説明

固液二相流体の移送装置

【課題】移送の際の負圧対策が施された固液二相流体の移送装置を提供する。
【解決手段】送り側容器T1、受け側容器T2及び移送配管1を真空に対応したものから構成し、送り側容器T1の真空度を制御する真空ポンプ6と、受け側容器T2の真空度を制御する真空ポンプ7とを設け、固液二相流体S1を移送する際には、真空ポンプ6、7により、送り側容器T1及び受け側容器T2を共に負圧とすると共に、一定の差圧で送り側容器T1の圧力を受け側容器T2の圧力より大きくして、受け側容器T2に固液二相流体を圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッシュ水素等、固体と液体とを混合した固液二相流体の移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
将来の水素利用社会における水素利用形態として、高密度での保存が可能であることから、液体水素は有力な候補の一つである。この液体水素は、沸点が20K(一253℃)であることから、蒸発によりボイルオフガス(以下、BOGと呼ぶ。)が発生し、ロスの発生が考えられる。
【0003】
一方、液体水素と固体水素を混合したスラッシュ水素は、同体積の大気圧沸点液体水素と比較して、密度が10%以上、保有寒冷量が30%以上増加するため、BOG発生の抑制と貯蔵密度の更なる向上が可能であり、液体水素より付加価値が高い媒体として、スラッシュ水素を利用する機器(製造装置、供給装置、貯蔵装置、移送装置等)の開発が現在進められている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−74773号公報
【特許文献2】特開2002−189024号公報
【特許文献3】特開2006−153208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素の物性上、固体、液体、気体の三状態が共存できる点は三重点(13.8K/0.007Mpa(≒53Torr))のみである。そのため、三重点以外の条件下で、気体水素と固体水素が接触した場合、接触点付近では、気体水素の凝縮による圧力の低下と固体水素の融解が発生する。
【0006】
そして、液体水素と固体水素を混合したスラッシュ水素を移送装置により移送する際には、固体水素と気体水素とが接触する可能性があるため、上述した理由により、容器及び配管内が負圧になるおそれがある。スラッシュ水素の移送には、ポンプ等の使用が困難であるため、移送には容器間の差圧を利用しているが、容器及び配管内が負圧になると、移送時の流量制御を失い、移送装置の運用を困難にしていた。
【0007】
これを、図9を参照して説明する、なお、図9(a)は、従来の移送装置における移送前の状態を示す図であり、図9(b)は、従来の移送装置における移送時の状態を示す図である。
【0008】
図9(a)に示すように、従来の移送装置において、移送前には、送り側容器T1にスラッシュ水素S1が貯蔵されており、送り側容器T1は、空気等が混入しないように、大気圧以上の圧力P1の気体水素G1で加圧されている。又、受け側容器T2も、空気等が混入しないように、大気圧以上の圧力P2の気体水素G2で加圧されている。そして、送り側容器T1と受け側容器T2との間は、バルブ82を有する移送配管81で接続されている。送り側容器T1の圧力P1は、受け側容器T2の圧力P2より大きいことから、バルブ82を開くと、その差圧により、移送配管81を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。
【0009】
ところが、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されると、図9(b)に示すように、送り側容器T2にスラッシュ水素S2が移送されると共に、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素と受け側容器T2中の気体水素G2とが接触することになる。三重点以外の条件下で気体水素G2と固体水素が接触すると、気体水素G2の凝縮Cが発生し、それに伴い、受け側容器T2の圧力P2が低下してしまう。このとき、受け側容器T2の圧力P2は大気圧以下、つまり、負圧になるまで(三重点の圧力0.007Mpaまで)低下してしまい、その場合、受け側容器T1の圧力P1との差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われてしまう問題が発生していた。
【0010】
又、従来の移送装置においては、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管81、バルブ82等は、負圧(真空)に対応したものではなく、受け側容器T2が負圧になった場合には、接続部分等から空気が混入する問題も発生していた。
【0011】
このような問題は、例えば、受け側容器T2が負圧にならないように、水素より沸点が低いヘリウムガスにより加圧してやれば解消可能である。しかしながら、燃料電池自動車、液体水素−酸素ロケット等において水素を利用する場合、燃料の液体水素に水素以外の不純物が混入することは好ましくなく、水素単体の利用が求められている。従って、移送装置における負圧対策として、ヘリウムガス等の不純物を用いることは望ましくない。
【0012】
このように、スラッシュ水素等の固液二相流体の移送装置においては、移送時に負圧が発生する問題があり、負圧対策を施した上で、移送することが望まれている。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、移送の際の負圧対策が施された固液二相流体の移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する第1の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器、前記第2の容器及び前記移送配管を真空に対応したものから構成し、
前記第1の容器の真空度を制御する第1の真空制御手段と、
前記第2の容器の真空度を制御する第2の真空制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の真空制御手段及び前記第2の真空制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を共に負圧とすると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第2の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器内部の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記移送配管を前記第1の容器及び前記第2の容器の底部に接続し、
前記第1の容器を加圧する加圧制御手段と、
