説明

回転電機及び回転電機制御システム

【課題】回転電機において、ロータの突極に隈取りコイルを設けてトルクを得る構成で、トルクを安定して高くすることである。
【解決手段】回転電機10は、ロータ14を含む。ロータ14は、複数のロータ突極42に巻き回しされた複数のロータコイル44sと、複数のロータ突極42に設けられた片側先端突極52に巻き回しされた複数のロータ隈取りコイル46sと、複数の主ダイオード54s及び副ダイオード56sとを含む。複数の主ダイオード54sは、ロータコイル44sに発生する誘導起電力によってロータ突極42に生じる磁気特性を周方向で交互に異ならせる。複数の副ダイオード56sは、ロータ隈取りコイル46sに生じる誘導電流により片側先端突極52に生じる磁気特性を、周方向に交互に異ならせつつ、ロータコイル44sに生じる誘導電流により対応するロータ突極42に生じる磁気特性と一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータとが対向配置された回転電機及び回転電機を備える回転電機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、ステータとロータとが対向配置される回転電機であって、ロータの周方向複数個所に設けられた突極の端面であって、回転方向の反対側に、磁束変化を妨げる隈取りリングを設けることが記載されている。回転電機の動作時には、ロータの突極がステータの突極に近づいたタイミングで、ステータのコイルに電圧を印加し、それにより生じた磁束によりロータの突極がステータの突極にさらに近づくようにトルクを発生させる。また、ステータの突極とロータの突極とが対向する位置でステータコイルへの電圧の印加を停止させる。ステータコイルへの電圧の印加が停止されても、回路のインダクタンスにより、磁束が遮断されず流れ続ける。この場合、隈取りリングに囲まれた端面に磁束が集中するのでトルクが発生し続けるとされている。
【0003】
このような回転電機では、ロータの突極に設けられた隈取りリングにより、正トルクを高め、逆トルクを低下させるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−206081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された回転電機において、隈取りリングの代わりに隈取りコイルを使用する構成を採用すれば、遅れ電流によりロータの突極に移動磁界を発生させ、正回転時のトルクを高くできる可能性はあるが、逆回転時には隈取りコイルを設けた端面が、隈取りコイルのない端面よりも先にステータの突極に近づくため、隈取りコイルの存在が回転方向に対する抵抗となり、いわゆるマイナストルクを発生させる可能性がある。このため、逆回転時の回転方向のトルクが減少する可能性がある。また、隈取りコイルに双方向に誘導電流が流れることで、簡単に隈取りコイルを設けた突極の磁極が反転する可能性がある。このため、回転電機のトルクを安定して高くする面から改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、回転電機において、ロータの突極に隈取りコイルを設けてトルクを得る構成で、トルクを安定して高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転電機及び回転電機制御システムは、上記の目的を達成するために以下の手段を採用する。
【0008】
本発明に係る回転電機は、ロータとステータとが対向配置された回転電機であって、前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコアの複数個所に配置され、それぞれ先端部の周方向片側に設けられた片側先端突極を有する複数のロータ突極と、前記各ロータ突極に巻き回しされた主コイルと、前記各片側先端突極に巻き回しされた隈取りコイルと、前記主コイルに接続された主磁気特性調整部と、前記隈取りコイルに接続された副磁気特性調整部とを含み、複数の前記主磁気特性調整部は、前記主コイルに生じる誘導電流により前記複数のロータ突極に生じる磁気特性を周方向に交互に異ならせ、複数の前記副磁気特性調整部は、前記隈取りコイルに生じる誘導電流により前記複数の片側先端突極に生じる磁気特性を、周方向に交互に異ならせつつ、対応する前記主コイルに生じる誘導電流により対応する前記ロータ突極に生じる磁気特性と一致させ、さらに、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアの周方向複数個所に配置された複数のステータ突極と、前記各ステータ突極に巻き回しされた第2コイルとを含むことを特徴とする回転電機である。
【0009】
本発明に係る回転電機によれば、ロータの突極に隈取りコイルを設けてトルクを得る構成で、トルクを安定して高くできる。
【0010】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記主磁気特性調整部は主ダイオードであり、前記副磁気特性調整部は、前記主ダイオードに対し電気的に独立して設けられた副ダイオードであり、さらに、前記ステータは、前記各ステータ突極に巻き回しされた前記第2コイルである第2主コイルと第2隈取りコイルとを含み、前記第2主コイル及び前記第2隈取りコイルは、互いに独立して電流を流すことを可能とする。
【0011】
上記構成によれば、ロータの突極に隈取りコイルを設けてトルクを得る構成で、第2隈取りコイルに流す電流を第2主コイルに流す電流に対し独立して流すとともに、第2隈取りコイルに流す電流を適切に制御することで、逆回転時の隈取りコイルによるマイナストルクの発生を抑制し、回転方向のトルクの減少を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る回転電機制御システムは、本発明に係る回転電機と、電源に接続され、前記第2主コイルに交流電流を出力するインバータと、前記電源または別の電源に接続され、前記第2隈取りコイルに第2電流を出力する第2電流出力部と、前記インバータ及び前記第2電流出力部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記第2主コイル及び前記第2隈取りコイルに流れる電流を、前記インバータ及び前記第2電流出力部を用いて制御することを特徴とする回転電機制御システムである。
