説明

回転電機およびその製造方法

【課題】強度と絶縁性を両立した回転電機およびその製造方法を提供する。
【解決手段】固定子鉄心412のスロット411とコイルの間に含浸される第1のワニス415と、スロット411の軸方向外側において、コイルのエナメル皮膜に直接に付着された第2のワニス416と、を有し、第1のワニス415は、平角線におけるコイルとワニスのせん断接着強度が第2のワニス416より大きい熱硬化性のワニスであり、第2のワニス416は、ガラス転移温度が約104℃以下の熱硬化性のワニスであるとともに、第2のワニス416のDMA法におけるガラス転移温度が第1のワニス415のガラス転移温度より低い回転電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の回転電機は、その高出力化により、固定子コイルに加わる振動や固定子コイルの発熱がさらに大きくなりつつある。
【0003】
固定子鉄心のスロットの固定子コイルの振動を抑えるため、高強度(高接着強度,高耐熱を含む)のワニス(例えば、エポキシワニス)を固定子鉄心と固定子コイルの間に含浸し、固着させることが知られている。しかし、固定子鉄心の外側のコイルエンド部でヒートサイクル,ヒートショックに伴うワニスの熱膨張,熱収縮によってエナメル電線の皮膜が剥離し、絶縁不良する問題が新たに発生する。
【0004】
そこで接着強度が弱く、柔軟な不飽和ポリエステルワニスを使用した場合、エナメル皮膜の剥離は防止できる。しかし、固定子鉄心内のスロットと固定子コイルの間の固着力が不足し、コイルが振動してしまう。
【0005】
このように回転電機の固定子コイルの強度と絶縁性を両立することが難しくなっていた。
【0006】
尚、回転電機のコイルエンド部のワニス含浸の例としては、コイルエンド部にエポキシワニスを合成して作成したCP処理樹脂をコーティングし、固定子鉄心内外にエポキシワニスをコーティングして、外部の媒体が固定子コイルに浸入しないような方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、固定子鉄心部にエポキシワニスを含浸し、さらにコイルエンド部に充填材を混入したエポキシワニスでモールドする方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−039178号公報
【特許文献2】実開昭61−108052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの構成では基本的に高接着強度のエポキシワニスをベースに使用しており、上記した課題、すなわち強度と絶縁性を両立することは困難である。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、強度と絶縁性を両立した回転電機およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定子鉄心と、固定子鉄心の周方向に等間隔に設けられたスロットと、固定子スロットに納められ、回転磁界を発生させるコイルと、を有する固定子と、固定子鉄心と所定の回転ギャップを隔てて、回転自在に設けられた回転子と、を有する回転電機であって、固定子鉄心のスロットとコイルの間に含浸される第1のワニスと、スロットの軸方向外側において、コイルのエナメル皮膜に直接に付着された第2のワニスと、を有し、第1のワニスは、平角線におけるコイルとワニスのせん断接着強度が第2のワニスより大きい熱硬化性のワニスであり、第2のワニスは、ガラス転移温度が約104℃以下の熱硬化性のワニスであるとともに、第2のワニスのDMA法におけるガラス転移温度が第1のワニスのガラス転移温度より低い回転電機である。
【0011】
また本発明は、固定子鉄心外側において、第2のワニスの入った容器に、コイルを挿入した固定子を絶縁紙端まで浸漬させて熱硬化させた後に、固定子の反対側も絶縁紙端まで浸漬させて熱硬化させる回転電機の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強度と絶縁性を両立した回転電機およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態による回転電機の側面断面図。
【図2】図1に示す回転電機の固定子の断面図。
【図3】図1に示す回転電機の回転子の断面斜視図。
【図4】重ね巻による巻線構造を有する固定子を示す斜視図。
【図5】固定子鉄心に挿入されたコイルの断面図。
【図6】固定子鉄心外側の二種類のワニスの接触部位拡大断面図。
【図7】平角線のせん断接着強度試験の説明図。
【図8】ワニスのせん断接着力強度と絶縁破壊比率の関係の説明図。
【図9】実測のエナメル皮膜の引き剥しを示す説明図。
【図10】計算のエナメル皮膜引き剥しモデルを示す説明図。
【図11】ワニスのガラス転移温度Tgとエナメルの引き剥し荷重の関係の説明図。
