説明

固定翼式ターボチャージャ

【課題】タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の熱落差による亀裂の発生を抑制し、さらにハウジング部でのシール性を高めた固定翼式ターボチャージャを提供する。
【解決手段】軸受ハウジングとタービンハウジングとの間の通路固定翼を備えた固定翼式ターボチャージャである。軸受ハウジングとタービンハウジングとは、それぞれのフランジ部20、21の内面側が直接的にあるいは間接的に当接させられ、その状態で各フランジ部20、21の外面側が締付具22によって共締めされ、締結されている。タービンハウジングのフランジ部21の内面は、締付具22によって軸方向への締付力が直接加えられる締付箇所Pと対応する箇所Qを含んで他方の内面側に当接する当接面23aを形成するとともに、当接面23a以外の箇所が、他方の内面側に対して非接触となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成によって固定翼による整流効果が高められるようにした固定翼式ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用などの内燃機関では、出力向上等を図るためにターボチャージャを備えたものが知られている。ターボチャージャは、内燃機関の排気が送り込まれるタービンスクロールと、タービンスクロール内の排気(流体)が通路を介して供給されることにより回転するタービンインペラと、タービンインペラと一体に回転するコンプレッサインペラと、コンプレッサインペラからの空気(流体)が通路を介して供給されるディフューザとしてのコンプレッサスクロールとを有し、コンプレッサスクロールからの加圧された空気を内燃機関の燃焼室へ強制的に供給するようにしたものである。
【0003】
タービンスクロールはタービンハウジングに形成されており、コンプレッサスクロールはコンプレッサハウジングに形成されている。これらタービンハウジングとコンプレッサハウジングとは、回転軸を有する軸受ハウジングを挟んで配置されている(例えば、特許文献2参照)。回転軸には、その一端側に前記タービンインペラが設けられ、他端側に前記コンプレッサインペラが設けられている。
【0004】
このようにタービンハウジングと軸受ハウジングとを隣接して配置したターボチャージャでは、例えばそれぞれのフランジ部が締付具によって共締めされることにより、締結されている(例えば、特許文献2参照)。
ところで、タービンハウジングは非常に高温となり、一方、軸受ハウジングは水冷却していることで比較的低温となることから、これらタービンハウジングと軸受ハウジングとの間では熱落差が非常に大きくなっている。そのため、これらタービンハウジングと軸受ハウジングとを例えばそれぞれのフランジ部で直接当接させると、タービンハウジングの薄肉部での熱落差が大きくなり、この熱落差による熱疲労によって亀裂が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、タービンハウジングと軸受ハウジングとをフランジ部で当接させる際の当接面積を小さくすることでこれらの間の伝熱を抑え、前記の熱落差を小さくすることが考えられるが、前記フランジ部での当接面はタービンハウジングと軸受ハウジングとの間のシール面ともなり、このシール面が小さくなり過ぎるとタービンハウジングと軸受ハウジングとの間のシール性が低下し、タービンの効率を低下させてしまうことになる。
【0006】
したがって、例えば前記特許文献1に開示されたターボチャージャでは、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間に遮熱板を介在させ、これによってタービンハウジングと軸受ハウジングとの間での伝熱を抑制し、熱落差を低く抑えている。なお、このようにタービンハウジングと軸受ハウジングとの間に遮熱板を介在させることで、この遮熱板は、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間のシール性(気密性)を確保するための、シール部材としても機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−128065号公報
【特許文献2】特開2009−167971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ターボチャージャでは、タービン側の排気が流動する通路に、流体の流れを整流するための翼体を備えたものが知られている。このようなターボチャージャでは、タービンスクロールで流速が高められて送り込まれる排気を、翼体によってタービンインペラの周囲から均一に流入させることで、タービンの効率向上を図っている。
