回転軸のロック装置、およびこれを備えた記録装置
【課題】回転軸の正/逆双方向の回転駆動を可能としながらも、必要に応じて回転軸をロックすることのできるロック装置を得る。
【解決手段】ロック手段70は、伝達歯車75bが回転トルクを受けるとこれに応じて歯車71に回転トルクを伝達し、回転トルクの伝達が切断されるとこれに応じて歯車71をロックする。第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、太陽歯車94と噛合するとともに伝達歯車75bと噛合する位置と離間する位置とを変位するよう設けられ、いずれか一方が噛合位置にあるときは他方が離間位置に位置する。太陽歯車94の回転方向切り換えに伴い、伝達歯車75bが第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断時間が生じると、これを利用してロック手段70が歯車71をロックする。
【解決手段】ロック手段70は、伝達歯車75bが回転トルクを受けるとこれに応じて歯車71に回転トルクを伝達し、回転トルクの伝達が切断されるとこれに応じて歯車71をロックする。第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、太陽歯車94と噛合するとともに伝達歯車75bと噛合する位置と離間する位置とを変位するよう設けられ、いずれか一方が噛合位置にあるときは他方が離間位置に位置する。太陽歯車94の回転方向切り換えに伴い、伝達歯車75bが第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断時間が生じると、これを利用してロック手段70が歯車71をロックする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸のロック/ロック解除の切り換えを行うロック装置に関する。また本発明は、当該ロック装置を備えた、ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置において、用紙のスキュー(斜行)を解消させる為の制御方法として、特許文献1に示されるような食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御がある。
【0003】
このスキュー取り制御は、下流側ローラと上流側ローラとを利用し、用紙先端を下流側ローラに食い付かせて所定量下流側に送り出した後、上流側ローラを停止させた状態で下流側ローラを逆転させ、用紙先端を下流側ローラの上流側に吐き出す。これにより用紙は上流側ローラと下流側ローラとの間で撓ませられるが、その復帰習性により用紙先端が下流側ローラに倣い、結果的にスキューが矯正される。
【0004】
しかしながら厚紙などの剛性の高い(コシの強い)用紙に対して上記スキュー取り制御を行う場合、用紙先端を下流側ローラから吐き出す際に上流側ローラを回転させようとする力が大きくなり、場合によっては上流側ローラを逆転させてしまうことによって、スキューが良好に解消されない虞がある。
【0005】
この様な不具合を解消するためには、上流側ローラが逆転しないように、上流側ローラとこれを駆動するモータとの間に、例えば特許文献2に示されるような一方向回転のみを許容するクラッチを介在させて、上流側ローラが逆転方向には回転しないようにロックする必要がある。
【特許文献1】特開2007−84224号公報
【特許文献2】特開平10−331941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら用紙の両面に記録を行う記録装置などのように、用紙を上流側に向けて戻すためにローラを逆転駆動したい場合がある。従ってこの様な場合においては上記のように一方向回転のみを許容するクラッチをそのまま適用することができず、従って正/逆双方向の回転駆動と、必要時における確実な逆転防止(回転のロック)と、のいずれをも満たすことのできるロック装置の開発が望まれていた。
【0007】
また上流側ローラと下流側ローラとで共通の駆動モータを利用する場合、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為には、下流側ローラを所定量逆転させる間において上流側ローラが逆転しないようロックされていなければならず、この様な動作条件を満たすことのできるロック装置であることも望まれる。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、回転軸の正/逆双方向の回転駆動を可能としながらも、必要に応じて回転軸をロックすることのできるロック装置を得ることにあり、更には駆動モータの回転方向を切り換える際に、所定期間回転軸のロック状態を介在させることのできるロック装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る回転軸のロック装置は、動力源から回転トルクを受ける伝達歯車を備え、前記伝達歯車が前記動力源から回転トルクを受けるとこれに応じて回転軸に回転トルクを伝達し、前記動力源からの回転トルクの伝達が切断されるとこれに応じて前記回転軸をロックするロック手段と、太陽歯車と噛合するとともに当該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、当該遊星運動によって前記伝達歯車と噛合する噛合位置と前記伝達歯車から離間する離間位置との間を変位する第1遊星歯車及び第2遊星歯車と、を備え、前記第1遊星歯車は、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を回転駆動し、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、前記第2遊星歯車は、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を前記第1遊星歯車による回転駆動方向とは逆方向に回転駆動し、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、前記太陽歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、前記伝達歯車が前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、前記ロック手段により前記回転軸をロックすることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、太陽歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、伝達歯車が第1遊星歯車及び第2遊星歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、ロック手段により回転軸をロックするので、回転軸の正/逆双方向の回転駆動を可能としつつ、回転方向切り換え時には回転軸をロックすることができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る回転軸のロック装置は、第1の態様に係るロック装置において、前記第1遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量と、前記第2遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量が異なることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、第1遊星歯車の変位量と第2遊星歯車の変位量とが異なるので、太陽歯車の正転方向から逆転方向への回転切り換え時と、逆転方向から正転方向への回転切り換え時とで動力切断時間、即ち回転軸をロックする時間を異ならせることができ、使用用途に応じた適切な装置構成を実現することができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る回転軸のロック装置は、第1のまたは第2の態様に係るロック装置において、前記ロック手段が、前記回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の軸線方向に変位可能に設けられるクラッチ部材と、前記クラッチ部材と係合して前記クラッチ部材の回転を規制する、固定状態に設けられるロック部材と、前記クラッチ部材を前記ロック部材に向けて付勢する付勢部材と、前記伝達歯車を一体的に備えるとともに前記クラッチ部材の外周部に設けられたカム溝内に遊挿されるボスを備え、当該ボスを介して前記クラッチ部材に回転トルクを伝達するトルク伝達部材と、を備えて構成され、前記トルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴って前記カム溝内で前記ボスが変位することにより、前記ボスが前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記ロック部材から離間させるロック解除状態と、前記ボスが前記クラッチ部材の変位を許容して前記クラッチ部材を前記ロック部材に係合させるロック状態と、が切り換わるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、クラッチ手段が、回転軸のトルクを伝達するトルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴ってカム溝内でボスが変位することにより、クラッチ部材(即ち回転軸)に回転トルクを伝達するロック解除状態と、クラッチ部材(回転軸)をロックするロック状態と、が切り換わる構成であるので、前記クラッチ手段を少ない部品点数で低コストに構成することができる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、被記録媒体の搬送経路において前記記録手段の上流側に設けられ、被記録媒体を前記記録手段の側へと搬送する第1送りローラと、被記録媒体の搬送経路において前記第1送りローラの上流側に設けられ、被記録媒体を前記第1送りローラの側へと搬送する第2送りローラと、を備えた記録装置であって、前記第1送りローラ及び前記第2送りローラは、共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成され、前記駆動モータから前記第2送りローラへの回転トルクの伝達経路に、第1から第3の態様のいずれかに係るロック装置を備え、当該ロック装置により前記第2送りローラの回転軸をロック可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第1送りローラの上流側に位置する第2送りローラが、上記第1から第3の態様のいずれかに係るロック装置によって、正/逆双方向の回転駆動を可能としながらも、回転方向切り換え時にはロックされるので、被記録媒体を上流側及び下流側の双方に搬送可能としながらも、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う場合に第2送りローラが逆転することを防止でき、被記録媒体のスキューを適切に除去することができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る記録装置は、第4の態様において、前記太陽歯車は、前記駆動モータからの回転トルクを前記第1送りローラを介して受けるよう構成され、前記第1送りローラが被記録媒体を下流側に搬送する正転時に、前記第1遊星歯車を介して、前記第2送りローラが被記録媒体を下流側へ搬送する正転方向の回転トルクが当該第2送りローラに伝達されるよう構成され、前記第1遊星歯車は、前記第1送りローラの逆転から正転への切り換えに伴い前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量が、前記第1送りローラの正転から逆転への切り換えに伴い前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量より小さく設定されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、第1送りローラが逆転駆動から正転駆動に切り換えられたとき、第1遊星歯車が噛合位置に戻るまでの変位量が、第2遊星歯車が離間位置から噛合位置へ変位する際の変位量より小さく設定されるので、第1送りローラの逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに第2送りローラの正転駆動を開始することができる。
【0019】
即ち、第2送りローラを停止させた状態で第1送りローラを逆転駆動することにより、第1送りローラと第2送りローラを用いて食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行った後、第1送りローラを再び正転駆動に切り換える際に、第2送りローラが停止した状態のまま第1送りローラが正転する時間を短縮できる。従って被記録媒体が第2送りローラと第1送りローラとの間で引っ張られ、被記録媒体にダメージを与えることを防止できる。
本発明の第6の態様に係る記録装置は、第4のまたは第5の態様において、前記駆動モータの正転により前記第1送りローラ及び前記第2送りローラが正転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラより下流側へ所定量頭出しされる第1ステップと、前記駆動モータを正転から逆転に切り換えることにより、前記ロック手段が前記第2送りローラの回転軸をロックした状態で前記第1送りローラが逆転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラの上流側に吐き出される第2ステップと、を含むスキュー取り制御を実行可能に構成され、前記第2ステップにおける前記駆動モータの逆転は、前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置に変位し、更に前記第1送りローラ及び前記第2送りローラの双方が逆転して被記録媒体の先端が前記第1送りローラより上流側に所定量戻されるまで実行されることを特徴とする。
所謂食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御において、被記録媒体の先端を第1送りローラの上流側に吐き出す第2ステップに次いで駆動モータを正転駆動に切り換えると、第1遊星歯車が離間位置から噛合位置に切り換わるまで第1送りローラが先行して正転する。
従って上記第2ステップ終了時点で被記録媒体が第1送りローラと係合していると、駆動モータを正転駆動に切り換えた際に被記録媒体が直ちに第1送りローラから下流側への送り力を受け、そして第1送りローラのみが先行して正転することで被記録媒体には第1送りローラと第2送りローラとの間でテンションが加わる。その結果、搬送精度が低下して記録品質を低下させる虞がある。
しかし本態様によれば、上記第2ステップ終了時点で被記録媒体先端は第1送りローラより上流側に所定量戻されており、即ち第1送りローラと第2送りローラの双方に掛かっていないので、上記第2ステップに次いで駆動モータを正転駆動に切り換えた際に上記のように被記録媒体にテンションが加わることがなく、記録品質の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1乃至図15を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の用紙搬送経路を示す側断面図、図2〜図4は本発明の第1実施形態に係るロック装置8の正面図、図5はロック手段70の分解斜視図、図6はロック手段70の要部拡大斜視図(一部断面図)、図7(A)、(B)はロック手段70を回転軸71aの軸線方向に平行な面で切断した断面図、図8(A)〜(C)は噛み合い歯の各種実施形態を示す図である。
【0021】
また、図9は本発明の第2実施形態に係るロック装置8’の正面図、図10及び図11は第2実施形態に係るロック手段50の分解斜視図、図12は回転軸32a及びクラッチ部材52の斜視図、図13〜図15の(A)はロック手段50を回転軸32aの軸線方向に平行な面で切断した断面図、図13〜図15の(B)はロック手段50を回転軸32aの軸線方向に直交する面で切断した断面図である。
【0022】
<<1.記録装置の構成>>
以下、図1を参照しつつプリンタ1の全体構成について概説する。尚、図1はプリンタ1の用紙搬送経路上に配置されるローラを図示する為に、ほぼ全てのローラを同一面上に描いているが、その奥行き方向(図1の紙面表裏方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。