【0013】
また、本発明に係る回転電機制御システムにおいて、好ましくは、前記制御部は、前記ロータが正回転する場合に、前記第2隈取りコイルに前記第2電流としてパルス電流が印加され、前記ロータが逆回転する場合に、前記第2隈取りコイルにパルス電流が、前記正回転時と異なるタイミングまたは異なる方向に印加されるように、前記第2電流出力部を制御する。
【0014】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記主磁気特性調整部はダイオードであり、前記副磁気特性調整部はサイリスタであり、前記隈取りコイルは、前記主コイルに前記サイリスタを介して接続されている。この構成において、「サイリスタ」として、予め設定した所定電流値以上の電流が流れる場合にオンされ、所定電流値未満の電流が流れる場合にオフされるサイリスタを使用できる。
【0015】
上記構成によれば、ロータの突極に隈取りコイルを設けてトルクを得る構成で、第2コイルに流す電流を適切に制御することで、ロータの正回転時にサイリスタがオンされ、逆回転時にサイリスタがオフされるようにすることができ、逆回転時の隈取りコイルによるマイナストルクの発生を抑制し、回転方向のトルクの減少を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る回転電機制御システムは、本発明に係る回転電機と、電源に接続され、前記第2コイルに交流電流を出力するインバータと、前記第2コイルに流れる電流を、前記インバータを用いて制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ロータが逆回転する場合に前記第2コイルに流れる最大電流が、前記ロータが正回転する場合に前記第2コイルに流れる最大電流よりも小さくなるように前記インバータを制御することを特徴とする回転電機制御システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の回転電機及び回転電機制御システムによれば、ロータの突極に隈取りコイルを設けてトルクを得る構成で、トルクを安定して高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態の回転電機を含む回転電機制御システムを示す概略図である。
【図2】図1のA部拡大対応図である。
【図3】図1の回転電機を構成するロータを示す概略図である。
【図4】第1の実施形態の回転電機において、ロータの正回転時の様子を順に示す、図2に対応する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の回転電機を示す、図2に対応する図である。
【図6】第2の実施形態において、1つのロータ突極に対応して、ロータコイル及びロータ隈取りコイルをサイリスタを介して接続した回路の1例を示す図である。
【図7】第2の実施形態の回転電機において、ロータの正回転時の様子を順に示す、図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図1〜4は、本発明の第1の実施形態を示す図である。図1は、本実施形態の回転電機を含む回転電機制御システムを示す概略図である。図2は、図1のA部拡大対応図である。図3は、図1の回転電機を構成するロータを示す概略図である。図4は、本実施形態の回転電機において、ロータの正回転時の様子を順に示す、図2に対応する図である。回転電機は、例えばエンジンと走行用モータとを駆動源として備えるハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等の電動車両に、車輪駆動用として搭載されることができる。
【0020】
図1に示すように、電動機または発電機として機能する回転電機10は、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙をあけて径方向内側に対向配置され、ステータ12に対し回転可能なロータ14とを備える(なお、単に「径方向」という場合、ロータの回転中心軸に対し直交する放射方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである。)。
【0021】
また、ステータ12は、ステータヨークであるステータコア16と、ステータコア16の周方向複数個所に一体的に配置されたステータ突極であるティース18と、各ティース18に巻き回しされた複数相(図示の例の場合にはu相、v相、w相の3相)の第2コイルであるステータコイル20u,20v,20wとを含む。すなわち、ステータコア16の内周面には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出する複数のティース18がステータ12の周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各ティース18間にスロット22が形成されている。また、ステータコア16及び複数のティース18は磁性材により、一体に設けられている。
【0022】
