説明

固定フィルム

【課題】ワイヤグリッドなどの凹凸構造を持つ成形体と固定フィルムとで構成される積層体の成型体の凹凸構造面の損傷や汚染を防止可能であると共に、固定フィルムが成型体から剥離することを防止でき、しかも固定フィルムを剥離した場合でも、凹凸構造に起因する光学特性を損なうことがない固定フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の固定フィルム2は、基材21と、基材21をワイヤグリッド偏光板1に接着する易剥離性の粘着層22と、を具備する固定フィルム2であって、80℃、24時間加熱後の基材21とワイヤグリッド偏光板1との90度剥離力が0.03N/25mm〜0.50N/25mmであり、ワイヤグリッド偏光板1の固定フィルム2剥離前後の600nmにおける平行ニコル時の透過率(Imax[%])の低下値が2%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な凹凸構造を持つ成型体の表面を保護する固定フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のフォトリソグラフィー技術の発達により、光の波長レベルのピッチを有する微細構造パターンを形成することができるようになってきた。このような非常に小さいピッチの微細パターンを有する部材や製品は、半導体分野だけでなく、光学分野において利用範囲が広く有用である。
【0003】
例えば、金属などで構成された導電体線が特定のピッチで格子状に配列してなる凹凸構造を持つワイヤグリッドは、そのピッチが入射光(例えば、可視光の波長400nmから800nm)に比べて小さいピッチ(例えば、2分の1以下)であれば、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分の光をほとんど反射し、導電体線に対して垂直な電場ベクトル成分の光をほとんど透過させるため、単一偏光を作り出す偏光板として使用できる。ワイヤグリッド型偏光素子は、透過しない光を反射し再利用することができるので、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
【0004】
このようなワイヤグリッド型偏光素子(ワイヤグリッド偏光板)としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。このワイヤグリッド偏光板は、入射光の波長より小さいグリッド周期で間隔が置かれた金属ワイヤを備えている成形体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−328234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワイヤグリッド偏光板を実用に供する場合、搬送、後加工、保管の際には、ワイヤグリッド面の損傷や、汚染を防止する必要がある。ワイヤグリッド面の保護のため、所謂保護フィルムをワイヤグリッド偏光板に貼合した場合、保護フィルムの粘着層に含有される粘着成分がワイヤグリッドとの貼合面に染み出し、固定フィルムを取り除いた後もワイヤグリッド面(凹凸構造面)に残存し、ワイヤグリッド偏光板の光学特性などの性能を低下させるなどの問題が生じる。
【0007】
一方、非粘着性の保護フィルムでワイヤグリッド面を保護することが考えられる。しかしながら、非粘着性の保護フィルムをワイヤグリッド偏光板に重ねただけでは、搬送や後加工時に両者が擦れ合うことにより、かえってワイヤグリッド面の損傷を増加される結果となってしまい、ワイヤグリッド面の汚染を防止できないという問題がある。また、非粘着性の保護フィルムを用いた場合、ワイヤグリッド面から保護フィルムが容易に剥離してしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ワイヤグリッドなどの凹凸構造を持つ成形体と固定フィルムとで構成される積層体の成型体の凹凸構造面の損傷や汚染を防止可能であると共に、固定フィルムが成型体から剥離することを防止でき、しかも固定フィルムを剥離した場合でも、凹凸構造に起因する光学特性を損なうことがない固定フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、光学特性を示す凹凸構造を持つ成型体の表面に適切な粘着特性を有する固定フィルムを用いることにより上記課題を全て解決できることを見出し、本発明をするに至った。
【0010】
