説明

固定の磁気回路素子を製造する方法

【課題】固定の磁気回路素子を製造する方法を改良する。
【解決手段】ハウジング66は、薄肉のスリーブとして弁に組み込まれていて、コア2およびアーマチュア27を、半径方向および周方向で包囲し、この場合ハウジング自体は、マグネットコイル1によって包囲されている。看取されるように、ハウジング66の、磁気特性で変化された、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの部分領域59は、コア2とアーマチュア27との間の作業エアギャップ70の軸方向延伸領域に位置し、これによって磁力線は最適かつ効果的に磁気回路内で導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の、固定の磁気回路素子を製造する方法から出発する。
【背景技術】
【0002】
図1には、背景技術において公知の燃料噴射弁を示しており、燃料噴射弁は、内側の金属の導電部分とハウジング構成部材との古典的な3部分から成る構造を有している。内側の弁管は、内極を形成する入口管片と、非磁性の中間部分と、弁座を収容する弁座支持体とから形成され、図1の説明において詳しく記載する。
【0003】
既にドイツ連邦共和国特許出願公開第3502287号明細書において、磁化可能な2つのハウジング部分と、その間に位置する、ハウジング部分を磁気的に分離する非磁性のハウジング域と備えた中空円筒形の金属のハウジング部分を製造する方法が公知である。ここでは金属のハウジングは、磁気可能な素材から、外径における寸法過剰部分を除いて前加工され、この場合ハウジングの内壁において、所望の中央のハウジング域の幅でリング溝が形成される。ハウジングの回転時に、磁化不能な充填材料が、リング溝領域を加熱しつつリング溝に充填され、ハウジングの回転は、充填剤が硬化するまで維持される。次いでハウジングは、外側で外径の最終寸法部分を除いて切削されるので、もはや磁気可能なハウジング部分の間の結合は形成されない。このようにして製造される弁ハウジングは、たとえば自動車のアンチブロックシステム(ABS)のための電磁弁に使用することができる。
【0004】
さらにドイツ連邦共和国特許第4237405号明細書において、内燃機関用の噴射弁のための固定のコアを製造する方法が公知である(図5)。この製造方法によれば、直にまたは先行の変換プロセスを介して、スリーブ状で磁性のマルテンサイトの一体的な工作物が提供され、工作物は、中央の区分を非磁性でオーステナイトの中央の区分に変態させるために、磁性のマルテンサイトの工作物の中央の区分で局所的な熱処理にさらされる。選択的に、局所的な熱処理に際してレーザによって溶融されるオーステナイトもしくは溶融されるフェライトを形成する元素は、固定のコアの、非磁性でオーステナイトの中央区分を形成するために、熱処理箇所に添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3502287号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第4237405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、固定の磁気回路素子を製造する方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、電磁作動式の弁のための固定の磁気回路素子を製造する方法において、磁気回路素子は、少なくとも2つの域を有しており、直に上下に並んで位置する2つの域は、異なる磁気特性を有しており、以下の方法ステップ:a)磁性材料もしくは磁気可能な材料から成る基本体を提供し、b)基本体に第1の完全な熱処理を施し、c)マルテンサイトの基本体内に、マルテンサイトと残留オーステナイトとから成る組織を有する部分領域もしくは縁部領域を形成するために、基本体に局所的な第2の熱処理を施し、d)磁気回路素子として完成加工された基本体を磁気回路に組み込む方法ステップを有しており、基本体を、中実なピンまたはプレートとして提供し、基本体の局所的な第2の熱処理を、基本体の材料が表面で局所的にオーステナイト化され均質化されるように行い、次いで、中実なアーマチュアピンまたはフラットなアーマチュアプレートとして磁気回路に組み込む。
【発明の効果】
【0008】
独立請求項の特徴部に記載の構成を有する、本発明による、固定の磁気回路素子を製造する方法の利点によれば、特別に簡単で経済的に、磁気的な分離部分を有するハウジング、もしくは特に縁部層において局所的に形成された磁気特性を有する磁気回路素子が大量生産技術で確実に製造可能である。
【0009】
特に個々の素子の簡素化によって、公知の製造方法に対して、特殊工具の僅かな手間しか必要でない。
【0010】
さらなる利点によれば、磁気回路素子自体の幾何学形状の構成において、たとえば長さ、直径、段部において、高い融通性が実現されている。
【0011】
