説明

回転角度検出装置

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関し、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】回転体1や制御手段21等を収納したケース8内に、係止体23を設けると共に、ばね24に付勢された係止部23Bを回転体1の外周に弾接させ、解除部23Cをケース8の取付孔8Bに突出させることによって、予め制御手段21に0点記憶を行うと共に、係止体23によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への接着が行えるため、車両への組立て時に制御手段21に0点記憶を行う必要がなく、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングホイールの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングホイールの回転角度を検出し、この回転角度を用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような従来の回転角度検出装置について、図6及び図11を用いて説明する。
【0004】
図11は従来の回転角度検出装置の断面図であり、同図において、1は側面外周に平歯車部1Aが形成された回転体で、中央筒部内周には一対の係合部1Bが突出形成されている。
【0005】
そして、2は側面外周に平歯車部2Aが形成された第一の検出体、3は側面外周に平歯車部2Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体2の平歯車部2Aが回転体1の平歯車部1Aに噛合すると共に、第二の検出体3の平歯車部3Aが第一の検出体2の平歯車部2Aに噛合している。
【0006】
また、この第一及び第二の検出体2、3の前面には、前後面に複数の配線パターンが形成された配線基板(図示せず)がほぼ平行に配置されると共に、この配線基板の、第一の検出体2の中央に装着された磁石5Aと、第二の検出体3の中央に装着された磁石6Aとの対向面には、磁気検出素子5Bと6Bが各々装着されている。
【0007】
そして、このように対向した磁石5Aと磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6Aと磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子5Bや6Bに接続された制御手段7が形成されている。
【0008】
さらに、8は略箱型で絶縁樹脂製のケースで、このケース8内に回転体1や第一の検出体2、第二の検出体3が回転可能に、配線基板が固着されて各々保持されると共に、ケース8前面を絶縁樹脂製のカバー(図示せず)が覆っている。
【0009】
また、ケース8中央部にはステアリング軸(図示せず)が挿通する貫通孔8Aが形成されると共に、ケース8の左右には、貫通孔8Aの中心、つまり回転体1の回転中心に向けて対称に、丸形状と矩形状の取付孔8Bと8Cが形成されて、回転角度検出装置10が構成されている。
【0010】
そして、このように構成された回転角度検出装置10が、図6の分解斜視図に示すように、ステアリングホイール11の背後に配置されて自動車に装着されると共に、制御手段7がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路(図示せず)に接続される。
【0011】
なお、12は回転コネクタで、車両に固着された固定筐体13内には可撓性のケーブル(図示せず)が巻回されると共に、固定筐体13中央に回転可能に装着された回転筐体14の、貫通孔14A内周にはステアリング軸15が係止されている。
【0012】
さらに、回転筐体14に形成された一対の切欠部14Bに、回転体1の係合部1Bが嵌合すると共に、固定筐体13に形成された円柱状の一対のピン13Aが、ケース8の取付孔8Bと8Cに挿入されて、車両に固着された回転コネクタ12に回転角度検出装置10が保持されている。
【0013】
以上の構成において、ステアリングホイール11を回転すると、ステアリング軸15に係止された回転筐体14が回転し、これに伴って、切欠部14Bに係合部1Bが係合した回転体1が回転する。
【0014】
また、この回転体1の回転に連動して第一の検出体2が、第一の検出体2に連動して第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5Aと6Aも回転して、この磁石5Aと6Aの変化する磁力を磁気検出素子5Bと6Bが検出信号として検出するが、第一の検出体2と第二の検出体3は歯数が異なり回転速度も異なるため、磁気検出素子5Bと6Bのデータ波形は、周期が異なり位相のずれた検出信号となる。
【0015】
そして、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の歯数から、制御手段7が所定の演算を行って、回転体1即ちステアリングホイール11の回転角度を検出し、これが自動車の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0016】
なお、以上のように構成された回転角度検出装置10を搬送・保管した後、自動車に装着する際には、上述したように、貫通孔14Aにステアリング軸15が係止された回転コネクタ12の切欠部14Bに、回転体1の係合部1Bを係合させると共に、ピン13Aをケース8の取付孔8Bと8Cに挿入して装着が行われるが、この時、搬送・保管時等に回転体1が多少回転している場合があるため、回転角度検出装置10の制御手段7に、いわゆる0点記憶を行う必要がある。
