説明

固体電池及びその製造方法

【課題】導電性部材の破損を防止することが可能な、固体電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層された複数の電極体を有する積層体を具備し、複数の電極体は、対称軸を挟んで対応する電極体同士が導電性部材を介して接続され、相対的に対称軸から遠い電極体同士を接続する導電性部材は、相対的に対称軸に近い電極体同士を接続する導電性部材よりも長い固体電池とし、複数の導電性部材に間隔を開けてそれぞれ複数の電極体を形成する工程と、その後に複数の導電性部材を積層する工程と、を有し、積層された複数の導電性部材の外側に位置すべき間隔が、内側に位置すべき間隔よりも広くなるように複数の電極体が形成される、固体電池の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体状の電解質を用いた固体電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能という特徴を有している。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として携帯電話等の情報機器に使用されており、近年、電気自動車用やハイブリッド自動車用等、大型の動力用としての需要も高まっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池には、正極層及び負極層と、これらの間に配置される電解質層とが備えられ、電解質層に用いられる電解質としては、例えば非水系の液体状や固体状の物質が知られている。液体状の電解質(以下において、「電解液」という。)が用いられる場合には、電解液が正極層や負極層の内部へと浸透しやすい。そのため、正極層や負極層に含有されている活物質と電解液との界面が形成されやすく、性能を向上させやすい。ところが、広く用いられている電解液は可燃性であるため、安全性を確保するためのシステムを搭載する必要がある。一方、不燃性である固体状の電解質(以下において、「固体電解質」という。)を用いると、上記システムを簡素化できる。それゆえ、固体電解質を含有する層(以下において、「固体電解質層」という。)が備えられる形態のリチウムイオン二次電池(以下において、「固体電池」という。)の開発が進められている。
【0004】
このような電池に関する技術として、例えば特許文献1には、帯状の金属箔からなる集電体上に活物質を含有する活物質層が設けられた正極と、金属リチウム又は金属リチウム合金からなる負極と、セパレータとを有する電池において、正極は集電体片面のみに活物質層を形成し、活物質層が互いに対向するように屈曲され、正極が屈曲された屈曲部には活物質層未塗布部を設ける技術が開示されている。さらに、この特許文献1には、最外面の正極電極は内面に配置される正極電極よりも幅を広くする技術、及び、活物質の厚さをTとしたときに未塗布部の幅を2T以上にする技術も開示されている。また、特許文献2には、集電用芯材からなる集電体の表面に活物質合剤層が形成された帯状の正極板及び負極板からなる電極板と、その間にセパレータを介在した非水系二次電池用電極群において、正極板及び負極板がセパレータを介してつづら折れ状に積層し、且つ、正極板及び負極板の少なくとも一方の電極板が、電極群の折り曲げ箇所にある湾曲部に電極板上に活物質合剤層が形成されていない未塗工部を有している技術が開示されている。さらに、この特許文献2には、未塗工部を集電体の両面に形成し、電極群の内周側の面に形成した未塗工部の幅を、電極群の外周側の面に形成した未塗工部の幅よりも広くする技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−147300号公報
【特許文献2】特開2011−138675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示されている技術によれば、屈曲部に電極層が存在しない、積層された複数の正極層、セパレータ、及び、負極層を有する積層体を備えた電池が得られる。しかしながらこれらの技術では、最外面の未塗工部の幅を内面の未塗工部の幅よりも狭くすることが好ましいとされている。固体状の電解質を用いた固体電池において、積層体の最外面の未塗工部の幅を内面の未塗工部の幅よりも狭くすると、外側の集電体(導電性部材)が破損する虞があるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、導電性部材の破損を防止することが可能な、固体電池及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明の第1の態様は、積層された複数の電極体を有する積層体を具備し、複数の電極体は、対称軸を挟んで対応する電極体同士が導電性部材を介して接続され、相対的に対称軸から遠い電極体同士を接続する導電性部材は、相対的に対称軸に近い電極体同士を接続する導電性部材よりも長いことを特徴とする、固体電池である。
