説明

固体/液体分離とパルス型電界とを組み合わせた廃水処理

【課題】固体/液体分離操作とパルス型電界印加操作とを組み合わせたような廃水処理のための、新規な方法および新規な装置を提供すること。
【解決手段】廃水を処理するための方法であって、廃水の流れに対して、物理化学的性質と生物学的性質とを変更するという効果を有したパルス型電界を印加し、このような性質変更を、固体/液体分離操作時に行い、固体/液体分離操作(13)とパルス型電界印加操作(12)とを、廃水流れの互いに異なる場所において行い、パルス型電界を、放電モードにおいて使用し、すなわち、単一動作モードにおいて使用し、放電モードを、直流電源によって電力供給されているキャパシタのパルス状放電によって実施し、パルス型電界の電圧値と電流値とパルス繰返し周波数と電圧立上り特性とを、調節可能なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス型電界を使用した廃水処理のための方法および装置に関するものである。パルス型電界の効果は、メンブラン濾過において使用される水性媒体の物理化学的改質および生物学的改質である。
【0002】
仏国内において必要とされている水(人による消費のための水、工業用水、農業用水)は、1人あたり700m/年 である。人による消費は、1人あたり300l/日の程度である。町中で必要とされる水は、上流側および下流側での処理を必要とする。
【0003】
従来より、水の管理は、3つの場所において、非常に重要である。
−上流の取水源。
−使用直前の水処理。この水の大部分は、人による消費に関連したものである(簡単化のために、『飲料用水処理』と称することができる)。
−周囲環境に対する排出時の処理。従来より、工場廃水は、残留スラッジを処理して排出されている。より一般的には、この処理においては、多くの場合、工業用水や農業用水として再使用前に水を処理する(三次処理)。
【0004】
水が、生活の溶媒であることにより、天然の有機体が水内で増殖する。天然の有機体には、病原菌(バクテリア、イースト菌、寄生虫)があり、また、病原性有機体(アメーバ)を含有しており、また、ホストセル内においてウィルスが増殖する可能性がある。
【0005】
場合によっては、微生物の代謝物質が病原性となり得る(シアノバクテリアの毒素)。
【0006】
他の場合には、天然の化学物質(窒素化合物)や、人類による化合物(ヒ素、水銀、殺虫剤残留物、抗生物質残留物)が、健康問題の原因となり得る。
【0007】
これら化合物は、様々なサイズを有しており、様々な組成を有している。サイズは、いくつかの寄生虫(ミミズ状回虫、ヘビ状回虫)における数mmや、それらの卵やアメーバにおける数十μm(例えば、50μm)や、バクテリアや菌類における数μm(シュードモナディミヌータの最小寸法は、0.3μm)や、ウィルスにおける数nm(ポリオウィルスの場合には25nm)や、最小の溶解性化合物における1nm、といったように、幅広いものである。微生物は、胞子の形態をとっており、外部からの攻撃に対して強力な抵抗性を有している。(化学的化合物とは違って)生物学的有機体による病原性は、特に大部分のバクテリアがその後に成長することのために、重要な位置を占める。この観点は、クリプトスポリジウム属のような原生動物嚢胞といったような種を有した免疫不全の患者の場合には、特に重要である。
【0008】
本明細書の理解を容易なものとするため、微生物のための生体膜と、濾過手法における分離膜と、を混同しないで頂きたい。生体膜という用語は、脂質二重層からなる原形質膜を、明らかに意味している。分離膜という用語は、『プロセス』メンブランとして分類され、また、濾過メンブランまたはフィルタメンブランとして分類され、また、さらに分類されることなく単に『メンブラン/REP結合』として分類される。
【背景技術】
【0009】
従来の水処理は、飲料用水と廃水と従来処理に起因するスラッジとのすべての流れを管理しており、これにより、普及した規格を満たしている。
【0010】
時間順に説明すれば、目的は、粒状成分(1μmよりも大きな化合物)を除去することであり、コロイド成分(数十nm)を除去することであり、その後、可溶性成分を除去することである。これらステップにおいては、以下のことを順に行う。
−予備的処理(スクリーニング、砂状物の除去、油分の除去、ふるい分け)。
−分類処理(凝固、凝集、浮遊選別)。
−仕上げ処理(酸化や活性炭素上への吸収やナノ濾過等による微小汚染物質の除去)。
【0011】
通常の飲料用水処理においては、物理的処理(スクリーニング、砂状物の濾過、等)と、物理化学的処理(凝固、凝集、等)と、仕上げ処理と、を行う。仕上げ処理の目的は、マクロ有機体のその後の成長を防止することであり、また、可溶性有機分子を除去することである。仕上げ処理においては、塩素消毒や、オゾン消毒や、過酸化水素による酸化や、紫外線照射や、ナノ濾過や、活性炭素上での吸着、を行う。
【0012】
新たに発生した傾向においては、(逆浸透によって)分離処理全体を容易なものとする。これにより、完璧に純粋化された水が得られるとともに、最終的には、塩類およびトレース化合物の添加によって、食料品品質の水が再構成される。これは、『瓶詰め水』技術の場合である。この需要は、先進国(『快適な』飲み心地のため)と開発途上国(微小生物学的な安全性のため)との双方において、かなり大きくなってきている。
【0013】
廃水に関しては、使用される技術の本質的な目的は、受領媒体に適合したようにして病原性化合物や懸濁固体や可溶性化合物を濃縮することである。実際には、使用される技術は、化学的酸素要求量(COD)の低減化を可能とする。これにより、残留CODは、80〜100mg/L以下とされる。使用される技術は、生物学的酸素要求量(BOD)の低減化を可能とする。これにより、BODは、20mg/L以下とされる。
【0014】
最も従来的な技術は、好気的な生物学的処理(COやHOという形態で、例えば糖質タイプのものといったような溶解化合物の最終的な酸化)と、嫌気的な生物学的処理(酸素が無い状態での発酵。最終段階ではメタンが放出される)と、である。いずれの場合においても、技術は、特定の酵素を触媒とした酸化還元反応を含むバクテリアバイオマスによって、有機材料を分解するという手法である。