【0017】
つまり、ステアリングホイール11の回転角度を中立位置の0度、すなわち車両が直進走行の状態にしておいて、この時の回転角度を中立位置の0度と制御手段7に記憶させ、これ以降、この0点を基準としてステアリングホイール11の回転角度を検出することによって、ステアリングホイール11が左右いずれの方向へ、何度回転したかを検出するように構成されているものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−258625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置においては、回転角度検出装置10を自動車に装着する際に、ステアリングホイール11を中立位置の0度にした状態で、制御手段7に0点記憶を行う必要があるため、組立て作業が煩雑で、時間を要するという課題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0022】
本発明の請求項1に記載の発明は、回転体に連動して回転する検出体や検出手段、制御手段等を収納したケース内に、係止体を設けると共に、この係止体のばねに付勢された係止部を回転体の外周に弾接させ、解除部をケースの取付孔に突出させて回転角度検出装置を構成したものであり、予め制御手段に0点記憶を行うと共に、係止体によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への装着が行えるため、車両への組立て時に制御手段に0点記憶を行う必要がなく、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるという作用を有する。
【0023】
請求項2に記載の発明は、回転体に連動して回転する検出体や検出手段、制御手段等を収納したケース内に、係止体を設けると共に、この係止体のばねに付勢された係止部を回転体の外周に弾接させ、解除部をケースの外方に突出させて回転角度検出装置を構成したものであり、予め制御手段に0点記憶を行うと共に、係止体によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への装着が行えるため、車両への組立て時に制御手段に0点記憶を行う必要がなく、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるという作用を有する。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、係止体にばねを一体に形成したものであり、構成部品数を少なくし、回転角度検出装置を安価に形成することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を実現できるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図10を用いて説明する。
【0027】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0028】
(実施の形態1)
実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1及び3記載の発明について説明する。
【0029】
図1は本発明の第1の実施の形態による回転角度検出装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1は絶縁樹脂製の回転体で、側面外周には平歯車部1Aが形成されると共に、中央筒部内周には一対の係合部1Bが突出形成されている。
【0030】
そして、2は側面外周に平歯車部2Aが形成された第一の検出体、3は側面外周に平歯車部2Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体2の平歯車部2Aが回転体1の平歯車部1Aに噛合すると共に、第二の検出体3の平歯車部3Aが第一の検出体2の平歯車部2Aに噛合している。
【0031】
なお、これらの歯車の直径や歯数は、回転体1が最も大きく、第一の検出体2は第二の検出体3より小さなもの、例えば、回転体1の歯数が87、第一の検出体2の歯数が29、第二の検出体3の歯数が30となっている。
【0032】
また、20は第一及び第二の検出体2、3の前面にほぼ平行に配置された配線基板で、前後面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体2の中央にインサート成形等により装着された磁石5Aと、第二の検出体3の中央に装着された磁石6Aとの対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子5Bと6Bが各々装着されている。
【0033】
そして、このように対向した磁石5Aと磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6Aと磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板20にはマイコン等の電子部品によって制御手段21が形成され、この制御手段21が配線パターンを介して、磁気検出素子5Bや6Bに接続されている。
【0034】
さらに、8は略箱型で絶縁樹脂製のケース、22は絶縁樹脂製のカバーで、このケース8とカバー22内に回転体1や第一の検出体2、第二の検出体3が回転可能に、配線基板20が固着されて各々保持されると共に、これらの中央部にはステアリング軸(図示せず)が挿通する貫通孔8Aと22Aが形成されている。
【0035】
