説明

固定用具

【課題】 内部に入力装置を備えており、この入力装置の配置を使用者状況に応じて変更することのできるシートベルトなどの固定用具を提供する。
【解決手段】 スイッチ2a、2b、2c、2d、2eのうち折曲げ部位1a1、1a2と基準点1c間に位置しているスイッチからの入力だけを取り出すように電気的に補正する。本発明を用いると、複数個のスイッチ(入力手段)を、常にシートベルトの折曲げ部1a1又は折曲げ部位1a2と基準点1cの間に位置させることができる。従って、動作可能なスイッチ(入力手段)を使用者にとって最操作しやすい位置に随時設定することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に入力装置を備えており、この入力装置の配置を使用者の状況に応じて変更することのできるシートベルトなどの固定用具に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物の座席に設けられたシートベルトなどの固定用具にマイクロホンなどの音声入力手段を設けることは特許文献1(特開2001−71862号公報)や特許文献2(特開2002−137697号公報)に記載されている。
【特許文献1】特開2001−71862号公報
【特許文献2】特開2002−137697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これまでシートベルトに機器操作用の複数個の入力手段を設けた固定用具は提案されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の固定用具は、座席に身体や物品を固定する折曲げ可能なシートベルトの内部に前記シートベルトの長さ方向に並べられた複数個の入力手段が設けられており、前記複数個の入力手段のうち動作可能なものが前記シートベルトの折曲げ部位と前記折曲げ部位から所定距離離れた基準点の間に配置されていることを特徴とするものである。
【0005】
前記シートベルトの折曲げ部位は使用者の使用状況や体格によって変化する。本発明によれば、前記複数個の入力手段を、常に前記シートベルトの折曲げ部位と前記折曲げ部位から所定距離離れた基準点の間に位置させることができる。従って、前記入力手段を使用者にとって最も操作しやすい位置に随時設定することが可能になる。
【0006】
本発明では、前記シートベルトの内部に1対の抵抗体を、前記シートベルトの厚さ方向に間隔をおいて配置し、これらの抵抗体を前記折曲げ部位において接触導通させることによって、前記折曲げ部位と前記基準点間の距離を推定することができる。
【0007】
例えば、前記1対の抵抗体を前記折曲げ部位において接触導通させ、前記1対の抵抗体の端部間の抵抗値を測定することによって、前記折曲げ部位から前記抵抗体の端部までの距離を推定することができる。そして、抵抗体の端部またはこれらの端部から所定距離離れた位置を前記基準点とすれば、前記折曲げ部位と前記基準点間の距離を推定することができる。
【0008】
前記折曲げ部位と前記基準点間の距離を推定することができると、前記折曲げ部位と前記基準点の間に、前記複数個の入力手段が配置されるような電気的補正を容易に行うことができる。
【0009】
本発明では、前記入力手段は、例えば、前記1対の抵抗体を押圧接触させる押圧型スイッチである。
【0010】
あるいは、前記入力手段は前記1対の抵抗体とは別体の押圧型スイッチであってもよい。
【0011】
前記入力手段は複数接点のスイッチであることが好ましい。
この構成により、スイッチの操作性が向上し、機器に目的の操作を確実に命じることができる。
【0012】
本発明では、前記折曲げ部位から前記基準点間の距離に基づいて、シートベルトの高さを自動調節することができる。
【0013】
また、本発明では、前記折曲げ部位から前記基準点間の距離に基づいて、シートベルトの張力を自動調節することができる。
【発明の効果】
【0014】
