固体撮像素子
【課題】測距精度の向上を図ることが可能となる固体撮像素子を提供する。
【解決手段】基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する固体撮像素子であって、
前記複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されており、
前記距離測定用の画素が有する前記光入射部は、該光入射部の内部に特定入射角で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタを備え、
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有している。
【解決手段】基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する固体撮像素子であって、
前記複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されており、
前記距離測定用の画素が有する前記光入射部は、該光入射部の内部に特定入射角で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタを備え、
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に関し、特にデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどに用いられる固体撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやビデオカメラの測距用距離検出技術として、撮像素子の一部の画素に測距機能を持たせ、位相差方式で検出する固体撮像装置が特許文献1で開示されている。
この固体撮像装置では、従来のコントラスト方式とは異なり、距離を測定するためにレンズを動かす必要が無いため、高速高精細な測距が可能に構成されている。また、動画撮影時にリアルタイム測距が可能とされている。
そして、測距用画素の構造として、マイクロレンズと光電変換部との間にマイクロレンズの光学中心に対し、偏心した開口部を設けた構成とされている。
これにより、カメラレンズの瞳上における特定の領域を通過した光を、選択的に光電変換部に導き、距離の測定が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3592147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例のものでは、開口部の位置がカメラレンズの瞳位置と厳密に共役では無く、また配線部での光散乱などにより、偏心した開口部では十分な光束分離をすることができず、測距精度の向上を図る上で必ずしも満足の得られるものではない。
特に、画素サイズが小さくなるにつれて、光電変換部に光を導くためのマイクロレンズのF値が大きくなり、画素サイズと回折像の大きさがほぼ同じとなる。
そのため、画素内で光が広がってしまい、偏心した開口部では十分な光束分離が行えず、測距精度の向上を図る上で改善が望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、測距精度の向上を図ることが可能となる固体撮像素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する固体撮像素子であって、
前記複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されており、
前記距離測定用の画素が有する前記光入射部は、該光入射部の内部に特定入射角で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタを備え、
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有していることを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、測距精度の向上を図ることが可能となる固体撮像素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1における距離測定用の画素の内部構造を説明する概略断面図。
【図2】本発明の実施形態1における距離測定用の画素の近傍における構造を説明する図。
【図3】本発明の実施形態1におけるカメラレンズの射出瞳と画素への入射光線の関係を説明する図。
【図4】本発明の実施形態1における導波モード共鳴フィルタの構造を説明する図。
【図5】本発明の実施形態1における入射光が選択的に検出されることを説明する図。
【図6】本発明の実施形態1における距離測定用画素の入射光検出特性を説明する図。
【図7】本発明の実施形態1における入射光が選択的に検出されることを説明する図。
【図8】本発明の実施形態1における距離測定用画素近傍の構造を説明する図。
【図9】本発明の実施形態1における距離測定用画素近傍の構造を説明する図。
【図10】本発明の実施形態1における複数の距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図11】本発明の実施形態1における固体撮像素子の製造方法を説明する図。
【図12】本発明の実施形態1における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図13】本発明の実施形態2における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図14】本発明の実施形態2における入射光が選択的に検出されることを説明する図。
【図15】本発明の実施形態2における距離測定用画素の入射光検出特性を説明する図。
【図16】本発明の実施形態2における光の伝播の様子を説明する図。
【図17】本発明の実施形態2における導波モードフィルタの特性を説明する図。
【図18】本発明の実施形態2における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図19】本発明の実施形態2における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図20】本発明の実施形態2における固体撮像素子の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、透過率が入射光の入射角によって異なるという、導波モード共鳴フィルタの特性を用い、特に、導波モード共鳴フィルタの法線を、該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有するように構成した点に特徴がある。
これにより、入射光のうち特定入射角で入射した光を検出することを可能とし、高精度な距離測定が行える固体撮像素子を実現したものである。
なお、上記導波モード共鳴フィルタとしては、非特許文献(マシェフ、外1名、「ゼロ・オーダー・アノマリー・オブ・ディエレクトリック・コーテッド・グレーティングス(Zero order anomaly of dielectric coated gratings)」、オプティカル・コミュニケーション(optical communication)、55、pp.377−380、1985)において開示されている導波モード共鳴体を利用したフィルタを用いることができる。即ち、高誘電率部と低誘電率部とが周期的に配置された既知の構造のフィルタを用いることができる。
本発明を実施するための具体的な実施形態は、以下の実施形態による固体撮像素子の構成例によって説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一の数字を付け、その繰り返しの説明は省略する。
また、本発明に直接係らない、ゲート電極や配線などは図示を省略した。
【0010】
[実施形態1]
本発明に係る固体撮像素子に関する実施形態1を、図を用いて説明する。
本実施形態に係る固体撮像素子は、基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する。この複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されている。
図1は、距離測定用の画素100の概略断面図である。
本実施形態の画素100は、光の入射側(−z側)より、距離測定に用いる波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタ101、内部に導波モード共鳴フィルタ102を有する光入射部103、内部に光電変換部104を有するシリコン基板105を有する。
画素100に到達する入射光束106は拡がり角2θを持ち、その主光線107は−z方向から+z方向に向かってz軸に沿っている。
導波モード共鳴フィルタ102は、距離測定に用いる波長の光に対し、導波モード共鳴フィルタ102の法線108に垂直に入射した光を反射する特性を有する。
また、導波モード共鳴フィルタ102の法線108は、入射光束106の主光線107に対して角度φ傾いて配置されている。
入射光束106の主光線107、シリコン基板105の法線109は共にz方向を向いているため、シリコン基板105の法線109と導波モード共鳴フィルタ102の法線108のなす角φ’(所定角度)はφに等しい。
図2に、距離測定用の画素の近傍における構造を説明する図を示す。
図2に示すように、距離測定用の画素100に隣接する画素150、160には、光入射部153、163中の、導波モード共鳴フィルタ102よりも+z側(シリコン基板105側)に、吸収フィルタ151、161が配置されている。
ここで、吸収フィルタ151、161は、距離測定に用いる波長の光を吸収する特性を有している。
【0011】
以上のように入射光束106の主光線107に対して、導波モード共鳴フィルタ102の法線108が傾いて配置されていれば、以下に述べる理由によって、高精度の測距が可能となる。