【0009】
ここに、本発明の第1の態様及び以下に示す本発明の他の態様(以下において、単に「本発明」ということがある。)において、「電極体」とは、正極層及び負極層と、これらの間に配置された固体電解質層とを有する構造体をいう。また、「対称軸」とは、例えば軸心部材の周囲に電極体を捲回して複数の電極体を積層する場合には、軸心部材が対称軸に相当する。一方、電極体が接続された導電性部材を折り曲げる過程を経て複数の電極体を積層する場合には、折り曲げる際の軸となる線を通り、且つ、折り曲げられた導電性部材に接続されている電極体を構成する各層(正極層、電解質層、負極層)の積層方向を法線方向とする平面が、対称軸に相当する。電極体が接続された導電性部材の複数箇所を折り曲げる場合には、折り曲げる箇所毎に、対称軸が存在する。
【0010】
相対的に対称軸から遠い電極体同士を接続する導電性部材の長さを、相対的に対称軸に近い電極体同士を接続する導電性部材の長さよりも長くすることにより、外側の導電性部材(集電部)の破損を防止することが可能になる。
【0011】
本発明の第2の態様は、積層された複数の電極体を有する積層体を具備し、複数の電極体は集電箔を介して接続され、集電箔は、電極体の電極層に接触している複数の電極領域、及び、電極層に接触していない非電極領域を有し、折り曲げられた複数の非電極領域が側面視で重なるように配置され、折り曲げられた複数の非電極領域は、外側に配置された非電極領域の長さが内側に配置された非電極領域の長さよりも長いことを特徴とする、固体電池である。
【0012】
ここに、「電極層」とは、正極層や負極層をいう。また、本発明において、「外側」とは、積層された複数の電極体から遠い側をいい、「内側」とは、積層された複数の電極体に近い側をいう。また、本発明において、「非電極領域の長さ」とは、非電極領域の両側に存在する一対の電極体の、集電箔上の距離(例えば図1の長さd)をいう。
【0013】
折り曲げられた複数の非電極領域を、外側に配置された非電極領域の長さが内側に配置された非電極領域の長さよりも長くなるように構成することにより、外側の集電箔(集電部)の破損を防止することが可能になる。
【0014】
また、上記本発明の第2の態様において、折り曲げられた複数の非電極領域は、外側ほど非電極領域の長さが長いことが好ましい。かかる形態とすることにより、特に内側の非電極領域が過度に撓む事態を回避することが可能になるので、過度に撓んだ非電極領域の面が電極体に接触し難くなる。その結果、上記効果に加えて、電極体の滑落を防止することが可能になる。
【0015】
本発明の第3の態様は、複数の導電性部材に、間隔を開けてそれぞれ複数の電極体を形成する、電極体形成工程と、該電極体形成工程で複数の電極体が形成された複数の導電性部材を積層する、積層工程と、を有し、積層された複数の導電性部材の外側に位置すべき上記間隔が、内側に位置すべき上記間隔よりも広くなるように、電極体形成工程で間隔を調整しながら複数の電極体が形成されることを特徴とする、固体電池の製造方法である。
【0016】
外側に位置すべき導電性部材に確保される間隔が、内側に位置すべき導電性部材に確保される間隔よりも広くなるように、電極体形成工程で間隔を調整しながら複数の電極体を形成することにより、上記本発明の第1の態様にかかる固体電池を製造することが可能になるので、外側の導電性部材(集電部)の破損を防止することが可能になる。
【0017】
本発明の第4の態様は、複数の集電箔に、間隔を開けてそれぞれ複数の電極体を形成する、電極体形成工程と、該電極体形成工程で複数の電極体が形成された複数の集電箔を積層する、積層工程と、該積層工程後に、複数の電極体に挟まれた非電極領域を折り曲げる、折り曲げ工程と、を有し、該折り曲げ工程後に外側に位置すべき非電極領域の長さが、折り曲げ工程後に内側に位置すべき非電極領域の長さよりも長くなるように、電極体形成工程で間隔を調整しながら複数の電極体が形成されることを特徴とする、固体電池の製造方法である。
【0018】