すなわち、本発明の固定フィルムは、基材と、前記基材を成型体に接着する易剥離性の粘着層と、を具備する固定フィルムであって、80℃、24時間加熱後の前記基材と前記成型体との90度剥離力が0.03N/25mm〜0.50N/25mmであり、前記成型体の固定フィルム剥離前後の600nmにおける平行ニコル時の透過率(Imax[%])の低下値が2%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の固定フィルムにおいては、前記基材が、PET、PP、PE及びCOPからなる群から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の固定フィルムにおいては、前記粘着層が、シリコーン樹脂もしくはポリアクリル酸エステル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの粘着材料を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイヤグリッドなどの凹凸構造を持つ成形体と固定フィルムとで構成される積層体の成型体の凹凸構造面の損傷や汚染を防止可能であると共に、固定フィルムが成型体から剥離することを防止でき、しかも固定フィルムを剥離した場合でも、凹凸構造に起因する光学特性を損なうことがない固定フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る積層体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下の説明においては、固定フィルムが用いられる成型体が複数の格子状凸部が並設して構成された凹凸構造を持ち、格子状凸部上に金属ワイヤが形成されてなるワイヤグリッド偏光板である場合について説明するが、固定フィルムが用いられる成型体は凹凸構造を持つ偏光分離能を有する材料であれば特に限定されない。また、固定フィルムの厚さは、所謂フィルムとしての厚みのものに制限されず、シートとしての厚みを有するものであってもよい。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る積層体の一例を示す概略断面図である。図1に示す積層体は、微細な凹凸構造11a(一方向に延在した凸部を持つ格子状の凹凸構造)を表面に有する透明な基材11と、この基材11の凹凸構造11a上に設けられた金属ワイヤ12とを備えるワイヤグリッド偏光板1(成型体)と、ワイヤグリッド偏光板1に接触する易剥離性の粘着層22及び基材21を備える固定フィルム2(保護フィルム)と、から構成されている。尚、図1においては、ワイヤグリッド偏光板1上に固定フィルム2が接触されている形で描かれているが、固定フィルム2が金属ワイヤ12の凹部に進入する形態の接触方法を採ることも可能である。
【0017】
凹凸構造11aは、高さが0.01μm〜10μmの範囲であり、少なくとも1方向のピッチが0.01μm〜10μmの範囲である。また、凹凸構造11aは、例えば、光ナノインプリント技術を応用して製造することができる。尚、凹凸構造11aは、凸部を持つ格子状構造だけでなく、凸部がドットで構成されていても良く、凹部が表面ピンホールで構成されていても良い。
【0018】
尚、本実施の形態においては、基材11は、図1に示す基材11は表面に凹凸構造11aが形成された単層構造であるが、基材11は、単層構造に限定されず、複数層構造であっても良い。
【0019】
基材11を単層で構成する場合、基材11を構成する材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)樹脂、COC(シクロオレフィンコポリマー)樹脂などの熱可塑性樹脂や、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、ガラス、セラミックス、上記した諸材料を任意に複合した材料などが挙げられるが、耐熱性、耐水性の面から、PET、PP、PE及びCOPが好ましい。基材11が熱可塑性樹脂であればワイヤグリッド偏光板1に屈曲性や易加工性を付与できるので特に好ましい。また必要に応じて他の材料と複合化するための易接着処理や、静電気を防止するための帯電防止処理や、耐光性を改良するための耐光剤、その他酸化防止剤、可塑剤、難燃剤などの添加剤処理などが施されている材料を用いても良い。
【0020】
凹凸構造11aを設ける方法としては、例えば所望の凹凸構造を反転した凹凸構造を有する型を用いて熱可塑性樹脂に凹凸構造を熱転写する方法や、延伸加工が可能な熱可塑性樹脂によりピッチの大きな反転型を用いて熱転写した後に、延伸加工を施すことにより所望のピッチに縮小した凹凸構造11aを設ける方法などが挙げられる。なお、熱可塑性樹脂基材の延伸については、本出願人の特開2006−224659号公報に記載されているので、この内容はすべてここに含めておく。また例えば、ガラス基板などに凹凸構造11aを設ける場合には、例えばフォトリソグラフィー、エッチングなどの通常のパターニング方法などが挙げられる。
【0021】
また、基材11は、例えば、凹凸構造11aを有する層のほかに、ベース基材が設けられた複数層構造であっても良い。この場合、ベース基材の材料としては、それぞれPET樹脂、PMMA樹脂、PC樹脂、PS樹脂、PE樹脂、PP樹脂、COP樹脂、またはCOC樹脂などの熱可塑性樹脂や、TAC樹脂、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、ガラス、セラミックス、上記した諸材料を任意に複合した材料などが挙げられる。ベース基材の材料が熱可塑性樹脂であればワイヤグリッド偏光板1に屈曲性や易加工性を付与できるので特に好ましい。凹凸構造11aを有する層の材料としては、凹凸構造11aの成形性の面からアクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。アクリル系紫外線硬化型樹脂としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ヘキサメチレンジアクリレート(HDDA)、ラウリルアクリレートなどの組成物が挙げられる。
