説明

回転電機のロータ構造

【課題】鋼板積層体からなるロータコアを含む軸芯冷却構造の回転電機において、ロータとステータとの間への冷却媒体の漏出を低減を提供する。
【解決手段】 回転電機の冷却構造は、冷媒供給路を内部に有するとともに該冷媒供給路から冷媒をシャフト外部に供給する冷媒供給口を有するロータシャフト28と、鋼板積層体からなりロータシャフト28に外嵌されて固定されたロータコア15と、ロータコア15の軸方向両側に固定されるエンドプレート42,44とを備える。ロータコア15の内周部には、ロータシャフト28供給される冷却媒体を軸方向へと流す冷媒流路40が形成される。エンドプレート44には、冷媒流路40の開口部に挿入される突起54が形成される。突起54は、冷媒供給口34に対して径方向外側に対向して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータ構造に係り、特に、軸芯冷却によりロータおよびステータコイルを冷却する回転電機のロータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開2010−263696号公報(特許文献1)には、軸芯冷却構造を採用したモータが開示されている。このモータは、ステータコイル、および環状に配列または形成されたステータコアを有するステータと、ステータコアの内周側に位置してステータに対し回転自在となるロータとで構成される。ロータは、ロータ回転軸の外周にコア支持体部を介してロータコアを取り付けてなる。ロータコアは複数枚の鋼板を軸方向に積層状に並べたものであり、一部の隣合う鋼板間に隙間を設けてある。そして、ロータ回転軸の内部に軸方向に延びる冷却油用の給油路を設け、この給油路と隙間とを連通する連通路を、ロータ回転軸にコア支持体部にわたって設けているものである。これにより、ロータおよびステータで発生する熱を効率的に奪うことができ、モータ内部の冷却効果を高めることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のモータでは、ロータ回転軸の給油路からロータコアに供給された冷却油をロータコア中に形成した隙間を介して径方向外側、すなわちロータとステータとの間のギャップに向けて積極的に流す構成としている。このようにすると、上記ギャップに流れ込んだ冷却油がロータの回転抵抗となってモータの出力低下を来たすことにつながる。
【0005】
本発明の目的は、ロータシャフトから鋼板積層体からなるロータコアに冷却媒体を供給してロータ等を冷却可能な回転電機において、ロータとステータとの間への冷却媒体の漏出を低減できる回転電機のロータ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転電機のロータ構造は、冷媒供給路を内部に有するとともに該冷媒供給路から冷却媒体をシャフト外部に供給する冷媒供給口を有するロータシャフトと、前記ロータシャフトに固定されて前記ロータシャフトと共に回転する鋼板積層体からなるロータコアと、前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアの端面に対して固定される第1および第2エンドプレートと、前記ロータコアの内周部に設けられ前記ロータシャフトの冷媒供給口から供給される冷却媒体を軸方向へと流す冷媒流路と、前記第1および第2エンドプレートの少なくとも一方に形成され、前記冷媒流路の端部開口部に挿入される突起と、を備える。そして、前記冷媒供給口は前記ロータコアの軸方向端部近傍において前記冷媒流路に臨んで配置されており、前記冷媒流路の端部開口部に挿入され前記突起は、前記冷媒供給口に対して径方向外側に対向して設けられる。
【0007】
本発明に係る回転電機のロータ構造において、前記突起は、前記冷媒供給口からの冷媒の流れ方向を前記冷媒流路の延伸方向に沿うように誘導するガイド面として形成されているのが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る回転電機のロータ構造において、前記冷却流路の一端部に連通して冷却媒体をロータ外部に吐出する冷媒吐出口が前記第1エンドプレートに形成され、前記冷媒流路の他端開口部に挿入される突起が前記第2エンドプレートに形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る回転電機のロータ構造によれば、冷媒流路の他端開口部に挿入された突起がロータシャフトの冷媒供給口に対向して配置されていることで、冷媒供給口を介して冷媒流路に流れ込む冷媒の圧力(特に動圧)が鋼板積層体に直接的に作用するのを阻止できる。これにより、冷媒が積層鋼板間に浸み込んで遠心力により径方向外側へと流れてロータとステータとの間のギャップに漏出するのを低減することができ、ロータの回転抵抗となるのを抑制できる。加えて、第2エンドプレートに形成された突起がロータコアの冷媒流路の他端開口部に挿入されて係止されているため、ロータコアに対する第2エンドプレートの回り止め機能を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態であるロータ構造を含む回転電機の軸方向断面図である。
