説明

固体電解質材料およびリチウム電池

【課題】本発明は、良好な緻密性を有するLi−La−Zr−O系固体電解質材料を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、Li、La、Zr、Al、SiおよびOを有し、ガーネット型構造を有し、焼結体であることを特徴とする固体電解質材料を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な緻密性を有するLi−La−Zr−O系固体電解質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
【0003】
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に代えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
【0004】
全固体型リチウム電池に用いられる固体電解質材料として、Li−La−Zr−O系固体電解質材料が知られている。例えば、特許文献1においては、Li、La、Zr、OおよびAlを含有するセラミックス材料が開示されている。特許文献2においては、固体電解質の微粒子として、Li、La、Zr、Oからなるガーネット型またはガーネット類似の結晶構造を有し、Alを含有するセラミックス材料を用いた固体電解質構造体の製造方法が開示されている。特許文献3においては、Li、La、Zr、Oからなるガーネット型またはガーネット類似の結晶構造を有するセラミックスを含有する固体電解質を備えた全固体リチウム電池が開示されている。また、特許文献4、5においては、正極層と硫化物固体電解質層との間に、LiLaZr12を含む緩衝層を備えたリチウム電池が開示されている。特許文献6においては、LiLaZr12の基本組成を有するリチウム含有ガーネット型酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公報第2010/0047696号明細書
【特許文献2】特開2009−238739号公報
【特許文献3】特開2010−045019号公報
【特許文献4】特開2009−245913号公報
【特許文献5】特開2010−040439号公報
【特許文献6】特開2010−102929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Li−La−Zr−O系固体電解質材料がAlを含有すると、固体電解質材料の緻密性が低下するという問題がある。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な緻密性を有するLi−La−Zr−O系固体電解質材料を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、Li、La、Zr、Al、SiおよびOを有し、ガーネット型構造を有し、焼結体であることを特徴とする固体電解質材料を提供する。
【0008】
本発明によれば、Siを含有することにより、Alを含有する場合であっても、良好な緻密性を有する固体電解質材料とすることができる。
【0009】
上記発明においては、上記Li、上記Laおよび上記Zrの割合が、モル基準で、Li:La:Zr=7:3:2であることが好ましい。
【0010】
上記発明においては、Liイオン伝導度が2.0×10−4S/cm以上であることが好ましい。LiLaZr12よりもLiイオン伝導度の高い固体電解質材料とすることができるからである。
【0011】
上記発明においては、上記Siの含有量(重量%)に対する、上記Alの含有量(重量%)の割合(Al/Si)が、4.6〜11.9の範囲内であることが好ましい。よりLiイオン伝導度の高い固体電解質材料とすることができるからである。
【0012】
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム電池であって、上記固体電解質層が、上述した固体電解質材料を含有することを特徴とするリチウム電池を提供する。
【0013】
本発明によれば、上述した固体電解質材料を用いることで、緻密な固体電解質層を有するリチウム電池とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、良好な緻密性を有するLi−La−Zr−O系固体電解質材料を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のリチウム電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】実施例1〜5および比較例1で得られた固体電解質材料の緻密性評価の結果である。
【図3】実施例1〜5および比較例1で得られた固体電解質材料のXRD測定の結果である。
【図4】実施例1〜5および比較例1で得られた固体電解質材料のLiイオン伝導度測定の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の固体電解質材料およびリチウム電池について、詳細に説明する。
【0017】
A.固体電解質材料
まず、本発明の固体電解質材料について説明する。本発明の固体電解質材料は、Li、La、Zr、Al、SiおよびOを有し、ガーネット型構造を有し、焼結体であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、Siを含有することにより、Alを含有する場合であっても、良好な緻密性を有する固体電解質材料とすることができる。固体電解質材料が良好な緻密性を有していれば、Liイオン伝導性の向上に寄与できるという利点、機械的強度の向上に寄与できるという利点等がある。例えば、Liイオン伝導性が高ければ、電池の高出力化に適した固体電解質材料とすることができる。また、例えば、機械的強度が高ければ、電池の高耐久化に適した固体電解質材料とすることができる。
【0019】
また、固体電解質材料に含まれるAlは、後述する実施例に記載するように、結晶性を向上させる機能を有すると考えられるが、逆に、緻密性の低下を招くという問題がある。これに対して、本発明においては、固体電解質材料に、Alに加えてSiを加えることにより、良好な緻密性を有する固体電解質材料とすることができる。
【0020】