【0022】
紫外線硬化型樹脂を用いて凹凸構造11aを設ける例としては、例えば、ベース基材を構成する材料の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、所望の凹凸構造を反転した凹凸構造を有する型に押し当てながら紫外線で硬化して、型の凹凸構造を紫外線硬化型樹脂に転写してベース基材上に凹凸構造11aを有する層を設ける方法が挙げられる。また例えば、ベース基材の上に金属薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィー、エッチングなどの通常のパターニング方法により(凹凸構造11aを設けることなく)直接金属ワイヤ12を形成する方法なども挙げられる。
【0023】
凹凸構造11aの格子状凸部の高さは0.01μm〜10μmであることが好ましく、強度面からは格子状凸部間のピッチに対して0.5倍〜1.5倍の高さ、特に0.8倍〜1.5倍の高さであることがより好ましい。凹凸構造11aの上に金属ワイヤ12を設けた場合には、(格子状凸部+金属ワイヤ12)の高さが格子状凸部間のピッチに対して0.5〜1.5倍の高さ、特に0.8倍〜1.5倍の高さであることが強度面及び、偏光性能の面からより好ましい。
【0024】
凹凸構造11aの格子状凸部のピッチは、テラヘルツ領域の偏光特性を考慮した場合、10μm以下が好ましく、近赤外光領域の偏光特性を考慮した場合、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.25μm以下がさらに好ましい。また可視光領域の広帯域にわたる偏光特性を考慮した場合、0.15μm以下であれば好適に用いられる。一方、加工の容易さの面では0.01μm以上であることが好ましい。上記したようなピッチの大きさは製造条件を調整することにより制御することができる。
【0025】
また、凹凸構造11a上に誘電体層を設けてもよい。特に、基材11として樹脂基材を用いる場合には、誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層が凹凸構造11aの格子状凸部の側面を覆うように密着形成することによって、金属ワイヤ12を強固に格子状凸部上に立設することができるので、金属ワイヤ12を厚く設けてワイヤ全体(格子状凸部+金属ワイヤ12)の高さを高くしても、ワイヤの外力に対する強度を高く保つことが可能となる。
【0026】
誘電体層としては、例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料は、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明であることが好ましい。
【0027】
金属ワイヤ12を構成する金属としては、光の反射率が高い素材が好ましく、アルミニウム、銀などを挙げることができる。金属ワイヤ12の幅は、偏光度、透過率などを考慮すると、格子状凸部間のピッチの35%〜60%であることが好ましい。ワイヤの高さと幅の比(アスペクト比)としては2〜5が好ましく、特に2〜3.5が好ましい。ワイヤの高さは可視光領域の偏光特性を考慮した場合には、120nm〜220nmがさらに好ましく、140nm〜200nmであることが最も好ましい。なお、金属ワイヤ12を形成する方法としては、金属ワイヤ12を構成する材料と基材11を構成する材料とを考慮して適宜選択する。例えば、真空蒸着法などを用いることができる。
【0028】
格子状凸部や、複数の格子状凸部によって形成される微細凹凸格子の凹部の断面形状に制限はない。これらの断面形状は、例えば台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状であってもよい。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。
【0029】
固定フィルム2の粘着層22には、ワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2の基材21とを結合して積層体をなし、該積層体は搬送や後加工に耐えうる程度の密着力を有するものが用いられる。また、粘着層22は、積層体を管理された適切な温度条件で保管(搬送、後加工の意味も包含)することにより、ワイヤグリッド偏光板1を固定フィルム2から剥がして使用する際には、固定フィルム2自体に起因するワイヤグリッド偏光板1の性能の低下を招かないものが用いられる。ここで、「固定フィルム2自体に起因するワイヤグリッド偏光板1の性能の低下」とは、具体的には、次の(a)〜(d)が挙げられる。(a)固定フィルム2の粘着層22に含有される粘着成分がワイヤグリッド偏光板1との貼合面に染み出して、固定フィルム2を取り除いた後もワイヤグリッド偏光板1表面に残存し、ワイヤグリッド偏光板1の性能を低下させる現象、(b)積層体中の密着力が過剰であるために、(あるいは積層体の保管中に密着力が経時的に増大したために)ワイヤグリッド偏光板1を固定フィルム2から剥がして使用する際に粘着層22が凝集破壊して、ワイヤグリッド偏光板1表面上の視認できる程度の大きさの付着残留物になる現象、(c)(b)と同様に積層体の密着力が過剰であるためにワイヤグリッド偏光板1を固定フィルム2から剥がして使用する際に金属ワイヤ12を損傷したり、ワイヤグリット偏光板1自体が塑性変形(折れ皺、割れなど)したりする現象、(d)固定フィルム2の粘着層22に含有される酸性成分などにより金属ワイヤ12が腐食、劣化する現象などが挙げられる。