【0015】
三次処理を受ける残留水のバクテリア品質は、通常、飲料用水の場合ほどは、詳細には制御されない。それは、この水が、直接的に摂取されるものではないからである。それでもなお、この水が再使用されることを考慮すれば、カリフォルニア州において『タイトル22』とされているように(1リットルあたりにつき22個の大腸菌までが、農業用の再使用水として許容される)、規則は、詳細なものとなってきている。使用される方法は、飲料用水の処理に関して使用される方法と、次第に似通ってきている。
【0016】
スラッジに関しては、乾燥状態で22kgという物質が、残留都市廃水または残留工業用水の処理から、同様の居住人数あたりにつき年間あたりに、製造される。本来、スラッジは、極度に液体的な懸濁液であり、乾燥物質の量は、0.5〜5%である。このスラッジは、使用されている処理に応じて、物理的起源または生物学的起源から、親水性(通常の場合)とも、疎水性とも、することができる。
【0017】
全体的には、スラッジは、無機材料と、細胞の異化作用に基づく有機材料と、寄生的病原性有機体(バクテリア、寄生虫卵)と、を含有している。難点は、安定化したスラッジを形成することであり(15〜30%という乾燥度、非発酵性)、衛生的なスラッジを形成することである(病原性有機体の濃度は、特にサルモネラ菌や寄生虫卵やエンテロウィルスに関し、厚生省により発行された規格に鑑みて、非常に低いレベルにまで低減されていること)。
【0018】
初期廃水が、多量のコロイドや懸濁固体を含有している場合には、物理的な凝集処理が使用される。場合によっては、スラッジ含有量が、増大する(投入材料と比較して)。それは、凝集添加剤の添加によるものである。つまり、特定のポリマーや、水酸化物や塩化物の形態としての3価金属(Al,Fe)、の添加によるものである。
【0019】
大部分の材料を溶解させた時点で、生物学的処理を行うことが好ましい。その場合、処理されるスラッジは、生物学的残留物を含有している。しかしながら、投入材料の大部分は、水およびガスの形態で酸化される。スラッジの量は、通常、投入材料の量よりも少ない。平均で(25〜40mg/Lという残留BODに関し、平均的なまたは多めの投入材料)、スラッジ製造量は、kg BOD/mdという単位で表したときの投入BOD質量の1/2または1/3である。しかしながら、スラッジ製造量は、処理の全体的能力に強く依存する。特に、酵素細胞内反応によって溶解した化合物を最大に同化させ得るような酵素細胞外加水分解に進展度合いに、強く依存する。
【0020】
エネルギー消費パラメータおよび添加剤消費(物理化学的処理)パラメータは、重要であり、これらによって、様々な技術の利点および欠点を評価することができる。さらに、様々な技術の効率(例えば、微生物の減少)を、比較する必要がある。この際、特定の技術の使用に関連した付随的なリスク(例えば、塩素定量の失敗や、濾過メンブランの破損)も、考慮される。また、望ましくない副成物(塩素を使用する場合には、塩素派生物、臭素の存在下でオゾン処理を行う場合には、オゾン派生物。これら副成物は、通常、『消毒副成物』(DBP)という用語でグループ分けされる)も、考慮される。
【0021】
最終的な塩素化は、最も安価な技術である。しかしながら、例えばクリプトスポリジウム属といったような微生物は、この処理に対して耐性を有している。さらに、この処理は、DBPを形成することを回避するに際して、処理の最後に行うことしか、推奨されない。
【0022】
オゾン処理は、この酸化剤の残留物を除去しなければならないという問題点を引き起こす。クリプトスポリジウム属シストに対するオゾンの作用は、限定的である。いくらかのDBPが生成され得る。
【0023】
UV技術は、微生物のDNAに対する放射効率のために、また、ウィルスのRNAに対する放射効率のために、有効である。効率は、液体流の全体が、実際に最小の放射線量を受領し得るものでなければならない。この問題点は、UVリアクター内に短絡が起こらない場合には、解決される。照射量は、リアクターの形状やランプのタイプやランプの経時劣化や処理対象をなす液体流体や処理対象をなす液体の特性や特に放射に対する透過性などを考慮した複雑なモデルを使用することにより、計算される。このような処理は、多くの場合、懸濁固体(MES)および濁りの除去後における最終ステップである。
【0024】
濾過メンブランの利点は、使用されるブレークダウンしきい値に依存した複数の官能基を収集することである。すなわち、懸濁固体や、微生物や、濁りや、溶解化合物を、除去することである。病原性有機体の低減化という観点からは、メンブランは、ブレークダウンしきい値がマイクロ濾過よりも小さい場合には、最良の性能を有している。それでもなお、微生物の新たな放出というリスクは、厳密には制御されない。この理由のために、この手法は、厚生省によって承認されていない。濾過メンブランの強度試験は、この種の問題点に関する保護のためには、必須である。
【0025】
うまくないことに、濾過メンブランの本質的欠点は、閉塞に対する感度である。閉塞には、通常、初期的事前処理が関与し、さらには、次第にポアサイズが小さなものとされる一連をなす複数の濾過ステップさえもが関与する。
【0026】
パルス型電界(PEF)を使用したシステムが、大規模に開発されており、非常に瞬時的にパワーをスイッチングするような電子システムが開発され、信頼性も高い。仏国において Commissariat a l'Energie Atomique 社によって開発された新規な電子システムは、レーザー制御されたウラン濃縮プログラム(MOS cards) を使用するものであって、特に周波数制限を設けることなく、1μs未満のパルス放出を可能とする。
【0027】
最初の使用分野は、食料品の低温殺菌である。この技術は、食料品の熱的劣化を避けることができる。果汁濃縮物や卵白や様々な液体等といったようなポンピング可能な製品にしか適用することができない。
