、テーパーローラ48bと、ケース47に対して固定されたアウタレース48cと、テーパーローラ48bの円周方向位置を規定する保持器48dとを有する。アウタレース48cには、切り欠き481cが形成され、内部に歪ゲージ60が装着されている。
【0009】
一方、デフキャリア41は回転軸方向の先端側に小径の円筒部41aを有し、この円筒部41aの外周面とケース47との間に装着されたベアリング49によって回動自在に支持されている。デフキャリア41には、これを回転軸に対して垂直方向内側に向かって貫通する軸部材50が固定されており、これら軸部材50には、ピニオンギア42が回動自在に支持されている。そして、ファイナルギア36,カバー46,デフキャリア41はドライブシャフト44L,44Rの軸を中心として一体となって回転するように構成されている。
【0010】
上述のピニオンギア42には、中空の円筒状に形成された左右サイドギア43L,43Rの基端側に形成されたギア部43aが噛合されている。左右サイドギア43L,43Rの中間部43bの外周面は、それぞれカバー46の円筒部46a,デフキャリア41の円筒部41aによって回動自在に支持されており、先端側の延設部43cは、それぞれカバー46の回転軸方向外側に向かって延設されている。左右サイドギア43L,43Rの内周側の中空部43dには、左右ドライブシャフト44L,44R(回転体)が挿着される嵌合部43e及び左右ドライブシャフト44L,44Rの抜け止めであるCリング用の溝43hが形成されている。また、左右サイドギア43L,43Rの延設部43cの内周面には、Oリング溝43fが環状に形成されており、ここに、Oリング51が装着されている。さらに、左右サイドギア43L,43Rの中空部43dの基端側には、キャップ部材52が嵌合される抜け止め部43gが形成されている。左右サイドギア43L,43Rの延設部43cの外周には、延設部43cとケース47との間の液密性を維持するオイルシール53と、このオイルシール53をゴミやほこりから保護するダストカバー54が設けられている。
【0011】
図2は実施例1の回転状態検出装置が装着された自動変速機の概略構成を表す図である。自動変速機ユニット1は、エンジン等の動力源に接続されたプライマリプーリと、セカンダリプーリと、プライマリプーリの駆動力をセカンダリプーリに伝達するベルトと、セカンダリプーリの駆動力をファイナルドライブ機構16に伝達するリダクションギアとを有する。自動変速機ユニット1内には、プライマリプーリが位置する第1回転軸O1と、セカンダリプーリが位置する第2回転軸O2と、リダクションギアが位置する第3回転軸O3と、ファイナルドライブ機構16が位置する第4回転軸O4とが設けられている。言い換えると、ファイナルドライブ機構16は、第4回転軸O4と異なる径方向位置にある第3回転軸O3側からトルクが入力され、これによって回転する部材であり、ベアリング48を介してケース47に回転可能に支持されている。
【0012】
歪ゲージ60は、アウタレース48cの変形量に応じた電気信号を出力する。回転状態検出部100は、歪ゲージ60によって検出された電気信号からファイナルドライブ機構16の回転数を検出する回転数検出部101と、ファイナルドライブ機構16に作用するトルクを検出するトルク検出部102とを有する。尚、詳細については後述する。
【0013】
ここで、リダクションギアが位置する第3回転軸O3とファイナルドライブ機構16が位置する第4回転軸O4とを結ぶ線をL1と定義する。歪ゲージ60は、アウタレース48cの円周方向と線L1の交点上であって、第4回転軸O4を介して第3回転軸O3と反対側に設けられている。リダクションギア34からファイナルギア36にトルクが伝達されると、ファイナルギア36の接線方向に作用する力と共に、第3回転軸O3と第4回転軸O4との間を離間させる方向の力が発生する。この力はベアリング48を介してケース47によって受け止められる。よって、図3に示すアウタレース48cの切り欠き481cには最も大きな力が作用し、その力に応じて歪が発生する。よって、歪ゲージ60をこの切り欠き481cの位置に配置することで、効果的に歪量を検出することができる。
【0014】
図3,4は実施例1のベアリングの拡大部分断面図である。図3はベアリング48を回転軸方向から見たときのB−B部分断面図であり、図4はベアリングを径方向から見たときのA−A部分断面図である。リダクションギア34からファイナルギア36にトルクが入力されると、ファイナルドライブ機構16が回転し始める。その回転に伴ってインナレース48aも同時に回転し、テーパーローラ48bもケース部材47に固定されたアウタレース48c内周を転がる。このとき、テーパーローラ48bが切り欠き481cを通過する度にアウタレース48cが変形し、歪が検出される。
【0015】
図5は実施例1の電気信号の時間変化を表す図である。上述したように、テーパーローラ48bが転がると、テーパーローラ48bが歪ゲージ60を通過する度に歪量が大きくなるため、図5に示すような正弦波が出力される。この正弦波の振幅が歪量に相当し、歪量はファイナルドライブ機構16に作用するトルクと比例関係にある。よって、トルク検出部102では、検出された正弦波の振幅に所定の係数を掛け合わせることでトルクを検出する。
【0016】
次に、回転数検出部101では、正弦波の上に凸の頂点間の時間t1を計測する。言い換えると、電気信号の変動周期を検出する。テーパーローラ48b間の距離aは、保持器48dによって規制されているため回転数によらず一定である。よって、距離aを計測された時間t1で割ることによって回転数Vを算出する。具体的には、電気信号に所定のフィルタリング処理を施した後、前回の検出値と今回の検出値を比較し、今回値が前回値よりも大きい状態から小さい状態に切り換わったときは、前回値が正弦波の振幅に相当する値、すなわちトルク値として記憶する。同時に、タイマのカウントアップを開始し、次に今回値が前回値よりも大きい状態から小さい状態に切り換わったときは、タイマのカウント値を用いて回転数Vを検出すると共に、タイマをクリアして再度カウントアップを開始する。尚、所定期間、電気信号を時系列データとして保存し、保存されたデータからトルクや回転数を検出してもよい。この場合、データ解析に演算負荷がかかり、またメモリの容量も必要となる。
