説明

固形剤の湿式顆粒化処方物中の崩壊促進剤

活性薬学的成分、崩壊剤、および崩壊促進剤を含む急速に崩壊する固体剤形が開示され、この剤形は湿式顆粒化プロセスにより入手可能である。1つの例示的実施形態において、上記活性薬学的成分はトロンビンレセプターアンタゴニストであり、上記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムであり、そして上記崩壊促進剤はケイ酸カルシウムである。いくつかの実施形態において、上記トロンビンレセプターアンタゴニストは式(I)で表されるか、または薬学的に受容可能なその塩である。そのような急速に崩壊する固体剤形を投与することにより急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法もまた開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
本出願は、2006年12月22日に出願された仮特許出願第60/871,605号の利益を主張する。仮特許出願第60/871,605号は本明細書中でその全体を援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、湿式顆粒化により調製された急速に崩壊する経口投与薬学的処方物中で、崩壊剤と共に崩壊促進剤を使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
経口投与薬学的剤形の急速な崩壊は、患者の活性薬学的成分の血中濃度レベルを直ちに上げる必要がある場合、重要であり得る。そのような必要性は、活性薬学的成分により処置が可能な急性の状態を患っている患者、および、治療しないままにした場合に、近い将来により深刻な結果のリスクがあり得る患者に対して生じ得る。急性冠状動脈症候群(「ACS」)はそのような状態である。
【0004】
ACSは、急性心筋虚血と併存する任意の臨床症状の群(不安定狭心症、ならびに、非ST部分上昇型心筋梗塞(MI)およびST部分上昇型MIを含む)を包含するために使用される包括的用語である。急性心筋虚血は、冠動脈疾患(冠動脈心疾患とも呼ばれる)に起因する、心筋への不十分な血液供給による胸痛を伴う。これらの生命に係わる障害は、米国において救急医療および入院の主な原因である。冠動脈心疾患は米国において主な死亡原因である。不安定狭心症および非ST部分上昇型心筋梗塞はこの疾患の非常に一般的な症状発現である。Schering−Plough社は、現在、ACSの指標のためのトロンビンレセプターアンタゴニストを開発している。経口投与され急速に分解するトロンビンレセプターアンタゴニストの初回負荷量は、この開発プログラムの範囲内である。
【0005】
トロンビンレセプターアンタゴニスト(「TRA」)は、文献中で、様々な心臓血管系の疾患または状態(例えば、血栓症、血管の再狭窄、深部静脈血栓症、肺塞栓症、大脳梗塞、心臓疾患、播種性血管内凝固症候群、高血圧症(Suzuki,Shuichi、特許文献1、特許文献2、および特許文献3)、不整脈、炎症、狭心症、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、虚血状態(Zhang,Han−cheng、特許文献4、特許文献5、および特許文献6)が挙げられる)を処置するのに潜在的に有用であると示唆されている。
【0006】
トロンビンレセプターアンタゴニストは、米国特許第6,063,847号、米国特許第6,326,380号、米国特許第6,645,987号、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および米国特許第7,304,078号に開示される。様々な状態および疾患を処置するためのトロンビンレセプターアンタゴニストの小さなサブセットの使用は、特許文献10に開示される。特定のトロンビンレセプターアンタゴニストの硫酸水素塩は米国特許第7,235,567号に開示される。本明細書中で挙げられるこれらすべての特許および特許公開は、その全てが参考として援用される。
【0007】
さまざまな処方技術が、口腔内で急速に崩壊し活性成分を放出する固体剤形を提供することは知られている。これらの処方技術の中に、湿式顆粒化がある。トロンビンレセプターアンタゴニストの湿式顆粒化処方物は、米国特許出願第11/771,520号、米国特許出願第11/771,571号、および米国特許出願第11/860,165号に開示される。
【0008】
湿式顆粒化技術は、錠剤化工程において圧縮より前に、粉末を加工するためにしばしば使用される。急速に崩壊する固体経口剤形を調製するための湿式顆粒化技術の利用には、構造的統合性を失うことなしに、パッケージング、および通常の取り扱いにより与えられる機械的圧力を耐えるのに十分な摩損度を有するが、急速に崩壊する処方物とみなすのに十分な崩壊時間を示す錠剤を生み出すための、適切な賦形剤の選択、および加工条件の微調整が必要である。さらに、上記処方物は、簡便に経口投与するのにあまりに大きすぎる固体剤形であるべきではない。賦形剤リストの選択、および湿式顆粒化処方物中の各賦形剤の量は、必要とされる崩壊時間、構造的統合性、および錠剤サイズを示す剤形を達成するのに重要であり得る。したがって、これらの目標を達成するために湿式顆粒化処方物の改良の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第0288092号パンフレット
【特許文献2】国際公開第0285850号パンフレット
【特許文献3】国際公開第0285855号パンフレット
【特許文献4】国際公開第0100659号パンフレット
【特許文献5】国際公開第0100657号パンフレット
【特許文献6】国際公開第0100656号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第03/0203927号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第04/0216437A1号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第04/0152736号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第04/0192753号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
1つの実施形態において、本発明は、活性薬学的成分、崩壊剤、および崩壊促進剤を含む急速に崩壊する固体剤形に関しており、ここで、上記剤形は、湿式顆粒化プロセスの生成物である。
【0011】
いくつかの実施形態において、崩壊促進剤はケイ酸カルシウムである。
【0012】
いくつかの実施形態において、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。
【0013】
いくつかの実施形態において、崩壊剤は、上記固体剤形の約5重量%〜約10重量%を構成する。
【0014】
いくつかの実施形態において、崩壊促進剤は、上記固体剤形の約5重量%〜約50重量%を構成する。
【0015】
いくつかの実施形態において、崩壊剤の崩壊促進剤に対する重量比は、約0.2と約0.5の間である。
【0016】
いくつかの実施形態において、活性薬学的成分は、トロンビンレセプターアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、少なくとも約80%の平均血小板阻害が投与の30分以内に達成された。
【0017】
いくつかの実施形態において、トロンビンレセプターアンタゴニストは、以下の式:
【0018】
【化1】