各相のステータコイル20u,20v,20wは、スロット22を通ってティース18に短節集中巻等の集中巻きで巻装されている。このように、ティース18にステータコイル20u,20v,20wが巻装されることでティース18に磁極が形成される。そして、複数相のステータコイル20u,20v,20wに複数相の交流電流を流すことで、周方向に複数配置されたティース18が磁化し、周方向に回転する回転磁界をステータ12に生成することが可能となる。すなわち、複数相のステータコイル20u,20v,20wは、ステータ12に回転磁界を生じさせる。なお、ステータコイルは、このようにステータ12のティース18に巻き回しする構成に限定するものではなく、例えばティース18から外れたステータコア16の環状部分の周方向複数個所に複数相のステータコイルを巻き回しするトロイダル巻きとし、ステータ12に回転磁界を生じさせることもできる。
【0023】
さらに、図2に示すように、上記各ティース18は、ティース本体24と、ティース本体24の先端面の周方向片側(図2の右側)寄りに径方向に窪んだ溝部26を形成することで周方向片側に設けられた片側先端突極28とを有する。各片側先端突極28に、対応するティース18のステータコイル20w(または20uまたは20v)に対応して、複数相(図示の例の場合にはu相、v相、w相の3相)の第2隈取りコイルであるステータ隈取りコイル30を巻き回ししている。ステータ隈取りコイル30と、ステータコイル20u(または20vまたは20w)とは互いに非接続とし、互いに独立して電流を流すことを可能としている。図2では、同じティース18に巻き回しするステータコイル20u(または20uまたは20v)及びステータ隈取りコイル30の巻き方向を、互いに同じとしている。
【0024】
図1に示すように、各相のステータコイル20u,20v,20wは、主インバータ32に接続され、主インバータ32に直流電源であるバッテリ34が接続されている。
【0025】
図2に示すように、各ステータ隈取りコイル30は、第2電流出力部である副インバータ36に接続され、副インバータ36にバッテリ34が接続されている。すなわち、バッテリ34には、互いに並列に主インバータ32と副インバータ36とが接続されている。なお、主インバータ32及び副インバータ36とバッテリ34との間に、バッテリ34の電圧を昇圧または降圧し、各インバータ32、36に供給する図示しないコンバータを接続することもできる。
【0026】
各インバータ32,36は、入力された直流電力を3相の電流に変換して出力する。例えば、詳細な図示は省略するが、各インバータ32,36は、互いに並列接続された3相のアームを有し、各アームは、2個のトランジスタ、IGBT等のスイッチング素子が直列に接続されたものとする。各アームの中点が3相のステータコイル20u,20v,20wまたは3相のステータ隈取りコイル30の一端に接続される。3相のステータコイル20u,20v,20wまたは3相のステータ隈取りコイル30の他端は、それぞれの中性点に接続される。各インバータ32,36のスイッチング素子のオンオフは、制御部(ECU)38により制御される。制御部38は、例えば図示しない車両のアクセルペダル等の加速指示部に設けられたセンサから加速指令信号を受け取り、図示しない変速操作部等の方向指示部に設けられたセンサから回転方向指令信号を受け取る。そして制御部38は、加速指令及び回転方向指令に応じた回転電機10のトルク目標を算出し、トルク目標等に応じた各ステータコイル20u,20v,20wに流す電流を生成するための主電流指令値を生成するとともに、各ステータ隈取りコイル30に流す電流を生成するための副電流指令値を生成する。
【0027】
制御部38は、各主電流指令値から主インバータ32の制御信号を生成し、各副電流指令値から副インバータ36の制御信号を生成し、それぞれの制御信号に応じて主インバータ32及び副インバータ36のスイッチング動作を制御する。例えば、主電流指令値をd軸電流指令値及びq軸電流指令値とし、d軸、q軸両指令値に応じた主インバータ32の制御信号を生成する。また、副電流指令値は、例えば主インバータ32の3相の出力電流の各1周期に応じて1回ずつ等の所定回数ずつ予め設定した所定のタイミングで発生させる第2電流であるパルス電流とする。なお、主インバータ32に接続するバッテリと、副インバータ36に接続するバッテリとを互いに別のバッテリとすることもできる。
【0028】
また、制御部38には、3相のうち、少なくとも2相のステータコイル側に設けられた電流センサで検出された電流値を表す信号と、レゾルバ等の回転角度検出部で検出された回転電機10のロータ14(図1)の回転角度を表す信号とをそれぞれ入力し、制御部38は、それぞれの検出信号に応じて、各ステータコイル20u,20v,20w及び各ステータ隈取りコイル30に流す電流をフィードバック制御することもできる。
【0029】
このように構成されるので、主インバータ32は各相のステータコイル20u,20v,20wに交流電力を出力する。また、副インバータ36は、各相のステータ隈取りコイル30に第2電流であるパルス電流を出力する。制御部38は、ステータコイル20u,20v,20w及びステータ隈取りコイル30に流れる電流を、主インバータ32及び副インバータ36を用いて制御する。制御部38は、例えばCPU,メモリ等を有するマイクロコンピュータを含む。制御部38は、単一の制御部により構成できるが、機能ごとに分割された複数の制御部により構成することもできる。
【0030】
一方、図3に示すように、ロータ14は、ロータヨークであるロータコア40と、ロータコア40の外周面の周方向の等間隔複数個所(図示の例では4個所)に、径方向外側に向けて(ステータ12(図1)に向けて)突出して配置されたロータ突極42と、複数のロータコイル44n、44s及び複数のロータ隈取りコイル46n、46sとを含む(なお、単に「周方向」という場合、ロータの回転中心軸を中心として描かれる円形に沿う方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである)。ロータコア40及び複数のロータ突極42は、電磁鋼板等の磁性鋼板を複数積層した積層体等の磁性材により、一体に設けられている。ロータコア40の中心部には、図示しないケーシングに対し回転可能に支持された回転軸47を嵌合固定する。