そして、ケース8とカバー22の左右には、貫通孔8Aと22Aの中心、つまり回転体1の回転中心に向けて対称に、丸形状と矩形状の取付孔8Bと22B、8Cと22Cが形成されている。
【0036】
また、23は略くの字状で絶縁樹脂製の係止体、24はコイル状に巻回された鋼や銅合金等のばねで、係止体23中間の支点部23Aがケース8に回転可能に保持されると共に、下端の歯車状に形成された係止部23Bが、やや撓んだ状態のばね24に付勢されて回転体1外周の平歯車部1Aに弾接して噛合し、上端の解除部23Cの一部がケース8の取付孔8Bに突出して、回転角度検出装置30が構成されている。
【0037】
そして、このように構成された回転角度検出装置30が、図6の分解斜視図に示すように、固定筐体13内に可撓性のケーブル(図示せず)が巻回された回転コネクタ12と共に、ステアリングホイール11の背後に配置されて自動車に装着されるが、この時、回転角度検出装置30の制御手段21には、回転角度を検出する基準となる中立位置の0度、いわゆる0点記憶がすでに記憶されている。
【0038】
つまり、回転角度検出装置30を製作し、電気的検査や機械的検査等を行った後、回転体1を中立位置の0度とした状態で、制御手段21にこの位置が0点であることを記憶させると共に、係止体23の係止部23Bを回転体1外周の平歯車部1Aに弾接噛合させ、この中立位置が変化しないように保持した状態で、回転角度検出装置30の搬送や保管等が行われる。
【0039】
したがって、回転角度検出装置30を車両に装着する際には、制御手段21に0点記憶を行う必要はなく、ステアリングホイール11の回転角度を中立位置の0度、すなわち車両が直進走行の状態にしておいて、そのまま回転角度検出装置30を装着するだけで組立て作業を行うことが可能なようになっている。
【0040】
そして、この回転角度検出装置30の制御手段21が、コネクタやリード線(図示せず)等を介して車両の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転コネクタ12の車両に固着された固定筐体13中央に回転可能に装着され、貫通孔14A内周にステアリング軸15が係止された回転筐体14の、一対の切欠部14Bに回転体1の係合部1Bが嵌合される。
【0041】
また、ケース8の取付孔8Bと8Cには、固定筐体13に形成された円柱状の一対のピン13Aが挿入されて、車両に固着された回転コネクタ12に回転角度検出装置30が保持されるが、この時、図3の断面図に示すように、取付孔8Bに挿入されたピン13Aによって、取付孔8Bに突出した係止体23の解除部23Cが押圧される。
【0042】
そして、これによって係止体23が、ばね24を撓めながら支点部23Aを支点として回転して、係止部23Bが回転体1外周の平歯車部1Aから離れるため、回転体1が回転可能な状態となるように構成されている。
【0043】
以上の構成において、ステアリングホイール11を回転すると、ステアリング軸15に係止された回転筐体14が回転し、これに伴って、切欠部14Bに係合部1Bが係合した回転体1が回転する。
【0044】
また、この回転体1の回転に連動して第一の検出体2が、第一の検出体2に連動して第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5Aと6Aも回転して、この磁石5Aと6Aの変化する磁力を磁気検出素子5Bと6Bが検出信号として検出するが、第一の検出体2と第二の検出体3は歯数が異なり回転速度も異なるため、磁気検出素子5Bと6Bのデータ波形は、周期が異なり位相のずれた検出信号となる。
【0045】
そして、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の歯数から、制御手段21が所定の演算を行って、回転体1即ちステアリングホイール11の回転角度を検出し、これが自動車の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0046】
つまり、回転角度検出装置30を製作後は、係止体23の係止部23Bが平歯車部1Aに弾接噛合することによって、回転体1を0点である中立位置に保持した状態で、搬送や保管等が行われるが、車両への装着時には、係止部23Bが平歯車部1Aから離れ、回転体1が回転可能となって、制御手段21が記憶した0点を基準として、確実な回転角度の検出が行えるように構成されている。
【0047】
すなわち、回転角度検出装置30の製作時に、予め制御手段21に0点記憶を行うと共に、係止体23によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への装着が行えるため、車両への組立て時に制御手段21に0点記憶を行う必要がなく、容易に車両への装着が行えると共に、回転角度の確実な検出が可能なようになっている。
【0048】
さらに、自動車の修理時等に、回転角度検出装置30を車両から取外す際にも、ステアリングホイール11の回転角度を中立位置の0度にした状態で、回転角度検出装置30を回転コネクタ12から取外せば、ばね24に付勢された係止体23が上述のような装着時とは逆方向に回転して、係止部23Bが回転体1の平歯車部1Aに弾接噛合すると共に、解除部23Cの一部がケース8の取付孔8Bに突出した、元の中立位置の状態で取外しを行うことができる。
【0049】
したがって、修理等が終了し、再び回転角度検出装置30を車両へ装着する場合にも、上述したように、ステアリングホイール11の回転角度を中立位置の0度、すなわち車両が直進走行の状態として装着すれば、制御手段21に0点記憶を行う必要はなく、容易に再装着が可能なようになっている。
【0050】