【0030】
本実施の形態に係る積層体において、ワイヤグリット偏光板1と固定フィルム2との密着力は、搬送や後加工に耐えうる程度の確実に固定に十分な力であると共に、ワイヤグリット偏光板1を固定フィルム2から剥がす際には、上記(b)や(c)の現象を引き起こすことがない程度の力であることが望ましい。具体的には、剥離速度1000mm/分での90度剥離法による剥離力が0.03N/25mm〜0.50N/25mmの範囲である。この範囲内において、ワイヤグリット偏光板1と固定フィルム2との接触面積が大きい大面積の積層体の場合には、ワイヤグリット偏光板1と固定フィルム2を剥離する際の容易さの面から単位面積当たりの剥離力は小さい方が好ましく、他方小面積の積層体の場合には、ワイヤグリット偏光板1と固定フィルム2の意図せぬ剥離を防止する面から単位面積当たりの剥離力は大きい方が好ましい。
【0031】
また後加工としてハーフカット加工などを施す場合にも、抜き部品の面積や加工条件に応じて剥離力を適宜選択できる。より好ましい剥離力は0.03N/25mm〜0.40N/25mmの範囲である。
【0032】
本実施の形態においては、固定フィルム2を接着する前のワイヤグリット偏光板1(以下、ワイヤグリット偏光板1(A)ともいう)の偏光度と固定フィルム2をワイヤグリット偏光板1と接着し、80度、24時間加熱後に固定フィルム2を剥離したワイヤグリット偏光板1(以下、ワイヤグリット偏光板1(B)ともいう)の偏光度とを比較した場合における偏光度の低下値が0.1%以下の固定フィルム2が用いられる。このような固定フィルム2を用いることにより、例えば、ワイヤグリット偏光板1の表面を固定フィルム2によって保護した状態で、搬送、保管した後、ワイヤグリット偏光板1の表面から固定フィルム2を剥離してもワイヤグリット偏光板1の偏光板としての性能を維持できる。
【0033】
また、本実施の形態においては、ワイヤグリット偏光板1(A)の偏光度に対するワイヤグリット偏光板1(B)の偏光度の低下値がより小さいことが望ましい。偏光度の低下値は、好ましくは0.05%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。
【0034】
また、本実施の形態においては、ワイヤグリッド偏光板1に固定フィルム2を貼合し、80℃で加熱後24時間経過させる前のワイヤグリッド偏光板1(A)、及びワイヤグリッド偏光板1(A)を80℃で加熱後24時間経過させた後のワイヤグリッド偏光板1(B)について、ワイヤグリッド偏光板1(A)の600nmにおける平行ニコル時の透過率に対するワイヤグリッド偏光板1(B)の600nmにおける平行ニコル時の透過率の低下値が2%以下であることが好ましい。光の透過率の低下値が2%以下であれば、ワイヤグリッド偏光板1の偏光板としての性能を維持することができる。より好ましくは、1.5%以下であり、さらに好ましくは、1%以下である。
【0035】
このように、ワイヤグリッド偏光板1(A)及びワイヤグリッド偏光板1(B)の偏光度の低下値と透過率の低下値を測定することにより、ワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2との接着性を最適化することができる。偏光度の低下値及び、透過率の低下値が小さければ、粘着層22のワイヤグリッド偏光板1の表面への付着・残存、または成型体の劣化がなく、固定フィルム2によるワイヤグリッド偏光板1の表面の保護の前後でのワイヤグリッド偏光板1の偏光板としての性能が維持されていることが確認できる。本実施の形態においては、剥離力と偏光度の低下値及び/又は透過率の低下値とを測定し、使用条件に応じた固定フィルム2を設定範囲内で選択することにより、ワイヤグリッド偏光板1の性能を維持した状態で、ワイヤグリッド偏光板1の表面を確実に保護することができる。
【0036】
また、粘着層22は、比較的低分子量で流動性を有する粘着成分の含有量が小さいものを用いることが好ましい。この場合、粘着成分がワイヤグリッドとの貼合面に染み出す影響が少なく、上記(a)や(d)の現象が起こり難いためと推測される。同時に積層体の密着力を適度に調整したり、密着力の経時的な増大を抑制することが容易になるために上記(b)や(c)の現象も起こり難いためと推測される。
【0037】