【0023】
プリンタ1は、装置底部に給送装置2を備え、当該給送装置2から被記録媒体としての記録用紙Pを1枚ずつ給送し、記録手段4においてインクジェット記録を行い、装置前方側(図1において左側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出する構成を備えている。またプリンタ1は装置後部に両面ユニット7を着脱自在に備えており、最初に記録の行われた用紙Pの第1面に対し反対側の第2面が記録ヘッド42と対向するよう湾曲反転させ、これにより用紙Pの両面に記録が実行可能となっている。
【0024】
以下、各構成要素について更に説明する。給送装置2は、用紙カセット11と、ピックアップローラ16と、ガイドローラ20と、分離手段21と、を備えている。複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な用紙カセット11は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されており、図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラ16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられ、用紙カセット11に収容された用紙と接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを用紙カセット11から送り出す。
【0025】
用紙カセット11に収容された用紙先端と対向する位置には分離部材12が設けられており、給送されるべき最上位の用紙Pの先端が分離部材12に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの第1段階分離が行われる。分離部材12の下流側には自由回転可能なガイドローラ20が設けられ、更にその下流側には、分離ローラ22と駆動ローラ23とを備えて構成された、用紙Pの第2段階分離を行う分離手段21が設けられている。
【0026】
分離手段21の下流側には、図示を省略するモータにより回転駆動される駆動ローラ26と、駆動ローラ26との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ27と、を備えて構成された第1中間送り部25が設けられており、この第1中間送り部25により、用紙Pが更に下流側へと送られる。尚、符号29は、用紙Pが湾曲反転経路を通過する際の(特に用紙後端が通過する際の)通紙負荷を軽減する従動ローラを示している。
【0027】
従動ローラ29の下流側には図示を省略するモータにより回転駆動される駆動ローラ32と、駆動ローラ32との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ33と、を備えて構成された第2中間送り部31が設けられており、この第2中間送り部31により、用紙Pが更に下流側へと送られる。
【0028】
第2中間送り部31の下流側には、記録手段4が配置されている。記録手段4は、搬送手段5と、記録ヘッド42と、紙案内前39と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、図示を省略するモータによって回転駆動される搬送駆動ローラ35と、該搬送駆動ローラ35に圧接して従動回転するよう紙案内上37に軸支される搬送従動ローラ36とを備えて構成され、この搬送手段5により用紙Pが記録ヘッド42と対向する位置に向けて精密送りされる。
【0029】
尚、給送装置2から給送された記録用紙Pのスキューは、第1送りローラと、その上流側の第2送りローラとを利用した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御により除去される。具体的には、記録用紙Pの先端を搬送駆動ローラ35(第1送りローラ)と搬送従動ローラ36との間に食い付かせて所定量下流側に送り出した後、上流側の駆動ローラ32(第2送りローラ)を停止させた状態で搬送駆動ローラ35を逆転させ、用紙先端を搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出す。これにより用紙先端が搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36とのニップ点に倣い、スキューが矯正される。
【0030】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示を省略するモータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。記録ヘッド42と対向する位置には紙案内前39が設けられ、当該紙案内前39によって、用紙Pと記録ヘッド42との距離が規定されるようになっている。
【0031】
紙案内前39の下流側に設けられた排出手段6は、図示を省略するモータによって回転駆動される排出駆動ローラ44と、当該排出駆動ローラ44に接して従動回転する排出従動ローラ45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0032】
両面ユニット7は、大径の反転ローラ46と、当該反転ローラ46との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストーラ47、48を備えている。用紙カセット11から繰り出されて第1面に記録の行われた用紙Pは、第2中間送り部31、搬送手段5、排出手段6、のこれらによる逆送り動作によって、第1面に記録が実行された際に用紙後端となっていた側が先端となって、反転ローラ46とアシストローラ48との間に誘い込まれる。
【0033】
反転ローラ46は図示を省略するモータにより図1の反時計回り方向に回転駆動されており、反転ローラ46とアシストローラ48との間に誘い込まれた用紙は、反転ローラ46とアシストローラ47との間を通って再び第2中間送り部31に到達し、記録手段4に導かれ、以降同様に記録が実行される。
【0034】
尚、以上説明した用紙搬送経路中に設けられるピックアップローラ16、駆動ローラ23、26、32、搬送駆動ローラ35、排出駆動ローラ44、反転ローラ46、のこれら回転駆動されるローラは、全て共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成されている。この中で第2中間送り部31を構成する駆動ローラ32と駆動モータとの間に、本発明に係るロック装置が設けられ、必要時に駆動ローラ32の回転がロックされることとなる。
【0035】
<<2.ロック装置の第1実施形態>>
以下、図2乃至図8を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。図2において符号61は用紙搬送方向に平行な面を形成するサイドフレーム(プリンタ1の基体を構成する)を示しており、ロック装置8はこのサイドフレーム61に設けられる。
【0036】
図2において符号90は搬送駆動ローラ35の軸端に設けられる歯車を示しており、この歯車90からロック装置8を構成する太陽歯車94へと回転トルクが伝達され、そしてロック装置8を構成するロック手段70から、歯車97へと回転トルクが伝達される。この歯車97は、上述した駆動ローラ32の回転軸32aの軸端に取り付けられており、ロック装置8は、この回転軸32aの回転を許容するロック解除状態と、回転を規制するロック状態と、を切り換える。
【0037】
尚、図2の歯車97から更に左側には、更に図示を省略する歯車輪列が設けられており、歯車97を介して搬送駆動ローラ35(駆動モータ)の回転トルクが反転装置7(反転ローラ46)へと更に伝達されるようになっている。
【0038】
以下、ロック装置8の構成について更に詳説する。ロック装置8は、図2及び図5に示すように太陽歯車94と、第1遊星歯車95と、第1遊星レバー77と、第2遊星歯車96と、第2遊星レバー78と、ロック手段70と、を備えている。またロック手段70は、歯車71と、クラッチ部材72と、ロック部材73と、付勢部材としてのコイルばね74と、トルク伝達部材75と、を備えている。
【0039】
第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、太陽歯車94の回転中心を中心にして揺動可能な第1遊星レバー77及び第2遊星レバー78にそれぞれ回転可能に軸支されており、それぞれ太陽歯車94と噛合している。そして太陽歯車94の回転に伴って第1遊星レバー77及び第2遊星レバー78が揺動動作を行うことにより、太陽歯車94の周囲を遊星運動するように設けられている。
【0040】
そしてこの遊星運動によって、それぞれが伝達歯車75bと噛合する噛合位置と、伝達歯車75bから離間する離間位置との間を変位可能となっている。図2は第1遊星歯車95が噛合位置にあり、第2遊星歯車96が離間位置にある様子を示しており、図4はその逆に第1遊星歯車95が離間位置にあり、第2遊星歯車96が噛合位置にある様子を示している。この様に第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、いずれか一方が噛合位置にあるときは他方が離間位置に位置するようになっている。
【0041】
尚、本実施形態においては便宜上、搬送駆動ローラ35(歯車90)は、図2の時計回り方向に回転するとき(用紙Pを下流側へ搬送するとき)を正転とし、図2の反時計回り方向に回転するとき(用紙Pを上流側へ搬送するとき)を逆転とする。
【0042】
そして第1遊星歯車95は、搬送駆動ローラ35の正転(太陽歯車94の第1方向回転)に伴い図2に示すように噛合位置に変位し、伝達歯車75bを図2の反時計回り方向に回転駆動する。また搬送駆動ローラ35の逆転(太陽歯車94の第2方向回転)に伴い図4に示すように離間位置に変位する。その逆に第2遊星歯車96は、搬送駆動ローラ35の逆転(太陽歯車94の第2方向回転)に伴い図4に示すように噛合位置に変位して伝達歯車75bを図4の時計回り方向に回転駆動する。また搬送駆動ローラ35の正転(太陽歯車94の第1方向回転)に伴い図2に示すように離間位置に変位する。
【0043】
尚、図2〜図4において歯車71及び伝達歯車75bは外径が同じであるとともに同じ回転中心を中心に回転する為、重なって描かれているが、実際には図5に示すように歯車71は図2の手前側に位置しており、伝達歯車75bは図2の奥側に位置している。即ち、図2において歯車71は歯車97とのみ噛合し、後述する第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96とは噛合していない。また伝達歯車75bは第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96とのみ噛合しており、歯車97とは噛合していない。
【0044】
続いて、ロック手段70について詳説する。このロック手段70の機能は、大略的には伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクを受けると、これに応じて歯車71(回転軸71a)の回転を許容するとともに歯車71を回転させ、第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクの伝達が切断されると(伝達歯車75bが第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない状態になると)、これに応じて歯車71(回転軸71a)をロックするものである。
【0045】
クラッチ部材72は、図5及び図7に示すように歯車71と一体的に形成された回転軸71aを挿通させる穴部72eを備えている。回転軸71aは断面視十字型の形状を成しており、これを挿通させる穴部72eは、この断面形状に沿うように回転軸71aと同様に十字型の形状をなすように形成されている。従ってクラッチ部材72が回転すると、歯車71はクラッチ部材72から回転トルクを受け、クラッチ部材72とともに一体的に回転するようになっている。
【0046】
尚、回転軸71aと穴部72eは、回転軸71aの軸線方向には互いに非拘束の関係となっており、即ちクラッチ部材72が回転軸71aの軸線方向にスライド変位可能に設けられている。
【0047】
このクラッチ部材72には、その外周部にカム溝72bが形成されており、またロック装置8の組み立て状態においてロック部材73と対向する位置には噛み合い歯72aが形成されている(図6も参照)。
【0048】
回転軸71aは、先端部に至る途中までは断面十字形状を成しているが、その先端部は円柱形状に形成されており、ロック部材73には、この回転軸71aの先端部を回転自在に受け入れる穴部73bが形成されている。そしてロック装置8の組み立て状態においてクラッチ部材72に形成された噛み合い歯72aと対向する位置には、噛み合い歯73aが形成されている。尚このロック部材73は、サイドフレーム61に固定状態に設けられる。
【0049】
コイルばね74は歯車71とクラッチ部材72との間に介在し、クラッチ部材72をロック部材73に向けて付勢する。
トルク伝達部材75は、ロック装置8の組み立て状態において内部にクラッチ部材72を収容する円環形状を成すとともに、その外周部に伝達歯車75bを一体的に備えており、伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96と噛合することにより、駆動モータからの回転トルクが伝達されて回転するようになっている。
【0050】
尚、上述したようにクラッチ部材72は回転軸71a(歯車71)と一体的に回転するよう設けられるが、トルク伝達部材75は、クラッチ部材72及び回転軸71a(歯車71)に対しては相対的に一定の回転角度だけ回転可能となっている(後に詳述)。
【0051】
トルク伝達部材75の内周面にはボス75aが2箇所、配置間隔が180°の位相を成すように内周において対向する位置に形成されており、ロック装置8の組み立て状態においてボス75aが、図6において仮想線で示すようにクラッチ部材72に形成されたカム溝72b(ボス75aと同様に2箇所形成されている)に遊挿されるようになっている。
【0052】
カム溝72bは、カム溝内におけるボス75aの周方向への一定量の移動(トルク伝達部材75の一定量の回転)を許容するとともに、ボス75aの、回転軸71aの軸線方向(図6上下方向)への移動を許容する形状を成している。より具体的には、回転軸71aの軸線方向にほぼ垂直な面を成す側壁72c、72cと、これに対して傾斜する斜面72d、72dとを有している。
【0053】
以上のように構成されたロック手段70の動作について以下図7を参照しながら説明する。図7(A)はトルク伝達部材75(伝達歯車75b)に第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクが伝達されていない状態(例えば、第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれもが伝達歯車75bに噛合していない状態)を示している。
【0054】
この状態では、コイルばね74の付勢力によりクラッチ部材72がロック部材73と係合し、即ちクラッチ部材72の噛み合い歯72aとロック部材73の噛み合い歯73aとが噛合する(図6に示す状態)。
【0055】
従ってクラッチ部材72はその回転が規制されたロック状態となり、回転軸71a(歯車71)に外力を加えて回転させようとしても、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとの噛合によって回転軸71a(歯車71)は回転しない。尚このとき、トルク伝達部材75に形成されたボス75aは、図6に示すように斜面72d、72dの交差場所に位置している。
【0056】
この状態から、トルク伝達部材75(伝達歯車75b)に第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクが伝達されると、ボス75aがカム溝72bの斜面72dに押し当たり、コイルばね74の付勢力に抗してカム溝72b(即ちクラッチ部材72)を図6の上方に押し上げる。
【0057】
これにより、図7(B)に示すようにクラッチ部材72の噛み合い歯72aとロック部材73の噛み合い歯73aとの噛合が解除され、即ちクラッチ部材72はその回転が許容されたロック解除状態となる。そして引き続きトルク伝達部材75が回転すると、ボス75aがカム溝72bの斜面72dとの当接位置から側壁72cとの当接位置に移動しているので、当該側壁72cを押すことで、トルク伝達部材75、クラッチ部材72、回転軸71a(歯車71)、のこれらが一体的に回転する。