で表されるか、または、薬学的に受容可能なその塩である。いくつかの実施形態において、上記薬学的に受容可能な塩は硫酸水素塩である。
【0019】
いくつかの実施形態において、トロンビンレセプターアンタゴニストは、以下の式:
【0020】
【化2】

で表されるか、または、薬学的に受容可能なその塩である。
【0021】
いくつかの実施形態において、トロンビンレセプターアンタゴニストは、以下の式:
【0022】
【化3】

で表されるか、または、薬学的に受容可能なその塩である。
【0023】
いくつかの実施形態において、トロンビンレセプターアンタゴニストは、以下の式:
【0024】
【化4】

で表されるか、または、薬学的に受容可能なその塩である。
【0025】
いくつかの実施形態において、急速に崩壊する固体剤形は、結合剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記結合剤は、ポビドンである。
【0026】
いくつかの実施形態において、急速に崩壊する固体剤形は、第一充填剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記第一充填剤は、結晶セルロースである。
【0027】
いくつかの実施形態において、急速に崩壊する固体剤形は、第二充填剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記第二充填剤は、マンニトールである。
【0028】
いくつかの実施形態において、急速に崩壊する固体剤形は、潤滑剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記剤形は口腔内に置いて約30秒以内に崩壊する。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記剤形は口腔内に置いて約15秒以内に崩壊する。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記剤形は口腔内に置いて約10秒以内に崩壊する。
【0032】
1つの実施形態において、本発明はトロンビンレセプターアンタゴニストを含む急速に崩壊する固体剤形を投与する工程を包含する、急性冠状動脈症候群のリスクがある患者を処置する方法に関する。1つの実施形態において、トロンビンレセプターアンタゴニストは以下の式:
【0033】
【化5】

