説明

回転角度・トルク検出装置

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度や回転トルクの検出等に用いられる回転角度・トルク検出装置に関し、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】回転トルク検出部に加え、回転歯車23や第一の検出歯車24、第二の検出歯車25、及びこれらの回転角度を検出する回転角度検出手段26や27から形成された回転角度検出部を設けると共に、回転トルク検出手段22と回転角度検出手段26や27に接続された制御手段20が、回転角度に応じて回転トルクの誤差を補正することによって、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が行えると共に、装置全体の小型化も容易に図ることが可能な回転角度・トルク検出装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度や回転トルクの検出等に用いられる回転角度・トルク検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転トルク検出装置や回転角度検出装置を用いてステアリングの回転トルクや回転角度を検出し、パワーステアリング装置やブレーキ装置等の車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような、従来の回転トルク検出装置について、図7〜図10を用いて説明する。
【0004】
図7は従来の回転トルク検出装置の側面図、図8は同分解斜視図であり、同図において、1はステアリングに連動して回転する略円筒状の第一の回転体、2は略円筒状の磁石で、N極とS極が例えば20〜40度前後の角度間隔で交互に形成された磁石2が、第一の回転体1の外周下端に固着されている。
【0005】
そして、3は略円筒状の第二の回転体、4は内周に複数の突起部4Aが形成された第一の磁性体、5は同様に複数の突起部5Aが形成された第二の磁性体で、第二の回転体3が第一の回転体1の下方に配置されると共に、第一の磁性体4と第二の磁性体5がスペーサ6を介して、磁石2に対向して第二の回転体3上端に各々固着されている。
【0006】
また、7は第一の回転体1と第二の回転体3の側方にほぼ平行に配置された配線基板で、左右面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、磁石2との対向面には、第一の磁性体4と第二の磁性体5の間に配設された、ホール素子等の磁気検出素子8が装着されている。
【0007】
そして、これらの第一の磁性体4と第二の磁性体5、及び対向した磁石2と磁気検出素子8によって回転トルク検出手段が形成されると共に、配線基板7にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子8に接続された制御手段9が形成されている。
【0008】
さらに、第一の回転体1と第二の回転体3の間には、上端が第一の回転体1に、下端が第二の回転体3に各々固着されたトーションバー等の略円柱状の連結体10が設けられ、第一の回転体1と第二の回転体3が連結体10を介して、固着されて回転トルク検出装置が構成されている。
【0009】
そして、このような回転トルク検出装置が回転角度検出装置等と共に、第一の回転体1や第二の回転体3にステアリング軸が装着されて、自動車のステアリングホイール下方に装着されると共に、制御手段9がコネクタやリード線(図示せず)等を通して自動車本体の電子回路(図示せず)に接続される。
【0010】
以上の構成において、ステアリングホイールを回転すると、これに伴って第一の回転体1が回転し、連結体10が捩じれた後、第一の回転体1にやや遅れて第二の回転体3が回転するが、この時、例えば車両が走行時には回転トルクが小さいため、第一の回転体1に対する第二の回転体3の回転の遅れは少なく、停車時には回転トルクが大きいため、第二の回転体3の回転の遅れが大きくなる。
【0011】
そして、この第一の回転体1と第二の回転体3の回転に伴って、これらに固着された磁石2と、これにやや遅れて第一の磁性体4と第二の磁性体5も回転し、所定間隔で交互に形成された磁石2のN極とS極の磁気の変化を、磁気検出素子8が第一の磁性体4と第二の磁性体5を介して検出し、これが制御手段9へ入力される。
【0012】
なお、この時、磁気検出素子8が検出する磁気は、磁石2が固着された第一の回転体1に対し、第一の磁性体4と第二の磁性体5が固着された第二の回転体3の、回転の遅れが少ない場合には磁気が弱く、回転の遅れが大きな場合には磁気が強くなる。