【0058】
以上説明したロック手段70の動作は、カム溝72bが左右対称に形成されているので、伝達歯車75b(トルク伝達部材75)がいずれの方向に回転しても、図7(A)のロック状態から図7(B)のロック解除状態に切り換わり、そしてまた伝達歯車75bが停止すれば、図7(B)のロック解除状態から図7(A)のロック状態に切り換わる。
【0059】
以上のようにロック手段70は、トルク伝達部材75の回転/停止の切り換えに伴って、カム溝72b内でボス75aが変位することにより、クラッチ部材72(回転軸71a、歯車71)の回転が許容されるロック解除状態と、前記回転がロックされるロック状態と、を切り換えるようになっている。
【0060】
続いて第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96を含めたロック装置8の全体的な動作について説明する。図2において、第1遊星レバー77はサイドフレーム61と対向する側にボス77aを有しており、このボス77aがサイドフレーム61に形成された円弧状のガイド溝62に遊挿されることにより、第1遊星レバー77の揺動可能範囲がガイド溝62によって規制されるようになっている。
【0061】
また同様に、第2遊星レバー78はサイドフレーム61と対向する側にボス78aを有しており、このボス78aがサイドフレーム61に形成された円弧状のガイド溝63に遊挿されることにより、第2遊星レバー78の揺動可能範囲がガイド溝63によって規制されるようになっている。
【0062】
ここで符号γ1は第1遊星レバー77の揺動可能角度を示しており、同様に符号γ2は第2遊星レバー78の揺動可能角度を示している。図から明かなように、本実施形態においてはγ1<γ2に設定されており、これにより第1遊星歯車95が噛合位置と離間位置との間を変位する際の変位量が、第2遊星歯車96が噛合位置と離間位置との間を変位する際の変位量よりも小さくなっている。
【0063】
図2は搬送駆動ローラ35(歯車90)の正転状態を示しており、この状態では第1遊星歯車95がロック手段70の伝達歯車75bを同図矢印方向に回転駆動し、ロック手段70の歯車71が、歯車97すなわち駆動ローラ32を同図矢印方向に回転駆動している。即ちこの状態では、記録用紙Pが上流側から下流側に向かって搬送され得る状態となっている。
【0064】
この状態から、上述した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為に搬送駆動ローラ35(歯車90)が逆転駆動されると、図3に示すように第1遊星歯車95が伝達歯車75bから離れ、伝達歯車75bが第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断状態となる。
【0065】
従ってこれによりロック手段70は、回転軸71a(歯車71)が回転しないようロックするロック状態となる。このとき、駆動ローラ32はロック手段70によりその回転がロックされているが、下流側の搬送駆動ローラ35はひきつづき逆転駆動されるので、記録用紙Pは駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で撓み、用紙先端が搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出され、スキューが除去される。
【0066】
そして図4に示すように第2遊星歯車96が噛合位置に変位して、伝達歯車75bに回転トルクを伝達すれば、上述したようにロック手段70は回転軸71b(歯車71)のロックを解除し、そして回転軸71b(歯車71)に回転トルクを伝達し、駆動ローラ32が逆転駆動される。
【0067】
以上のように第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれもが伝達歯車75bと噛合しない動力切断時間を利用して、ロック手段70による回転軸71b(歯車71、ひいては駆動ローラ32)のロックが行われる。
【0068】
尚、図4に示す状態から再び搬送駆動ローラ35(歯車90)が正転駆動に切り換えられたとき、第1遊星歯車95が噛合位置に戻るまでの変位量は小さく設定されているので、搬送駆動ローラ35の逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに駆動ローラ32の正転駆動を開始することができる。
【0069】
従って駆動ローラ32が停止した状態のまま搬送駆動ローラ35が正転する時間を短縮できるので、記録用紙Pが駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で引っ張られ、駆動ローラ32と記録用紙Pとの間でスリップが生じて記録面にダメージを与えることを防止できる。
【0070】
以下、上記のように構成されたロック装置8の作用効果について説明すると、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う際には、搬送駆動ローラ35の逆転駆動により用紙先端が搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出される。このとき、吐き出された用紙が上流側の駆動ローラ32を逆転させようとしても、駆動ローラ32は確実にロックされている。従って用紙が搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32との間で確実に撓むことになり、スキューが確実に解消される。
【0071】
即ち駆動ローラ32は、正転駆動、逆転駆動いずれも可能であるとともに、必要時において確実に逆転防止(ロック)されることになり、つまりロック装置8は単に回転軸の一方向回転のみ許容するワンウェイクラッチとは異なり、正/逆双方向の回転駆動と、必要時における確実な逆転防止(回転のロック)と、のいずれをも満たすことが可能となる。
【0072】
しかも搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32とで共通の駆動源を利用する構成において、両ローラにより食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う場合には、下流側の搬送駆動ローラ35を所定量逆転させる間において上流側の駆動ローラ32が逆転しないようロックされている必要があるが、その様な要請にも応えることができる。
【0073】
また第1遊星歯車95と第2遊星歯車96の変位量が異なるように設定されており、第1遊星歯車95は速やかに離間位置から噛合位置に変位することができるので、上述の通り搬送駆動ローラ35の逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに駆動ローラ32の正転駆動を開始することができ、記録用紙Pにダメージを与えることを防止できる。
【0074】
尚、本実施形態ではクラッチ部材72とロック部材73との係合部を噛み合い歯により形成し、噛み合い歯72a、73aのそれぞれの歯形は、図8(A)に示すように回転方向Y1に対する圧力角と回転方向Y2に対する圧力角とが、ともに0°に設定されている(図6も参照)。このように噛み合い歯を形成することで、クラッチ部材72をより一層確実にロックすることができる。
【0075】
これを、図8(B)の噛み合い歯72’、73a’のように0°<δ1<90°、0°<δ2<90°(δ1は回転方向Y1に対する圧力角、δ2は回転方向Y2に対する圧力角)に設定すれば、噛み合い時に歯同士が衝突することを極力低減させることができる。
【0076】
また図8(C)の歯72”、73a”のように、一方側の回転方向Y1に対する圧力角δ1を0°<δ1<90°に設定し、他方側の回転方向Y2に対する圧力角δ2をδ2=0°に設定することもできる。この様に構成すれば、一方側の回転方向Y2に対してはクラッチ部材72をより一層確実にロックすることができる。また他方側の回転方向Y1に対しては、クラッチ部材72を外力により無理に回転させようとした際に、所定以上の回転トルクを与えれば歯面が滑り、クラッチ部材72が回転することができる。
【0077】
従って例えば、駆動ローラ32に適用する場合、回転方向Y2を逆転方向に設定すれば、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う際に駆動ローラ32の逆転を確実に防止できるとともに、正転方向(回転方向Y1)には所定以上の回転トルクを与えれば駆動ローラ32は回転するので、紙ジャム発生時などの際に用紙を引き抜きたい場合に、そのような要請に応えることができる。
【0078】
<<3.ロック装置の第2実施形態>>
以下、図9乃至図15を参照しながら本発明の第2実施形態に係るロック装置8’ついて説明する。尚、図9において図2を参照しつつ説明した構成要素には同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略する。
【0079】
ロック装置8’が上述した第1実施形態と主に異なる点は、ロック手段(符号50で示す)の配置位置およびその構成である。図2に示すようにロック手段50へは、平歯車93を介して第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96の回転トルクが伝達される。
【0080】
図中符号55bは、上述した第1実施形態の伝達歯車75bに相当する伝達歯車であり、ロック手段50は上述したロック手段70と同様に、伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクを受けるとこれに応じて回転軸32aに回転トルクを伝達し、当該回転軸32aを回転させる。そして第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクの伝達が切断されると、これに応じて回転軸32aをロックする。
【0081】
このロック手段50は、図10及び図11に示すようにクラッチ部材52と、ロック部材53と、付勢部材としてのコイルばね54と、トルク伝達部材55と、を備えて構成されている。尚、クラッチ部材52、ロック部材53、コイルばね54、トルク伝達部材55、のこれら構成要素は、それぞれ第1実施形態におけるクラッチ部材72、ロック部材73、コイルばね74、トルク伝達部材75、のこれらに相当するものであり、各々の役割は概ね同じである。
【0082】
クラッチ部材52は、駆動ローラ32の回転軸32aを挿通させる穴部が形成されるとともに、回転軸32aに形成されたキー溝32b(図12)を介して回転軸32aに回転トルクを伝達するよう設けられ、即ち回転軸32aと一体的に回転するように設けられる。またキー溝32bにガイドされながら、回転軸32aの軸線方向にスライド変位可能に設けられ、即ち回転軸32aの軸線方向に対しては非拘束状態に設けられる。
【0083】
このクラッチ部材52には、その外周部に、カム溝52bが周方向に延びるように形成されており、またロック手段50の組み立て状態においてロック部材53と対向する位置には噛み合い歯52aが形成されている。
【0084】
ロック部材53は、回転軸32aを挿通させる穴部が形成されるとともに、ロック手段50の組み立て状態においてクラッチ部材52に形成された噛み合い歯52aと対向する位置に、噛み合い歯53aが形成されている。尚このロック部材53は、サイドフレーム61に固定状態に設けられる。
【0085】
コイルばね54はトルク伝達部材55とクラッチ部材52との間に介在し、クラッチ部材52をロック部材53に向けて付勢する。
トルク伝達部材55は、ロック手段50の組み立て状態において内部にコイルばね54及びクラッチ部材52を収容する円筒形状を成すとともに、伝達歯車55bを一体的に備えており、伝達歯車55bが歯車93(図9)と噛合することにより、駆動モータからの回転トルクが伝達されて、回転軸32aを回転軸として回転するように設けられる。
【0086】
尚、上述したようにクラッチ部材52は回転軸32aと一体的に回転するよう設けられるが、ロック部材53及びトルク伝達部材55は、クラッチ部材52とは異なり回転軸32aに対しては相対的に回転可能なように設けられる。
【0087】
トルク伝達部材55の内周面にはボス55aが2箇所、配置間隔が180°の位相を成すように内周において対向する位置に形成されており、ロック手段50の組み立て状態においてボス55aが、クラッチ部材52に形成されたカム溝52b(ボス55aと同様に2箇所形成されている)に遊挿されるようになっている。
【0088】
カム溝52bは、図12及び図13〜図15に示すように、回転軸32aの軸線方向におけるボス55aとの間の相対的な移動を許容する規制解除領域αと、その両側に位置する、前記移動を規制する規制領域βと、を備えている。そしてこれにより、ボス55aが規制解除領域αにいるときは、クラッチ部材52の回転軸32aの軸線方向への移動が許容され、ボス55aが規制領域βにいるときは、クラッチ部材52の前記軸線方向への移動が規制されるようになっている。
【0089】
以上のように構成されたクラッチ装置50の動作について以下図13〜図15を参照しながら説明する。図13はトルク伝達部材55に図13(B)の時計回り方向の回転トルクが伝達されている状態を示しており、この状態では、トルク伝達部材55のボス55aがカム溝52bの規制領域βにあり、ボス55aがカム溝52bの一方側端面52dを押してクラッチ部材52に回転トルクを伝達している。
【0090】
このとき、図13(A)に示すようにボス55aがコイルばね64の付勢力に抗してクラッチ部材52をロック部材53から離間させるので、クラッチ部材52の噛み合い歯52aとロック部材53の噛み合い歯53aとは噛合していない。従ってクラッチ部材52はその回転が許容されたロック解除状態となっており、トルク伝達部材55、クラッチ部材52、回転軸32a、の順に回転トルクが伝達されることにより回転軸32a(駆動ローラ32)が回転する。
【0091】
この状態からトルク伝達部材55の回転方向が図13(B)の反時計回り方向に切り替わると、図14(B)に示すようにボス55aがカム溝52bの規制解除領域αに移動し、ボス55aがクラッチ部材52に回転トルクを伝達しない状態となる。
【0092】
このとき、図14(A)に示すようにボス55aがクラッチ部材52の変位を許容するので、コイルばね54の付勢力によりクラッチ部材52がロック部材53と係合し、即ちクラッチ部材52の噛み合い歯52aとロック部材53の噛み合い歯53aとが噛合する。従ってクラッチ部材52はその回転が規制されたロック状態となり、回転軸32a(駆動ローラ32)に外力を加えて回転させようとしても、噛み合い歯52aと噛み合い歯53aとの噛合によって回転軸32a(駆動ローラ32)は回転しない。
【0093】
この状態からトルク伝達部材55が更に図14(B)の反時計回り方向に回転すると、図15(B)に示すようにボス55aがカム溝52bの規制領域βに移動し、ボス55aがカム溝52bの他方側端面52cを押してクラッチ部材52に回転トルクを伝達するようになる。
【0094】
このとき、図15(A)に示すようにボス55aがコイルばね64の付勢力に抗してクラッチ部材52をロック部材53から離間させるので、クラッチ部材52の噛み合い歯52aとロック部材53の噛み合い歯53aとの噛合が解除される。従ってクラッチ部材52はその回転が許容されたロック解除状態に移行し、トルク伝達部材55、クラッチ部材52、回転軸32a、の順に回転トルクが伝達され、回転軸32a(駆動ローラ32)が回転する。
【0095】
尚、この状態から再度トルク伝達部材55の回転方向を切り換えると、上記とは逆の順に各構成要素が動き、即ち図15に示すロック解除状態から、図14に示すロック状態、そして図13に示すロック解除状態へと切り換わる。
【0096】
また、図13或いは図15のロック解除状態からトルク伝達部材55が回転を停止すると、図12に示すようにカム溝52bの規制領域βにおけるカム面52eがボス55aを規制解除領域αの側へ案内するような曲面により形成されているので、クラッチ部材52a(回転軸32a)が僅かに回転した後に図14に示したロック状態に切り換わることになる。
【0097】
以上のようにロック手段50は、トルク伝達部材55の回転方向の切り換え、或いは回転/停止の切り換えに伴って、カム溝52b内でボス55bが変位することにより、クラッチ部材52(回転軸32a)の回転が許容されるロック解除状態と、クラッチ部材52(回転軸32a)がロックされるロック状態と、が切り換わるようになっている。