【0028】
工業用水の『大量』処理という観点からは、この技術の使用は、原子力発電所の熱交換器内における生物学的閉塞(パイプ内における軟体生物の付着)を防止するための手段として言及されている。原子力発電所は、仏国の Nogentsur-Seine発電所内においてアメーバ(Naegleria fowleri, Nf)が発見されて以降、冷却材流通の処理において興味深いところである。
【0029】
このような工業システムは、ここ数十年間にわたって研究されてきた遺伝子操作に特化した実験室的微小システムとはスケールが相違するものであり、数mmを取り扱い得るに過ぎない。
【0030】
従来より言及されている効果は、原形質膜のところにおける脂質二重絶縁層の存在による『キャパシタ』効果による穴効果および細胞死亡効果である。分子共振という可能な効果にも、言及され、この場合には、原子核のDNAに直接的な効果を有している。いくつかの生物学的機能(アデノシン3リン酸,ATP,ナトリウムポンプ)を、妨害することもできる。
【0031】
長年にわたって、機械的エネルギーに由来しない駆動力を導入して、濾過メンブランの閉塞という欠点を補償することが、効果的であろうと考えられてきた。これは、電気エネルギーの場合である。濾過に関連させた電気的効果に関しては、多くの例がある。一般に、この手法が電気分解すなわちメンブランの電気分解に由来していることにより、小さな直流電圧(100V以下)が使用される。電気凝集を使用することもできる。すなわち、電極金属(アルミニウム、鉄)を溶解させて、イオン的にコロイドと関連させ、これにより、濾過前の凝集を改良させる。
【0032】
界面活性剤の存在下における電気濾過は、メンブランを介しての圧力差に電界を重畳させる。濃度分極が低減し、流通という観点での性能が、10倍向上する。
【0033】
溶解した雰囲気酸素を原料とした過酸化水素の製造をベースとした化学的効果が、RuO によって被覆したチタンアノードにおいて、観測されている。電気的過酸化と称されるこのシステムは、化学化合物やコロイド粒子や微生物さえをも酸化するための手段をもたらす。この効果は、濾過メンブランと溶液との界面における物質移動に関する抵抗性を低減させることができる。
【0034】
技術文献は、2段階的方法において接続されたパルス型電界/回転発酵槽(MBR)の場合について、言及している。第1段階(パルス型電界)における目的は、エアロゾル流内に含有された塩素化化合物(塩素の無機物化)やフェノール化合物を破壊することである。言い換えれば、液体ではなく大部分のガスを破壊することである。
【0035】
フェノール化合物は、フェノール核の重合によって、中間体凝集ステップを通過する。この予備的処理は、生物学的破壊速度を加速させ、したがって、MBRの最終効率を加速する。この主題に関するさらなる情報は、“Pulsed power for advanced wastewater
remediation”by V.M. Bystritskii et al., 11th International Pulsed Power
conference, 1997, pages 79 to 84 という文献に与えられている。
【0036】
パルス型電界と濾過との組合せは、工場スラッジの処理に関して記載されている。米国特許第6,030,538号明細書は、50%という初期的含有量から、10〜15%という最終的な値にまで、水分含有量を低減し得る可能性について言及している。このシステムは、誘導加熱と、オンライン式濾過(70〜105barsという程度の圧力)と、校正済みオリフィスを通しての乾燥スラッジの抽出と、を組み合わせる。記載された現象は、細胞内液体の塩析であり、このことは、水分含有量の低減化に寄与する。キーパラメータには、凝集物の濃度や、パルス型電界のエネルギーや、スラッジの水和、がある。実際に、この方法を使用することにより、乾燥した生物学的に不活性なスラッジを得ることができる。
【0037】
パルス型電界とメンブラン濾過とを組み合わせた手法は、以下の理由のために特に魅力的である。
【0038】
廃水に関してのパルス型電界の効果の性質は、生物学的なもの(細胞の破壊)や、物理的なもの(溶液内における化合物のサイズの増加)や、化学的なもの(塩素の無機物化)、とすることができる。
【0039】
パルス型電界は、場合によっては、以下の理由のために、その後の濾過に対して有益なものとなる。
−急激な反応を引き起こすことによって、小さな分子に対して影響力を及ぼすこと。これにより、微小汚染物質の劣化や、可溶性CODの低減化、が期待される。
−表面変化によって特徴づけられかつ分子の凝集物や巨大分子や細胞状かけらによって形成されたような、溶液のコロイド状断片に対して影響力を及ぼすこと。
−巨大分子の分離や、酵素外加水分解反応の促進、に対して影響力を及ぼすこと。これにより、生物学的物質起源のスラッジを低減することができる。
−凝集効果を伴いつつ、小胞体の解放に対して影響力を及ぼすこと(多糖類)。
−細胞質の分離によるあるいは細胞核に対する直接的作用による微生物の破壊または不活性化に対して影響力を及ぼすこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】米国特許第6,030,538号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、固体/液体分離操作とパルス型電界印加操作とを組み合わせたような廃水処理のための、新規な方法および新規な装置を提供する。この新規な方法およびこの新規な装置は、従来技術と比較して、実施がより容易であるとともに、より効果的なものである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明による方法は、固体/液体分離操作とパルス型電界印加操作とを組み合わせることを、原理としている。
【0043】