【0031】
より詳しくは、図3に示すように、上記各ロータ突極42は、突極本体48と、突極本体48の先端面の周方向片側(図2の左側、図3の時計方向)寄りに径方向に窪んだ溝部50を形成することで周方向片側に設けられた片側先端突極52とを有する。各ロータ突極42に対してロータ14の片側先端突極52が配置される側と、各ティース18に対してステータ12の片側先端突極28が配置される側とは、周方向に関して互いに逆となっている。ロータ14の周方向に関して1つおきのロータ突極42の突極本体48に複数の主コイルであるロータコイル44nがそれぞれ集中巻きで巻き回しされ、ロータコイル44nが巻き回しされたロータ突極42と隣り合う別のロータ突極42であって、周方向1つおきのロータ突極42の突極本体48に、複数の主コイルである別のロータコイル44sがそれぞれ集中巻きで巻き回しされている。なお、図1〜3では、ステータ12のティース18が6個でロータ14のロータ突極42が4個の場合を示しているが、これは1例に過ぎず、ティース18及びロータ突極42の数はそれぞれ任意の数とすることができる。
【0032】
さらに、ロータ14の各片側先端突極52に、対応するロータ突極42のロータコイル44n(または44s)に対応して、ロータ隈取りコイル46n(または46s)が巻き回しされている。図2では、同じロータ突極42に巻き回しするロータコイル44n(または44s)及びロータ隈取りコイル46n(または46s)の巻き方向を、互いに同じとしている。また、各ロータコイル44n、44sの両端に主磁気特性調整部である主ダイオード54n、54sが直列に接続され、各ロータ隈取りコイル46n、46sの両端に副磁気特性調整部である副ダイオード56n、56sが直列に接続されている。各副ダイオード56n、56sは各主ダイオード54n、54sに対し非接続であり、互いに電気的に独立して設けられている。
【0033】
複数の主ダイオード54n、54sは、対応するロータコイル44n、44sと組み合わされることで、ロータコイル44n、44sに生じる誘導電流により複数のロータ突極42に生じる磁気特性を、ロータ14の周方向に交互に異ならせている。具体的には、各主ダイオード54n、54sが対応するロータコイル44n、44sに流れる電流の方向を規制することで、周方向に1つおきのロータ突極42の先端にN極が形成され、そのロータ突極42と隣り合う、周方向に1つおきのロータ突極42の先端にS極が形成されるようにしている。図3では、各ロータ突極42の先端外側に示したN,Sにより、それぞれで形成される極を表している。
【0034】
また、複数の副ダイオード56n、56sは、対応するロータ隈取りコイル46n、46sと組み合わされることで、ロータ隈取りコイル46n、46sに生じる誘導電流により複数の片側先端突極52に生じる磁気特性を、ロータ14の周方向に交互に異ならせつつ、対応するロータコイル44n、44sに生じる誘導電流により対応するロータ突極42に生じる磁気特性と一致させている。具体的には、各副ダイオード56n、56sが対応するロータ隈取りコイル46n、46sに流れる電流の方向を規制することで、先端にN極が形成されるロータ突極42が有する、周方向に1つおきの片側先端突極52の先端にN極を形成する。また、N極が形成されるロータ突極42と隣り合う別のロータ突極42であって、先端にS極が形成されるロータ突極42が有する、周方向に1つおきの片側先端突極52の先端にS極が形成されるようにしている。なお、各ロータコイル44n、44s及び各ロータ隈取りコイル46n、46sは、対応するロータ突極42に、樹脂等により造られる電気絶縁性を有するインシュレータ(図示せず)等を介して巻装することもできる。
【0035】
このような構成では、各ロータコイル44n、44s及び各ロータ隈取りコイル46n、46sに整流された電流が流れることでロータ突極42及び片側先端突極52が磁化し、磁極部として機能する。また、図1に戻って、ステータコイル20u,20v,20wに交流電流を流すことで、ステータ12が回転磁界を生成するが、この回転磁界は、基本波成分の磁界だけでなく、基本波よりも高い次数の高調波成分の磁界を含んでいる。
【0036】
より詳しくは、ステータ12に回転磁界を発生させる起磁力の分布は、各相のステータコイル20u,20v,20wの配置や、ティース18及びスロット22によるステータコア16の形状に起因して、(基本波のみの)正弦波分布にはならず、高調波成分を含むものとなる。特に、集中巻においては、各相のステータコイル20u,20v,20wが互いに重なり合わないため、ステータ12の起磁力分布に生じる高調波成分の振幅レベルが増大する。例えばステータコイル20u,20v,20wが3相集中巻の場合は、高調波成分として、入力電気周波数の時間的3次成分であり、空間的な2次成分の振幅レベルが増大する。このようにステータコイル20u,20v,20wの配置やティース18を含むステータコア16の形状に起因して起磁力に生じる高調波成分は空間高調波と呼ばれている。
【0037】
ステータ12からロータ14に、この空間強調波成分を含む回転磁界が作用すると、空間高調波の磁束変動により、ロータ突極42間の空間に漏れ出す漏れ磁束の変動が発生し、これにより各ロータコイル44n、44sの少なくともいずれかのロータコイル44n、44sに誘導起電力が発生する。また、ロータコイル44n、44sに発生する誘導起電力によりロータ突極42に生じる磁束変動によりロータ隈取りコイル46n、46sにも誘導起電力が発生する。これにより、各ロータコイル44n、44s及び各ロータ隈取りコイル46n、46sに誘導電流が発生し、その誘導電流の方向は主ダイオード54n、54sまたは副ダイオード56n、56sで規制される。そして、ロータコイル44n、44s及びロータ隈取りコイル46n、46sが巻装されたロータ突極42が磁化することで、このロータ突極42が磁極の固定された磁石である磁極部として機能する。このため、複数のロータ突極42の先端に周方向に交互にN極とS極とが形成される。