【0013】
つまり、ステアリングホイールが回転操作されず中立位置で、車両が直進状態にある場合には、図9(a)の部分平面図に示すように、第一の磁性体4内周の複数の突起部4Aと、第二の磁性体5内周の複数の突起部5Aの中心が、磁石2の交互に形成されたN極とS極の中心に各々あるため、磁力が釣り合った状態となっている。
【0014】
したがって、第一の磁性体4と第二の磁性体5の間には磁束が発生せず、これらの間に配設された磁気検出素子8が検出する磁気は0となり、図10(a)の電圧特性図に示すように、例えば2.5Vの電圧T1が磁気検出素子8から制御手段9に出力される。
【0015】
これに対し、ステアリングホイールが回転され、図9(b)に示すように、磁石2に対して第一の磁性体4と第二の磁性体5がやや遅れて回転し始める状態では、突起部4AがN極、この下方の突起部5AがS極の極性となるため、第一の磁性体4から第二の磁性体5への方向の磁束が発生し、この磁気を磁気検出素子8が検出して、図10(a)に示すように、例えば4V前後の電圧T2が制御手段9に出力される。
【0016】
そして、この第一の磁性体4と第二の磁性体5を介して検出された磁気検出素子8の磁気の強弱から、制御手段9が第一の回転体1、すなわちステアリングの回転トルクを算出して、これが自動車本体の電子回路へ出力され、電子回路がこの回転トルクやステアリングの回転角度、あるいは車体の各部に装着された速度センサ等からの様々なデータを演算して、パワーステアリング装置やブレーキ装置等の車両の様々な制御が行われる。
【0017】
つまり、例えば、車両が走行中でステアリングの回転トルクが小さな場合には、パワーステアリング装置の利きを緩めて、ステアリングホイールをある程度重い力で回転操作するようにし、車両が停車していてステアリングの回転トルクが大きな場合には、パワーステアリング装置を大きく利かせて、軽い力でもステアリングホイールの回転操作を行えるように構成されている。
【0018】
なお、例えばパワーステアリング装置がはたらいた状態で、ステアリングホイールを回転操作した場合、上記のように磁石2と、これにやや遅れて第一の磁性体4と第二の磁性体5が回転するが、この時、図9(c)に示すように、突起部4Aや5A以外の箇所からも磁石2の磁気が漏れ、これを磁気検出素子8が検出してしまう。
【0019】
そして、この漏れ磁束Pによって、磁気検出素子8から制御手段9に出力される電圧波形は、図10(a)に示したような直線状のものとはならず、実際には図10(b)に示すように、電圧T3やT4のような所定角度の間隔で増減を繰返す波打ったものとなってしまい、制御手段9が検出する回転トルクに3〜5%前後の誤差が生じる。
【0020】
このため、一般には磁石2外周と、第一の磁性体4や第二の磁性体5内周の間隙を広くし、つまり磁石2と磁気検出素子8の間の距離を大きくして、磁気検出素子8が漏れ磁束Pを検出しないように対策が行われているが、これによって回転トルク検出装置全体の小型化を図るには限界が生じてしまうものであった。
【0021】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2008−82826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の回転トルク検出装置においては、磁石2からの漏れ磁束Pによって、制御手段9が検出する回転トルクに誤差が生じてしまい、これを防ぐために磁石2と磁気検出素子8間の距離を大きくした場合には、全体の小型化を図ることが困難になってしまうという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、第一の回転体と共にステアリングに連動して回転する回転歯車と、この回転歯車に連動して回転する検出歯車、及びこの検出歯車の回転角度を検出する回転角度検出手段を設けると共に、回転トルク検出手段と回転角度検出手段に接続された制御手段が、回転角度に応じて回転トルクの誤差を補正するようにして回転角度・トルク検出装置を構成したものであり、制御手段が回転角度に応じて回転トルクの誤差を補正することによって、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が行えると共に、装置全体の小型化も容易に図ることが可能な回転角度・トルク検出装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