で表されるか、または薬学的に受容可能なその塩である。いくつかの実施形態において、上記薬学的に受容可能な塩は硫酸水素塩である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
そのTRA開発プログラムの一部として、Schering−Plough社はその湿式顆粒化錠剤処方物の改良を研究してきた。これらの処方物は、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む。適切に選択された賦形剤が、崩壊促進剤として作用し得、それにより、崩壊剤によって錠剤に与えられる崩壊作用を増加させ得たかどうかについての疑問が生じた。特に、崩壊促進剤としてのケイ酸カルシウムの使用が研究された。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「顆粒化」は、活性薬学的成分を含むより大きな顆粒へ粉末粒子を凝集させるプロセスを指す。用語「湿式顆粒化」は、固体剤形を与えるための、粉末の出発原料に液体を加え、撹拌し、乾燥する工程を包含する任意のプロセスを指す。生じた顆粒状薬生成物は、様々な最終剤形(例えば、カプセル、錠剤、オブラート、ゲル、ロゼンジなど)にさらに加工され得る。
【0036】
代表的な急速に崩壊する処方物において、経口投与後の崩壊時間は30秒未満であり、好ましくは15秒未満であり、より好ましくは10秒未満である。溶解時間は、代表的には、薬学的簡易装置(例えば、USP Dissolution Apparatus 1(バスケット)またはApparatus 2(パドル))を用いて、インビトロの環境で測定される。代替の溶解試験方法(例えば、フロースルー溶解セル)もまた、実施形態の物理的性質に基づいて使用され得る。
【0037】
湿式顆粒化プロセスにおける原料は、代表的には、粉末形態の活性薬学的成分である。上記粉末は、粉砕により生成され得、粉砕工程に起因する粒子サイズ分布は、処方物の特性に影響を与え得る。活性薬学的成分は、他の賦形剤(例えば、結合剤、崩壊剤、充填剤、または潤滑剤)と共に、粉末混合物へ混合され得る。
【0038】
粉末混合物は、次いで、顆粒化流体へ導入される。顆粒化流体は、代表的には、液体の最も一様な分布のために噴霧によって適用される。適用される顆粒化流体の相対量は、形成する顆粒のサイズおよび機構的特性に影響を与える。過剰な顆粒化流体は、後の加工において問題(例えば、湿った状態での篩い分け)をもたらし得るスラリーの形成を生じさせ得る。顆粒化流体は、活性薬学的成分の物理化学的特性(例えば、溶解性)に応じて、水性であっても非水性であってもよい。種々の賦形剤(例えば、結合剤、崩壊剤、充填剤、または潤滑剤)は、粉末混合物への適用の前に、顆粒化流体に混合され得る。顆粒化流体は、代表的には、閉じられた容器中で粉末混合物へ、通常撹拌を伴って適用される。完全な混合を確実にするために、高せん断撹拌(high−shear agitation)が利用され得る。
【0039】
顆粒化流体が粉末混合物に適用され、十分な撹拌が適用され、粉末粒子を顆粒へ凝集させた後、顆粒は乾燥され、粉にされた。粉にされた後、追加の賦形剤が加えられ得、最終混合物を形成し得る。そのような追加の賦形剤としては、結合剤、崩壊剤、充填剤、および潤滑剤が挙げられ得る。次いで、最終混合物は圧縮して所望の固体剤形(例えば、錠剤)にされる。
【0040】
化合物Aの硫酸水素塩は、高い活性のトロンビンレセプターアンタゴニストであり、湿式顆粒化技術を用いて調製される急速に崩壊する処方物中の活性薬学的成分として使用された。
【0041】
【化6】

表1では、この湿式顆粒化で使用された成分を示す。
【0042】
【表1】

化合物Aの硫酸水素塩、ポビドンK30(結合剤)、結晶セルロース(Avicel PH 102、充填剤)、およびクロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)を含む粉末混合物を調製した。顆粒化流体を、ポビドンを脱イオン水中に溶かすことにより調製した。顆粒化流体を高せん断造粒機で混合された粉末へ噴霧した。生じた顆粒を乾燥し、粉にし、そして、ケイ酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、マンニトール、およびステアリン酸マグネシウムを含む追加の賦形剤と、通常のタンブルブレンダー(tumble blender)を用いて混合した。最終混合物を、回転錠剤成形機を用いて圧縮し錠剤にした。摩損度試験および崩壊試験を実行し、錠剤の性能を評価した。ここで、ケイ酸カルシウムを崩壊促進剤として、クロスカルメロースナトリウムを崩壊剤として、結晶セルロースを第二充填剤として、ステアリン酸マグネシウムを潤滑剤として使用した。マンニトールを充填剤として、そして、口当たりの良さを増すために使用した。結果として生じた処方物を表2に示す。
【0043】
【表2】