このような翼体を備えたターボチャージャとしては、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の通路に固定される固定翼式と、前記通路に配置された各翼体がリンク機構等によって同時に回転させられ、翼体の角度が一斉に変えられるように構成された可変翼式とが知られている。しかし、固定翼式は可変翼式に比べて構成が簡易であり、コストやメンテナンスの点で有利であるとされている。
【0009】
そこで、固定翼を備えた固定翼式ターボチャージャの開発が進められているが、前記通路に翼体(固定翼)を配置固定すると、前記の遮熱板を配置するスペースが制限され、結果的にタービンハウジングと軸受ハウジングとの間のシール性が損なわれてしまう。すなわち、従来ではタービンスクロールから通路に向かう前の、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間に遮蔽板を挟持し、この遮蔽板によって両ハウジング間のシール性を確保していたが、通路に固定翼を配置すると、前記箇所への遮熱板の配置ができなくなり、シール性が確保できなくなってタービンスクロールからの排気が該箇所からフランジ部を通って外に漏出してしまう。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の熱落差に起因する亀裂の発生を抑制することができ、しかもハウジング部でのシール性を高めた固定翼式ターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の固定翼式ターボチャージャは、軸受ハウジングとタービンハウジングとの間に通路が形成され、該通路に固定翼を備えてなる固定翼式ターボチャージャであって、
前記軸受ハウジングと前記タービンハウジングとは、それぞれのフランジ部の内面側が直接的にあるいは間接的に当接させられ、その状態で前記各フランジ部の外面側が締付具によって共締めされたことにより、締結されており、
前記軸受ハウジングのフランジ部と前記タービンハウジングのフランジ部との少なくとも一方の内面は、前記締付具によって軸方向への締付力が直接加えられる締付箇所と対応する箇所を含んで他方の内面側に当接する当接面を形成するとともに、該当接面以外の箇所が、前記他方の内面側に対して非接触となるよう構成されていることを特徴としている。
【0012】
この固定翼式ターボチャージャによれば、軸受ハウジングのフランジ部とタービンハウジングのフランジ部との少なくとも一方の内面に、他方の内面側に当接する当接面を形成し、該当接面以外の箇所が、前記他方の内面側に対して非接触となるよう構成されているので、当接面の面積を最適化することでタービンハウジングと軸受ハウジングとの間の伝熱性が抑えられ、両ハウジング間の熱落差の影響が抑制されるようになる。
また、前記当接面が、締付具によって軸方向への締付力が直接加えられる締付箇所と対応する箇所を含んで形成されているので、締付具による締付力が当接面に対して軸方向に作用し、これによって当接面と他方の内面側とが偏ることなく均一に当接(接触)するようになる。よって、両フランジ間のシール性が向上する。
【0013】
また、前記固定翼式ターボチャージャにおいては、前記軸受ハウジングのフランジ部の内面と前記タービンハウジングのフランジ部の内面との間に、遮熱板が挟持されているのが好ましい。
このようにすれば、遮熱板によってタービンハウジングと軸受ハウジングとの間の伝熱性が抑えられ、両ハウジング間の熱落差の影響がより抑制されるようになる。
【0014】
また、この固定翼式ターボチャージャにおいては、タービンハウジングのフランジ部の内面にのみ前記当接面を形成しているのが好ましい。
このようにすれば、遮熱板はタービンハウジングのフランジ部に対して前記当接面でのみ当接(接触)するようになり、したがって熱疲労が少なくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固定翼式ターボチャージャにあっては、当接面の面積を最適化することでタービンハウジングと軸受ハウジングとの間の伝熱性が抑えられ、両ハウジング間の熱落差の影響が抑制されようになっているので、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の熱落差に起因するタービングハウジング側での亀裂の発生を、防止することができる。