折り曲げ工程後に外側に位置すべき非電極領域の長さが、内側に位置すべき非電極領域の長さよりも長くなるように、電極体形成工程で間隔を調整しながら複数の電極体を形成することにより、上記本発明の第2の態様にかかる固体電池を製造することが可能になるので、外側の集電箔(集電部)の破損を防止することが可能になる。
【0019】
また、上記本発明の第4の態様において、折り曲げ工程後に外側に位置すべき非電極領域ほど長さが長くなるように、電極体形成工程で間隔を調整しながら複数の電極体が形成されることが好ましい。かかる形態とすることにより、特に内側の非電極領域が過度に撓む事態を回避することが可能になるので、過度に撓んだ非電極領域の面が電極体に接触し難くなる。その結果、上記効果に加えて、電極体の滑落を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の態様及び本発明の第2の態様によれば、集電部の破損を防止することが可能な、固体電池を提供することができる。
【0021】
本発明の第3の態様及び本発明の第4の態様によれば、集電部の破損を防止し得る固体電池を製造することが可能な、固体電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電極集電体3を示す図である。
【図2】電極集電体4を示す図である。
【図3】電極集電体5を示す図である。
【図4】積層体7を説明する図である。
【図5】固体電池10を説明する図である。
【図6】すべての非電極領域の長さを内側に配置される非電極領域の長さに合わせた形態を説明する図である。
【図7】すべての非電極領域の長さを外側に配置される非電極領域の長さに合わせた形態を説明する図である。
【図8】本発明の固体電池の製造方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。以下の図面では、繰り返される符号の一部を省略することがある。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0024】
1.固体電池
図1は、集電箔1の両面に間隔dを開けて形成された複数の電極体2、2、…(電極体2a、2a及び電極体2b、2b)を有する電極集電体3を示す図である。図1に示したように、電極集電体3では、図1の紙面上側の集電箔1の面に、長さdの非電極領域3fを挟んで電極体2a、2bが形成されており、図1の紙面下側の集電箔1の面にも、長さdの非電極領域3fを挟んで電極体2a、2bが形成されている。電極体2a、2bは、正極層2x及び負極層2zと、これらの間に配置された固体電解質層2yとを有し、電極体2aは負極層2zが集電箔1に接触しており、電極体2bは正極層2xが集電箔1に接触している。電極集電体3では、図1の紙面上側の面に形成されている2つの電極体2a、2b、及び、図1の紙面下側の面に形成されている2つの電極体2a、2bが、それぞれ、集電箔1を介して電気的に直列に接続されており、集電箔1を挟んで上下に対応する位置に形成された2つの集電体2a、2a、及び、集電体2b、2bが、それぞれ、集電箔1を介して電気的に並列に接続されている。
【0025】
図2は、集電箔1の片面に、上記間隔dよりも狭い間隔d1を開けて形成された2つの電極体2、2(電極体2a、2b)を有する電極集電体4を示す図である。図2において、電極集電体3と同様の構成には図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。図2に示したように、電極集電体4では、図2の紙面上側の集電箔1の面にのみ、長さd1の非電極領域4fを挟んで電極体2a、2bが形成されており、図2の紙面下側の集電箔1の面には、電極体2a、2bが形成されていない。電極集電体4において、2つの電極体2a、2bは、集電箔1を介して電気的に直列に接続されている。
【0026】
図3は、集電箔1の片面に、上記間隔dよりも広い間隔d2を開けて形成された2つの電極体2、2(電極体2a、2b)を有する電極集電体5を示す図である。図3において、電極集電体3と同様の構成には図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。図3に示したように、電極集電体5では、図3の紙面上側の集電箔1の面にのみ、長さd2の非電極領域5fを挟んで電極体2a、2bが形成されており、図3の紙面下側の集電箔1の面には、電極体2a、2bが形成されていない。電極集電体5において、2つの電極体2a、2bは、集電箔1を介して電気的に直列に接続されている。