度・トルク検出装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11は略円筒状でステアリングに連動して回転するポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製の第一の回転体、12は略円筒状で銅やアルミニウム等の保持体、13は略円筒状または略リング状でフェライトやNd−Fe−B合金等の磁石で、このN極とS極が例えば30度や15度前後の所定の角度間隔で交互に形成された磁石13が、保持体12の外周下端に固着されると共に、この保持体12の外周上方が第一の回転体11の内周上方に固着されている。
【0028】
そして、14は略円筒状でポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製の第二の回転体、15は略リング状でパーマロイや鉄、Ni−Fe合金等の第一の磁性体、16は同じく第二の磁性体で、第二の回転体14が第一の回転体11の下方に配置されると共に、第一の磁性体15の内周には複数の突起部15Aが、第二の磁性体16の内周には複数の突起部16Aが、例えば6個あるいは12個ずつ所定の角度間隔で各々形成され、これらが磁石13外周と所定の間隙を空けて対向している。
【0029】
また、17は略リング状で銅やアルミニウムまたは絶縁樹脂製のスペーサで、このスペーサ17を介して第一の磁性体15と第二の磁性体16が、磁石13に対向して第二の回転体14上端に各々固着されている。
【0030】
さらに、18は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、左右面には銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の回転体11と第二の回転体14の側方にほぼ平行に配置され、磁石13との対向面には、第一の磁性体15と第二の磁性体16の間に配設された、垂直方向の磁気を検出するホール素子や、水平方向の磁気を検出するGMR素子等の磁気検出素子19が実装装着されている。
【0031】
そして、これらの第一の磁性体15と第二の磁性体16、及び対向した磁石13と磁気検出素子19によって回転トルク検出手段22が形成されると共に、配線基板18にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子19に接続された制御手段20が形成されている。
【0032】
また、第一の回転体11と第二の回転体14の間には、上端が第一の回転体11に、下端が第二の回転体14に各々固着されたトーションバー等の略円柱状で鋼等の連結体21が設けられて、回転トルク検出部が構成されている。
【0033】
さらに、23は外周下面に平歯車部が形成された略リング状で絶縁樹脂または金属製の回転歯車、24は外周側面に平歯車部が形成された第一の検出歯車、25は同じく第二の検出歯車で、回転歯車23が第一の回転体11外周下端に固着されると共に、この回転歯車23に第一の検出歯車24が、第一の検出歯車24に第二の検出歯車25が各々噛合している。
【0034】
なお、これらの歯車の直径及び歯数は、回転歯車23が最も大きく、第一の検出歯車24、第二の検出歯車25の順に小さくなっており、例えば、回転歯車23の歯数が48、第一の検出歯車24の歯数が32、第二の検出歯車25の歯数が28となっている。
【0035】
そして、この第一の検出歯車24の中央には磁石26Aが、第二の検出歯車25の中央には磁石27Aが、各々インサート成形等により装着されると共に、これらの側方にほぼ平行に配置された配線基板18の、磁石26Aと27Aとの対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子26Bと27Bが各々装着されて、回転角度検出手段26と27が形成されている。
【0036】
さらに、これらの磁気検出素子26Bと27Bが制御手段20に接続されて、回転角度検出部が形成されると共に、制御手段20には回転角度検出手段26と27からの回転角度に応じた、回転トルク検出手段22からの回転トルクの誤差の値が記憶されて、回転角度・トルク検出装置が構成されている。
【0037】
つまり、本実施の形態の回転角度・トルク検出装置は、ステアリングの回転トルクを検出する回転トルク検出部の下方に、ステアリングの回転角度を検出する回転角度検出部が一体に形成された構成となっている。
【0038】