シートベルトの折曲げ部位は使用者の使用状況や体格によって変化する。本発明によれば、前記複数個の入力手段を、常に前記シートベルトの折曲げ部位と前記折曲げ部位から所定距離離れた基準点の間に位置させることができる。従って、前記入力手段を使用者にとって最も操作しやすい位置に随時設定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1(a)(b)は本発明の固定用具の実施の形態のシートベルトを説明するための模式図である。このシートベルトは自動車などの座席に備え付けられているものであり、搭乗者(シートベルトの装着者)を座席に安全に固定するためのものである。
【0016】
図1(a)と図1(b)は装着者の体格が異なっている状態を示しており、例えば、図1(a)は装着者Aが体格の大きい大人の場合であり、図1(b)は装着者Cが体格の小さな子供である場合を模式的に示している。
【0017】
シートベルト1は装着者の体格に応じて、巻き取り部4から必要な長さだけ引き出せるようになっている。装着者は座席に座った状態で、シートベルト1を上体部の前方に引き回し、固定端部1bをソケットなどに差し込み固定する。
【0018】
シートベルト1の内部には、シートベルト1の長さ方向(図示X方向)に延びる1対の抵抗体がシートベルトの厚さ方向(図示Y方向)に間隔をおいて対向させられている。
図2(a)(b)はシートベルト1の内部に設けられた抵抗体3a及び抵抗体3bを模式的に示した図である。図2(a)は図1(a)に対応し、装着者Aが体格の大きい大人の場合であり、図2(b)は図1(b)に対応し、装着者Cが体格の小さな子供である場合を模式的に示している。
【0019】
抵抗体3a及び抵抗体3bはシートベルトの折曲げ部位1a1又は折曲げ部位1a2で折り曲げられ互いに接触して導通している。
【0020】
図3は図2に示されたシートベルト1をシートベルト1の長さ方向に切断した部分断面図である。なお、図3ではシートベルト1の外装部材の図示を省略している。
【0021】
図3に示されるように、シートベルト1の内部には積層体20が形成されている。積層体20では、抵抗体3aと抵抗体3bが樹脂などからなる絶縁体20eを介して対向しており、抵抗体3aはフレキシブル絶縁体20aに固定され、抵抗体3bはフレキシブル絶縁体20dに固定されている。この積層体20が保持部材21の上部21aと下部21bの間に狭持されている。抵抗体3aと抵抗体3bは100Ω〜100kΩのカーボン又は100Ω〜100kΩのカーボンと0Ω〜1kΩの銀の混合物などによって形成されているものである。
【0022】
図4は抵抗体3a及び抵抗体3bがシートベルト1の折曲げ部位1a1で折り曲げられ互いに接触して導通している状態を示す断面図である。シートベルト1の折曲げ部位1a1において、シートベルトは折曲げリング5によって押圧され、積層体20が撓んで抵抗体3aと抵抗体3bが接点Sにおいて接触している。
【0023】
本実施の形態では、シートベルト1の基準点1cを抵抗体3aの端部3a1の位置に設定した。シートベルトの折曲げ部位は装着者の使用状況や体格によって変化し、これに対応して折曲げ部位から端部3a1までの距離も変化する。
【0024】
例えば体格の大きい装着者Aがシートベルト1を装着するときには、体格の小さい装着者Cよりもシートベルト1の引き出し長さが大きくなる。従って、図1、図2において、体格の大きな装着者Aがシートベルト1を装着したときの折曲げ部位1a1から基準点1c(3a1)までの距離L1は、体格の小さな装着者Cがシートベルト1を装着したときの折曲げ部位1a2から基準点1c(3a1)までの距離L2より短くなる。
【0025】
図1に示されるように、シートベルト1には入力装置2が設けられている。入力装置2はスイッチ(入力手段)2a、2b、2c、2d、2eがシートベルトの長さ方向に間隔をおいて配置されたものである。スイッチ(入力手段)2a、2b、2c、2d、2eはカーオーディオなどの車載用電子機器のリーモート操作に用いられるものである。自動車の後部座席は車載用電子機器の操作部から離れていることが多いので、入力装置2が設けられているシートベルトを自動車の後部座席に設けると特に便利である。
【0026】
図1(a)に示される実施の形態では、シートベルトの折曲げ部位1a1と折曲げ部位1a1から所定距離L1離れた基準点1c(3a1)の間に配置されている、スイッチ2b、2c、2d、2eが動作可能になっている。
