説明

固体粒子担持繊維及び固体粒子担持繊維シート

【課題】新規の固体粒子担持繊維及び繊維シートを提供する。
【解決手段】前記の固体粒子担持繊維は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維であって、前記固体粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記繊維の平均径が0.1〜100μmであり、前記固体粒子の平均粒子径が前記繊維の平均径の1/3以下であり、前記繊維表面に担持される前の前記固体粒子のBET法による全表面積(Sp)に対する前記繊維表面に担持されている前記固体粒子のBET法による露出表面積(Se)の百分率である有効表面積率〔(Se/Sp)×100〕が50%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子担持繊維及び固体粒子担持繊維シートの製造方法及び製造装置、並びに固体粒子担持繊維及び固体粒子担持繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維の表面に固体粒子を担持する方法としては、例えば、特開平6−341044号公報(特許文献1)に、互いに絡み合う繊維相互をバインダ(バインダ液)によって結合し且つこの繊維の表面に前記バインダによって機能粉体を固定させた不織布が開示されている。また、同公報には繊維に高融点樹脂からなる芯とこの芯を被う低融点バインダ樹脂からなる鞘とを有する芯鞘構造のホットメルト繊維を用い、このホットメルト繊維の集合体を前記バインダ樹脂の融点よりも高い温度に加熱することによりバインダ樹脂を溶融させた状態にし、この繊維に機能粉体を供給した後冷却することにより硬化させ、前記高融点樹脂の繊維相互をバインダ樹脂によって互いに結合するとともに前記機能粉体を繊維に固定した不織布が開示されている。
【0003】
しかしながら、繊維の表面にバインダにより機能粉体を固定させる方法によると、機能粉体が繊維の表面と何度か接触したり、機能粉体が繊維の表面に接触した後バインダが加熱硬化するまでにバインダが流動するため、機能粉体が繊維の表面と接触する部分以外の部分にもバインダが付着してしまい、機能粉体の表面が必要以上に被われてしまい、機能粉体が本来有する機能を有効に発揮できないという問題があった。
また、芯鞘構造のホットメルト繊維の鞘部のバインダ樹脂を溶融させた状態にして機能粉体を固定する方法によると、バインダ樹脂が溶融し流動化した状態で機能粉体が固定されるため、バインダ樹脂層に多数の機能粉体が埋没してしまい、このため機能粉体の表面が必要以上に被われてしまい、機能粉体が本来有する機能を有効に発揮できないという問題があった。
また、前記公報の方法によるとバインダやバインダ樹脂が流動し、バインダやバインダ樹脂に接触した機能粉体の隙間より沁み出し、その機能粉体の外側にある機能粉体をも付着するため機能粉体が部分的に複数層に重なってしまい、繊維表面に機能粉体が均一に固定されないという問題があった。
【0004】
また、前記公報のようなバインダや芯鞘構造のホットメルト繊維を用いる方法以外の方法として、芯鞘構造でなく単一の樹脂成分からなる繊維を加熱溶融して機能粉体を固定する方法も考えられるが、このような方法では、前記問題以外にも、繊維全体が溶融してしまい、繊維が収縮したり繊維の糸切れが生じたりするなどの更なる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−341044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、繊維表面又は繊維シートを構成する繊維表面に固体粒子を、その固体粒子の表面特性を有効に保持したまま、しかも均一に固着した固体粒子担持繊維及び固体粒子担持繊維シートの製造方法、並びにそれに好適な製造装置、並びに新規の固体粒子担持繊維及び固体粒子担持繊維シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明による、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する固体粒子を、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱し、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に維持された状態で加熱固体粒子を前記繊維と接触させて、前記繊維表面に前記繊維表面の融着により前記固体粒子を担持させ、そして固体粒子融着繊維を冷却することにより、その繊維表面に固体粒子を固着させることを特徴とする、固体粒子担持繊維の製造方法により解決することができる。
【0008】
また、本発明は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維を含む繊維シートの前記繊維の表面に固体粒子を担持する繊維シートの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する固体粒子を、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱し、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に維持された状態で加熱固体粒子を前記繊維シートと接触させて、前記繊維表面に前記繊維表面の融着により前記固体粒子を担持させ、そして固体粒子融着繊維シートを冷却することにより、その繊維表面に固体粒子を固着させることを特徴とする、固体粒子担持繊維シートの製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維の製造装置であって、
固体粒子を含む気流を形成する粒子形成手段、
前記粒子形成手段によって形成された固体粒子含有気流を噴出する噴出手段、
前記粒子形成手段及び/又は前記噴出手段に設けられ、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱された加熱固体粒子を含む気流を形成することのできる加熱手段、及び
前記噴出手段から噴出される固体粒子含有気流が前記繊維表面と接触可能な位置に前記繊維を保持することのできる繊維支持手段
を有することを特徴とする、前記の製造装置に関する。
【0010】
また、本発明は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維を含む繊維シートの前記繊維の表面に固体粒子を担持する繊維シートの製造装置であって、
固体粒子を含む気流を形成する粒子形成手段、
前記粒子形成手段によって形成された固体粒子含有気流を噴出する噴出手段、
前記粒子形成手段及び/又は前記噴出手段に設けられ、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱された加熱固体粒子を含む気流を形成することのできる加熱手段、及び
前記噴出手段から噴出される固体粒子含有気流が前記繊維シート表面と接触可能な位置に前記繊維シートを保持することのできる繊維シート支持手段
を有することを特徴とする、前記の製造装置に関する。
【0011】
また、本発明は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維であって、前記固体粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記固体粒子の平均粒子径が前記繊維の平均径の1/3以下であり、前記繊維表面に担持される前の前記固体粒子のBET法による全表面積(Sp)に対する前記繊維表面に担持されている前記固体粒子のBET法による露出表面積(Se)の百分率である有効表面積率〔(Se/Sp)×100〕が50%以上であることを特徴とする固体粒子担持繊維に関する。
更に、本発明は、前記固体粒子担持繊維を含む、固体粒子担持繊維シートに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法又は本発明の製造装置によれば、繊維の繊維表面又は繊維シートを構成する繊維の繊維表面に固体粒子を、その固体粒子の表面特性を有効に保持したまま、しかも均一に固着させることができる。
本発明の製造方法又は本発明の製造装置によれば、加熱した固体粒子を繊維表面に接触させることで、繊維表面に固体粒子が接触した部分のみが溶融して固体粒子が担持される。そのため、固体粒子の表面の内、接触部分以外又は固着部分以外の表面部分を溶融樹脂が覆ってしまうことが非常に少なくなっている。また、繊維表面の樹脂全体が溶融して流動化することにより、固体粒子が埋没してしまうことも非常に少なくなっている。
また、接触した固体粒子の隙間より溶融樹脂が沁み出し、その固体粒子の外側にある固体粒子をも固着して、繊維表面上で固体粒子が部分的に複層となってしまい、繊維表面に固体粒子が均一に担持されないという問題が発生しない。のみならず、場合によっては、均一な、単層の固着又は担持も可能である。
【0013】
また、本発明の製造方法又は本発明の製造装置によれば、固体粒子が繊維表面のみを溶融するので、繊維が単一の樹脂成分からなる繊維であっても、接触処理時又は固着処理時に繊維が収縮したり、繊維全体が溶融して糸切れが生じるようなことはない。また、繊維表面に固体粒子が接触された後、冷却されることによって繊維表面に強固に固体粒子が固着され担持されているので、例えば、洗濯耐性試験によって固体粒子が簡単に脱落することもない。
また、本発明の製造方法又は本発明の製造装置において、加熱固体粒子と繊維又は繊維シートとを接触させる方法として、加熱固体粒子含有気流を繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法を用いた場合には、加熱された固体粒子を含む気流を繊維表面に吹き付けて行なうため、固体粒子の慣性力により固体粒子が繊維表面に衝突して、固体粒子が繊維表面にしっかりと固着することができる。
【0014】
本発明の固体粒子担持繊維は、固体粒子の表面の内、担持部分以外の表面部分は溶融樹脂によって覆われることがなく、固体粒子が溶融樹脂中に埋没していない。更に、繊維表面に固体粒子が均一に担持されている。従って、固体粒子の有効表面積率をBET法の比表面積測定により評価すると50%以上となっている。すなわち、本発明の固体粒子担持繊維によれば、固体粒子が繊維表面に担持されていても、固体粒子が本来有する表面機能を充分に発揮することができる。
