説明

固定砥粒ワイヤの製造方法

【課題】メッキ液中にレベリング剤を添加することなく、砥粒のワイヤ本体への固着強度の向上及び砥粒による切削性能又は切断性能の向上を同時に図り得る固定砥粒ワイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】メッキ液中において電極部材及びワイヤ本体を対向配置させた状態で前記電極部材が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるような正電解パルス電圧を印可し、その後に、前記電極部材が陰極となり且つ前記ワイヤ本体が陽極となるような逆電解パルス電圧を印可する処理を一周期とする反転パルス電圧の印可を繰り返すことで、砥粒群の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出した状態で前記砥粒群を含む前記メッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解メッキによって砥粒をワイヤに固着させる固定砥粒ワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやセラミック等の硬質材料の切断等に用いられる固定砥粒ワイヤの製造方法として、ワイヤ本体の表面に電解メッキによって砥粒を固着させる方法が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記特許文献1には、砥粒を含有するメッキ液が収容されたメッキ槽内において電極板及びワイヤ本体を対向配置させる工程と、前記電極板が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるように電圧を印可させて、前記ワイヤ本体の表面に前記砥粒を含んだ状態のメッキ層を析出させる工程とを含む固定砥粒ワイヤの製造方法において、前記メッキ液中にレベリング剤を含有させることが開示されている。
【0004】
前記特許文献1に記載の製造方法は、砥粒を含有するメッキ液にレベリング剤を含めることにより、砥粒の固着強度を向上させつつ砥粒による切削性能又は切断性能を向上させ得る固定砥粒ワイヤを製造できるとされている。
【0005】
即ち、前記メッキ液中の前記レベリング剤は、陽極として作用する前記電極板に近接する部分、即ち、前記砥粒の頂点近傍に優先的に吸着される。その結果、前記砥粒の頂点近傍におけるメッキ層の成長速度が前記砥粒のうち前記電極板から離間された基端側部分(前記砥粒のうち前記ワイヤ本体に近接する部分)におけるメッキ層の成長速度よりも遅くなる。従って、前記砥粒の基端側部分に比較的厚く析出されるメッキ層によって前記砥粒の固着強度を向上させつつ前記砥粒の頂点近傍のメッキ層を薄くして前記砥粒による切削性能又は切断性能を向上させ得るとされている。
【0006】
しかしながら、前記メッキ液中に前記レベリング剤を加えることで前記砥粒の頂点近傍に析出されるメッキ層の層厚を薄くできる反面、前記砥粒の頂点近傍には前記レベリング剤が吸着されることになるからこのレベリング剤によって前記砥粒による切削性能又は切断性能が悪化するという問題が生じ得る。
【0007】
又、前記特許文献1にも記載されているように、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。従って、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を奏するレベリング剤であっても、これとは異なる大きさ及び形状の砥粒に対して有効にレベリング効果を奏するとは限らない。
【0008】
前記メッキ液中に含有される砥粒群は、それぞれ、固有の大きさ及び形状を有する複数の砥粒を含んでいる。従って、この砥粒群に対してレベリング剤によって効果的なレベリング効果を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4538049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、砥粒群を含有するメッキ液を用いた電解メッキによって砥粒がワイヤ本体に固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、前記メッキ液中にレベリング剤を添加することなく、前記砥粒の前記ワイヤ本体への固着強度の向上及び前記砥粒による切削性能又は切断性能の向上を同時に図り得る固定砥粒ワイヤの製造方法の提供を、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成する為に、砥粒群を含むメッキ液を用いてワイヤ本体にメッキ層を電着させることで前記ワイヤ本体に砥粒が固着されてなる固定砥流ワイヤを製造する方法であって、前記メッキ液中において電極部材及び前記ワイヤ本体を対向配置させた状態で前記電極部材が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるような正電解パルス電圧を印可し、その後に、前記電極部材が陰極となり且つ前記ワイヤ本体が陽極となるような逆電解パルス電圧を印可する処理を一周期とする反転パルス電圧の印可を繰り返すことで、前記砥粒群の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出した状態で前記砥粒群を含む前記メッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる固定砥粒ワイヤの製造方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記正電解パルス電圧の電位差をV(N)とした場合に、前記逆電解パルス電圧の電位差V(R)はV(R)=2〜8×V(N)とされ、前記反転パルス電圧の周期をTとした場合に、前記正電解パルス電圧のパルス幅T(N)はT(N)=0.7〜0.9×Tで且つ前記逆電解パルス電圧のパルス幅T(R)はT(R)=0.05〜0.2×Tとされる。