まず、図3を用いて、距離測定用の画素100において、位相差方式を用いた距離測定が行える条件について説明する。
位相差方式では、カメラレンズの射出瞳170上における特定領域171を通過した光量と、それとは対称な領域172を通過した光量を比較することで、距離測定を行う。
距離測定用の画素100に対し、カメラレンズの射出瞳170は十分遠いことから、カメラレンズの射出瞳170中の特定領域171から画素に入射した光は、画素から見ると、入射角173で入射した光として感じる。
同様に、172からの光は入射角174で入射した光として感じる。
従って、距離測定のためには、入射角173で入射した光のみを選択的に検出する画素と、入射角174で入射した光のみを選択的に検出する画素を用意し、両者の出力信号を比較すれば良い。
即ち、特定入射角で入射した光のみを選択的に受光することが必要である。
【0012】
つぎに、導波モード共鳴フィルタ102の構成と原理について説明を行う。
図4(a)は、導波モード共鳴フィルタ102の概略断面図である。図4(a)のZ軸は、導波モード共鳴フィルタ102の法線108と一致する方向である(即ち、図4のX、Z軸は図1のx、z軸に対して角度φだけ傾いている。)。
導波モード共鳴フィルタは、X方向に幅Aを持つ高誘電率部120、X方向に幅Bを持つ低誘電率部121がX方向に周期P(=A+B)で配置された構造からなっている。
また、Y方向には図4(b)のように一様な誘電率分布を持っていても良いし、図4(c)、図4(d)のように周期分布を持っていても良い。
導波モード共鳴フィルタ102に光が入射した場合、誘電率の異なる領域(高誘電率部120、低誘電率部121)が周期的に配置されているため、X方向に沿って特定の大きさを持つ波数ベクトルを持つ光と共鳴を生じ、入射光が反射される。
X方向の波数ベクトルの大きさは、導波モード共鳴フィルタへの入射角によって異なるため、共鳴を生じる角度で入射した光を反射し、共鳴を生じない角度で入射した光を透過する特性が得られる。
【0013】
図1では、共鳴を生じる角度がZ方向(導波モード共鳴フィルタ102の法線108の方向)となるような導波モード共鳴フィルタを用い、法線108の方向が入射光束の主光線107から角度φだけ傾いている。
すると、+y方向から見て、+z方向(主光線107の方向)より反時計回りにφだけ傾いて入射した光106Aは、導波モード共鳴フィルタ102に対してZ方向(法線108の方向)より入射することとなり、反射される(図5(a))。
以上のように、2θの拡がりを持って入射した光束のうち、反時計回りにφだけ傾いて入射した光106Aのみを選択的に反射できる。
実際には、共鳴条件にはある程度の拡がりがあるため、導波モード共鳴フィルタ102は、図5(b)に示すように、反時計回りにφの方向に透過率の谷を持ち、拡がりを持った透過率特性を有する。
【0014】
距離測定のためには、図5(c)のように、反時計回りに傾いて入射した光の透過率(領域132の面積)に対する、時計回りに傾いて入射した光の透過率(領域131の面積)が大きければ良い。
反時計回りに傾いて入射した光は、角度φ付近で透過率が低下しているため、時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光できている。
導波モード共鳴フィルタ102の法線108と、入射光束106の主光線107のなす角φは、入射光束106の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下である方が好ましい。
なぜなら、透過率の谷が入射光束の角度拡がりの範囲内にくるため、拡がり角の半分以下とすることで反時計回りに傾いて入射した光を効率よく反射できるからである。
【0015】
図6(a)に、光電変換部における電場強度の入射角依存性を、電磁場計算によって計算した結果を示す。
横軸が反時計回りを正方向に取った入射角度、縦軸が電場強度である。画素100、150、160のx方向の幅は1.4μmであり、導波モード共鳴フィルタ102の構造パラメータ(A、B、C、ε1、ε2、ε3)、は図6(b)に示すとおりである。
ここで、高誘電率部120の比誘電率をε1、低誘電率部121の比誘電率をε2とし、導波モード共鳴フィルタ102の、周囲の光入射部103の比誘電率をε3とする。
また、導波モード共鳴フィルタのZ方向の高さをCとした。導波モード共鳴フィルタ102は、Y方向には一様な誘電率分布を有しており、距離測定に用いる光の波長は546nmである。
入射光束106は、主光線107が+z方向、拡がり角(2θ)が20度で入射している。
導波モード共鳴フィルタ102の法線108と、シリコン基板105表面の法線109のなす角(φ)は5度とした。
図6(a)に示すように、反時計回りに5度傾いた光106Aは43%しか透過しないが、時計回りに5度傾いた光106Bは71%が透過する。
従って、時計回りに傾いて入射した光106Bを選択的に受光しており、位相差方式を用いた距離測定が可能となっている。
【0016】
以上のように、特定入射角(0度)で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタ102を用い、導波モード共鳴フィルタ102の法線108を、導波モード共鳴フィルタ102に入射する光束106の主光線107に対して、(角度φ)傾けて配置する。
それにより、入射光束106のうち、特定入射角で入射した光(106B)を選択的に受光でき、高精度の測距が可能となる。
一般的に、固体撮像素子の中央部付近の画素では、図1のように、入射光束106の主光線107は、シリコン基板105の法線109の方向と一致する。従って、導波モード共鳴フィルタの法線を、基板の入射面に対して所定角度(φ’)傾けて配置すれば、高精度の測距が可能となる。
なお、図1では、共鳴を生じる角度がZ方向となるような導波モード共鳴フィルタ102を用いているが、共鳴を生じる角度がZ方向から傾いた方向となるような導波モード共鳴フィルタを用いても良い。
例えば、Z方向から2φ傾いた方向となるような導波モード共鳴フィルタ112の場合、図7(a)のように時計回りにφだけ傾いて入射した光106Bは共鳴条件を満たすために反射される。
従って、反時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光できる。この条件を満たすためには、図6(b)の構造パラメータを持つ導波モード共鳴フィルタを用い、距離測定に用いる光の波長を674nmとすればよい。
また、距離測定に用いる光の波長を546nmのままで、構造パラメータを図7(b)に変えても良い。
但し、Z方向から傾いた方向の光を反射する導波モード共鳴フィルタ112を用いるより、導波モード共鳴フィルタの法線108方向に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタ102を用いた方が、距離測定の精度が上がるため好ましい。
【0017】
これは以下のような理由による。導波モード共鳴フィルタの周期配置の対称性は、Z方向から入射した光に対して最も良い。
そのため、導波モード共鳴フィルタとZ方向から入射した光の共鳴は、Z方向からずれた方向から入射した光との共鳴よりも強くなる。
結果として、Z方向から入射した光に対して共鳴するような導波モード共鳴フィルタ102の方が、Z方向から入射した光に対して共鳴するような導波モード共鳴フィルタ112よりも、角度選択特性が有効な波長範囲が広くなる。
従って、導波モード共鳴フィルタ102の方が、導波モード共鳴フィルタ112よりも、より広い帯域の波長の光を距離測定に用いることができる。
距離測定の精度は光の光量で決まるため、導波モード共鳴フィルタ102の方が、導波モード共鳴フィルタ112よりも、精度が高くなることがわかる。
なお、図1では、距離測定用の画素100の光入射側に、距離測定に用いる波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタ101を設けているが、波長選択フィルタを設けなくても良い。
但し、波長選択フィルタ101を設ける方が好ましい。なぜならば、波長選択フィルタ101を設けた場合、距離測定に用いる波長以外の光が、入射光束の拡がり角全部に渡って入射することを防げるため、距離測定の精度がさらに向上するためである。
距離測定に用いる波長は、被写体の輝度が高い波長を選ぶ方が、距離測定の精度が上がるため好ましい。
一般的な被写体であれば、波長550nm付近の光に対して輝度が高いため、550nm付近の波長の光を距離測定に用いるのが好ましい。
【0018】
また、図1では距離測定用の画素100に隣接する画素150、160に距離測定に用いる波長の光を吸収する吸収フィルタ151、161が配置されているが、必ずしも吸収フィルタを配置する必要はない。
但し、吸収フィルタ151、161を配置する方が、距離測定用の画素100に入った光のうち、隣接画素150、160で検出される光量が減るため、好ましい。
吸収フィルタ151、161は、距離測定用に用いる波長の光を吸収するが、画素150、160で検出する波長の光は吸収しないような波長選択性を持つ。具体的には色素や金属などを使えばよい。
なお、吸収フィルタ151、161は図8のように導波モード共鳴フィルタ102より光の入射側においても良い。
但し、図1のように導波共鳴モードフィルタ102とシリコン基板105の間においた方が好ましい。
なぜなら、隣接画素の光電変換部154、164により近い位置で、導波モード共鳴フィルタ102を透過した光を吸収できるためである。
また、図2では導波モード共鳴フィルタ102が、距離測定用の画素100を含む複数の画素(画素150、画素100、画素160)にまたがって配置されているが、導波モード共鳴フィルタは距離測定用の画素100のみに設けられていれば良い(図9)。
但し、複数の画素に渡って導波モード共鳴フィルタが配置されていれば、導波モード共鳴フィルタの角度選択特性が優れるため、好ましい。