また、本発明の固体粒子担持繊維シートは、固体粒子担持繊維を有しているので、この繊維シートを、例えば、濾過材、吸収材、又はカバー材等の様々な用途に適した形態とすることにより、固体粒子担持繊維が担持している固体粒子の表面機能を更に有効に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートの製造装置の一態様を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明による固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートの製造装置の別の一態様を模式的に示す概略図である。
【図3】本発明による固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートの製造装置の更に別の一態様を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1]本発明による固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートの製造方法
本発明による、固体粒子担持繊維の製造方法によれば、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維を製造することができる。本発明の固体粒子担持繊維の製造方法では、前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する固体粒子を、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱し、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に維持された状態で加熱固体粒子を前記繊維と接触させて、前記繊維表面に前記繊維表面の融着により前記固体粒子を担持させ、そして固体粒子融着繊維を冷却することにより、その繊維表面に固体粒子を固着させる。
【0017】
また、本発明による、固体粒子担持繊維シートの製造方法によれば、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維を含む繊維シートの前記繊維の表面に固体粒子を担持する繊維シートを製造することができる。本発明の固体粒子担持繊維シートの製造方法では、前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する固体粒子を、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱し、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に維持された状態で加熱固体粒子を前記繊維シートと接触させて、前記繊維表面に前記繊維表面の融着により前記固体粒子を担持させ、そして固体粒子融着繊維シートを冷却することにより、その繊維表面に固体粒子を固着させる。
【0018】
本発明の固体粒子担持繊維の製造方法で用いる前記繊維、あるいは、本発明の固体粒子担持繊維シートの製造方法で用いる繊維シートに含まれる前記繊維は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維であり、繊維表面が加熱(例えば、50℃以上の加熱、好ましくは80℃以上の加熱)により溶融する繊維であれば、繊維の種類は問わず適宜選択することができる。このような繊維としては、例えば、従来の繊維の製法である溶融紡糸による合成繊維、従来の不織布の製法であるスパンボンド法、メルトブロー法、若しくはフラッシュ紡糸法などによって得られる繊維、又は芯部分が天然繊維若しくは無機繊維からなる繊維などから適宜選択することができる。
【0019】
前記合成繊維又は不織布の製法によって得られる前記繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、又はポリアミド繊維など)からなる合成繊維を挙げることができ、前記合成繊維は、1種類の熱可塑性樹脂からなる合成繊維であっても、異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維であっても適宜選択して使用することができる。このような複合繊維としては、融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維を挙げることができ、例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、又はポリエチレン/ポリエステルなどの樹脂の組み合わせからなる複合繊維を挙げることができる。また、複合繊維が、芯に高融点樹脂を有し、鞘に低融点樹脂を有する芯鞘型複合繊維である場合には、固体粒子が繊維表面に固着され、担持される際に繊維の収縮や糸切れが更に生じにくくなるので好ましい。
【0020】
また、前記繊維は、芯部分が融点を有せずに分解温度を有するような繊維、例えば、レーヨン繊維、アセテート繊維、羊毛繊維、又は炭素繊維などの繊維の表面に、鞘部分として、熱可塑性樹脂が、例えば、コーティングなどにより塗布されてなる繊維であることもできる。また、前記繊維は、芯部分が無機繊維であり、高融点を有するような繊維、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、又は金属繊維などの繊維の表面に鞘部分として、熱可塑性樹脂が、例えば、コーティングなどにより塗布されてなる繊維であることもできる。
【0021】
少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維としては、例えば、少なくとも表面が1又はそれ以上の熱可塑性樹脂からなる繊維、少なくとも表面が1又はそれ以上の熱可塑性樹脂から実質的になる繊維、あるいは、少なくとも表面が1又はそれ以上の熱可塑性樹脂から主としてなる繊維を挙げることができ、少なくとも表面が1又はそれ以上の熱可塑性樹脂からなる繊維、あるいは、少なくとも表面が1又はそれ以上の熱可塑性樹脂から実質的になる繊維が好ましい。本明細書において「から主としてなる」とは、対象となる熱可塑性樹脂が、繊維表面の構成樹脂に対して、50mass%以上(好ましくは60mass%以上、より好ましくは70mass%以上、特に好ましくは90mass%以上)であることを意味する。また、繊維の断面形状又は表面形状は、任意の形状とすることができる。例えば、熱可塑性樹脂からなる複合繊維が、水流などの機械的応力によって分割された断面形状が菊花状の繊維、あるいは、フィブリル状に分割された繊維とすることができる。
【0022】
前記繊維の平均径及び長さは、例えば、従来の繊維の製法である溶融紡糸による合成繊維、従来の不織布の製法であるスパンボンド法、メルトブロー法、若しくはフラッシュ紡糸法などによって得られる繊維、又は芯部分が天然繊維若しくは無機繊維からなる繊維などの繊維の平均径及び長さのものを適宜選択することができる。例えば、繊維の平均径は、0.1μm〜3mmの範囲の広範囲の平均径とすることができる。また、繊維の平均径は、好ましくは0.1μm〜500μmの範囲であり、更に好ましくは0.1μm〜100μmの範囲である。ここで、繊維の平均径とは、繊維の断面形状が円以外の場合には、繊維の断面積と同じ面積の円の直径とし、繊維の任意の500個所以上からのサンプリングによる数平均繊維径とする。
【0023】
また、繊維の断面積の測定が困難な場合は、繊維の側面を走査型電子顕微鏡等で拡大して撮影し、その繊維の映像で確認しうる繊維径について、繊維の任意の500個所以上からのサンプリングによる数平均繊維径を、繊維の繊維径とすることができる。
また、市販されている繊維の場合、カタログや仕様書に数平均繊維径が明示されている場合はその値を繊維の平均径としてもよい。更に、カタログや仕様書にデニールもしくはデシテックスの単位で繊維径が明示されている場合、その値を長さの単位に換算して繊維の平均径としてもよい。
【0024】
本発明の固体粒子担持繊維シートの製造方法で用いる繊維シートは、繊維シート中に、前記繊維、すなわち、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維を有する繊維シートである限り、特に限定されるものではなく、この繊維シートは、前記繊維のみを含むこともできるし、あるいは、前記繊維以外の繊維を含むこともできる。前記繊維(すなわち、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維)以外の繊維としては、特に限定されず、表面が熱可塑性樹脂でない繊維、例えば、無機繊維、あるいは、融点を有さず、分解温度を有する繊維などを用いることができる。
【0025】
繊維シートの構造としては、例えば、織物、編物、若しくは不織布、又はそれらの組合せなどを挙げることができる。織物又は編物の場合には、例えば、前記繊維を織機又は編機により加工することによって得られる。また、不織布の場合には、例えば、従来の不織布の製法である、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、又は湿式法などによって繊維シートとすることができる。また、これらの製法によって形成される繊維ウエブに、接着性繊維及び/又は融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維などを予め混入させてから、加熱処理することにより、繊維間が接合された繊維シートとすることができる。また、前記繊維ウエブ間を機械的絡合処理(例えば、水流絡合又はニードルパンチなど)によって絡合させた繊維シートとすることもできる。また、前記繊維ウエブを、加熱した平滑なロールと加熱した凹凸のあるロールとの間に通して、部分的に結合された繊維シートとすることもできる。また、種類の異なる前記繊維シートを複数積層して更に一体化してなる繊維シートとすることもできる。
【0026】
また、繊維シートの形状も特に限定されるものではなく、例えば、長尺状繊維シート(例えば、ロールに巻回した繊維シート)、又は非長尺状繊維シート(すなわち、前記長尺状繊維シートを切断して得ることのできる繊維シート)等を挙げることができる。
【0027】