【0098】
従ってロック手段50によれば、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行うべく、搬送駆動ローラ35が正転駆動から逆転駆動へと切り換えられると、駆動ローラ32の回転を確実にロックするので、用紙が搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32との間で確実に撓むことになり、スキューが確実に解消される。
【0099】
また第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれもが平歯車93と噛合しない期間(第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96の変位量)を調整することで、ロック状態の継続期間を調整できることに加えて、カム溝52bの形状を調整することにより、ロック状態の継続期間を調整できる。具体的には、規制解除領域αの長さを調整することにより、トルク伝達部材55の回転方向切り換わり時におけるロック状態の継続期間を調整することができ、駆動ローラ32をロックする期間の調整をより一層柔軟に行うことができる。
【0100】
<<4.スキュー取り制御時の逆転駆動量>>
続いて図16乃至図19を参照しながら、上述した食い付き吐き出し方式スキュー取り制御の一実施形態について、上述した本発明の第1実施形態に係るロック装置8を用いる場合について詳説する。
【0101】
ここで、図16乃至図18は、図2乃至図4に示した本発明の第1実施形態に係るロック装置8の正面図であり、図2乃至図4とは異なり図中に用紙P、アシストローラ33、搬送従動ローラ36、のこれらを破線で示している。尚、符号9は搬送駆動ローラ35を駆動する駆動モータを、符号10は駆動モータ9を制御する制御部を示している。また図19(A)、(B)はロック手段70を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図である(図7に示したロック手段70をカム溝72bの正面側から見た図)。
【0102】
上述したように、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御は、第1送りローラ(搬送駆動ローラ35)と、その上流側の第2送りローラ(駆動ローラ32)と、を利用して行われる。このスキュー取り制御は、駆動モータ9を正転駆動して搬送駆動ローラ35及びその上流の駆動ローラ32を正転させ、図16に示すように用紙先端を搬送駆動ローラ35より下流側へ所定量頭出しする第1ステップと、駆動モータ9を逆転駆動に切り換えることにより駆動ローラ32を停止させつつ搬送駆動ローラ35を逆転させ、図17に示すように用紙先端を搬送駆動ローラ32の上流側に吐き出す第2ステップと、を含む。
【0103】
第2ステップにおいて搬送駆動ローラ35が逆転駆動された際、図17に示すように第1遊星歯車95が伝達歯車75bから離れ、伝達歯車75bが第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断状態となる。これによりロック手段70は駆動ローラ32を回転しないようロックするが、下流側の搬送駆動ローラ35はひきつづき逆転駆動される。従って用紙Pは、本来であれば駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で撓み、用紙先端が搬送駆動ローラ35に当接して倣い、スキューが除去される。
【0104】
しかしながら用紙Pが厚紙などのコシの強いものである場合には、上記第2ステップを実行しても図17に示すように駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で用紙Pが撓まず、駆動ローラ32を回しながらそのまま上流側に戻ってしまう場合がある。尚、用紙Pが厚紙などのようにコシが強い場合、上記第2ステップにおいて駆動モータ9を正転から逆転へ切り替えると、図10(B)においてボス75aが同図左方向に動こうとするが、駆動ローラ32が用紙Pにより回される結果カム溝72bも同時に同図左方向に動いてしまい、この結果ロック状態に切り換わらない。このため、ロック手段70は駆動ローラ32が用紙Pによって回されてしまうことを許容することとなる。
【0105】
そして上記のような状態、即ち駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で用紙Pが撓まず、且つ用紙先端が搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36との間に当接した状態のまま、用紙Pを下流側へ搬送するために駆動モータ9を再び正転駆動に切り換えると、当該用紙P先端は搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36とにより直ちにニップされて下流側への送り力を受ける。
【0106】
しかしながら駆動モータ9(搬送駆動ローラ35)を正転駆動に切り換えても、第1遊星歯車95が伝達歯車75bと噛合する噛合位置にまで変位する時間を要し、即ち上流側の駆動ローラ32の正転駆動が開始されるまでに時間を要することから、用紙Pは先行して正転を開始した搬送駆動ローラ35により引っ張られることになる。そしてこのような状態で用紙Pが搬送されると、搬送精度の低下を招くことになる。
【0107】
尚、本実施形態に係る歯車装置8においては、上述の通り第1遊星歯車95が離間位置から噛合位置に変位する際の変位量が、第2遊星歯車96の同変位量よりも小さく設定されているが、第1遊星歯車95が噛合位置に変位するまでの間、搬送駆動ローラ35が或る程度先行して正転してしまうことになる。
【0108】
そこで本実施形態に係るスキュー取り制御では、上記第2ステップにおける駆動モータ9(搬送駆動ローラ35)の逆転駆動を、第2遊星歯車96が図18に示すように離間位置から噛合位置に変位し、更に搬送駆動ローラ35及び駆動ローラ32の双方が逆転して用紙先端が搬送駆動ローラ35より上流側に所定量戻されるまで実行する。
【0109】
これにより上記第2ステップに次いで駆動モータ9(搬送駆動ローラ35)を正転駆動に切り換えた際に、上述のように用紙先端が直ちに搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36との間にニップされることがなく、搬送駆動ローラ35の先行した正転動作によって当該搬送駆動ローラ35とその上流の駆動ローラ32との間で用紙Pにテンションが加わることを防止できる。
【0110】
尚、駆動モータ9を逆転駆動から正転駆動に切り換えるとき、ロック手段70においては図19(A)に示すロック状態から、図19(B)に示すロック解除状態へと切り換わる。このとき、ボス75aは駆動モータ9の正転により図19(B)の矢印A1で示す方向に動くが、このとき仮に用紙Pが下流側の搬送駆動ローラ35により既に下流側への送り力を受けていると、ロック解除後にカム溝72b(クラッチ部材72)も矢印A2で示す方向に動いてしまう。この為、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとが十分に離間することができず、両者の接触音(カチカチ音)が生じてしまう。
【0111】
しかしながら上述のように、駆動モータ9を逆転駆動から正転駆動に切り換えるとき、用紙P先端が搬送駆動ローラ35から所定量上流側に位置しているので、ロック解除後にカム溝72b(クラッチ部材72)が図19(B)において矢印A2で示す方向に動いてしまうことを防止でき、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとが十分に離間することができないことに伴う両者の接触音(カチカチ音)の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係るプリンタの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図5】ロック手段の分解斜視図。
【図6】ロック手段の要部拡大斜視図。
【図7】(A)、(B)はロック手段の断面図。
【図8】(A)〜(C)は噛み合い歯の各種実施形態を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係るロック装置の正面図。
【図10】ロック手段の分解斜視図。
【図11】ロック手段の分解斜視図。
【図12】回転軸及びクラッチ部材の斜視図。
【図13】(A)はロック手段を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図、( B)は回転軸の軸線方向に直交する面で切断した断面図。
【図14】(A)はロック手段を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図、( B)は回転軸の軸線方向に直交する面で切断した断面図。
【図15】(A)はロック手段を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図、( B)は回転軸の軸線方向に直交する面で切断した断面図。
【図16】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図17】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図18】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図19】(A)、(B)はロック手段の断面図。
【符号の説明】
【0113】
1 インクジェットプリンタ、3 給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、6 排出手段、8、8’ ロック装置、9 駆動モータ、10 制御部、
11 用紙カセット、12 分離部材、16 ピックアップローラ、17 揺動部材、18 揺動軸、20 従動ローラ、21 分離手段、22 分離ローラ、23 駆動ローラ、25 第1中間送り部、26 駆動ローラ、27 アシストローラ、29 従動ローラ、31 第2中間送り部、32 駆動ローラ、33 アシストローラ、35 搬送駆動ローラ、36 搬送従動ローラ、37 紙案内上、39 紙案内前、40 キャリッジ、41 キャリッジガイド軸、42 記録ヘッド、44 排出駆動ローラ、45 排出従動ローラ、
46 反転ローラ47、48 アシストローラ、
61 サイドフレーム、62、63 ガイド溝、70 ロック手段、71 歯車、71a
回転軸、72 クラッチ部材、72a 噛み合い歯、72b カム溝、72c 側壁、72d 斜面、73 ロック部材、73a 噛み合い歯、73b 穴部、74 コイルばね、75 トルク伝達部材、75a ボス、75b 伝達歯車、77 第1遊星レバー、77a ボス、78 第2遊星レバー、78a ボス、90 歯車、94 太陽歯車、95 第1遊星歯車、96 第2遊星歯車、97 歯車、P 記録用紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸のロック/ロック解除の切り換えを行うロック装置に関する。また本発明は、当該ロック装置を備えた、ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置において、用紙のスキュー(斜行)を解消させる為の制御方法として、特許文献1に示されるような食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御がある。
【0003】
このスキュー取り制御は、下流側ローラと上流側ローラとを利用し、用紙先端を下流側ローラに食い付かせて所定量下流側に送り出した後、上流側ローラを停止させた状態で下流側ローラを逆転させ、用紙先端を下流側ローラの上流側に吐き出す。これにより用紙は上流側ローラと下流側ローラとの間で撓ませられるが、その復帰習性により用紙先端が下流側ローラに倣い、結果的にスキューが矯正される。
【0004】
しかしながら厚紙などの剛性の高い(コシの強い)用紙に対して上記スキュー取り制御を行う場合、用紙先端を下流側ローラから吐き出す際に上流側ローラを回転させようとする力が大きくなり、場合によっては上流側ローラを逆転させてしまうことによって、スキューが良好に解消されない虞がある。
【0005】
この様な不具合を解消するためには、上流側ローラが逆転しないように、上流側ローラとこれを駆動するモータとの間に、例えば特許文献2に示されるような一方向回転のみを許容するクラッチを介在させて、上流側ローラが逆転方向には回転しないようにロックする必要がある。
【特許文献1】特開2007−84224号公報
【特許文献2】特開平10−331941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら用紙の両面に記録を行う記録装置などのように、用紙を上流側に向けて戻すためにローラを逆転駆動したい場合がある。従ってこの様な場合においては上記のように一方向回転のみを許容するクラッチをそのまま適用することができず、従って正/逆双方向の回転駆動と、必要時における確実な逆転防止(回転のロック)と、のいずれをも満たすことのできるロック装置の開発が望まれていた。
【0007】
また上流側ローラと下流側ローラとで共通の駆動モータを利用する場合、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為には、下流側ローラを所定量逆転させる間において上流側ローラが逆転しないようロックされていなければならず、この様な動作条件を満たすことのできるロック装置であることも望まれる。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、回転軸の正/逆双方向の回転駆動を可能としながらも、必要に応じて回転軸をロックすることのできるロック装置を得ることにあり、更には駆動モータの回転方向を切り換える際に、所定期間回転軸のロック状態を介在させることのできるロック装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る回転軸のロック装置は、動力源から回転トルクを受ける伝達歯車を備え、前記伝達歯車が前記動力源から回転トルクを受けるとこれに応じて回転軸に回転トルクを伝達し、前記動力源からの回転トルクの伝達が切断されるとこれに応じて前記回転軸をロックするロック手段と、太陽歯車と噛合するとともに当該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、当該遊星運動によって前記伝達歯車と噛合する噛合位置と前記伝達歯車から離間する離間位置との間を変位する第1遊星歯車及び第2遊星歯車と、を備え、前記第1遊星歯車は、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を回転駆動し、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、前記第2遊星歯車は、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を前記第1遊星歯車による回転駆動方向とは逆方向に回転駆動し、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、前記太陽歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、前記伝達歯車が前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、前記ロック手段により前記回転軸をロックすることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、太陽歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、伝達歯車が第1遊星歯車及び第2遊星歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、ロック手段により回転軸をロックするので、回転軸の正/逆双方向の回転駆動を可能としつつ、回転方向切り換え時には回転軸をロックすることができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る回転軸のロック装置は、第1の態様に係るロック装置において、前記第1遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