前記第2の容器の圧力を制御する圧力制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記加圧制御手段により前記第1の容器を加圧すると共に、前記加圧制御手段及び前記圧力制御手段により、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第3の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
上記第2の発明に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記第2の容器内部に、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の対流を防止する対流防止板を設けたことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第4の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記固液二相流体と同種の低温の気体を生成する低温気体生成手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第1の容器を加圧する第1の加圧制御手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第2の容器を加圧する第2の加圧制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の加圧制御手段及び前記第2の加圧制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を加圧すると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第5の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
上記第4の発明に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記低温気体生成手段は、
前記固液二相流体と同種の気体を冷却して低温の気体を生成する熱交換器、又は、前記固液二相流体と同種の液体を気化して低温の気体を生成する熱交換器から構成したことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第6の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記移送配管を分岐する分岐配管と、
前記分岐配管に流れる前記固液二相流体を気化して低温の気体を生成する低温気体生成手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第1の容器を加圧する第1の加圧制御手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第2の容器を加圧する第2の加圧制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の加圧制御手段及び前記第2の加圧制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を加圧すると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第7の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
上記第4から第6のいずれか1つの発明に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記移送配管を前記第1の容器及び前記第2の容器の底部に接続し、
前記第1の容器内部の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第8の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器内部及び前記第2の容器内部を2つに分離して、前記第1の容器内部の分離された一方側に前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵し、前記第1の容器内部の分離された他方側に前記固液二相流体を貯蔵し、前記第2の容器内部の分離された一方側に前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記第1の容器内部の分離された一方側に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体を気化する第1の加熱手段と、
前記第1の加熱手段で気化された気体を用いて、前記第1の容器を加圧する第1の加圧制御手段と、
前記第2の容器内部の分離された一方側に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体を気化する第2の加熱手段と、
前記第2の加熱手段で気化された気体を用いて、前記第2の容器を加圧する第2の圧力制御手段とを設けて、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の加圧制御手段及び前記第2の加圧制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を加圧すると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器内部の分離された他方側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第9の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
上記第8の発明に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記移送配管を、前記第1の容器内部の分離された他方側の底部と前記第2の容器内部の分離された他方側の底部に接続し、
前記第1の容器内部の分離された他方側の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部の分離された他方側にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第2の容器内部の分離された他方側に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決する第10の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器内部の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記移送配管を、前記第1の容器の底部と前記第2の容器の底部に接続し、
前記第1の容器を加圧する加圧制御手段と、