本発明による固体粒子担持繊維の製造方法又は固体粒子担持繊維シートの製造方法で用いる固体粒子は、固体粒子を固着させるのに使用する前記繊維の表面を構成する熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する固体粒子である限り、無機質又は有機質のいずれであることもでき、固体状の粒子であればこのような粒子の一種以上を適宜選択することができる。前記固体粒子は、例えば、脱臭、ガス除去、触媒、吸水、イオン交換、電磁波放射、イオン発生、抗菌、難燃、電磁波遮蔽、防音、又は撥水撥油などの機能性を有する固体粒子であれば、繊維表面でその機能を有効に発揮することができる。このような固体粒子の材質としては、例えば、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、吸水性樹脂、イオン交換樹脂、金属粒子、トルマリン、炭酸カルシウム、又は撥水性樹脂など、種々の材質とすることができる。
【0028】
前記固体粒子の融点又は分解温度は、前記繊維表面を構成する樹脂の内、最も低い融点を有する樹脂の融点より高いことが必要であり、もし、固体粒子の融点又は分解温度が前記樹脂の融点より低い場合は、加熱した固体粒子の熱により繊維表面が溶けず、固体粒子が繊維表面に担持された形態にはならない。すなわち、繊維表面に固体粒子が担持されないか、あるいは、繊維表面に固体粒子が担持されたとしても、その形態は、固体粒子が繊維表面よりも先に溶けて固体粒子が凝集体となったり、固体粒子と繊維表面とが広い面積で融着してしまう形態となり、担持された固体粒子の有効面積は少ないものとなってしまう。
【0029】
前記固体粒子の平均粒子径は、前記繊維径以下であることが望ましい。固体粒子の平均粒子径が繊維径を超えると、固体粒子は繊維表面より脱落し易くなり、繊維表面に固体粒子が固着した状態を保ち難くなることがある。また、このような固体粒子が担持した繊維を得ようとしても、固体粒子を繊維表面に固着させることが困難になることがある。また、固体粒子の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。
【0030】
なお、固体粒子の平均粒子径とは、固体粒子の数平均粒子径を表すものとする。また、数平均粒子径の算出方法としては、粒子を走査型電子顕微鏡等で拡大して撮影し、任意の500個所以上の粒子の粒子径を測定し、測定した個数で除することにより算出する。この際に粒子が球形でない場合は、撮影した粒子の映像で確認しうる個々の粒子の外接円の直径を個々の粒子径とする。
また、市販されている粒子の場合、カタログや仕様書に数平均粒子径が明示されている場合はその値を固体粒子の平均粒子径としてもよい。
【0031】
本発明による固体粒子担持繊維の製造方法又は固体粒子担持繊維シートの製造方法では、所定温度まで加熱した固体粒子を、所定温度に維持された状態で繊維又は繊維シートと接触させる。加熱固体粒子と繊維又は繊維シートとを接触させる方法は、前記接触によって、繊維表面に固体粒子を融着させることができ、しかも、固体粒子融着繊維を冷却することにより、その繊維表面に固体粒子を固着させることができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、
(1)加熱固体粒子を含有する気流を繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法;
(2)加熱固体粒子を繊維又は繊維シートに対して自然落下させる方法;
(3)加熱固体粒子と繊維又は繊維シートとを装入した耐熱性容器を振盪する方法;
(4)加熱固体粒子中に繊維又は繊維シートを浸漬する方法;あるいは、
(5)加熱固体粒子の流動層中に繊維又は繊維シートを曝す方法
などを挙げることができる。
【0032】
加熱固体粒子と繊維又は繊維シートに含まれる繊維とを接触させる方法として、前記接触方法(1)、すなわち、加熱固体粒子を含有する気流を繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法を用いる場合には、前記加熱固体粒子含有気流として、繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子と、気流とが混合された混合気流を用いる。
【0033】
このような混合気流を調製するには、例えば、
(a)気流の中に、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子を供給する方法;
(b)熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した気流の中に、固体粒子を供給する方法;あるいは、
(c)気流の中に固体粒子を供給したものを、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する方法
などを挙げることができる。この内、混合気流調製方法(b)又は(c)によれば、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱された気流を介して固体粒子が熱可塑性樹脂の融点以上に加熱される。
【0034】
なお、本発明の製造方法では、固体粒子を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することが必要であるが、もし繊維に過剰に高い温度の固体粒子が固着して繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じる場合には、熱可塑性樹脂の融点より100℃高い温度を超えない温度に加熱するのが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より50℃高い温度を超えない温度に加熱するのがより好ましい。
【0035】
前記混合気流調製方法(a)では、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度に加熱した気流に、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子を供給する方法が好ましい。この場合、気流と固体粒子とが混合される際に、固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように予熱する効果がある。また、加熱された固体粒子が繊維に衝突するまでに固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように保温する効果がある。なお、もし気流と固体粒子との混合気流を繊維に吹き付けた際に、繊維に過剰に高い温度の気流が当たり、繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じる場合は、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度に加熱した気流であり、しかも、加熱した固体粒子の温度よりも低い温度に加熱した気流とすることが好ましい。
【0036】
前記混合気流調製方法(b)では、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した気流の中に、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度に加熱した固体粒子を供給する方法が好ましい。この場合、気流と固体粒子とが混合される際に、固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように予熱する効果がある。
【0037】
また、前記の各混合気流調製方法(a)、(b)、又は(c)の何れの方法においても、気流と固体粒子とが混合された後の混合気流を、必要に応じて熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することが好ましい。この場合、固体粒子が繊維に衝突するまでに固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように保温する効果がある。
【0038】
加熱した気流を得るには、例えば、気流発生手段(例えば、ブロアー又はコンプレッサーなど)によって気流を発生させ、次いで、公知の加熱手段によって所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度、又は熱可塑性樹脂の融点以上の温度)に気流を加熱する方法を用いることができる。
また、加熱した固体粒子を得るには、例えば、固体粒子供給手段(例えば、ホッパー又は供給容器など)の内外にヒーターを取り付けて、固体粒子供給手段内の固体粒子を所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度、又は熱可塑性樹脂の融点以上の温度)に加熱する方法、あるいは、一般的に粉体の乾燥機として用いられる流動層型乾燥機などの装置を利用して、所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度、又は熱可塑性樹脂の融点以上の温度)に固体粒子を加熱する方法などを用いることができる。
【0039】
気流に固体粒子を供給して混合気流を調製する方法としては、例えば、固体粒子供給手段(例えば、ホッパー又は供給容器など)から固体粒子を気流中に一定量ずつ供給する方法、あるいは、流動層型乾燥機などの装置を利用して熱可塑性樹脂の融点以上の温度まで固体粒子を加熱した後、その流動層型乾燥機より気体中に加熱された固体粒子が分散混合された混合気体を取り出し、該混合気体を気流に供給する方法を挙げることができる。
【0040】
また、これらの方法以外にも、例えば、図2に例示するように、粒子混合手段30はエジェクターとなっており、気流発生手段としてのブロワー11及び加熱管12で生じた気流Aを粒子混合手段30に送り、粒子混合手段30には、粒子供給手段としてのロート状の供給容器21と回転式の供給制御ロータ22と供給管23とを連絡させておき、気流Aによって生じる吸引力によって、粒子供給手段から供給する固体粒子を吸引して、気流の中に固体粒子を供給する方法を用いることもできる。この場合、粒子混合手段30において、粒子が供給される部分の気流Cの断面積を、その前後の断面積よりも小さくして気流を高速化すると、吸引力が強く働き、固体粒子の分散混合効果を大きくすることができる。
【0041】
更には、例えば、図3に例示するように、粒子混合手段30はエジェクターとなっており、気流発生手段としてのブロワー11及び加熱管12で発生した気流Aを粒子混合手段30に送り、粒子混合手段30には粒子供給手段である流動層型乾燥機24より加熱気体中に固体粒子が分散混合された混合気体を送り込み、気流Aによって生じる吸引力によって、粒子供給手段24から供給する混合気体を吸引して、気流の中に固体粒子を供給する方法を用いることもできる。
【0042】