【0017】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)ファイナルドライブ機構16(回転体)に作用するトルクに応じて変形するアウタレース48c(部材)の歪量に応じた電気信号を出力する歪ゲージ60(電気信号検出手段)と、トルク検出部102において、歪ゲージ60により検出された電気信号の振幅からファイナルドライブ機構16に作用するトルクを算出すると共に、回転数検出部101において、電気信号の変動周期に基づいてファイナルドライブ機構16の回転数を算出する回転状態検出部100(回転状態検出手段)と、を備えた。
よって、1つの電気信号からトルクと回転数の両情報を検出することが可能となり、トルクセンサと回転数センサを個別に設ける必要が無く、部品点数を抑制することができる。
【0018】
(2)ファイナルドライブ機構16は第3回転軸O3と異なる径方向位置から入力されたトルクによって回転する部材であって、ベアリング48(ころ軸受け)を介してケース部材47(支持部材)に回転可能に支持された回転体であり、歪ゲージ60は、ベアリング48のアウタレース48cに生じる歪を検出する。
よって、1つの歪ゲージ60によってテーパーローラ48bが通過する際の周期を計測することが可能となり、部品点数を抑制することができる。
【0019】
(3)歪ゲージ60は、ファイナルドライブ機構16にトルクが入力される位置と、第3回転軸O3を介して反対側に配置されている。よって、効率よく歪量の変化を検出することができる。
【0020】
(他の実施例)
以上、本発明の回転状態検出装置を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。本実施例においては、ベアリングのアウタレースに歪ゲージを1つだけ配置し、テーパーローラの移動に伴う歪量及び歪量変動周期に基づいて回転状態を検出した。これに対し、例えば、特開2003−172430号公報に記載のような非接触磁歪型トルクセンサにおいて、円周方向に複数の磁性体が取り付けられているような場合には、1つ1つの磁性体によって変化する電気信号の変動周期を検出し、これに基づいて回転状態を検出するように構成してもよい。
【0021】
また、実施例ではベアリングのアウタレース変形量に着目したが、ケース側の変形量に着目してもよい。また、アウタレースとケース部材との間に圧力検出素子等を設け、圧力変動を検出することで歪量を検出する構成としてもよい。
また、歪ゲージ60を収装する切り欠きを円周方向の長孔形状として、1つの歪ゲージを用いた構成としたが、径方向から見て正方形や円形の切り欠きを設け、その中に歪ゲージを配置してもよい。また、切り欠きに限らず、アウタレースに凸部を形成し、ケース部材側に凹部を形成し、両凹凸を嵌め合わせ、その内部に歪ゲージを収装してもよい。
【0022】
また、歪ゲージ60を円周方向に配置することで歪量を検出したが、ハスバ歯車を採用している場合、ベアリングには径方向だけでなく、軸方向にもトルクに応じた力が発生する。よって、歪ゲージ60を軸方向の力によって変形する部分に配置してもよい。特に、テーパーローラを採用している場合、顕著に軸方向の力に応じた歪量を得ることができる。
また、ころ軸受けとして、テーパーローラに限らず、ボールベアリングや、ニードルベアリングを採用してもよい。
また、歪ゲージの設置位置は、線L1上に限らず、効果的に歪量を検出できる位置であれば、他の円周方向位置に配置してもよい。また、1つに限らず、複数の歪ゲージや圧力検知素子等を配置してもよい。
【0023】
実施例ではファイナルドライブ機構16に作用するトルク及び回転数を検出する構成としたが、変速機入力軸を支持するベアリングに適用してもよい。この場合、変速機入力回転数と入力トルクを簡易な構成で検出することができる。また、変速機に限らず、動力源の回転体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
16 ファイナルドライブ機構
34 リダクションギア
36 ファイナルギア
41 デフキャリア
44L,44R 左右ドライブシャフト
47 ケース部材(支持部材)
48 ベアリング(ころ軸受け)
48a インナレース
48b テーパーローラ
48c アウタレース
48d 保持器
60 歪ゲージ
100 回転状態検出部
101 回転数検出部
102 トルク検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に作用するトルクに応じて変形する部材の歪量に応じた電気信号を出力する電気信号検出手段と、
該電気信号検出手段により検出された電気信号の振幅から前記回転体に作用するトルクを算出すると共に、前記電気信号の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を算出する回転状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転状態検出装置において、
前記回転体は該回転軸と異なる径方向位置から入力されたトルクによって回転する部材であって、ころ軸受けを介して支持部材に回転可能に支持された回転体であり、
前記電気信号検出手段は、前記ころ軸受けのアウタレースに生じる歪を検出する歪ゲージであることを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転状態検出装置において、
前記歪ゲージは、前記回転体にトルクが入力される位置と、前記回転軸を介して対称位置に配置されていることを特徴とする回転状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202791(P2012−202791A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67062(P2011−67062)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】