【図2】図1におけるロータの拡大断面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図2におけるB−B断面図である。
【図5】図2におけるC−C断面図である。
【図6】図2におけるD部拡大図である。
【図7】変形例を示す図6と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0012】
図1は、本実施形態のロータ構造を含む回転電機10の軸方向に沿った断面図である。図1に示すように、回転電機10は、ステータ12とロータ14とを備える。ステータ12とロータ14との間には、径方向のギャップ部Gが設けられている。
【0013】
ステータ12は、筒状をなす磁性体からなるステータコア13と、このステータコア13の内周部に突設された複数のティース部の周囲に巻装されたステータコイル16とからなっている。ステータコア13は、例えば、それぞれ略円環状に打ち抜き加工された多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して、カシメ等により一体に連結して構成されている。ただし、ステータコア13は、圧粉磁心からなる複数の分割コアを円環状に配列して円筒ケースで外周から締結することによって構成されてもよい。
【0014】
ステータコイル16は、上記ティース部間に挿入および配置されたスロット内部分(図示せず)と、ステータコア13の軸方向端面から外側へ突出するコイルエンド部16a,16bとを含む。各コイルエンド部16a,16bは、軸方向から見たときに略円環状をなして形成されている。
【0015】
ステータコア13およびステータコイル16からなるステータ12は、ハウジング20内に収容されている。ハウジング20は、有底円筒部22と、この有底円筒部22の一端開口部を覆って取り付けられるカバー部24とを有する。ステータ12は、ハウジング20の有底円筒部22の内周面上に例えば圧入等の方法によって固定されている。ハウジング20において、有底円筒部22の円板状をなす底部23、および、カバー部24には、軸受部材26がそれぞれ取り付けられている。
【0016】
ステータコア13の内周側に配置されたロータ14は、筒状の磁性体からなるロータコア15と、ロータコア15の中心を貫通して軸方向に延伸するロータシャフト28とを備える。ロータコア15は、例えば、それぞれ略円板状に打ち抜き加工された多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して、カシメ等により一体に連結して構成されている。また、ロータコア15は、ステータコア13と略同じ軸方向長さを有しており、軸方向端面同士が略面一に配置されている。
【0017】
ロータシャフト28の一端部は、カバー部24に取り付けた軸受部材26によって回転可能に支持された状態で、ハウジング20内で終端している。一方、ロータシャフト28の他端部は、有底円筒部22の底部23に取り付けた軸受部材26によって回転可能に支持された状態で、ハウジング20の外部へ延伸している。
【0018】
図2は、図1におけるロータ14の拡大断面図であり、図3は図2におけるA−A断面図である。鋼板積層体であるロータコア15は、例えば圧入によってロータシャフト28の外周面上に外嵌されて固定されている。あるいは、ロータコア15は、軸方向両側または片側においてロータシャフト28上にカシメ固定される固定部材(図示せず)によって、ロータシャフト28に対する軸方向位置が固定されてもよい。
【0019】
なお、ロータコア15の中心に形成されたシャフト穴30の縁部に凸状のキーを形成し、ロータシャフト28の外周面に軸方向へ延伸して形成されたキー溝に嵌合することによって、ロータシャフト28に対するロータコア15の周方向位置が固定されていてもよい。
【0020】
また、ロータコア15には、外周面近傍の内部に複数の永久磁石36が埋設されている。永久磁石36は、周方向に均等な配置で設けられるとともに、ロータコア15とほぼ同じ軸方向長さを有している。本実施形態では、扁平長方形状断面を有する8つの永久磁石36が埋設された例を示すが、これに限定されるものではなく、6個、12個等の他の数であってもよい。また、1つの磁極に2つの永久磁石が略V字状をなして埋設されていてもよい。
【0021】