本発明の固体電解質材料は、Li、La、Zr、Al、SiおよびOを有することを一つの特徴とする。また、本発明の固体電解質材料は、通常、酸化物固体電解質材料である。本発明の固体電解質材料の組成比は、以下のように決定することができる。まず、固体電解質材料を、炭酸ナトリウムおよびホウ酸の混合融剤で融解させ、次に、この融解物を希硝酸に溶解させることにより、評価用溶液を得る。この評価用溶液を用いて、Liの組成については、原子吸光分析法により決定することができ、Si、Alおよびその他の元素の組成については、ICP発光分光分析法により決定することができる。
【0021】
また、固体電解質材料におけるLi、LaおよびZrの割合は、ガーネット型構造を有する固体電解質材料を得ることができる割合であれば特に限定されるものではないが、通常は、モル基準で、Li:La:Zr=7:3:2である。しかしながら、この割合は、多少変動し得るものであるので、「Li:La:Zr=7:3:2」は、Li:La:Zr=7:2.8〜3.2:1.8〜2.2を意味する。ただし、Liの挿入脱離については考慮しないものとする。
【0022】
また、固体電解質材料におけるAlの割合は、特に限定されるものではないが、例えば0.1重量%〜2.2重量%の範囲内であることが好ましい。Alの割合が少なすぎると、結晶性が高い固体電解質材料を得ることができない可能性があり、Alの割合が多すぎると、固体電解質材料の緻密性が大幅に低下する可能性があるからである。一方、固体電解質材料におけるSiの割合は、特に限定されるものではないが、例えば0.005重量%〜1.00重量%の範囲内であることが好ましい。
【0023】
また、本発明において、Siの含有量(重量%)に対する、Alの含有量(重量%)の割合(Al/Si)は、特に限定されるものではない。中でも、本発明においては、Al/Siの値が、LiLaZr12のLiイオン伝導度(2.0×10−4S/cm)以上のLiイオン伝導度を有する固体電解質材料を得られる値であることが好ましい。電池の高出力化に適した固体電解質材料とすることができるからである。Al/Siの値は、例えば、0.6〜170の範囲内であることが好ましく、2〜150の範囲内であることがより好ましい。また、本発明の固体電解質材料のLiイオン伝導度(室温)は、より高いことが好ましく、例えば8.0×10−5S/cm以上であることが好ましく、2.0×10−4S/cm以上であることがより好ましい。
【0024】
なお、固体電解質材料における酸素(O)の割合は、基本的には、各金属イオンとの関係で、電気的中性の原理を満たすように決定されるが、合成方法によっては、酸素欠損や酸素過剰が生じる場合がある。
【0025】
また、本発明の固体電解質材料は、ガーネット型構造を有することを一つの特徴とする。本発明におけるガーネット型構造には、厳密なガーネット型構造のみならず、ガーネット型類似構造をも含むものである。固体電解質材料が、ガーネット型構造を有することは、X線回折(XRD)のピーク位置を確認することにより特定することができる。例えば、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=17°、26°、28°、31°、34°、38°、43°、51°、52°、53°の位置にピークを有していれば、ガーネット型構造であることを特定できる。
【0026】
また、本発明の固体電解質材料は、焼結体であることを一つの特徴とする。本発明においては、Alに加えてSiを含有させることにより、緻密な焼結体とすることができる。本発明の固体電解質材料の形状は、焼結体として存在できる形状であれば特に限定されるものではないが、例えばペレット状、薄膜状等を挙げることができる。また、本発明の固体電解質材料の厚さは、固体電解質材料の用途によって異なるものであるが、リチウム電池の固体電解質層として用いる場合、その厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の固体電解質材料の用途は特に限定されるものではないが、例えば、リチウム電池用途、金属−空気電池用途を挙げることができる。また、本発明の固体電解質材料を、金属−空気電池用途に用いる場合には、正極活物質層および負極活物質層の間にセパレータとして配置しても良い。この場合、ガス(例えばOガス等)の透過を防止するセパレータとして用いることができる。
【0028】
次に、本発明の固体電解質材料の製造方法について説明する。本発明の固体電解質材料の製造方法は、上述した固体電解質材料を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。固体電解質材料の製造方法の一例としては、Li、La、Zr、AlおよびSiを有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を焼成し、ガーネット型構造を有し、焼結体である固体電解質材料を合成する合成工程とを有する製造方法を挙げることができる。
【0029】
上記調製工程において、原料組成物は、Li、La、Zr、AlおよびSiを有するものである。Li源としては、例えばLiOH・HO、LiCO、CHCOOLi、LiNO等を挙げることができる。La源としては、例えばLa(OH)、La等を挙げることができる。Zr源としては、例えばZrO等を挙げることができる。Al源としては、例えばAl等を挙げることができる。Si源としては、例えばSiO等を挙げることができる。なお、本発明の固体電解質材料の組成は、上記金属源の割合を調整することによりコントロールすることができる。また、原料組成物における各金属源の割合は、揮発等の影響を考慮した上で、適宜調整することが好ましい。
【0030】
上記合成工程においては、原料組成物を焼成することにより、固体電解質材料を合成する。焼成雰囲気は、特に限定されるものではないが、酸素含有雰囲気であることが好ましい。固体電解質材料の酸素源にすることができるからである。酸素含有雰囲気としては、例えば大気雰囲気を挙げることができる。また、焼成時の圧力は、大気圧下であっても良く、減圧下であっても良い。さらに、焼成時の加熱温度は、目的とする固体電解質材料の結晶化温度以上の温度であれば良いが、例えば1200℃〜1250℃の範囲内であることが好ましい。また、焼成時間は、例えば24時間〜48時間の範囲内である。焼成方法としては、例えば焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。
【0031】
B.リチウム電池