固定フィルム2の粘着層22の材料としては、低流動性ゴム系弾性材料が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸エステルを主成分とするポリアクリル酸エステル系粘着剤、シリコーン樹脂、架橋したシリコーンゴム(ポリオルガノシロキサン)、天然ゴム、ポリイソブチレンなどが挙げられる。本実施の形態に係る固定フィルム2は、特に粘着層22に低分子量の高流動成分の含有量が少ないことが好ましい。中でも、シリコーン樹脂またはポリアクリル酸エステル系樹脂であることが好ましい。このようなゴム系材料に、効果を損なわない質的、量的範囲内で、架橋剤、粘着性付与剤、オイル、ガラス転移温度シフト剤などの添加剤を付与しても良い。粘着層22にシリコーン樹脂成分を含有することにより、耐水性や、対候性など、所望の特性を発現することができる。さらに、シリコーン樹脂成分上の置換基を種々選択することにより、これらの耐水性、対候性などの特性を任意に調整することができる。なお、基材21中のシリコーン樹脂の含有量については、特に制限されない。
【0038】
また、粘着層22の材料としては、粘着層22の材料中のカルボン酸の含有量が3質量%以下である材料を用いることが好ましい。ここでカルボン酸の含有量とは、粘着層22の材料の総質量に対する材料中のカルボキシル基の総質量の百分率を意味する。粘着層22の材料中のカルボン酸の含有量が3質量%以下であれば、ワイヤグリッド偏光板1(A)とワイヤグリッド偏光板1(B)の偏光度の低下及び/又は光の透過率の低下を低減することができる。粘着層22に用いる材料中のカルボン酸の含有量は、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
固定フィルム2の基材21は、ワイヤグリッド偏光板1の表面の微細な凹凸構造(金属ワイヤ12を包含しうる)を保護するために十分な剛性を有するものが用いられる。また基材21は、透明なもの、或いは識別可能なように着色などされたもの、フィッシュアイなどの欠点やムラの少ないもの、光学歪みの少ないものなどから適宜選択して用いることができる。このような基材21の材料としては、PET樹脂、PMMA樹脂、PC樹脂、PS樹脂、PE樹脂、PP樹脂、COP樹脂、COC樹脂などの熱可塑性樹脂やTAC樹脂や、紫外線硬化樹脂や、熱硬化樹脂や、ゴムなどが挙げられ、その他にも種々の材料同士の複合化技術や、添加剤技術や、帯電防止技術、易接着処理技術などといった、公知の様々な固定フィルム2に採用されている基材21の材料や技術を使用できる。
【0040】
固定フィルム2の基材21の樹脂としては、耐熱性、耐水性の面から、上記PET樹脂、PE樹脂、PP樹脂及びCOP樹脂からなる群から選ばれる材料のうち、少なくとも1つの樹脂を含有することが好ましい。
【0041】
本実施の形態においては、上記樹脂材料をワイヤグリッド偏光板1、固定フィルム2及び粘着層22の材料と使用状況に応じて任意に調整することにより、ワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2との接着性を調整することができる。例えば、低温の環境下で使用する場合などは、ガラス転移点の低いポリアクリル酸エステル樹脂などを用いることにより、確実にワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2とを接着することができる。また、高温環境下で使用する場合には、シリコーン樹脂などを用いることにより、ワイヤグリッド偏光板1への糊残りや汚染を防止できる。このように、本実施の形態においては、使用環境に応じて固定フィルム2の材料を選択し、その固定フィルム2の材料に対応した粘着層22の材料を選択することにより、ワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2とを確実に接着することができると共に、ワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2とを剥離する際には、ワイヤグリッド偏光板1の偏光度及び透過度を低下させることなく確実にワイヤグリッド偏光板1と固定フィルム2とを剥離することができる。
【0042】
また、積層体を構成するワイヤグリッド偏光板1は、残留モノマー、可塑剤、離型剤の量が、ワイヤグリッド偏光板1全体の重量の10重量%以下であることが好ましい。
【0043】
基材11を単層で構成する場合、残留モノマーの量は原料樹脂の純度に関わり、紫外線硬化型樹脂を用いて凹凸構造11aを設ける場合には、残留モノマーの量は原料樹脂の純度や反応率(生産性)に関わり、可塑剤の量は基材11を単層で延伸する加工によりピッチを縮小した凹凸構造11aを製造する場合の加工性や、ワイヤグリッド偏光板1を製造した後での曲げ加工性の確保に関わり、離型剤の量は反転型によって凹凸構造11aを転写する際の高生産性の確保に、それぞれ関わる成分である。本実施の形態に係る積層体において、これらの成分はワイヤグリッド偏光板1からブリードアウトして、固定フィルム2から移行した成分とともに格子状凸部間やワイヤ間に浸入して光学特性を損なったり、積層体の密着力を増大させたりする問題がある。
【0044】