ロータシャフト28の中心には、冷媒供給路32が軸方向に延伸して形成されている。冷媒供給路32は、ロータシャフト28の他端側において開口しており、この開口部から図示しないオイルポンプおよびオイルクーラ等を介して冷却媒体が供給されるようになっている。本実施形態では、冷却媒体として冷却油(例えばATF等)が好適に用いられる。以下においては、冷却媒体が冷却油であるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、ロータコア15およびステータコイル16に対して好適な冷却性能を発揮し得る冷却流体であれば他の冷却媒体が用いられてもよい。また、ロータシャフト28内の冷媒供給路32は、ロータコア15への冷媒供給機能だけを目的とするのであれば、冷媒供給口34に到達したところで終端していてもよい。
【0022】
また、ロータシャフト28には、冷媒供給路32に連通する冷媒供給口34が径方向に延伸して形成されて、ロータシャフト28の外周面に開口している。本実施形態では、2本の冷媒供給口34が径方向に対向する位置に形成されている例を示す。ただし、冷媒供給口は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。複数の冷媒供給口34を設ける場合、周方向に均等配置で設けるのが冷却性能を周方向に一様し且つ冷却性能を向上させる上で好ましい。
【0023】
一方、ロータコア15の内周部には、冷媒流路40が軸方向に延伸して形成されている。より詳しくは、ロータコア15のシャフト穴30の縁部に矩形断面を有する溝が形成されており、この溝の内径側がロータシャフト28の外周面によって閉じられることにより、冷媒流路40が形成されている。そして、冷媒流路40の軸方向両端部は、ロータコア15の軸方向端面においてそれぞれ開口して形成されている。
【0024】
本実施形態では、ロータシャフト28の冷媒供給口34に対応して2つの冷媒流路40が径方向に対向する位置に形成されている。また、ロータシャフト28の冷媒供給口34は、ロータコア15の端部近傍において冷媒流路40に連通している。これにより、ロータシャフト28の冷媒供給口34からロータコア15の冷媒流路40に供給された冷却油は、図2中の矢印Eで示すように軸方向に沿って流れるように構成されている。
【0025】
図2に示すように、本実施形態のロータ14は、さらに、ロータコア15に軸方向両側に配置されたエンドプレート42,44を含む。エンドプレート42,44は、ロータコア15とほぼ同一の外径を有する円板状をなし、その中心にロータシャフト28が貫通して設けられている。
【0026】
エンドプレート42,44は、非磁性材料(例えば、アルミニウム、アルミ合金等)から形成されるのが好ましい。これにより、永久磁石36の軸方向端部における磁束の短絡又は漏れを有効に抑制することができる。また、エンドプレート42,44は、ロータコア15からの永久磁石36の軸方向への飛び出しを防止する機能も有する。
【0027】
各エンドプレート42,44は、図示しないカシメ部材によってロータコア15の軸方向端面に圧接された状態で固定されている。これによりロータシャフト28に対するエンドプレート42,44の軸方向位置が決められている。また、各エンドプレート42,44は、ロータコア15と同様に、ロータシャフト28に対して圧入されるか又はキーとキー溝の凹凸嵌合によって、周方向位置が決められている。
【0028】
図4は、図2におけるB−B断面図であり、軸方向の一端側に設けられたエンドプレート(第1エンドプレート)42を平面視状態で示している。
【0029】
エンドプレート42は、ロータシャフト28が挿入されるシャフト穴46の周囲に円形凹状の段部48が形成されている。そして、この段部48の外径側には、2つの冷媒吐出口50が径方向において対向する位置に形成されている。なお、冷媒吐出口50もまた、2つの限定されるものではなく、周方向に均等な配置で3つ以上の冷媒吐出口が形成されてもよい。
【0030】
図2に示すように、エンドプレート42がロータコア15の一方側端面に取り付けられたとき、ロータコア15に形成された冷媒流路40の一端開口部に連通する。これにより、冷媒流路40を流れてきた冷却油が冷媒吐出口50からロータ外部へと吐出されるようになっている。
【0031】
図5は、図2におけるC−C断面図である。また、図6は、図2におけるD部拡大図である。軸方向の他端側に設けられるエンドプレート(第2エンドプレート)44は、ロータシャフト28が貫通するシャフト穴52を有する。そして、シャフト穴52の縁部近傍であってロータコア15の軸方向端面に圧接される表面には、突起54が立設されている。本実施形態では、2つの冷媒流路40に対応して、2つの突起54が径方向に対向する位置に形成されている。
【0032】
上記突起54は、エンドプレート44がロータコア15に対して取り付けられたときに冷媒流路40の他端側開口部に挿入(または圧入)される大きさに形成されている。具体的には、本実施このように突起54がロータコア15の冷媒流路40の端部開口部に挿入されて係止されることで、ロータコア15に対してエンドプレート44が回転するのを規制することができる。これにより、エンドプレート44のロータシャフト28の周方向位置を決めるキーが磨耗または破損等した場合でも、エンドプレート44の回り止め機能を補強または強化することができる。
