説明

回転軸対称曲面の加工方法、回転軸対称曲面加工装置

【課題】軸非対称誤差のない高精度な軸対称非球面形状を短時間で加工することが可能な回転軸対称曲面加工技術を提供する。
【解決手段】Z軸テーブル11に搭載され、回転するC軸12に加工対象物50を保持させ、X軸テーブル15上に搭載されたW軸14に支持された加工工具13によって軸対称非球面形状の加工を行う加工機10において、X軸テーブル15に搭載された機上計測器20にて、加工後の軸対称非球面形状の測定を行い、Z軸方向における前記理想形状との誤差dzの分布を与える関数f(x,θ)を求め、本来の軸対称非球面形状を定義するg(x)をもちいて、z=g(x)−f(x,θ)にて生成された加工プログラムを用いて補正加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸対称曲面の加工技術に関し、たとえば、軸対称非球面形状光学素子及び光学素子金型の軸非対称誤差に対する補正加工等に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年生産される光学素子などの超精密部品は更なる高精度な形状精度が要求されている。特に、軸対称非球面形状光学素子及び金型において、従来は断面形状にて形状評価を行ってきたが、加工機の特性などにより発生する軸非対称誤差についても性能劣化を起こす主要因として対策が求められている。
【0003】
従来技術として、特許文献1によれば、(1)軸対称非球面形状の加工を行う、(2)加工機上で軸上の計測を行う、(3)誤差データから芯ずれ量、工具径の誤差量を解析する、(4)誤差量を補正する加工プログラムを作成し補正加工を行う、という工程を経て高精度な形状の加工面を得ようとしている。
【0004】
また、特許文献2によれば、(1)金型を軸対称形状に製作する、(2)成型加工を行う、(3)成形形状から軸非対称形状誤差を算出する、(4)軸非対称形状誤差を自由曲面式に近似する、(5)軸対称形状と軸非対称誤差の自由曲面近似式からフライカット用補正加工プログラムを作成する、(6)フライカットにて補正加工を行う、という工程を経て高精度な形状の加工面を得ようとしている。
【特許文献1】特開平3−104536号公報
【特許文献2】特開2005−104145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術には、以下のような技術的課題がある。以下、従来技術の問題点を図12、図13、図14および図15を用いて説明する。
図12は軸対称非球面の計測状態を示す概念図である。図13は理想非球面における誤差量の分布を示す線図である。図14は、加工後の非球面における誤差量の分布を示す線図である。図15は軸対称非球面の誤差量分布を示す三次元(3D)グラフである。
【0006】
上述の特許文献1の技術では、図12に示す様に軸上のみの計測を行い、軸上計測で表れる誤差量のみの補正加工を行うが、図13に示す様な理想的な対称誤差である場合はほとんど無く、通常は図14に示すように誤差が軸非対称となる。この理由は、加工機の主軸回転の偏芯等の加工機特性に由来する。この軸対称非球面形状の誤差量をXY平面上に
3次元グラフで表すと図15の様になる。この誤差量は特許文献1の技術にて補正加工することは困難である。
【0007】
特許文献2の技術では、非軸対称で発生する誤差を補正加工するためには、計測原点及び計測軸方向と加工原点と加工軸方向とを厳密に合わせる必要がある。加工機及び計測装置からの金型の着脱時のずれが生じた場合には所望する形状とは異なった形状を加工する事となる。特許文献2では、加工機及び計測装置へ金型の着脱が必要となり厳密な合わせ込みが困難である。また、旋削に対してラスタスキャンによるフライカットの場合は加工時間が長くなる欠点がある。
【0008】
本発明の目的は、加工対象物を加工装置から取り外す事無く加工装置の特性等によって発生する軸非対称誤差を補正することが可能な回転軸対称曲面加工技術を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、軸非対称誤差のない高精度な軸対称非球面形状を短時間で加工することが可能な回転軸対称曲面加工技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、被加工物の回転と、加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位とを組み合わせることで、前記被加工物に回転軸対称曲面を形成する第1工程と、
前記加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位を制御する座標空間内で、前記回転軸対称曲面を計測し、前記回転軸対称曲面の理想形状からの誤差の分布を得る第2工程と、