前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の上層を気化する局所加熱手段と、
前記局所加熱手段で気化された気体を用いて、前記第2の容器の圧力を制御する圧力制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記加圧制御手段により前記第1の容器を加圧すると共に、前記加圧制御手段及び前記圧力制御手段により、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決する第11の発明に係る固液二相流体の移送装置は、
上記第10の発明に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記局所加熱手段として、超電導体からなるヒータを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、固液二相流体、例えば、スラッシュ水素の移送中に負圧が発生しても、安定して移送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1〜図8を参照して、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態のいくつかを説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、固液二相流体であるスラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管1と、移送配管1に設けられたバルブ2とを有しており、更に、送り側容器T1の上部に接続された配管3及び配管3に設けられたバルブ4を介して、送り側容器T1に気体水素を供給する水素ボンベ5と、送り側容器T1を負圧の圧力に制御する真空ポンプ6(第1の真空制御手段)と、受け側容器T2を負圧の圧力に制御する真空ポンプ7(第2の真空制御手段)とを有する。そして、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管1、バルブ2等は、負圧(真空)に対応したものから構成している。なお、送り側容器T1、受け側容器T2等は、断熱構造となっており、これは、後述の実施例2〜8でも同様である。
【0028】
移送配管1は、送り側容器T1においては、送り側容器T1の上部に接続されて、送り側容器T1の底部の方まで延設されており、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されている。又、移送配管1は、受け側容器T2においては、送り側容器T2の上部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2を満たす気体水素G2中に配置されている。
【0029】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、真空ポンプ6により、内部の圧力P1が大気圧以下の所定圧力(0.007Mpa以上0.1Mpa(≒760torr)以下の範囲)となるように制御され、受け側容器T2も、圧力センサ、真空ポンプ7により、内部の圧力P2が大気圧以下の所定圧力(0.007Mpa以上0.1Mpa以下の範囲)となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。例えば、受け側容器T2の圧力P2が三重点の圧力0.007Mpa程度まで低下することを想定する場合には、圧力P1を0.027Mpa(≒200torr)程度に制御すればよい。
【0030】
従って、バルブ2を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管1を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2とを大気圧以下の所定圧力に制御すると共に、圧力P1と圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。更に、受け側容器T2の圧力P2を三重点の圧力0.007Mpaに制御する場合には、三重点に近い条件下で、気体水素G2と固体水素が接触することになり、気体水素G2が凝縮しても、凝縮による圧力低下の影響は小さくなる。
【0031】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、移送時に送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2を大気圧以下の負圧とし、負圧状況下において、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、移送流量の制御を失うことなく、安定して移送を行うことができる。
【実施例2】
【0032】
図2は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管11と、移送配管11に設けられたバルブ12とを有しており、更に、送り側容器T1の上部に接続された配管13及び配管13に設けられたバルブ14を介して、送り側容器T1に気体水素を供給する水素ボンベ13(加圧制御手段)と、送り側容器T2の上部に接続された配管16と、配管16に設けられ、受け側容器T2内の気体水素G2を放出して、内部の圧力P2を制御するバルブ17(圧力制御手段)とを有する。なお、本実施例において、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管11、バルブ12等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0033】
移送配管11は、送り側容器T1においては、送り側容器T1の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されている。又、移送配管11は、受け側容器T2においては、送り側容器T2の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0034】
更に、送り側容器T1においては、液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしている。この液体水素L1、L2は、自然に、上層から下層に向かって20.3Kから13.8Kへ温度変化(温度成層化)しており、この温度成層化した液体水素L1、L2が、スラッシュ水素S1、S2と気体水素G1、G2との間に存在することによって、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0035】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、配管13、バルブ14及び水素ボンベ15により、内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2も、圧力センサ、配管16及びバルブ17により、内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0036】