【0027】
図4は、積層体7を説明する図である。図4において、図1〜図3と同様の構成には、これらの図で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。積層体7は、電極集電体5の電極体2a、2bの上面に集電箔6、6をそれぞれ配置し、この集電箔6、6と電極集電体3の下面側に形成されている電極体2a、2bとがそれぞれ接触するように集電箔6、6の上面に電極集電体3を配置し、電極集電体3の上面側に形成されている電極体2a、2bの上面に集電箔6、6をそれぞれ配置し、さらに、当該集電箔6、6と電極集電体4の電極体2a、2bとがそれぞれ接触するように集電箔6、6の上面に電極集電体4を配置した後、非電極領域3f、4f、5fで折り曲げる過程を経て、作製されている。積層体7では、図4の紙面上下方向に積層された電極体2b、2b、…、及び、電極体2a、2a、…が、集電箔1、1、…や集電箔6、6を介して電気的に並列に接続されており、このように接続された電極体2b、2b、…及び電極体2a、2a、…が、集電箔1、1、1の非電極領域3f、4f、5fを介して電気的に直列に接続されている。
【0028】
上述のように、外側に配置されている非電極領域5fの長さd2は、この非電極領域5fよりも内側に配置されている非電極領域3fの長さdよりも長く、非電極領域3fの長さdは、この非電極領域3fよりも内側に配置されている非電極領域4fの長さd1よりも長い。このように、外側の非電極領域の長さを内側の非電極領域の長さよりも長くすることにより、外側の集電箔1の破損を防止することが可能になる。
【0029】
さらに、積層体7において、折り曲げられた複数の非電極領域3f、4f、5fは、外側ほど非電極領域の長さが長い。かかる形態とすることにより、内側の非電極領域(非電極領域4f、3f)が過度に撓む事態を回避することが可能になり、過度に撓んだ非電極領域の面が電極体2a、2bに接触し難くなるので、電極体2a、2bの滑落を防止することが可能になる。したがって、積層体7を有する形態とすることにより、本発明によれば、集電部(集電箔1)の破損を防止することが可能であり、且つ、電極体2a、2bの滑落を防止することが可能な、固体電池を提供することができる。
【0030】
本発明において、集電箔1、6の構成材料は特に限定されず、電極体2に用いる活物質の種類に応じて適宜決定すれば良い。例えば、負極層2zの負極活物質としてSnやInやチタン酸リチウムを用いる場合、集電箔1、6にはAl等を用いることができ、負極層2zの負極活物質としてAlやCを用いる場合、集電箔1、6にはステンレス鋼(SUS)やAu等を用いることができる。このほか、複数の金属箔を接合して形成した箔(例えば、Cu箔とAl箔とを接合して形成した金属箔)を、集電箔1、6として用いることも可能である。
【0031】
また、正極層2xに含有させる正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の正極層に含有させることが可能な公知の活物質を適宜用いることができる。そのような正極活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状活物質のほか、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO等のオリビン型活物質や、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型活物質等を例示することができる。
【0032】
正極活物質の形状は、例えば粒子状や薄膜状等にすることができる。正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。また、正極層1bにおける正極活物質の含有量は、特に限定されないが、質量%で、例えば40%以上99%以下とすることが好ましい。
【0033】