本実施の形態に係る積層体においては、ワイヤグリッド偏光板1を溶剤抽出することによって抽出されるような成分の量を最小レベルに調整しつつワイヤグリッド偏光板1の高生産性、延伸加工性、曲げ加工性などにも優れるように、原料樹脂の組成面で対策することが好ましく、例えば原料樹脂の高純度化や高反応率化や、化学結合で固定されて抽出されることのない可塑成分や離型成分を導入する手段が好ましい。
【0045】
このような材料を用いることにより、これらの成分が格子状凸部間やワイヤ間に浸入して光学特性を損なったり、積層体の密着力を増大させたりすることを防止できるとともに、生産性、延伸加工性、曲げ加工性などにも優れたワイヤグリッド偏光板1を製造できる。
【0046】
上記構成の積層体を構成する固定フィルム2及びワイヤグリッド偏光板1は、比較的低分子量の粘着成分の量や、残留モノマー、可塑剤、離型剤などの含有量が最小であるので、これらのブリードアウトによる光学特性の低下や、積層体の密着力の増大を防止することができる。また、この積層体は、高生産性であり、曲げ加工性にも優れるものである。
【0047】
次に、上記構成の積層体を80℃以下で保管する方法について説明する。
積層体は、上記した固定フィルム2とワイヤグリッド偏光板1(成型体)を貼合してなる積層体を、80℃以下に管理された温度条件で保管(搬送、後加工の意味も包含)することによって、ワイヤグリッド偏光板1を固定フィルム2から剥がして使用する際には、固定フィルム2自体に起因するワイヤグリッド偏光板1の性能の低下がほとんど無く、しかも積層体としては搬送や後加工にも耐えうる程度の密着力を確保できる。
【0048】
また例えば、積層体を後加工するための初期密着力を確保する目的で比較的高温(30℃〜80℃)で0.01時間〜168時間仮保管(後加工)した後、後加工された製品を長期間貯蔵するため、比較的低温に保管温度を変更するなどの温度操作を行うことも好ましい。
【0049】
次に、格子状凸部を有する基材11を得る方法について説明する。本実施の形態に係る積層体においては、格子状凸部を有する基材11を得る方法に特に限定はないが、格子状凸部を有する基材11を得る工程の例について説明する。
【0050】
はじめに表面に100nm〜100μmピッチの凹凸格子を有する型(スタンパ)を準備する。このスタンパは、ガラス基板上にレジスト材料をスピンコートにより塗布してレジスト層を形成し、そのレジスト層に対して干渉露光法を用いて露光を行い、レジスト層を現像する。これにより100nm〜100μmピッチの凹凸格子を有するレジスト層が得られる。次いで、レジスト層上にニッケルや金をスパッタリングしてレジスト層を導電化する。更に、スパッタリングした金属上にニッケルの電気メッキを行ってニッケル板を形成する。最後に、ニッケル板をガラス板から剥離し、ニッケル板からレジスト層を除去することにより、表面に100nm〜100μmピッチの凹凸格子を有するスタンパを作製することができる。なお、スタンパの作製方法としては、上記方法に限定されず、他の方法を用いても良い。熱可塑性樹脂にスタンパ押圧し、格子状凸部を転写することで、格子状凸部を有する基材11を得ることができる。
【0051】
または基材11の表面に格子状凸部を有する構造を形成する生産性を考慮すると、紫外線硬化性樹脂をマスター型に塗布した後、紫外線を照射して硬化させたあとで離型し転写する方法、あるいは熱硬化性樹脂をマスター型に塗布した後、加熱硬化させて離型し転写する方法も好ましく用いられる。
【0052】
次に、格子状凹凸構造を有する基材11に誘電体層を形成する工程について説明する。図1に示すように、誘電体で基材11の格子状凸部及びその側面の少なくとも一部を被覆し、誘電体層を形成する。例えば、酸化珪素をスパッタリング法により厚さ2nm〜200nmで樹脂基材の格子状凸部及びその側面の少なくとも一部に被覆すればよい。このとき、誘電体層は、格子状凸部の側面や格子状凸部間の凹部に比べ、格子状凸部の凸部の上に厚く形成される。誘電体層の形成においては、格子状凸部の上部の幅が下部よりも広いアンダーカット形状のような形状に補正されることが好ましい。これにより、金属ワイヤ12を効率良く誘電体層上に形成することができる。このような形状補正の方法としては、逆スパッタリング法などを用いることができる。
【0053】
次に、誘電体層上に金属を積層する工程について説明する。図1に示すように、格子状凸部を有する樹脂基材11の表面上に被覆した誘電体層上に金属を積層する。例えば、Alを真空蒸着法により平均厚みが120nm〜220nmになるように積層すればよい。このとき、Alは、誘電体で被覆された格子状凸部の側面や格子状凸部間の凹部に比べ、主に格子状凸部の上に選択積層される。また、斜め積層法を用いて、誘電体で被覆された格子状凸部間の凹部や凸部の片側側面の領域に金属を堆積させないようにしても良い。この斜め積層法においては、特に格子状凸部間の領域の深さを考慮し、この部分に付着するAl量を減らし、エッチングを容易にすることを考慮すると、格子状凸部の格子の長手方向と垂直に交わる平面内で、基材面の法線とのなす角度が30°以下(例えば、10°〜20°)の方向から金属を積層して金属ワイヤ12を形成することが好ましい。
【0054】