量と、前記第2遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量が異なることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、第1遊星歯車の変位量と第2遊星歯車の変位量とが異なるので、太陽歯車の正転方向から逆転方向への回転切り換え時と、逆転方向から正転方向への回転切り換え時とで動力切断時間、即ち回転軸をロックする時間を異ならせることができ、使用用途に応じた適切な装置構成を実現することができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る回転軸のロック装置は、第1のまたは第2の態様に係るロック装置において、前記ロック手段が、前記回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の軸線方向に変位可能に設けられるクラッチ部材と、前記クラッチ部材と係合して前記クラッチ部材の回転を規制する、固定状態に設けられるロック部材と、前記クラッチ部材を前記ロック部材に向けて付勢する付勢部材と、前記伝達歯車を一体的に備えるとともに前記クラッチ部材の外周部に設けられたカム溝内に遊挿されるボスを備え、当該ボスを介して前記クラッチ部材に回転トルクを伝達するトルク伝達部材と、を備えて構成され、前記トルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴って前記カム溝内で前記ボスが変位することにより、前記ボスが前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記ロック部材から離間させるロック解除状態と、前記ボスが前記クラッチ部材の変位を許容して前記クラッチ部材を前記ロック部材に係合させるロック状態と、が切り換わるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、クラッチ手段が、回転軸のトルクを伝達するトルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴ってカム溝内でボスが変位することにより、クラッチ部材(即ち回転軸)に回転トルクを伝達するロック解除状態と、クラッチ部材(回転軸)をロックするロック状態と、が切り換わる構成であるので、前記クラッチ手段を少ない部品点数で低コストに構成することができる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、被記録媒体の搬送経路において前記記録手段の上流側に設けられ、被記録媒体を前記記録手段の側へと搬送する第1送りローラと、被記録媒体の搬送経路において前記第1送りローラの上流側に設けられ、被記録媒体を前記第1送りローラの側へと搬送する第2送りローラと、を備えた記録装置であって、前記第1送りローラ及び前記第2送りローラは、共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成され、前記駆動モータから前記第2送りローラへの回転トルクの伝達経路に、第1から第3の態様のいずれかに係るロック装置を備え、当該ロック装置により前記第2送りローラの回転軸をロック可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第1送りローラの上流側に位置する第2送りローラが、上記第1から第3の態様のいずれかに係るロック装置によって、正/逆双方向の回転駆動を可能としながらも、回転方向切り換え時にはロックされるので、被記録媒体を上流側及び下流側の双方に搬送可能としながらも、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う場合に第2送りローラが逆転することを防止でき、被記録媒体のスキューを適切に除去することができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る記録装置は、第4の態様において、前記太陽歯車は、前記駆動モータからの回転トルクを前記第1送りローラを介して受けるよう構成され、前記第1送りローラが被記録媒体を下流側に搬送する正転時に、前記第1遊星歯車を介して、前記第2送りローラが被記録媒体を下流側へ搬送する正転方向の回転トルクが当該第2送りローラに伝達されるよう構成され、前記第1遊星歯車は、前記第1送りローラの逆転から正転への切り換えに伴い前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量が、前記第1送りローラの正転から逆転への切り換えに伴い前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量より小さく設定されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、第1送りローラが逆転駆動から正転駆動に切り換えられたとき、第1遊星歯車が噛合位置に戻るまでの変位量が、第2遊星歯車が離間位置から噛合位置へ変位する際の変位量より小さく設定されるので、第1送りローラの逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに第2送りローラの正転駆動を開始することができる。
【0019】
即ち、第2送りローラを停止させた状態で第1送りローラを逆転駆動することにより、第1送りローラと第2送りローラを用いて食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行った後、第1送りローラを再び正転駆動に切り換える際に、第2送りローラが停止した状態のまま第1送りローラが正転する時間を短縮できる。従って被記録媒体が第2送りローラと第1送りローラとの間で引っ張られ、被記録媒体にダメージを与えることを防止できる。
本発明の第6の態様に係る記録装置は、第4のまたは第5の態様において、前記駆動モータの正転により前記第1送りローラ及び前記第2送りローラが正転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラより下流側へ所定量頭出しされる第1ステップと、前記駆動モータを正転から逆転に切り換えることにより、前記ロック手段が前記第2送りローラの回転軸をロックした状態で前記第1送りローラが逆転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラの上流側に吐き出される第2ステップと、を含むスキュー取り制御を実行可能に構成され、前記第2ステップにおける前記駆動モータの逆転は、前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置に変位し、更に前記第1送りローラ及び前記第2送りローラの双方が逆転して被記録媒体の先端が前記第1送りローラより上流側に所定量戻されるまで実行されることを特徴とする。
所謂食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御において、被記録媒体の先端を第1送りローラの上流側に吐き出す第2ステップに次いで駆動モータを正転駆動に切り換えると、第1遊星歯車が離間位置から噛合位置に切り換わるまで第1送りローラが先行して正転する。
従って上記第2ステップ終了時点で被記録媒体が第1送りローラと係合していると、駆動モータを正転駆動に切り換えた際に被記録媒体が直ちに第1送りローラから下流側への送り力を受け、そして第1送りローラのみが先行して正転することで被記録媒体には第1送りローラと第2送りローラとの間でテンションが加わる。その結果、搬送精度が低下して記録品質を低下させる虞がある。
しかし本態様によれば、上記第2ステップ終了時点で被記録媒体先端は第1送りローラより上流側に所定量戻されており、即ち第1送りローラと第2送りローラの双方に掛かっていないので、上記第2ステップに次いで駆動モータを正転駆動に切り換えた際に上記のように被記録媒体にテンションが加わることがなく、記録品質の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1乃至図15を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の用紙搬送経路を示す側断面図、図2〜図4は本発明の第1実施形態に係るロック装置8の正面図、図5はロック手段70の分解斜視図、図6はロック手段70の要部拡大斜視図(一部断面図)、図7(A)、(B)はロック手段70を回転軸71aの軸線方向に平行な面で切断した断面図、図8(A)〜(C)は噛み合い歯の各種実施形態を示す図である。
【0021】
また、図9は本発明の第2実施形態に係るロック装置8’の正面図、図10及び図11は第2実施形態に係るロック手段50の分解斜視図、図12は回転軸32a及びクラッチ部材52の斜視図、図13〜図15の(A)はロック手段50を回転軸32aの軸線方向に平行な面で切断した断面図、図13〜図15の(B)はロック手段50を回転軸32aの軸線方向に直交する面で切断した断面図である。
【0022】
<<1.記録装置の構成>>
以下、図1を参照しつつプリンタ1の全体構成について概説する。尚、図1はプリンタ1の用紙搬送経路上に配置されるローラを図示する為に、ほぼ全てのローラを同一面上に描いているが、その奥行き方向(図1の紙面表裏方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。
【0023】
プリンタ1は、装置底部に給送装置2を備え、当該給送装置2から被記録媒体としての記録用紙Pを1枚ずつ給送し、記録手段4においてインクジェット記録を行い、装置前方側(図1において左側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出する構成を備えている。またプリンタ1は装置後部に両面ユニット7を着脱自在に備えており、最初に記録の行われた用紙Pの第1面に対し反対側の第2面が記録ヘッド42と対向するよう湾曲反転させ、これにより用紙Pの両面に記録が実行可能となっている。
【0024】
以下、各構成要素について更に説明する。給送装置2は、用紙カセット11と、ピックアップローラ16と、ガイドローラ20と、分離手段21と、を備えている。複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な用紙カセット11は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されており、図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラ16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられ、用紙カセット11に収容された用紙と接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを用紙カセット11から送り出す。
【0025】
用紙カセット11に収容された用紙先端と対向する位置には分離部材12が設けられており、給送されるべき最上位の用紙Pの先端が分離部材12に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの第1段階分離が行われる。分離部材12の下流側には自由回転可能なガイドローラ20が設けられ、更にその下流側には、分離ローラ22と駆動ローラ23とを備えて構成された、用紙Pの第2段階分離を行う分離手段21が設けられている。
【0026】
分離手段21の下流側には、図示を省略するモータにより回転駆動される駆動ローラ26と、駆動ローラ26との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ27と、を備えて構成された第1中間送り部25が設けられており、この第1中間送り部25により、用紙Pが更に下流側へと送られる。尚、符号29は、用紙Pが湾曲反転経路を通過する際の(特に用紙後端が通過する際の)通紙負荷を軽減する従動ローラを示している。
【0027】
従動ローラ29の下流側には図示を省略するモータにより回転駆動される駆動ローラ32と、駆動ローラ32との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ33と、を備えて構成された第2中間送り部31が設けられており、この第2中間送り部31により、用紙Pが更に下流側へと送られる。
【0028】
第2中間送り部31の下流側には、記録手段4が配置されている。記録手段4は、搬送手段5と、記録ヘッド42と、紙案内前39と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、図示を省略するモータによって回転駆動される搬送駆動ローラ35と、該搬送駆動ローラ35に圧接して従動回転するよう紙案内上37に軸支される搬送従動ローラ36とを備えて構成され、この搬送手段5により用紙Pが記録ヘッド42と対向する位置に向けて精密送りされる。
【0029】
尚、給送装置2から給送された記録用紙Pのスキューは、第1送りローラと、その上流側の第2送りローラとを利用した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御により除去される。具体的には、記録用紙Pの先端を搬送駆動ローラ35(第1送りローラ)と搬送従動ローラ36との間に食い付かせて所定量下流側に送り出した後、上流側の駆動ローラ32(第2送りローラ)を停止させた状態で搬送駆動ローラ35を逆転させ、用紙先端を搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出す。これにより用紙先端が搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36とのニップ点に倣い、スキューが矯正される。
【0030】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示を省略するモータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。記録ヘッド42と対向する位置には紙案内前39が設けられ、当該紙案内前39によって、用紙Pと記録ヘッド42との距離が規定されるようになっている。
【0031】
紙案内前39の下流側に設けられた排出手段6は、図示を省略するモータによって回転駆動される排出駆動ローラ44と、当該排出駆動ローラ44に接して従動回転する排出従動ローラ45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0032】
両面ユニット7は、大径の反転ローラ46と、当該反転ローラ46との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストーラ47、48を備えている。用紙カセット11から繰り出されて第1面に記録の行われた用紙Pは、第2中間送り部31、搬送手段5、排出手段6、のこれらによる逆送り動作によって、第1面に記録が実行された際に用紙後端となっていた側が先端となって、反転ローラ46とアシストローラ48との間に誘い込まれる。
【0033】
反転ローラ46は図示を省略するモータにより図1の反時計回り方向に回転駆動されており、反転ローラ46とアシストローラ48との間に誘い込まれた用紙は、反転ローラ46とアシストローラ47との間を通って再び第2中間送り部31に到達し、記録手段4に導かれ、以降同様に記録が実行される。
【0034】
尚、以上説明した用紙搬送経路中に設けられるピックアップローラ16、駆動ローラ23、26、32、搬送駆動ローラ35、排出駆動ローラ44、反転ローラ46、のこれら回転駆動されるローラは、全て共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成されている。この中で第2中間送り部31を構成する駆動ローラ32と駆動モータとの間に、本発明に係るロック装置が設けられ、必要時に駆動ローラ32の回転がロックされることとなる。
【0035】
<<2.ロック装置の第1実施形態>>
以下、図2乃至図8を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。図2において符号61は用紙搬送方向に平行な面を形成するサイドフレーム(プリンタ1の基体を構成する)を示しており、ロック装置8はこのサイドフレーム61に設けられる。
【0036】
