説明

固定装置

【課題】本発明は、冷却装置を基板に強固に取り付けることができ、着脱が容易な固定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、CPU1などの発熱電子部品を実装した基板2上に該発熱電子部品を冷却するための冷却装置3を装着する固定装置であって、冷却装置3を取り付けた冷却装置結合部材4と、発熱電子部品の周囲に配置され、冷却装置結合部材4を基板2上に装着するとき冷却装置3を発熱電子部品と熱交換可能な所定位置に誘導するガイドと、冷却装置3が発熱電子部品の前記位置に接触すると冷却装置結合部材4を係止するクランプ部を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器筐体内部に配設された中央演算処理装置(以下、CPUと称する)などの発熱電子部品を冷却する冷却装置をCPU実装基板に固定保持するための固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの処理速度は急速に高速化し、CPUのクロック周波数は以前と比較して飛躍的に大きな値になってきている。この結果、CPUの発熱量が増大し、従来のコンピュータのようにヒートシンクや放熱フィンを発熱体に接触させて放熱するような消極的な放熱方法では能力不足となり、ヒートシンクや放熱フィンを使いファンで強制冷却したり、あるいは、ヒートパイプ内蔵のヒートシンクモジュールを介在させて放熱体をファンで強制冷却したり、さらには、液体ポンプを使って液体冷媒を強制循環し受熱体と放熱体との間で熱交換をさせて強制冷却したりする、などの積極的な強制冷却方法が行われている。そして今後も冷却能力の更なる向上と小型化が大きな課題となるものである。
【0003】
ところで、以上のような冷却装置をCPUなどの発熱電子部品が実装された基板に取り付ける方法として、例えば、ヒートシンク本体の底面に複数個の突出部を備え、基板に配置されている穴に挿入固定するものが知られている(特許文献1参照)。図9は従来の技術でのヒートシンクの取り付け状態図、図10は従来の技術のフリップチップの実装構造を示す断面図である。
【0004】
図9は(特許文献1)に記載されているヒートシンクの固定方法を示しており、リテンションモジュール11の底部の穴11aに長さ方向に貫通孔12aを有するリベット12を挿入し、次いでヒートシンク13とリテンションモジュール11を同時に下方へ押圧することにより、リベット12を基板2の対応する穴2a内へ挿入し、複数個のピン部14に対応するリベット12を貫通孔12a内へ挿入させ、リテンションモジュール11の基板2上へのロック、ヒートシンク13の固定及びヒートシンク13の底面13aの集積回路素子であるCPU1への接触を同時に行うようにしている。これにより、ヒートシンク13の取り付けとリテンションモジュール11の取り付け及び固定を同時に行え、作業工数を減らすことができるとともに、ヒートシンク13の取り付け強度を増大できる信頼性の向上したヒートシンク13の固定が可能となっている。
【0005】
また、基板上に載置された固定用治具によって押圧兼冷却用フィンを、発熱電子部品及び基板に押圧固定するものも知られている(特許文献2参照)。
【0006】
図10は、(特許文献2)に記載されている冷却用フィンの固定構造を示しており、半導体チップ電極21aがプリント基板電極22aに直接接触している状態で、半導体チップ21が仮止め用接着剤23でプリント基板22に仮止めされる。その半導体チップ21に、凹状の冷却用フィン24が裏返して被せられ、冷却用フィン24の脚部24aがプリント基板22のグランド電極22bに位置合わせされ、プリント基板22に半田付けされている固定用治具25のばね機構によって、冷却用フィン24が半導体チップ21及びグランド電極22bに押圧され、その結果として半導体チップ電極21aがプリント基板電極22aに押圧される。従って、プリント基板電極22aと半導体チップ電極21aとを対向接続して半導体チップ21を実装するフリップチップ実装構造であって、半導体チップ電極21a形成面の反対側の面に接触して半導体チップ21を押圧し且つ半導体チップ21を冷却するための押圧兼冷却用フィン24と、押圧兼冷却用フィン24に荷重をかけ且つ押圧兼冷却用フィン24を着脱可能に固定するための押圧兼固定用治具25とが備え
