説明

固体撮像素子及びその製造方法

【課題】マイクロレンズ形成時のレンズ間スペースの制御性に優れ、またレンズ融着によるレンズ未形成部分の発生を抑え、マイクロレンズ形成安定性を高めることにより実効感度の高く、かつ、良好な色再現性が得られる固体撮像素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固体撮像素子上のマイクロレンズを、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上にマイクロレンズを形成する第一工程、前記第一工程において選択されなかった受光部上にマイクロレンズを形成する第二工程により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロレンズ付きの固体撮像素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体撮像素子では、電荷転送部など光電変換に寄与しない領域が各画素に存在しているため、画素面全体に占める受光部の受光面に対する開口率が15〜30%程度であり入射光の利用率が十分でないと言う問題がある。このような問題を解消し感度向上を達成するために、半導体プロセスによる受光部以外の領域の微細化する技術や、高エネルギーイオン注入技術を導入して転送レジスタ部の飽和電荷量を高めることにより転送レジスタ部の面積を小さくし受光部面積及び開口面積を大きくする試みがなされているが、これらは固体撮像素子の構造的に限界がある。そこで近年では図2に示すように受光部上部に凸状のマイクロレンズを設け、入射した光を受光部に効率的に集光させ実効開口率を高めたオンチップマイクロレンズを有した撮像素子が提供されている。
【0003】
さらにカラー固体撮像素子においては、マイクロレンズに加えてカラーフィルタが備えられている。基板表層部に光電変換を行う受光部が複数箇所形成されている撮像素子に、カラーフィルタ及びマイクロレンズを形成する一般的な製造方法は下記の通りである。
(1)受光部の透明樹脂による受光部の穴埋め
(2)受光部の平坦化
(3)カラーフィルタの形成
(4)透明樹脂によるカラーフィルタの平坦化
(5)マイクロレンズの形成
【0004】
特に(5)マイクロレンズの形成を図面を参照して説明する。図2は従来のマイクロレンズの製造方法である。1は半導体基板、2は受光部、3は電荷転送部、4は下部平坦化層、5はカラーフィルタ、6は遮光膜、7は上部平坦化層である(図2(a)参照)。上部平坦化層上にマイクロレンズ形成用レジストを塗布し、従来のフォトリソグラフィー技術によりパターン12を形成した後(図2(b)参照)、加熱処理を施し、パターンを変形させて受光部上に凸状のマイクロレンズ13を形成する(図2(c)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、固体撮像素子の高解像度化や小型化に伴い、マイクロレンズを高精細化する必要がある。併せて受光素子の受光面積が小さくなる為、マイクロレンズの集光位置を保ちながらレンズの幅を広げレンズ間の距離をできるだけ小さくすることが望ましい。すなわち図2(c)のマイクロレンズ間スペースをできるだけ小さくすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、このような従来の各受光部に対向する位置に入射光を集光させるマイクロレンズを設けた固体撮像素子では、光電変換有効領域の入射光を効率よく集光するために、マイクロレンズの幅を単位画素ピッチにできるだけ近づけようとすると、加熱時にレンズの膨張(距離の広がり)し、収縮するため、隣接するレンズ14が融着してくずれ、実効開口率が小さくなり、高い実効感度が得られないという問題点があった(図3参照)。
【0007】
他方、カラーフィルタに用いられる、R、G、B(原色フィルタ)、または、C、M、Y(補色フィルタ)の各色の透過率にはばらつきがあり、それが原因となり良好な色再現性が得られないという問題点があった。
【0008】
本発明は、マイクロレンズ形成時のレンズ間スペースの制御性に優れ、またレンズ融着によるレンズ未形成部分の発生を抑え、マイクロレンズ形成安定性を高めることにより実効感度の高く、かつ、良好な色再現性が得られる固体撮像素子及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、半導体基板上に複数の受光部を備え、その上に少なくともマイクロレンズを形成する固体撮像素子の製造方法において、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上にマイクロレンズを形成する第一工程、前記第一工程において選択されなかった受光部上にマイクロレンズを形成する第二工程を少なくとも具備することを特徴とする固体撮像素子の製造方法である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、半導体基板上に複数の受光部を備え、その上に少なくともマイクロレンズを形成する固体撮像素子において、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上のマイクロレンズを形成するレジストと、他のマイクロレンズを形成するレジストが異なることを特徴とする固体撮像素子である。