【0027】
また、図1(b)に示される実施の形態では、スイッチ(入力手段)2a、2b、2c、2d、2eのうちシートベルトの折曲げ部位1a2と折曲げ部位1a2から所定距離L2離れた基準点1c(3a1)の間に配置されている、スイッチ2a、2b、2c、2d、2eが動作可能になっている。
【0028】
図5を用いてさらに説明する。
図5(a)は非導通状態の抵抗体3a及び抵抗体3bを示す模式図であり、図5(b)は図2(a)及び図1(a)に対応し、装着者が体格の大きい大人の場合の抵抗体3a及び抵抗体3bの導通状態を示す模式図であり、図5(c)は図2(b)及び図1(b)に対応し、装着者が体格の小さな子供である場合の抵抗体3a及び抵抗体3bの導通状態を示す模式図である。
【0029】
図5(b)、(c)において、抵抗体3aの端部3a1と抵抗体3bの端部3b1間の抵抗値を測定することにより、折曲げ部位1a1から基準点1c(3a1)までの距離L1(図5(b))または、折曲げ部位1a2から基準点1c(3a1)までの距離L2(図5(c))を推定することができる。
【0030】
そして、図1(a)及び図5(b)の場合には、折曲げ部位1a1から基準点1c(3a1)までに配置されたスイッチ2b、2c、2d、2eを動作可能とし、図1(b)及び図5(c)の場合には、折曲げ部位1a2から基準点1c(3a1)までに配置されたスイッチ2a、2b、2c、2d、2eを動作可能にしている。
【0031】
スイッチ2a、2b、2c、2d、2eは例えば図2や図3に示される抵抗体3aと抵抗体3bを所定位置で押圧接触させるアナログ式押圧型スイッチである。この場合は抵抗体3aの端部3a1と抵抗体3bの端部3b1間の抵抗値の変化量を検知することにより、スイッチ2a、2b、2c、2d、2eのうちいずれのスイッチが押圧されたかを知ることができる。
【0032】
あるいは、図6に示されるように、スイッチ2a、2b、2c、2d、2eを抵抗体3aと抵抗体3bとは別体のメンブレン型スイッチとして形成してもよい。
【0033】
図6に示されるメンブレン型スイッチでは、導電体30bと導電体30cが樹脂などからなる絶縁体30eを介して対向しており、導電体30bはフレキシブル絶縁体30aに固定され、導電体30cはフレキシブル絶縁体30dに固定されている。この積層体30が保持部材31の上部31aと下部31bの間に狭持されている。保持部材31の上部31aに設けられた窓部31c内に押圧部32が形成されており、押圧部32は保持部材31の上部31aを支点として撓むことができる。押圧部32に押圧力を加えて撓ませると、押圧部32がフレキシブル絶縁体30aと導電体30bを押圧する。すると、フレキシブル絶縁体30aと導電体30bが撓んで、導電体30bと導電体30cが接触して通電する。
【0034】
スイッチ2a、2b、2c、2d、2eは抵抗体の抵抗値の変化量を読み取るアナログ式のスイッチでもよいし、図7に示されるデジタル式押圧型スイッチでもよい。
【0035】
スイッチ2a、2b、2c、2d、2eを抵抗体3aと抵抗体3bとは別体のスイッチとして実装するときには、折曲げ部位1a1、1a2と基準点1c間の距離L1、L2に基づいて、スイッチ2a、2b、2c、2d、2eのうちいずれが折曲げ部位1a1、1a2と基準点1cの間に位置しているかを推定し、折曲げ部位1a1、1a2と基準点1cの間に位置しているスイッチからの入力だけを取り出すように電気的に補正する。
【0036】
本発明を用いると、複数個のスイッチ(入力手段)を、常にシートベルトの折曲げ部位1a1又は折曲げ部位1a2と基準点1cの間に位置させることができる。従って、動作可能なスイッチ(入力手段)を使用者にとって最も操作しやすい位置に随時配置することが可能になる。
【0037】
なお、シートベルトの折曲げ部位1a1又は折曲げ部位1a2と基準点1cの間に位置するスイッチをすべて使用する必要はなく、装着者にとって操作しやすい位置にあるスイッチのみを使用可能にしてもよい。例えば図1(a)では装着者Aの上体部の前面にあるスイッチ2c,2d,2eのみを使用可能にし、図1(b)では装着者Cの上体部の前面にあるスイッチ2b,2c,2dのみを使用可能にするという使い方もできる。