られ、プリント基板電極22aと半導体チップ電極21aとが直接に接触した状態で、半導体チップ21が、押圧兼冷却用フィン24を介して固定用治具25によってプリント基板22に押圧されて実装されているので、半導体チップ21の冷却能力が大きく、半導体チップ21の交換が容易である。従って、半導体チップ21の冷却能力が大きく、且つ半導体チップ21を容易に交換できるプリント基板実装構造を提供することができる。
【特許文献1】特開2004−71839号公報
【特許文献2】特開2001−60606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、(特許文献1)に記載されたような従来の冷却装置の固定方法では、ヒートシンク13の底面13aより突出した複数個の細長いピン部14によりリテンションモジュール11とヒートシンク13とクリップ18を固定しているので、例えば冷却装置が、受熱一体ポンプ、ラジエータ、ファン、及びリザーブタンクなどで一体に構成された液冷却方式の冷却装置などの場合、その重量的な負荷はかなり大きく、輸送振動などの衝撃荷重に耐えることが構造上難しくなる。そして、電子機器内で基板2が鉛直方向に実装される場合は、冷却装置の全体荷重がピン部14を介して基板2に加わるが、定常的にその荷重がピン部14のせん断方向に集中するので、そのような形態で実装されたときの機械強度的に耐えられない構造となってしまう。
【0008】
また、CPU1に不具合が生じてCPU1の部品交換が必要となった場合には、クリップ18を外す作業に加えて、複数個のピン部14を外すことの作業も必要となり、作業方法が煩雑になってしまう。そして長期使用した後に部品交換する場合、冷却装置とCPU1の間に塗られているサーマルインターフェースが強固に固着し、冷却装置の取り外しを行う際に非常に大きな力が必要となり、交換作業がさらに面倒で困難なものになってしまうといった問題もある。
【0009】
さらには、ピン部14と基板の穴2aとのピッチズレや嵌合性によっては、CPU1とヒートシンク13の底面13aとの平行度が悪くなり、両者の接触状態に影響が出てくると、熱接続状態が悪くなり冷却性能にも問題が発生する可能性もある。
【0010】
一方、(特許文献2)に記載されたような従来の冷却装置の保持構造でも、初期的な半導体チップ21の交換は容易にできるものの、長期間使用した場合、冷却用フィン24と半導体チップ21の間に塗られているサーマルインターフェースが強固に固着し、冷却装置の取り外しの際、上述の場合と同様の問題がある。
【0011】
とくに、例えば冷却装置が上述したような、受熱を直接行うポンプや、ラジエータ、ファン、リザーブタンクなどで構成され、液体冷媒を強制循環する液冷方式の冷却装置の場合、重量が大きいうえに重心が偏った位置にあるため、搬送時の振動等により冷却装置がプリント基板22と平行な方向へ移動して、取り外し作業時に大きな困難が伴い、または、この冷却装置を固定する作業も、電子機器筐体内に他の障害物があって視認性が悪い場合にはきわめて困難である。
【0012】
さらには、電子機器内でプリント基板22が縦方向に実装される場合は、冷却装置の全体荷重をせん断方向に支えることのできる構造ではないので、冷却装置がプリント基板22と平行な方向に位置変動を生じるばかりでなく、冷却装置に対する固定用治具25の押圧位置が変わってしまうので、半導体チップ21と冷却装置との平行度が悪くなり両者の接触状態に影響が出てくるので、熱接続状態が悪くなり、冷却性能にも影響を及ぼす可能性もある。
【0013】