なぜなら、複数の画素に渡って配置することで、導波モード共鳴フィルタ102の周期配置の周期数が増え、入射光束106と導波モード共鳴フィルタ102の共鳴が強くなるためである。
【0019】
図1に示す焦点検出用の画素では、入射光束106の主光線107が+z方向(シリコン基板表面105の法線109方向)を向いているが、周辺画素において、主光線107が+z方向から傾いて入射することがある。
その場合、入射光束の主光線107と、導波モード共鳴フィルタの法線108のなす角度φが一定となるように、導波モード共鳴フィルタの法線108と、シリコン基板の法線109のなす角φ’(所定角度)を画素毎に変えることが好ましい(図10)。
これは以下の理由による。導波モード共鳴フィルタの共鳴条件は、導波モード共鳴フィルタに対する光の入射角で決定される。
そのため、入射光束の主光線107のなす角度と導波モード共鳴フィルタの法線108のなす角度(φ)を一定とすれば、各画素で共鳴条件(入射光束のうち共鳴を生じる光の入射角)が同一となる。
その結果、複数の焦点検出用の画素において、同じ導波モード共鳴フィルタを用いることが可能となり、固体撮像素子の製造が容易となる。
また、本実施形態では、複数の画素間でつぎのような構成を採ることができる。即ち、導波モード共鳴フィルタの法線と、導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線の傾き角が等しく、かつ傾きの向きが逆であるような一対の距離測定用の画素を構成する。そして、該一対の距離測定用の画素からの信号を用いて、距離測定用の信号を出力するように構成することができる。
【0020】
つぎに、本実施形態における固体撮像素子の製造方法を図11を用いて説明する。
まず、シリコン基板105の所定の位置にイオンを打ち込み、光電変換部104を作製する(図11(a))。
次に、必要に応じて配線層やゲート電極などを配置した後、SiO2部による光入射部103を形成し、CMPなどによって平坦化処理を行う(図11(b))。
続いて、画素150、160に対して色素の塗布などで吸収フィルタ151、161を作製し、画素100についてはSiO2によって平坦化する(図11(c))。
その後、リソグラフィーによって、−x方向から+x方向に向かって膜厚が連続的に厚くなる犠牲層180を作製し、ドライエッチを行う(図11(d))。
この際、犠牲層180は、エッチングガスに対して完全な耐性を持つもので無ければ良い。
膜厚の薄い犠牲層ほど短い時間でエッチングされるため、犠牲層180の膜厚が厚いほどSiO2部がエッチングされずに厚く残る(図11(e))。
次に、傾いたSiO2面に、リソグラフィーと堆積などによって高誘電率部120、低誘電率部121を周期的に配置して導波モード共鳴フィルタを形成する(図11(f))。
この時、高誘電率部と低誘電率部は所望の誘電率を持つものであれば良く、例えばTiO2とSiO2の組み合わせなどを用いればよい。
更に、SiO2を堆積した後、+x方向から−x方向に向かって膜厚が連続的に厚くなる犠牲層181を作製し、ドライエッチを行う。
すると、図11(d)の工程と同様に、犠牲層181の膜厚の厚いものほどSiO2が厚く残る。
その後、CMPなどを施すことで、平坦化された光入射部103が形成される(図11(g))。
最後に、色素の塗布などで波長選択フィルタ101を、距離測定用の画素100に作製すれば、固体撮像素子が製造できる(図11(h))。
【0021】
なお、本実施形態では、光入射部103が平坦化されている例を示したが、必ずしも平坦化されている必要はない。但し、光入射部103が平坦化されていたほうが、画素間の段差によって発生した散乱光がクロストークやロスの原因となるのを防げるために好ましい。
また、本実施形態では、シリコン基板105に対して光電変換部104を作製するためにイオンを打ち込んだほうから光を入射する、表面入射型の固体撮像素子の例を示したが、必ずしも表面入射型の固体撮像素子である必要はない。
即ち、図12のように、シリコン基板の、イオンを打ち込んでいない側から光を入射する、裏面入射型の固体撮像素子に適用しても良い。
【0022】
[実施形態2]
実施形態2として、上記実施形態1と異なる形態の固体撮像素子の構成例について説明する。
図13に示すように、本実施形態における固体撮像素子200は、実施形態1の固体撮像素子に対し、導波モード共鳴フィルタ202の特性と配置、及び導波モード共鳴フィルタ202よりも光入射側に、偏向素子210が配置されている構成が異なる。
ここでの導波モード共鳴フィルタ202は、図14に示すように、距離測定に用いる波長の光に対し、導波モード共鳴フィルタ202の法線208から角度γ(所定の反射角度)だけ傾いた光を反射する特性を有する構成を備える。
また、導波モード共鳴フィルタ202の法線208は、シリコン基板105の法線109と同じ方向となるように配置されている。
偏向素子210は、シリコン基板105の入射面(xy面)に対して角度αだけ傾いた面211(偏向面)を有し、入射光束106の主光線107を、角度β(所定の偏向角度)だけ偏向させる特性を有する。
【0023】
以上のように構成された導波モード共鳴フィルタ202に対し、上記偏向素子210を配置すれば、以下に述べる理由によって、高精度の測距が可能となる。実施形態1で説明したように、距離測定のためには、特定角度から入射した光のみを選択的に受光すればよい。
そこで、導波モード共鳴フィルタ202、偏向素子210によって特定角度から入射した光のみを選択的に受光できることを示す。
図13では、+z方向(入射光束の中心線107の方向)から時計回りに角度γ−βだけ傾いた光106Bは、導波モード共鳴フィルタ202に対して法線208の方向より角度γだけ傾いて入射することとなり、共鳴条件を満たして反射される(図14)。
そのため、時計回りに傾いて入射した光の透過率が、反時計回りに傾いて入射した光の透過率よりも小さく、反時計回りに傾いて入射した光を選択的に検出できている。
【0024】
図15(a)に、光電変換部における電場強度の入射角依存性を、電磁場計算によって計算した結果を示す。
横軸が反時計回りを正方向に取った入射角度、縦軸が電場強度である。画素200、150、160のx方向の幅は1.4μmである。
また、導波モード共鳴フィルタ202の構造パラメータ(A、B、C、ε1、ε2、ε3)、及び偏向素子210の構造パラメータ(頂角α、誘電率ε4)は、図15(b)に示すとおりである。
導波モード共鳴フィルタ202は、Y方向には一様な誘電率分布を有しており、距離測定に用いる光の波長は674nmである。光束106は、主光線107が+z方向、拡がり角(2θ)が20度で入射している。
図15(a)に示すように、反時計回りに5度傾いた光は96%が透過し、時計回りに5度傾いた光は25%しか透過しない。
従って、反時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光しており、位相差方式を利用した距離測定が可能となっている。
本計算形態では、角度β(所定の偏向角度)が5度、角度γ(所定の反射角度)が10度となるように導波モード共鳴フィルタ202及び偏向素子210の構造パラメータが設計されている。
【0025】
以上で示したように、偏向素子210によって、入射光束106の主光線107の方向を所定の偏向角度(β)だけ曲げ、主光線を導波モードフィルタ202の法線208に対して傾けて入射させている。
それにより、入射光束106のうち、特定入射角で入射した光を選択的に受光でき、高精度の測距が可能となる。
なお、図13では、共鳴を生じる角度がZ方向(法線208の方向)から角度γ傾いた方向となるような導波モード共鳴フィルタ202を用いているが、共鳴を生じる角度がZ方向となるような導波モード共鳴フィルタ212を用いても良い。
この場合、入射光束の主光線106の方向より反時計回りにβだけ傾いて入射した光106Aが共鳴によって反射される(図16(a))。
従って、時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光できる。このような条件を満たすためには、図15(b)の構造パラメータを持つ共鳴フィルタを用い、距離測定に用いる光の波長を546nmとすればよい。
また、距離測定に用いる光の波長を674nmのままで、構造パラメータを図16(b)に変えても良い。
【0026】
導波モード共鳴フィルタの法線108方向に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタ212を用いれば、実施形態1で説明したように、より広い帯域の波長の光を測距に用いることができる。
その結果、測距精度が向上するため好ましい。
この時、偏向素子210による主光線107の曲げ角β(所定の偏向角度)は、入射光束106の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下であることが好ましい。
なぜなら、透過率の谷が入射光束の拡がりの範囲内に来るため、反時計周りに傾いて入射した光を効率よく反射できるためである(図16(c))。
一方、導波モード共鳴フィルタの法線208の方向(Z方向)から角度γ(所定の反射角度)傾いた光を反射する導波モード共鳴フィルタ202を用い、曲げ角βが入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)よりも小さい偏向素子210を用いると以下の利点がある。
利点とは、距離測定用の画素100に入射した光のうち、隣接する画素150、160で検出される光の光量を減らせるという利点である。
【0027】
これは以下のような理由による。共鳴を生じる角度がZ方向となるような導波モード共鳴フィルタ212を用いた場合、+z方向より時計回りに傾いて入射した光106Bが導波モード共鳴フィルタ212を透過する。
従って、透過光束はシリコン基板105の法線109に対して傾いて入射する(図16(d))。
そのため、導波モード共鳴フィルタ212を透過した光のうち、隣接画素で検出される光量の割合が高くなる。