なお、上記した制御手段20への回転角度に応じた回転トルクの誤差の値の記憶は、実際には上記のような回転角度・トルク検出装置を製作した後、第一の回転体11や第二の回転体14にステアリング軸の代わりの治工具等を装着し、第一の回転体11や回転歯車23等を所定回数回転して、一つ一つの回転角度・トルク検出装置毎に制御手段20への記憶が行われる。
【0039】
そして、このように構成された回転角度・トルク検出装置が、第一の回転体11や第二の回転体14にステアリング軸が装着されて、自動車のステアリングホイール下方に装着されると共に、制御手段20がコネクタやリード線(図示せず)等を通して自動車本体の電子回路(図示せず)に接続される。
【0040】
以上の構成において、ステアリングホイールを回転すると、これに伴って第一の回転体11が回転し、この下端に固着された回転歯車23が回転するため、回転歯車23に噛合した第一の検出歯車24、及び第一の検出歯車24に噛合した第二の検出歯車25が各々連動して回転する。
【0041】
そして、第一の検出歯車24の回転に伴って、中央に装着された磁石26Aも回転して磁気の方向が変化し、この磁石26Aの磁気の方向を磁気検出素子26Bが検出して、磁気の正弦波や余弦波から正接計算や直線近似計算等を行い、図3(a)の角度波形図に示すような、増減を繰返す略鋸歯状の角度検出信号Lが制御手段20へ入力される。
【0042】
また、第二の検出歯車25の磁石27Aに対向した磁気検出素子27Bからも、図3(b)に示すような角度検出信号Mが制御手段20へ出力されるが、この時、第一の検出歯車24と第二の検出歯車25とは歯数が異なっているため、磁気検出素子26Aから出力される角度検出信号Lと、磁気検出素子27Bから出力される角度検出信号Mは、略鋸歯状のデータ波形の傾き角度や形状が異なり、位相差のあるものとなって制御手段20へ入力される。
【0043】
そして、これらの角度検出信号LとMから制御手段20が、第一の検出歯車24の検出信号Lの例えば2回転目の角度θ1から、第二の検出歯車25の検出信号Mの例えば2回転目の角度θ2を減じて、図3(c)に示すような、漸次増加する直線状の位相差信号Nを算出し、この角度θ1−θ2から、先ず回転歯車23の概略の回転角度を検出する。
【0044】
さらに、この後、検出信号Lの角度θ1または検出信号Mの角度θ2と、回転歯車23に対する第一の検出歯車24と第二の検出歯車25の各歯車部の歯数から、制御手段20が回転歯車23の詳細な回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力される。
【0045】
また、この時、ステアリング軸と第一の回転体11の回転に伴って、連結体21が捩じれた後、第一の回転体11にやや遅れて第二の回転体14が回転するが、この時、例えば車両が走行時には回転トルクが小さいため、第一の回転体11に対する第二の回転体14の回転の遅れは少なく、停車時には回転トルクが大きいため、第二の回転体14の回転の遅れが大きくなる。
【0046】
そして、この第一の回転体11と第二の回転体14の回転に伴って、これらに固着された磁石13と、これにやや遅れて第一の磁性体15と第二の磁性体16も回転し、所定間隔で交互に形成された磁石13のN極とS極の磁気の変化を、磁気検出素子19が第一の磁性体15と第二の磁性体16を介して検出し、これが制御手段20へ入力される。
【0047】
つまり、ステアリングホイールが回転操作されず中立位置で、車両が直進状態にある場合には、図4(a)の部分平面図や図5(a)の部分側面図に示すように、第一の磁性体15内周の複数の突起部15Aと、第二の磁性体16内周の複数の突起部16Aの中心が、磁石13の所定の角度間隔で交互に形成されたN極とS極の中心に各々あるため、磁力が釣り合った状態となっている。
【0048】
したがって、第一の磁性体15と第二の磁性体16の間には磁束が発生せず、これらの間に配設された磁気検出素子19が検出する磁気は0となり、図6(a)の電圧特性図に示すように、例えば2.5Vの電圧T1が磁気検出素子19から制御手段20に出力される。
【0049】
これに対し、ステアリングホイールが例えば反時計方向へ回転され、図4(b)や図5(b)に示すように、磁石13に対して第一の磁性体15と第二の磁性体16がやや遅れて回転し始める状態では、突起部15AがN極、この下方の突起部16AがS極の極性となるため、第一の磁性体15から第二の磁性体16への方向の磁束が発生し、この磁気を磁気検出素子19が検出して、図6(a)に示すような、例えば4V前後の電圧T2が制御手段20に出力される。
【0050】