そこで本発明は、冷却装置を基板に強固に取り付けることができ、着脱が容易な固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するため本発明は、発熱電子部品を実装した基板上に該発熱電子部品を冷却するための冷却装置を装着する固定装置であって、冷却装置を取り付けた冷却装置結合部材と、発熱電子部品の周囲に配置され、冷却装置を基板上に装着するとき該冷却装置を発熱電子部品と熱交換可能な所定位置に誘導するガイドと、冷却装置が発熱電子部品の前記位置に接触すると冷却装置結合部材を係止するクランプ部を備えたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固定装置によれば、大きな重量の冷却装置でも、基板上に強固且つ確実に発熱電子部品と熱交換可能な位置に装着でき、冷却装置の着脱が容易で、発熱電子部品の交換作業も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の発明は、発熱電子部品を実装した基板上に該発熱電子部品を冷却するための冷却装置を装着する固定装置であって、冷却装置を取り付けた冷却装置結合部材と、発熱電子部品の周囲に配置され、冷却装置を基板上に装着するとき該冷却装置を発熱電子部品と熱交換可能な所定位置に誘導するガイドと、冷却装置が発熱電子部品の前記位置に接触すると冷却装置結合部材を係止するクランプ部を備えた固定装置であり、大きな重量の冷却装置でも、基板上に強固且つ確実に発熱電子部品と熱交換可能な位置に装着でき、冷却装置の着脱が容易で、CPU等の発熱電子部品の交換作業が容易になる。
【0017】
本発明の第2の発明は、第1の発明に従属する発明であって、冷却装置結合部材と冷却装置との間に弾性部材が設けられ、冷却装置結合部材が基板上に装着されたとき、弾性部材が冷却装置を基板に向けて付勢する固定装置であり、第1の発明の効果に加え、冷却装置を着脱する際に、冷却装置結合部材と冷却装置を基板側に押し付けながら、冷却装置結合部材にクランプ部を係止したり、開放したりする作業、すなわち冷却装置の着脱作業が容易となり、発熱電子部品の交換作業がより容易になる。さらに、冷却装置が弾性部材により保持されているので、冷却装置と冷却装置結合部材の取り付け精度のばらつきを吸収でき、冷却装置を均一的に押圧するとともに、輸送振動などの衝撃荷重にも耐えることができる。
【0018】
本発明の第3の発明は、第1または第2の発明に従属する発明であって、冷却装置結合部材にフックが設けられるとともに、クランプ部には軸まわりに回動可能で付勢力によって自己復帰する可動部材が設けられ、冷却装置結合部材が装着されるときフックが可動部材に設けられた係止部と当接し、可動部材の自己復帰作用により係止部を係止する固定装置であり、第1または第2の発明の効果に加え、冷却装置を装着する際に、冷却装置を基板側に押し付けるだけで、一度フックにより外側に押された可動部材が、自己復帰作用により係止状態になろうとするので、冷却装置結合部材にクランプ部の可動部材を係止する作業が容易になる。
【0019】
本発明の第4の発明は、第3の発明に従属する発明であって、係止部が略円柱状の形状を有している固定装置であり、第3の発明の効果に加え、冷却装置を着脱する際に、フックとの滑りがよりなめらかとなり、クランプ部の係止作業をスムーズに行えるため、着脱時の衝撃を小さくすることが可能であり、さらに係止不十分な状態を招くことを回避できる。
【0020】
本発明の第5の発明は、第3または第4の発明に従属する発明であって、可動部材には凸部が設けられ、可動部材の可動範囲において凸部が回動して冷却装置に当接すると、離脱作用を及ぼす固定装置であり、第3または第4の発明の効果に加え、冷却装置の取り外しの際は、冷却装置と冷却装置結合部材を基板の方向に押し付けながら発熱電子部品の両側に載置されたクランプの可動部材の係止部を外側に押すことで、可動部材の凸部が梃子の原理で発熱電子部品上面に接触している冷却装置を比較的小さな力で押し上げることができ、離脱作用を及ぼすことができる。また、長期間使用し、冷却装置と発熱電子部品の間に塗られているサーマルインターフェースが強固に固着してしまい、冷却装置の取り外しの際に非常に大きな力が必要となる場合でも、交換作業を容易に行うことができる。
【0021】
本発明の第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明に従属する発明であって、ガイドの内側には、基板の鉛直方向に対して傾斜した第1の面と略平行な第2の面が形成されている固定装置であり、第1から第5のいずれかの発明の効果に加え、冷却装置を発熱電子部品中央に向けて押し付けるだけで、容易に冷却装置が所定位置に誘導されるので、電子機器筐体内で他の障害物があり、視認性が悪い環境においても冷却装置を固定する作業が容易となる。また、冷却装置装着後もガイド第2の面で位置規制されているので、冷却装置の受熱面が基板の水平方向へズレることを抑えられるため、両者の接触状態が安定し、熱接続状態が良好となり冷却性能も向上する。