前記誤差の分布を打ち消すように前記加工工具の軌跡を制御して、前記回転軸対称曲面を補正加工する第3工程と、
を含む回転軸対称曲面の加工方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点に記載の回転軸対称曲面の加工方法において、
前記第1工程では、前記理想形状に基づいて生成された加工プログラムに基づいて前記回転軸対称曲面の加工を行い、
前記第2工程では、前記回転平面内での前記被加工物の回転角θと、前記被加工物の回転軸Cを通り前記回転平面に平行なX軸方向における変位xとに基づいて、前記回転平面に直交するZ軸方向における前記理想形状との誤差dzの分布を与える関数f(x,θ)を求め、前記X軸上での前記理想形状のZ軸方向の成分を与える関数g(x)との差分に基づいて、前記誤差を打ち消すための補正加工量を求め、
前記第3工程では、前記誤差の分布を反映した加工プログラムに基づいて前記回転軸対称曲面を補正する回転軸対称曲面の加工方法を提供する。
【0012】
本発明の第3の観点は、被加工物を回転させるC軸と、
前記C軸に平行なZ軸方向に前記被加工物を変位させるZ軸と、
前記Z軸に平行な方向に加工工具を変位させるW軸と、
前記W軸に直交する方向に前記加工工具を変位させるX軸と、
前記C軸による前記被加工物の回転に同期して、前記Z軸、前記W軸および前記X軸の少なくとも一つを用いた前記加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位を制御することで、前記被加工物に回転軸対称曲面を形成する加工制御手段と、
前記加工工具とともに前記X軸に支持され、前記加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位を制御する座標空間内で、前記回転軸対称曲面を計測する計測手段と、
前記計測手段から得られた計測結果から前記Z軸方向における、前記回転軸対称曲面と理想形状との誤差の分布を算出し、前記加工制御手段を制御して前記誤差を補正するための補正加工を行わせる補正プログラムを生成するプログラミング手段と、
を含む回転軸対称曲面加工装置を提供する。
【0013】
本発明の第4の観点は、第3の観点に記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記プログラミング手段は、前記C軸の回り前記被加工物の回転角θと、前記X軸方向における変位xとに基づいて、前記Z軸方向における前記理想形状との誤差dzの分布を与える関数f(x,θ)を求め、前記X軸上でのZ軸方向の前記理想形状の成分zを与える関数g(x)との差分に基づいて、前記補正プログラムを生成する回転軸対称曲面加工装置を提供する。
【0014】
本発明の第5の観点は、第3の観点に記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記計測手段は、前記Z軸方向に変位し、先端部に接触子が固定された測定軸と、前記測定軸を前記被加工物に接近する方向に付勢する付勢手段と、前記Z軸方向における前記測定軸の変位を計測するスケールと、を含む回転軸対称曲面加工装置を提供する。
【0015】
本発明の第6の観点は、第3の観点に記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記加工工具は切削工具である回転軸対称曲面加工装置を提供する。
本発明の第7の観点は、第3の観点に記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記加工工具は研削工具である回転軸対称曲面加工装置を提供する。
【0016】
本発明の第8の観点は、第3の観点に記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記加工制御手段は、数値制御装置である回転軸対称曲面加工装置を提供する。
上記した本発明は、一例として、以下のように作用する。
【0017】
(1)軸対称非球面形状の加工を行う。
(2)加工工具と共にX軸上に配置された機上計測器等の測定手段にて、X,Z,Cの
各軸の位置を検出しながら軸対称非球面の形状をC軸を回転させながらX軸上を走査して
、機上計測器により面形状の計測を行う。
【0018】
(3)計測を行った軸対称非球面形状と理想形状との差分(dz)に対し、次式(式1)の近似を行う。ただし、X,θの点列的なデータ群を回帰させることで、(式1)に示す自由曲面多項式に近似させる。ここで、(式1)において、nは近似自由曲面次数である。一般的に7次または8次の自由曲面多項式として近似される。C_ijは、多項式の各次数における定数である。また、xは、X軸方向の位置(この場合、C軸を中心とする半径位置)、θは、C軸の回りの回転角である。