一方、共鳴を生じる角度がZ方向から角度γ傾いている導波モード共鳴フィルタ202を用いた場合は、反時計回りに傾いて入射した光106Aが導波モード共鳴フィルタ202を透過する。
反時計回りに傾いて入射した光は、偏向素子210によって角度β曲げられるため、シリコン基板105に対して、+z方向から反時計回りを正方向として、角度−β〜角度−β+θの範囲の傾きで入射する(図17(a))。
この時、−β<0<−β+θの条件を満たしていれば、透過光束の一部が、シリコン基板105の法線109に沿って入射する。従って、導波モード共鳴フィルタ202を透過した光のうち、隣接画素で検出される光量が少ない。
−β<0<−β+θの不等式は、0<β<θと等価であるため、偏向素子210による主光線の曲げ角β(所定の偏向角度)が、入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下であれば、隣接画素で検出される光量が少ないことがわかる。
【0028】
共鳴を生じる方向がZ方向から角度γ傾いた角度となるような導波モード共鳴フィルタ202を用いた場合、
角度γ(所定の反射角度)と、偏向素子210による曲げ角β(所定の偏向角度)の差が、入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下であることが好ましい。
なぜなら、透過率の一方の谷が時計回りに傾いた入射光束の拡がりの範囲内に来るため、時計周りに傾いて入射した光を効率よく反射できるためである(図17(b))。
また、角度γ(所定の反射角度)と角度β(所定の偏向角度)の和が、入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)以上であることも好ましい。
なぜなら、透過率のもう一方の谷が反時計回りに傾いた入射光束の拡がりの範囲から外れるため、上記和を拡がり角の半分以上とすることで反時計回りに傾いた光を更に選択的に検出できるからである(図17(c))。
また、図13では、波長選択フィルタ101を、導波モード共鳴フィルタ202と偏向素子210の間に配置したが、波長選択フィルタ101、偏向素子210が共に導波モード共鳴フィルタ202よりも光の入射側に配置されていれば、互いの順序は問わない。
即ち、図18のように、偏向素子210よりも光入射側に波長選択フィルタ101を設けても良い。
【0029】
なお、図13では、シリコン基板105の光入射面(xy面)に対して傾いた面211によって入射光束の主光線を曲げる偏向素子210を用いていたが、このような構成に限られるものではない。
距離測定用の画素に入射する光束の主光線に対して垂直な方向において単調に変化する屈折率分布を有する偏向素子を用いて、入射光束の主光線を曲げるようにしても良い。
即ち、図19に示すように、入射光束の主光線107に対して垂直な方向であるx方向に、−x方向から+x方向に向かって減少するような屈折率分布をつけた偏向素子230を用いればよい。
入射光束106の主光線107は、入射時の+z方向から、偏向素子230の屈折率分布によって、時計回りに曲げられるため、偏向素子230は偏向素子210と同じ役割を果たすことができる。
屈折率分布を与える方法としては、媒質の密度に粗密を与える、微粒子を分散させるなどの方法がある。
【0030】
つぎに、本実施形態における固体撮像素子の製造方法を図20を用いて説明する。
シリコン基板に光電変換層を形成後、吸収フィルタを作製するまでは図11(a)〜(c)と同じ工程であるため、説明を省略する。
図11(c)の工程後、SiO2層を再度平坦に積み、リソグラフィーと堆積などによって高誘電率部220、低誘電率部221を周期的に配置して導波モード共鳴フィルタを形成する(図20(a))。
波長選択フィルタを色素の塗布などで作製した後、更に、SiO2を堆積し、+x方向から−x方向に向かって膜厚が連続的に厚くなる犠牲層280を作製し、ドライエッチを行う。
すると、図11(d)の工程と同様に、犠牲層280の膜厚の厚いものほどSiO2が厚く残り、偏向素子210が作製できる(図20(b))。
このとき、SiO2の傾いた面が偏向素子210の傾いた面211に相当する。
【符号の説明】
【0031】
100:距離測定用画素
101:波長選択フィルタ
102:導波モード共鳴フィルタ
103:光入射部
104:光電変換部
105:シリコン基板
106:入射光束
107:入射光束の主光線
108:導波モード共鳴フィルタの法線
109:シリコン基板表面の法線
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に関し、特にデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどに用いられる固体撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやビデオカメラの測距用距離検出技術として、撮像素子の一部の画素に測距機能を持たせ、位相差方式で検出する固体撮像装置が特許文献1で開示されている。
この固体撮像装置では、従来のコントラスト方式とは異なり、距離を測定するためにレンズを動かす必要が無いため、高速高精細な測距が可能に構成されている。また、動画撮影時にリアルタイム測距が可能とされている。
そして、測距用画素の構造として、マイクロレンズと光電変換部との間にマイクロレンズの光学中心に対し、偏心した開口部を設けた構成とされている。
これにより、カメラレンズの瞳上における特定の領域を通過した光を、選択的に光電変換部に導き、距離の測定が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3592147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例のものでは、開口部の位置がカメラレンズの瞳位置と厳密に共役では無く、また配線部での光散乱などにより、偏心した開口部では十分な光束分離をすることができず、測距精度の向上を図る上で必ずしも満足の得られるものではない。
特に、画素サイズが小さくなるにつれて、光電変換部に光を導くためのマイクロレンズのF値が大きくなり、画素サイズと回折像の大きさがほぼ同じとなる。
そのため、画素内で光が広がってしまい、偏心した開口部では十分な光束分離が行えず、測距精度の向上を図る上で改善が望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、測距精度の向上を図ることが可能となる固体撮像素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する固体撮像素子であって、
前記複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されており、
前記距離測定用の画素が有する前記光入射部は、該光入射部の内部に特定入射角で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタを備え、
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有していることを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、測距精度の向上を図ることが可能となる固体撮像素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1における距離測定用の画素の内部構造を説明する概略断面図。
【図2】本発明の実施形態1における距離測定用の画素の近傍における構造を説明する図。
【図3】本発明の実施形態1におけるカメラレンズの射出瞳と画素への入射光線の関係を説明する図。
【図4】本発明の実施形態1における導波モード共鳴フィルタの構造を説明する図。
【図5】本発明の実施形態1における入射光が選択的に検出されることを説明する図。
【図6】本発明の実施形態1における距離測定用画素の入射光検出特性を説明する図。
【図7】本発明の実施形態1における入射光が選択的に検出されることを説明する図。
【図8】本発明の実施形態1における距離測定用画素近傍の構造を説明する図。
【図9】本発明の実施形態1における距離測定用画素近傍の構造を説明する図。
【図10】本発明の実施形態1における複数の距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図11】本発明の実施形態1における固体撮像素子の製造方法を説明する図。
【図12】本発明の実施形態1における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図13】本発明の実施形態2における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図14】本発明の実施形態2における入射光が選択的に検出されることを説明する図。
【図15】本発明の実施形態2における距離測定用画素の入射光検出特性を説明する図。
【図16】本発明の実施形態2における光の伝播の様子を説明する図。
【図17】本発明の実施形態2における導波モードフィルタの特性を説明する図。
【図18】本発明の実施形態2における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図19】本発明の実施形態2における距離測定用画素内部の構造を説明する図。
【図20】本発明の実施形態2における固体撮像素子の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、透過率が入射光の入射角によって異なるという、導波モード共鳴フィルタの特性を用い、特に、導波モード共鳴フィルタの法線を、該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有するように構成した点に特徴がある。
これにより、入射光のうち特定入射角で入射した光を検出することを可能とし、高精度な距離測定が行える固体撮像素子を実現したものである。