【図12】第1のワニスと第2のワニスの構成位置における物性値の関係図。
【図13】コイルエンドの第2のワニスの浸漬,乾燥工程を示した説明図。
【図14】コイルエンドの第2のワニスの塗布工程を示した説明図。
【図15】固定子鉄心のスロット内に第1のワニスを滴下含浸する方法を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態における誘導電動機の側面断面図を示す。回転電機の一例としてのかご型誘導電動機は、軸方向の一端側が開口した有底筒状のハウジング1と、このハウジング1の開口端を封止するカバー2を有している。ハウジング1とカバー2は、複数本、例えば6本のボルト3によって締結されている。ハウジング1の内側には水路形成部材22が設けられおり、固定子4はその水路形成部材22の内側に焼き嵌め等で固定されている。水路形成部材22の図示左端のフランジはハウジング1とカバー2とに挟まれて固定されており、水路24が水路形成部材22とハウジング1との間に形成される。回転電機を冷却する冷却水は、ハウジング1に形成された取入口32から水路24に取り入れられた後、ハウジング1の排出口34から排出される。
【0016】
図2は、図1の固定子の断面図を示す。複数のスロット411が周方向等間隔に設けられた固定子鉄心412と、各スロット411内に挿入された3相の固定子コイル413とによって構成されている。固定子コイル413が挿入される固定子鉄心412には、24個のスロット411が形成されている。固定子鉄心412は、例えば厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により成形し、成形された電磁鋼板を積層して構成された積層鋼板からなり、周方向に等間隔の放射状に配置された複数のスロット411が形成されている。
【0017】
固定子鉄心412の内周側には、固定子鉄心412と微小な隙間を介して対向するように、回転子5が回転可能に配置されている。回転子5はシャフト6に固定されており、シャフト6と一体に回転する。シャフト6は、ハウジング1およびカバー2にそれぞれ設けられた一対のボールベアリング7a,7bによって回転自在に支持されている。これらのベアリング7a,7bの内、カバー2側のベアリング7aは、不図示の固定板によってカバー2に固定されており、ハウジング1の底部側のベアリング7bは、ハウジング1の底部に設けられた凹部に固定されている。
【0018】
シャフト6の左端には、プーリー12がナット11によって取り付けられている。シャフト6のプーリー12とベアリング7aとの間には、スリーブ9およびスペーサ10が設けられている。スリーブ9の外周およびプーリー12の内周はやや円錐形状となっており、ナット11による締め込み力によってプーリー12とシャフト6とが強固に一体化され、これらは一体的に回転できるようになっている。固定子4に対して回転子5が回転駆動されると、プーリー12によってシャフト6の回転力が外部に出力される。また、発電機として機能する場合には、プーリー12からの回転力がシャフト6に入力される。
【0019】
図3は、図1の回転子5の断面を示す斜視図である。
【0020】
図3に示すように、かご型回転子である回転子5の回転子鉄心513には、回転軸方向に延びる複数の導体バー511が、周方向の全周に渡って等間隔で埋め込まれている。回転子鉄心513は磁性体からなり、回転子鉄心513の軸方向両端には、各導体バー511を短絡させる短絡環512がそれぞれ設けられている。なお、図3の斜視図では、回転子鉄心513と導体バー511との関係を明示するために、回転軸に垂直な面で断面した断面構造を示しており、プーリー12側の短絡環512およびシャフト6は図示されていない。
【0021】
回転子鉄心513は、厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により成形し、成形された電磁鋼板を積層して構成された積層鋼板からなる。図3に示すように、回転子鉄心513の内周側には、軽量化のために略扇形の空洞部514が周方向等間隔に設けられている。回転子鉄心513の外周側すなわち固定子側には前述した導体バー511が埋め込まれており、導体バー511の内側の回転子ヨーク530に磁気回路が形成される。各導体バー511および短絡環512はアルミによって構成されており、ダイキャストによって回転子鉄心513に一体とされている。回転子鉄心の両端に配置された短絡環512は、回転子鉄心513から軸方向両端に突出するように設けられる。なお、図1に図示していないが、ハウジング1の底部側には、回転子5の回転を検出するための検出ロータが設けられている。回転センサ13は、回転する検出ロータの歯を検出し、回転子5の位置や回転子5の回転速度を検知するための電気信号を出力する。
【0022】