図2において符号90は搬送駆動ローラ35の軸端に設けられる歯車を示しており、この歯車90からロック装置8を構成する太陽歯車94へと回転トルクが伝達され、そしてロック装置8を構成するロック手段70から、歯車97へと回転トルクが伝達される。この歯車97は、上述した駆動ローラ32の回転軸32aの軸端に取り付けられており、ロック装置8は、この回転軸32aの回転を許容するロック解除状態と、回転を規制するロック状態と、を切り換える。
【0037】
尚、図2の歯車97から更に左側には、更に図示を省略する歯車輪列が設けられており、歯車97を介して搬送駆動ローラ35(駆動モータ)の回転トルクが反転装置7(反転ローラ46)へと更に伝達されるようになっている。
【0038】
以下、ロック装置8の構成について更に詳説する。ロック装置8は、図2及び図5に示すように太陽歯車94と、第1遊星歯車95と、第1遊星レバー77と、第2遊星歯車96と、第2遊星レバー78と、ロック手段70と、を備えている。またロック手段70は、歯車71と、クラッチ部材72と、ロック部材73と、付勢部材としてのコイルばね74と、トルク伝達部材75と、を備えている。
【0039】
第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、太陽歯車94の回転中心を中心にして揺動可能な第1遊星レバー77及び第2遊星レバー78にそれぞれ回転可能に軸支されており、それぞれ太陽歯車94と噛合している。そして太陽歯車94の回転に伴って第1遊星レバー77及び第2遊星レバー78が揺動動作を行うことにより、太陽歯車94の周囲を遊星運動するように設けられている。
【0040】
そしてこの遊星運動によって、それぞれが伝達歯車75bと噛合する噛合位置と、伝達歯車75bから離間する離間位置との間を変位可能となっている。図2は第1遊星歯車95が噛合位置にあり、第2遊星歯車96が離間位置にある様子を示しており、図4はその逆に第1遊星歯車95が離間位置にあり、第2遊星歯車96が噛合位置にある様子を示している。この様に第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、いずれか一方が噛合位置にあるときは他方が離間位置に位置するようになっている。
【0041】
尚、本実施形態においては便宜上、搬送駆動ローラ35(歯車90)は、図2の時計回り方向に回転するとき(用紙Pを下流側へ搬送するとき)を正転とし、図2の反時計回り方向に回転するとき(用紙Pを上流側へ搬送するとき)を逆転とする。
【0042】
そして第1遊星歯車95は、搬送駆動ローラ35の正転(太陽歯車94の第1方向回転)に伴い図2に示すように噛合位置に変位し、伝達歯車75bを図2の反時計回り方向に回転駆動する。また搬送駆動ローラ35の逆転(太陽歯車94の第2方向回転)に伴い図4に示すように離間位置に変位する。その逆に第2遊星歯車96は、搬送駆動ローラ35の逆転(太陽歯車94の第2方向回転)に伴い図4に示すように噛合位置に変位して伝達歯車75bを図4の時計回り方向に回転駆動する。また搬送駆動ローラ35の正転(太陽歯車94の第1方向回転)に伴い図2に示すように離間位置に変位する。
【0043】
尚、図2〜図4において歯車71及び伝達歯車75bは外径が同じであるとともに同じ回転中心を中心に回転する為、重なって描かれているが、実際には図5に示すように歯車71は図2の手前側に位置しており、伝達歯車75bは図2の奥側に位置している。即ち、図2において歯車71は歯車97とのみ噛合し、後述する第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96とは噛合していない。また伝達歯車75bは第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96とのみ噛合しており、歯車97とは噛合していない。
【0044】
続いて、ロック手段70について詳説する。このロック手段70の機能は、大略的には伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクを受けると、これに応じて歯車71(回転軸71a)の回転を許容するとともに歯車71を回転させ、第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクの伝達が切断されると(伝達歯車75bが第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない状態になると)、これに応じて歯車71(回転軸71a)をロックするものである。
【0045】
クラッチ部材72は、図5及び図7に示すように歯車71と一体的に形成された回転軸71aを挿通させる穴部72eを備えている。回転軸71aは断面視十字型の形状を成しており、これを挿通させる穴部72eは、この断面形状に沿うように回転軸71aと同様に十字型の形状をなすように形成されている。従ってクラッチ部材72が回転すると、歯車71はクラッチ部材72から回転トルクを受け、クラッチ部材72とともに一体的に回転するようになっている。
【0046】
尚、回転軸71aと穴部72eは、回転軸71aの軸線方向には互いに非拘束の関係となっており、即ちクラッチ部材72が回転軸71aの軸線方向にスライド変位可能に設けられている。
【0047】
このクラッチ部材72には、その外周部にカム溝72bが形成されており、またロック装置8の組み立て状態においてロック部材73と対向する位置には噛み合い歯72aが形成されている(図6も参照)。
【0048】
回転軸71aは、先端部に至る途中までは断面十字形状を成しているが、その先端部は円柱形状に形成されており、ロック部材73には、この回転軸71aの先端部を回転自在に受け入れる穴部73bが形成されている。そしてロック装置8の組み立て状態においてクラッチ部材72に形成された噛み合い歯72aと対向する位置には、噛み合い歯73aが形成されている。尚このロック部材73は、サイドフレーム61に固定状態に設けられる。
【0049】
コイルばね74は歯車71とクラッチ部材72との間に介在し、クラッチ部材72をロック部材73に向けて付勢する。
トルク伝達部材75は、ロック装置8の組み立て状態において内部にクラッチ部材72を収容する円環形状を成すとともに、その外周部に伝達歯車75bを一体的に備えており、伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96と噛合することにより、駆動モータからの回転トルクが伝達されて回転するようになっている。
【0050】
尚、上述したようにクラッチ部材72は回転軸71a(歯車71)と一体的に回転するよう設けられるが、トルク伝達部材75は、クラッチ部材72及び回転軸71a(歯車71)に対しては相対的に一定の回転角度だけ回転可能となっている(後に詳述)。
【0051】
トルク伝達部材75の内周面にはボス75aが2箇所、配置間隔が180°の位相を成すように内周において対向する位置に形成されており、ロック装置8の組み立て状態においてボス75aが、図6において仮想線で示すようにクラッチ部材72に形成されたカム溝72b(ボス75aと同様に2箇所形成されている)に遊挿されるようになっている。
【0052】
カム溝72bは、カム溝内におけるボス75aの周方向への一定量の移動(トルク伝達部材75の一定量の回転)を許容するとともに、ボス75aの、回転軸71aの軸線方向(図6上下方向)への移動を許容する形状を成している。より具体的には、回転軸71aの軸線方向にほぼ垂直な面を成す側壁72c、72cと、これに対して傾斜する斜面72d、72dとを有している。
【0053】
以上のように構成されたロック手段70の動作について以下図7を参照しながら説明する。図7(A)はトルク伝達部材75(伝達歯車75b)に第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクが伝達されていない状態(例えば、第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれもが伝達歯車75bに噛合していない状態)を示している。
【0054】
この状態では、コイルばね74の付勢力によりクラッチ部材72がロック部材73と係合し、即ちクラッチ部材72の噛み合い歯72aとロック部材73の噛み合い歯73aとが噛合する(図6に示す状態)。
【0055】
従ってクラッチ部材72はその回転が規制されたロック状態となり、回転軸71a(歯車71)に外力を加えて回転させようとしても、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとの噛合によって回転軸71a(歯車71)は回転しない。尚このとき、トルク伝達部材75に形成されたボス75aは、図6に示すように斜面72d、72dの交差場所に位置している。
【0056】
この状態から、トルク伝達部材75(伝達歯車75b)に第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクが伝達されると、ボス75aがカム溝72bの斜面72dに押し当たり、コイルばね74の付勢力に抗してカム溝72b(即ちクラッチ部材72)を図6の上方に押し上げる。
【0057】
これにより、図7(B)に示すようにクラッチ部材72の噛み合い歯72aとロック部材73の噛み合い歯73aとの噛合が解除され、即ちクラッチ部材72はその回転が許容されたロック解除状態となる。そして引き続きトルク伝達部材75が回転すると、ボス75aがカム溝72bの斜面72dとの当接位置から側壁72cとの当接位置に移動しているので、当該側壁72cを押すことで、トルク伝達部材75、クラッチ部材72、回転軸71a(歯車71)、のこれらが一体的に回転する。
【0058】
以上説明したロック手段70の動作は、カム溝72bが左右対称に形成されているので、伝達歯車75b(トルク伝達部材75)がいずれの方向に回転しても、図7(A)のロック状態から図7(B)のロック解除状態に切り換わり、そしてまた伝達歯車75bが停止すれば、図7(B)のロック解除状態から図7(A)のロック状態に切り換わる。
【0059】
以上のようにロック手段70は、トルク伝達部材75の回転/停止の切り換えに伴って、カム溝72b内でボス75aが変位することにより、クラッチ部材72(回転軸71a、歯車71)の回転が許容されるロック解除状態と、前記回転がロックされるロック状態と、を切り換えるようになっている。
【0060】
続いて第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96を含めたロック装置8の全体的な動作について説明する。図2において、第1遊星レバー77はサイドフレーム61と対向する側にボス77aを有しており、このボス77aがサイドフレーム61に形成された円弧状のガイド溝62に遊挿されることにより、第1遊星レバー77の揺動可能範囲がガイド溝62によって規制されるようになっている。
【0061】
また同様に、第2遊星レバー78はサイドフレーム61と対向する側にボス78aを有しており、このボス78aがサイドフレーム61に形成された円弧状のガイド溝63に遊挿されることにより、第2遊星レバー78の揺動可能範囲がガイド溝63によって規制されるようになっている。
【0062】
ここで符号γ1は第1遊星レバー77の揺動可能角度を示しており、同様に符号γ2は第2遊星レバー78の揺動可能角度を示している。図から明かなように、本実施形態においてはγ1<γ2に設定されており、これにより第1遊星歯車95が噛合位置と離間位置との間を変位する際の変位量が、第2遊星歯車96が噛合位置と離間位置との間を変位する際の変位量よりも小さくなっている。
【0063】
図2は搬送駆動ローラ35(歯車90)の正転状態を示しており、この状態では第1遊星歯車95がロック手段70の伝達歯車75bを同図矢印方向に回転駆動し、ロック手段70の歯車71が、歯車97すなわち駆動ローラ32を同図矢印方向に回転駆動している。即ちこの状態では、記録用紙Pが上流側から下流側に向かって搬送され得る状態となっている。
【0064】
この状態から、上述した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為に搬送駆動ローラ35(歯車90)が逆転駆動されると、図3に示すように第1遊星歯車95が伝達歯車75bから離れ、伝達歯車75bが第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断状態となる。
【0065】
従ってこれによりロック手段70は、回転軸71a(歯車71)が回転しないようロックするロック状態となる。このとき、駆動ローラ32はロック手段70によりその回転がロックされているが、下流側の搬送駆動ローラ35はひきつづき逆転駆動されるので、記録用紙Pは駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で撓み、用紙先端が搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出され、スキューが除去される。
【0066】
そして図4に示すように第2遊星歯車96が噛合位置に変位して、伝達歯車75bに回転トルクを伝達すれば、上述したようにロック手段70は回転軸71b(歯車71)のロックを解除し、そして回転軸71b(歯車71)に回転トルクを伝達し、駆動ローラ32が逆転駆動される。
【0067】
以上のように第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれもが伝達歯車75bと噛合しない動力切断時間を利用して、ロック手段70による回転軸71b(歯車71、ひいては駆動ローラ32)のロックが行われる。
【0068】
尚、図4に示す状態から再び搬送駆動ローラ35(歯車90)が正転駆動に切り換えられたとき、第1遊星歯車95が噛合位置に戻るまでの変位量は小さく設定されているので、搬送駆動ローラ35の逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに駆動ローラ32の正転駆動を開始することができる。
【0069】
従って駆動ローラ32が停止した状態のまま搬送駆動ローラ35が正転する時間を短縮できるので、記録用紙Pが駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で引っ張られ、駆動ローラ32と記録用紙Pとの間でスリップが生じて記録面にダメージを与えることを防止できる。
【0070】
以下、上記のように構成されたロック装置8の作用効果について説明すると、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う際には、搬送駆動ローラ35の逆転駆動により用紙先端が搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出される。このとき、吐き出された用紙が上流側の駆動ローラ32を逆転させようとしても、駆動ローラ32は確実にロックされている。従って用紙が搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32との間で確実に撓むことになり、スキューが確実に解消される。
【0071】
即ち駆動ローラ32は、正転駆動、逆転駆動いずれも可能であるとともに、必要時において確実に逆転防止(ロック)されることになり、つまりロック装置8は単に回転軸の一方向回転のみ許容するワンウェイクラッチとは異なり、正/逆双方向の回転駆動と、必要時における確実な逆転防止(回転のロック)と、のいずれをも満たすことが可能となる。
【0072】
しかも搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32とで共通の駆動源を利用する構成において、両ローラにより食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う場合には、下流側の搬送駆動ローラ35を所定量逆転させる間において上流側の駆動ローラ32が逆転しないようロックされている必要があるが、その様な要請にも応えることができる。
【0073】
また第1遊星歯車95と第2遊星歯車96の変位量が異なるように設定されており、第1遊星歯車95は速やかに離間位置から噛合位置に変位することができるので、上述の通り搬送駆動ローラ35の逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに駆動ローラ32の正転駆動を開始することができ、記録用紙Pにダメージを与えることを防止できる。
【0074】