【0038】
制御部38は、主インバータ32を構成する各スイッチング素子のスイッチング動作によりバッテリ34からの直流電力を、u相、v相、w相の3相の交流電力に変換して、ステータコイル20u,20v,20wの各相に、対応する相の電力を供給することを可能とする。回転電機制御システム58は、回転電機10、主インバータ32、副インバータ36、及び制御部38を備える。例えば、回転電機制御システム58も、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車等に搭載して使用されることができる。
【0039】
上記の回転電機10では、3相のステータコイル20u,20v,20wに3相の交流電流を流すことで、主インバータ32からの励磁電圧が加わる。このため、ティース18に形成された回転磁界(基本波成分)がロータ14に作用し、これに応じて、ロータ14の磁気抵抗が小さくなるように、ロータ突極42がティース18の回転磁界に吸引される。これによって、ロータ14にトルク(リラクタンストルク)が作用する。
【0040】
さらに、ティース18に形成された空間高調波成分を含む回転磁界がロータ14の各ロータコイル44n、44sに鎖交すると、各ロータコイル44n、44sには、空間高調波成分に起因するロータ14の回転周波数(回転磁界の基本波成分)と異なる周波数の磁束変動によって、各ロータコイル44n、44sに誘導起電力が発生する。この誘導起電力の発生に伴って各ロータコイル44n、44sに流れる電流は、各主ダイオード54n、54sにより整流されることで一方向(直流)となる。そして、各主ダイオード54n、54sで整流された直流電流が各ロータコイル44n、44sに流れるのに応じて各ロータ突極42が磁化することで、各ロータ突極42が、磁極が(N極かS極のいずれか一方に)固定された磁石として機能する。
【0041】
そして、各ロータ突極42(磁極が固定された磁石)の磁界がステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)とロータ突極42(磁石)の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によっても、ロータ14にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、ロータ14がステータ12で生成される回転磁界(基本波成分)に同期して回転駆動する。このように回転電機10は、ステータコイル20u,20v,20wへの供給電力を利用してロータ14に動力(機械的動力)を発生させる電動機として機能させることができる。
【0042】
しかも、各ロータ突極42に設けられた各片側先端突極52にロータ隈取りコイル46n、46sが巻き回しされるとともに、各ロータ隈取りコイル46n、46sに副ダイオード56n、56sが接続されている。複数の副ダイオード56n、56sは、ロータ隈取りコイル46n、46sに生じる誘導電流により複数の片側先端突極52に生じる磁気特性を、ロータ14の周方向に交互に異ならせつつ、対応するロータコイル44n、44sに生じる誘導電流により対応するロータ突極42に生じる磁気特性と一致させている。
【0043】
また、ステータ12の3相のステータ隈取りコイル30に副インバータ36から3相の励磁電圧から独立したパルス電流を流すことで、各ステータ隈取りコイル30にパルス電圧が加わる。このため、各ロータコイル44n、44sには、3相のステータコイル20u,20v,20wまたは3相のステータ隈取りコイル30からの空間高調波により励起した誘導電流が、主ダイオード54n、54sの向きに対応して流れる。また、ロータ隈取りコイル46n、46sには、3相のステータコイル20u,20v,20wまたは3相のステータ隈取りコイル30からの空間高調波により励起した誘導電流が、副ダイオード56n、56sの向きに対応して流れる。このため、回転電機10(図1)の動作時には、次の図4の(A)〜(F)に示すように、ロータ突極42とティース18との間で磁束が作用し、ロータ14が正方向に回転する。
【0044】
すなわち、図4(A)から図4(B)に示すように、3相のステータコイル20u,20v,20wに主インバータ32から励磁電圧が加えられることで、ステータ12に回転磁界が発生すると、ステータ12のティース18で発生する励磁磁束J1により一部のティース18に一部のロータ突極42が矢印α方向に引き寄せられる。この場合に、ステータ12からロータ14にレベルの高い空間高調波が作用していると、ロータコイル44n、44sで生じる大きな磁束変動により、大きな誘導電流が生じて、ロータ突極42の磁力が強くなる。このため、回転電機10(図1)のトルクが向上する。
【0045】
また、図4(B)から図4(D)に移行するのにしたがって、ロータ突極42の突極本体48の先端から出る磁束J1は徐々に減少するが、ロータコイル44n、44sからの誘導磁束による遅れ電流がロータ隈取りコイル46n、46sに流れることで、ロータ隈取りコイル46n、46sが設けられた片側先端突極52の先端から出る磁束J2が大きくなる。また、図4(C)から図4(F)まででステータ隈取りコイル30にパルス電流を流すように、副インバータ36(図2)が制御される。また、ステータ隈取りコイル30に、ステータコイル20u,20v,20wからの誘導磁束による遅れ電流も流れる。このため、図4(C)のようにロータ突極42の先端がステータ12のティース18に径方向に対向した後、図4(D)のようにティース18のティース本体24の先端がロータ14の片側先端突極52に径方向に対向し、ティース18の片側先端突極28の先端がロータ突極42の突極本体48の先端に径方向に対向するように、ロータ14がステータ12に対し相対変位する。
【0046】