次に、本発明のリチウム電池について説明する。本発明のリチウム電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム電池であって、上記固体電解質層が、上述した固体電解質材料を含有することを特徴とするものである。
【0032】
本発明によれば、上述した固体電解質材料を用いることで、緻密な固体電解質層を有するリチウム電池とすることができる。
【0033】
図1は、本発明のリチウム電池の一例を示す概略断面図である。図1におけるリチウム電池10は、正極活物質を含有する正極活物質層1と、負極活物質を含有する負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された固体電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有するものである。本発明においては、固体電解質層3が、上記「A.固体電解質材料」に記載した固体電解質材料を含有することを大きな特徴とする。
以下、本発明のリチウム電池について、構成ごとに説明する。
【0034】
1.固体電解質層
まず、本発明における固体電解質層について説明する。本発明における固体電解質層は、上述した固体電解質材料を含有するものである。固体電解質層の厚さの範囲は、上述した固体電解質材料の厚さの範囲と同様であることが好ましい。また、本発明における固体電解質層は、上述した固体電解質材料のみからなるものであっても良く、他の固体電解質材料をさらに含有するものであっても良い。
【0035】
2.正極活物質層
次に、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、導電化材、固体電解質材料および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。正極活物質としては、例えばLiCoO、LiMnO、LiNiMn、LiVO、LiCrO、LiFePO、LiCoPO、LiNiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等を挙げることができる。
【0036】
本発明における正極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、正極活物質層は、さらに固体電解質材料を含有していても良い。固体電解質材料の添加により、正極活物質層のLiイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質材料としては、例えば酸化物固体電解質材料および硫化物固体電解質材料等を挙げることができる。また、正極活物質層は、さらに結着材を含有していても良い。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有結着材等を挙げることができる。正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
3.負極活物質層
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、導電化材、固体電解質材料および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
【0038】
なお、負極活物質層に用いられる、導電化材、固体電解質材料および結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
4.その他の構成
本発明のリチウム電池は、上述した固体電解質層、正極活物質層および負極活物質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
【0040】
5.リチウム電池
本発明のリチウム電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明のリチウム電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、本発明のリチウム電池の製造方法は、上述したリチウム電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、正極活物質層を構成する材料、固体電解質層を構成する材料、および負極活物質層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0043】
[実施例1]
出発原料として、Li源(LiOH・HO)、La源(La)、Zr源(ZrO)、Al源(Al)、Si源(SiO)を用意した。次に、Li源、La源、Zr源、Al源、Si源を所定の量添加し混合した。これにより原料組成物を得た。
【0044】
その後、原料組成物をペレット成型し、大気圧下、大気雰囲気下で熱処理(焼結)を行った。具体的には、まず、ペレット成型した原料組成物を、15時間で900℃まで昇温し、900℃で12時間保持し、その後、6時間で室温まで降温した(仮焼成)。次に、得られた試料をボールミルで粉砕し、再びペレット成型し、15時間で1125℃まで昇温し、1125℃で15時間保持し、その後、8時間で室温まで降温した(前駆体形成)。次に、得られた試料をボールミルで粉砕し、再びペレット成型し、20時間で1235℃まで昇温し、1235℃で36時間保持し、その後、12時間で室温まで降温した(焼成)。これにより、ペレット状の焼結体である固体電解質材料を得た。得られた固体電解質材料において、Li、LaおよびZrのモル比はLi:La:Zr=7:3:2であった。また、得られた固体電解質材料において、Al含有量は0.19重量%であり、Si含有量は0.31重量%であった。なお、Liの組成については、原子吸光分析法を用いて決定し、その他の元素の組成については、ICP発光分光分析法により決定した。
【0045】
[実施例2〜5]
Al源およびSi源の量を下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質材料を得た。
【0046】
[比較例1]
Al源およびSi源を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質材料を得た。
【0047】
[評価]
(緻密性評価)