【0033】
また、上記突起54は、図6に示すように、ロータコア15の軸方向奥側へ向かって先細りとなるテーパ形状に形成されており、傾斜したガイド面55がロータシャフト28に形成された冷媒供給口34に対して径方向外側で対向するように配置される。これにより、冷媒供給口34から冷媒流路40へと流れ込んだ冷却油の流れ方向を、突起54のガイド面55によって冷媒流路40の延伸方向である軸方向へと向けるように誘導することができ、冷媒流路40へ供給される冷却油の圧力損失を有効に低減することができる。ここで、ガイド面55は、上記のような冷却油誘導機能を果たす限りにおいて、平面でなくても湾曲面として形成されてもよい。
【0034】
また、このように突起54が冷媒供給口34に径方向外側で対向して設けられることで、冷媒供給口34から冷媒流路40へと供給される冷却油の圧力、特に動圧がロータコア15の端部領域15aに直接的に作用するのを阻止することができる。これにより、上記端部領域15aを構成する積層鋼板間に冷却油が入り込むのを抑制することができる。
【0035】
ロータコア15を構成する電磁鋼板間はほとんど隙間なく密着した状態に構成されているが、上記のような冷却油の動圧が直接的に作用すると、その領域から積層鋼板間に冷却油が入り込むことがある。そうすると、積層鋼板間に入り込んだ冷却油が、回転するロータ14の遠心力によってロータ外径側へと進み、ロータ外周面からステータ12との間のギャップ部Gへ漏出すると、ロータ14の回転抵抗となって回転電機10の出力損失を生じさせることになる。これに対し、本実施形態の回転電機10ではそのようなギャップ部Gへの冷却油の漏出を低減でき、ロータ14の回転抵抗となるのを抑制することができる。
【0036】
次に、上記構成からなる回転電機10における冷却動作について説明する。
【0037】
ロータシャフト28の他端部から、オイルポンプにより圧送された冷却油が冷媒供給路32に供給される。冷媒供給路32に供給された冷却油は、軸方向に流れて冷媒供給口34からロータコア15内の冷媒流路40へと供給される。このとき、上記のように冷媒供給口34から冷媒流路40に流れ込んで冷却油は、エンドプレート44に設けた突起54によって流れ方向が軸方向に誘導されるとともにロータコア15の端部領域15aにおいて積層鋼板間へ染み入るのが抑制される。
【0038】
冷媒流路40内において冷却油は、軸方向に沿ってロータコア15の一端側、すなわちエンドプレート42側へ流れる。この過程において冷却油は、ロータコア15から熱を奪って効率よく冷却する。
【0039】
冷媒流路40の一端開口部からエンドプレート42の段部48内へ流れ込んだ冷却油は、冷媒吐出口50をロータ外部へ流れ出る。そうすると、回転するロータ14の遠心力によって冷却油が液滴状またはミスト状になって径方向外側へ飛び散る。これにより、径方向外側に位置するコイルエンド部16aに冷却油がかかり、通電により発熱するコイルエンド部16aから熱を奪ってステータコイル16を冷却する。
【0040】
ステータコイル16により更に昇温した冷却油は、ハウジング20の下部に形成された図示しない冷媒排出口からオイルポンプの吸引作用によって引き抜かれて排出され、オイルクーラにて放熱して降温した後に、再び冷媒供給路32へと循環供給されることになる。
【0041】
上述したように本実施形態のロータ構造を含む回転電機10によれば、エンドプレート44に形成された突起54がロータコア15の冷媒流路40の他端開口部に挿入されて係止されているため、ロータコア15に対するエンドプレート44の回り止め機能を強化することができる。また、冷媒流路40の他端開口部に挿入された突起54がロータシャフト28の冷媒供給口34に対向して配置されていることで、冷媒供給口34を介して冷媒流路40に流れ込む冷却油の圧力(特に動圧)がロータコア15の端部領域15aにおける鋼板積層部分に直接的に作用するのを阻止できる。これにより、冷却油が積層鋼板間に浸み込んで遠心力により径方向外側へと流れてロータとステータとの間のギャップに漏出するのを低減することができ、ロータの回転抵抗となるのを抑制できる。
【0042】
なお、本発明に係るロータ構造は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、種々の改良および変更が可能である。
【0043】
例えば、エンドプレート44に形成した突起54は、冷媒流路40の他端開口部に挿入されて係止されることができる形状および大きさであれば、ガイド面を有していなくてもよい。この場合でも、エンドプレート44の回り止め機能を強化する作用効果を奏することができる。