【0022】
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて説明する。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、コンピュータ装置に搭載する液冷却方式の冷却装置の固定装置に関するものである。なお、冷却装置を搭載する電子機器は実施の形態1のコンピュータ装置に限られない。図1〜図8において、図1は本発明の実施の形態1における冷却装置の固定装置の装着状態を示す全体側面図、図2は本発明の実施の形態1における冷却装置結合部材へ取り付けられた冷却装置の上方斜視図、図3は本発明の実施の形態1における冷却装置結合部材へ取り付けられた冷却装置の下方斜視図、図4は本発明の実施の形態1における固定装置のクランプ部とガイドの構成を示す斜視図、図5は本発明の実施の形態1における冷却装置の固定装置との冷却装置装着前の位置関係を示す側面図、図6は本発明の実施の形態1における冷却装置を基板方向に押圧する直前のクランプ部の説明図、図7は本発明の実施の形態1における冷却装置を基板方向に押圧した直後のクランプ部の説明図、図8は本発明の実施の形態1における冷却装置を取り外す際のクランプ部の可動部材の説明図である。
【0024】
図1〜図3は冷却装置3を実施の形態1の固定装置に装着した状態を示している。冷却装置3は、受熱一体ポンプ3a、ラジエータ3b、リザーブタンク3dを循環路に配し、液体冷媒(以下、冷却液)を使い、受熱一体ポンプ3aで受熱した熱をラジエータ3bまで運び、ファン3cによってラジエータ3bを冷却し、放熱後の冷却液をリザーブタンク3dを介して再び受熱一体ポンプ3aに戻して循環させる冷却システムを1ブロック化した構造である。
【0025】
この冷却装置3は、ファン3cが図2,図3に示すように冷却装置結合部材4に固定ピン4cで固定され、その上側にラジエータ3bが搭載され、ラジエータ3bの側面にリザーブタンク3dが固定される。一方、受熱一体ポンプ3aは、弾性部材であるコイルバネ4a(図1では圧縮された状態となっている)を介して冷却装置結合部材4の下面に固定ネジ4dで固定される。コイルバネ4aで固定されるので受熱一体ポンプ3aは上下方向に可動であり、振動と押圧力の吸収が可能になる。発熱電子部品であるCPU1から発生した熱は受熱一体ポンプ3aの底面に位置する受熱面を介して受熱面内部に循環している
冷却液に伝えられ冷却液の温度が上昇する。
【0026】
受熱面を通しての熱交換で温度が上昇した冷却液は受熱一体ポンプ3aによってラジエータ3bへ送られる。ラジエータ3bは、図2に示すような蛇行する金属性のパイプ3eと、これと交差、接触している複数の放熱フィン3fとから構成され、パイプ3eの中を冷却液が流れてその熱が放熱フィン3fに伝熱される。伝熱された熱はファン3cが放熱フィン3fに風を当てることによって大気中へ放出される。このようにラジエータ3bで熱交換が行われることで、熱が奪われて温度が低下した冷却液はリザーブタンク3dを通って再び受熱一体ポンプ3aへ送られる。
【0027】
またリザーブタンク3dには、冷却液内に混入した空気を分離するための気液分離機構が設けられており、冷却装置3がいかなる姿勢になっても分離した空気が再度受熱一体ポンプ3aへ混入することのない構成になっている。そして、長期にわたって使用され冷却液の水分が気化しても冷却装置の冷却性能を維持するために、十分な量の冷却液を内部に貯えている。なお、実施の形態1では受熱一体ポンプ3a→ラジエータ3b→リザーブタンク3d→受熱一体ポンプ3aの順序で冷却液が循環するが、冷却液が循環する順は適宜変更できる。
【0028】
冷却装置結合部材4には受熱一体ポンプ3aの両側に図3のようなフック4bが設けられ、後述するクランプ部6と係合することで、コイルバネ4aを介して所定の荷重で受熱一体ポンプ3aを付勢し、CPU1の上面に密着する。冷却装置結合部材4は金属板等の金属製が望ましいが、この押さえ荷重に耐え得る材料であれば樹脂でも構わない。