本明細書中で使用される場合、用語「崩壊促進剤」は、賦形剤は存在しないが同じ量の崩壊剤を含む処方物と比較して、崩壊剤と一緒に処方物中に存在することにより剤形の崩壊速度を増加させる賦形剤を意味する。クロスカルメロースナトリウムを崩壊剤として用いる湿式顆粒化処方物において、ケイ酸カルシウムは崩壊促進剤の一例である。本発明において、好ましくは、崩壊促進剤は固体剤形の約5重量%と約50重量%の間を構成し、崩壊剤の崩壊促進剤に対する重量比は約0.2と約0.5の間である。
【0044】
上記処方物において、ケイ酸カルシウムおよびクロスカルメロースナトリウムは、最終混合物の約29%を構成した。ケイ酸カルシウムとクロスカルメロースナトリウムの比は27:7であった。ケイ酸カルシウムおよびクロスカルメロースナトリウムのそのような高い含有量は、処方物の加工性に否定的な影響を与えなかった。表3に表されるように、3KP〜4KPの錠剤硬度では、USP Disintegration Testerで37℃の900mLの脱イオン水を用いたとき、崩壊時間は8秒〜10秒であった。錠剤の崩壊時間の速さは、錠剤硬度の増加により損なわれず、そして極度に柔らかい錠剤、または錠剤の欠陥と関係なかった。錠剤の摩損度は低かった(すなわち、約0.15%以下)。
【0045】
【表3】

崩壊促進剤(例えば、ケイ酸カルシウム)を含まない錠剤は、はるかに遅い崩壊時間を示した。例えば、29%のクロスカルメロースナトリウムおよび0%のケイ酸カルシウムを含む錠剤処方物は平均崩壊時間が5分であった。したがって、崩壊剤および崩壊促進剤を適切に使用することで、化合物Aの硫酸水素塩のための急速に崩壊する錠剤を実現したと結論付けた。
【0046】
これまでに参考にされた各賦形剤は、湿式顆粒化プロセス、または剤形のいずれかにおいて、特有の機能を有する。結合剤は、代表的には、顆粒化剤として使用されるポリマーであり、顆粒強度を、乾燥プロセスを耐えるのに十分に増加させる。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、ゼラチン、加工デンプン、動物性または植物性タンパク質由来の物質、デキストリンおよび大豆、小麦および車前子タンパク質; ゴム(例えば、アカシア、グアル、寒天、およびキサンタン); 多糖; アルギナート; カルボキシメチルセルロース; カラギーナン; デキストラン; ペクチン; 合成ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン); ならびに、ポリペプチド/タンパク質または多糖複合体(例えば、ゼラチン−アカシア複合体)を含むことが理解されるものとする。
【0048】
様々な加工デンプンが市販されており、本発明において有用である。加工デンプンとしては、以下のものが挙げられる:
アルファー化デンプン(ドラム乾燥または押し出し成形により生産される);
低粘度デンプン(グリコシド結合の制御された加水分解により生産される);
デキストリン(少量の酸存在下、乾燥デンプンを焼くことにより生産される);
酸加工デンプン(必要な粘度に達するまで希酸中で懸濁させることにより生産される);
酸化デンプン(酸化剤によりカルボニル基、または、カルボキシル基を導入し、解重合を起こし、劣化、および、糊化能力を減少させる);
酵素加工デンプン(必要とされる物理化学的特性を獲得するための、制御された酵素分解により生産される);
架橋デンプン(架橋構造を形成するために、ヒドロキシル基と、二官能性または多官能性試薬(例えば、オキシ塩化リン、トリメタリン酸ナトリウム、およびエピクロロヒドリン)とを反応させることにより生成される);ならびに
安定化デンプン(幅広く様々な生産品を提供するために、アルカリ性触媒存在下、エーテル化試薬またはエステル化試薬とデンプンを反応させることにより生産される)。
【0049】
一般的に使用される結合剤としてはデンプン、アルファー化デンプン、アカシア、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)が挙げられる。
【0050】
崩壊剤は、口腔内での流体への暴露後、錠剤の膨張および崩壊を促進するために使用される。一般的に使用される崩壊剤としては、デンプン、結晶セルロース、不溶性イオン交換樹脂、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、クロスポビドン、およびゴム(寒天、グアル、およびキサンタンを含む)が挙げられる。本発明において、崩壊剤は、好ましくは固体剤形の約5重量%と約10重量%の間を構成する。
【0051】
潤滑剤は、粉末の流動性を増進させるため、ならびに、錠剤のパンチ面と錠剤パンチの間の摩擦、および、錠剤表面とダイ壁の間の摩擦を減らすために使用される。最も一般的に使用される潤滑剤の中には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、および安息香酸ナトリウムがある。
【0052】
充填剤は大部分を提供し、活性薬学的成分に結合し得、それにより、分離の可能性を減少させ得、そして内容物の均一性を促進させ得る。一般的に使用される充填剤としては、結晶セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物、ラクトース、ソルビトール、およびマンニトールが挙げられる。
【0053】
本発明は、任意の融和性のある活性薬学的成分(限定はされないが、トロンビンレセプターアンタゴニストが挙げられる)を含む湿式顆粒化処方物中での崩壊促進剤の使用を包含する。しかしながら、ACSを処置することにおけるTRAの有用性の点、およびACSのリスクのある患者に迅速に投薬することが重要であるという点で、発明者は、本発明は任意および全てのトロンビンレセプターアンタゴニストの使用を特に包含すると考える。
【0054】
種々の化合物が、トロンビンレセプターアンタゴニストとしての活性を示すと例示されてきており、その化合物の多くはヒンバシンアナログである。米国特許出願公開第04/0152736号明細書に開示されるように、特に好ましい式Iの化合物のサブセットは、以下の化合物:
【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