【0019】
【数1】

(4)軸対称非球面形状に対して(式1)の補正を行う(式2)に従った補正加工プログラムを作成する。
【0020】
【数2】

ここで、Z=g(x)は軸対称非球面形状定義関数である。
(5)作成した補正加工プログラムを使用して、計測加工を行う。
【0021】
この発明によれば、加工対象物を加工機から取り外す事無くアスなどの軸非対称形状誤差を補正して加工することが出来、高精度な面形状を得る事ができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加工対象物を加工装置から取り外す事無く加工装置の特性等によって発生する軸非対称誤差を補正することが可能となる。
また、軸非対称誤差のない高精度な軸対称非球面形状を短時間で加工することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
第1実施の形態の構成を図1、図2、図3、図4および図5A、図5Bによって説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施の形態である回転軸対称曲面加工方法を実施する回転軸対称曲面加工装置を構成する加工機の構成の一例を示す斜視図である。図2は、本実施の形態の回転軸対称曲面加工装置の全体構成の概念図である。図3は、本実施の形態の回転軸対称曲面加工装置を構成する機上計測器の構成の一例を示す概念図である。図4は本実施の形態の加工機における加工状態の一例を示す平面図である。図5Aは、本実施の形態の機上計測器における計測動作の一例を示す正面図、図5Bは、本実施の形態の機上計測器における計測動作の一例を示す平面図である。
【0025】
図2に例示されるように、本実施の形態の回転軸対称曲面加工装置100は、加工機10、計測手段としての機上計測器20、加工制御手段としてのNC(数値制御)装置30およびプログラミング手段としての解析/プログラミング装置40を含んでいる。
【0026】
図1に例示されるように、本実施の形態の加工機10は、Z軸テーブル11、C軸12、加工工具13、W軸14、X軸テーブル15、および機上計測器20を含んでいる。
加工機10の直動軸はXZの左手座標系で構成されている。X、Z、C、Wの各軸はN
C装置30により同期制御する事ができる。
【0027】
加工対象物50はC軸12に図示されていない取り付け治具により取り付けられている。C軸12はNC装置30によりZ軸を中心として回転制御が可能な回転軸である。また、C軸12はZ軸テーブル11上に設置されている。
【0028】
加工工具13はZ軸と平行に直動するW軸14上に設置されている。W軸14はNC装置30により直線変位を制御する事ができる。W軸14はX軸テーブル15上に設置され
ている。機上計測器20は、W軸14と共通に、X軸テーブル15上に設置されている。

機上計測器20は、加工対象物50に当接する接触子21、接触子21を支持するプローブ22、プローブ22に固定されたスケールヘッド23、スケールヘッド23の位置(接触子21のZ変位23a)を測定するためのスケール24、プローブ22を加工対象物50に当接させる方向に付勢する付勢手段としての押圧ばね25、を備えている。
【0029】
NC装置30は加工プログラムに従ってXZWC軸を制御して加工機10を動作させる
事ができる。従って、NC装置30はNCプログラムに従ってX、Z、C、Wの各軸を制
御し、図4に示す様に加工対象物50と加工工具13を相対的に所望形状に動作させて所望の形状に加工対象物50を除去加工する。これにより、軸対称非球面形状51(軸対称曲面形状)を創成することができる。
【0030】
解析/プログラミング装置40は数式に従って加工プログラムを作成できる。また、解析/プログラミング装置40はNC装置30からX、Z、Cの各軸の加工工具13や接触
子21等の位置情報(各軸座標10a)と機上計測器20内のスケールヘッド23から接触子21の位置情報(Z変位23a)を読み取る事ができる。
【0031】
更に、解析/プログラミング装置40は、NC装置30とスケールヘッド23から読み取った位置情報(Z変位23a)から形状解析を行うことができる。ここで、形状解析とは計測された軸対称非球面形状と理想形状とを比較し、X軸、C軸の座標空間内の位置の
誤差量dzを算出すること、および座標と誤差量から誤差量関数dz=f(x,θ)に近似を行うことである。
【0032】
上述のように、機上計測器20の内部では、加工対象物50に接触させるプローブ22にスケールヘッド23が固定されている。プローブ22及びスケールヘッド23は図示されていないガイドに従ってZ軸に平行にスケール24上を摺動することができる。
【0033】