正極層2xには、リチウムイオン二次電池の正極層に含有させることが可能な公知の固体電解質を適宜含有させることができる。そのような固体電解質としては、LiPSや、LiS及びPを混合して作製したLiS−P等の硫化物固体電解質を例示することができる。固体電解質として、LiS及びPを含有する原料組成物を用いて作製した硫化物固体電解質を用いる場合、LiS及びPの合計に対するLiSの割合は特に限定されないが、例えば70mol%以上80mol%以下であることが好ましく、72mol%以上78mol%以下であることがより好ましく、74mol%以上76mol%以下であることがさらに好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料とすることができ、化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいい、正極層2xでは、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当する。LiS−P系の硫化物固体電解質の場合、オルト組成を得るLiS及びPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。
【0034】
本発明において、固体電解質の形態は特に限定されず、結晶質のほか、非晶質やガラスセラミックスであっても良い。また、固体電解質の形状は、例えば粒子状、薄膜状等にすることができる。固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下とすることができ、10nm以上30μm以下であることが好ましい。
【0035】
このほか、正極層2xには、正極活物質や固体電解質を結着させるバインダーや導電性を向上させる導電材が含有されていても良い。正極層2xに含有させることが可能なバインダーとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができ、正極層2xに含有させることが可能な導電材としては、気相法炭素繊維やアセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料のほか、固体電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料を例示することができる。また、液体に上記正極活物質等を分散して調整したスラリー状の組成物を集電箔1や固体電解質層2yに塗布する過程を経て正極層2xを作製する場合、正極活物質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。また、正極層2xの厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、電極体2の性能を高めやすくするために、正極層2xはプレスされることが好ましい。本発明において、正極層をプレスする際の圧力は100MPa程度とすることができる。
【0036】
また、固体電解質層2yに含有させる固体電解質としては、固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができる。そのような固体電解質としては、正極層2xに含有させることが可能な上記固体電解質等を例示することができる。このほか、固体電解質層2yには、可塑性を発現させる等の観点から、固体電解質同士を結着させるバインダーを含有させることができる。そのようなバインダーとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。また、液体に上記固体電解質等を分散して調整したスラリー状の組成物を正極層2xや負極層2z等に塗布する過程を経て固体電解質層2yを作製する場合、固体電解質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。固体電解質層2yにおける固体電解質材料の含有量は、質量%で、例えば60%以上、中でも70%以上、特に80%以上であることが好ましい。固体電解質層2yの厚さは、電池の構成によって大きく異なるが、例えば、0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0037】
また、負極層2zに含有させる負極活物質としては、金属イオンを吸蔵放出可能な公知の負極活物質を適宜用いることができる。そのような負極活物質としては、例えば、カーボン活物質、酸化物活物質、及び、金属活物質等を挙げることができる。カーボン活物質は、炭素を含有していれば特に限定されず、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。酸化物活物質としては、例えばNb、LiTi12、SiO等を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、Si、及び、Sn等を挙げることができる。また、負極活物質として、リチウム含有金属活物質を用いても良い。リチウム含有金属活物質としては、少なくともLiを含有する活物質であれば特に限定されず、Li金属であっても良く、Li合金であっても良い。Li合金としては、例えば、Liと、In、Al、Si、及び、Snの少なくとも一種とを含有する合金を挙げることができる。