従って、バルブ12を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管11を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御しているので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性も小さくなる。
【0037】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させ、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、安定して移送を行うことができる。
【実施例3】
【0038】
図3は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管21と、移送配管21に設けられたバルブ22とを有しており、更に、送り側容器T1の上部に接続された配管23及び配管23に設けられたバルブ24を介して、送り側容器T1に気体水素を供給する水素ボンベ23(加圧制御手段)と、送り側容器T2の上部に接続された配管26と、配管26に設けられ、受け側容器T2内の気体水素G2を放出して、内部の圧力P2を制御するバルブ27(圧力制御手段)と、受け側容器T2内部に設けられた複数枚のバッフル板28(対流防止板)を有する。なお、本実施例においても、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管21、バルブ22等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0039】
移送配管21は、実施例2と同様に、送り側容器T1においては、送り側容器T1の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されており、又、受け側容器T2においては、送り側容器T2の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0040】
更に、実施例2と同様に、送り側容器T1においては、温度成層化された液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、温度成層化された液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしており、液体水素L1、L2により、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0041】
加えて、受け側容器T2内部に設けられたバッフル板28は、複数の開口部28aを有し、その面が水平方向に平行に配置されたものであり、又、受け側容器T2の深さ方向に沿って、複数段配置されている。このバッフル板28は、温度成層化された液体水素L2の対流を防止するものであり、特に、スラッシュ水素移送時における液体水素L2の対流を防止することにより、温度成層化された液体水素L2を維持して、スラッシュ水素S2中の固体水素と気体水素G2との接触を効果的に避けるようにしている。
【0042】
そして、移送時には、実施例2と同様に、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0043】
従って、バルブ22を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管21を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御するので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。更に、バッフル板28が存在するので、温度成層化された液体水素L2を維持することができる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性もより小さくなる。
【0044】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させると共に、温度成層化した液体水素L2をバッフル板28により維持しており、このような状態で、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、より安定して移送を行うことができる。
【実施例4】
【0045】
図4は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図4に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管31と、移送配管31に設けられたバルブ32とを有しており、更に、気体水素を供給する水素ボンベ33と、水素ボンベ33からの気体水素を冷却して供給する熱交換器34(低温気体生成手段)と、送り側容器T1の上部に接続されて、熱交換器34で冷却された気体水素を送り側容器T1へ供給する配管35と、配管35に設けられ、送り側容器T1内部の圧力P1を制御するバルブ36(第1の加圧制御手段)と、受け側容器T2の上部に接続されて、熱交換器34で冷却された気体水素を受け側容器T2へ供給する配管37と、配管37に設けられ、受け側容器T2内部の圧力P2を制御するバルブ38(第2の加圧制御手段)とを有する。なお、本実施例においても、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管31、バルブ32等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0046】
移送配管31は、実施例2、3と同様に、送り側容器T1においては、送り側容器T1の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されており、又、受け側容器T2においては、送り側容器T2の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0047】
更に、実施例2、3と同様に、送り側容器T1においては、温度成層化された液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、温度成層化された液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしており、液体水素L1、L2により、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0048】