次いで、図4(E)から図4(F)に示すように、ステータ12の片側先端突極28とロータ14の片側先端突極52とが径方向に対向するように、ロータ14がステータ12に対し相対変位する。この結果、ロータ14が回転し、しかも回転電機10のトルクを向上させることが可能になる。このように、制御部38(図2)は、ロータ14が正回転する場合に、ステータ隈取りコイル30に第2電流としてパルス電流が印加されるように、副インバータ36を制御する。
【0047】
一方、ロータ14の逆回転時には、制御部38は、ステータ隈取りコイル30に正回転時と逆励磁するような電流を流し、ロータ隈取りコイル46n、46sにより発生する磁界を相殺することでトルクの減少を防止しつつ回転させることが可能となる。例えば、制御部38は、ロータ14が逆回転する場合に、ステータ隈取りコイル30にパルス電流が、正回転時と異なるタイミングまたは異なる方向に印加されるように、副インバータ36を制御する。例えば、図4(F)に対応するタイミングで、ステータ隈取りコイル30にステータ12の片側先端突極28とロータ14の片側先端突極52とが離れるような逆励磁となる磁界が発生するよう、ステータ12にパルス電流を発生させ、ロータ隈取りコイル46n、46sの存在が逆回転に対する抵抗となることを防止する。このため、ロータ14はステータ12に対し、図4(F)から図4(A)に移行するよう、図4の矢印αと逆方向に回転する、すなわち逆回転することが可能となる。なお、パルス電流の波形は、三角波、矩形波、一部に曲線を含む形状等、種々の波形とすることができる。
【0048】
このような回転電機10によれば、ロータ突極42に隈取りコイル46n、46sを設けてトルクを得る構成で、ロータ突極42及び片側先端突極52に巻き回しするロータコイル44n、44s及びロータ隈取りコイル46n、46sの電流方向を、主ダイオード54n、54s及び副ダイオード56n、56sでそれぞれ規制でき、しかも副ダイオード56n、56sは、ロータ隈取りコイル46n、46sに生じる誘導電流により片側先端突極52に生じる磁気特性を、対応するロータコイル44n、44sに生じる誘導電流により対応するロータ突極42に生じる磁気特性と一致させている。このため、ロータ14の回転時に、ロータコイル44n、44s及びロータ隈取りコイル46n、46sに双方向に誘導電流が流れることがなく、各ロータ突極42で磁極が反転することがない。このため、トルクを安定して高くできる。
【0049】
また、ステータ12は、各ティース18に巻き回しされたステータコイル20u,20v,20wとステータ隈取りコイル30とを含み、ステータコイル20u,20v,20w及びステータ隈取りコイル30は、互いに独立して電流を流すことを可能としている。このため、ロータ突極42に隈取りコイル30を設けてトルクを得る構成で、ステータ隈取りコイル30に流す電流をステータコイル20u,20v,20wに流す電流に対し独立して流すとともに、ステータ隈取りコイル30に流す電流を適切に制御することで、逆回転時のロータ隈取りコイル46n、46sによる回転抵抗となるマイナストルクの発生を抑制し、回転方向のトルクの減少を抑制することができる。すなわち、ステータ隈取りコイル30に適切なタイミングで適切な電流を流すことができる。上記の特許文献1に記載された従来技術では、ロータの隈取りリングに発生する電流を成り行きとし、ステータ側で適切に制御することは困難であったが、本発明では、ステータ隈取りコイル30に流す電流を適切に制御することで、ロータ隈取りコイル46n、46sに発生する電流を適切に制御することが可能となる。また、逆回転時の回転方向のトルクの減少を抑制できるので、消費電力の低減に貢献できる。
【0050】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態の回転電機を示す、図2に対応する図である。図5に示すように、本実施形態の回転電機10及び回転電機制御システム58では、上記の第1の実施形態と異なり、ステータ12のティース18は、片側先端突極28(図2参照)を設けていない。各ティース18には、複数相(例えば3相)のステータコイル20u,20v,20w(20u、20vは図1参照、以下同じ。)が巻き回しされている。このため、各ティース18には、隈取りコイル30(図2参照)を巻き回ししていない。また、回転電機制御システム58は、副インバータ36(図2参照)を備えていない。回転電機制御システム58は、バッテリ34に接続され、各相のステータコイル20u,20v,20wに交流電流を出力するインバータ60と、各相のステータコイル20u,20v,20wに流れる電流を、インバータ60を用いて制御する制御部38とを備える。インバータ60の機能及び構成は、上記の第1の実施形態で使用した主インバータ32(図1)の場合と同様である。
【0051】
また、回転電機10は、ロータ14の隈取りコイル46n、46s(46nは図3参照)にダイオードを接続せず、その代わりに隈取りコイル46n、46sに副磁気特性調整部であるサイリスタ62が接続されている。サイリスタ62は、オンされた場合に、対応するロータ隈取りコイル46n、46sと組み合わされることで、ロータ隈取りコイル46n、46sに生じる誘導電流により複数の片側先端突極52に生じる磁気特性を、ロータ14の周方向に交互に異ならせつつ、対応するロータコイル44n、44sに生じる誘導電流により、対応するロータ突極42に生じる磁気特性と一致させる。具体的には、各サイリスタ62が対応するロータ隈取りコイル46n、46sに流れる電流の方向を規制することで、先端にN極が形成されるロータ突極42が有する、周方向に1つおきの片側先端突極52の先端にN極が形成される。また、先端にN極が形成されるロータ突極42と隣り合う別のロータ突極42であって、先端にS極が形成されるロータ突極42が有する、周方向に1つおきの片側先端突極52の先端にS極が形成されるようにしている。
【0052】