特に有利には、一般的な、磁気特性で変化された縁部層を形成するのに必要なコーティング法、たとえば浸炭窒化法は、省略することができる。
【0012】
従属請求項に記載した形態によって、独立請求項に記載の方法の有利な態様および改良形が実現可能である。
【0013】
本発明の実施の形態を図示し、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ハウジングとして3部分から成る内側の金属の弁管を備えた、背景技術による燃料噴射弁を示す図である。
【図2】本発明による、管状のハウジングとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図3】本発明による、管状のハウジングとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図4】本発明による、管状のハウジングとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図5】本発明による、管状のハウジングとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図6】本発明による、管状のハウジングとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図7】本発明による、管状のハウジングとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図8】本発明に従って製造されるハウジングを備えた噴射弁の一部を示す概略図である。
【図9】本発明による、アーマチュアピンとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図10】本発明による、アーマチュアピンとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図11】本発明による、アーマチュアピンとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図12】本発明による、アーマチュアピンとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図13】本発明による、アーマチュアピンとして固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを概略的に示す図である。
【図14】本発明に従って製造されるアーマチュアピンを備えたプランジャ型構造の磁気回路の一部を概略的に示す図である。
【図15】本発明に従って製造されるアーマチュアプレートを備えたフラット型構造の磁気回路の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2〜図15に基づいて、本発明による、固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを説明するまえに、図1に基づいて、本発明に従って製造される磁気回路素子を使用するのに考えられる製品として、背景技術による燃料噴射弁を詳しく説明する。
【0016】
図1に例示した、混合気圧縮型で火花点火式の内燃機関の燃料噴射装置用の噴射弁として形成された電磁作動式の弁は、マグネットコイル1によって包囲された、燃料入口管片および内極として作用する管状のコア2を備えており、コア2は、たとえば全長にわたって一定の外径を有している。半径方向に段付けされたコイルボディ3は、マグネットコイル1の巻線を収容していて、コア2と相俟って、マグネットコイル1付近で噴射弁のコンパクトな構造を実現する。
【0017】
コア2の下位のコア端部9と、弁縦軸線10に対して同心的に、管状で金属の非磁性の中間部材12が、溶接によって密に結合されており、中間部材12は、コア端部9を部分的に軸方向で包囲する。コイルボディ3および中間部材12の下流側に、管状の弁座支持体16が延在しており、弁座支持体16は、中間部材12と固く結合されている。弁座支持体16内に、軸方向可動の弁ニードル18が配置されている。弁ニードル18の下流側の端部23に、球状の弁閉鎖体24が設けられており、弁閉鎖体24の周に、燃料を通流させるためのたとえば5つの面取部25が設けられている。
【0018】
噴射弁の作動は、公知のように電磁式に行われる。弁ニードル18を軸方向運動させるため、ひいては戻しばね26のばね力に抗して噴射弁を開放するため、もしくは噴射弁を閉鎖するために、マグネットコイル1とコア2とアーマチュア27とを備えた電磁回路が用いられる。管状のアーマチュア27は、弁ニードル18の、弁閉鎖体24とは反対側の端部と、たとえば溶接シームによって固く結合されていて、コア2に向かって延びている。弁座支持体16の、下流側に位置する、コア2とは反対側の端部に、固定の弁座30を備えた円筒形の弁座体29が溶接によって密に取り付けられている。
【0019】