プローブ22は押圧ばね25により、加工対象物50に接近する方向に付勢されている。その為、図5Aおよび図5Bに示す様にプローブ22を加工対象物50に押し当て、X軸方向に移動させると、プローブ22の先端が加工対象物50の表面を倣い、プローブ22の押し込み量(Z変位23aの変化量)によって、相対的なZ軸方向の形状をスケール24から読み取ることができる。
【0034】
本実施の形態の回転軸対称曲面加工装置100の作用の一例を図4、図5A、図5B、図6、図7、図8、図9、および図10のフローチャートに従って説明する。
図7は、補正なし形状の加工用のNCプログラム41の一部である。図8はW軸制御による補正加工用NCプログラム42の一部である。図9はZ軸制御による補正加工用NCプログラム43の一部である。
【0035】
まず、解析/プログラミング装置40は、加工対象物50に対して、図4に示す軸対称非球面形状51を加工するNCプログラム41を作成する。ここで、一般的に非球面形状は(式3)に従う。
【0036】
【数3】

ただし、(式3)において、x:X座標、R:参照半径、k:円錐定数、A4,A6,
...:非球面係数、である。
【0037】
この一例が、上述の関数g(x)である。
作成されたNCプログラム41をNC装置30に転送する。NC装置30は転送されたNCプログラム41に従い、図4に示す様に加工対象物50と加工工具13を相対移動させ軸対称非球面形状51の加工を行う(ステップ201)。
【0038】
NCプログラム41は、x座標値41aと、対応するz座標値41bを含んでいる。図7の場合、x座標値41aの漸減(一方向への移動)とともに、z座標値41bが漸減(加工対象物50に接近または離間する方向への連続して移動)していく部分が示されている。
【0039】
その後、図5Aおよび図5Bに示す様に、加工された加工対象物50に機上計測器20のプローブ22を接触させC軸を回転させながらX軸方向に移動させる。解析/プログラ
ミング装置40は機上計測器20の移動中のX、Z、C軸の位置データ(各軸座標10a
)及びスケール24の位置データ(接触子21のZ変位23a)を全て読み取る(ステップ202)。
【0040】
読み取った位置データから、図6に示す様に理想形状との誤差量を算出する。算出した誤差量に対して、最小自乗法などの近似法により(式1)に近似させ、誤差量を数式((x,θ)の座標空間内における誤差の分布を示す関数f)とする(ステップ203)。
【0041】
解析/プログラミング装置40は(式2)に従い、加工工具13のX軸方向の位置(x
)とC軸方向の位置(θ)に従って、加工工具13の、X軸方向の位置(x)およびC軸
方向の位置(θ)に対応したZ軸方向の位置(z)(または、W軸方向の位置(w))を決定して、図8または図9に示す加工プログラムを作成しNC装置30に加工プログラムを転送する(ステップ204)。
【0042】
ここでW軸14を制御して補正加工を行う場合は、図8の補正加工用NCプログラム42を使用し、Z軸(Z軸テーブル11)を制御して補正加工を行う場合は、図9の補正加工用NCプログラム43を使用して補正加工を行う(ステップ205)。
【0043】
図8の場合、補正加工用NCプログラム42は、x座標値42a、z座標値42b、θ座標値42c、w座標値42d、を含んでおり、当該図8の部分は、x座標値42a、z座標値42bが一定で、θ座標値42cの増加に応じてw座標値42dを増減している。
【0044】
すなわち、この図8の部分では、加工対象物50の径方向の一定の位置で、加工工具13を、加工対象物50に対して接近または離間させるように変位させて、軸対称非球面形状51の形状を補正する制御例が示されている。
【0045】
図9の補正加工用NCプログラム43は、x座標値43a、z座標値43b、θ座標値43cを含んでいる。
この図9の部分では、x座標値43aは漸減し、θ座標値43cは漸増し、これに同期してz座標値43bは漸減している。
【0046】
すなわち、X軸方向にX軸テーブル15を移動させつつ、θ座標値43cの漸増に同期して、Z軸方向に加工対象物50を加工工具13に接近する方向に移動させることで、軸対称非球面形状51の補正加工が行われる制御例を示している。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば軸非対称誤差dzが発生している軸対称非球面形状51であっても加工機10から加工対象物50を外すこと無く、機上計測器20による軸対称非球面形状51の計測評価及び補正加工を行うことが出来、短時間で高精度な軸対称非球面形状51を得ることができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、(式2)にて表現される自由曲面形状の加工及び補正加工を行うことができる。