加えて、熱交換器34は、水素ボンベ33からの気体水素を室温(≒300K)から、例えば、20Kまで冷却して、送り側容器T1、受け側容器T2へ供給するようにしている。これは、負圧防止を目的とするものであり、送り側容器T1、受け側容器T2の内部圧力を監視し、負圧になりそうな場合には、低温に冷却された気体水素を送り側容器T1、受け側容器T2へ供給することにより、負圧を防止している。又、低温に冷却された気体水素を用いることにより、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素の溶解及び液体水素L1、L2の温度上昇を防止している。
【0049】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、水素ボンベ33、熱交換器34、配管35及びバルブ36により、内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2も、圧力センサ、水素ボンベ33、熱交換器34、配管37及びバルブ38により、内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0050】
従って、バルブ32を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管31を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御するので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性も小さくなる。
【0051】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させ、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、安定して移送を行うことができる。
【0052】
実施例2、3の場合は、負圧防止を液体水素L1、L2のみに頼っているが、本実施例の場合、液体水素L1、L2の対流が発生して、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触が起こったとしても、外部から低温に冷却された気体水素を供給することにより、負圧を確実に防止することができる。
【0053】
なお、本実施例の場合には、実施例1(図1参照)に示す移送配管1のように、移送配管を、送り側容器T1、受け側容器T2の上部に接続した構成にも適用可能である。この場合、液体水素L1、L2は不要となる。
【実施例5】
【0054】
図5は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図5に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管41と、移送配管41に設けられたバルブ42とを有しており、更に、液体水素L3を貯蔵する貯蔵容器43と、貯蔵容器43に貯蔵する液体水素L3を気化するヒータ44(低温気体生成手段)と、送り側容器T1の上部に接続されて、貯蔵容器43で気化された気体水素G3を送り側容器T1へ供給する配管45と、配管45に設けられ、送り側容器T1内部の圧力P1を制御するバルブ46(第1の加圧制御手段)と、受け側容器T2の上部に接続されて、貯蔵容器43で気化された気体水素G3を受け側容器T2へ供給する配管47と、配管47に設けられ、受け側容器T2内部の圧力P2を制御する圧力制御バルブ48(第2の加圧制御手段)とを有する。なお、本実施例においても、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管41、バルブ42等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0055】
移送配管41は、実施例2〜4と同様に、送り側容器T1においては、送り側容器T1の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されており、又、受け側容器T2においては、送り側容器T2の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0056】
更に、実施例2〜4と同様に、送り側容器T1においては、温度成層化された液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、温度成層化された液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしており、液体水素L1、L2により、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0057】
加えて、ヒータ44は、貯蔵容器43に貯蔵された20.3Kの大気圧沸点の液体水素L3から気体水素G3を生成して、送り側容器T1、受け側容器T2へ供給するようにしている。これも、実施例4と同様に、負圧防止を目的とするものであり、送り側容器T1、受け側容器T2の内部圧力を監視し、負圧になりそうな場合には、ヒータ44により蒸発量を制御して、蒸発させた気体水素G3を送り側容器T1、受け側容器T2へ供給することにより、負圧を防止している。この蒸発させた気体水素G3は低温のままであり、低温の気体水素G3を用いることにより、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素の溶解及び液体水素L1、L2の温度上昇を防止している。つまり、実施例4では、常温の気体水素を熱交換器により冷却することにより、低温の気体水素を得ていたが、本実施例では、液体水素を気化するだけで、低温の気体水素を得ることができる。特に、送り側容器T1がスラッシュ水素ステーションである場合には、液体水素を貯蔵する貯蔵容器が併用されるため、本実施例の構成機器を低減することができる。
【0058】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、貯蔵容器43、ヒータ44、配管45及びバルブ46により、内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2も、圧力センサ、貯蔵容器43、ヒータ44、配管47及びバルブ48により、内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0059】
従って、バルブ42を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管41を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御するので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性も小さくなる。
【0060】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させ、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、安定して移送を行うことができる。
【0061】