なお、以上の説明では、ばね24によって係止体23を付勢する構成について説明したが、図4の断面図に示すように、絶縁樹脂製の係止体26に薄板状のばね部26Aを一体に形成し、係止部26Bを回転体1の平歯車部1Aに弾接噛合させると共に、解除部26Cをケース8の取付孔8Bに突出するようにすれば、別体のばねが不要となるため、構成部品数を少なくし、回転角度検出装置を安価に形成することができる。
【0051】
また、以上の説明では、係止体23を回転させる構成について説明したが、図5の断面図に示すように、ばね24に付勢された係止体27を中心方向へ摺動可能に設け、先端の歯車状の係止部27Bを回転体1の平歯車部1Aに弾接噛合させると共に、解除部27C内周を取付孔8Bに突出する構成としても、本発明の実施は可能である。
【0052】
このように本実施の形態によれば、回転体1や制御手段21等を収納したケース8内に、係止体23を設けると共に、ばね24に付勢された係止部23Bを回転体1の外周に弾接させ、解除部23Cをケース8の取付孔8Bに突出させることによって、予め制御手段21に0点記憶を行うと共に、係止体23によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への装着が行えるため、車両への組立て時に制御手段21に0点記憶を行う必要がなく、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0053】
(実施の形態2)
実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2記載の発明について説明する。
【0054】
なお、実施の形態1の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0055】
図7は本発明の第2の実施の形態による回転角度検出装置の断面図、図8は同分解斜視図であり、同図において、回転体31の側面外周に平歯車部31Aや、中央の筒部31C内周に一対の係合部31Bが各々形成されていることや、第一の検出体2側面外周の平歯車部2Aが回転体31の平歯車部31Aに噛合すると共に、第二の検出体3側面外周の平歯車部3Aが第一の検出体2の平歯車部2Aに噛合して、回転体31の回転に連動して第一の検出体2と第二の検出体3が各々回転することは実施の形態1の場合と同様である。
【0056】
そして、第一の検出体2中央の磁石5Aとこれに対向して配置された磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、第二の検出体3の磁石6Aとこれに対向して配置された磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されていることや、これらの検出手段5、6からの二つの異なる検出信号により制御手段21が回転体31の回転角度、即ちステアリングホイール11の回転角度を検出することも実施の形態1の場合と同様である。
【0057】
また、38は略箱型で絶縁樹脂製のケース、42は絶縁樹脂製のカバーで、このケース38とカバー42内に、回転体31や第一の検出体2、第二の検出体3及び配線基板40などが各々保持されて収納されていることも実施の形態1の場合と同様であるが、ケース38の左右側面には開口部38Cが形成されると共に、左右の開口部38Cの上下方向の所定位置には、外方へ突出する突起部38Dによって保持部38Eが各々設けられている。
【0058】
さらに、43は略L字状の係止体、44はコイル状に巻回された鋼や銅合金等のばねで、複数の係止体43の略中間の支点部43Aがケース38の左右に回転可能に軸支されると共に、係止体43上部の内方に突出した係止部43Bが、回転体31の外周である筒部31Cに設けられた切欠き状の係合部31Dに、やや撓んだ状態のばね44に付勢されて弾接し、回転体31を中立位置の回転角度0度の状態で保持している。
【0059】
また、係止体43下部の解除部43Cがケース38の開口部38Cへ延出し、保持部38Eから外方へ突出して、回転角度検出装置50が構成されている。
【0060】
そして、このように構成された回転角度検出装置50が、図10の分解斜視図に示すように、ステアリングホイール11の背後に回転コネクタ52と共に配置されて自動車に装着されることは実施の形態1の場合と同様であるが、回転コネクタ52と回転角度検出装置50との取付け構成や、係止体43による回転体31の回転保持の解除方法が実施の形態1の場合とは異なっている。
【0061】
つまり、回転コネクタ52の固定筐体53中央の貫通孔54Aの左右側方には、回転角度検出装置50方向へ突出すると共に、各保持部38Eに対向した複数のリブ53Aが配設され、回転角度検出装置50を回転コネクタ52に取付ける際に、このリブ53Aが回転角度検出装置50の保持部38Eに挿入される。
【0062】
そして、図8に示すように、ケース38の保持部38Eから係止体43の解除部43Cが外方へ突出した状態から、回転角度検出装置50を回転コネクタ52に取付け、リブ53Aによって解除部43Cが押圧されると、図9の断面図に示すように、係止体43が支点部43Aを支点として回転し解除部43Cが内方へ回動すると共に、筒部31Cの係合部31Dに弾接していた係止部43Bが係合部31Dから離れるため、回転体31が回転可能な状態となる。
【0063】
つまり、回転角度検出装置50を製作後は、係止体43の係止部43Bが回転体31の筒部31C外周の係合部31Dに弾接することによって、回転体31を0点である中立位置に保持した状態で、搬送や保管等が行われるが、車両への装着時には、リブ53Aによって解除部43Cが押圧されて、係止部43Bが係合部31Dから離れ、回転体31が回転可能となって、制御手段21が記憶した0点を基準として、確実な回転角度の検出が行えるように構成されている。