尚、本実施形態ではクラッチ部材72とロック部材73との係合部を噛み合い歯により形成し、噛み合い歯72a、73aのそれぞれの歯形は、図8(A)に示すように回転方向Y1に対する圧力角と回転方向Y2に対する圧力角とが、ともに0°に設定されている(図6も参照)。このように噛み合い歯を形成することで、クラッチ部材72をより一層確実にロックすることができる。
【0075】
これを、図8(B)の噛み合い歯72’、73a’のように0°<δ1<90°、0°<δ2<90°(δ1は回転方向Y1に対する圧力角、δ2は回転方向Y2に対する圧力角)に設定すれば、噛み合い時に歯同士が衝突することを極力低減させることができる。
【0076】
また図8(C)の歯72”、73a”のように、一方側の回転方向Y1に対する圧力角δ1を0°<δ1<90°に設定し、他方側の回転方向Y2に対する圧力角δ2をδ2=0°に設定することもできる。この様に構成すれば、一方側の回転方向Y2に対してはクラッチ部材72をより一層確実にロックすることができる。また他方側の回転方向Y1に対しては、クラッチ部材72を外力により無理に回転させようとした際に、所定以上の回転トルクを与えれば歯面が滑り、クラッチ部材72が回転することができる。
【0077】
従って例えば、駆動ローラ32に適用する場合、回転方向Y2を逆転方向に設定すれば、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う際に駆動ローラ32の逆転を確実に防止できるとともに、正転方向(回転方向Y1)には所定以上の回転トルクを与えれば駆動ローラ32は回転するので、紙ジャム発生時などの際に用紙を引き抜きたい場合に、そのような要請に応えることができる。
【0078】
<<3.ロック装置の第2実施形態>>
以下、図9乃至図15を参照しながら本発明の第2実施形態に係るロック装置8’ついて説明する。尚、図9において図2を参照しつつ説明した構成要素には同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略する。
【0079】
ロック装置8’が上述した第1実施形態と主に異なる点は、ロック手段(符号50で示す)の配置位置およびその構成である。図2に示すようにロック手段50へは、平歯車93を介して第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96の回転トルクが伝達される。
【0080】
図中符号55bは、上述した第1実施形態の伝達歯車75bに相当する伝達歯車であり、ロック手段50は上述したロック手段70と同様に、伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクを受けるとこれに応じて回転軸32aに回転トルクを伝達し、当該回転軸32aを回転させる。そして第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクの伝達が切断されると、これに応じて回転軸32aをロックする。
【0081】
このロック手段50は、図10及び図11に示すようにクラッチ部材52と、ロック部材53と、付勢部材としてのコイルばね54と、トルク伝達部材55と、を備えて構成されている。尚、クラッチ部材52、ロック部材53、コイルばね54、トルク伝達部材55、のこれら構成要素は、それぞれ第1実施形態におけるクラッチ部材72、ロック部材73、コイルばね74、トルク伝達部材75、のこれらに相当するものであり、各々の役割は概ね同じである。
【0082】
クラッチ部材52は、駆動ローラ32の回転軸32aを挿通させる穴部が形成されるとともに、回転軸32aに形成されたキー溝32b(図12)を介して回転軸32aに回転トルクを伝達するよう設けられ、即ち回転軸32aと一体的に回転するように設けられる。またキー溝32bにガイドされながら、回転軸32aの軸線方向にスライド変位可能に設けられ、即ち回転軸32aの軸線方向に対しては非拘束状態に設けられる。
【0083】
このクラッチ部材52には、その外周部に、カム溝52bが周方向に延びるように形成されており、またロック手段50の組み立て状態においてロック部材53と対向する位置には噛み合い歯52aが形成されている。
【0084】
ロック部材53は、回転軸32aを挿通させる穴部が形成されるとともに、ロック手段50の組み立て状態においてクラッチ部材52に形成された噛み合い歯52aと対向する位置に、噛み合い歯53aが形成されている。尚このロック部材53は、サイドフレーム61に固定状態に設けられる。
【0085】
コイルばね54はトルク伝達部材55とクラッチ部材52との間に介在し、クラッチ部材52をロック部材53に向けて付勢する。
トルク伝達部材55は、ロック手段50の組み立て状態において内部にコイルばね54及びクラッチ部材52を収容する円筒形状を成すとともに、伝達歯車55bを一体的に備えており、伝達歯車55bが歯車93(図9)と噛合することにより、駆動モータからの回転トルクが伝達されて、回転軸32aを回転軸として回転するように設けられる。
【0086】
尚、上述したようにクラッチ部材52は回転軸32aと一体的に回転するよう設けられるが、ロック部材53及びトルク伝達部材55は、クラッチ部材52とは異なり回転軸32aに対しては相対的に回転可能なように設けられる。
【0087】
トルク伝達部材55の内周面にはボス55aが2箇所、配置間隔が180°の位相を成すように内周において対向する位置に形成されており、ロック手段50の組み立て状態においてボス55aが、クラッチ部材52に形成されたカム溝52b(ボス55aと同様に2箇所形成されている)に遊挿されるようになっている。
【0088】
カム溝52bは、図12及び図13〜図15に示すように、回転軸32aの軸線方向におけるボス55aとの間の相対的な移動を許容する規制解除領域αと、その両側に位置する、前記移動を規制する規制領域βと、を備えている。そしてこれにより、ボス55aが規制解除領域αにいるときは、クラッチ部材52の回転軸32aの軸線方向への移動が許容され、ボス55aが規制領域βにいるときは、クラッチ部材52の前記軸線方向への移動が規制されるようになっている。
【0089】
以上のように構成されたクラッチ装置50の動作について以下図13〜図15を参照しながら説明する。図13はトルク伝達部材55に図13(B)の時計回り方向の回転トルクが伝達されている状態を示しており、この状態では、トルク伝達部材55のボス55aがカム溝52bの規制領域βにあり、ボス55aがカム溝52bの一方側端面52dを押してクラッチ部材52に回転トルクを伝達している。
【0090】
このとき、図13(A)に示すようにボス55aがコイルばね64の付勢力に抗してクラッチ部材52をロック部材53から離間させるので、クラッチ部材52の噛み合い歯52aとロック部材53の噛み合い歯53aとは噛合していない。従ってクラッチ部材52はその回転が許容されたロック解除状態となっており、トルク伝達部材55、クラッチ部材52、回転軸32a、の順に回転トルクが伝達されることにより回転軸32a(駆動ローラ32)が回転する。
【0091】
この状態からトルク伝達部材55の回転方向が図13(B)の反時計回り方向に切り替わると、図14(B)に示すようにボス55aがカム溝52bの規制解除領域αに移動し、ボス55aがクラッチ部材52に回転トルクを伝達しない状態となる。
【0092】
このとき、図14(A)に示すようにボス55aがクラッチ部材52の変位を許容するので、コイルばね54の付勢力によりクラッチ部材52がロック部材53と係合し、即ちクラッチ部材52の噛み合い歯52aとロック部材53の噛み合い歯53aとが噛合する。従ってクラッチ部材52はその回転が規制されたロック状態となり、回転軸32a(駆動ローラ32)に外力を加えて回転させようとしても、噛み合い歯52aと噛み合い歯53aとの噛合によって回転軸32a(駆動ローラ32)は回転しない。
【0093】
この状態からトルク伝達部材55が更に図14(B)の反時計回り方向に回転すると、図15(B)に示すようにボス55aがカム溝52bの規制領域βに移動し、ボス55aがカム溝52bの他方側端面52cを押してクラッチ部材52に回転トルクを伝達するようになる。
【0094】
このとき、図15(A)に示すようにボス55aがコイルばね64の付勢力に抗してクラッチ部材52をロック部材53から離間させるので、クラッチ部材52の噛み合い歯52aとロック部材53の噛み合い歯53aとの噛合が解除される。従ってクラッチ部材52はその回転が許容されたロック解除状態に移行し、トルク伝達部材55、クラッチ部材52、回転軸32a、の順に回転トルクが伝達され、回転軸32a(駆動ローラ32)が回転する。
【0095】
尚、この状態から再度トルク伝達部材55の回転方向を切り換えると、上記とは逆の順に各構成要素が動き、即ち図15に示すロック解除状態から、図14に示すロック状態、そして図13に示すロック解除状態へと切り換わる。
【0096】
また、図13或いは図15のロック解除状態からトルク伝達部材55が回転を停止すると、図12に示すようにカム溝52bの規制領域βにおけるカム面52eがボス55aを規制解除領域αの側へ案内するような曲面により形成されているので、クラッチ部材52a(回転軸32a)が僅かに回転した後に図14に示したロック状態に切り換わることになる。
【0097】
以上のようにロック手段50は、トルク伝達部材55の回転方向の切り換え、或いは回転/停止の切り換えに伴って、カム溝52b内でボス55bが変位することにより、クラッチ部材52(回転軸32a)の回転が許容されるロック解除状態と、クラッチ部材52(回転軸32a)がロックされるロック状態と、が切り換わるようになっている。
【0098】
従ってロック手段50によれば、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行うべく、搬送駆動ローラ35が正転駆動から逆転駆動へと切り換えられると、駆動ローラ32の回転を確実にロックするので、用紙が搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32との間で確実に撓むことになり、スキューが確実に解消される。
【0099】
また第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれもが平歯車93と噛合しない期間(第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96の変位量)を調整することで、ロック状態の継続期間を調整できることに加えて、カム溝52bの形状を調整することにより、ロック状態の継続期間を調整できる。具体的には、規制解除領域αの長さを調整することにより、トルク伝達部材55の回転方向切り換わり時におけるロック状態の継続期間を調整することができ、駆動ローラ32をロックする期間の調整をより一層柔軟に行うことができる。
【0100】
<<4.スキュー取り制御時の逆転駆動量>>
続いて図16乃至図19を参照しながら、上述した食い付き吐き出し方式スキュー取り制御の一実施形態について、上述した本発明の第1実施形態に係るロック装置8を用いる場合について詳説する。
【0101】
ここで、図16乃至図18は、図2乃至図4に示した本発明の第1実施形態に係るロック装置8の正面図であり、図2乃至図4とは異なり図中に用紙P、アシストローラ33、搬送従動ローラ36、のこれらを破線で示している。尚、符号9は搬送駆動ローラ35を駆動する駆動モータを、符号10は駆動モータ9を制御する制御部を示している。また図19(A)、(B)はロック手段70を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図である(図7に示したロック手段70をカム溝72bの正面側から見た図)。
【0102】
上述したように、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御は、第1送りローラ(搬送駆動ローラ35)と、その上流側の第2送りローラ(駆動ローラ32)と、を利用して行われる。このスキュー取り制御は、駆動モータ9を正転駆動して搬送駆動ローラ35及びその上流の駆動ローラ32を正転させ、図16に示すように用紙先端を搬送駆動ローラ35より下流側へ所定量頭出しする第1ステップと、駆動モータ9を逆転駆動に切り換えることにより駆動ローラ32を停止させつつ搬送駆動ローラ35を逆転させ、図17に示すように用紙先端を搬送駆動ローラ32の上流側に吐き出す第2ステップと、を含む。
【0103】
第2ステップにおいて搬送駆動ローラ35が逆転駆動された際、図17に示すように第1遊星歯車95が伝達歯車75bから離れ、伝達歯車75bが第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断状態となる。これによりロック手段70は駆動ローラ32を回転しないようロックするが、下流側の搬送駆動ローラ35はひきつづき逆転駆動される。従って用紙Pは、本来であれば駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で撓み、用紙先端が搬送駆動ローラ35に当接して倣い、スキューが除去される。
【0104】
しかしながら用紙Pが厚紙などのコシの強いものである場合には、上記第2ステップを実行しても図17に示すように駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で用紙Pが撓まず、駆動ローラ32を回しながらそのまま上流側に戻ってしまう場合がある。尚、用紙Pが厚紙などのようにコシが強い場合、上記第2ステップにおいて駆動モータ9を正転から逆転へ切り替えると、図10(B)においてボス75aが同図左方向に動こうとするが、駆動ローラ32が用紙Pにより回される結果カム溝72bも同時に同図左方向に動いてしまい、この結果ロック状態に切り換わらない。このため、ロック手段70は駆動ローラ32が用紙Pによって回されてしまうことを許容することとなる。
【0105】
そして上記のような状態、即ち駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で用紙Pが撓まず、且つ用紙先端が搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36との間に当接した状態のまま、用紙Pを下流側へ搬送するために駆動モータ9を再び正転駆動に切り換えると、当該用紙P先端は搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36とにより直ちにニップされて下流側への送り力を受ける。
【0106】
しかしながら駆動モータ9(搬送駆動ローラ35)を正転駆動に切り換えても、第1遊星歯車95が伝達歯車75bと噛合する噛合位置にまで変位する時間を要し、即ち上流側の駆動ローラ32の正転駆動が開始されるまでに時間を要することから、用紙Pは先行して正転を開始した搬送駆動ローラ35により引っ張られることになる。そしてこのような状態で用紙Pが搬送されると、搬送精度の低下を招くことになる。
【0107】
尚、本実施形態に係る歯車装置8においては、上述の通り第1遊星歯車95が離間位置から噛合位置に変位する際の変位量が、第2遊星歯車96の同変位量よりも小さく設定されているが、第1遊星歯車95が噛合位置に変位するまでの間、搬送駆動ローラ35が或る程度先行して正転してしまうことになる。
【0108】
そこで本実施形態に係るスキュー取り制御では、上記第2ステップにおける駆動モータ9(搬送駆動ローラ35)の逆転駆動を、第2遊星歯車96が図18に示すように離間位置から噛合位置に変位し、更に搬送駆動ローラ35及び駆動ローラ32の双方が逆転して用紙先端が搬送駆動ローラ35より上流側に所定量戻されるまで実行する。
【0109】
これにより上記第2ステップに次いで駆動モータ9(搬送駆動ローラ35)を正転駆動に切り換えた際に、上述のように用紙先端が直ちに搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36との間にニップされることがなく、搬送駆動ローラ35の先行した正転動作によって当該搬送駆動ローラ35とその上流の駆動ローラ32との間で用紙Pにテンションが加わることを防止できる。
【0110】
尚、駆動モータ9を逆転駆動から正転駆動に切り換えるとき、ロック手段70においては図19(A)に示すロック状態から、図19(B)に示すロック解除状態へと切り換わる。このとき、ボス75aは駆動モータ9の正転により図19(B)の矢印A1で示す方向に動くが、このとき仮に用紙Pが下流側の搬送駆動ローラ35により既に下流側への送り力を受けていると、ロック解除後にカム溝72b(クラッチ部材72)も矢印A2で示す方向に動いてしまう。この為、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとが十分に離間することができず、両者の接触音(カチカチ音)が生じてしまう。