図6に示すように、ロータコイル44n、44sはロータ隈取りコイル46n、46sに対し接続されている。図6は、本実施形態において、1つのロータ突極42(図5)に対応して、ロータコイル44n、44s及びロータ隈取りコイル46n、46sをサイリスタ62を介して接続した回路の1例を示す図である。ロータコイル44n(または44s)の両端に、主ダイオード54n(または54s)及び第1抵抗64が直列に接続されている。また、ロータコイル44n(または44s)の両端に、主ダイオード54n(または54s)及び第1抵抗64の直列接続部分と並列に第2抵抗66が接続されている。第2抵抗66の抵抗値は、第1抵抗64の抵抗値よりも高い。
【0053】
また、主ダイオード54n、54sのアノードA1側のロータコイル44n、44sの一端にサイリスタ62のゲート端子G2が接続され、サイリスタ62のカソード端子K2にロータコイル44n、44sの他端が接続されている。主ダイオード54n、54sのカソード端子K1は第1抵抗64の一端に接続されている。ロータ隈取りコイル46n、46sの両端にサイリスタ62のアノード端子A2及びカソード端子A2が接続されている。このようなサイリスタ62として、予め設定した所定電流値である保持電流値IA以上の電流がゲート端子G2に流れる場合にオンされ、保持電流値IA未満の電流がゲート端子G2に流れる場合にオフされるサイリスタ62を使用できる。このように、ロータ隈取りコイル46n、46sの両端にサイリスタ62が直列に接続されるとともに、ロータ隈取りコイル46n、46sは、ロータコイル44n、44sにサイリスタ62を介して接続されている。
【0054】
図5に示す制御部38は、ロータ14が逆回転する場合にステータコイル20u、20v、20wに流れる最大電流が、ロータ14が正回転する場合にステータコイル20u、20v、20wに流れる最大電流よりも小さくなり、かつ、逆回転時の最大電流が保持電流値IA未満となるようにインバータ60を制御する。したがって、逆回転時に、サイリスタ62(図6)はオンされず、ロータ隈取りコイル46n、46sに電流は流れない。
【0055】
このような回転電機10の動作時には、次の図7の(A)〜(D)に示すように、ロータ突極42とティース18との間で磁束が作用し、ロータ14が正方向に回転する。図7は、本実施形態の回転電機において、ロータ14の正回転時の様子を順に示す、図5に対応する図である。
【0056】
すなわち、図7(A)から図7(C)に示すように、3相のステータコイル20u、20v、20wにインバータ60(図5)から励磁電圧が加えられることで、ステータ12に回転磁界が発生すると、ステータ12のティース18で発生する励磁磁束により一部のティース18に一部のロータ突極42が矢印α方向に引き寄せられる。この場合に、ステータ12からロータ14にレベルの高い空間高調波が作用していると、ロータコイル44n、44sで生じる大きな磁束変動により、大きな誘導電流が生じて、ロータ突極42の磁力が強くなる。このため、回転電機10のトルクが向上する。
【0057】
この場合、各相のステータコイル20u、20v、20wに流れる電流を大きくする等により空間高調波のレベルを上げて、ロータコイル44n、44sの誘導電流を大きくすると、図7(C)、(D)のようにロータ隈取りコイル46n、46sに接続されたサイリスタ62がオンされ、ロータ隈取りコイル46n、46sに誘導電流が流れ、その誘導電流により片側先端突極52の先端から出る磁束J2の量が多くなる。この結果、回転電機10のトルクが向上する。また、図7(A)から図7(D)に移行するのにしたがって、ロータ突極42の突極本体48の先端から出る磁束J1は徐々に減少するが、図7(C)(D)で、ロータコイル44n、44sからの誘導磁束による遅れ電流がロータ隈取りコイル46n、46sに流れることで、片側先端突極52の先端から出る磁束J2が多くなるので、これによっても回転電機10のトルクが向上する。
【0058】
一方、ロータ14の逆回転時には、サイリスタ62をオフにしておけば、ロータ隈取りコイル46n、46sによる抵抗となるマイナストルクが働かないので、逆回転が可能となる。すなわち、制御部38は、ロータ14の逆回転時にステータコイル20u、20v、20wに流れる最大電流が、ロータ14の正回転時の場合にステータコイル20u、20v、20wに流れる最大電流よりも小さくなり、かつ、逆回転時の最大電流がサイリスタ62の保持電流値IA未満となるようにインバータ60を制御する。このため、ロータ14はステータ12に対し、図7(D)から図7(A)に移行するよう、図7の矢印αと逆方向に回転する、すなわち逆回転することが可能となる。
【0059】
このような回転電機10の場合には、ロータ突極42にロータ隈取りコイル46n、46sを設けてトルクを得る構成で、ロータ突極42及び片側先端突極52に巻き回しするロータコイル44n、44s及びロータ隈取りコイル46n、46sの電流方向を、主ダイオード54n、54s及びサイリスタ62でそれぞれ規制できる。しかもサイリスタ62は、ロータ隈取りコイル46n、46sに生じる誘導電流により片側先端突極52に生じる磁気特性を、対応するロータコイル44n、44sに生じる誘導電流により、対応するロータ突極42に生じる磁気特性と一致させている。このため、ロータ14の回転時に、ロータコイル44n、44s及びロータ隈取りコイル46n、46sに双方向に誘導電流が流れることがなく、各ロータ突極42で磁極が反転することがない。このため、トルクを安定して高くできる。
【0060】