実施例2、3の場合は、負圧防止を液体水素L1、L2のみに頼っているが、本実施例の場合も、液体水素L1、L2の対流が発生して、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触が起こったとしても、外部から低温の気体水素を供給することにより、負圧を確実に防止することができる。
【0062】
なお、本実施例の場合にも、実施例1(図1参照)に示す移送配管1のように、移送配管を、送り側容器T1、受け側容器T2の上部から挿入した構成にも適用可能である。この場合も、液体水素L1、L2は不要となる。
【実施例6】
【0063】
図6は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図6に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管51と、移送配管51に設けられたバルブ52とを有しており、更に、移送配管51を分岐する分岐配管53と、分岐配管53に設けられたバルブ54と、分岐配管53に設けられ、バルブ54を通過してくるスラッシュ水素を気化して、低温の気体水素を生成する熱交換器55(低温気体生成手段)と、送り側容器T1の上部に接続されて、熱交換器55で気化された気体水素を送り側容器T1へ供給する配管56と、配管56に設けられ、送り側容器T1内部の圧力P1を制御するバルブ57(第1の加圧制御手段)と、受け側容器T2の上部に接続されて、熱交換器55で気化された気体水素を受け側容器T2へ供給する配管58と、配管58に設けられ、受け側容器T2内部の圧力P2を制御するバルブ59(第2の加圧制御手段)とを有する。なお、本実施例においても、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管51、バルブ52等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0064】
移送配管51は、実施例2〜5と同様に、送り側容器T1においては、送り側容器T1の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されており、又、受け側容器T2においては、送り側容器T2の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0065】
更に、実施例2〜5と同様に、送り側容器T1においては、温度成層化された液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、温度成層化された液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしており、液体水素L1、L2により、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0066】
加えて、熱交換器55は、移送配管51から分岐したスラッシュ水素を蒸発させ、低温の気体水素を生成して、送り側容器T1、受け側容器T2へ供給するようにしている。これも、実施例4、5と同様に、負圧防止を目的とするものであり、送り側容器T1、受け側容器T2の内部圧力を監視し、負圧になりそうな場合には、バルブ54を開くと共に熱交換器55により低温の気体水素を生成して、生成した気体水素を送り側容器T1、受け側容器T2へ供給することにより、負圧を防止している。この蒸発させた気体水素は低温のままであり、低温の気体水素を用いることにより、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素の溶解及び液体水素L1、L2の温度上昇を防止している。つまり、実施例4、5では、別途、気体水素、液体水素を用意する必要があったが、本実施例では、送り側容器T1から移送されるスラッシュ水素の一部を分岐し、分岐したスラッシュ水素を気化することで、低温の気体水素を得ることができ、構成機器を更に低減することができる。
【0067】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、分岐配管53、バルブ54、熱交換器55、配管56及びバルブ57により、内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2も、圧力センサ、分岐配管53、バルブ54、熱交換器55、配管58及びバルブ59により、内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0068】
従って、バルブ52を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管51を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御するので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性も小さくなる。
【0069】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させ、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、安定して移送を行うことができる。
【0070】
実施例2、3の場合は、負圧防止を液体水素L1、L2のみに頼っているが、本実施例の場合も、液体水素L1、L2の対流が発生して、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触が起こったとしても、外部から低温の気体水素を供給することにより、負圧を確実に防止することができる。
【0071】
なお、本実施例の場合にも、実施例1(図1参照)に示す移送配管1のように、移送配管を、送り側容器T1、受け側容器T2の上部から挿入した構成にも適用可能である。この場合も、液体水素L1、L2は不要となる。
【実施例7】
【0072】
図7は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図7に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置において、送り側容器T1(第1の容器)の内部は壁63により分離されており、又、受け側容器T2(第2の容器)の内部も壁64により分離されている。そして、壁63により分離された送り側容器T1の一方側に液体水素L3を貯蔵しており、その他方側に、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵している。同様に、壁64により分離された受け側容器T2の一方側に液体水素L4を貯蔵しており、その他方側に、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵している。送り側容器T1の一方側には、ヒータ65(第1の加熱手段、第1の加圧制御手段)が設けられており、同様に、受け側容器T2の一方側にも、ヒータ66(第2の加熱手段、第2の加圧制御手段)が設けられている。又、送り側容器T1の他方側と受け側容器T2の他方側との間は、移送配管61により接続されており、この移送配管61にバルブ62が設けられている。なお、本実施例においても、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管61、バルブ62等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0073】