また、両フランジ間のシール性が向上しているので、タービンスクロールからの排気がフランジ部間を通って外に漏れ出てしまい、タービンの効率が低下してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の固定翼式ターボチャージャの一実施形態を示す要部側断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】締付具の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の固定翼式ターボチャージャを、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の固定翼式ターボチャージャの一実施形態を示す図であって、タービン側の通路に固定翼を備えた固定翼式ターボチャージャの要部側断面図である。この固定翼式ターボチャージャは、軸受ハウジング1とタービンハウジング4とが対向する各対向前面間に形成された通路9の、軸受ハウジング1側に固定翼15を備えたものである。
【0018】
また、この固定翼式ターボチャージャは、軸受ハウジング1に回転可能に支持された回転軸2の一端に、タービンインペラ3を固定したものである。そして、この固定翼式ターボチャージャは、図1の要部拡大図である図2に示すように、タービンハウジング4の対向前面に形成された位置決め段部4aが、軸受ハウジング1の対向前面側の位置決めピン5に合わされることで周方向(回転軸2の回転方向)の位置決めがなされ、その後、タービンハウジング4のフランジ部20の外面側と軸受ハウジング1のフランジ部21の外面側とが締付具22によって共締めされ、締結されたことにより、軸受ハウジング1とタービンハウジング4とが一体に組み立てられたものである。この締付具22の構成、及び締付具22によるフランジ部20、21の共締めについては、後に詳述する。
【0019】
図1に示すようにタービンハウジング4にはタービンスクロール8が形成されており、該タービンスクロール8からの排気(流体)は、軸受ハウジング1とタービンハウジング4との各対向前面間の通路9を通ってタービンインペラ3に周方向から導入されるようになっている。
【0020】
前記軸受ハウジング1の対向前面には円環状の嵌合溝10が形成されており、この嵌合溝10には、リング状(円環状)の可動部材11がその前後方向に移動可能に設けられている。すなわち、可動部材11にはその背面の外周部に環状突部12が突出した状態に形成されており、この環状突部12が前記嵌合溝10に着脱可能に嵌合していることにより、可動部材11はその前後方向に移動できるようになっている。また、環状突部12には凹部13が形成されており、この凹部13が前記位置決めピン5に係合することにより、可動部材11は周方向への移動が規制されている。
【0021】
前記可動部材11の前面には複数の翼体14の基端が固定されており、これによって可動部材11と翼体14とから、固定翼15が構成されている。翼体14は、その先端がタービンハウジング4の対向前面に対峙して配置されている。ここで、翼体14は、リング状の可動部材11の前面に、周方向に所定の間隔で配置され、かつ、設計に基づいて同一方向に傾いて固定されている。また、可動部材11は、高熱のタービンハウジング4側から、冷却されることで比較的低温となっている軸受ハウジング1側に熱が伝わるのを抑制する、遮熱板として機能するようになっている。すなわち、可動部材11は遮熱板を兼ねた部材となっている。
【0022】
可動部材11の背面(図1の右側面)と前記軸受ハウジング1の対向前面との間の空間18には、可動部材11を押圧してその翼体14の先端をタービンハウジング4の対向前面に圧接させる押圧手段16が設けられている。
この押圧手段16としては、本実施形態では截頭円錐形状(円錐台形状)の皿ばね17が用いられている。この皿ばね17を用い、その外周縁17aを可動部材11の背面に当接させ、内周縁17bを軸受ハウジング1の対向前面に当接させている。
【0023】
このような構成のもとに皿ばね17は、軸受ハウジング1の対向前面に当接する内周縁17bを固定側とし、外周縁17aを可動側としてそのバネ性を発揮することにより、可動部材11をその前方、すなわちタービンハウジング4の対向前面側に押圧するようになっている。よって、皿ばね17(押圧手段16)は、このように可動部材11を押圧することにより、翼体14の先端をタービンハウジング4の対向前面に圧接させ、翼体14とタービンハウジング4の対向前面との間のサイドクリアランスをほぼ零に、すなわちゼロクリアランスにするようになっている。
【0024】
ここで、皿ばね17は、軸受ハウジング1の対向前面に形成された円筒状の凸部1aに外挿され、位置決めされるようになっている。すなわち、皿ばね17の内径は凸部1aよりクリアランス分大径に形成されており、これによって凸部1aに外挿されることで、その位置が固定されるようになっている。
【0025】