【0038】
負極活物質の形状は、例えば粒子状、薄膜状等にすることができる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。また、負極層1dにおける負極活物質の含有量は、特に限定されないが、質量%で、例えば40%以上99%以下とすることが好ましい。
【0039】
さらに、負極層2zには、正極層2xに含有させることが可能な上記固体電解質等を含有させることができる。このほか、負極層2zには、負極活物質や固体電解質を結着させるバインダーや導電性を向上させる導電材が含有されていても良い。負極層2zに含有させることが可能なバインダーや導電材としては、正極層2xに含有させることが可能な上記バインダーや導電材等を例示することができる。また、液体に上記負極活物質等を分散して調整したスラリー状の組成物を集電箔1や固体電解質層2yに塗布する過程を経て負極層2zを作製する場合、負極活物質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。また、負極層2zの厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、電極体2の性能を高めやすくするために、負極層2zはプレスされることが好ましい。本発明において、負極層をプレスする際の圧力は200MPa以上とすることが好ましく、400MPa程度とすることより好ましい。なお、本発明において、正極層2x及び負極層2zの質量比は特に限定されないが、正極層2xと負極層2zとの間を移動するイオンを十分に受け入れられる形態にする観点から、負極層2zの容量は正極層2xの容量も多くすることが好ましい。
【0040】
本発明において、積層体7は、外装体に収容した状態で使用される。そのような外装体としては、樹脂製のラミネートフィルム、樹脂製のラミネートフィルムに金属を蒸着させたフィルムや、金属製のケース等を例示することができる。また、電極体2は、公知の固体電池の製造方法と同様の方法によって作製することができる。
【0041】
本発明において、非電極領域の長さを余剰に長くすることにより、集電箔(導電性部材)の破損や変形を抑制することが可能になる。しかしながら、非電極領域の長さを長くし過ぎると、積層体の外側に張り出す集電箔(導電性部材)が多くなる結果、固体電池の体積エネルギー密度が低減しやすい。そこで、体積エネルギー密度を高めやすい形態にする観点からは、すべての集電箔(導電性部材)の破損を防止できる範囲内で、非電極領域の長さを短くすることが好ましい。
【0042】
本発明に関する上記説明では、間隔d、d1、d2を開けて、集電箔1の1つの面に2つの電極体2、2を形成し、2つの電極体2、2に挟まれた非電極領域を折り曲げる過程を経て作製した積層体7が備えられる形態を例示したが、本発明の固体電池は当該形態に限定されない。導電性部材(集電箔)の1つの面に間隔を開けて形成される電極体の数は3以上であっても良い。本発明の固体電池は、例えば、図5にその概略を示したように、導電性部材(集電箔)1、1、…の1つの面に間隔を開けて4つの電極体を形成し、隣接する2つの電極体に挟まれた非電極領域F、F、…を折り曲げる過程を経て作製した積層体7’と、導電性部材(集電箔)1、1、…に接続された端子8と、上部電極と下部電極とを絶縁する絶縁フィルム9と、端子8及び絶縁フィルム9の端部が外側に導かれるように積層体7’を包む外装体11と、を有する固体電池10であっても良い。
【0043】
図6は、非電極領域が内側に配置されるか外側に配置されるかによって非電極領域の長さを変更せず、すべての非電極領域の長さを、最も内側に配置される非電極領域の長さに合わせた形態を説明する図である。図6において、積層体7と同様の構成には図1乃至図4で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0044】
図6に示したように、すべての非電極領域の長さを、最も内側に配置される非電極領域4fの長さに合わせると、非電極領域を折り曲げた後に、非電極領域4fの外側に配置される集電箔に大きな張力が付与され、集電箔が破断する虞がある。集電箔が破断すると、目的とする電池性能が得られなくなるため、かかる事態は避ける必要がある。上述のように、本発明では、外側に配置される非電極領域の長さを内側に配置される非電極領域の長さよりも長くしているので、外側に配置される集電箔が破断する事態を回避することができる。
