説明

固形洗浄剤組成物

【課題】
しっとりとしたクリーミィな泡立ちで使用感触に優れ、石鹸表面のざらつきのない固形洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】
ポリアクリル酸系増粘剤と塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体とを1:1〜1:6の質量比で配合し、さらにポリアクリル酸系増粘剤を0.1〜0.3質量%配合することを特徴とする。ポリアクリル酸系増粘剤は、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましく、機械練り固形洗浄剤であることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形洗浄剤組成物に関し、特に機械練り固形石鹸製品の表面状態の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形洗浄剤組成物としては、機械練り固形石鹸、枠練り固形石鹸が知られている。
固形洗浄剤組成物の製造工程は、ニートソープ製造工程と、乾燥・固化し添加物を加えて製品とする仕上げ工程に大別される。
ニートソープ製造工程では、原料脂肪酸を苛性ソーダ溶液と共に煮沸、攪拌すると、化合してニートソープとなる(脂肪酸の中和)。
【0003】
仕上げ工程には機械練り法と枠練り法とがある。
枠練り法で製造した固形洗浄剤組成物は、溶けが遅く温水で使用するのに適しているが、水分が多いため保存中に水分が揮発して減量が激しく、外観が悪くなる等の欠点がある。また、製造工程で連続作業による作業の簡便化ができないので、最近では機械練り法による製品が増加している。
【0004】
機械練り法は、ニートソープを乾燥・固化した後、薄片状または顆粒状にした石鹸素地に、香料、色素、その他の添加物を加えて混和機に移し、よく攪拌混和し、これをロール、ブロッターにかけ、練りと圧縮によって押し固められた棒状に成型し押し出す。
機械練り法で製造した固形洗浄剤組成物は、ロール、ブロッターにおける練りによって起泡性がよいという利点がある。
【0005】
しかしながら、上記記載の機械練り固形洗浄剤組成物は、その使用感はさっぱりするものの使用後につっぱり感を感じるという難点があった。
これに配慮して、高分子ポリマーを保湿剤として一定量配合してきたが、泡立ちを阻害する、膨潤しやすい、溶け減りしやすいといったマイナス面があり、より優れた機械練り固形洗浄剤組成物の開発が期待されている。
泡質がクリーミィで使用感触に優れる石鹸を得るために、ポリアクリル酸系の増粘剤を保湿剤、泡質改善剤として配合することが知られているが(特許文献1)、経時で石鹸表面がざらついてしまう問題点があった。従来石鹸表面のざらつきに対しては、ロールミルなどの機械的力により改善を図っているが。ロールミルにより一時的に表面のざらつきを改善しても、配合した高分子ポリマーが経時で石鹸中に含まれる水分と反応することで膨潤し、ざらつきが発生することがあり、さらなる改善が望まれていた。
【特許文献1】特開昭61−157597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の課題に鑑みなされたもので、高分子ポリマー等の保湿剤の配合による経時での石鹸表面のざらつきを防止し、泡立ちがクリーミィーで、使用中のべたつきのない、使用感に優れた固形洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討した結果、イオン性の異なる2種の水溶性高分子である、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体とポリアクリル酸系増粘剤とを特定比率で配合することにより、石鹸表面のざらつきがなくなることを見出し、さらに泡質も良好で、使用中のべたつきのない固形洗浄剤組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリアクリル酸系増粘剤と塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体とを1:1〜1:6の質量比で配合することを特徴とする固形洗浄剤組成物を提供するものである。
【0009】
前記本発明にかかる固形洗浄剤組成物において、ポリアクリル酸系増粘剤を0.1〜0.3質量%配合することを特徴とする。
さらに、前記本発明にかかる固形洗浄剤組成物において、ポリアクリル酸系増粘剤がポリアクリル酸ナトリウムであることが好適である。
さらに、前記本発明にかかる固形洗浄剤組成物は、機械練り固形洗浄剤組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオン性の異なる2種の水溶性高分子、ポリアクリル酸ナトリウムと、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を配合することで、石鹸表面のざらつきをなくし、泡質、使用感に優れた固形洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
ポリアクリル酸系増粘剤