次に、図11を参照して、本発明の第2実施の形態について説明する。第1実施の形態との構成の違いを図11によって説明する。
【0049】
第1実施の形態との作用の違いは加工対象物50を加工するのに切削ではなく研削を用いる点にある。すなわち、上述の第1実施の形態では、加工工具13に切削バイトを使用していたが、この第2実施の形態では研削砥石を使用する。
【0050】
すなわち、X軸テーブル15上に、W軸方向に変位する研削スピンドル61を配置し、この研削スピンドル61の先端部に加工工具として研削砥石62を固定している。
そして、この研削砥石62を研削スピンドル61にて回転駆動して、加工対象物50に対して、W軸方向、またはZ軸方向に押圧することで、研削加工を行い、軸対称非球面形状51を創成するものである。
【0051】
上述の第1実施の形態では加工可能な加工対象物50の材料として、P−Ni、樹脂、銅等、比較的硬度の低い材質に制限されるが、本第2実施の形態では超硬その他、難切削材料からなる加工対象物50を加工できる利点がある。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、加工対象物50を加工機10から取り外すこと無く、加工機10の特性等によって発生する軸非対称誤差dzを評価及び補正加工し、高精度な軸対称非球面形状51を短時間で加工することができる。
【0053】
従って、たとえば、加工対象物50が、光学素子の成形金型の場合、低コストにて、光軸対称性の良好な高品質の光学素子を製造することが可能になる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
(付記1)
軸対称非球面加工機において、主軸回転制御機構(以下、C軸と記す)に同期しZ軸に対して平行に移動するW軸もしくはC軸と同期するZ軸とXZC軸の位置を読み取ること
のできる機上計測装置とXZC軸と計測結果から軸対称非球面形状の面解析ができ、理想
形状との誤差をdz=f(X,θ)関数に近似できる解析装置と非球面加工プログラムに
理想形状との誤差を補正するデータを加えることができるプログラミング装置とを有することを特徴とした軸対称非球面加工機。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態である回転軸対称曲面加工方法を実施する回転軸対称曲面加工装置を構成する加工機の構成の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態である回転軸対称曲面加工装置の全体構成の概念図である。
【図3】本発明の一実施の形態である回転軸対称曲面加工装置を構成する機上計測器の構成の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施の形態である加工機における加工状態の一例を示す平面図である。
【図5A】本発明の一実施の形態である機上計測器における計測動作の一例を示す正面図である。
【図5B】本発明の一実施の形態である機上計測器における計測動作の一例を示す平面図である。
【図6】理想形状と加工形状との誤差量を示す三次元グラフである。
【図7】補正なし形状の加工用のNCプログラムの一部を示す説明図である。
【図8】W軸制御による補正加工用NCプログラムの一部を示す説明図である。
【図9】Z軸制御による補正加工用NCプログラムの一部を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態である回転軸対称曲面の加工方法の作用の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施の形態である加工機の変形例を示す概念図である。
【図12】本発明の参考技術における軸対称非球面の計測状態を示す概念図である。
【図13】理想非球面における誤差量の分布を示す線図である。
【図14】加工後の非球面における誤差量の分布を示す線図である。
【図15】軸対称非球面の誤差量分布を示す三次元グラフである。
【符号の説明】
【0055】
10 加工機
10a 各軸座標
11 Z軸テーブル
12 C軸
13 加工工具
14 W軸
15 X軸テーブル
20 機上計測器
21 接触子
22 プローブ
23 スケールヘッド
23a Z変位
24 スケール
25 押圧ばね
30 NC装置
40 解析/プログラミング装置
41 NCプログラム
41a x座標値
41b z座標値
42 補正加工用NCプログラム
42a x座標値
42b z座標値
42c θ座標値
42d w座標値
43 補正加工用NCプログラム
43a x座標値
43b z座標値
43c θ座標値
50 加工対象物
51 軸対称非球面形状
61 研削スピンドル
62 研削砥石