【0045】
図7は、非電極領域が内側に配置されるか外側に配置されるかによって非電極領域の長さを変更せず、すべての非電極領域の長さを、最も外側に配置される非電極領域の長さに合わせた形態を説明する図である。図7において、積層体7と同様の構成には図1乃至図4で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0046】
図7に示したように、すべての非電極領域の長さを、最も外側に配置される非電極領域5fの長さに合わせると、非電極領域を折り曲げた後に、非電極領域5fの内側に配置される集電箔が押し潰されるように撓み、集電箔の撓んだ面が電極体2に接触する虞がある。集電箔の撓んだ面が電極体2に接触すると、電極体2の一部が滑落する虞があり、電極体2の一部が滑落すると、目的とする電池性能が得られなくなるため、かかる事態は避ける必要がある。上述のように、本発明では、内側に配置される非電極領域の長さを外側に配置される非電極領域の長さよりも短くしているので、内側に配置された集電箔が過度に撓んで電極体2の一部が滑落する事態を回避することができる。
【0047】
2.固体電池の製造方法
図8は、本発明の固体電池の製造方法(以下において、「本発明の製造方法」ということがある。)を説明するフロー図である。以下、図1乃至図8を適宜参照しつつ、本発明の製造方法について説明する。
図8に示したように、本発明の製造方法は、電極体形成工程(S1)と、積層工程(S2)と、折り曲げ工程(S3)と、を有している。
【0048】
電極体形成工程(以下において、「S1」ということがある。)は、複数の集電箔1、1、…のそれぞれに、間隔を開けて、複数の電極体2、2、…を形成する工程である。S1は、例えば、電極集電体3、4、5を作製する工程、とすることができる。
【0049】
本発明の製造方法において、電極体2の形成方法は特に限定されない。電極体2aは、例えば、少なくとも負極活物質を含有する負極合材を集電箔1の表面に配置する過程を経て負極層2zを形成し、負極層2zの表面に固体電解質を配置する過程を経て固体電解質層2yを形成し、固体電解質層2yの表面に、少なくとも正極活物質及び固体電解質を含有する正極合材を配置する過程を経て正極層2xを形成することにより、作製することができる。電極体2bは、各層を形成する順番を変更する(具体的には、集電箔1の表面に正極層2xを形成し、その表面に固体電解質層2yを形成し、その表面に負極層2zを形成する)ほかは、電極体2aと同様の方法で作製することができる。このほか、電極体2a、2bを作製する際には、スラリー状の正極組成物、スラリー状の固体電解質組成物、及び、スラリー状の負極組成物を用いて、正極層、固体電解質層、及び、負極層をそれぞれ形成することも可能である。
【0050】
積層工程(以下において、「S2」ということがある。)は、S1で作製した電極集電体3、4、5と集電箔6、6、…とを交互に積層する工程である。より具体的には、電極集電体5の電極体2a、2bの上面に集電箔6、6をそれぞれ配置し、この集電箔6、6と電極集電体3の下面側に形成されている電極体2a、2bとがそれぞれ接触するように集電箔6、6の上面に電極集電体3を配置し、電極集電体3の上面側に形成されている電極体2a、2bの上面に集電箔6、6をそれぞれ配置し、さらに、当該集電箔6、6と電極集電体4の電極体2a、2bとがそれぞれ接触するように集電箔6、6の上面に電極集電体4を配置して、電極集電体3、4、5と集電箔6、6、…とを交互に積層する工程である。
【0051】
折り曲げ工程(以下において、「S3」ということがある。)は、上記S2の後に、非電極領域3f、4f、5fで折り曲げる工程である。S1乃至S3を経ることにより、積層体7を作製することができる。こうして積層体7を作製したら、積層体7を外装体に入れて密封する過程を経て、本発明の固体電池を製造することができる。
【0052】
このように、本発明の製造方法によれば、本発明の固体電池を製造することができる。上述のように、本発明の固体電池によれば、集電部の破損を防止することが可能なので、本発明によれば、集電部の破損を防止し得る固体電池を製造することが可能な、固体電池の製造方法を提供することができる。
【0053】