本発明による固体粒子担持繊維の製造方法又は固体粒子担持繊維シートの製造方法において、加熱固体粒子と繊維又は繊維シートに含まれる繊維とを接触させる方法として、前記接触方法(1)、すなわち、加熱固体粒子含有気流を繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法を用いる場合には、前記のようにして得られた混合気流(すなわち、繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱された固体粒子を含む混合気流)を、繊維又は繊維シート表面に吹き付ける。吹き付けに先立ち、繊維又は繊維シート表面の温度は、熱可塑性樹脂の融点未満としておくのが好ましい。
【0043】
繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法としては、例えば、図2又は図3に示すように、固体粒子を含む混合気流を、噴出手段としてのノズル41から噴出させると、固体粒子は、噴出時に与えられた運動エネルギーによる慣性力により繊維表面に衝突する。噴出手段は、例えば、前記粒子混合手段30に直接接続させるか、あるいは、接続管を介して接続させることができる。前記ノズルは、流体が噴出するに適した形状とすることができる。例えば、固体粒子の慣性力を高めるために、流路が絞られたものとしたり、あるいは、固体粒子の噴出角度を広げるために、ノズルの先端を広げた形状とすることができる。また、ノズルから噴出する固体粒子に応じて磨耗などの生じ難いノズル材質とすることも好ましい。
【0044】
加熱固体粒子と繊維又は繊維シートに含まれる繊維との接触方法として、加熱固体粒子含有気流を繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法を用いる場合には、移動可能な繊維支持手段又は繊維シート支持手段によって支持した繊維又は繊維シートに加熱固体粒子含有気流を吹き付けることが好ましい。このような支持手段としては、加熱固体粒子含有気流による吹き付けの処理が可能であれば特に限定されない。好ましい例としては、例えば、加熱固体粒子含有気流による吹き付けの処理領域前後で、繊維又は繊維シートを載置する回転ロール、繊維又は繊維シートの両サイドをピンやグリップで把持しながら移動するテンター方式の装置、繊維又は繊維シートを挟んで支持する対ロール、あるいは、繊維又は繊維シートを載せながら吹き付けの処理が可能な開孔支持体(例えば、コンベアーネット等)を挙げることができる。なお、コンベアーネット等によれば、複数の繊維を同時に支持することもできる。
【0045】
また、前記支持手段によって支持した繊維又は繊維シートに加熱固体粒子含有気流を吹き付ける場合、繊維又は繊維シートの巾方向に均一に吹き付けを行なうため、加熱固体粒子含有気流の噴出手段を複数設置することも、噴出手段に設けられたノズル孔を複数設けることも可能である。また、ノズル孔をスリット状として、繊維シート全巾までノズルの先端を広げた形状とすることも可能である。また、噴出手段を、繊維シートの巾方向に対してほぼ平行に、進行方向に対して直角またはある角度をつけて往復の移動を可能とすれば、噴出手段が少数であっても繊維シート全体を処理することができる。
【0046】
更に、繊維又は繊維シートに加熱固体粒子含有気流を吹き付けた後で、繊維又は繊維シートに固着しなかった余剰の固体粒子を回収して、回収した固体粒子を再利用することが好ましい。このような回収方法としては、例えば、図2又は図3に例示するように、繊維80又は繊維シート80’に加熱固体粒子含有気流が吹き付けられる雰囲気を、固着処理室90によって囲み、余剰の固体粒子が固着処理室90の外へ飛散しないようにしておき、固着処理室90には粒子回収手段である粒子回収ボックス92を接続しておいて、この粒子回収ボックス92によって余剰の固体粒子を回収する方法を挙げることができる。また、繊維又は繊維シートに固着しなかった余剰の固体粒子を除去するため、例えば、コンベアーネットを傾斜させ、振動により落下させたり、あるいは、気流で吹き飛ばす方式の粒子回収手段93を用いる方法を併用することも可能である。
【0047】
なお、固体粒子を繊維表面に接触させ、固体粒子融着繊維とした後に、固体粒子融着繊維を冷却する方法としては、固体粒子が繊維表面に固着可能な温度まで冷却することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、室温に放置する方法、あるいは、必要に応じて適当な冷却手段を用いる方法などを挙げることができる。
【0048】
加熱固体粒子と繊維又は繊維シートに含まれる繊維とを接触させる方法として、前記接触方法(2)〜(5)のいずれかの方法を用いる場合には、固体粒子を予め加熱してから、種々の接触方法により繊維又は繊維シートに含まれる繊維と接触させる。
固体粒子を加熱する方法としては、例えば、耐熱性の容器に固体粒子を入れ、オーブンで加熱する方法、あるいは、耐熱性のコンベアー上に固体粒子を載せ、コンベアーを移動させながらコンベアー上部のヒーターを用いて連続的に加熱する方法などを挙げることができる。固体粒子の加熱方法としては、固体粒子全体を加熱できる方法であれば、任意の加熱方法を用いることができるが、この時の加熱の温度は、繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点より高く加熱する必要がある。
【0049】
次に、加熱固体粒子を繊維又は繊維シートに含まれる繊維に接触させる方法としては、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維、あるいは、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維を有する繊維シートを、常温又は必要に応じて繊維表面の融点より低い温度に維持しながら、加熱した固体粒子を接触させることができる限り、特に限定されるものではなく、任意の接触方法を用いることができる。このような接触方法としては、例えば、コンベアーに繊維又は繊維シートを載せ、コンベアー上部より固体粒子を自然落下(例えば、散布)させる方法[すなわち、前記接触方法(2)]、容器の中に繊維又は繊維シートを固体粒子と共に入れ、容器を振盪する方法[すなわち、前記接触方法(3)]、繊維又は繊維シートを固体粒子の層の中に浸漬する方法[すなわち、前記接触方法(4)]、あるいは、固体粒子の流動層の中に繊維又は繊維シートを曝す方法[すなわち、前記接触方法(5)]等を挙げることができる。
【0050】
例えば、前記接触方法(2)、すなわち、加熱固体粒子を繊維又は繊維シートに対して自然落下させる方法では、例えば、繊維又は繊維シートを移動する耐熱性のコンベアー上に載せ、次にコンベアーの上部より加熱した固体粒子を、例えば、散布することにより、繊維表面に加熱した固体粒子が接触すると同時に、加熱した固体粒子が繊維表面の熱可塑性樹脂を接触点のみ溶かした状態で保持されるようにする。次に、室温に放置するか、あるいは、必要に応じて適当な冷却手段、例えば、コンベアー上部より冷却空気を吹き付け、繊維又は繊維シートと固体粒子とを冷却して、固体粒子を繊維表面に固着させる。次に、固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートに固着しなかった固体粒子を、適当な固体粒子除去手段、例えば、コンベアーを傾斜させ、振動により落下させたり、気流で吹き飛ばす等の方法によって除去する。
【0051】
また、前記接触方法(3)、すなわち、加熱固体粒子と繊維又は繊維シートとを装入した耐熱性容器を振盪する方法では、例えば、繊維又は繊維シートを耐熱性の容器の中に入れ、更に、加熱した固体粒子を容器の中に入れ、容器の蓋を閉め、容器全体を振盪して、繊維表面に加熱した固体粒子が接触すると同時に、加熱した固体粒子が繊維表面の熱可塑性樹脂を接触点のみ溶かした状態で保持されるようにする。次に、容器より素早く繊維又は繊維シートを取り出し、繊維又は繊維シートを冷却して、固体粒子を繊維表面に固着させる。次に固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートに固着しなかった固体粒子を、適当な除去手段、例えば、水洗により除去する。
【0052】
本発明の製造方法(本発明による固体粒子担持繊維の製造方法及び本発明による固体粒子担持繊維シートの製造方法の両方を含む)によれば、加熱した固体粒子を繊維表面に接触させているので、繊維表面に固体粒子が接触した部分のみが溶融して固体粒子を担持している。そのため、固体粒子の表面の内、接触部分以外又は固着部分以外の表面部分を溶融樹脂が覆ってしまうことが非常に少なくなっている。また、繊維表面の樹脂全体が溶融して流動化することによって固体粒子が埋没してしまうことも、非常に少なくなっている。
また、接触した固体粒子の隙間より溶融樹脂が沁み出し、その固体粒子の外側にある固体粒子をも固着して、繊維表面上で固体粒子が部分的に複層となってしまい、繊維表面に固体粒子が均一に担持されないという問題が発生しない。更に、場合によっては、均一な、単層の固着又は担持も可能である。
【0053】
また、本発明の製造方法によれば、固体粒子が繊維表面のみを溶融するので、繊維が単一の樹脂成分からなる繊維であっても、接触処理時又は固着処理時に繊維が収縮したり、繊維全体が溶融して糸切れが生じて問題となることがない。また、繊維全体の熱劣化や繊維表面の熱劣化が起きないか、もし起きても少なくて済むという有利な効果がある。
更には、繊維表面に固体粒子が接触された後、冷却されることによって繊維表面に強固に固体粒子が固着され担持されているので、例えば、洗濯耐性試験によって固体粒子が簡単に脱落することもない。
【0054】
また、本発明の製造方法において、加熱固体粒子と繊維又は繊維シートに含まれる繊維とを接触させる方法として、前記接触方法(1)、すなわち、加熱固体粒子含有気流を繊維又は繊維シート表面に吹き付ける方法を用いた場合には、加熱された固体粒子を含む気流を繊維表面に吹き付けて行なうため、固体粒子の慣性力により固体粒子が繊維表面に衝突して、固体粒子が繊維表面にしっかりと固着することができる。
【0055】
一方、従来法によれば、バインダや加熱溶融した繊維に固体粒子を接触させるので、固体粒子の表面の内、接触部分以外又は固着部分以外の表面部分をバインダや溶融樹脂が覆ってしまう。また、繊維表面のバインダや溶融樹脂が流動化して、固体粒子が埋没してしまう。また、接触した固体粒子の隙間よりバインダや溶融樹脂が沁み出しその固体粒子の外側にある固体粒子をも固着して、繊維表面上で固体粒子が部分的に複層となってしまい、繊維表面に固体粒子が均一に固着または担持されないという問題が発生する。このため、従来法では固体粒子が繊維表面に固着または担持された後は、固体粒子が本来有する表面機能を十分に発揮できない。また、従来法によれば、繊維全体を加熱して表面を溶融させるので、繊維が単一の樹脂成分からなる繊維の場合、接触処理時または固着処理時に繊維が収縮したり、繊維全体が溶融して糸切れが生じてしまう。