なお、ステアリングホイールが上記とは逆の時計方向へ回転された場合には、第二の磁性体16から第一の磁性体15への方向の磁束が発生するため、この磁気を磁気検出素子19が検出して、図6(a)に示すように、例えば1V前後の電圧T5が制御手段20に出力される。
【0051】
そして、この第一の磁性体15と第二の磁性体16を介して検出された磁気検出素子19の磁気の強弱から、制御手段20がステアリング軸の回転トルクを算出して、これが自動車本体の電子回路へ出力され、電子回路がこの回転トルクや、上述した制御手段20からのステアリング軸の回転角度、あるいは車体の各部に装着された速度センサ等からの様々なデータを演算して、パワーステアリング装置やブレーキ装置等の車両の様々な制御が行われる。
【0052】
つまり、制御手段20からの回転トルクによって、車両の走行や停車状態に合わせ、例えば、車両が走行中でステアリングの回転トルクが小さな場合には、パワーステアリング装置の利きを緩めて、ステアリングホイールをある程度重い力で回転操作するようにし、車両が停車していてステアリングの回転トルクが大きな場合には、パワーステアリング装置を大きく利かせて、軽い力でもステアリングホイールの回転操作を行えるように構成されている。
【0053】
あるいは、制御手段20からの回転角度によって、ステアリングホイールが大きく回転操作されている場合には、ブレーキ装置の利きを断続的にし、小さく回転操作されている場合には、ブレーキ装置を連続的に利かせる等の、ステアリングホイールの回転に応じたブレーキ装置の制御等が行われるようになっている。
【0054】
そして、この時、上述したように、制御手段20には予め回転角度検出手段26と27からの回転角度に応じた、回転トルク検出手段22からの回転トルクの誤差の値が記憶されているため、この値を用いて制御手段20が磁気検出素子19からの回転トルクのデータの補正を行う。
【0055】
つまり、例えばパワーステアリング装置がはたらいた状態で、ステアリングホイールを回転操作した場合、上記のように磁石13と、これにやや遅れて第一の磁性体15と第二の磁性体16が回転するが、この時、図4(c)や図5(c)に示すように、突起部15Aや16A以外の箇所からも磁石13の磁気が漏れ、これを磁気検出素子19が検出してしまう。
【0056】
したがって、この漏れ磁束Pによって、磁気検出素子19から制御手段20に出力される電圧波形は、図6(a)に示したような直線状のものとはならず、実際には図6(b)に示すように、電圧T3やT4、T6のような所定角度の間隔で増減を繰返す波打ったものとなる。
【0057】
しかし、制御手段20には予め回転角度に応じた回転トルクの誤差の値、例えば図6(b)に示すように、第一の回転体11の回転角度がθ3である場合には誤差がδ3、回転角度がθ4である場合には誤差がδ4というように、所定角度で周期的に増減を繰返す回転トルクの誤差の値が記憶されているため、この値を用いて制御手段20が磁気検出素子19からの回転トルクのデータの補正を行い、制御手段20からは図6(a)に示したような直線状の電圧T1やT2、T5が、回転トルクのデータとして自動車本体の電子回路へ出力される。
【0058】
すなわち、回転トルク検出部に加え、回転歯車23や第一の検出歯車24、第二の検出歯車25、及びこれらの回転角度を検出する回転角度検出手段26や27から形成された回転角度検出部を設けると共に、回転トルク検出手段22と回転角度検出手段26や27に接続された制御手段20が、回転角度に応じて回転トルクの誤差を補正することによって、磁石13からの漏れ磁束Pによる誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が行えるように構成されている。
【0059】
したがって、磁気検出素子19が漏れ磁束Pを検出しないように、磁石13外周と、第一の磁性体15や第二の磁性体16内周との間隙を広くする必要もなく、回転角度・トルク検出装置全体の小型化を図ることも容易に可能となる。
【0060】
さらに、以上のような回転トルクの検出を行う際、もし第一の磁性体15と第二の磁性体16のいずれかに偏心や傾きがあり、これらの上下方向の間隔が均一でなかった場合、第一の磁性体15と第二の磁性体16が一回転する間に、磁気検出素子19が検出する磁気の強弱にばらつきが生じ、磁気検出素子19からは図6(c)に示すような、例えば一回転の始終点と中間点で電圧差Δのある電圧波形が出力されてしまう。
【0061】