移送配管61は、実施例2〜6と同様に、送り側容器T1においては、送り側容器T1の他方側の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されており、又、受け側容器T2においては、送り側容器T2の他方側の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0074】
更に、実施例2〜6と同様に、送り側容器T1においては、温度成層化された液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、温度成層化された液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしており、液体水素L1、L2により、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0075】
加えて、ヒータ65は、送り側容器T1の一方側に貯蔵された液体水素L4を蒸発させて、低温の気体水素を生成するものであり、送り側容器T1内部の圧力P1を監視し、負圧になりそうな場合には、ヒータ65により低温の気体水素を生成することにより、送り側容器T1の負圧を防止している。同様に、ヒータ66は、受け側容器T2の一方側に貯蔵された液体水素L5を蒸発させて、低温の気体水素を生成するものであり、受け側容器T2内部の圧力P2を監視し、負圧になりそうな場合には、ヒータ66により低温の気体水素を生成することにより、受け側容器T2の負圧を防止している。これも、実施例4〜6と同様に、負圧防止を目的とするものである。この蒸発させた気体水素は低温のままであり、低温の気体水素を用いることにより、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素の溶解及び液体水素L1、L2の温度上昇を防止している。つまり、実施例4、5では、別途、気体水素、液体水素を用意する必要があったが、本実施例では、送り側容器T1の液体水素L4、受け側容器T2の液体水素L5を気化するだけで、低温の気体水素を得ることができ、構成機器を更に低減することができる。
【0076】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、ヒータ65により、内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2も、圧力センサ、ヒータ66により、内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0077】
従って、バルブ62を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管61を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御するので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性も小さくなる。
【0078】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させ、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、安定して移送を行うことができる。
【0079】
実施例2、3の場合は、負圧防止を液体水素L1、L2のみに頼っているが、本実施例の場合も、液体水素L1、L2の対流が発生して、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触が起こったとしても、容器内部で低温の気体水素を生成する、つまり、自己加圧することにより、負圧を確実に防止することができる。
【0080】
このように、本実施例では、各々の容器内で個別に自己加圧して、負圧に対応できるので、スラッシュ水素の取り扱いが容易になる。
【0081】
なお、本実施例の場合にも、実施例1(図1参照)に示す移送配管1のように、移送配管を、送り側容器T1、受け側容器T2の上部から挿入した構成にも適用可能である。
【実施例8】
【0082】
図8は、本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例を示す概略構成図である。
図8に示すように、本実施例の固液二相流体の移送装置は、スラッシュ水素S1を気体水素G1の雰囲気下で液体水素L1の下層に貯蔵する送り側容器T1(第1の容器)と、移送されたスラッシュ水素S2を気体水素G2の雰囲気下で液体水素L2の下層に貯蔵する受け側容器T2(第2の容器)と、送り側容器T1と受け側容器T2との間を接続する移送配管71と、移送配管71に設けられたバルブ72とを有しており、更に、送り側容器T1の上部に接続された配管73及び配管73に設けられたバルブ74を介して、送り側容器T1に気体水素を供給する水素ボンベ73(加圧制御手段)と、受け側容器T2内部に設けられた局所発熱体76(局所加熱手段、圧力制御手段)とを有する。なお、本実施例においても、送り側容器T1、受け側容器T2、移送配管71、バルブ72等は、負圧に対応したものでなくてもよい。
【0083】
移送配管71は、実施例2〜7と同様に、送り側容器T1においては、送り側容器T1の底部に接続されて、その供給口が、送り側容器T1に貯蔵されたスラッシュ水素S1中に配置されており、又、受け側容器T2においては、送り側容器T2の底部に接続されて、その排出口が、受け側容器T2に移送されるスラッシュ水素S2中に位置するようにしている。
【0084】
更に、実施例2〜7と同様に、送り側容器T1においては、温度成層化された液体水素L1の下層にスラッシュ水素S1を貯蔵しており、又、送り側容器T2においても、温度成層化された液体水素L2の下層に移送されるスラッシュ水素S2を貯蔵するようにしており、液体水素L1、L2により、スラッシュ水素S1、S2中の固体水素と気体水素G1、G2との接触を避けるようにしている。
【0085】