【0056】
[2]本発明による固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートの製造装置
本発明による固体粒子担持繊維の製造装置は、粒子形成手段、噴出手段、加熱手段、及び繊維支持手段を少なくとも含み、前記粒子形成手段は、例えば、気流発生手段、粒子供給手段、及び粒子混合手段を含む。
また、本発明による固体粒子担持繊維シートの製造装置は、粒子形成手段、噴出手段、加熱手段、及び繊維シート支持手段を少なくとも含み、前記粒子形成手段は、例えば、気流発生手段、粒子供給手段、及び粒子混合手段を含む。
【0057】
本発明による固体粒子担持繊維の製造装置及び本発明による固体粒子担持繊維シートの製造装置の基本的な構成を、図1に示す。
図1に示す本発明の製造装置は、被処理物として繊維80を使用し、被処理物支持手段として、繊維80を支持することのできる繊維支持手段70を使用することにより、本発明による固体粒子担持繊維の製造装置として使用することができる。また、被処理物として繊維シート80’を使用し、被処理物支持手段として、繊維シート80’を支持することのできる繊維シート支持手段70’を使用することにより、本発明による固体粒子担持繊維シートの製造装置として使用することができる。以下、固体粒子担持繊維の製造装置として使用する場合を主に例にとり、本発明の製造装置を説明する。
【0058】
図1に示す本発明による固体粒子担持繊維の製造装置は、気流を発生させる気流発生手段10と;固体粒子を供給する粒子供給手段20と;前記気流発生手段10と前記粒子供給手段20とにそれぞれ連絡し、前記気流発生手段10によって発生した前記気流が送り込まれるとともに、送り込まれた前記気流の中に、粒子供給手段20によって前記固体粒子を供給することにより、前記気流と前記固体粒子とを混合して混合気流を形成することができる粒子混合手段30と;前記粒子混合手段30に連絡され、前記粒子形成手段30によって形成された固体粒子含有気流を噴出する噴出手段40と;前記気流発生手段10、前記粒子供給手段20、前記粒子混合手段30、及び前記噴出手段40に、それぞれ、設けられた加熱手段50,51,52,53と;前記噴出手段40から噴出される固体粒子含有気流が繊維表面と接触可能な位置に繊維80を保持することのできる繊維支持手段70とを含む。
【0059】
なお、図1に示す態様では、加熱手段50,51,52,53を、気流発生手段10、粒子供給手段20、粒子混合手段30、及び噴出手段40の全てに、それぞれ設けているが、本発明の製造装置においては、繊維表面における熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱された加熱固体粒子を含む気流を形成することができる限り、気流発生手段10、粒子供給手段20、粒子混合手段30、及び噴出手段40の内、少なくとも1つの手段に加熱手段を設けることができる。
また、前記繊維支持手段70の代わりに、前記噴出手段40から噴出される固体粒子含有気流が繊維シート表面と接触可能な位置に繊維シート80’を保持することのできる繊維シート支持手段70’を設けることにより、図1に示す製造装置を、本発明による固体粒子担持繊維シートの製造装置とすることができる。
【0060】
前記加熱手段50,51,52,53は、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することができるように、熱可塑性樹脂の融点以上で温度制御が可能な加熱手段である。もし繊維に過剰に高い温度の固体粒子が固着して繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じるような場合は、熱可塑性樹脂の融点より100℃高い温度を超えない温度範囲で温度制御が可能な加熱手段とすることが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より50℃高い温度を超えない温度範囲で温度制御が可能な加熱手段とすることがより好ましい。このような加熱手段50,51,52,53によって、繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子と気流とが混合された混合気流とすることができる。
【0061】
例えば、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させておけば、気流の中に熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子を供給することができる。また、気流発生手段10に加熱手段50を付属させておけば、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した気流の中に固体粒子を供給することによって、加熱された気流を介して固体粒子を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することができる。更に、粒子混合手段30に加熱手段52を付属させておくか、あるいは、噴出手段40に加熱手段53を付属させておけば、気流の中に固体粒子を供給した混合気流を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することによって、加熱された気流を介して固体粒子を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することができる。
【0062】
前記加熱手段50,51,52,53は、気流発生手段10、粒子供給手段20、粒子混合手段30、及び噴出手段40の内、少なくとも1つの手段に付属していることが必要であるが、2つ以上の手段に付属していることにより、予熱効果や保温効果を得ることができるので好ましい。例えば、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させておき、更に気流発生手段10に加熱手段50を付属させておけば、気流と固体粒子とが混合される際に、固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように予熱する効果がある。また、加熱された固体粒子が繊維に衝突するまでに、固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように保温する効果がある。また、例えば、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させておき、更に粒子混合手段30に加熱手段52を付属させておけば、加熱された固体粒子が繊維に衝突するまでに、固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように保温する効果がある。
【0063】
このように、前記加熱手段50,51,52,53が2つ以上の手段に付属している場合は、各加熱手段を熱可塑性樹脂の融点以上の温度範囲において互いに異なる温度で制御することが好ましい場合がある。例えば、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させた場合において、もし気流と固体粒子との混合気流を繊維に吹き付けた際に、繊維に過剰に高い温度の気流が当たり繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じる場合は、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させておき、更に気流発生手段10に加熱手段50を付属させておいて、加熱手段50の温度を加熱手段51の温度よりも低くしておくという方法で前記問題を解決することができる。
【0064】
本発明の製造装置において、気流発生手段10、粒子供給手段20、粒子混合手段30、噴出手段40の内、少なくとも1つの手段に、固体粒子及び/又は気流を熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度であり且つ該樹脂の融点未満の温度に温度制御が可能な補助加熱手段60,61,62,63を付属させることができる。加熱手段50,51,52,53以外に、このような補助加熱手段60,61,62,63を付属させることにより、前述の予熱効果を得ることができる。また、例えば、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させた場合において、もし気流と固体粒子との混合気流を繊維に吹き付けた際に、繊維に過剰に高い温度の気流が当たり繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じる場合は、粒子供給手段20に加熱手段51を付属させておき、更に気流発生手段10に補助加熱手段60を付属させておくという方法で前記問題を解決することができる。
【0065】
本発明の製造装置の別の態様を、図2及び図3にそれぞれ示す。図2又は図3に示す各態様においても、図1に示す態様と同様に、被処理物として繊維80を使用し、被処理物支持手段として、繊維80を支持することのできる繊維支持手段70を使用することにより、本発明による固体粒子担持繊維の製造装置として使用することができる。また、被処理物として繊維シート80’を使用し、被処理物支持手段として、繊維シート80’を支持することのできる繊維シート支持手段70’を使用することにより、本発明による固体粒子担持繊維シートの製造装置として使用することができる。
【0066】
図2に示す態様において、気流発生手段としてのブロワー11で生じた気流は、気流発生手段としての加熱管12に送られ、加熱管12の中に付属する加熱手段50によって、繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上の温度a℃で加熱される。加熱された気流Aは、粒子混合手段30に送り込まれる。粒子混合手段30には、ロート状の供給容器21と回転式の供給制御ロータ22と供給管23とからなる粒子供給手段が連絡されている。また、粒子供給手段には、固体粒子29を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することのできる加熱手段51が粒子供給手段の外側に付属している。このようにして、熱可塑性樹脂の融点以上の温度b℃(但し、b℃≧a℃)に加熱された固体粒子29は、供給管23より粒子混合手段30の中を流れる加熱された気流中に供給され、粒子混合手段30の中で気流と熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子29とが混合された混合気流が形成される。