100 回転軸対称曲面加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の回転と、加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位とを組み合わせることで、前記被加工物に回転軸対称曲面を形成する第1工程と、
前記加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位を制御する座標空間内で、前記回転軸対称曲面を計測し、前記回転軸対称曲面の理想形状からの誤差の分布を得る第2工程と、
前記誤差の分布を打ち消すように前記加工工具の軌跡を制御して、前記回転軸対称曲面を補正加工する第3工程と、
を含むことを特徴とする回転軸対称曲面の加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の回転軸対称曲面の加工方法において、
前記第1工程では、前記理想形状に基づいて生成された加工プログラムに基づいて前記回転軸対称曲面の加工を行い、
前記第2工程では、前記回転平面内での前記被加工物の回転角θと、前記被加工物の回転軸Cを通り前記回転平面に平行なX軸方向における変位xとに基づいて、前記回転平面に直交するZ軸方向における前記理想形状との誤差dzの分布を与える関数f(x,θ)を求め、前記X軸上での前記理想形状のZ軸方向の成分を与える関数g(x)との差分に基づいて、前記誤差を打ち消すための補正加工量を求め、
前記第3工程では、前記誤差の分布を反映した加工プログラムに基づいて前記回転軸対称曲面を補正することを特徴とする回転軸対称曲面の加工方法。
【請求項3】
被加工物を回転させるC軸と、
前記C軸に平行なZ軸方向に前記被加工物を変位させるZ軸と、
前記Z軸に平行な方向に加工工具を変位させるW軸と、
前記W軸に直交する方向に前記加工工具を変位させるX軸と、
前記C軸による前記被加工物の回転に同期して、前記Z軸、前記W軸および前記X軸の少なくとも一つを用いた前記加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位を制御することで、前記被加工物に回転軸対称曲面を形成する加工制御手段と、
前記加工工具とともに前記X軸に支持され、前記加工工具の前記被加工物に対する相対的な変位を制御する座標空間内で、前記回転軸対称曲面を計測する計測手段と、
前記計測手段から得られた計測結果から前記Z軸方向における、前記回転軸対称曲面と理想形状との誤差の分布を算出し、前記加工制御手段を制御して前記誤差を補正するための補正加工を行わせる補正プログラムを生成するプログラミング手段と、
を含むことを特徴とする回転軸対称曲面加工装置。
【請求項4】
請求項3記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記プログラミング手段は、前記C軸の回り前記被加工物の回転角θと、前記X軸方向における変位xとに基づいて、前記Z軸方向における前記理想形状との誤差dzの分布を与える関数f(x,θ)を求め、前記X軸上でのZ軸方向の前記理想形状の成分zを与える関数g(x)との差分に基づいて、前記補正プログラムを生成することを特徴とする回転軸対称曲面加工装置。
【請求項5】
請求項3記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記計測手段は、前記Z軸方向に変位し、先端部に接触子が固定された測定軸と、前記測定軸を前記被加工物に接近する方向に付勢する付勢手段と、前記Z軸方向における前記測定軸の変位を計測するスケールと、を含むことを特徴とする回転軸対称曲面加工装置。
【請求項6】
請求項3記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記加工工具は切削工具であることを特徴とする回転軸対称曲面加工装置。
【請求項7】
請求項3記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記加工工具は研削工具であることを特徴とする回転軸対称曲面加工装置。
【請求項8】
請求項3記載の回転軸対称曲面加工装置において、
前記加工制御手段は、数値制御装置であることを特徴とする回転軸対称曲面加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図6】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−118100(P2007−118100A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310731(P2005−310731)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】