パルス型電界によって導入された生物学的効果と物理的効果と化学的効果との組合せにより、細胞の数を低減するための手段がもたらされる。これにより、細胞質内に存在する物質が塩析し、巨大分子の加水分解が起こる。このような状況下においては、予想し得ないことではあるけれども、破壊されなかった微生物の生物学的活性が増大する。これにより、生物学的同化反応が加速され、溶解した汚染物質の消費速度が増大する。さらに、生物学的活性の増大化は、微生物どうしの間の共食いを引き起こす。これにより、バイオマス内における全体的低減化が起こる。最後に、いくつかの細胞内化合物の放出が、懸濁固体の凝集に寄与し、その後の液体/固体分離を容易なものとする。
【0044】
したがって、本発明の目的は、廃水を処理するための方法であって、廃水の流れに対して、物理化学的性質と生物学的性質とを変更するという効果を有したパルス型電界を印加し、このような性質変更を、固体/液体分離操作時に行い、固体/液体分離操作とパルス型電界印加操作とを、廃水流れの互いに異なる場所において行い、このような方法において、パルス型電界を、放電モードにおいて使用し、すなわち、単一動作モードにおいて使用し、パルス型電界の電圧値と電流値とパルス繰返し周波数と電圧立上り特性とを、固体/液体分離操作とパルス型電界印加操作とが行われる場所の関数として所望の廃水処理が得られるように、選択することを特徴としている。
【0045】
パルス型電界は、また、充電モードおよび放電モードにおいて使用することができる、すなわち、二重動作モードにおいて使用することができる。
【0046】
固体/液体分離操作は、メンブラン濾過操作(接線方向的濾過、前面濾過、あるいは、半前面濾過)とすることができる、あるいは、セトルメント操作(settlement operation)とすることができる。
【0047】
有利には、物理化学的性質の変更と生物学的性質の変更とによって、溶解物質の加水分解と、コロイドの凝集と、微生物の完全な破壊または部分的な破壊と、残存微生物の同時的活性化と、が可能とされる。
【0048】
本発明による方法は、活性化スラッジリアクター内のまたは回転発酵槽内の、被処理プラント廃水およびスラッジの処理に対して適用することができる。
【0049】
本発明の他の目的は、廃水を処理するための装置であって、固体/液体分離操作を受け得るようにして廃水を流通させるための手段と、物理化学的性質と生物学的性質とを変更するという効果を有したパルス型電界の印加を受け得るようにして廃水を流通させるための手段と、を具備し、そのような性質変更を、固体/液体分離操作時に行い、固体/液体分離を行う手段と、パルス型電界の印加を行う手段とが、廃水流れの互いに異なる場所に配置され、このような装置において、パルス型電界の印加を行う手段が、放電モードにおいて動作する手段であり、すなわち、単一動作モードにおいて動作する手段であり、パルス型電界の電圧値と電流値とパルス繰返し周波数と電圧立上り特性とが、固体/液体分離操作とパルス型電界印加操作とが行われる場所の関数として所望の廃水処理が得られるように、選択されていることを特徴としている。
【0050】
パルス型電界の印加を行う手段は、充電モードにおいてもまた放電モードにおいても同等に動作することができる。すなわち、二重動作モードにおいて動作することができる。
【0051】
固体/液体分離を行う手段は、メンブラン濾過手段(接線方向的濾過、前面濾過、あるいは、半前面濾過)とすることができる、あるいは、セトルメント手段(settlement
means)とすることができる。
【0052】
有利には、物理化学的性質の変更と生物学的性質の変更とによって、溶解物質の加水分解と、コロイドの凝集と、微生物の完全な破壊または部分的な破壊と、残存微生物の同時的活性化と、が可能とされている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明において使用可能であるような、単一動作型処理ヘッドに対して付設された回路を示す電気回路図である。
【図2】本発明において使用可能であるような、二重動作型処理ヘッドに対して付設された回路を示す電気回路図である。
【図3】本発明の第1変形例による廃水処理装置を示す図である。
【図4】本発明の第2変形例による廃水処理装置を示す図である。
【図5】本発明の第3変形例による廃水処理装置を示す図である。
【図6】パルス印加数の増大化の関数として、内因性相におけるバイオマスの呼吸量
【発明を実施するための形態】
【0054】
添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定するものではなく単なる例示としての好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、本発明がより明瞭に理解され、本発明の他の利点や特徴点が、より明瞭となるであろう。
【0055】
例えば、以下の実施形態は、メンブランによる固体/液体分離に対して適用することができる。
【0056】
従来技術による様々な電気濾過手法(あるいは、電気メンブラン濾過手法)とは違って、本発明において使用される『高電位』電極は、フィルタメンブランの内部に位置していない、すなわち、分離メンブラン自体を構成しているわけではない。この見地は、本発明による方法の適用を単純化する。標準的な市販のメンブランは、メンブランに対向する導電シートを付加する必要なく(平面的メンブランまたは螺旋メンブラン)、また、内部導電核を付加する必要なく(円筒形メンブラン)、モジュール内に搭載することができる。
【0057】
これは、使用されている範囲内において、電界が、有利には数秒間〜数分間にわたって実質的に長期的に継続するような物理化学的効果および生物学的効果を形成することに、由来する。
【0058】
電界の強度は、また、かなり大きなものとされる。実際には、従来の電気濾過手法において記載されている効果は、重要なパラメータが低電圧における大電流の生成であるような電気分解現象と、かなり類似している。カソードにおいて交換される電子の数は、数十V〜数百Vに制限されているような電圧値よりも、優勢である。新規に提案されるメンブランとPEFとを組み合わせた方法においては、高電圧(5〜30kV)であることが重要である。これにより、強力な電界(5〜100kV/cm、好ましくは、10〜50kV/cm)を形成することができて、微生物の原形質膜を分離させることができる。