【0038】
また、スイッチ2a、2b、2c、2d、2eは単一接点型のものに限らず、図8の回路図に示されるような複数接点型のものでもよい。複数接点型のスイッチを用いるとスイッチの操作性が向上し、機器に目的の操作を確実に命じることができる。
【0039】
さらに、シートベルト1の折曲げ部位1a1又は1a2から基準点1c間の距離L1またはL2といった情報から装着者A,Cの座高などの体格寸法が推定できる。従って、図9に示されるように、推定された装着者の体格寸法に応じて、シートベルト1の吊り下げリング40を上下させてシートベルト1の高さHを自動調節することができる。また、推定された装着者の体格寸法に応じて、巻き取り部4によってシートベルト1の張力Tを自動調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の固定用具の実施の形態としてシートベルトを示す模式図、図1(a)は装着者の体格が大きい場合、図1(b)は装着者の体格が小さい場合、
【図2】図1に示されたシートベルトの内部の抵抗体を示す模式図、図2(a)は装着者の体格が大きい場合、図2(b)は装着者の体格が小さい場合、
【図3】図1に示されたシートベルトの断面図、
【図4】図1に示されたシートベルトの折曲げ部位付近の断面図、
【図5】シートベルト内部の抵抗体を示す模式図、図5(a)は一対の抵抗体が接触していない状態を示し、図5(b)は装着者の体格が大きい場合の抵抗体の接触導通状態を示し、図5(c)は装着者の体格が小さい場合の抵抗体の接触導通状態を示す、
【図6】本発明の固定用具の実施の形態であるシートベルトに設けられたスイッチの状態を示す断面図、
【図7】本発明の固定用具の実施の形態であるシートベルトに設けられたスイッチの状態を示す模式図、
【図8】本発明の固定用具の実施の形態であるシートベルトに設けられたスイッチの回路図、
【図9】本発明の固定用具の実施の形態であるシートベルトの模式図、
【符号の説明】
【0041】
1 シートベルト
1a1、1a2 折曲げ部位
1c 基準点
2 スイッチ
3a、3b 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に身体や物品を固定する折曲げ可能なシートベルトの内部に前記シートベルトの長さ方向に並べられた複数個の入力手段が設けられており、前記複数個の入力手段のうち動作可能なものが前記シートベルトの折曲げ部位と前記折曲げ部位から所定距離離れた基準点の間に配置されていることを特徴とする固定用具。
【請求項2】
前記シートベルトの内部には1対の抵抗体が前記シートベルトの厚さ方向に間隔をおいて配置され、これらの抵抗体が前記折曲げ部位において接触導通する請求項1記載の固定用具。
【請求項3】
前記1対の抵抗体の端部間の抵抗値を測定することによって、前記端部と前記折曲げ部位間の距離、及び前記端部から所定距離離れた位置にある前記基準点と前記折曲げ部位間の距離を推測する請求項2記載の固定用具。
【請求項4】
前記入力手段は前記1対の抵抗体を押圧接触させる押圧型スイッチである請求項2または3記載の固定用具。
【請求項5】
前記入力手段は前記1対の抵抗体とは別体の押圧型スイッチである請求項2または3記載の固定用具。
【請求項6】
前記入力手段は複数接点のスイッチである請求項1ないし5のいずれかに記載の固定用具。
【請求項7】
前記折曲げ部位から前記基準点間の距離に基づいて、シートベルトの高さを自動調節する請求項1ないし6のいずれかに記載の固定用具。
【請求項8】
前記折曲げ部位から前記基準点間の距離に基づいて、シートベルトの張力を自動調節する請求項1ないし7のいずれかに記載の固定用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−76438(P2006−76438A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262538(P2004−262538)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】