【発明の効果】
【0011】
以上より明らかなように、請求項1に係る固体撮像素子の製造方法によれば、第一工程により作成されたマイクロレンズは溶融・硬化等により素性が変化し、第二工程においてはほとんど膨張しないため、例え、第一工程と第二工程の加熱条件が同じであってもレンズの融着が起こり難い。
【0012】
よって、隣接したマイクロレンズ同士が接触し、マイクロレンズ未形成部分の発生を防ぐことができるので、入射光を単位画素ピッチ近傍の幅で有効的に集光し、実効感度を向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る固体撮像素子によれば、例えば、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上のマイクロレンズを形成するレジストの軟化点と、他のマイクロレンズを形成するレジストの軟化点を異ならせた場合は、他のマイクロレンズを形成する工程(第二工程)の加熱条件が複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上のマイクロレンズを形成する工程(第一工程)より高いものとなって、更に、レンズの融着が起こり難い。
【0014】
また、カラーフィルタの色配列が特定の色が市松状に並ぶベイヤー配列、インターライン配列、フィールド色差順次配列、フレームインターリーブ配列を採用し、第一工程で用いるレジストと第二工程で用いるレジストの屈折率(すなわち、集光効率)を異ならせた場合は、各色の感度のばらつきを調整することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
従来技術のように全てのマイクロレンズを同時に作成した場合、各マイクロレンズはそれぞれ膨張するため、隣接するレンズの融着が起こり易いが、請求項1に係わる固体撮像素子の製造方法によれば、第一工程により作成されたマイクロレンズは溶融・硬化等により素性が変化し、第二工程においてはほとんど膨張しないため、例え、第一工程と第二工程の加熱条件が同じであってもレンズの融着が起こり難い。
【0016】
また、請求項2に係る固体撮像素子によれば、例えば、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上のマイクロレンズを形成するレジストの軟化点と、他のマイクロレンズを形成するレジストの軟化点を異なることすれば、他のマイクロレンズを形成する工程(第二工程)の加熱条件が複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上のマイクロレンズを形成する工程(第一工程)より高いものとなってもレンズの融着が起こり難い。また、カラーフィルタの色配列が特定の色が市松状に並ぶベイヤー配列、インターライン配列、フィールド色差順次配列、フレームインターリーブ配列を採用し、第一工程で用いるレジストと第二工程で用いるレジストの屈折率(すなわち、集光効率)を異ならせれば、各色の感度のばらつきを調整することもできる。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
次に本発明について図面を参照にして説明する。図1は本発明の実施例である固体撮像素子の製造工程を示した断面構造及び平面構造の模式図である。本実施例では単位画素ピッチが5.0μmの固体撮像素子を用いた。図1(a)は、固体撮像素子にカラーフィルタを形成した時の固体撮像素子の断面図である。1は半導体基板、2は受光素子、3は電荷転送部、4は下部平坦化層、5はカラーフィルタ、6は遮光膜、7は上部平坦化層であり従来の構成と同じであるため、同一の符号を付けて説明を省略する。
【0018】
次に、第一工程として、マイクロレンズ用レジストを用い、公知のフォトリソグラフィー法によりマイクロレンズとなるパターン8を形成する(図1(b)参照)。この際、パターンは複数の受光部の中から市松状に選択された受光部のカラーフィルタ上に形成する。本実施例の場合、カラーフィルタの色配列がベイヤー配列を採用するため、R(赤)、B(青)の領域が市松状に並ぶので、そのカラーフィルタ上に形成する。次に、160℃の加熱処理にてマイクロレンズ10を形成する(図1(c)参照)。この時のマイクロレンズ用レジストのパターン寸法は4.5μm(パターン間スペースは1.0μm)で、加熱処理後のレンズ径は4.9μmである。その後、第二工程として、第一工程において選択されなかった受光部のカラーフィルタ上に前記と同様にパターン9を形成する(図1(d)参照)。本実施例の場合、G(緑)のカラーフィルタ上に形成することとなる。この時のマイクロレンズ用レジストのパターン寸法は4.5μmで、加熱処理後のレンズ径は4.9μmである。これによりレンズ間スペースが0.2μmのマイクロレンズが高い生産安定性で形成でき、従来法に比べ実効感度が約10%向上した。