弁ニードル18の球状の弁閉鎖体24は、弁座体29の、流れ方向にみて円錐台形に先細に形成された弁座30と協働する。下位端面で、弁座体29は、たとえばポット(容器)状に形成された噴射孔付ディスク34と、固くしかも密に、たとえばレーザを用いて形成された溶接シームによって結合されている。噴射孔付きディスク34には、電蝕または打ち抜きによって成形された少なくとも1つ、たとえば4つの噴射開口39が設けられている。
【0020】
マグネットコイル1の通電時にアーマチュア27を最適に作動させるため、ひいては弁を正確かつ確実に開閉するために、アーマチュア27に磁束を導くために、マグネットコイル1は、たとえば湾曲部材として形成され、かつ強磁性素子として使用される少なくとも1つのガイドエレメント45によって包囲されており、ガイドエレメント45は、マグネットコイル1を周方向で少なくとも部分的に包囲していて、また一方の端部でコア2に、他方の端部で弁座支持体16に当接していて、かつコア2および弁座支持体16と、たとえば溶接、ろう接もしくは接着によって結合可能である。コア2と、非磁性の中間部材12と、弁座支持体16とは、基本支持構造として内側の金属の弁管、ひいては燃料噴射弁のハウジングを成していて、これらは固く相互結合されていて、全体として、燃料噴射弁の全長にわたって延びている。弁の別の機能群は、弁管の内側に、または弁管の周りに配置されている。弁管のこれらの構成部材は、電磁作動式のユニット、たとえば弁のためのハウジングの古典的な3部分から成る構造部であって、強磁性もしくは磁化可能な2つのハウジング領域を備えており、ハウジング領域は、アーマチュア27の領域において磁力線を効果的に導くために、非磁性の中間部材12によって、磁気的に互いに分離されているか、または少なくとも磁気的な絞り箇所を介して相互結合されている。
【0021】
噴射弁は、大体においてプラスチック射出成形部51で包囲されており、プラスチック射出成形部51は、コア2から出発して、軸方向にマグネットコイル1と少なくとも1つのガイドエレメント45とを介して弁支持体16まで延びており、ここでは少なくとも1つのガイドエレメント45は、完全に軸方向および周方向でカバーされている。プラスチック射出成形部51に、たとえば一緒に射出成形される電気的な接続プラグ52が含まれる。
【0022】
図2〜図7に略示した、本発明による、固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップによって、有利には、様々な使用目的、とりわけ電磁作動式の弁のための、特に簡単かつ安価で薄肉のハウジング66を製造することができ、ハウジングは、前述の3部分から成る弁管の代用となる。
【0023】
第1の方法ステップ(図2)では、たとえば円筒形の基本体55が準備される。基本体55からハウジング66が製造される。基本体55は、磁性材料もしくは磁化可能な材料から成っていて、たとえば強磁性またはフェライトであるか、またはマルテンサイトの材料組織を有している。基本体55は、先ず中実に形成することができ、たとえば特に多数のハウジング66を効果的に製造するために、長い棒材料から得られる。基本体55の材料は、あらゆる場合に、合金組成に基づいて残留オーステナイトとマルテンサイトとを形成する鋼である。材料の合金元素は、オーステナイト安定性の元素C、N、NiおよびMnである。
【0024】
磁気回路素子の所望の異なる磁気特性を得るために、基本体55は、完全に熱処理にさらされ、熱処理は、たとえば硬化、冷凍庫における深冷処理および/または炉56内の単数または複数回の焼き戻しによって実施することができる(図3)。硬化のあとで、組織は、依然として残留オーステナイト部分から成っていてよく、残留オーステナイトは、後続の熱処理ステップによってマルテンサイトに変態させられる。これに対して選択的に、組織は、堆積された粒子、たとえば炭化物、窒化物または金属間化合物を有するフェライトから成っていてもよい。熱処理は、基本体55に完全に磁性のマルテンサイトの材料組織が形成されるように行われる(図4)。
【0025】
次いで局所的に制限して実施される別の熱処理が行われる。このために基本体55の部分領域は、たとえばレーザ加熱または誘導加熱57を用いた短時間の熱処理にさらされる(図5)。このようにして基本体55の材料は、第2の熱処理の部分領域で局所的にオーステナイト化され、均質化され、包囲する材料による基本体55の冷却もしくは焼き入れのあとで、マルテンサイトの領域58と、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを有する部分領域59とから成る(図6)。ここでは基本体55は、異なる組織および磁気特性を有する複数の域から成る。
【0026】
基本体55は、次いで最終処理され、固定のハウジング56は、磁気回路素子として所望の幾何学形状で提供される。本発明に従って製造されるハウジング66を燃料噴射弁に使用する場合、有利には、ハウジング66は、製作技術的な手段、たとえばしごき加工、転造加工、据え込み加工、縁曲げ加工および/または縁拡開加工によって特別に成形される。ハウジング66によって、図1に示した公知の燃料噴射弁において、コア2と中間部材12と弁座支持体16とから成る弁管の機能全体を完全に引き受けることができ、したがってたとえば燃料噴射弁の軸方向全長にわたって延在する構成部材が提供される。