なお、上記導波モード共鳴フィルタとしては、非特許文献(マシェフ、外1名、「ゼロ・オーダー・アノマリー・オブ・ディエレクトリック・コーテッド・グレーティングス(Zero order anomaly of dielectric coated gratings)」、オプティカル・コミュニケーション(optical communication)、55、pp.377−380、1985)において開示されている導波モード共鳴体を利用したフィルタを用いることができる。即ち、高誘電率部と低誘電率部とが周期的に配置された既知の構造のフィルタを用いることができる。
本発明を実施するための具体的な実施形態は、以下の実施形態による固体撮像素子の構成例によって説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一の数字を付け、その繰り返しの説明は省略する。
また、本発明に直接係らない、ゲート電極や配線などは図示を省略した。
【0010】
[実施形態1]
本発明に係る固体撮像素子に関する実施形態1を、図を用いて説明する。
本実施形態に係る固体撮像素子は、基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する。この複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されている。
図1は、距離測定用の画素100の概略断面図である。
本実施形態の画素100は、光の入射側(−z側)より、距離測定に用いる波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタ101、内部に導波モード共鳴フィルタ102を有する光入射部103、内部に光電変換部104を有するシリコン基板105を有する。
画素100に到達する入射光束106は拡がり角2θを持ち、その主光線107は−z方向から+z方向に向かってz軸に沿っている。
導波モード共鳴フィルタ102は、距離測定に用いる波長の光に対し、導波モード共鳴フィルタ102の法線108に垂直に入射した光を反射する特性を有する。
また、導波モード共鳴フィルタ102の法線108は、入射光束106の主光線107に対して角度φ傾いて配置されている。
入射光束106の主光線107、シリコン基板105の法線109は共にz方向を向いているため、シリコン基板105の法線109と導波モード共鳴フィルタ102の法線108のなす角φ’(所定角度)はφに等しい。
図2に、距離測定用の画素の近傍における構造を説明する図を示す。
図2に示すように、距離測定用の画素100に隣接する画素150、160には、光入射部153、163中の、導波モード共鳴フィルタ102よりも+z側(シリコン基板105側)に、吸収フィルタ151、161が配置されている。
ここで、吸収フィルタ151、161は、距離測定に用いる波長の光を吸収する特性を有している。
【0011】
以上のように入射光束106の主光線107に対して、導波モード共鳴フィルタ102の法線108が傾いて配置されていれば、以下に述べる理由によって、高精度の測距が可能となる。
まず、図3を用いて、距離測定用の画素100において、位相差方式を用いた距離測定が行える条件について説明する。
位相差方式では、カメラレンズの射出瞳170上における特定領域171を通過した光量と、それとは対称な領域172を通過した光量を比較することで、距離測定を行う。
距離測定用の画素100に対し、カメラレンズの射出瞳170は十分遠いことから、カメラレンズの射出瞳170中の特定領域171から画素に入射した光は、画素から見ると、入射角173で入射した光として感じる。
同様に、172からの光は入射角174で入射した光として感じる。
従って、距離測定のためには、入射角173で入射した光のみを選択的に検出する画素と、入射角174で入射した光のみを選択的に検出する画素を用意し、両者の出力信号を比較すれば良い。
即ち、特定入射角で入射した光のみを選択的に受光することが必要である。
【0012】
つぎに、導波モード共鳴フィルタ102の構成と原理について説明を行う。
図4(a)は、導波モード共鳴フィルタ102の概略断面図である。図4(a)のZ軸は、導波モード共鳴フィルタ102の法線108と一致する方向である(即ち、図4のX、Z軸は図1のx、z軸に対して角度φだけ傾いている。)。
導波モード共鳴フィルタは、X方向に幅Aを持つ高誘電率部120、X方向に幅Bを持つ低誘電率部121がX方向に周期P(=A+B)で配置された構造からなっている。
また、Y方向には図4(b)のように一様な誘電率分布を持っていても良いし、図4(c)、図4(d)のように周期分布を持っていても良い。
導波モード共鳴フィルタ102に光が入射した場合、誘電率の異なる領域(高誘電率部120、低誘電率部121)が周期的に配置されているため、X方向に沿って特定の大きさを持つ波数ベクトルを持つ光と共鳴を生じ、入射光が反射される。
X方向の波数ベクトルの大きさは、導波モード共鳴フィルタへの入射角によって異なるため、共鳴を生じる角度で入射した光を反射し、共鳴を生じない角度で入射した光を透過する特性が得られる。
【0013】
図1では、共鳴を生じる角度がZ方向(導波モード共鳴フィルタ102の法線108の方向)となるような導波モード共鳴フィルタを用い、法線108の方向が入射光束の主光線107から角度φだけ傾いている。
すると、+y方向から見て、+z方向(主光線107の方向)より反時計回りにφだけ傾いて入射した光106Aは、導波モード共鳴フィルタ102に対してZ方向(法線108の方向)より入射することとなり、反射される(図5(a))。
以上のように、2θの拡がりを持って入射した光束のうち、反時計回りにφだけ傾いて入射した光106Aのみを選択的に反射できる。
実際には、共鳴条件にはある程度の拡がりがあるため、導波モード共鳴フィルタ102は、図5(b)に示すように、反時計回りにφの方向に透過率の谷を持ち、拡がりを持った透過率特性を有する。
【0014】
距離測定のためには、図5(c)のように、反時計回りに傾いて入射した光の透過率(領域132の面積)に対する、時計回りに傾いて入射した光の透過率(領域131の面積)が大きければ良い。
反時計回りに傾いて入射した光は、角度φ付近で透過率が低下しているため、時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光できている。
導波モード共鳴フィルタ102の法線108と、入射光束106の主光線107のなす角φは、入射光束106の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下である方が好ましい。
なぜなら、透過率の谷が入射光束の角度拡がりの範囲内にくるため、拡がり角の半分以下とすることで反時計回りに傾いて入射した光を効率よく反射できるからである。
【0015】
図6(a)に、光電変換部における電場強度の入射角依存性を、電磁場計算によって計算した結果を示す。
横軸が反時計回りを正方向に取った入射角度、縦軸が電場強度である。画素100、150、160のx方向の幅は1.4μmであり、導波モード共鳴フィルタ102の構造パラメータ(A、B、C、ε1、ε2、ε3)、は図6(b)に示すとおりである。
ここで、高誘電率部120の比誘電率をε1、低誘電率部121の比誘電率をε2とし、導波モード共鳴フィルタ102の、周囲の光入射部103の比誘電率をε3とする。
また、導波モード共鳴フィルタのZ方向の高さをCとした。導波モード共鳴フィルタ102は、Y方向には一様な誘電率分布を有しており、距離測定に用いる光の波長は546nmである。
入射光束106は、主光線107が+z方向、拡がり角(2θ)が20度で入射している。
導波モード共鳴フィルタ102の法線108と、シリコン基板105表面の法線109のなす角(φ)は5度とした。
図6(a)に示すように、反時計回りに5度傾いた光106Aは43%しか透過しないが、時計回りに5度傾いた光106Bは71%が透過する。
従って、時計回りに傾いて入射した光106Bを選択的に受光しており、位相差方式を用いた距離測定が可能となっている。
【0016】
以上のように、特定入射角(0度)で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタ102を用い、導波モード共鳴フィルタ102の法線108を、導波モード共鳴フィルタ102に入射する光束106の主光線107に対して、(角度φ)傾けて配置する。
それにより、入射光束106のうち、特定入射角で入射した光(106B)を選択的に受光でき、高精度の測距が可能となる。
一般的に、固体撮像素子の中央部付近の画素では、図1のように、入射光束106の主光線107は、シリコン基板105の法線109の方向と一致する。従って、導波モード共鳴フィルタの法線を、基板の入射面に対して所定角度(φ’)傾けて配置すれば、高精度の測距が可能となる。
なお、図1では、共鳴を生じる角度がZ方向となるような導波モード共鳴フィルタ102を用いているが、共鳴を生じる角度がZ方向から傾いた方向となるような導波モード共鳴フィルタを用いても良い。
例えば、Z方向から2φ傾いた方向となるような導波モード共鳴フィルタ112の場合、図7(a)のように時計回りにφだけ傾いて入射した光106Bは共鳴条件を満たすために反射される。
従って、反時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光できる。この条件を満たすためには、図6(b)の構造パラメータを持つ導波モード共鳴フィルタを用い、距離測定に用いる光の波長を674nmとすればよい。
また、距離測定に用いる光の波長を546nmのままで、構造パラメータを図7(b)に変えても良い。
但し、Z方向から傾いた方向の光を反射する導波モード共鳴フィルタ112を用いるより、導波モード共鳴フィルタの法線108方向に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタ102を用いた方が、距離測定の精度が上がるため好ましい。