【0064】
すなわち、回転角度検出装置50の回転コネクタ52への取付けが、実施の形態1の場合とは異なる上記のような構成のものにおいても、実施の形態1の場合と同様に、回転角度検出装置50の製作時に、予め制御手段21に0点記憶を行うと共に、係止体43によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への装着が行えるため、車両への組立て時に制御手段21に0点記憶を行う必要がなく、容易に車両への装着が行えると共に、回転角度の確実な検出が可能なようになっている。
【0065】
このように本実施の形態によれば、回転体31や制御手段21等を収納したケース38内に、係止体43を設けると共に、ばね44に付勢された係止部43Bを回転体31の筒部31C外周の係合部31Dに弾接させ、解除部43Cをケース31の外方に突出させることによって、予め制御手段21に0点記憶を行うと共に、係止体43によって回転角度を中立位置の0度に保持した状態で車両への装着が行えるため、車両への組立て時に制御手段21に0点記憶を行う必要がなく、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0066】
なお、以上の説明では、ケース31の左右両側方から二つの係止体43によって回転体31の回転を保持する構成として説明したが、左右いずれかの一つの係止体43のみで回転体31の回転を保持する構成としても、本発明の実施は可能である。
【0067】
また、以上の説明では、ばね44によって係止体43を付勢する構成について説明したが、実施の形態1の場合と同様に、絶縁樹脂製の係止体43に薄板状のばね部を一体に形成し、このばね部によって係止体43Bを係合部31Dに弾接させる構成としてもよい。
【0068】
さらに、以上の説明では、回転体1、31や各検出体の歯車部を噛合させ、互いに連動して回転する構成として説明したが、歯車部以外にも、回転を伝達できる凹凸部や高摩擦部などを回転体や検出体の外周に形成し、これによって互いに連動して回転する構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明による回転角度検出装置は、車両への装着が容易で、回転角度の確実な検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングホイールの回転角度検出等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態による回転角度検出装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同装着時の断面図
【図4】同他の実施の形態による断面図
【図5】同他の実施の形態による断面図
【図6】ステアリング装置の分解斜視図
【図7】本発明の第2の実施の形態による回転角度検出装置の断面図
【図8】同分解斜視図
【図9】同装着時の断面図
【図10】同ステアリング装置の分解斜視図
【図11】従来の回転角度検出装置の断面図
【符号の説明】
【0071】
1、31 回転体
1A、2A、3A、31A 平歯車部
1B、31B 係合部
2 第一の検出体
3 第二の検出体
5 第一の検出手段
6 第二の検出手段
5A、6A 磁石
5B、6B 磁気検出素子
8、38 ケース
8A、22A 貫通孔
8B、8C、22B、22C 取付孔
11 ステアリングホイール
12、52 回転コネクタ
13、53 固定筐体
13A ピン
14 回転筐体
14A、54A 貫通孔
14B 切欠部
15 ステアリング軸
20、40 配線基板
21 制御手段
22、42 カバー
23、26、27、43 係止体
23A、43A 支点部
23B、26B、27B、43B 係止部
23C、26C、27C、43C 解除部
24、44 ばね
26A ばね部
30、50 回転角度検出装置
31C 筒部
38C 開口部
38D 突起部
38E 保持部
53A リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する検出体と、この検出体の回転を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号により上記回転体の回転角度を検出する制御手段と、これらを収納したケースからなり、係止体を設けると共に、この係止体のばねに付勢された係止部を上記回転体の外周に弾接させ、解除部を上記ケースの取付孔に突出させた回転角度検出装置。
【請求項2】
ステアリングホイールに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する検出体と、この検出体の回転を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号により上記回転体の回転角度を検出する制御手段と、これらを収納したケースからなり、係止体を設けると共に、この係止体のばねに付勢された係止部を上記回転体の外周に弾接させ、解除部を上記ケースの外方に突出させた回転角度検出装置。
【請求項3】
係止体にばねを一体に形成した請求項1または2記載の回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−36751(P2009−36751A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56109(P2008−56109)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】