【0027】
中実な基本体55は、製作技術的な手段によって、たとえば管状のスリーブ形状にもたらされる。中実な基本体55は、局所的な熱処理の前後に、管状のハウジング66を形成するための内側の縦開口60を設けることができる(図7)。
【0028】
図8には、本発明に従って製造されるハウジング66を備えた燃料噴射弁の一部を概略的に示しており、ハウジング66は、薄肉のスリーブとして弁に組み込まれていて、コア2およびアーマチュア27を、半径方向および周方向で包囲し、この場合ハウジング自体は、マグネットコイル1によって包囲されている。看取されるように、ハウジング66の、磁気特性で変化された、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの部分領域59は、コア2とアーマチュア27との間の作業エアギャップ70の軸方向延伸領域に位置し、これによって磁力線は最適かつ効果的に磁気回路内で導かれる。図1に示した湾曲したガイドエレメント45の代わりに、外側の磁気回路素子は、たとえばマグネットポット46として形成されており、この場合マグネットポット46とハウジング66との間の磁気回路は、カバーエレメント47を介して閉じられている。本発明による方法では、比較的大きな肉厚を有するハウジング66を磁気特性で局所的に変化させることもできるので、磁力に関して、減少された磁気的にアクティブな領域にもかかわらず、比較的高い内圧耐性が保証されている。
【0029】
図9〜図13には、本発明による、アーマチュアピン66’として形成される固定の磁気回路素子を製造する方法の方法ステップを示した。アーマチュアピン66’の製造は、図7に示したハウジング66における前述の製造と比較可能に行われる。第1の方法ステップ(図9)では、たとえば比較的細い円筒形の基本体55’が提供され、基本体55’から、アーマチュアピン66’が製造される。基本体55’は、磁性材料もしくは磁気可能な材料から成っていて、たとえば強磁性またはフェライトであるか、またはマルテンサイトの材料組織を有している。基本体55’は、たとえば多数のアーマチュアピン66’を特に効果的に製造するために、長い棒材料から得られる。基本体55’の材料は、あらゆる場合に合金組成に基づいて残留オーステナイトとマルテンサイトとを形成する鋼である。材料における合金元素は、オーステナイト安定性の元素C、N、NiおよびMnである。
【0030】
磁気回路素子の所望の異なる磁気特性を得るために、基本体55’は、完全に熱処理にさらされ、熱処理は、たとえば硬化、冷凍庫内での深冷処理または炉56内での単数または複数回の焼き戻しによって行うことができる(図10)。硬化したあとで、組織は、依然として残留オーステナイト部分から成っていてよく、残留オーステナイトは、後続の熱処理ステップによってマルテンサイトに変態させられる。これに対して選択的に、組織は、堆積された粒子、たとえば炭化物、窒化物または金属間化合物を有するフェライトから形成してもよい。熱処理は、基本体55’に完全に磁性のマルテンサイトの材料組織が形成されるように行われる(図11)。
【0031】
次いで専ら基本体55’の縁部領域の表面において磁気特性の変化をもたらす別の熱処理が行われる。このために基本体55’の表面は、レーザ加熱または誘導加熱57を用いた短時間の熱処理にさらされる(図12)。このようにして基本体55’の材料は、表面で局所的にオーステナイト化され、均質化され、包囲する材料による基本体55’の冷却もしくは焼き入れのあとで、マルテンサイトの内側の領域58’と、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの外側の縁部領域59’ から成る(図13)。ここでは、基本体55’もしくはアーマチュアピン66’は、異なる組織および磁気特性を有する複数の域から成る。
【0032】
必要な場合、基本体55’は、次いで最終加工され、固定のアーマチュアピン66’が磁気回路素子として所望の幾何学形状で提供される。図14には、本発明に従って製造されるアーマチュアピン66’を備えたプランジャ型アーマチュア構造における磁気回路の一部を概略的に示しており、アーマチュアピン66’は、マグネットコイル1を包囲するマグネットポット46を通って進入し、そこで摺動可能である。プランジャ型アーマチュア磁気回路では、外側の縁部領域59’が残留オーステナイトを有するアーマチュアピン66’によって、電磁弁の動力学および磁力が改善される。コーティング法、たとえば浸炭窒化法は省略することができる。
【0033】