次に、微細凹凸格子に付着した不要金属の除去工程について説明する。必要に応じて、例えば酸又はアルカリのエッチャントを用いて湿式エッチングを行う。格子状凸部間の凹部領域のAlなどの付着物を除去したり、金属ワイヤ12の凸部同士の接触を解消したり、金属ワイヤ12の断面形状を前記適正範囲に修正することができる。
【0055】
このワイヤグリッド偏光板1は、基材11と金属ワイヤ12との間に、これらと密着性の高い誘電体層を設けることで基材11と金属ワイヤ12を強固に結合できるため、金属ワイヤ12の高さを比較的高くすることができる。この結果、基材11上に形成された非常に微細なピッチを持つ金属ワイヤグリッドにより、被偏光光の領域である可視光領域のほぼ全領域にわたって99.9%以上の偏光度を発揮することができる。
【0056】
さらに、このようなワイヤグリッド偏光板1の製造方法によれば、基材11上に格子状凸部を転写し、その上に誘電体層を被覆及び金属ワイヤ12を積層するという、フォトリソグラフィーを用いて製作する方法に比べ、シンプルな工程で作製可能であることから、その単位寸法が100cm以上である比較的大きいワイヤグリッド偏光板1を得ることができる。この場合において、それぞれの金属ワイヤ12が実質的に約10cm以上の長さを有し、金属ワイヤ12の幅方向に6×10本/cm以上等ピッチで光学的にほぼ平行に配列されていることが好ましい。単位寸法が大きいワイヤグリッド偏光板1を得られることで、大画面のディスプレイに使用する場合においても接合部分の数を少なくすることができる。なお、ワイヤグリッド偏光板1を接合する場合、接合部分の接合線を100nm〜100μmの線幅で、光を透過しない構造とすることが好ましい。
【0057】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。尚、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
(格子状凸部の形成)
まず、本出願人の特開2006−224659号公報に記載された方法を用いて、ピッチが230nmで、微細凹凸格子の高さが350nmである微細凹凸格子から、表面の微細凹凸格子のピッチと高さが139nm/161nmで、厚さ0.3mm、縦300mm、横180mmのニッケルスタンパ(スタンパ1)を作製した。
【0059】
・紫外線硬化樹脂を用いた格子状凸部転写フィルムの作製
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を20重量%、ヘキサメチレンジアクリレート(HDDA)を47重量%、ラウリルアクリレートを30重量%、ダロキュア1173(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を3重量%配合し、異物をろ過して光硬化性樹脂組成物(基材11)を作成した。
【0060】
基材11を厚さ100μmのPETフィルムに10μmの厚みで塗布し、表面にスタンパを押し付けて、PETフィルム側から1J/cmの光量で紫外光照射して硬化させて格子状凸部転写フィルムを作製した。
【0061】
(ワイヤグリッド偏光板の作製)
・真空蒸着法を用いた金属の蒸着
得られた紫外線硬化樹脂格子状凸部転写フィルムに、電子ビーム真空蒸着法(EB蒸着法)を用いて金属を被着した。本実施例では、金属としてアルミニウム(Al)を用い、真空度2.4×10−3Pa、蒸着速度4.2nm/s、常温下においてアルミニウムを蒸着した。
【0062】
次に、金属ワイヤ層を有する格子状凸部転写フィルムを作製した。この格子状凸部転写フィルムの大きさは、縦300mm、横180mmであった。格子状凸部転写フィルムの断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡にて観察したところ、格子状凸部のピッチ、形成したアルミニウムの高さ、及び幅はそれぞれ、140nm/161nm/62nm、140nm/132nm/54nmであった。以上のように、実施例のワイヤグリッド偏光板(11A(成形体))を作製した。
【0063】
(積層体の作製)
得られたワイヤグリッド偏光板(11A)の上に、表1に示す厚さ100nmの固定フィルム2を、25℃にて貼合させて積層体31を作製した。
【0064】
(90度剥離法による剥離力測定)
積層体31について、幅25mm、長さ100mmに裁断したものを、JIS Z1528に準拠した、粘着テープ90度剥離試験治具を用いて、引っ張り試験機にて剥離速度1000mm/分での剥離力を測定した結果、剥離力は、0.24N/25mmであった。
【0065】
(分光光度計による偏光性能評価)
固定フィルム2と密着させる前のワイヤグリッド偏光板(11A)と、固定フィルム2を貼合させた後、80℃の熱風乾燥機中で24時間加熱した積層体31から固定フィルム2を剥離した後のワイヤグリッド偏光板(11B)について分光光度計を用い、測定波長域を600nmとし、偏光度及び平行ニコル時の透過率Imax[%]を測定した。その結果について表1に示す。
【0066】
(溶媒抽出分の測定)
ワイヤグリッド偏光板1の表面の汚染を測定するため、固定フィルム2を100cm採取したものを有機溶剤に1時間浸漬した抽出液を真空乾燥して抽出成分量を評価した。その結果、抽出成分量は少量(30mg以下)であった。結果を表1に示す。