図4に固定子鉄心412と、をスロット411に納められて、固定子鉄心内から固定子鉄心へ長手方向に伸びた固定子コイル413を示す。固定子コイル413は、所定数のスロットを間に挟んだ一対のスロットに挿入されている。固定子鉄心412の両端面には、各スロットから外部に突出した固定子コイル413によってコイルエンド414が形成されている。各スロットの出口部近傍のコイルエンド414には、固定子コイル413が直線状に延在する直線部が設けられており、固定子鉄心412と固定子コイル413との間に絶縁紙419が巻き付けられている。固定子鉄心412と、前記固定子鉄心412に納められた固定子コイル413および絶縁紙419には、ギャップを隔てて回転自在に設けられた回転子5の回転振動によって、振動が発生する。この固定子鉄心412と固定子コイル413の振動防止と、固定子鉄心412に固定子コイル413を挿入した時にできる傷による電気絶縁保護のために、固着ワニスが固定子鉄心内に含浸されている。また、コイルエンド414の固定子コイル413同志の素線間の絶縁保護に、固着ワニスがコイル表面に付着されている。このコイルエンド414に付着されている固着ワニスは自身の接着強度が高いため、高温環境下からの温度降下時にワニスの熱収縮力で、コイルのエナメル皮膜を剥離させてしまう問題がある。
【0023】
そこで、第1の実施の形態では、固定子鉄心412と固定子コイル413のスロットに第1のワニス415を処理し、固定子鉄心外のコイルエンド414に第2のワニス416を処理した固定子4を構成する。
【0024】
以下に、第1の実施の形態における固定子4の構成を詳細に説明する。図5にスロットの出口部近傍のコイルエンド414の断面図を示し、図6に図5の第1のワニス415と第2のワニス416の接触部の拡大断面図を示す。前記第1のワニスは前記固定子鉄心412のスロット内部と、前記固定子鉄心412外側のコイルエンド414の絶縁紙端から軸方向外側に付着される前記第2のワニスをオーバーラップするように含浸されて形成される。この時、前記固定子鉄心412外側のコイルエンド414に付着されるワニスは、固定子鉄心内から絶縁紙端まで1種類、絶縁紙端から第1のワニスのオーバーラップ端まで2種類、第1のワニスと第2のワニスのオーバーラップ端からコイルエンドの末端まで1種類で形成される。
【0025】
図7に平角線のせん断接着強度試験についての説明図を示し、図8にワニスのせん断接着力強度と、絶縁破壊比率の関係の説明図を示す。第1のワニス415は、固定子鉄心412のスロットと固定子コイル413間における高接着強度の材料が望まれる。この第1のワニス415に適切な材料の物性について説明する。第1のワニス415のせん断接着強度は、図7のように4本の平角線を組み合わせて、第1のワニス415を含浸、乾燥させて1つの試料とし、この試料の引張り破断力を測定している。図8の絶縁破壊比率は、100mm×100mm×13mmの固定子鉄心を模擬したモデルに平角線を挿入し、この模擬モデルでヒートサイクル試験を行い、電圧1200Vを10分間耐電して絶縁破壊したコイルの比率を示す。第1のワニス415にストラッカ法で測定したワニス初期固着強度40N/mm2以上のワニスを使った場合のコイル累積破壊比率は0%である。ところが40N/mm2未満のワニスとして、例えば30N/mm2のワニスを使った場合には累積破壊比率が50%以下になるため、第1のワニスには不適切である。以上のようにワニスの初期固着力が40N/mm2以上のワニスとしてはエポキシワニスなどがある。
【0026】
図9にエナメル皮膜の引き剥し測定図、図10にエナメル皮膜引き剥し力の計算結果を示す。図11にワニスのガラス転移温度Tgとエナメルの引き剥し荷重の関係の説明図を示す。図5の固定子鉄心412の外側のコイルエンド414に付着させる第2のワニス416は、コイルエンド414のエナメル皮膜が剥離しない程度の熱収縮力の低い材料が望まれる。この第2のワニス416に適切な材料の物性について説明する。固定子コイル単体の引き剥し強度は、図9のようにAIW平角線(3.23mm×2.47mm)を用いて、エナメル皮膜の径方向に幅1.5mmの切り込みを入れて、軸方向へのエナメル皮膜の引き剥し強度を測定している。図10のワニスの熱解析で求めた引き剥し荷重は、径方向に幅1.5mmの寸法とし、エポキシワニスの物性値(線膨張係数5.1×10-5/℃,弾性率3000MPa,ガラス転移温度Tg125℃)を用いて計算している。実測のエナメル皮膜の引き剥し強度は図11のように平均値1.4Nで、エナメル皮膜等の有機材料の繰り返し疲労限界強度が約1/10まで低下することから、エポキシワニスの疲労限界強度は約0.14Nと考えられる。一方、ワニスの熱解析から求めた引き剥し荷重は0.16Nで、疲労限界強度0.14Nに達すると剥離が生じてしまう。エポキシの熱解析の引き剥し荷重と、疲労限界強度の比と、エポキシワニスの簡易熱応力σ(線膨張係数α5.1×10-5/℃×弾性率E3000MPa×ガラス転移温度Tg125℃)から、ワニスの疲労限界熱応力σ′を求めると、約13MPaとなる。この疲労限界熱応力σ′のガラス転移温度Tg′は、エポキシワニスと不飽和ポリエステルワニスなどの線膨張係数α′と弾性率E′の物性値に差がない場合には、第2のワニス416に必要な最大のガラス転移Tg′の値約104℃が求められる。ガラス転移温度Tg104℃以下の適切な材料としては、一般的にガラス転移温度が40〜105℃である不飽和ポリエステルワニスが適切である。