【0013】
好ましくは、前記反転パルス電圧の周波数は10Hz〜3KHzとされる。
【0014】
前記種々の形態において、前記砥粒は、前記メッキ液に包含されている段階においては前記メッキ液に包含されている金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされているものとされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る固定砥粒ワイヤの製造方法によれば、砥粒群を含むメッキ液中においてワイヤ本体と対向配置された電極部材が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるような正電解パルス電圧を印可し、その後に、前記電極部材が陰極となり且つ前記ワイヤ本体が陽極となるような逆電解パルス電圧を印可する処理を一周期とする反転パルス電圧の印可を繰り返すことで、前記砥粒群の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出した状態で前記砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させるように構成したので、前記砥粒の前記ワイヤ本体への固着強度の向上を図りつつ、前記砥粒による切削性能又は切断性能の向上を図ることができる。
【0016】
特に、前記メッキ液中にレベリング剤を添加すること無く前記効果を得ることができるので、前記レベリング剤に起因する砥粒の切削性能又は切断性能の悪化を招くことが無く、さらに、種々の粒径及び形状の砥粒を含む砥粒群に対して有効に前記効果を奏することができる。
又、ドレッシング処理又は研磨処理によって前記砥粒群の少なくとも一部の砥粒を露出させる場合に比して、砥粒の脱落を有効に防止しつつより多くの砥粒を前記メッキ層から露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法に用いられるメッキ槽の模式図である。
【図2】図2(a)は、従来のメッキ処理によって製造された固定砥粒ワイヤの部分模式断面図である。 図2(b)は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法によって製造された固定砥粒ワイヤの部分模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法において使用される砥粒群の一例の粒径分布図である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における工程模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法におけるメッキ工程で用いられる反転パルス電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る固定砥粒ワイヤの製造方法の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
前記固定砥粒ワイヤは、ダイヤモンド等の砥粒が銅メッキされた炭素鋼等のワイヤ本体に固着されてなるものであり、シリコンやセラミック等の硬質材料の切断又は切削に好適に使用される。
本実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法は、砥粒群を含むメッキ液からなるメッキ層をワイヤ本体に電着させることで前記砥粒群を前記ワイヤ本体に固着させるものである。
【0020】
図1に、本実施の形態に係る製造方法に用いられるメッキ装置の模式図を示す。
前記製造方法は、図1に示すように、砥粒群が含有されたメッキ液10中において電極部材20及びワイヤ本体5を対向配置させた状態で前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるような正電解パルス電圧を印可し、その後に、前記電極部材20が陰極となり且つ前記ワイヤ本体5が陽極となるような逆電解パルス電圧を印可する処理を一周期とする反転パルス電圧の印可を繰り返すことによって、前記砥粒群を形成する砥粒15(下記図2(b)参照)を含んだ状態でメッキ層11(下記図2(b)参照)を前記ワイヤ本体5の表面に析出させるように構成されている。
なお、図1中の符号30は、前記メッキ液10を収容した状態で前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5が対向配置されるメッキ槽である。
又、符号35はメッキ液10のリザーブタンクであり、ポンプ40を介して前記メッキ槽30及び前記リザーブタンク35の間で前記メッキ液10が循環されるようになっている。
【0021】
このように、本実施の形態に係る製造方法によれば、反転パルス電圧の印可を繰り返すことで前記砥粒15を含む前記メッキ層11を前記ワイヤ本体5の表面に析出させており、従って、前記砥粒15の前記ワイヤ本体5への固着強度を向上させつつ、前記砥粒15による切削性能又は切断性能を向上させることができる。
この点に関し、詳述する。
【0022】
通常のメッキ処理においては、前記電極部材20が必ず陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が必ず陰極となるように電圧を印可して、前記ワイヤ本体5の表面にメッキ層11を析出させる。
この場合、前記メッキ層11の析出速度は、陽極として作用する前記電極部材20に近い領域ほど速くなる。
【0023】
従って、前記砥粒15の前記ワイヤ本体5への固着強度を十分に得るような層厚のメッキ層を形成すると、図2(a)に示すように、前記砥粒群における各砥粒15の頂上部分のメッキ層11の層厚が厚くなる。
前記固定砥粒ワイヤにおける切削作用又は切断作用は前記複数の砥粒15によって奏される為、前記複数の砥粒15の頂上部分に層厚の前記メッキ層11が積層されていると、前記砥粒15による切削能力又は切断能力が悪化する。
【0024】