【0067】
また、図2に示す態様では、粒子混合手段30は、気流Aによって生じる吸引力を利用して、気流Cの中に供給管23より供給される固体粒子29を吸引する構造となっている。また、気流Cの方向に対して、直角又は或る角度をつけて固体粒子29の供給通路が形成されており、供給通路と交わる部分31の気流のCの断面積は、その後やその前後の断面積よりも小さくしてある。そのため、この部分31で気流が高速化され、吸引力が強く働くとともに、固体粒子の分散混合効果が大きくすることができる。なお、固体粒子の流れBと気流Cとを同方向とすることもできる。
【0068】
一方、図3に示す態様では、粒子混合手段30には、気流発生手段としてのブロワー11及び加熱管12で発生した気流Aが送り込まれ、また同時に粒子供給手段である流動層型乾燥機24より加熱気体中に固体粒子29が分散混合された混合気体が送り込まれる。この際に気流Aによって生じる吸引力を利用して、気流Cの中に流動層型乾燥機24から供給する混合気体を吸引する構造となっている。
【0069】
図2又は図3に示す各態様では、前記混合気流は、粒子混合手段30に接続された噴出手段としてのノズル41に送られ、このノズル41より噴出される。ノズル41の先には、繊維支持手段としてのロール70、あるいは、繊維シート支持手段としてのロール70’によって移動可能に支持された繊維80又は繊維シート80’が配置されるようになっており、この繊維80又は繊維シート80’の繊維表面に、ノズル41から混合気流として噴出された固体粒子が吹き付けられるようになっている。
【0070】
図2又は図3に示す各態様では、繊維80又は繊維シート80’に固体粒子29が吹き付けられる雰囲気を、固着処理室90によって囲み、余剰の固体粒子29が固着処理室90の外へ飛散しないようにしている。また、固着処理室90には、粒子回収手段である粒子回収ボックス92を接続しており、この粒子回収ボックス92によって余剰の固体粒子29を回収する構造となっている。更に、繊維又は繊維シートに固着しなかった余剰の固体粒子29を除去して回収するため、気流で吹き飛ばす方式の粒子回収手段93を備えている。なお、図2又は図3に示す各態様では、例えば、繊維シート支持手段をコンベアーネットとして、そのコンベアーネットを傾斜させ、振動により落下させたりする方法を併用することも可能である。
【0071】
図2又は図3に示す各態様では、固着処理室90に、室内の気体を加熱する室内加熱手段91が設けられている。室内加熱手段91によって、室内の気体を繊維80又は繊維シート80’の繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点を超えない温度に加熱することにより、繊維80又は繊維シート80’への固体粒子29の固着を補助することができるようになっている。
【0072】
図2に示す態様では、固体粒子29を前記樹脂の融点以上に加熱することのできる加熱手段51を、粒子供給手段としての供給容器21、供給制御ロータ22、及び供給管23に付属させている。また、図3に示す態様では、加熱手段50を、気流発生手段としての加熱管12に付属させている。このように、加熱手段を、粒子供給手段、気流発生手段、粒子混合手段、及び噴出手段の内、少なくとも1つの手段に付属させ、固体粒子を直接に、あるいは、気流A又は気流Cを加熱することを介して、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することができる。また、図2に示す態様では、補助加熱手段60,61,62を備えることによって、粒子供給手段としての供給容器21、供給制御ロータ22、及び供給管23、気流発生手段としての加熱管12、並びに粒子混合手段30などを、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度とすることができる。
【0073】
図2に示す態様では、粒子混合手段30に、ロート状の供給容器20と回転式の供給制御ロータ21と供給管22とからなる粒子供給手段が連絡されているが、粒子供給手段はこの方式に限定されるものではなく、例えば、図3に例示するように、流動層型乾燥機24にて、繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上の温度まで固体粒子29を加熱した後、流動層型乾燥機24より加熱気体中に固体粒子29が分散混合された混合気体を取り出し、この混合気体を粒子混合手段30へ送り、固体粒子29を気流に供給する方法を用いることもできる。
【0074】
図2又は図3に示す各態様では、噴出手段として先が狭くなった形状のノズル41が、粒子混合手段30と直接接続されているが、接続管を介して接続することもできる。また、ノズル41は、固体粒子29の慣性力を高めるために、このように流路が絞られたものとしたり、あるいは、固体粒子29の噴出角度を広げるために、ノズルの先端を広げた形状とするなど、流体が噴出するのに適した形状とすることができる。また、ノズル41から噴出する固体粒子29に応じて磨耗などの生じ難いノズル材質とすることも好ましい。
【0075】
図2又は図3に示す各態様では、繊維支持手段であるロール70又は繊維シート支持手段であるロール70’によって支持した繊維80又は繊維シート80’に固体粒子29を吹き付けるに際して、繊維80又は繊維シート80’の巾方向(進行方向Eに対する)に均一に吹き付けを行なうため、固体粒子29の噴出手段としてのノズル41を複数設置することも、噴出手段に設けられたノズル孔を複数設けることも可能である。また、ノズル孔をスリット状として、繊維シート80’の全巾までノズル41の先端を広げた形状とすることも可能である。また、噴出手段を、繊維シート80’の巾方向に対してほぼ平行に、進行方向Eに対して直角又は或る角度をつけて往復の移動を可能とすれば、噴出手段としてのノズル41が少数であっても繊維シート80’全体を処理することができる。
【0076】
図2又は図3に示す各態様では、繊維支持手段であるロール70又は繊維シート支持手段であるロール70’によって移動可能に支持された繊維80又は繊維シート80’の繊維表面に、ノズル41から混合気流として噴出された固体粒子29が吹き付けられるようになっている。このような支持手段としては、固体粒子による吹き付けの処理が可能であれば特に限定されない。好ましい例としては、例えば、固体粒子による吹き付けの処理領域前後で、繊維又は繊維シートの両サイドをピンやグリップで把持しながら移動するテンター方式の装置、繊維又は繊維シートを挟んで支持する対ロール、或いは、繊維又は繊維シートを載せながら吹き付けの処理が可能なコンベアーネットなどの開孔支持体を挙げることができる。
【0077】
[3]本発明の固体粒子担持繊維及び固体粒子担持繊維シート
本発明の固体粒子担持繊維は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維であって、前記固体粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記固体粒子の平均粒子径が前記繊維の平均径の1/3以下であり、前記繊維表面に担持される前の前記固体粒子のBET法による全表面積(Sp)に対する前記繊維表面に担持されている前記固体粒子のBET法による露出表面積(Se)の百分率である有効表面積率〔(Se/Sp)×100〕が50%以上である。
本発明の固体粒子担持繊維は、例えば、本発明による、固体粒子担持繊維の製造方法により製造することができる。
【0078】
本発明の固体粒子担持繊維は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に、固体粒子を担持する繊維である。この「少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維」については、本発明の製造方法において先述した「少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維」に関する説明がそのまま当てはまる。すなわち、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維であり、繊維表面が加熱(例えば、50℃以上の加熱、好ましくは80℃以上の加熱)により溶融する繊維であれば、繊維の種類は問わず適宜選択することができる。このような繊維としては、例えば、従来の繊維の製法である溶融紡糸による合成繊維、従来の不織布の製法であるスパンボンド法、メルトブロー法、若しくはフラッシュ紡糸法などによって得られる繊維、又は芯部分が天然繊維若しくは無機繊維からなる繊維などから適宜選択することができる。
【0079】
本発明の固体粒子担持繊維に担持されている前記固体粒子としては、その平均粒子径以外は、本発明の製造方法において用いる固体粒子をそのまま用いることができる。
本発明の固体粒子担持繊維に担持されている固体粒子の平均粒子径は、繊維径の1/3以下であることが必要である。固体粒子の平均粒子径が繊維径の1/3を超えると、固体粒子は繊維表面より脱落し易くなり、繊維表面に固体粒子が固着した状態を保ち難くなる。また、このような固体粒子が担持した繊維を得ようとしても、固体粒子を繊維表面に固着させることが困難になる。なお、固体粒子の平均粒子径とは固体粒子の数平均粒子径を表すものとする。
【0080】
本発明の固体粒子担持繊維における固体粒子の有効表面積率(Ep)は、BET(BRUNAUER EMMETT TELLER)法の比表面積測定により評価すると50%以上である。有効表面積率とは、繊維表面に担持されている固体粒子の露出表面のBET法による表面積[露出表面積(Se)]と、繊維表面に担持される前の状態の固体粒子のBET法による表面積[粒子全体の表面積(Sp)]とを比較して、前者の後者に対する割合(Se/Sp)を百分率で表したものである。有効表面積率が50%以上であれば、固体粒子が繊維表面に担持された後も、固体粒子自身が本来有する表面が、固体粒子の表面機能を充分に発揮しうる程度に保持されていることを示している。また、逆に有効表面積率が50%未満であれば、固体粒子が繊維表面に担持された後は、固体粒子自身が本来有する表面が、固体粒子の表面機能を充分に発揮しうる程度に保持されていないことを示している。