図15には、本発明に従って製造されるアーマチュアプレート66’を備えたフラット型アーマチュア構造の磁気回路の一部を概略的に示した。製造原理は、ハウジング66もしくはアーマチュアピン66’を製造するための前述の方法ステップと比較可能である。局所的な第2の熱処理は、フラットでプレート状の基本体の片側で、レーザ加熱または誘導加熱を用いた短時間の加熱処理が実施されるように行われる。このようにして基本体の材料は、この側で、局所的にオーステナイト化され、均質化され、包囲する材料による基本体の冷却もしくは焼き入れのあとで、マルテンサイトの領域58’’と、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを有する、マグネットコイル1に向いた側の縁部領域59’’とから成る。アーマチュアプレート66’は、異なる組織と磁気特性とを有する域から成る。
【0034】
そのようなアーマチュアプレート66’’によって、フラット型アーマチュアマグネット回路に追加エアギャップを形成することができる。この縁部領域59’’における追加エアギャップは、マグネットポット46にアーマチュアプレート66’’が付着するのを防止するため、磁気回路における規定の残留エアギャップを形成するため、または摩擦防止手段を有するエアギャップとして用いるために、使用することができる。
【0035】
本発明は、燃料噴射弁またはアンチブロックシステムのための電磁弁における使用に制限されるものではなく、様々な利用範囲における電磁作動式のあらゆる弁に関し、異なる磁性の複数の域が相前後して必要であるユニットにおける固定のあらゆるハウジングに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁作動式の弁のための固定の磁気回路素子(66,66’,66’’)を製造する方法において、
磁気回路素子(66,66’,66’’)は、少なくとも2つの域を有しており、直に上下に並んで位置する2つの域は、異なる磁気特性を有しており、
以下の方法ステップ:
a)磁性材料もしくは磁気可能な材料から成る基本体(55,55’)を提供し、
b)基本体(55,55’)に第1の完全な熱処理を施し、
c)マルテンサイトの基本体(55,55’)内に、マルテンサイトと残留オーステナイトとから成る組織を有する部分領域(59)もしくは縁部領域(59,59’)を形成するために、基本体(55,55’)に局所的な第2の熱処理を施し、
d)磁気回路素子(66,66’,66’’)として完成加工された基本体(55,55’)を磁気回路に組み込む
方法ステップを有しており、
基本体(55,55’)を、中実なピンまたはプレートとして提供し、
基本体(55,55’)の局所的な第2の熱処理を、基本体(55,55’)の材料が表面で局所的にオーステナイト化され均質化されるように行い、
次いで、中実なアーマチュアピン(66’)またはフラットなアーマチュアプレート(66’’)として磁気回路に組み込むことを特徴とする、電磁作動式の弁のための固定の磁気回路素子を製造する方法。
【請求項2】
基本体(55,55’)は、強磁性であるか、またはフェライトまたはマルテンサイトの材料組織を有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基本体(55,55’)の第1の熱処理を、硬化、冷凍庫内の深冷処理、もしくは炉(56)内の単数または複数回の焼き戻しによって行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
基本体(55,55’)の局所的な第2の熱処理を、レーザ加熱または誘導加熱(57)によって行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
基本体(55,55’)に局所的な第2の熱処理を施したあとで、形成された基本体(55,55’)の最終加工を、磁気回路素子(66,66’,66’’)の所望の幾何学形状が得られるまで行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
基本体(55,55’)の最終加工を、しごき加工、転造加工、据え込み加工、縁曲げ加工および/または縁拡開加工によって行う、請求項5載の方法。
【請求項7】
包囲する材料による基本体(55’)の冷却もしくは焼き入れのあとで、基本体(55’)が、マルテンサイトの領域(58’,58’’)と、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの縁部領域(59’,59’’)から成る、請求項1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−163208(P2012−163208A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60977(P2012−60977)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2009−537575(P2009−537575)の分割
【原出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】