また、ロータ隈取りコイル46n、46sは、ロータコイル44n、44sにサイリスタ62を介して接続されている。このため、ロータ突極42にロータ隈取りコイル46n、46sを設けてトルクを得る構成で、ロータコイル44n、44sに流す電流を適切に制御することで、ロータ14の正回転時にサイリスタ62がオンされ、逆回転時にサイリスタ62がオフされるようにすることができ、逆回転時のロータ隈取りコイル46n、46sによるマイナストルクの発生を抑制し、回転方向のトルクの減少を抑制することができる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0061】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記では、ステータの径方向内側にロータが対向配置された場合を説明したが、ステータの径方向外側にロータが対向配置された構成でも本発明を実施できる。また、ステータコイルはステータに集中巻きで巻き回しする場合を説明したが、例えばステータで空間高調波を含む回転磁界を生成できるのであればステータにステータコイルを分布巻きで巻き回しする構成でも本発明を実施できる。また、本発明では、例えばアキシャルギャップ型の回転電機等の構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
10 回転電機、12 ステータ、14 ロータ、16 ステータコア、18 ティース、20u,20v,20w ステータコイル、22 スロット、24 ティース本体、26 溝部、28 片側先端突極、30 ステータ隈取りコイル、32 主インバータ、34 バッテリ、36 副インバータ、38 制御部、40 ロータコア、42 ロータ突極、44n、44s ロータコイル、46n、46s ロータ隈取りコイル、47 回転軸、48 突極本体、50 溝部、52 片側先端突極、54n、54s 主ダイオード、56 副ダイオード、58 回転電機制御システム、60 インバータ、62 サイリスタ、64 第1抵抗、66 第2抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとが対向配置された回転電機であって、
前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコアの複数個所に配置され、それぞれ先端部の周方向片側に設けられた片側先端突極を有する複数のロータ突極と、前記各ロータ突極に巻き回しされた主コイルと、前記各片側先端突極に巻き回しされた隈取りコイルと、前記主コイルに接続された主磁気特性調整部と、前記隈取りコイルに接続された副磁気特性調整部とを含み、
複数の前記主磁気特性調整部は、前記主コイルに生じる誘導電流により前記複数のロータ突極に生じる磁気特性を周方向に交互に異ならせ、
複数の前記副磁気特性調整部は、前記隈取りコイルに生じる誘導電流により前記複数の片側先端突極に生じる磁気特性を、周方向に交互に異ならせつつ、対応する前記主コイルに生じる誘導電流により対応する前記ロータ突極に生じる磁気特性と一致させ、
さらに、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアの周方向複数個所に配置された複数のステータ突極と、前記各ステータ突極に巻き回しされた第2コイルとを含むことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記主磁気特性調整部は主ダイオードであり、
前記副磁気特性調整部は、前記主ダイオードに対し電気的に独立して設けられた副ダイオードであり、
さらに、前記ステータは、前記各ステータ突極に巻き回しされた前記第2コイルである第2主コイルと第2隈取りコイルとを含み、
前記第2主コイル及び前記第2隈取りコイルは、互いに独立して電流を流すことを可能とすることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の回転電機と、
電源に接続され、前記第2主コイルに交流電流を出力するインバータと、
前記電源または別の電源に接続され、前記第2隈取りコイルに第2電流を出力する第2電流出力部と、
前記インバータ及び前記第2電流出力部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第2主コイル及び前記第2隈取りコイルに流れる電流を、前記インバータ及び前記第2電流出力部を用いて制御することを特徴とする回転電機制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機制御システムにおいて、
前記制御部は、前記ロータが正回転する場合に、前記第2隈取りコイルに前記第2電流としてパルス電流が印加され、前記ロータが逆回転する場合に、前記第2隈取りコイルにパルス電流が、前記正回転時と異なるタイミングまたは異なる方向に印加されるように、前記第2電流出力部を制御することを特徴とする回転電機制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機において、
前記主磁気特性調整部はダイオードであり、
前記副磁気特性調整部はサイリスタであり、
前記隈取りコイルは、前記主コイルに前記サイリスタを介して接続されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機と、
電源に接続され、前記第2コイルに交流電流を出力するインバータと、
前記第2コイルに流れる電流を、前記インバータを用いて制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ロータが逆回転する場合に前記第2コイルに流れる最大電流が、前記ロータが正回転する場合に前記第2コイルに流れる最大電流よりも小さくなるように前記インバータを制御することを特徴とする回転電機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110942(P2013−110942A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256540(P2011−256540)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】