本発明において使用されるポリアクリル酸系増粘剤は、アニオン性の水溶性高分子であり、具体的にはポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。ポリアクリル酸ナトリウムを配合すると、石鹸のサクサクとした泡が細かいコクのあるクリーミィな泡となり、なめらかな感触を付与することができる。
ポリアクリル酸ナトリウムとしては、アロンビスS(日本純薬株式会社製)を用いることができる。
配合量としては、0.1〜0.3質量%がざらつき改善、泡立ち、使用感触のバランスの点で好ましい。配合量が0.5質量%を超えると、使用中のべたつきや糸引きがおきる傾向がある。
【0012】
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体
本発明において使用される塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体は、カチオン性の水溶性高分子であり、皮膚、毛髪用のコンディショニング剤として公知のものである。具体的には、マーコート2200(松本交商)を用いることができる。本発明においては、特に塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を、粉末状態で石鹸素地に分散配合することが製造上好ましく、安定性の点で好適である。
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を溶液状で配合すると、溶液中の水分のため石鹸素地との混和時に組成物中の他成分が溶解し、製造が著しく困難となる。塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体の配合量は、組成物に対して0.3〜2.0質量%が好適である。
なお、前記ポリアクリル酸系増粘剤(ポリアクリル酸ナトリウム)と、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体との配合比率が、1:1〜1:6であることが、石鹸表面のざらつき改善、泡立ち、使用感触のバランスの点で特に好ましい。この比率を外れると表面のざらつき、使用中のべたつき等の点で好ましくなくなる傾向がある。
【0013】
石鹸素地
本発明で用いられる石鹸素地は、油脂類の鹸化物や脂肪酸のアルカリ中和物をいう。
具体的には、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、綿実油、大豆油等の植物油脂を単独、或いは混合物の状態でアルカリにより鹸化、或いはこれらの油脂を分解して得られる脂肪酸を単独、或いは混合物の状態でアルカリにより中和して得られる。鹸化又は中和の際に用いられるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、AMT、アルカノールアミン等の塩基が挙げられる。
【0014】
本発明にかかる固形洗浄剤組成物は、以下のようにして製造される。
各種脂肪酸類を40〜60℃で加熱溶融し、これに対イオンとなるアルカリ類を加え、中和を行う。乾燥・固化した後、薄片状または顆粒状にし、これに保湿剤、香料、色素、その他の添加物、薬剤等を加えて混和機に移し、よく攪拌混和し、これをロール、ブロッターにかけ、練りと圧縮によって押し固められた棒状に成型し押し出す。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、必要に応じて上記成分に加えて保湿剤として、ショ糖、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのサッカロイド類又はポリオール類を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0016】
さらに、通常洗浄剤組成物に含まれる石鹸、アルキル硫酸エステル(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸(塩)、ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸(塩)、イセチオン酸(塩)、アルキルスルホ酢酸(塩)などのアニオン界面活性剤、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系両性界面活性剤等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、マルチトールヒドロキシ脂肪族エーテルなどの非イオン界面活性剤、トリメチルアルキルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤、シャクヤク、イリス、スギナ、ヤグルマギク、バラ抽出液などの植物抽出成分、トラネキサム酸、アルブチンなどの薬剤、香料、防腐剤などの成分も適宜配合することができる。
また本発明においてさらに、パルミトイルサルコシンナトリウムを配合することにより、石鹸カス(洗浄後に皮膚上にのこる残渣)を減らすことができる。
【実施例】
【0017】
以下、具体的に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例においては、評価は以下のように行った。
【0018】
10名の専門パネルに実施例1〜8および比較例1〜6の各試料を分配し、基準サンプルに対して石鹸表面のざらつきと使用中のべたつき、および泡質(クリーミィー感)について以下の方法により評価した。