本発明の製造方法において、電極体の滑落を防止して電池性能の低下を抑制する等の観点から、導電性部材(集電箔)は過度に撓まないことが好ましい。かかる観点から、本発明の製造方法では、折り曲げ工程後に外側に位置すべき非電極領域ほど長さが長くなるように、電極体形成工程で間隔を調整しながら複数の電極体が形成されることが好ましい。
【0054】
本発明の製造方法において、電極体形成工程で画定される非電極領域の長さを余剰に長くすることにより、集電箔(導電性部材)の破損や変形を抑制することが可能になる。しかしながら、非電極領域の長さを長くし過ぎると、積層体の外側に張り出す集電箔(導電性部材)が多くなる結果、固体電池の体積エネルギー密度が低減しやすい。そこで、体積エネルギー密度を高めやすい形態にする観点からは、すべての集電箔(導電性部材)の破損を防止できる範囲内で、非電極領域の長さを短くすることが好ましい。
【0055】
本発明に関する上記説明では、本発明の電池がリチウムイオン二次電池である形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池は、正極層と負極層との間を、リチウムイオン以外のイオンが移動する形態とすることも可能である。そのようなイオンとしては、ナトリウムイオンやカリウムイオン等を例示することができる。リチウムイオン以外のイオンが移動する形態とする場合、正極活物質、固体電解質、及び、負極活物質は、移動するイオンに応じて適宜選択すれば良い。
【符号の説明】
【0056】
1…1、6…集電箔(導電性部材)
2、2a、2b…電極体
2x…正極層
2y…固体電解質層
2z…負極層
3、4、5…電極集電体
3f、4f、5f…非電極領域
7…積層体
8…端子
9…絶縁フィルム
10…固体電池
11…外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電極体を有する積層体を具備し、
前記複数の電極体は、対称軸を挟んで対応する電極体同士が導電性部材を介して接続され、
相対的に前記対称軸から遠い前記電極体同士を接続する前記導電性部材は、相対的に前記対称軸に近い前記電極体同士を接続する前記導電性部材よりも長いことを特徴とする、固体電池。
【請求項2】
積層された複数の電極体を有する積層体を具備し、
前記複数の電極体は、集電箔を介して接続され、
前記集電箔は、前記電極体の電極層に接触している複数の電極領域、及び、前記電極層に接触していない非電極領域を有し、折り曲げられた複数の前記非電極領域が側面視で重なるように配置され、
折り曲げられた複数の前記非電極領域は、外側に配置された前記非電極領域の長さが内側に配置された前記非電極領域の長さよりも長いことを特徴とする、固体電池。
【請求項3】
折り曲げられた複数の前記非電極領域は、外側ほど前記非電極領域の長さが長いことを特徴とする、請求項2に記載の固体電池。
【請求項4】
複数の導電性部材に、間隔を開けてそれぞれ複数の電極体を形成する、電極体形成工程と、
前記電極体形成工程で前記複数の電極体が形成された前記複数の導電性部材を積層する、積層工程と、を有し、
積層された前記複数の導電性部材の外側に位置すべき前記間隔が、内側に位置すべき前記間隔よりも広くなるように、前記電極体形成工程で前記間隔を調整しながら前記複数の電極体が形成されることを特徴とする、固体電池の製造方法。
【請求項5】
複数の集電箔に、間隔を開けてそれぞれ複数の電極体を形成する、電極体形成工程と、
前記電極体形成工程で前記複数の電極体が形成された前記複数の集電箔を積層する、積層工程と、
前記積層工程後に、前記複数の電極体に挟まれた非電極領域を折り曲げる、折り曲げ工程と、を有し、
前記折り曲げ工程後に外側に位置すべき前記非電極領域の長さが、前記折り曲げ工程後に内側に位置すべき前記非電極領域の長さよりも長くなるように、前記電極体形成工程で前記間隔を調整しながら前記複数の電極体が形成されることを特徴とする、固体電池の製造方法。
【請求項6】
前記折り曲げ工程後に外側に位置すべき前記非電極領域ほど長さが長くなるように、前記電極体形成工程で前記間隔を調整しながら前記複数の電極体が形成されることを特徴とする、請求項5に記載の固体電池の製造方法。

【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97907(P2013−97907A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237363(P2011−237363)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】