また、このような押圧力が発揮されることで、皿ばね17はその内周縁17bが軸受ハウジング1の対向前面に気密に当接し、外周縁17aが可動部材11の背面に気密に当接する。このような構成のもとに皿ばね17は、軸受ハウジング1の対向前面と可動部材11の背面との間をシールするシール部材としても機能し、タービンスクロール8からの排気(流体が)が可動部材11の背面を通って軸受ハウジング1側に漏出するのを防止するものとなっている。
【0026】
ただし、このような皿ばね17を設けても、この皿ばね17が配置された位置の上流側、つまりタービンスクロール8から通路9に向かう前の、タービンハウジング4と軸受ハウジング1との間から排気の漏出を防止することはできない。
【0027】
すなわち、従来では、図1に示した可動部材11の環状突部12や位置決めピン5を配置した箇所に遮熱板を配置し、タービンハウジング4と軸受ハウジング1との間に挟持させることで前述したようにシール部材としての機能を持たせ、これによってフランジ部20、21の間から排気が漏出するのを防止していたが、本実施形態のように固定翼式を採用すると、前記箇所への遮熱板の配置が設計上困難になり、したがってフランジ部20、21間からの排気の漏出が大きな問題になっていた。つまり、タービンスクロール8の端部側(軸受ハウジング1側)と固定翼15の可動部材11との間を通り、フランジ部20、21間に向かう排気の流れを気密に封止するのが困難であった。
【0028】
そこで、本実施形態では、図2に示すようにタービンハウジング4のフランジ部20の内面に、軸受ハウジング1のフランジ部21の内面側に当接する凸状の当接部23を形成している。当接部23は、円環状のフランジ部20の周方向に沿って形成された円環状のもので、軸受ハウジング1のフランジ部21の内面に対向する面を平滑な当接面23aとしたものである。
【0029】
また、タービンハウジング4のフランジ部20の内面は、前記当接部23以外の箇所が当接面23に対して相対的に凹んだ状態となっており、したがって当接面23a以外の箇所は、軸受ハウジング1のフランジ部21の内面側に対して非接触となる非接触領域23bとなっている。ここで、当接面23aについては、これが軸受ハウジング1のフランジ部21の内面側に接触する伝熱面となるため、タービンハウジング4と軸受ハウジング1との間の伝熱を抑えるべく、後述するシール性を十分に確保したうえで、最小となるように該当接面23aの面積が決定されている。すなわち、シール性と伝熱性とを共に満足するように、該面積が最適化されている。
【0030】
そして、本実施形態では、タービンハウジング4のフランジ部20の内面と軸受ハウジング1のフランジ部21の内面との間に、円環状の遮熱板24が配置されている。このような構成のもとに、タービンハウジング4のフランジ部20の前記当接面23aは、遮熱板24を介して軸受ハウジング1のフランジ部21の内面に間接的に当接したものとなっている。すなわち、前記当接面23aが軸受ハウジング1のフランジ部21の「内面側に当接する」とは、本発明においては遮熱板24を介してフランジ部21の内面に間接的に当接することを含んでいる。
【0031】
遮熱板24としては、ステンレス等の合金あるいは金属からなる耐熱性の板体が用いられるが、より高い耐熱性を有するものとして、メタルジャケットガスケットなどの複合ガスケット材などを用いることもできる。
なお、本実施形態では、軸受ハウジング1のフランジ部21の内面は、遮熱板24を支持するための、外周縁を面取りした平面となっている。ただし、このフランジ部21の内面についても、遮熱板24に当接する面を制限して伝熱性を抑えるべく、タービンハウジング4のフランジ部20の内面と同様に、凸状の当接部を形成してもよい。
【0032】
前記当接部23の当接面23aは、前記締付具22によって軸方向(回転軸2の長さ方向)、すなわちフランジ部20の当接面23aやフランジ部21の内面と直交する方向への締付力が直接加えられる締付箇所と対応する箇所を、含んで形成されている。
【0033】
ここで、締付具22の構成について説明する。
締付具22は、Gカップリングと呼ばれるもので、図3に示すように一対の半円弧部40、40と、各半円弧部40の同じ側の端部に形成されたフランジ部41、41と、各半円弧部40の反対側の端部に形成された折返部42、42と、フランジ部41に挿通されたボルト・ナットからなる締結部材43と、折返部42、42を拘束する環状リング44と、からなっている。半円弧部40は、図2の横断面に示すように、外側にハ字状に拡がった傾斜部40a、40aを有しており、これら傾斜部40a、40aによって前記両フランジ部20、21の外側を挟持している。このような構成のもとに締付具22は、締結部材43を締め付けることにより、両フランジ部20、21の外側を共締めするようになっている。
【0034】