【0029】
図4,図5は実施の形態1のクランプ部6とガイド5の構成を示すものである。図4,図5に示すように、ガイド5はそのガイド挿入面5aがCPU1の外側に基板2と離れるほど外側に広がる傾斜がつけられており、基板2の鉛直方向と所定の角度を形成する第1の面が形成されている。このガイド挿入面5aは、基板2の鉛直方向と略平行に形成された第2の面をもつガイド規制面5bに接続される。ガイド規制面5bは受熱一体ポンプ3aの外周よりわずかに大きく形成され、金属もしくは強度の強い樹脂で作られる。従って、冷却装置3の装着時には、冷却装置3をCPU1に向けて押し付けるだけで、このガイド挿入面5aに沿って受熱一体ポンプ3aはCPU1の中央部分(冷却装置3と熱交換する所定位置)に誘導され、受熱一体ポンプ3aの受熱面とCPU1の中央部分が密着される構造となっているので、例えコンピュータ装置内に他の障害物があり、視認性が悪い環境においても、冷却装置3を容易に固定することができ、固定作業が容易となる。
【0030】
なお、ガイド5は、受熱一体ポンプ3aに加えられる荷重を確実に受けることができるように、基板2の裏側の筐体に直接固定することが望ましいが、基板2の裏面に金属製の固定プレートを設けて固定してもよい。
【0031】
次にクランプ部6は、実施の形態1の場合、対向して2組が設けられ、その1組はクランプベース6a、2枚のクランプ可動側板6b、クランプ可動ピン6c、クランプ固定板6d、クランプ固定ピン6eから構成される。この1組のクランプ部6を構成するクランプ可動側板6bは、2枚が互いに対面する状態で配置され、その間をクランプ可動ピン6cとクランプ固定ピン6eが連結する。このクランプ固定ピン6eは、クランプベース6a上面に固定されたクランプ固定板6dの側板に回転自在に軸支される。従ってクランプ固定ピン6eを中心として可動側板6b、クランプ可動ピン6cは可動部材を構成し、一体となってクランプ固定ピン6eまわりに回動する。クランプ部6に自己復帰力を作用させるように、一方向へ付勢するトーションバネが設けられているため(図示しない)、クランプ固定ピン6eを中心として常に内向き(CPU1に近づく方向)に回転力が加わっているが、クランプ可動側板6bが基板2に対してほぼ垂直な位置でクランプ固定板6d
の側板に接触する構造となっているので、可動部材は回動してもこれがストッパーとなり、基板2に対してほぼ垂直な位置で制止される。従って、クランプ部6の可動部材を構成するクランプ可動側板6bとクランプ可動ピン6cは、冷却装置結合部材4が押し付けられて、外側(CPU1と離れる方向)へ力が作用すると回動し、その力がなくなれば基板2とほぼ垂直の位置へ自己復帰する。
【0032】
ところで、冷却装置結合部材4には受熱一体ポンプ3aの両側に屈曲頂部をもつフック4bが設けられている。フック4bは、冷却装置結合部材4が押し付けられたとき、このクランプ可動ピン6cに当接し、クランプ可動側板6bとクランプ可動ピン6cを外側(CPU1と離れる方向)に押し開くとともに、自己復帰力が作用するとクランプ可動ピン6cを復帰した位置で係止、保持するものである(図6,図7参照)。なお、ガイド5とクランプ部6は固定ネジ6gを用いて連結されているが、これらは、別々に基板上に載置される構成でも構わない。
【0033】
続いて、図5〜図8を用いて冷却装置3の装着方法を説明する。図5に示すように、冷却装置結合部材4に取り付けられてブロック化された冷却装置3が、基板2の実装面上のCPU1の周囲に設けられたガイド5とクランプ部6に対して矢印の方向に挿入される。次に、図6に示すように、冷却装置3の受熱一体ポンプ3aをガイド5内に収めるように基板2の方向に押し込むと、ガイド5により受熱一体ポンプ3aがCPU1の中央部分に導かれる。このまま冷却装置3を基板2の方向に押し込むと、図6に示すように液冷却装置結合部材4のフック4bがクランプ可動ピン6cに接触し、クランプ可動側板6bとクランプ可動ピン6cを破線で示したように外側に押し開く。
【0034】