石鹸表面のざらつきについてはまず、水道水を20℃に調整し、石鹸を半使用状態とし、次に、同じく20℃の水道水にて石鹸表面のざらつきを確認し、評価した。使用中のべたつき、及び泡質については、実使用において判定した。
判定は以下の判定基準に従い各項目について評価し、評定平均値を示した。
【0019】
<比較評価基準>
評価基準サンプルに対して、好ましいものはプラス、好ましくない場合はマイナスの評点で判定した。
0:差がない
±1:同時に使用して分かる程度の差(やや差がある)
±2:単品づつで使用してわかる差(差がある)
±3:単品で使用して明らかにわかる差(かなり差がある)
<評価基準サンプル>
(1) 機械練り石鹸素地 残余
(2) ソルビトール 1.0
(3) 酸化チタン 適量
(4) エデト酸 0.1
(5) エチドロン酸 0.1
(6) 香料 適量
(製法)
成分(1)に、(4)、(5)を均一に混合する。
次に(3)を添加し、均一に混合し、(6)、(2)を添加し混合する。これを練り出し機で均一混合した後、型打ちし、固形石鹸を得た。
【0020】
なお、機械練り石鹸素地は、ラウリン酸Na:20%、ミリスチン酸Na:5%、パルミチン酸Na:35%、ステアリン酸Na:5%、オレイン酸Na:25%、水:10%のものを用いた。(以下の実施例も同様)
【0021】
実施例1〜8、比較例1〜6
表1、2に示す処方で機械練り固形石鹸を製造し、前述の評価基準に基づき判定した結果を示す。
(製法)
1.成分(1)に(6)(7)を均一に混合する。
2.1.に成分(2)、(3)、(5)を粉末状態で添加し、均一に混合する。
3.2.に成分(8)、(4)の順で添加し、均一に混合する。
4.3.を練りだし機で均一混合した後、型打ちし、固形石鹸を得た。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
前記表1の結果より、ポリアクリル酸と塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体の配合量が、1:1〜1:6(質量比)の際に、本願の効果が得られていることが分かる。また、ポリアクリル酸の配合量は、配合量が多いと泡質向上には寄与するものの、べたつきや石鹸表面のざらつき低減効果の点で好ましくなく、組成物中0.1〜0.3質量%であること、さらに塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体との共存させることに効果があることがわかる。
【0025】
以下、本発明のその他の配合例について説明する。いずれの配合例も常法により製造した。
なお、いずれも使用後につっぱり感を残さず、且つ泡立ち・膨潤・溶け減りの点で改善されたものであった。
【0026】
配合例1
石鹸素地 92.0 質量%
ポリアクリル酸ナトリウム 0.15
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体
0.4
ソルビトール 0.8
パルミトイルサルコシンナトリウム 3.0
キレート剤 0.01
二酸化チタン 0.2
バラ抽出液 0.01
香料 適量
イオン交換水 残余
【0027】
配合例2
脂肪酸ナトリウム塩 70.0 質量%
脂肪酸N−メチルタウリンナトリウム塩 20.0
ポリアクリル酸ナトリウム 0.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体
1.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
ヒマワリ油 1.0
キレート剤 0.2
二酸化チタン 0.2
パルミトイルサルコシンナトリウム 2.0
香料 適量
イオン交換水 残余
【0028】
配合例3
脂肪酸ナトリウム塩 48.0 質量%
脂肪酸カリウム塩 32.0
イセチオン酸ナトリウム 14.0
グリセリン 1.0
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体
0.3
パルミトイルサルコシンナトリウム 1.0
キレート剤 0.01
二酸化チタン 0.2
ヤグルマギク抽出液 0.01
香料 適量
イオン交換水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸系増粘剤と塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体とを1:1〜1:6の質量比で配合することを特徴とする固形洗浄剤組成物。
【請求項2】
ポリアクリル酸系増粘剤を0.1〜0.3質量%配合することを特徴とする固形洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1及び2記載の組成物において、ポリアクリル酸系増粘剤が、ポリアクリル酸ナトリウムであることを特徴とする固形洗浄剤
【請求項4】
請求項1〜3記載の固形洗浄剤組成物が、機械練り固形洗浄剤組成物であることを特徴とする、固形洗浄剤組成物。



【公開番号】特開2007−308579(P2007−308579A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138470(P2006−138470)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】