【0017】
これは以下のような理由による。導波モード共鳴フィルタの周期配置の対称性は、Z方向から入射した光に対して最も良い。
そのため、導波モード共鳴フィルタとZ方向から入射した光の共鳴は、Z方向からずれた方向から入射した光との共鳴よりも強くなる。
結果として、Z方向から入射した光に対して共鳴するような導波モード共鳴フィルタ102の方が、Z方向から入射した光に対して共鳴するような導波モード共鳴フィルタ112よりも、角度選択特性が有効な波長範囲が広くなる。
従って、導波モード共鳴フィルタ102の方が、導波モード共鳴フィルタ112よりも、より広い帯域の波長の光を距離測定に用いることができる。
距離測定の精度は光の光量で決まるため、導波モード共鳴フィルタ102の方が、導波モード共鳴フィルタ112よりも、精度が高くなることがわかる。
なお、図1では、距離測定用の画素100の光入射側に、距離測定に用いる波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタ101を設けているが、波長選択フィルタを設けなくても良い。
但し、波長選択フィルタ101を設ける方が好ましい。なぜならば、波長選択フィルタ101を設けた場合、距離測定に用いる波長以外の光が、入射光束の拡がり角全部に渡って入射することを防げるため、距離測定の精度がさらに向上するためである。
距離測定に用いる波長は、被写体の輝度が高い波長を選ぶ方が、距離測定の精度が上がるため好ましい。
一般的な被写体であれば、波長550nm付近の光に対して輝度が高いため、550nm付近の波長の光を距離測定に用いるのが好ましい。
【0018】
また、図1では距離測定用の画素100に隣接する画素150、160に距離測定に用いる波長の光を吸収する吸収フィルタ151、161が配置されているが、必ずしも吸収フィルタを配置する必要はない。
但し、吸収フィルタ151、161を配置する方が、距離測定用の画素100に入った光のうち、隣接画素150、160で検出される光量が減るため、好ましい。
吸収フィルタ151、161は、距離測定用に用いる波長の光を吸収するが、画素150、160で検出する波長の光は吸収しないような波長選択性を持つ。具体的には色素や金属などを使えばよい。
なお、吸収フィルタ151、161は図8のように導波モード共鳴フィルタ102より光の入射側においても良い。
但し、図1のように導波共鳴モードフィルタ102とシリコン基板105の間においた方が好ましい。
なぜなら、隣接画素の光電変換部154、164により近い位置で、導波モード共鳴フィルタ102を透過した光を吸収できるためである。
また、図2では導波モード共鳴フィルタ102が、距離測定用の画素100を含む複数の画素(画素150、画素100、画素160)にまたがって配置されているが、導波モード共鳴フィルタは距離測定用の画素100のみに設けられていれば良い(図9)。
但し、複数の画素に渡って導波モード共鳴フィルタが配置されていれば、導波モード共鳴フィルタの角度選択特性が優れるため、好ましい。
なぜなら、複数の画素に渡って配置することで、導波モード共鳴フィルタ102の周期配置の周期数が増え、入射光束106と導波モード共鳴フィルタ102の共鳴が強くなるためである。
【0019】
図1に示す焦点検出用の画素では、入射光束106の主光線107が+z方向(シリコン基板表面105の法線109方向)を向いているが、周辺画素において、主光線107が+z方向から傾いて入射することがある。
その場合、入射光束の主光線107と、導波モード共鳴フィルタの法線108のなす角度φが一定となるように、導波モード共鳴フィルタの法線108と、シリコン基板の法線109のなす角φ’(所定角度)を画素毎に変えることが好ましい(図10)。
これは以下の理由による。導波モード共鳴フィルタの共鳴条件は、導波モード共鳴フィルタに対する光の入射角で決定される。
そのため、入射光束の主光線107のなす角度と導波モード共鳴フィルタの法線108のなす角度(φ)を一定とすれば、各画素で共鳴条件(入射光束のうち共鳴を生じる光の入射角)が同一となる。
その結果、複数の焦点検出用の画素において、同じ導波モード共鳴フィルタを用いることが可能となり、固体撮像素子の製造が容易となる。
また、本実施形態では、複数の画素間でつぎのような構成を採ることができる。即ち、導波モード共鳴フィルタの法線と、導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線の傾き角が等しく、かつ傾きの向きが逆であるような一対の距離測定用の画素を構成する。そして、該一対の距離測定用の画素からの信号を用いて、距離測定用の信号を出力するように構成することができる。
【0020】
つぎに、本実施形態における固体撮像素子の製造方法を図11を用いて説明する。
まず、シリコン基板105の所定の位置にイオンを打ち込み、光電変換部104を作製する(図11(a))。
次に、必要に応じて配線層やゲート電極などを配置した後、SiO2部による光入射部103を形成し、CMPなどによって平坦化処理を行う(図11(b))。
続いて、画素150、160に対して色素の塗布などで吸収フィルタ151、161を作製し、画素100についてはSiO2によって平坦化する(図11(c))。
その後、リソグラフィーによって、−x方向から+x方向に向かって膜厚が連続的に厚くなる犠牲層180を作製し、ドライエッチを行う(図11(d))。
この際、犠牲層180は、エッチングガスに対して完全な耐性を持つもので無ければ良い。
膜厚の薄い犠牲層ほど短い時間でエッチングされるため、犠牲層180の膜厚が厚いほどSiO2部がエッチングされずに厚く残る(図11(e))。
次に、傾いたSiO2面に、リソグラフィーと堆積などによって高誘電率部120、低誘電率部121を周期的に配置して導波モード共鳴フィルタを形成する(図11(f))。
この時、高誘電率部と低誘電率部は所望の誘電率を持つものであれば良く、例えばTiO2とSiO2の組み合わせなどを用いればよい。
更に、SiO2を堆積した後、+x方向から−x方向に向かって膜厚が連続的に厚くなる犠牲層181を作製し、ドライエッチを行う。
すると、図11(d)の工程と同様に、犠牲層181の膜厚の厚いものほどSiO2が厚く残る。
その後、CMPなどを施すことで、平坦化された光入射部103が形成される(図11(g))。
最後に、色素の塗布などで波長選択フィルタ101を、距離測定用の画素100に作製すれば、固体撮像素子が製造できる(図11(h))。
【0021】
なお、本実施形態では、光入射部103が平坦化されている例を示したが、必ずしも平坦化されている必要はない。但し、光入射部103が平坦化されていたほうが、画素間の段差によって発生した散乱光がクロストークやロスの原因となるのを防げるために好ましい。
また、本実施形態では、シリコン基板105に対して光電変換部104を作製するためにイオンを打ち込んだほうから光を入射する、表面入射型の固体撮像素子の例を示したが、必ずしも表面入射型の固体撮像素子である必要はない。
即ち、図12のように、シリコン基板の、イオンを打ち込んでいない側から光を入射する、裏面入射型の固体撮像素子に適用しても良い。
【0022】
[実施形態2]
実施形態2として、上記実施形態1と異なる形態の固体撮像素子の構成例について説明する。
図13に示すように、本実施形態における固体撮像素子200は、実施形態1の固体撮像素子に対し、導波モード共鳴フィルタ202の特性と配置、及び導波モード共鳴フィルタ202よりも光入射側に、偏向素子210が配置されている構成が異なる。
ここでの導波モード共鳴フィルタ202は、図14に示すように、距離測定に用いる波長の光に対し、導波モード共鳴フィルタ202の法線208から角度γ(所定の反射角度)だけ傾いた光を反射する特性を有する構成を備える。
また、導波モード共鳴フィルタ202の法線208は、シリコン基板105の法線109と同じ方向となるように配置されている。
偏向素子210は、シリコン基板105の入射面(xy面)に対して角度αだけ傾いた面211(偏向面)を有し、入射光束106の主光線107を、角度β(所定の偏向角度)だけ偏向させる特性を有する。
【0023】
以上のように構成された導波モード共鳴フィルタ202に対し、上記偏向素子210を配置すれば、以下に述べる理由によって、高精度の測距が可能となる。実施形態1で説明したように、距離測定のためには、特定角度から入射した光のみを選択的に受光すればよい。
そこで、導波モード共鳴フィルタ202、偏向素子210によって特定角度から入射した光のみを選択的に受光できることを示す。
図13では、+z方向(入射光束の中心線107の方向)から時計回りに角度γ−βだけ傾いた光106Bは、導波モード共鳴フィルタ202に対して法線208の方向より角度γだけ傾いて入射することとなり、共鳴条件を満たして反射される(図14)。
そのため、時計回りに傾いて入射した光の透過率が、反時計回りに傾いて入射した光の透過率よりも小さく、反時計回りに傾いて入射した光を選択的に検出できている。
【0024】
図15(a)に、光電変換部における電場強度の入射角依存性を、電磁場計算によって計算した結果を示す。
横軸が反時計回りを正方向に取った入射角度、縦軸が電場強度である。画素200、150、160のx方向の幅は1.4μmである。
また、導波モード共鳴フィルタ202の構造パラメータ(A、B、C、ε1、ε2、ε3)、及び偏向素子210の構造パラメータ(頂角α、誘電率ε4)は、図15(b)に示すとおりである。
導波モード共鳴フィルタ202は、Y方向には一様な誘電率分布を有しており、距離測定に用いる光の波長は674nmである。光束106は、主光線107が+z方向、拡がり角(2θ)が20度で入射している。
図15(a)に示すように、反時計回りに5度傾いた光は96%が透過し、時計回りに5度傾いた光は25%しか透過しない。
従って、反時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光しており、位相差方式を利用した距離測定が可能となっている。