【0081】
また、BET法とは、ラングミュア法の単分子吸着層を多分子吸着層に拡張した理論式であり、分子は積み重なって無限に吸着されるものとされ、本明細書では、液体窒素の沸点−195.8℃における窒素ガス又はクリプトンガスの吸着等温線から比表面積が求められる。
【0082】
前記有効表面積率Ep(%)の計算は、次のようにして行なう。但し、固体粒子担持前後で繊維の表面積には変化がないものとして計算する。この計算では、固体粒子及び固体粒子担持繊維の質量として、繊維質量1g当たりに換算した質量W(g/g)を用いている。
Ep=(Se/Sp)×100
=(Sc−Sf)/Sp×100
Ep:固体粒子の有効表面積率(%)
Se:固体粒子のBET法による露出表面積
Sp:固体粒子全体のBET法による表面積
Sc:固体粒子担持繊維のBET法による表面積
Sf:固体粒子担持前の繊維のBET法による表面積
Sc=Soc×Wc
Soc:固体粒子担持繊維のBET法による比表面積(m2/g)
Wc:繊維1gからなる固体粒子担持繊維の質量(g/g)
[すなわち、繊維1g当たりの固体粒子担持繊維の質量(g/g)]
Sf=Sof×Wf
Sof:繊維のBET法による比表面積(m2/g)
Wf:繊維1gに対する繊維の質量(g/g)
[すなわち、繊維1g当たりの繊維の質量(g/g)]
=1(g/g)
Sp=Sop×Wp
Sop:固体粒子全体のBET法による比表面積(m2/g)
Wp:繊維1gに対する固体粒子の担持量(g/g)
[すなわち、繊維1g当たりの固体粒子の質量(g/g)]
=(Wc−1)(g/g)
【0083】
また、繊維の比表面積の算出方法については、繊維が多孔質でなく、しかも、繊維径/繊維長の値が0.01以下である場合は、繊維の断面積がほぼ無視できる値となるので、繊維の側面積と繊維素材の密度との関係から、例えば、下記に示すように、繊維の比表面積を算出して、繊維のBET法による比表面積に置き換えて用いることができる。
Sof={2π×(Rf/2)×Lf}/{π×(Rf/2)2×Lf×Df}
=4/(Rf×Df)
Ff:繊維長
Rf:繊維の平均径
Df:繊維素材の密度
【0084】
本発明の固体粒子担持繊維は、洗濯耐性試験後の固体粒子保持率が80%以上であることが好ましく、90%以上が更に好ましい。すなわち、固体粒子担持繊維又は固体粒子担持繊維シートの用途として、固体粒子の脱落が問題になるような用途の場合には、洗濯耐性試験後に繊維表面に固着した固体粒子が80%以上、より好ましくは90%以上保持されていることが好ましい。固体粒子保持率が80%以下の場合、使用中に脱落が生じ、固体粒子を吸引することにより、人体に害を及ぼすことがある。また、フィルタのように気流を繊維又は繊維シートに接触させる用途の場合、繊維又は繊維シートから、担持した固体粒子由来の発塵が生じてしまう。また、研磨粒子を繊維又は繊維シートに担持して、研磨材として用いる場合、固体粒子の担持が弱すぎると、研磨能力が低く、必要な研磨力が得られない等の問題が生じる。このような用途に用いる場合、固体粒子保持率が80%以上であることが好ましい。
【0085】
本明細書において、固体粒子担持繊維の洗濯耐性試験は、例えば、以下に示す手順により実施することができる。
すなわち、固体粒子担持繊維を10cm程度の長さにカットし、100〜300本を引き揃え、両端をクリップで固定して繊維束とする。次いで、その繊維束を縦方向及び横方向が10cm×10cmの洗濯用ネットに入れ、試験体とする。固体粒子担持繊維が10cm以下の長さである場合には、総長10〜30mの長さに相当する量の繊維塊を、繊維が抜け出ない程度の目の粗さの洗濯用ネットに入れ、試験体とする。
【0086】
次に、家庭用二槽式洗濯機に約40℃の水40リットルを入れ、これに家庭用の洗濯用洗剤20gを加え、よくかき混ぜて洗剤を溶解する。浴比が40対1となるように、試験体1枚と負荷布として綿布を必要枚数加えて洗濯液に投入し、洗濯操作を行なう。洗濯操作は、正方向のみの回転方向で15分間撹拌する。その後、水ですすぎ洗いを15分間行ない、次に、洗濯機に付属の脱水機で3分間試験片を脱水し、次に、試験片を洗濯機より取り出し、取り出した試験片を室温で放置して、自然乾燥させる。次に、乾燥した試験片の質量を測定して、洗濯前の試験片の質量と比較して、担持された固体粒子が脱落する程度を調べ、残留した固体粒子の質量から固体粒子保持率を求める。
【0087】
本発明の固体粒子担持繊維は、例えば、本発明による固体粒子担持繊維の製造方法において、固体粒子として、その平均粒子径が繊維の平均径の1/3以下である固体粒子を用いることにより製造することができる。
【0088】
本発明の固体粒子担持繊維シートは、その繊維シート中に、本発明の固体粒子担持繊維を少なくとも含む限り、特に限定されるものではなく、本発明の固体粒子担持繊維のみを含むこともできるし、あるいは、本発明の固体粒子担持繊維以外の繊維を含むこともできる。固体粒子担持繊維以外の繊維としては、特に限定されず、少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維であっても、あるいは、表面が熱可塑性樹脂でない繊維、例えば、無機繊維、あるいは、融点を有せず分解温度を有する繊維などであることもできる。
【0089】
繊維シートの構造としては、例えば、織物、編物、若しくは不織布、又はそれらの組合せを挙げることができる。織物又は編物の場合には、例えば、前記繊維を織機又は編機により加工することによって得られる。また、不織布の場合には、例えば、従来の不織布の製法である、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、又は湿式法などによって繊維シートとすることができる。また、これらの製法によって形成される繊維ウエブに、接着性繊維及び/又は融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維などを予め混入させてから、加熱処理することにより、繊維間が接合された繊維シートとすることができる。また、前記繊維ウエブ間を機械的絡合処理(例えば、水流絡合又はニードルパンチなど)によって絡合させた繊維シートとすることもできる。また、前記繊維ウエブを、加熱した平滑なロールと加熱した凹凸のあるロールとの間に通して、部分的に結合された繊維シートとすることもできる。また、種類の異なる前記繊維シートを複数積層して更に一体化してなる繊維シートとすることもできる。
【0090】
本発明の固体粒子担持繊維シートを得る方法としては、例えば、本発明の固体粒子担持繊維を含んだ繊維シートを前記のようにして形成することによって得る方法、あるいは、固体粒子担持繊維を含まない繊維シートを予め形成してから、本発明による固体粒子担持繊維シートの製造方法を用いて、固体粒子を担持させる方法等を挙げることができる。このように、本発明の固体粒子担持繊維シートは、繊維シート中に固体粒子担持繊維を有しているので、この繊維シートを濾過材、吸収材、又はカバー材等の様々な用途に適した形態とすることにより、固体粒子担持繊維が担持している固体粒子の表面機能を更に有効に発揮することができる。
【0091】
本発明の固体粒子担持繊維シートの洗濯耐性試験は、例えば、以下に示す手順により実施することができる。
すなわち、家庭用二槽式洗濯機に約40℃の水40リットルを入れ、これに家庭用の洗濯用洗剤20gを加え、よくかき混ぜて洗剤を溶解する。浴比が40対1となるようにして、縦方向及び横方向が10cm×10cmの試験片3枚と負荷布として綿布を必要枚数加えて洗濯液に投入し、洗濯操作を行なう。洗濯操作は、正方向のみの回転方向で15分間撹拌する。その後、水ですすぎ洗いを15分間行ない、次に、洗濯機に付属の脱水機で3分間試験片を脱水し、次に、試験片を洗濯機より取り出し、取り出した試験片を室温で放置して、自然乾燥させる。次に、乾燥した試験片の質量を測定して、洗濯前の試験片の質量と比較して、担持された固体粒子が脱落する程度を調べ、残留した固体粒子の質量から固体粒子保持率を求める。
【実施例】
【0092】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0093】
《実施例1》
抄造装置により、芯成分がポリプロピレン樹脂であり、鞘成分が高密度ポリエチレン樹脂(融点=132℃)からなる芯鞘型の複合繊維(繊度=2.2デシテックス、繊維長=10mm)100%からなる抄造シートを作成した。次に、この抄造シートを金網のコンベアーベルトの上に載置して、エアースルー型のドライヤーの中で、複合繊維の接着成分である高密度ポリエチレン繊維が溶融するように、140℃の温度で熱接着処理を行ない、湿式法不織布を得た。この湿式法不織布は、面密度が52.83g/m2であった。
【0094】
次に、一次粒子の径が約20nmで二次粒子の径が0.1〜1μmの酸化チタン粒子約100gを、内径20cmのシャーレに入れ、135℃に加熱した。次に、このシャーレの中に、更に、前記湿式法不織布(縦=10cm、横=10cm、繊維質量=0.5283g)を入れ、シャーレに蓋をして、手に持ち、上下に5回振ってから、酸化チタン粒子が固着した繊維シートを素早く取り出した。次に、固着しなかった酸化チタン粒子を水で洗浄して、酸化チタン粒子が繊維表面に均一に担持された、固体粒子担持繊維からなる固体粒子担持繊維シートを得た。
【0095】
この固体粒子担持繊維シートの質量は0.5926gであり、繊維質量1g当たりの固体粒子担持繊維の質量は1.122g/g(=0.5926g/0.5283g)であった。また、酸化チタン粒子の担持量は0.0643g(=0.5926−0.5283)であり、繊維質量1g当たりに担持した酸化チタン粒子の質量は0.1217g/g(0.0643g/0.5283g)であった。
この固体粒子担持繊維の比表面積をBET法によって測定すると、7.27m2/gであった。また、酸化チタン粒子担持前の湿式法不織布の繊維の比表面積は0.3329m2/gであり、酸化チタン粒子の担持前の比表面積、すなわち、酸化チタン粒子が本来有する比表面積は89.59m2/gであった。これらの値より、この固体粒子担持繊維に担持されている酸化チタン粒子の比表面積の有効表面積率を、酸化チタン粒子が本来有する比表面積を基準として求めると、71.8%であった。また、この固体粒子担持繊維シートは、酸化チタン粒子の担持処理中及び/又は処理後に、繊維の収縮や糸切れは生じなかった。
また、この固体粒子担持繊維シートに担持されている酸化チタン粒子の担持の強さを調べるため、この固体粒子担持繊維シートの洗濯耐性試験を行なった結果、洗濯耐性試験前の6.43g/m2の酸化チタン粒子に対して、6.24g/m2の酸化チタン粒子が保持されており、固体粒子保持率は97.0%であった。