【0027】
図12に以上の検討から得た第1のワニス415と第2のワニス416に求められる特性と、その選定基準を示す。第1のワニス415は、平角線におけるコイルとワニスのせん断接着強度が、固定子鉄心412外側に付着される第2のワニスより大きい熱硬化性のワニスを用いて、前記第2のワニスのDMA法におけるガラス転移温度Tgが前記第1のワニスのガラス転移温度Tgより低い熱硬化性のワニスを用いて形成できる。例えば、前記第1のワニス415は高分子材料のエポキシワニス、前記第2のワニス416に不飽和ポリエステルワニスを使うなど、異なる2種類の高分子材料を用いると良い。第1のワニス415と第2のワニス416に同じ高分子材料を使う場合では、第1のワニス415と第2のワニス416に同じ高分子材料のエポキシワニスを用いて、前記第2のワニス416のみに柔軟鎖を持つポリマー材料のゴムなどを添加させて、ガラス転移温度Tgを下げて組み合わせても良い。
【0028】
つぎに、第1の実施の形態による回転電機の製造方法について説明する。図13に第2のワニスの浸漬コート方法の説明図を示す。図13のように第2のワニス416は、第2のワニス416の入った容器にコイルを挿入した固定子4の接続側のコイルを絶縁紙端まで浸漬させて熱硬化させた後に、固定子4の反接続側のコイルも絶縁紙端まで浸漬させて熱硬化させて、第2のワニス416を形成することができる。図14に第2のワニス416の表面塗布方法の説明図を示す。図14のようにコイルエンド414の絶縁紙端から軸方向外側へ向かって、刷毛を用いて、コイルエンド414の両側のコイルの表面に塗布させて熱硬化させて、第2のワニス416を形成することもできる。
【0029】
図15に第1のワニスの含浸方法の説明図を示す。この第2のワニス416を形成した後に、固定子4を余熱し、図15のように固定子4を軸に対し水平に回転させて、固定子鉄心412のスロット411の開口部へ第1のワニス415を滴下含浸させて熱硬化する。このような製造方法によって第1のワニス415と第2のワニスを有する固定子4を形成することができる。この時、前記固定子鉄心412と、固定子鉄心外側のコイルエンド414に処理されるワニスは、前記固定子鉄心内から軸方向外側の絶縁紙端まで1種類、絶縁紙端からある距離まで2種類、ワニス2種類の終端からコイルエンドの末端のターン部まで1種類で形成される。
【0030】
以上説明した実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。回転電機は、固定子鉄心412に形成された複数のスロット411に、固定子コイル413を装着した固定子4と、固定子4の内側に回転可能に設けられた回転子5とを備えている。固定子鉄心412の複数のスロット411と固定子コイル4の間には、平角線における固定子鉄心412のスロット411と固定子コイル413のせん断接着強度が、エポキシワニス並みの強度を持つ第1のワニス415が形成されている。この第1のワニス415によって、回転電機運転時のコイル振動によるクラックを防止できる。一方、固定子鉄心外側の固定子コイル413では第2のワニス416が形成されている。この第2のワニスのガラス転移温度Tgが、第1のワニス415よりも低く、ガラス転移温度Tg104℃以下であるため、温度下降時のワニスの熱収縮を緩和できて、エナメル皮膜剥離を防止することができる。第1のワニス415と第2のワニス416を形成することで、耐振動性と耐ヒートサイクル性の回転電機を製作することが可能になる。
【0031】
このように、上記実施形態によれば、固定子鉄心のスロットでは高接着強度のワニスを含浸することにより、回転電機の振動によるクラック発生を防止でき、かつ固定子鉄心外のコイルエンドでは熱収縮性の低い柔軟なワニスを塗布することにより、コイルエンド部のエナメル電線の被膜剥離を防止できるようになり、これらの二種類のワニスの相乗効果で回転電機の絶縁寿命を延命し信頼性を向上できる。その結果、耐ヒートサイクル性と耐ヒートショック性に優れた回転電機を提供できる。
【0032】
なお、上記実施形態は、ハイブリッド自動車や電気自動車等、高出力化により回転電機の固定子コイルに加わる振動や、固定子コイルの発熱が厳しいアプリケーションに好適である。
【0033】
また、上記では回転電機の実施例としてかご型誘導電動機を示したが、これに限られることなく、同期式回転電機(磁石モータ)やルンデル型オルタネータ,リラクタンスモータなど、あらゆる回転電機に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