本計算形態では、角度β(所定の偏向角度)が5度、角度γ(所定の反射角度)が10度となるように導波モード共鳴フィルタ202及び偏向素子210の構造パラメータが設計されている。
【0025】
以上で示したように、偏向素子210によって、入射光束106の主光線107の方向を所定の偏向角度(β)だけ曲げ、主光線を導波モードフィルタ202の法線208に対して傾けて入射させている。
それにより、入射光束106のうち、特定入射角で入射した光を選択的に受光でき、高精度の測距が可能となる。
なお、図13では、共鳴を生じる角度がZ方向(法線208の方向)から角度γ傾いた方向となるような導波モード共鳴フィルタ202を用いているが、共鳴を生じる角度がZ方向となるような導波モード共鳴フィルタ212を用いても良い。
この場合、入射光束の主光線106の方向より反時計回りにβだけ傾いて入射した光106Aが共鳴によって反射される(図16(a))。
従って、時計回りに傾いて入射した光を選択的に受光できる。このような条件を満たすためには、図15(b)の構造パラメータを持つ共鳴フィルタを用い、距離測定に用いる光の波長を546nmとすればよい。
また、距離測定に用いる光の波長を674nmのままで、構造パラメータを図16(b)に変えても良い。
【0026】
導波モード共鳴フィルタの法線108方向に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタ212を用いれば、実施形態1で説明したように、より広い帯域の波長の光を測距に用いることができる。
その結果、測距精度が向上するため好ましい。
この時、偏向素子210による主光線107の曲げ角β(所定の偏向角度)は、入射光束106の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下であることが好ましい。
なぜなら、透過率の谷が入射光束の拡がりの範囲内に来るため、反時計周りに傾いて入射した光を効率よく反射できるためである(図16(c))。
一方、導波モード共鳴フィルタの法線208の方向(Z方向)から角度γ(所定の反射角度)傾いた光を反射する導波モード共鳴フィルタ202を用い、曲げ角βが入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)よりも小さい偏向素子210を用いると以下の利点がある。
利点とは、距離測定用の画素100に入射した光のうち、隣接する画素150、160で検出される光の光量を減らせるという利点である。
【0027】
これは以下のような理由による。共鳴を生じる角度がZ方向となるような導波モード共鳴フィルタ212を用いた場合、+z方向より時計回りに傾いて入射した光106Bが導波モード共鳴フィルタ212を透過する。
従って、透過光束はシリコン基板105の法線109に対して傾いて入射する(図16(d))。
そのため、導波モード共鳴フィルタ212を透過した光のうち、隣接画素で検出される光量の割合が高くなる。
一方、共鳴を生じる角度がZ方向から角度γ傾いている導波モード共鳴フィルタ202を用いた場合は、反時計回りに傾いて入射した光106Aが導波モード共鳴フィルタ202を透過する。
反時計回りに傾いて入射した光は、偏向素子210によって角度β曲げられるため、シリコン基板105に対して、+z方向から反時計回りを正方向として、角度−β〜角度−β+θの範囲の傾きで入射する(図17(a))。
この時、−β<0<−β+θの条件を満たしていれば、透過光束の一部が、シリコン基板105の法線109に沿って入射する。従って、導波モード共鳴フィルタ202を透過した光のうち、隣接画素で検出される光量が少ない。
−β<0<−β+θの不等式は、0<β<θと等価であるため、偏向素子210による主光線の曲げ角β(所定の偏向角度)が、入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下であれば、隣接画素で検出される光量が少ないことがわかる。
【0028】
共鳴を生じる方向がZ方向から角度γ傾いた角度となるような導波モード共鳴フィルタ202を用いた場合、
角度γ(所定の反射角度)と、偏向素子210による曲げ角β(所定の偏向角度)の差が、入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)以下であることが好ましい。
なぜなら、透過率の一方の谷が時計回りに傾いた入射光束の拡がりの範囲内に来るため、時計周りに傾いて入射した光を効率よく反射できるためである(図17(b))。
また、角度γ(所定の反射角度)と角度β(所定の偏向角度)の和が、入射光束の拡がり角(2θ)の半分(θ)以上であることも好ましい。
なぜなら、透過率のもう一方の谷が反時計回りに傾いた入射光束の拡がりの範囲から外れるため、上記和を拡がり角の半分以上とすることで反時計回りに傾いた光を更に選択的に検出できるからである(図17(c))。
また、図13では、波長選択フィルタ101を、導波モード共鳴フィルタ202と偏向素子210の間に配置したが、波長選択フィルタ101、偏向素子210が共に導波モード共鳴フィルタ202よりも光の入射側に配置されていれば、互いの順序は問わない。
即ち、図18のように、偏向素子210よりも光入射側に波長選択フィルタ101を設けても良い。
【0029】
なお、図13では、シリコン基板105の光入射面(xy面)に対して傾いた面211によって入射光束の主光線を曲げる偏向素子210を用いていたが、このような構成に限られるものではない。
距離測定用の画素に入射する光束の主光線に対して垂直な方向において単調に変化する屈折率分布を有する偏向素子を用いて、入射光束の主光線を曲げるようにしても良い。
即ち、図19に示すように、入射光束の主光線107に対して垂直な方向であるx方向に、−x方向から+x方向に向かって減少するような屈折率分布をつけた偏向素子230を用いればよい。
入射光束106の主光線107は、入射時の+z方向から、偏向素子230の屈折率分布によって、時計回りに曲げられるため、偏向素子230は偏向素子210と同じ役割を果たすことができる。
屈折率分布を与える方法としては、媒質の密度に粗密を与える、微粒子を分散させるなどの方法がある。
【0030】
つぎに、本実施形態における固体撮像素子の製造方法を図20を用いて説明する。
シリコン基板に光電変換層を形成後、吸収フィルタを作製するまでは図11(a)〜(c)と同じ工程であるため、説明を省略する。
図11(c)の工程後、SiO2層を再度平坦に積み、リソグラフィーと堆積などによって高誘電率部220、低誘電率部221を周期的に配置して導波モード共鳴フィルタを形成する(図20(a))。
波長選択フィルタを色素の塗布などで作製した後、更に、SiO2を堆積し、+x方向から−x方向に向かって膜厚が連続的に厚くなる犠牲層280を作製し、ドライエッチを行う。
すると、図11(d)の工程と同様に、犠牲層280の膜厚の厚いものほどSiO2が厚く残り、偏向素子210が作製できる(図20(b))。
このとき、SiO2の傾いた面が偏向素子210の傾いた面211に相当する。
【符号の説明】
【0031】
100:距離測定用画素
101:波長選択フィルタ
102:導波モード共鳴フィルタ
103:光入射部
104:光電変換部
105:シリコン基板
106:入射光束
107:入射光束の主光線
108:導波モード共鳴フィルタの法線
109:シリコン基板表面の法線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する固体撮像素子であって、
前記複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されており、
前記距離測定用の画素が有する前記光入射部は、該光入射部の内部に特定入射角で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタを備え、
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有していることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が、前記基板の光入射面に対して、所定角度だけ傾きをもつように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記導波モード共鳴フィルタの法線と、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線とのなす角度が、前記距離測定用の画素に入射する光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線と、前記導波モード共鳴フィルタの法線のなす角度が一定となるように、
前記導波モード共鳴フィルタの法線の前記基板の光入射面に対する所定角度が、前記複数の距離測定用の画素間で異なる角度に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が、前記基板の法線と同じ方向となるように配置され、
前記導波モード共鳴フィルタよりも光の入射側に、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線の方向を曲げる偏向素子を備え、