【0044】
また、上記においては突起54に冷媒供給口34に対向するガイド面55を形成して冷却油の流れ方向を誘導するようにしたが、これに限定されるものではなく、突起54の冷媒供給口対向面を軸方向に沿って延びる平面として形成してもよい。この場合でも、冷媒供給口34から冷媒流路40に流れ込む冷却油の動圧がロータコア15の端部領域15aに直接的に作用するのを阻止することができ、積層鋼板間への冷却油の染み出し抑制効果を見込める。
【0045】
また、上記実施形態においては、ステータコイル16の軸方向一方側のコイルエンド部16aだけにロータ14から冷却油を遠心力により供給して冷却するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば図7に示すように、ロータシャフト28に別の冷媒供給口35を設けるとともにエンドプレート44に軸方向外側端面(すなわちロータコア15とは反対側の表面)に連通する冷媒吐出路60を形成し、これらの冷媒供給口35および冷媒吐出路60から冷却油を放出して、ロータ14の遠心力によって軸方向他端側のコイルエンド部16bに冷却油をかけるようにしてもよい。これにより、ステータコイル16に対する冷却性能を向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、エンドプレート42に形成した冷媒吐出口50から冷却油をロータ外部に吐出するようにしたが、エンドプレート42に冷媒吐出口を設けることなく、冷媒供給路40からロータシャフト28内の冷媒供給路32に還流させてもよい。この場合、エンドプレート42にも突起を形成して冷媒流路40の端部開口部に挿入すれば、エンドプレート42の回り止め機能を強化することができる。
【0047】
さらに、各エンドプレート42,44に冷媒吐出口50および突起54をそれぞれ設けてもよい。具体例としては、図2においてロータシャフト28の回転中心軸を境界として上側部分をそのままとし、一方、下側部分を左右反転させた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 回転電機、12 ステータ、13 ステータコア、14 ロータ、15 ロータコア、15a 端部領域、16 ステータコイル、16a,16b コイルエンド部、20 ハウジング、22 有底円筒部、23 底部、24 カバー部、26 軸受部材、28 ロータシャフト、30 シャフト穴、32 冷媒供給路、34,35 冷媒供給口、36 永久磁石、40 冷媒流路、42,44 エンドプレート、46,52 シャフト穴、48 段部、50 冷媒吐出口、54 突起、55 ガイド面、60 冷媒吐出路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒供給路を内部に有するとともに該冷媒供給路から冷却媒体をシャフト外部に供給する冷媒供給口を有するロータシャフトと、
前記ロータシャフトに固定されて前記ロータシャフトと共に回転する鋼板積層体からなるロータコアと、
前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアの端面に対して固定される第1および第2エンドプレートと、
前記ロータコアの内周部に設けられ前記ロータシャフトの冷媒供給口から供給される冷却媒体を軸方向へと流す冷媒流路と、
前記第1および第2エンドプレートの少なくとも一方に形成され、前記冷媒流路の端部開口部に挿入される突起と、を備え、
前記冷媒供給口は前記ロータコアの軸方向端部近傍において前記冷媒流路に臨んで配置されており、前記冷媒流路の端部開口部に挿入され前記突起は、前記冷媒供給口に対して径方向外側に対向して設けられる、
回転電機のロータ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のロータ構造において、
前記突起は、前記冷媒供給口からの冷媒の流れ方向を前記冷媒流路の延伸方向に沿うように誘導するガイド面として形成されている、回転電機のロータ構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転電機のロータ構造において、
前記冷却流路の一端部に連通して冷却媒体をロータ外部に吐出する冷媒吐出口が前記第1エンドプレートに形成され、前記冷媒流路の他端開口部に挿入される突起が前記第2エンドプレートに形成されている、回転電機のロータ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−59193(P2013−59193A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195779(P2011−195779)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】