【0067】
積層体31のワイヤグリッド偏光板1(成形体)は、固定フィルム2を密着させた前後で、可視光領域のほぼ全領域にわたって同程度の優れた偏光度及び透過率を示した。またこの積層体31をカッターナイフで切断した後で固定フィルム2を剥離して、ワイヤグリッド偏光板1の切断部とその周辺を目視外観評価したところ、いずれの箇所にも粘着層の付着などの異常は何ら認められなかった。その結果を表1に示す。
【0068】
このように、積層体31は固定フィルム2によってワイヤグリッド偏光板1の表面を周辺環境からの汚染や、取扱い時の擦れや切断加工などの外力から保護できる。また積層体31の保管温度が80℃を越えない場合には、固定フィルム2からの悪影響たとえば粘着剤によるワイヤグリッド偏光板1の性能の低下や、固定フィルム2を剥離する際のワイヤグリッド偏光板1の表面の損傷や移行物質による汚染もほとんどないことがわかる。
【0069】
(実施例2)
表1に示す固定フィルム2を使用した以外、実施例1で作製した積層体31と同じ操作によって積層体を作製した(積層体32)。積層体32についても、実施例1と同様に、剥離力、透過率、偏光性能、目視外観、抽出成分について評価した。結果を表1にまとめて示した。積層体32についても積層体12の保管温度が80℃を越えない場合には、固定フィルム2からの悪影響はほとんどなく、ワイヤグリッド偏光板1の性能を周辺環境や外力から保護できることがわかる。
【0070】
(比較例1〜比較例4)
表1に示す固定フィルム2を使用した以外、実施例1で作製した積層体と同じ操作によって積層体を作製した(比較例1から順に、積層体33〜積層体36とした)。固定フィルム2の厚みは、全て100nmとした。
【0071】
これら積層体33〜積層体36についても、実施例1と同様に剥離力、透過率、偏光性能、目視外観、抽出成分について評価した。結果を表1にまとめて示した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示すように、ポリアクリル酸エステル系粘着剤を用いた実施例1は、固定フィルム2を剥離した際、ワイヤグリッド偏光板1の表面を汚染することなく固定フィルム2を剥離することができる。また、同じポリアクリル酸エステル系粘着剤を用いた比較例2に示すように、ポリアクリル酸エステル系粘着剤の溶媒抽出分が増えた場合、微量な添加剤、低分子量成分などがワイヤグリッド偏光板1の表面を汚染することにより、透過率の低下値が増大する。
【0074】
また、実施例2に示すように、シリコーン系粘着剤を用いた場合も実施例1と同様に、ワイヤグリッド偏光板1の表面を汚染することなく固定フィルム2を剥離できることを示している。また、比較例1に示すように、ポリアクリル酸エステル系粘着剤と同様に、シリコーン系粘着剤も溶媒抽出成分が増えた場合、微量な添加剤、低分子量成分などがワイヤグリッド偏光板1の表面を汚染することにより、透過率の低下値が増大することを示している。また、比較例3、比較例4に示すように、ゴム系の粘着剤は、剥離力が増大し、固定フィルム2としての使用に適さないことを示している。
【0075】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における寸法、材質などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ワイヤグリッド偏光板(成形体)
2 固定フィルム
11 基材
11a 凹凸構造
12 金属ワイヤ
21 基材
22 粘着層
31〜36 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材を成型体に接着する易剥離性の粘着層と、を具備する固定フィルムであって、80℃、24時間加熱後の前記基材と前記成型体との90度剥離力が0.03N/25mm〜0.50N/25mmであり、前記成型体の固定フィルム剥離前後の600nmにおける平行ニコル時の透過率(Imax[%])の低下値が2%以下であることを特徴とする固定フィルム。
【請求項2】
前記基材が、PET、PP、PE及びCOPからなる群から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の固定フィルム。
【請求項3】
前記粘着層が、シリコーン樹脂もしくはポリアクリル酸エステル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの粘着材料を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固定フィルム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−33869(P2011−33869A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180560(P2009−180560)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】