【0096】
《実施例2》
抄造装置により、高密度ポリエチレン繊維(繊度=2.2デシテックス、繊維長=10mm、融点=132℃)100%からなる抄紙シートを作成し、続いて、水流絡合法により抄紙シートの繊維を絡合させた抄造シートを作成した。次に、この抄造シートを金網のコンベアーベルトの上に載置して、エアースルー型のドライヤーの中で、125℃の温度で乾燥処理を行ない、湿式法不織布を得た。
続いて、実施例1と同様の方法により、酸化チタン粒子が繊維表面に均一に担持された、固体粒子担持繊維からなる固体粒子担持繊維シートを得た。
【0097】
前記湿式法不織布(すなわち、酸化チタン粒子担持前の不織布)の面密度は51.21g/m2(繊維質量=0.5121g)であった。固体粒子担持繊維シートの質量は0.5767gであり、繊維質量1g当たりの固体粒子担持繊維の質量は1.126g/g(=0.5767g/0.5121g)であった。また、酸化チタン粒子の担持量は0.0646gであり、繊維質量1g当たりに担持した酸化チタン粒子の質量は0.1261g/g(=0.0646g/0.5121g)であった。
【0098】
この固体粒子担持繊維の比表面積をBET法によって測定すると、7.15m2/gであった。また、酸化チタン粒子担持前の湿式法不織布の繊維の比表面積は0.3242m2/gであり、酸化チタン粒子の担持前の比表面積、すなわち、酸化チタン粒子が本来有する比表面積は89.59m2/gであった。これらの値より、この固体粒子担持繊維に担持されている酸化チタン粒子の比表面積の有効表面積率を、酸化チタン粒子が本来有する比表面積を基準として求めると、68.4%であった。また、この固体粒子担持繊維シートは、酸化チタン粒子の担持処理中及び/又は処理後に、繊維の収縮や糸切れは生じなかった。
また、この固体粒子担持繊維シートに担持されている酸化チタン粒子の担持の強さを調べるため、この固体粒子担持繊維シートの洗濯耐性試験を行なった結果、洗濯耐性試験前の6.46g/m2の酸化チタン粒子に対して、6.35g/m2の酸化チタン粒子が保持されており、固体粒子保持率は98.3%であった。
【0099】
《実施例3》
高密度ポリエチレン樹脂(融点=130℃)からなるモノフィラメント(繊度=20デシテックス)に、130℃に加熱した炭酸カルシウム粒子(粒子径=5μm)を散布して、炭酸カルシウム粒子が繊維表面に均一に担持された固体粒子担持繊維を得た。この固体粒子担持繊維は、炭酸カルシウム粒子の担持処理中及び/又は処理後に前記モノフィラメントの収縮や糸切れは生じなかった。
【0100】
《比較例1》
実施例1に記載の手順を繰り返すことにより、面密度が51.47g/m2である湿式法不織布を得た。
続いて、一次粒子の径が約20nmで二次粒子の径が0.1〜1μmの酸化チタン粒子約100gを、内径20cmのシャーレに入れ、25℃に保った。次に、このシャーレの中に、更に、前記湿式法不織布(縦=10cm、横=10cm、繊維質量=0.5147g)を入れ、シャーレに蓋をして、手に持ち、上下に5回振った。次に、このシャーレを135℃のドライヤーに入れ、5分後にドライヤーからシャーレを取り出し、更に、素早くシャーレから酸化チタン粒子が固着した繊維シートを取り出した。次に、固着しなかった酸化チタン粒子を水で洗浄して、酸化チタン粒子が担持された繊維シートを得た。
【0101】
この比較例では、酸化チタン粒子は繊維表面に均一に担持されておらず、部分的に凹凸があった。また、固体粒子担持繊維シートの質量は0.5796gであり、繊維質量1g当たりの固体粒子担持繊維の質量は1.126g/g(=0.5796g/0.5147g)であった。また、酸化チタン粒子の担持量は0.0649gであり、繊維質量1g当たりに担持した酸化チタン粒子の質量は0.1261g/g(=0.0649g/0.5147g)であった。
【0102】
この固体粒子担持繊維の比表面積をBET法によって測定すると、3.73m2/gであった。また、酸化チタン粒子担持前の湿式法不織布の繊維の比表面積は0.3329m2/gであり、酸化チタン粒子の担持前の比表面積、すなわち、酸化チタン粒子が本来有する比表面積は89.59m2/gであった。これらの値より、この固体粒子担持繊維に担持されている酸化チタン粒子の比表面積の有効表面積率を、酸化チタン粒子が本来有する比表面積を基準として求めると、34.2%であった。また、この固体粒子担持繊維シートは、酸化チタン粒子の担持処理中及び/又は処理後に、繊維の糸切れが生じることはなかったものの、繊維の収縮が生じた。
また、この固体粒子担持繊維シートに担持されている酸化チタン粒子の担持の強さを調べるため、この固体粒子担持繊維シートの洗濯耐性試験を行なった結果、洗濯耐性試験前の6.49g/m2の酸化チタン粒子に対して、6.25g/m2の酸化チタン粒子が保持されており、固体粒子保持率は96.3%であった。
【0103】
《比較例2》
抄造装置により、高密度ポリエチレン繊維(繊度=2.2デシテックス、繊維長=10mm、融点=132℃)100%からなる抄紙シートを作成し、続いて、水流絡合法により抄紙シートの繊維を絡合させた抄造シートを作成した。次に、この抄造シートを金網のコンベアーベルトの上に載置して、エアースルー型のドライヤーの中で、125℃の温度で乾燥処理を行ない、面密度が51.21g/m2である湿式法不織布を得た。
続いて、比較例1と同様の方法により、酸化チタン粒子が担持された繊維シートを得た。この固体粒子担持繊維シートでは、酸化チタン粒子は繊維表面に均一に担持されておらず、部分的に凹凸があった。この固体粒子担持繊維シートは、酸化チタン粒子の担持処理中及び/又は処理後に、不織布中の繊維の収縮が生じ、更に繊維の糸切れが多数生じた。
【0104】
《比較例3》
高密度ポリエチレン樹脂(融点=130℃)からなるモノフィラメント(繊度=20デシテックス)に、常温の炭酸カルシウム粒子(粒子の径=5μm)を散布して、炭酸カルシウム粒子を繊維に接触させた後、135℃のドライヤーに1分間入れた。その結果、モノフィラメントが収縮して糸切れを生じてしまい、固体粒子担持繊維を得ることができなかった。
【0105】
[評価結果]
表1に、実施例1及び2並びに比較例1についての結果を示す。実施例1及び2では、固体粒子の有効表面積率が50%以上であり、固体粒子が繊維表面に担持された後も、固体粒子が本来有する表面機能を充分に発揮することができることを示している。これに対して、比較例1では、固体粒子の有効表面積率が50%未満の値であり、固体粒子が繊維表面に担持された後は、固体粒子が本来有する表面機能を充分に発揮することができないことを示している。
また、実施例1〜3では、固体粒子を繊維表面に担持しても、繊維の収縮や糸切れが生じないのに対して、比較例1〜3では、繊維の収縮や糸切れが生じた。また、実施例1及び2の洗濯耐性試験では、比較例1と同様に固体粒子の脱落が少なく、固体粒子は繊維に強固に担持されていることを示している。
【0106】
《表1》
実施例1 実施例2 比較例1
固体粒子担持繊維シート
BET法による
比表面積 Soc (m2/g) 7.27 7.15 3.73
質量(換算)Wc (g/g) 1.122 1.126 1.126
Sc = Soc×Wc 8.157 8.051 4.200
繊維シート
BET法による
比表面積 Sof (m2/g) 0.3329 0.3242 0.3329
Sf = Sof 0.3329 0.3242 0.3329
固体粒子
BET法による
比表面積 Sop (m2/g) 89.59 89.59 89.59
質量(換算)Wp(g/g) 0.1217 0.1261 0.1261
Sp = Sop×Wp 10.90 11.30 11.29
有効表面積率(%)
Ep = (Sc−Sf)/Sp×100 71.8 68.4 34.2
洗濯耐性試験
固体粒子保持量(g/m2) 6.24 6.35 6.25
固体粒子保持率(%) 97.0 98.3 96.3
【符号の説明】
【0107】
10・・・気流発生手段;11・・・ブロワー;12・・・加熱管;
20・・・粒子供給手段;21・・・供給容器;22・・・供給制御ロータ;
23・・・供給管;24・・・流動層型乾燥機;29・・・固体粒子;
30・・・粒子混合手段;40・・・噴出手段;41・・・ノズル;
50,51,52,53・・・加熱手段;
60,61,62,63・・・補助加熱手段;
70・・・ロール又は繊維支持手段;
70’・・・ロール又は繊維シート支持手段;
80・・・繊維;80’・・・繊維シート;
90・・・固着処理室;91・・・室内加熱手段;
92・・・粒子回収ボックス;
93・・・空気を吹き飛ばす方式の粒子回収手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に固体粒子を担持する繊維であって、前記固体粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記繊維の平均径が0.1〜100μmであり、前記固体粒子の平均粒子径が前記繊維の平均径の1/3以下であり、前記繊維表面に担持される前の前記固体粒子のBET法による全表面積(Sp)に対する前記繊維表面に担持されている前記固体粒子のBET法による露出表面積(Se)の百分率である有効表面積率〔(Se/Sp)×100〕が50%以上であることを特徴とする固体粒子担持繊維。
【請求項2】
洗濯耐性試験後の固体粒子保持率が80%以上である、請求項1記載の固体粒子担持繊維。
【請求項3】
固体粒子が、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、吸水性樹脂、イオン交換樹脂、トルマリン、炭酸カルシウム、又は撥水性樹脂である、請求項1又は2に記載の固体粒子担持繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体粒子担持繊維を含む、固体粒子担持繊維シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−174114(P2009−174114A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67378(P2009−67378)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2002−260740(P2002−260740)の分割
【原出願日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】