実施例1〜5および比較例1で得られた固体電解質材料の緻密性を評価した。まず、固体電解質材料の乾燥重量を測定し、次に、固体電解質材料の実寸法から体積を算出し、乾燥重量を体積で除することにより、焼結密度(g/cm)を算出した。また、その焼結密度と、理論密度とから相対密度である焼結密度(%)を算出した。なお、上記理論密度には、AlおよびSiを有しないLiLaZr12の理論密度(5.115g/cm)を用いた。得られた結果を表1および図2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1および図2に示されるように、実施例1〜4では、焼結密度が高く、緻密性が良好な固体電解質材料が得られた。一方、実施例5では、焼結密度が87.2%と低くなり、比較例1よりも焼結密度が低くなった。しかしながら、この結果は比較対象を考慮することで、妥当性を容易に理解することができる。すなわち、実施例5におけるSi含有量が極微量であることを考慮すると、これはAlの添加による緻密性の低下を示す結果であるといえる。言い換えると、Alの添加による緻密性低下の影響が、Siの添加による緻密性向上の影響よりも大きかったことを示す結果であるといえる。
【0050】
実施例5(AlおよびSiを添加した系)と、比較例1(AlおよびSiを添加しない系)とを比較すると、一見すると妥当ではないように見えるが、Alのみを添加した固体電解質材料を想定し、その固体電解質材料を比較対象とした場合、実施例5は、Siを添加することにより、緻密性が向上した結果を示すものになると考えられる。同様に、Alのみを添加した固体電解質材料を比較対象とした場合、実施例1〜4は、大幅に緻密性が向上していることを示すものになると考えられる。
【0051】
(X線回折測定)
実施例1〜5および比較例1で得られた固体電解質材料に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。その結果を図3に示す。図3に示されるように、実施例1〜5および比較例1では、ほぼ同じピークが確認されたことから、固体電解質材料に含まれるSiは、バルクの結晶構造には影響を与えず、粒界の界面に作用していることが示唆された。
【0052】
(Liイオン伝導度測定)
実施例1〜5および比較例1で得られた固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるLiイオン伝導度(室温)の測定を行った。測定には、ソーラトロン社製インピーダンス/ゲインフェーズアナライザー1260を用い、測定条件は、印加電圧10mV、測定周波数域3.2MHz〜10Hzまたは32MHz〜10Hzとした。その結果を表2および図4に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2および図4に示されるように、実施例3、4では、比較例1よりもLiイオン伝導度が高くなった。このことから、Al/Siの値を適宜調整することにより、従来の固体電解質材料である比較例1のLiイオン伝導度(2.0×10−4S/cm)よりも高いLiイオン伝導度を有する固体電解質材料が得られることが確認された。
【0055】
実施例1、2において、比較例1よりもLiイオン伝導度が低くなった理由は定かではないが、上記図3のXRDの結果において、実施例1、2は、比較例1よりも若干ブロードになっており、結晶性が低い。さらに、実施例1、2は、Alに対するSiの含有量が多い(Al/Siが小さい)。以上のことから、Siが多すぎると、緻密性の向上には有利に働くものの、結晶性の低下を招き、その結晶性の低下が、Liイオン伝導度の低下を引き起こしていると推察できる。
【0056】
一方、実施例5において、比較例1よりもLiイオン伝導度が低くなった理由も定かではないが、上記図3のXRDの結果において、実施例5は、比較例1と同様に結晶性が高い。さらに、実施例5では、Alに対するSiの含有量が少ない(Al/Siが大きい)。以上のことから、Alが多すぎると、結晶性の向上には有利に働くものの、緻密性の低下を招き、その緻密性の低下が、Liイオン伝導度の低下を引き起こしていると推察できる。
【0057】
また、実施例3、4では、結晶性を向上させるAlと、緻密性を向上させるSiとを、バランス良く含有していることにより、Liイオン伝導度が向上したと推察できる。なお、図示しないが、実施例3、4では、インピーダンス測定において粒界抵抗が減少していることが確認された。また、上記図3のXRDの結果から、固体電解質材料に含まれるSiは、バルクの結晶構造には影響を与えず、粒界の界面に作用していることが示唆された。以上のことから、Li−Al−Si−OのLiイオン伝導パスが形成された可能性も考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 … 正極活物質層
2 … 負極活物質層
3 … 固体電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
10 … リチウム電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li、La、Zr、Al、SiおよびOを有し、ガーネット型構造を有し、焼結体であることを特徴とする固体電解質材料。
【請求項2】
前記Li、前記Laおよび前記Zrの割合が、モル基準で、Li:La:Zr=7:3:2であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項3】
Liイオン伝導度が2.0×10−4S/cm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体電解質材料。
【請求項4】
前記Siの含有量(重量%)に対する、前記Alの含有量(重量%)の割合(Al/Si)が、4.6〜11.9の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の固体電解質材料。
【請求項5】
正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム電池であって、
前記固体電解質層が、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の固体電解質材料を含有することを特徴とするリチウム電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−18792(P2012−18792A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154639(P2010−154639)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】