【0059】
最後に、パルス繰返し周波数も、また、重要なパラメータである。このパラメータは、閉塞に関与する分子の性質に依存する。パルス周波数は、共振現象によって化合物(あるいは、化合物ファミリー)を失活させ得るような値であるように、調節される。これにより、『プロセス』メンブラン内への流入を容易とすることができて、内部閉塞現象を低減することができる。これは、特に、静電的充電効果による吸着のためである。
【0060】
最後に、他の重要なパラメータは、電圧の立上り波形である。このパラメータは、好ましくは、電圧がほぼ瞬時的に立ち上がるようなものとされる。この状況は、正弦的な波形とは相違し、また、インダクタンス効果が大きすぎる場合とも相違する。
【0061】
立上り波形の効果は、細胞内化合物の分離や塩析を引き起こすことなくバクテリアの核を決定的に失活させ得るような衝撃波の場合と、同様である。
【0062】
変調可能なPEF効果(電圧、電流、周波数、立上り波形)と、メンブラン濾過効果と、を適切に組み合わせることにより、所望の廃水処理を行い得る手段が提供される。
【0063】
電圧値、電流値、立上り波形、および、パルス繰返し周波数は、所望に応じて優先的に与えることができる。
【0064】
高電圧は、細胞を分離させ得るとともに、塩析した内部化合物を分離することができる。すなわち、その後に、内部化合物を再使用することを可能とする。高電圧は、また、微生物の完全な破壊を確保するための手段を提供し、また、メンブラン表面上における生体フィルムという形態での微生物の増殖を防止するための手段を提供する。
【0065】
大電流の通電(言い換えれば、大量の電子の通過)は、帯電したコロイドや帯電した化合物に対して電荷を移送するための手段をもたらす。これにより、帯電したコロイドや帯電した化合物を中性化することができ、帯電したコロイドや帯電した化合物をクラスター化することができ、最終的には、接線方向的濾過メンブランを使用した殺菌分離によって容易に分離することを可能とする。
【0066】
立上り波形は、バクテリアや他の生物学的有機体を、これらの核に対して直接的に作用することによって、決定的に失活させるようとする際には、重要である。これにより、バクテリアや他の生物学的有機体は、増殖することなくかつ新陳代謝化合物を塩析させることなく、濾過メンブラン上に保持されることができる。
【0067】
パルス繰返し周波数は、原形質膜のダイポールモーメントに関連した電気運動効果の結果として発生する。電気運動力が、脂質二重層の結合力よりも大きい場合には、脂質二重層が破壊され、微生物の分離および壊死を引き起こすことができる。
【0068】
従来技術において開示されたパルス型電界に関するすべての方法においては、使用者が、処理ヘッドを通しての、より詳細には処理対象をなす液体流体を通しての、『単なる充電』効果を期待しているだけのように、見受けられる。これは、最も公知の効果が、細胞分離を引き起こす傾向であることに起因している。必要とされる瞬時的パワーは、非常に大きく、1μsにおいて数百MWの程度である。
【0069】
通常は、処理ヘッド内における充電電流の通過は、処理ヘッドに対して並列に電気部材を挿入することによって、制限される。この場合、そのインピーダンスは、例えば純粋インダクタンスといったように、連続的条件下ではゼロであって、過渡条件下では大きなものである。図1は、単一動作型処理ヘッドに付設するための回路を示す電気回路図である。この回路は、1〜20kVにわたって可変のものであるとともに2〜50Aという電流を出力し得るDC電源(1)と;位置(a)と位置(b)との間にわたってスイッチングを行い得るパルススイッチ(2)と;キャパシタ(3)と;直列インダクタンス(4)と;を備えている。廃水処理ヘッドは、符号(5)によって示されている。廃水処理ヘッド(5)に対しては、インダクタンス(6)が並列に接続されている。充電を行うには、スイッチ(2)を位置(a)とし、処理ヘッドがなす抵抗(5)を、純粋インダクタンス(6)の存在下において、短絡させる。放電を行うには、スイッチ(2)を位置(b)とし、キャパシタ(3)とインダクタンス(4)とからなる高パワースイッチングシステムによって、電荷を放出させる。この場合の特徴は、電圧が5〜50kVであり、1μsにわたって電流が500〜2000Aである。
【0070】
PEFに対して接続されたメンブラン分離においては、電気的効果は、また、充電時に有利に使用することができる。例えば、これは、処理ヘッド内における充電電流の通過を選択することによって、行うことができる。この場合、処理ヘッドは、単独で、図2に示すようにして設置される。図2は、二重動作型処理ヘッドに対して付設された回路を示す電気回路図である。充電時間は、通常、数十μsの程度である。そのため、電荷を移送するのにすなわち材料を搬送するのに要する時間(コロイド凝集)を、見積もることができる。この時間は、電子の移動よりも長いものである。それは、電極の界面のところにおいて、種(分子、コロイド)が更新されなければならないからである。処理ヘッドに関する充電特性は、1〜20kVという電圧であり、2〜50Aという電流である。放電時には、特性は、5〜50kVという電圧、および、500〜2000Aという電流となる。
【0071】
充電しながらヘッド内に電流を通電することの利点は、電極の分極を防止することであり、これにより、電極の寿命を延ばすことであり、コロイドを凝集させる電子を移動させるための手段を提供することであり、これにより、濾過ステップ時におけるメンブランを通しての流通を容易とすることである。
【0072】
他方、充電時に処理ヘッドを短絡させることにより、高周波数(2つのパルス間の時間が、より短い)における動作条件を改良することができる。この結果、非常に尖鋭な電圧の立上りを使用することができる。
【0073】