4 固定子
5 回転子
411 スロット
412 固定子鉄心
413 固定子コイル
414 コイルエンド
415 第1のワニス
416 第2のワニス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心と、前記固定子鉄心の周方向に等間隔に設けられたスロットと、前記固定子スロットに納められ、回転磁界を発生させるコイルと、を有する固定子と、前記固定子鉄心と所定の回転ギャップを隔てて、回転自在に設けられた回転子と、を有する回転電機であって、
前記固定子鉄心の前記スロットと前記コイルの間に含浸される第1のワニスと、前記スロットの軸方向外側において、前記コイルのエナメル皮膜に直接に付着された第2のワニスと、を有し、
前記第1のワニスは、平角線におけるコイルとワニスのせん断接着強度が前記第2のワニスより大きい熱硬化性のワニスであり、
前記第2のワニスは、ガラス転移温度が約104℃以下の熱硬化性のワニスであるとともに、前記第2のワニスのDMA法におけるガラス転移温度が前記第1のワニスのガラス転移温度より低い回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機であって、
前記第1のワニスと前記第2のワニスの接触部位は、径方向に二つの層をなす回転電機。
【請求項3】
請求項1記載の回転電機であって、
前記固定子鉄心の外側のコイルエンドに付着されるワニスは、固定子鉄心内から絶縁紙端まで一種類、絶縁紙端から前記第1のワニスと前記第2のワニスの積層部終端まで二種類、前記第1のワニスと前記第2のワニスの積層部終端からコイルエンドの末端まで一種類で構成した回転電機。
【請求項4】
請求項1記載の回転電機であって、
前記第2のワニスは、前記第1のワニスよりも先に前記スロットの軸方向外側のコイルに付着されたワニスである回転電機。
【請求項5】
請求項1記載の回転電機であって、
前記第1のワニスは前記第2のワニスと異なる種類の高分子成分のワニスである回転電機。
【請求項6】
請求項1記載の回転電機であって、
前記第1のワニスはエポキシワニスで処理されている回転電機。
【請求項7】
請求項1記載の回転電機であって、
前記第2のワニスは不飽和ポリエステルワニスである回転電機。
【請求項8】
請求項1記載の回転電機であって、
前記第2のワニスは前記第1のワニスと同じ種類の高分子成分のワニスであり、前記第2のワニスに柔軟鎖を持つポリマーを添加させ、前記第2のワニスのガラス転移温度を低下させた回転電機。
【請求項9】
固定子鉄心と、前記固定子鉄心の周方向に等間隔に設けられたスロットと、前記固定子スロットに納められ、回転磁界を発生させるコイルと、を有する固定子と、前記固定子鉄心と所定の回転ギャップを隔てて、回転自在に設けられた回転子と、を有し、前記固定子鉄心の前記スロットと前記コイルの間に含浸される第1のワニスと、前記スロットの軸方向外側において、前記コイルのエナメル皮膜に直接に付着された第2のワニスと、を有し、前記第1のワニスは、平角線におけるコイルとワニスのせん断接着強度が前記第2のワニスより大きい熱硬化性のワニスであり、前記第2のワニスは、ガラス転移温度Tgが約104℃以下の熱硬化性のワニスであるとともに、前記第2のワニスのDMA法におけるガラス転移温度が前記第1のワニスのガラス転移温度より低い回転電機の製造方法であって、
前記固定子鉄心外側において、前記第2のワニスの入った容器に、前記コイルを挿入した前記固定子を絶縁紙端まで浸漬させて熱硬化させた後に、前記固定子の反対側も絶縁紙端まで浸漬させて熱硬化させる回転電機の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の回転電機の製造方法であって、
前記固定子鉄心外側において、前記第2のワニスは、前記固定子鉄心外側の絶縁紙端から軸方向外側へ向かって、刷毛を用いて、前記コイルの表面に付着させて熱硬化させる回転電機の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の回転電機の製造方法であって、
前記第1のワニスは、前記第2のワニスを付着した前記固定子を軸に対し水平に回転させて、前記固定子鉄心の前記スロットの開口部へ前記第1のワニスを滴下含浸させて熱硬化させる回転電機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−249398(P2012−249398A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118604(P2011−118604)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】