しかし、この場合にも、上記のように回転角度・トルク検出装置を製作した後に、第一の回転体11や回転歯車23等を所定回数回転して、制御手段20に回転角度に応じた回転トルクの誤差の値の記憶を行わせることによって、制御手段20がこの値を用いて磁気検出素子19からの回転トルクのデータの補正を行い、自動車本体の電子回路へは電圧差Δのない、図6(a)に示したような直線状の電圧T1やT2、T5を、回転トルクのデータとして出力するようにすることが可能となる。
【0062】
なお、回転トルク検出部と回転角度検出部を別々に形成し、これらをリード線等によって制御手段20や電子回路に接続した構成としても、本発明の実施は可能であるが、上記のように回転トルク検出部と回転角度検出部を一体に形成し、回転トルクと回転角度の両方の検出を制御手段20が行う構成とすることによって、構成部品数が少なくなり、装置を安価に形成できると共に、小型化を図ることもより容易に行うことができる。
【0063】
また、以上の説明では、回転トルク検出部の下方に、回転角度検出部を一体に形成した構成について説明したが、第一の回転体11や第二の回転体14の側方に、外周側面に平歯車部が形成された回転歯車23や第一の検出歯車24、第二の検出歯車25を各々噛合させて配列し、回転トルク検出部の側方に回転角度検出部を一体に形成した構成としてもよい。
【0064】
このように本実施の形態によれば、回転トルク検出部に加え、回転歯車23や第一の検出歯車24、第二の検出歯車25、及びこれらの回転角度を検出する回転角度検出手段26や27から形成された回転角度検出部を設けると共に、回転トルク検出手段22と回転角度検出手段26や27に接続された制御手段20が、回転角度に応じて回転トルクの誤差を補正することによって、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が行えると共に、装置全体の小型化も容易に図ることが可能な回転角度・トルク検出装置を得ることができるものである。
【0065】
なお、以上の説明では、回転歯車23に第一の検出歯車24を、第一の検出歯車24に第二の検出歯車25を各々噛合させて、回転角度検出部を形成した構成について説明したが、第一の検出歯車24と第二の検出歯車25の両方を、回転歯車23に噛合させた構成や、あるいは、いずれか一方のみを回転歯車23に噛合させた構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明による回転角度・トルク検出装置は、誤差がなく、高精度で確実な回転トルクの検出が可能なものを実現することができ、主に自動車のステアリングの回転角度や回転トルクの検出用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度・トルク検出装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同角度波形図
【図4】同部分平面図
【図5】同部分側面図
【図6】同電圧特性図
【図7】従来の回転トルク検出装置の側面図
【図8】同分解斜視図
【図9】同部分平面図
【図10】同電圧特性図
【符号の説明】
【0068】
11 第一の回転体
12 保持体
13 磁石
14 第二の回転体
15 第一の磁性体
15A、16A 突起部
16 第二の磁性体
17 スペーサ
18 配線基板
19 磁気検出素子
20 制御手段
21 連結体
22 回転トルク検出手段
23 回転歯車
24 第一の検出歯車
25 第二の検出歯車
26、27 回転角度検出手段
26A、27A 磁石
26B、27B 磁気検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングに連動して回転する第一の回転体と、この第一の回転体に連結体を介して固着された第二の回転体と、上記第一の回転体の回転トルクを検出する回転トルク検出手段と、ステアリングに連動して回転する回転歯車と、この回転歯車に連動して回転する検出歯車と、この検出歯車の回転角度を検出する回転角度検出手段と、上記回転トルク検出手段と回転角度検出手段に接続された制御手段からなり、上記制御手段が回転角度に応じて回転トルクの誤差を補正する回転角度・トルク検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−181310(P2010−181310A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25730(P2009−25730)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】