【0111】
しかしながら上述のように、駆動モータ9を逆転駆動から正転駆動に切り換えるとき、用紙P先端が搬送駆動ローラ35から所定量上流側に位置しているので、ロック解除後にカム溝72b(クラッチ部材72)が図19(B)において矢印A2で示す方向に動いてしまうことを防止でき、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとが十分に離間することができないことに伴う両者の接触音(カチカチ音)の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係るプリンタの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図5】ロック手段の分解斜視図。
【図6】ロック手段の要部拡大斜視図。
【図7】(A)、(B)はロック手段の断面図。
【図8】(A)〜(C)は噛み合い歯の各種実施形態を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係るロック装置の正面図。
【図10】ロック手段の分解斜視図。
【図11】ロック手段の分解斜視図。
【図12】回転軸及びクラッチ部材の斜視図。
【図13】(A)はロック手段を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図、( B)は回転軸の軸線方向に直交する面で切断した断面図。
【図14】(A)はロック手段を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図、( B)は回転軸の軸線方向に直交する面で切断した断面図。
【図15】(A)はロック手段を回転軸の軸線方向に平行な面で切断した断面図、( B)は回転軸の軸線方向に直交する面で切断した断面図。
【図16】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図17】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図18】本発明の第1実施形態に係るロック装置の正面図。
【図19】(A)、(B)はロック手段の断面図。
【符号の説明】
【0113】
1 インクジェットプリンタ、3 給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、6 排出手段、8、8’ ロック装置、9 駆動モータ、10 制御部、
11 用紙カセット、12 分離部材、16 ピックアップローラ、17 揺動部材、18 揺動軸、20 従動ローラ、21 分離手段、22 分離ローラ、23 駆動ローラ、25 第1中間送り部、26 駆動ローラ、27 アシストローラ、29 従動ローラ、31 第2中間送り部、32 駆動ローラ、33 アシストローラ、35 搬送駆動ローラ、36 搬送従動ローラ、37 紙案内上、39 紙案内前、40 キャリッジ、41 キャリッジガイド軸、42 記録ヘッド、44 排出駆動ローラ、45 排出従動ローラ、
46 反転ローラ47、48 アシストローラ、
61 サイドフレーム、62、63 ガイド溝、70 ロック手段、71 歯車、71a
回転軸、72 クラッチ部材、72a 噛み合い歯、72b カム溝、72c 側壁、72d 斜面、73 ロック部材、73a 噛み合い歯、73b 穴部、74 コイルばね、75 トルク伝達部材、75a ボス、75b 伝達歯車、77 第1遊星レバー、77a ボス、78 第2遊星レバー、78a ボス、90 歯車、94 太陽歯車、95 第1遊星歯車、96 第2遊星歯車、97 歯車、P 記録用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源から回転トルクを受ける伝達歯車を備え、前記伝達歯車が前記動力源から回転トルクを受けるとこれに応じて回転軸に回転トルクを伝達し、前記動力源からの回転トルクの伝達が切断されるとこれに応じて前記回転軸をロックするロック手段と、
太陽歯車と噛合するとともに当該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、当該遊星運動によって前記伝達歯車と噛合する噛合位置と前記伝達歯車から離間する離間位置との間を変位する第1遊星歯車及び第2遊星歯車と、を備え、
前記第1遊星歯車は、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を回転駆動し、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、
前記第2遊星歯車は、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を前記第1遊星歯車による回転駆動方向とは逆方向に回転駆動し、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、
前記太陽歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、前記伝達歯車が前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、前記ロック手段により前記回転軸をロックする、
ことを特徴とする回転軸のロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロック装置において、前記第1遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量と、前記第2遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量が異なることを特徴とする回転軸のロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロック装置において、前記ロック手段が、前記回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の軸線方向に変位可能に設けられるクラッチ部材と、
前記クラッチ部材と係合して前記クラッチ部材の回転を規制する、固定状態に設けられるロック部材と、
前記クラッチ部材を前記ロック部材に向けて付勢する付勢部材と、
前記伝達歯車を一体的に備えるとともに前記クラッチ部材の外周部に設けられたカム溝内に遊挿されるボスを備え、当該ボスを介して前記クラッチ部材に回転トルクを伝達するトルク伝達部材と、を備えて構成され、
前記トルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴って前記カム溝内で前記ボスが変位することにより、前記ボスが前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記ロック部材から離間させるロック解除状態と、前記ボスが前記クラッチ部材の変位を許容して前記クラッチ部材を前記ロック部材に係合させるロック状態と、が切り換わるように構成されている、
ことを特徴とする回転軸のロック装置。
【請求項4】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
被記録媒体の搬送経路において前記記録手段の上流側に設けられ、被記録媒体を前記記録手段の側へと搬送する第1送りローラと、
被記録媒体の搬送経路において前記第1送りローラの上流側に設けられ、被記録媒体を前記第1送りローラの側へと搬送する第2送りローラと、を備えた記録装置であって、
前記第1送りローラ及び前記第2送りローラは、共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成され、
前記駆動モータから前記第2送りローラへの回転トルクの伝達経路に、請求項1から3のいずれか1項に記載のロック装置を備え、当該ロック装置により前記第2送りローラの回転軸をロック可能に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、前記太陽歯車は、前記駆動モータからの回転トルクを前記第1送りローラを介して受けるよう構成され、
前記第1送りローラが被記録媒体を下流側に搬送する正転時に、前記第1遊星歯車を介して、前記第2送りローラが被記録媒体を下流側へ搬送する正転方向の回転トルクが当該第2送りローラに伝達されるよう構成され、
前記第1遊星歯車は、前記第1送りローラの逆転から正転への切り換えに伴い前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量が、前記第1送りローラの正転から逆転への切り換えに伴い前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量より小さく設定されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の記録装置において、前記駆動モータの正転により前記第1送りローラ及び前記第2送りローラが正転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラより下流側へ所定量頭出しされる第1ステップと、
前記駆動モータを正転から逆転に切り換えることにより、前記ロック手段が前記第2送りローラの回転軸をロックした状態で前記第1送りローラが逆転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラの上流側に吐き出される第2ステップと、を含むスキュー取り制御を実行可能に構成され、
前記第2ステップにおける前記駆動モータの逆転は、前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置に変位し、更に前記第1送りローラ及び前記第2送りローラの双方が逆転して被記録媒体の先端が前記第1送りローラより上流側に所定量戻されるまで実行される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項1】
動力源から回転トルクを受ける伝達歯車を備え、前記伝達歯車が前記動力源から回転トルクを受けるとこれに応じて回転軸に回転トルクを伝達し、前記動力源からの回転トルクの伝達が切断されるとこれに応じて前記回転軸をロックするロック手段と、
太陽歯車と噛合するとともに当該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、当該遊星運動によって前記伝達歯車と噛合する噛合位置と前記伝達歯車から離間する離間位置との間を変位する第1遊星歯車及び第2遊星歯車と、を備え、
前記第1遊星歯車は、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を回転駆動し、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、
前記第2遊星歯車は、前記太陽歯車の第2方向回転に伴い前記噛合位置に変位して前記伝達歯車を前記第1遊星歯車による回転駆動方向とは逆方向に回転駆動し、前記太陽歯車の第1方向回転に伴い前記離間位置に変位するよう設けられ、
前記太陽歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、前記伝達歯車が前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、前記ロック手段により前記回転軸をロックする、
ことを特徴とする回転軸のロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロック装置において、前記第1遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量と、前記第2遊星歯車が前記噛合位置と前記離間位置とを変位する際の変位量が異なることを特徴とする回転軸のロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロック装置において、前記ロック手段が、前記回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の軸線方向に変位可能に設けられるクラッチ部材と、
前記クラッチ部材と係合して前記クラッチ部材の回転を規制する、固定状態に設けられるロック部材と、
前記クラッチ部材を前記ロック部材に向けて付勢する付勢部材と、
前記伝達歯車を一体的に備えるとともに前記クラッチ部材の外周部に設けられたカム溝内に遊挿されるボスを備え、当該ボスを介して前記クラッチ部材に回転トルクを伝達するトルク伝達部材と、を備えて構成され、
前記トルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴って前記カム溝内で前記ボスが変位することにより、前記ボスが前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記ロック部材から離間させるロック解除状態と、前記ボスが前記クラッチ部材の変位を許容して前記クラッチ部材を前記ロック部材に係合させるロック状態と、が切り換わるように構成されている、
ことを特徴とする回転軸のロック装置。
【請求項4】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
被記録媒体の搬送経路において前記記録手段の上流側に設けられ、被記録媒体を前記記録手段の側へと搬送する第1送りローラと、
被記録媒体の搬送経路において前記第1送りローラの上流側に設けられ、被記録媒体を前記第1送りローラの側へと搬送する第2送りローラと、を備えた記録装置であって、
前記第1送りローラ及び前記第2送りローラは、共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成され、
前記駆動モータから前記第2送りローラへの回転トルクの伝達経路に、請求項1から3のいずれか1項に記載のロック装置を備え、当該ロック装置により前記第2送りローラの回転軸をロック可能に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、前記太陽歯車は、前記駆動モータからの回転トルクを前記第1送りローラを介して受けるよう構成され、
前記第1送りローラが被記録媒体を下流側に搬送する正転時に、前記第1遊星歯車を介して、前記第2送りローラが被記録媒体を下流側へ搬送する正転方向の回転トルクが当該第2送りローラに伝達されるよう構成され、
前記第1遊星歯車は、前記第1送りローラの逆転から正転への切り換えに伴い前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量が、前記第1送りローラの正転から逆転への切り換えに伴い前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置へ変位する際の変位量より小さく設定されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の記録装置において、前記駆動モータの正転により前記第1送りローラ及び前記第2送りローラが正転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラより下流側へ所定量頭出しされる第1ステップと、
前記駆動モータを正転から逆転に切り換えることにより、前記ロック手段が前記第2送りローラの回転軸をロックした状態で前記第1送りローラが逆転し、被記録媒体の先端が前記第1送りローラの上流側に吐き出される第2ステップと、を含むスキュー取り制御を実行可能に構成され、
前記第2ステップにおける前記駆動モータの逆転は、前記第2遊星歯車が前記離間位置から前記噛合位置に変位し、更に前記第1送りローラ及び前記第2送りローラの双方が逆転して被記録媒体の先端が前記第1送りローラより上流側に所定量戻されるまで実行される、
ことを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−293795(P2009−293795A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212187(P2008−212187)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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