結論として、本発明による方法は、PEFを使用する際に従来より想定される二重の効果を得るための手段を提供する。それら効果は、メンブラン分離ステップ時に有利に使用することができる。
【0074】
導電媒体を通して大電流を流すことは、電気信号を妨害しかねないようなやや局所的なかつ強度が可変とされた磁界を使用することによって、得られる。この現象は、生物学的目的または分子的目的においては、予想以上に有利なことである。この結果、生物学的分子どうしの接着に関与しているようなあるいは細胞内接着に関与しているようなしたがって濾過メンブラン上における生体フィルムの接着に関与しているような特定の生物学的化合物を失活させる(非活性化させる)ことができる。さらに、他の周波数値は、濾過メンブランを通してのいくつかの分子またはイオンの通過を容易とし、それらの化学的活性を制限し、ポア壁の奥深くに吸着されかねないような複雑な分子を作ろうとする傾向を、制限する。
【0075】
水性媒体の物理化学的特性および生物学的特性を変更することによって助長しつつ、パルス電界とメンブラン分離とを組み合わせることの、潜在的な応用は、すべての固体/液体分離に関するようなまた濾過メンブランを使用しているようなすべての用途である。
・水処理。この場合、生体フィルムを低減することができ、内部閉塞を低減させることができ、生物学的汚染を低減させることができる。
・廃水処理。外部閉塞を低減することができ、微小汚染物質の酸化を低減することができる。
・微小有機体の活性化により、および、バイオマス量の低減化により、装置の入力側における、スラッジリアクターの活性化。
・回転発酵槽。濾過前に巨大分子を分離させることによる、事前的加水分解ステップ。
・生物学的スラッジの衛生化。微小有機体および濾過メンブランによる濃縮物の破壊/分離。
・果汁ジュースの製造。セルロースメンブラン(植物に関しての原形質膜と等価)の分離、および、野菜細胞のファイバやフラグメントの濾過による分離、
・分散相内における液滴サイズの増大による水/オイル懸濁液またはエマルジョンの破壊、ならびに、2つの相の容易な分離。
・(例えば野菜溶媒や無機物溶媒や合成オイル溶媒や非極性有機溶媒といったような、水性相と比較して)電気をあまり通さない有機物相の処理。
【0076】
懸濁液および溶液内における化合物の電気特性の相違を使用することにより、最も導電性の大きな化合物を凝集させて、その後の濾過を容易なものとすることができる。
【0077】
本発明による濾過は、様々な範囲をカバーすることができる。すなわち、マイクロ濾過(0.1μm〜10μmという粒子サイズ)、限外濾過(0.005μm〜0.1μmという分子サイズ)、ナノ濾過(0.001μm〜0.005μmという分子サイズ)、逆浸透(0.001μmよりも小さな分子サイズ)。電気メンブラン手法とは違って、この場合の濾過における駆動力は、移動圧力である。
【0078】
パルス型電界は、1Hz〜100,000Hzという周波数範囲をカバーし、好ましくは、1Hz〜10,000Hzという周波数範囲をカバーする。電界は、1kV/cm〜100kV/cmにわたって変化することができ、好ましくは、3kV/cm〜50kV/cmにわたって変化することができる。電気的効果は、1秒あたりにつき、1回〜1000回にわたって繰り返すことができ、好ましくは、1回〜100回にわたって繰り返すことができる。また、濾過処理前に、流れの一部に対してだけ、PEFを施すことができる。
【0079】
物理化学的特性および生物学的特性の変化が長く継続することのために、メンブランとPEFとの組合せは、時間的に互いに少しずらせて行われる。PEFは、濾過前に、0.1〜1000秒にわたって、例えば1〜100秒にわたって、印加することができる。PEF処理と濾過との間に経過する時間は、パイプ内を流れる廃水の滞留時間(t)に依存するものであって、PEFとメンブランとの間における装置の容積(V)と、メンブランモジュールに対しての供給流量(Q)と、の比に基づいて計算される。すなわち、以下のようである。
t=V/Q
【0080】
図3は、廃水供給回路上において、濾過の入力側にPEFシステムを挿入した様子を示す図である。廃水は、リザーバ(10)から供給され、処理装置に対してパイプを通して供給される。リザーバ(10)の出力側に位置したポンプ(11)は、廃水を加圧し、流量(Q)での循環となるように制御する。廃水は、メンブランシステム(13,14,15)へと到達するよりも前に、まず最初に、PEFデバイス(12)によって出力されたパルス型電界を受ける。メンブランシステム(13)は、第1限外濾過液(P )を出力し、残留物(R )は、メンブランシステム(14)へと案内される。メンブランシステム(14)は、第2限外濾過液(P )を出力し、残留物(R )は、メンブランシステム(15)へと案内される。メンブランシステム(15)は、第3限外濾過液(P )と、濃縮物(C )と、を出力する。
【0081】
組合せを、逆の順序とすることもできる。その場合、この方法における第1ステップは、濾過とされ、第2ステップは、PEFによる処理となる。この様子は、図4に示されている。図4においては、PEFシステムが、最終限外濾過液(最終滅菌物)上においておよび濃縮物(生物学的スラッジの衛生処理)上において、濾過の出力側に挿入されている。廃水は、リザーバ(20)から供給され、メンブランシステム(23)に対して、互いに直列に配置された加圧ポンプ(21)および循環ポンプ(22)を介して供給される。メンブランシステム(23)は、限外濾過液(P )を出力し、この限外濾過液(P )は、PEFデバイス(24)を通過する。残留物は、部分的には、ポンプ(21,22)の間を再循環する。メンブランシステム(23)は、また、濃縮物(C )を出力し、この濃縮物(C )は、PEFデバイス(25)を通過する。この場合、本質的な目的は、濾過ステップの後における最終的殺菌効果である。これにより、消毒効果が承認されていない濾過メンブランを使用することができる(円筒形メンブラン、螺旋形メンブラン、平面型メンブラン)。また、中空ファイバを有したメンブランを、PEFデバイスと組み合わせて使用することもできる。この場合、PEF処理は、衛生処理の目的で、濃縮物に対しても限外濾過液に対しても、区別することなく印加される。