これらフランジ部20、21は、傾斜部40a、40aの傾斜した内面と接触するようにその外面がテーパ状に形成されている。ただし、傾斜部40a、40aの内面とフランジ部20、21の外面(テーパ面)とは、図2では面接触しているように記載しているものの、実際には、図2の横断面上では点接触しており、図3に示した各半円弧部40に沿って線接触している。そして、締付具22の傾斜部40a、40a間に両ハウジング部20、21を挟み込んで締結部材43を締め付けることにより、遮熱板24を介して両ハウジング部20、21を共締めし、締結している。
【0035】
その際、締結部材43の締め付け力を調整することで、傾斜部40a、40aとフランジ部20、21とが点接触(線接触)する締付箇所Pが、図2中のRで示す押圧範囲内にて変化する。すなわち、締結部材43の締め付け力が大きくなると、傾斜部40a、40aの先端側が広がり、前記の締付箇所Pの位置が変化する。なお、傾斜部40a、40aはフランジ部20、21のテーパ面、すなわち平面状の部位を挟持するようになっており、したがって図2中二点鎖線で示すように、図2中の実線で示す状態より内側(中心側)を押さえるように挟持部40a、40aを配することもできる。このようにすることで、前記の押圧範囲Rの全域に、締付箇所Pを位置させることが可能になる。なお、前記の押圧範囲Rに位置するフランジ部20、21の外面形状は、平面ではなく、曲面となっていてもよい。
【0036】
ここで、このような締付具22の傾斜部40a、40aによる締付力、すなわち前記締付箇所Pにおいて発揮する締付力は、両方の傾斜部40aが均等に両ハウジング部20、21間を挟持することにより、回転軸2の長さ方向である軸方向、すなわちフランジ部20の当接面23aやフランジ部21の内面と直交する方向に作用する。そこで、本発明では、このような締付力が直接加えられる箇所を締付箇所Pとすると、この締付箇所Pに対応する箇所Q、すなわち締付箇所Pを通って軸方向に向かう締付力が実際に作用するフランジ部20の内面における箇所Qを含んで、前記当接部23の当接面23aを形成している。
【0037】
なお、本実施形態の固定翼式ターボチャージャでは、前記回転軸2の他端に、従来と同様にしてコンプレッサインペラ(図示せず)が設けられている。このコンプレッサインペラの外周にはコンプレッサスクロール(図示せず)を形成するコンプレッサハウジング(図示せず)が設けられている。
【0038】
次に、このような構成からなる固定翼式ターボチャージャの作用を説明する。
固定翼式ターボチャージャを組み立てるには、まず、図1に示すように軸受ハウジング1の凸部1aに皿バネ17を外挿してここに固定し、その外周縁17aを外側、すなわちタービンハウジング4の対向前面側に向ける。そして、その状態で、軸受ハウジング1の対向前面に備えた嵌合溝10に可動部材11の環状突部12を嵌合させ、これによって可動部材11の背面に皿ばね17の外周縁17aを当接させる。
【0039】
また、このとき、環状突部12に形成した凹部13が位置決めピン5に合致するように、可動部材11を配置して周方向(回転方向)の位置決めを行う。
さらに、タービンハウジング4の対向前面に形成した位置決め段部4aが位置決めピン5に合致するように、タービンハウジング4を配置して周方向の位置決めを行った後、外周に設けた締付具22の締結部材43を締め付けることにより、遮熱板24を介して両ハウジング部20、21を共締めし、締結する。その際、この締付具22の傾斜部40a、40aによる締付力が直接加えられる締付箇所Pに対応する前記箇所Qが、フランジ部20の当接部23の当接面23a内に位置するように、締結部材43の締め付け力を調整する。このような締付力については、予め実験等によって求めておき、前記箇所Qを当接面23a内に確実に位置させるようにする。これにより、軸受ハウジング1とタービンハウジング4とを一体に組み立てる。
【0040】
このようにして締付具22で両フランジ部20、21を共締めし、締結すると、締付箇所Pに対応する箇所Qが当接面23a内に位置していることから、締付具22による締付力が当接面23aに対して軸方向、すなわち該当接面23aに直交する方向に作用し、これによって当接面23aと遮熱板24(他方の内面側)とが偏ることなく均一に当接(接触)するようになる。よって、両フランジ20、21間のシール性(気密性)が向上し、これらフランジ20、21間の気密が十分に確保されるようになる。
【0041】
また、タービンハウジング4のフランジ部20の内面を、当接部23の当接面23aと非接触領域23bとに分け、当接面23aのみで遮熱板24(軸受ハウジング1のフランジ部21の内面側)に当接(接触)するようにしたので、前記したようにシール性と伝熱性とを共に満足するように当接面23aの面積が最適化されることで、タービンハウジング4と軸受ハウジング1との間の伝熱性が抑えられ、両ハウジング20、21間の熱落差の影響が抑制されるようになる。