および、薬学的に受容可能なその塩である。
【0057】
米国特許第7,304,078号明細書は、特に活性且つ選択的である式IIのトロンビンレセプターアンタゴニストのサブセットを開示する。これらの化合物は、以下の:
【0058】
【化9】

ならびに、薬学的に受容可能なその異性体、塩、溶媒和物、および多形体である。
【0059】
以下の化合物:
【0060】
【化10−1】

【0061】
【化10−2】

または、薬学的に受容可能なその異性体、塩、溶媒和物、もしくは共結晶(co−crystal)形態は、それらの薬物動態学的および薬力学的特性に基づいて、特に好ましい。化合物Aおよび化合物Cは、米国特許第7,304,078号明細書に開示され、化合物Aの硫酸水素塩は、米国特許第7,235,567号明細書に開示される。化合物Aの硫酸水素塩は、現在Schering−Plough社により、トロンビンレセプターアンタゴニストとして開発中である。化合物Bは米国特許第6,645,987号明細書に開示される。
【0062】
本発明の処方物中で使用する他の化合物は、米国特許第6,063,847号明細書、同第6,326,380号明細書、米国特許出願公開第03/0203927号明細書、同第03/0216437号明細書、同第04/0192753号明細書、および同第04/0176418号明細書のいずれにも開示される。上記文献の化合物に関する開示は、その全体が参考として全て援用される。トロンビンレセプターアンタゴニストとして活性を示す他の物質を含む処方物もまた、本発明の範囲内である。他の物質としては、現在Eisaiで開発中のE5555が挙げられ、その構造は以下の通りである。
【0063】
【化11】