【0019】
[実施例2]
実施例1と同一の固体撮像素子上に、第一工程として、軟化点が140℃のマイクロレンズ用レジストを用い、公知のフォトリソグラフィー法によりマイクロレンズとなるパターン8を形成する。この際、パターンは複数の受光部の中から市松状に選択された受光部のカラーフィルタ上に形成する。本実施例の場合、R(赤)、B(青)の領域が市松状に並ぶので、そのカラーフィルタ上に形成する。次に、150℃の加熱処理にてマイクロレンズ10を形成する。この時のマイクロレンズ用レジストのパターン寸法は4.5μmで、加熱処理後のレンズ径は4.9μmである。その後、第二工程として、第一工程において選択されなかった受光部のカラーフィルタ上に軟化点が150℃のマイクロレンズ用レジストを用い、160℃の加熱処理にてパターン9を形成する。本実施例の場合、G(緑)のカラーフィルタ上に形成することとなる。この時のマイクロレンズ用レジストのパターン寸法は4.5μmで、加熱処理後のレンズ径は4.9μmである。これによりレンズ間スペースが0.2μmのマイクロレンズが高い生産安定性で形成でき、従来法に比べ実効感度が約10%向上した。
【0020】
[実施例3]
実施例1と同一の固体撮像素子上に、第一工程として、屈折率が1.55のマイクロレンズ用レジストを用い、公知のフォトリソグラフィー法によりマイクロレンズとなるパターン8を形成する。この際、パターンは複数の受光部の中から市松状に選択された受光部のカラーフィルタ上に形成する。本実施例の場合、R(赤)、B(青)の領域が市松状に並ぶので、そのカラーフィルタ上に形成する。次に、160℃の加熱処理にてマイクロレンズ10を形成する。この時のマイクロレンズ用レジストのパターン寸法は4.5μmで、加熱処理後のレンズ径は4.9μmである。その後、第二工程として、第一工程において選択されなかった受光部のカラーフィルタ上に屈折率が1.57のマイクロレンズ用レジストを用い、160℃の加熱処理にてパターン9を形成する。本実施例の場合、G(緑)のカラーフィルタ上に形成することとなる。この時のマイクロレンズ用レジストのパターン寸法は4.5μmで、加熱処理後のレンズ径は4.9μmである。これによりレンズ間スペースが0.2μmのマイクロレンズが高い生産安定性で形成でき、従来法に比べ色再現性が約10%向上した。
【0021】
[比較例]
実施例1と同一の固体撮像素子上に実施例1と同一のマイクロレンズ用レジストを塗布し、公知のフォトリソグラフィー法により全てのパターンを形成する。この時のパターンニング寸法は4.5μm(パターン間スペースは1.0μm)である。その後加熱処理により、マイクロレンズを形成したところ、図3のようにレンズの融着が多く、生産安定性が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の固体撮像素子の製造工程を示した断面構造の説明図である。
【図2】従来の固体撮像素子の製造工程を示した断面構造の説明図である。
【図3】融着したマイクロレンズの説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 半導体基板
2 受光部
3 電荷転送部
4 下部平坦化層
5 カラーフィルタ
6 遮光層
7 上部平坦化層
8 第一工程で形成されたパターン
9 第二工程で形成されたパターン
10 第一工程で形成されたマイクロレンズ
11 第二工程で形成されたマイクロレンズ
12 パターン
13 マイクロレンズ
14 融着したマイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に複数の受光部を備え、その上に少なくともマイクロレンズを形成する固体撮像素子の製造方法において、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上にマイクロレンズを形成する第一工程、前記第一工程において選択されなかった受光部上にマイクロレンズを形成する第二工程を少なくとも具備することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
半導体基板上に複数の受光部を備え、その上に少なくともマイクロレンズを形成する固体撮像素子において、複数の受光部の中から市松状に選択された受光部上のマイクロレンズを形成するレジストと、他のマイクロレンズを形成するレジストが異なることを特徴とする固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−66931(P2006−66931A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299684(P2005−299684)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【分割の表示】特願平11−72356の分割
【原出願日】平成11年3月17日(1999.3.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】