ここでさらに冷却装置3を押し込むと、図7に示すように、略円柱状のクランプ可動ピン6cが冷却装置結合部材4のフック4bの屈曲頂部を乗り越え、屈曲頂部に隣接して形成された凹部内に回り込んで安定し、クランプ可動側板6bもトーションバネにより破線で示した傾斜した位置より元の姿勢(基板2に垂直)に自己復帰し、この状態でクランプ可動ピン6cが冷却装置結合部材4のフック4bに係止された状態となる。この状態で冷却装置3を押し込む作業をやめると、冷却装置結合部材4がクランプ可動ピン6cとフック4bでロックされ、弾性部材であるコイルバネ4aを介して受熱一体ポンプ3aが所定の荷重でCPU1の上面に押し付けられた状態となる。
【0035】
従って、受熱一体ポンプ3aをCPU1の上面に押し付ける荷重はコイルバネ4aのバネ定数を変化させることで、任意に設定、調整することが可能であり、また、冷却装置3の側面がガイド5のガイド規制面5bに内接することで、基板2と平行な方向に位置規制された状態で保持固定されているので、位置変動もなく均一な押圧力が得られ、冷却装置3の受熱面とCPU1に上面の平行度が保たれ、両者の接触状態が安定し、熱接続状態が良好で、冷却性能も向上する。
【0036】
次に、以上説明したように冷却装置3を装着した後にそれを取り外す方法について図8を用いて説明する。取り外しは基本的に以上説明した装着の手順と逆の作業をすればよい。まず、クランプ可動ピン6cがフック4bの係止状態を開放できる位置まで冷却装置3を基板2に押し付け、両側のクランプ可動ピン6cとクランプ可動側板6bを図7の破線のように外側に開きながら冷却装置3の押し付けを止めると、図6の状態に戻る。この状態から図8に示すようにさらに片方のクランプ可動側板6bを押し開くと、クランプ可動側板凸部6fが受熱一体ポンプ側面凸部3gをクランプ固定ピン6eまわりの梃の原理で押し上げる。このため仮にCPU1表面に塗られていたサーマルインターフェースによって冷却装置3がCPU1に強固に固着していたとしても簡単に取り外すことができる。なお、受熱一体ポンプ3aの底面を押し上げる場合には、受熱一体ポンプ側面凸部3gは不要であり、受熱一体ポンプ側面凸部3gは適宜設けることができる。
【0037】
なお、実施の形態1においては、冷却装置として、液体冷媒を用いた液冷却方式であって、冷却装置結合部材の下方に受熱一体ポンプを配置し、上方にラジエータ、ファン、及びリザーブタンクを配置した一体的構成(全体を1ブロック化した構成)の冷却装置を説明したが、本発明はヒートシンクや冷却フィンなどの単一部材を用いた冷却装置の固定装置としても使用できる。また、本発明は、受熱体と放熱体が別体で構成され、放熱体をファン冷却したり、液体冷媒を循環させながら発熱体からの熱をラジエータ側に放熱したりする冷却装置等の装置全体またはその一部の構成要素、例えば実施の形態1でいえば、発熱電子部品に熱的に接続する受熱一体ポンプ、受熱体、放熱体などの一部構成要素のみを基板上に固定する固定装置として適用できる。
【0038】
さらに、本発明の構成要素である冷却装置結合部材、ガイド、及びクランプ部の形状や配置については、実施の形態1に示したものに制限されるものでなく、冷却装置の実装される電子機器内のスペースやレイアウトにより様々な変形も可能である。例えば、実施の形態1としては記載していないが、冷却装置結合部材にクランプ部を設け、基板実装面側にフックを設けるなど、逆の配置のメカニズムにした固定装置や、クランプ可動部材の形状として、その一方の先端に凹部を設けた形状でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、コンピュータ装置等の電子機器の冷却装置の固定装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1における冷却装置の固定装置の装着状態を示す全体側面図
【図2】本発明の実施の形態1における冷却装置結合部材へ取り付けられた冷却装置の上方斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における冷却装置結合部材へ取り付けられた冷却装置の下方斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における固定装置のクランプ部とガイドの構成を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における冷却装置の固定装置との冷却装置装着前の位置関係を示す側面図