【0082】
PEF処理および分離処理は、また、交互的なものとすることができる。特に、残留物が従来的に『プロセス』メンブランを通して数回にわたって(言い換えれば、ループ式に)循環するような、接線方向的濾過ループにおいては、交互的なものとすることができる。この様子は、図5に示されている。図5においては、廃水は、リザーバ(30)から供給され、メンブランシステム(33)に対して、互いに直列に配置された加圧ポンプ(31)および循環ポンプ(32)を介して供給される。メンブランシステム(33)は、限外濾過液(P )と、残留物と、を出力する。残留物は、部分的には、PEFデバイス(34)を通過した後に、ポンプ(31,32)の間を再循環する。メンブランシステム(33)は、また、濃縮物(C )を出力する。
【0083】
PEFデバイスの電極は、平面的なものや同心的なもの等といったように、通常の形状を有することができる。要求される効果は、電界が、存在している様々な種の活性を失わせるのに十分な値を有しているべきであることと、液圧的圧力損失が、全体的エネルギーコストを勘案して許容可能な範囲内であるべきことと、である。
【0084】
上記においては、濾過メンブラン技術とパルス型電界(PEF)技術とを組み合わせた新規な廃水処理方法を、開示した。PEFによってもたらされる現象は、物理化学的性質および生物学的性質の変更に寄与し、この変更のために、特に、駆動力が圧力とされた方法の実施態様の全般にわたって、すなわちマイクロ濾過や限外濾過やナノ濾過や逆浸透の全般にわたって、メンブランに対するスラッジ閉塞を低減することができる。PEFの様々なパラメータ(強度、電圧、周波数、立上り波形、等)が調節可能であることにより、PEFに基づく現象は、以下のことを行うことができる。
−生体フィルムの低減化(微生物の分離や分解や一時的失活)。
−微生物の部分的破壊、および、残留微生物の同時的活性化。
−コロイドの凝集(電荷を移送して、静電的斥力を制限する)。
−巨大分子の事前的加水分解(巨大分子の分離に基づく)。
−微小汚染物質の酸化(フリーラジカルの形成に基づく)。
−懸濁液中における『スケール形成』分子の維持。
【0085】
液体食料品の処理や、飲料用水の処理や、湧水の処理や、廃水の処理や、工場スラッジの処理さえもが、本発明による新規な方法の適用対象である。
【0086】
本発明によりもたらされる利点は、電極腐食が存在しないことにより、深刻な電気分解効果が存在しないことである。約200時間の動作後における電極の表面状態について、Nanofocus AG社の装置を使用して研究した。特に、表面粗さの値が、200時間の動作では何ら変化していないことが、確認された。この結果は、化学的なおよび電気化学的な表面攻撃が存在していないことを、示している。
【0087】
本発明による他の利点は、内因性相における微生物群の瞬時的なおよび長く継続する活性化であり、また、基板の存在下における微生物群の失活である。いずれの場合においても、細胞の死亡率は、細胞の二次成長の欠如によるものである。このことは、微生物が、個々の寿命を通して新陳代謝能力を有していることを意味している。微生物が生きていることのために、微生物は、2つの方法での動作を継続する。微生物は、新陳代謝物を排出し、これにより、固体液体分離を容易なものとする。微生物は、また、溶解した外因性化合物の同化を引き起こし、これにより、廃水の汚染度レベルを低減させる。
【0088】
78Hz(通過ごとに10個のパルス)において、また、780Hz(通過ごとに100個のパルス)において、回路開放状態で試験を行った。細胞破壊速度は、寒天(gelose)上において符号を付すという方法を使用して、特徴づけた。結果は、78Hzにおける試験では、97.2〜99.2%であり、780Hzにおける試験では、97.97%であった。4Logに近い失活は、10kWh/m という程度のエネルギー値において、可能であった。
【0089】
細胞活性は、呼吸法を使用して特徴づけた。
【0090】
リサイクルモード(通過ごとに10パルスに対応する78Hz)において試験を行った。これにより、時間とともに処理数を増大させた。これにより、内因性相内においてイースト懸濁液においてPEFの効果を決定した。
【0091】
図6は、印加された処理の数(N)の関数として、時間的な呼吸量(R)の変化を示すグラフである。呼吸量(R)は、1リットルあたりにつきかつ1分間あたりにつき、酸素のmg数で与えられる。破線で示す直線(41)は、処理前の呼吸値を与えている。言い換えれば、処理前における、内因性相内における酸素消費速度の値を与えている。曲線(42)は、時間につれての呼吸量の変化を示している。
【0092】
呼吸が、第1処理時に急激に増加することに注意されたい。呼吸の増加は、最初の90パルスにおいては、4倍の程度である。呼吸量は、その後、減少するものの、初期値にまで戻ることはない。一番もっともらしい説明は、イーストに対して印加された電気的ショックが、媒体内において小胞体化合物の塩析を引き起こしたということである(媒体内におけるCOD(化学的酸素要求量)が、55mg/lから70mg/lへと増大したことにより証明される)。初期的には、破壊されていないイーストが、それら化合物を再吸収し、呼吸量を増大させるという効果を示す。その後、損傷したすなわち破壊された細胞の数が増大し、これにより、バイオマスの全体的活性が低下する。
【0093】
したがって、最も顕著な効果は、電気ショックを受けた際の、内因性相内におけるバイオマスの瞬時的で急激な活性である。これとは逆に、基板の存在下における数は、一時的にショックを受けるものの、新陳代謝能力は、生きている間は復元される。それでもなお、双方の場合において、バイオマスの再生能力は、ショックを受けなかった部分からしか発生しない。ショックを受けた部分(分解後の部分)からの二次成長は、起こらない。このことは、寒天上において符号を付す試験を行うことによって常に明瞭である。
【符号の説明】
【0094】