【0042】
さらに、タービンハウジング4のフランジ部20の内面(当接面23a)と軸受ハウジング1のフランジ部21の内面との間に遮熱板24を挟持させているので、この遮熱板24によってタービンハウジング4と軸受ハウジング1との間の伝熱性が抑えられ、両ハウジング20、21間の熱落差の影響がより抑制されるようになる。すなわち、遮熱板24を配することにより、特に遮熱板24と軸受ハウジング1のフランジ部21の内面との間に空気等による境界層が形成され、この境界層で伝熱が抑えられることにより、タービンハウジング4と軸受ハウジング1との間の伝熱性が抑えられる。
【0043】
よって、本実施形態の固定翼式ターボチャージャにあっては、当接面23aの面積を最適化することでタービンハウジング4と軸受ハウジング1との間の伝熱性を抑え、両ハウジング間の熱落差の影響を抑制しているので、タービンハウジング4と軸受ハウジング1との間の熱落差に起因するタービングハウジング4側での亀裂の発生を、防止することができる。
また、両フランジ20、21間のシール性を向上し、これらフランジ20、21間の気密を十分に確保しているので、タービンスクロール8からの排気がフランジ部20、21間を通って外に漏れ出てしまい、タービンの効率が低下してしまうのを防止することができる。
【0044】
また、当接面23a(当接部23)をタービンハウジング4のフランジ部20の内面にのみ形成しているので、遮熱板24は高温側となるタービンハウジング4のフランジ部20に対して前記当接面23aでのみ当接(接触)するようになり、したがって熱疲労が少なくなって耐久性が有利になる。
【0045】
以上、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、前記実施形態では遮熱板24を用い、これをタービンハウジング4のフランジ部20の内面と軸受ハウジング21の内面との間に挟持させているが、本発明では遮熱板24を用いることなく、前記両ハウジング部20、21のそれぞれの内面を直接当接(接触)させるようにしてもよい。その場合にも、少なくとも一方の内面に当接部(当接面)を形成することにより、両ハウジング部20、21間のシール性を確保することができる。
【0046】
また、遮熱板24を用いる場合、前記実施形態のように1枚のみ用いるのに代えて、複数枚重ねて用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、前記押圧手段16として皿ばね17を用いたが、これに代えてウェーブワッシャ、コイルバネ等を用いることもできる。ウェーブワッシャやコイルバネ等を用いた場合には、排気が可動部材11の背面を通って軸受ハウジング1側に漏出するのを防止するためのOリング等のシール材を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 …軸受ハウジング、4…タービンハウジング、9…通路、11…可動部材、14…翼体、15…固定翼、20…フランジ部、21…フランジ部、22…締付具、23…当接部、23a…当接面、23b…非接触領域、24…遮熱板、40a…傾斜部、43…締結部材、P…締付箇所、Q…締付箇所に対応する箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジングとタービンハウジングとの間に通路が形成され、該通路に固定翼を備えてなる固定翼式ターボチャージャであって、
前記軸受ハウジングと前記タービンハウジングとは、それぞれのフランジ部の内面側が直接的にあるいは間接的に当接させられ、その状態で前記各フランジ部の外面側が締付具によって共締めされたことにより、締結されており、
前記軸受ハウジングのフランジ部と前記タービンハウジングのフランジ部との少なくとも一方の内面は、前記締付具によって軸方向への締付力が直接加えられる締付箇所と対応する箇所を含んで他方の内面側に当接する当接面を形成するとともに、該当接面以外の箇所が、前記他方の内面側に対して非接触となるよう構成されていることを特徴とする固定翼式ターボチャージャ。
【請求項2】
前記軸受ハウジングのフランジ部の内面と前記タービンハウジングのフランジ部の内面との間に、遮熱板が挟持されていることを特徴とする請求項2記載の固定翼式ターボチャージャ。
【請求項3】
前記タービンハウジングのフランジ部の内面にのみ前記当接面を形成していることを特徴とする請求項2記載の固定翼式ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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