一連のインダゾールペプチド模倣物質(peptidomimetics)は、トロンビンレセプターアンタゴニストとして活性を示すと、米国特許第7,049,297号明細書において報告される。米国特許第7,049,297号明細書は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、処方物は、水無しで飲み込まれ得る経口固体剤形である。なぜなら、いくつかの実施形態において、処方物は約30秒未満で、好ましくは約15秒未満で、さらに好ましくは約10秒未満で舌の上で急速に崩壊するからである。そのような急速な崩壊現象は、活性成分の強化された溶解、および、その後のそのような成分の最適な、すなわち、急速な薬物動態学的プロフィールの実現を提供し得る。本質的に全てのトロンビンレセプターアンタゴニストが約15分以内に溶けることが好ましい。
【0065】
急速に崩壊する固体剤形を提供することにおける最終目的の一つは、ACSのリスクのある患者において、血小板阻害の速やかな開始をもたらすのに十分なトロンビンレセプターアンタゴニストの血中濃度プロフィールを提供することである。本発明のTRA実施形態は、投与の30分以内に少なくとも約80%の平均血小板阻害をもたらすと考えられる。血小板阻害は、米国特許第7,304,078号明細書の52欄〜54欄で考察されており、その考察は本明細書中で援用される。
【0066】
本発明は、これまでに記載したようなトロンビンレセプターアンタゴニストの急速に崩壊する処方物の有効量を投与することにより、急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法をさらに包含する。本明細書中で使用される場合、用語「有効量」は、急性の心臓の事象後、心臓血管系に対するさらなる損傷を予防するのに有効なトロンビンレセプターアンタゴニストの量を示すと理解される。本明細書中に記載される急速に崩壊する剤形は、トロンビンレセプターアンタゴニストの負荷投与量の投与における使用のために企図される。本発明の処方物は、好ましくは、上に記載されるトロンビンレセプターアンタゴニストを約10mg〜約50mgの量で含む。10mg、20mg、および40mgの投与量は、トロンビンレセプターの負荷投与量の候補である。40mgの負荷投与量は、第III相の臨床治験における投与が計画される。
【0067】
本発明が、上に示された特定の実施形態と併せて記載されてきた一方、多くのその代替、改変および変更は、当業者にとって明らかである。全てのそのような代替、改変、および変更は、本発明の意図および範囲内にあることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬学的成分、崩壊剤、および崩壊促進剤を含む急速に崩壊する固体剤形であって、該剤形が湿式顆粒化プロセスの生成物である、剤形。
【請求項2】
前記崩壊促進剤がケイ酸カルシウムである、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項3】
前記崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムである、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項4】
前記崩壊剤が前記固体剤形の約5重量%〜約10重量%を構成する、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項5】
前記崩壊促進剤が前記固体剤形の約5重量%〜約50重量%を構成する、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項6】
崩壊促進剤に対する崩壊剤の重量比が約0.2と約0.5の間である、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項7】
前記活性薬学的成分がトロンビンレセプターアンタゴニストである、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項8】
前記トロンビンレセプターアンタゴニストが下記の式:
【化12】

で表されるか、または薬学的に受容可能なその塩である、請求項7に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項9】
前記薬学的に受容可能な塩が硫酸水素塩である、請求項8に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項10】
前記トロンビンレセプターアンタゴニストが下記の式:
【化13】

で表されるか、または薬学的に受容可能なその塩である、請求項7に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項11】
前記トロンビンレセプターアンタゴニストが下記の式:
【化14】

で表されるか、または薬学的に受容可能なその塩である、請求項7に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項12】
前記トロンビンレセプターアンタゴニストが下記の式:
【化15】

で表されるか、または薬学的に受容可能なその塩である、請求項7に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項13】
結合剤をさらに含む、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項14】
前記結合剤がポビドンである、請求項13に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項15】
第一充填剤をさらに含む、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項16】
前記第一充填剤が結晶セルロースである、請求項15に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項17】
第二充填剤をさらに含む、請求項16に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項18】
前記第二充填剤がマンニトールである、請求項17に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項19】
潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項20】
前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項19に記載の急速に崩壊する固体剤形。
【請求項21】
請求項7に記載の急速に崩壊する固体剤形を投与する工程を包含する、急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法。
【請求項22】
請求項8に記載の急速に崩壊する固体剤形を投与する工程を包含する、急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法。
【請求項23】
請求項9に記載の急速に崩壊する固体剤形を投与する工程を包含する、急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法。
【請求項24】
請求項10に記載の急速に崩壊する固体剤形を投与する工程を包含する、急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法。
【請求項25】
請求項12に記載の急速に崩壊する固体剤形を投与する工程を包含する、急性冠状動脈症候群のリスクのある患者を処置する方法。

【公表番号】特表2010−513516(P2010−513516A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542908(P2009−542908)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/025996
【国際公開番号】WO2008/079260
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】