12 パルス型電界印加デバイス(パルス型電界の印加を行う手段)
13 メンブランシステム(固体/液体分離を行う手段)
14 メンブランシステム(固体/液体分離を行う手段)
15 メンブランシステム(固体/液体分離を行う手段)
23 メンブランシステム(固体/液体分離を行う手段)
24 パルス型電界印加デバイス(パルス型電界の印加を行う手段)
25 パルス型電界印加デバイス(パルス型電界の印加を行う手段)
33 メンブランシステム(固体/液体分離を行う手段)
34 パルス型電界印加デバイス(パルス型電界の印加を行う手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を処理するための方法であって、
前記廃水の流れに対して、物理化学的性質と生物学的性質とを変更するという効果を有したパルス型電界を印加し、
このような性質変更を、固体/液体分離操作時に行い、
前記固体/液体分離操作と前記パルス型電界印加操作とを、前記廃水流れの互いに異なる場所において行い、
このような方法において、
前記パルス型電界を、放電モードにおいて使用し、すなわち、単一動作モードにおいて使用し、
前記放電モードを、直流電源によって電力供給されているキャパシタのパルス状放電によって実施し、
前記パルス型電界の電圧値と電流値とパルス繰返し周波数と電圧立上り特性とを、調節可能なものとすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記パルス型電界を、充電モードまたは放電モードにおいて使用し、すなわち、二重動作モードにおいて使用し、
前記充電モードを、直流電源によって電力供給されているキャパシタのパルス状充電によって実施することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
前記固体/液体分離操作を、メンブラン濾過操作とすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
前記濾過操作を、接線方向的濾過と、前面濾過と、半前面濾過と、の中から選択することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、
前記固体/液体分離操作を、沈殿操作とすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、
前記物理化学的性質の変更と前記生物学的性質の変更とによって、溶解物質の加水分解と、コロイドの凝集と、微生物の完全な破壊または部分的な破壊と、残存微生物の同時的活性化と、を可能とし得るよう、前記パルス型電界を、調節可能なものとすることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載された方法を実施するための方法であって、
活性化スラッジリアクター内のまたは回転発酵槽内の、被処理プラント廃水およびスラッジの処理に対して適用することを特徴とする方法。
【請求項8】
廃水を処理するための装置であって、
固体/液体分離操作を受け得るようにして前記廃水を流通させるための手段と、
物理化学的性質と生物学的性質とを変更するという効果を有したパルス型電界の印加を受け得るようにして前記廃水を流通させるための手段と、
を具備し、
そのような性質変更を、前記固体/液体分離操作時に行い、
前記固体/液体分離を行う手段(13,14,15,23,33)と、前記パルス型電界の印加を行う手段(12,24,25,34)とが、前記廃水流れの互いに異なる場所に配置され、
このような装置において、
前記パルス型電界の印加を行う手段が、放電モードにおいて動作する手段であり、すなわち、単一動作モードにおいて動作する手段であり、
前記放電モードが、直流電源によって電力供給されているキャパシタのパルス状放電によって得られ、
前記パルス型電界の電圧値と電流値とパルス繰返し周波数と電圧立上り特性とが、調節可能なものとされていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記パルス型電界の印加を行う手段(12,24,25,34)が、充電モードまたは放電モードにおいて動作する手段であり、すなわち、二重動作モードにおいて動作する手段であり、
前記充電モードが、直流電源によって電力供給されているキャパシタのパルス状充電によって得られていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8記載の装置において、
前記固体/液体分離を行う手段が、メンブラン濾過手段であることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記濾過手段(13,14,15,23,33)が、接線方向的濾過と、前面濾過と、半前面濾過と、の中から選択されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項8記載の装置において、
前記固体/液体分離を行う手段が、沈殿手段であることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項8記載の装置において、
前記物理化学的性質の変更と前記生物学的性質の変更とによって、溶解物質の加水分解と、コロイドの凝集と、微生物の完全な破壊または部分的な破壊と、残存微生物の同時的活性化と、を可能とし得るよう、前記パルス型電界が、調節可能なものとされていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177713(P2011−177713A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111475(P2011−111475)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2004−518863(P2004−518863)の分割
【原出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】