【図6】本発明の実施の形態1における冷却装置を基板方向に押圧する直前のクランプ部の説明図
【図7】本発明の実施の形態1における冷却装置を基板方向に押圧した直後のクランプ部の説明図
【図8】本発明の実施の形態1における冷却装置を取り外す際のクランプ部の可動部材の説明図
【図9】従来の技術でのヒートシンクの取り付け状態図
【図10】従来の技術のフリップチップの実装構造を示す断面図
【符号の説明】
【0041】
1 CPU
2 基板
2a 穴
3 冷却装置
3a 受熱一体ポンプ
3b ラジエータ
3c ファン
3d リザーブタンク
3e パイプ
3f 放熱フィン
3g 受熱一体ポンプ側面凸部
4 冷却装置結合部材
4a コイルバネ
4b フック
4c 固定ピン
5 ガイド
5a ガイド挿入面
5b ガイド規制面
6 クランプ部
6a クランプベース
6b クランプ可動側板
6c クランプ可動ピン
6d クランプ固定板
6e クランプ固定ピン
6f クランプ可動側板凸部
6g 固定ネジ
7 ガイド
11 リテンションモジュール
11a リテンションモジュール底部の穴
12 リベット
12a 貫通孔
13 ヒートシンク
13a ヒートシンクの底面
14 ピン部
15 ヒートシンク本体
16 CPUソケット
17 周囲壁
18 クリップ
21 半導体チップ
21a 半導体チップ電極
22 プリント基板
22a プリント基板電極
22b グランド電極
23 仮止め用接着剤
24 冷却用フィン
25 固定用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱電子部品を実装した基板上に該発熱電子部品を冷却するための冷却装置を装着する固定装置であって、前記冷却装置を取り付けた冷却装置結合部材と、前記発熱電子部品の周囲に配置され、前記冷却装置を基板上に装着するとき該冷却装置を前記発熱電子部品と熱交換可能な所定位置に誘導するガイドと、前記冷却装置が前記発熱電子部品の前記位置に接触すると前記冷却装置結合部材を係止するクランプ部を備えたことを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記冷却装置結合部材と前記冷却装置との間に弾性部材が設けられ、前記冷却装置結合部材が基板上に装着されたとき、前記弾性部材が前記冷却装置を前記基板に向けて付勢することを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項3】
前記冷却装置結合部材にフックが設けられるとともに、前記クランプ部には軸まわりに回動可能で付勢力によって自己復帰する可動部材が設けられ、前記冷却装置結合部材が装着されるとき前記フックが前記可動部材に設けられた係止部と当接し、前記可動部材の自己復帰作用により前記係止部を係止することを特徴とする請求項1または2記載の固定装置。
【請求項4】
前記係止部が略円柱状の形状を有していることを特徴とする請求項3記載の固定装置。
【請求項5】
前記可動部材には凸部が設けられ、前記可動部材の可動範囲において前記凸部が回動して前記冷却装置に当接すると、離脱作用を及ぼすことを特徴とする請求項3または4記載の固定装置。
【請求項6】
前記ガイドの内側には、前記基板の鉛直方向に対して傾斜した第1の面と略平行な第2の面が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項7】
発熱電子部品を実装した基板上に前記発熱電子部品の冷却装置を装着する固定装置であって、前記冷却装置を取り付けた冷却装置結合部材と、前記冷却装置を所定位置に誘導するガイドと、前記冷却装置結合部材を係止するクランプ部を備えたことを特徴とする固定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−202801(P2006−202801A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9869(P2005−9869)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】