前記偏向素子によって曲げられた主光線が、前記導波モード共鳴フィルタの法線に対して、所定の偏向角度で入射することを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記導波モード共鳴フィルタが、該導波モード共鳴フィルタの法線に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記所定の偏向角度が、前記距離測定用の画素に入射する光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記導波モード共鳴フィルタが、該導波モード共鳴フィルタの法線に対して所定の入射角度だけ傾いて入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタで構成され、前記所定の偏向角度が、前記光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項6に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記所定の偏向角度と、前記所定の入射角度との差が、前記光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記所定の偏向角度と、前記所定の入射角度との和が、前記光束の拡がり角の半分以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記偏向素子によって曲げられた主光線と、前記導波モード共鳴フィルタの法線のなす角度が一定となるように、
前記偏向素子が、前記複数の距離測定用の画素間で異なることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記偏向素子は、少なくとも一つの偏向面を有し、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線に対して該偏向面の法線が傾いており、
該偏向面を通過することで前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線が曲げられ、前記導波モード共鳴フィルタに対して傾いて入射することを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記偏向素子は、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線に対して垂直な方向において単調に変化する屈折率分布を有する偏向素子であって、
前記屈折率分布をもつ偏向素子を透過することにより前記入射光束の主光線が曲がることを特徴とする請求項6乃至13のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記距離測定用の画素において、前記導波モード共鳴フィルタよりも光の入射側に、前記距離測定に用いる波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタが配置されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項16】
前記距離測定用の画素に隣接する画素に、前記距離測定に用いる波長の光を吸収する吸収フィルタが配置されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項17】
前記導波モード共鳴フィルタが、少なくとも前記距離測定用の画素を含む複数の画素にまたがって、連続的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項18】
前記導波モード共鳴フィルタの法線と、前記導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線の傾き角が等しく、かつ傾きの向きが逆であるような一対の距離測定用の画素を有し、該一対の距離測定用の画素からの信号を用いて、距離測定用の信号を出力することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項1】
基板の内部に形成された光電変換部と、該基板の光入射面の側に形成された光入射部とを備えた複数の画素を有する固体撮像素子であって、
前記複数の画素の少なくとも一部が、距離測定用の画素で構成されており、
前記距離測定用の画素が有する前記光入射部は、該光入射部の内部に特定入射角で入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタを備え、
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が該導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線に対して傾きを有していることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が、前記基板の光入射面に対して、所定角度だけ傾きをもつように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記導波モード共鳴フィルタの法線と、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線とのなす角度が、前記距離測定用の画素に入射する光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線と、前記導波モード共鳴フィルタの法線のなす角度が一定となるように、
前記導波モード共鳴フィルタの法線の前記基板の光入射面に対する所定角度が、前記複数の距離測定用の画素間で異なる角度に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記導波モード共鳴フィルタは、該導波モード共鳴フィルタの法線が、前記基板の法線と同じ方向となるように配置され、
前記導波モード共鳴フィルタよりも光の入射側に、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線の方向を曲げる偏向素子を備え、
前記偏向素子によって曲げられた主光線が、前記導波モード共鳴フィルタの法線に対して、所定の偏向角度で入射することを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記導波モード共鳴フィルタが、該導波モード共鳴フィルタの法線に対して平行に入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記所定の偏向角度が、前記距離測定用の画素に入射する光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記導波モード共鳴フィルタが、該導波モード共鳴フィルタの法線に対して所定の入射角度だけ傾いて入射した光を反射する導波モード共鳴フィルタで構成され、前記所定の偏向角度が、前記光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項6に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記所定の偏向角度と、前記所定の入射角度との差が、前記光束の拡がり角の半分以下であることを特徴とする請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記所定の偏向角度と、前記所定の入射角度との和が、前記光束の拡がり角の半分以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記偏向素子によって曲げられた主光線と、前記導波モード共鳴フィルタの法線のなす角度が一定となるように、
前記偏向素子が、前記複数の距離測定用の画素間で異なることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記偏向素子は、少なくとも一つの偏向面を有し、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線に対して該偏向面の法線が傾いており、
該偏向面を通過することで前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線が曲げられ、前記導波モード共鳴フィルタに対して傾いて入射することを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記偏向素子は、前記距離測定用の画素に入射する光束の主光線に対して垂直な方向において単調に変化する屈折率分布を有する偏向素子であって、
前記屈折率分布をもつ偏向素子を透過することにより前記入射光束の主光線が曲がることを特徴とする請求項6乃至13のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記距離測定用の画素において、前記導波モード共鳴フィルタよりも光の入射側に、前記距離測定に用いる波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタが配置されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項16】
前記距離測定用の画素に隣接する画素に、前記距離測定に用いる波長の光を吸収する吸収フィルタが配置されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項17】
前記導波モード共鳴フィルタが、少なくとも前記距離測定用の画素を含む複数の画素にまたがって、連続的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項18】
前記導波モード共鳴フィルタの法線と、前記導波モード共鳴フィルタに入射する光束の主光線の傾き角が等しく、かつ傾きの向きが逆であるような一対の距離測定用の画素を有し、該一対の距離測定用の画素からの信号を用いて、距離測定用の信号を出力することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−109813(P2012−109813A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257240(P2010−257240)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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