これに対し、本実施の形態に係る前記製造方法においては、反転パルス電圧の印可を繰り返すことで、前記砥粒15を含んだ前記メッキ層11を前記ワイヤ本体5の表面に析出させている。
ここで、前記反転パルス電圧は、前述の通り、前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるような正電解パルス電圧と、前記電極部材20が陰極となり且つ前記ワイヤ本体5が陽極となるような逆電解パルス電圧とを含んでいる。
【0025】
即ち、正電解パルス電圧の印可によって前記ワイヤ本体5に表面に前記砥粒15を含む前記メッキ層11を析出させる一方で、前記逆電解パルス電圧の印可によって前記メッキ層11の剥離を行うようになっている。この際、前記メッキ層11のうち前記電極部材20に近接する部分、即ち、前記複数の砥粒15の頂上部分に積層された部分が優先的に剥離される。
従って、図2(b)に示すように、前記砥粒群を形成する複数の砥粒15の基端側部分は前記メッキ層11によって前記ワイヤ本体5に強固に固着されつつ、前記砥粒群における少なくとも一部の砥粒15の頂上部分を露出させて前記砥粒15による切削能力又は切断能力を向上させることができる。
【0026】
特に、本実施の形態においては、前述の通り、逆電解パルス電圧の印可によって前記砥粒群のうちの少なくとも一部の砥粒15の頂上部分のメッキ層11を剥離させており、前記メッキ液10中にレベリング剤を添加する必要がない。
従って、前記レベリング剤が前記砥粒15に付着することに起因する切削能力又は切断能力の低下を招くことがない。
【0027】
さらに、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。つまり、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を得る為には、それ専用のレベリング剤を用いる必要がある。
しかしながら、前記メッキ液中に含有される砥粒群は、それぞれ固有の大きさ及び形状を有する複数の砥粒15を含んでいる。従って、ある特定のレベリング剤によって、異なる大きさ及び形状の複数の砥粒15を含む砥粒群に対して有効にレベリング効果を得ることは困難である。
【0028】
これに対し、本実施の形態においては、前述の通り、逆電解パルス電圧の印可によって前記砥粒群のうちの少なくとも一部の砥粒15の頂上部分のメッキ層11を剥離させている。従って、大きさ及び形状の異なる複数の砥粒15の固着強度を向上させつつ、これらによる切削性能の向上を有効に図ることができる。
【0029】
又、通常のメッキ処理によって砥粒群を含むメッキ層をワイヤ本体の表面に析出させた後に、ドレッシング処理又は研磨処理によって前記砥粒群の少なくとも一部を露出させることも可能であるが、この方法では、前記砥粒群における20%程度の砥粒しか露出させることができない。
【0030】
この点に関し、前記砥粒群として、レーザー回析散乱法による平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群を用いる場合を例に説明する。
図3に、前記ダイヤモンド粒子群の粒径分布図を示す。
【0031】
図3に示すように、平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群は、粒子径15μmのダイヤモンド粒子を最も多く含むものの、粒子径10μm以下の粒子から粒子径20μm以上の粒子を含んでいる。
【0032】
このような種々の粒子径の粒子を含むダイヤモンド粒子群に対して例えば粒子径15μmの粒子が露出する程度に研磨処理を行ったとすると、粒子径が15μmより大きな粒子にとっては過研磨状態となる。
【0033】
つまり、研磨処理によってダイヤモンド粒子を露出させる場合には、比較的粒子径の大きな粒子が脱落しないように研磨量を設定する必要があり、例えば、粒子群全体の約20%に相当する粒子径17.5μm以上のダイヤモンド粒子しか露出させることができないことになる。
【0034】
これに対し、本実施の形態においては、逆電解パルス電圧の印可によってダイヤモンド粒子の頂上部分のメッキ層を優先的に剥離させるので、ダイヤモンド粒子群のワイヤ本体への固着強度を十分に維持しつつ、平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群のうちの半分以上の粒子、例えば、粒子径約13μm以上のダイヤモンド粒子を露出させることができる。これは粒子群全体の約70%に相当する。
【0035】
ここで、本実施の形態に係る製造方法の具体的な工程について説明する。
図4に、前記製造方法における工程模式図を示す。
【0036】
図4に示すように、サプライ機100から供給される長尺のワイヤ本体は下記各処理槽を通過して巻取り機200によって巻き取られる。
前記ワイヤ本体は、例えば、銅メッキされた炭素鋼とされ、直径は0.1〜0.3mmとされる。
【0037】
前記製造方法は、前述の通り、反転パルス電圧の印可を繰り返すことで前記ワイヤ本体5に複数の砥粒15を含むメッキ層11を析出させるパルスメッキ工程を含むが、このパルスメッキ工程に先だって、好ましくは、前処理工程を含むことができる。
【0038】
前記前処理工程には、図4に示すように、脱脂槽110を用いた脱脂工程及び水洗槽120を用いた水洗工程が含まれる。
又、前記ワイヤ本体5が予めメッキ等によってコーティングされている場合には、前記前処理工程には、さらに、コーティング剥離槽130を用いたコーティング剥離工程が含まれる。
【0039】
さらに、前記前処理工程は、ストライクメッキ槽140におけるストライクメッキ工程を含むことができる。
前記ストライクメッキ工程は、前記メッキ層11の析出に先立って前記ワイヤ本体5の表面に薄いメッキ層を形成するものであり、この薄いメッキ層によって前記砥粒15を含む前記メッキ層11の前記ワイヤ本体への密着性を向上させることができる。
【0040】
前記パルスメッキ工程は、前述の通り、前記砥粒群を含む前記メッキ液10中で前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5を対向配置させた状態で、前記正電解パルス電圧の印可及び前記逆電解パルス電圧の印可を一周期とする反転パルス電圧の印可を繰り返すように構成されている。
【0041】
前記砥粒15としては、例えば、ダイヤモンド粒子を用いることができ、前記メッキ液10には、例えば、スルファミン酸ニッケルを用いることができる。
又、前記電極部材20にはニッケルを用いることができる。
【0042】
好ましくは、前記砥粒群の砥粒15は、前記メッキ液10に包含されている段階においては前記メッキ液10に含まれる金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされているものとされる。
斯かる構成によれば、前記砥粒15と前記メッキ層11との固着強度を向上させることができる。
【0043】
図5に前記反転パルス電圧の波形図を示す。
図5に示すように、好ましくは、正電解パルス電圧の電位差をV(N)とした場合に、逆電解パルス電圧の電位差V(R)はV(R)=2〜8×V(N)とされ、反転パルス電圧の周期をTとした場合に、正電解パルス電圧のパルス幅T(N)はT(N)=0.7〜0.9×Tで且つ逆電解パルス電圧のパルス幅T(R)はT(R)=0.05〜0.2×Tとされる。
【0044】
図示の形態においては、正電解パルス電圧のパルス幅T(N)はT(N)=0.8×Tとされ且つ逆電解パルス電圧のパルス幅T(R)はT(R)=0.1×Tとされており、正電解パルス電圧の印可及び逆電解パルス電圧の印可の間に0.1×Tのインターバルが設けられている。
【0045】
反転パルス電圧の周波数は、好ましくは、10Hz〜3KHzとされる。
【0046】
図4に示すように、前記製造方法は、前記メッキ工程の後に、後処理を含むことができる。
前記後処理には、後メッキ槽150における後メッキ工程と、水洗槽160における水洗工程と、防錆槽170における防錆処理工程とが含まれる。
前記後メッキ工程は、前記砥粒15の固着強度を向上させる為の工程であり、前記メッキ液10が収容された前記後メッキ槽150内において前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5を対向させた状態で、前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるように正電解電圧を印可することによってメッキ層を析出させるように構成される。
なお、前記パルスメッキ工程の後の状態においては、前記砥粒15の頂部が露出されている為(即ち、前記砥粒15の頂部のメッキ層11やコーティングは剥離されている為)、前記後メッキ工程によっては前記砥粒15の露出頂部にメッキ層は析出されない。
【0047】
又、本実施の形態においては、前記ストライクメッキ工程の後に、直ちに前記パルスメッキ工程が行われているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
例えば、前記パルスメッキ工程における正電解パルス電圧及び逆電解パルス電圧の電圧値やパルス幅の設定に応じて、前記ストライクメッキ工程及び前記パルスメッキ工程の間に正電解メッキ工程を含めることも可能である。
即ち、前記パルスメッキ工程の終了段階において前記砥粒群における少なくとも一部の砥粒15の頂部が露出されている限り、前記ストライクメッキ工程及び前記パルスメッキ工程の間に正電解メッキ工程を含めることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
5 ワイヤ本体
10 メッキ液
11 メッキ層
15 砥粒
20 電極部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒群を含むメッキ液を用いてワイヤ本体にメッキ層を電着させることで前記ワイヤ本体に砥粒が固着されてなる固定砥流ワイヤを製造する方法であって、
前記メッキ液中において電極部材及び前記ワイヤ本体を対向配置させた状態で前記電極部材が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるような正電解パルス電圧を印可し、その後に、前記電極部材が陰極となり且つ前記ワイヤ本体が陽極となるような逆電解パルス電圧を印可する処理を一周期とする反転パルス電圧の印可を繰り返すことで、前記砥粒群の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出した状態で前記砥粒群を含む前記メッキ層を前記ワイヤ本体に電着させることを特徴とする固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記正電解パルス電圧の電位差をV(N)とした場合に、前記逆電解パルス電圧の電位差V(R)はV(R)=2〜8×V(N)とされ、
前記反転パルス電圧の周期をTとした場合に、前記正電解パルス電圧のパルス幅T(N)はT(N)=0.7〜0.9×Tで且つ前記逆電解パルス電圧のパルス幅T(R)はT(R)=0.05〜0.2×Tとされていることを特徴とする請求項1に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記反転パルス電圧の周波数は10Hz〜3KHzであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記砥粒は、前記メッキ液に包含されている段階においては前記メッキ液に包含されている金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148354(P2012−148354A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6852(P2011−6852)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】