局所発熱体76は、液体水素L2の上層部分のみを加熱するものである。このような加熱を行うことにより、スラッシュ水素S2は加熱することなく、液体水素L2の上層部分のみを加熱し、気化して、受け側容器T2内部を自己加圧することができる。このような局所発熱体76としては、超伝導体や白金等が使用可能である。超伝導体、例えば、二ホウ化マグネシウム(MgB2;臨界温度Tc=39K)は、超伝導部分では発熱せず、常電導部分では発熱するものであり、スラッシュ水素S2、液体水素L2に冷却された部分は超伝導となり、発熱せず、気体水素G2の部分は冷却されず、常電導となり、発熱が起こり、その発熱が液体水素L2の上層部分のみを加熱し、気化することになる。白金も、その温度によって、発熱量が大きく変化し、超伝導体と同様に、気体水素G2の部分では、発熱が起こり、その発熱が液体水素L2の上層部分のみを加熱し、気化することになる。なお、通常のヒータを用いることも可能であるが、その場合には、ヒータを深さ方向に複数に分割しておき、液体水素L2の上層部分にあるヒータのみを加熱するようにすればよい。
【0086】
このような特性を利用して、局所発熱体76は、受け側容器T2の液体水素L2を蒸発させて、低温の気体水素を生成することができるものであり、受け側容器T2内部の圧力P2を監視し、負圧になりそうな場合には、局所発熱体76により低温の気体水素を生成することにより、受け側容器T2の負圧を防止している。これも、実施例4〜7と同様に、負圧防止を目的とするものである。この蒸発させた気体水素は低温のままであり、低温の気体水素を用いることにより、スラッシュ水素S2中の固体水素の溶解を防止している。つまり、実施例4、5では、別途、気体水素、液体水素を用意する必要があったが、本実施例でも、受け側容器T2の液体水素L2を気化するだけで、低温の気体水素を得ることができ、構成機器を更に低減することができる。
【0087】
そして、移送時には、図示しない制御装置の制御下において、送り側容器T1は、圧力センサ、配管73、バルブ74及び水素ボンベ75により、内部の圧力P1が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、受け側容器T2は、圧力センサ、局所発熱体76により、内部の圧力P2が大気圧以上の所定圧力となるように制御され、更に、送り側容器T1の圧力P1が受け側容器T2の圧力P2より一定の差圧で大きくなるように制御されている。このとき、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御して、液体水素L2を対流させないようにすることが望ましい。
【0088】
従って、バルブ72を開くと、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧により、移送配管71を介して、スラッシュ水素S1が受け側容器T2に移送されることになる。このとき、送り側容器T1の圧力P1と受け側容器T2の圧力P2との差圧を一定に維持するように制御しているため、従来のように、差圧が大きくなりすぎて、流量制御が失われることはない。又、圧力P1と圧力P2との差圧を大きくしないように制御するので、温度成層化した液体水素L2を維持したままで、スラッシュ水素S1が受け側容器T2へゆっくり移送されることになる。従って、移送されたスラッシュ水素S2中の固体水素が気体水素G2と接触する可能性は小さく、従来のように、凝縮による圧力低下が起こる可能性も小さくなる。
【0089】
このように、本実施例の固液二相流体の移送装置では、温度成層化した液体水素L2を、スラッシュ水素S2と気体水素G2との間に介在させ、圧力P1と圧力P2との間に一定の差圧を設けて、移送を行うので、従来のように、負圧になることはなく、又、移送流量の制御を失うこともなく、安定して移送を行うことができる。
【0090】
実施例2、3の場合は、負圧防止を液体水素L2のみに頼っているが、本実施例の場合も、液体水素L2の対流が発生して、スラッシュ水素S2中の固体水素と気体水素G2との接触が起こったとしても、容器内部で低温の気体水素を生成する、つまり、自己加圧することにより、負圧を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、スラッシュ水素等の固液二相流体を移送する際に好適なものであり、例えば、水素ステーションを送り側容器、車両やロケットのタンクを受け側容器として、スラッシュ水素を水素ステーションから車両やロケットのタンクへ移送する際に適用する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の一例(実施例1)を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例2)を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例3)を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例4)を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例5)を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例6)を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例7)を示す概略構成図である。
【図8】本発明に係る固液二相流体の移送装置の実施形態の他の一例(実施例8)を示す概略構成図である。
【図9】(a)は、従来の移送装置における移送前の状態を示す図であり、(b)は、従来の移送装置における移送時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1、11、21、31、41、51、61、71 移送配管
5、15、25、33、75 ボンベ
6、7 真空ポンプ
17、27、36、38、46、48、57、59 バルブ
28 バッフル板
34、55 熱交換器
43 貯蔵容器
44、65、66 ヒータ
53 分岐配管
63、64 壁
76 局所発熱体
1、G2、G3 気体水素
1、L2、L3、L4、L5 液体水素
1、S2 スラッシュ水素
1 送り側容器
2 受け側容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器、前記第2の容器及び前記移送配管を真空に対応したものから構成し、
前記第1の容器の真空度を制御する第1の真空制御手段と、
前記第2の容器の真空度を制御する第2の真空制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の真空制御手段及び前記第2の真空制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を共に負圧とすると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項2】
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器内部の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記移送配管を前記第1の容器及び前記第2の容器の底部に接続し、
前記第1の容器を加圧する加圧制御手段と、
前記第2の容器の圧力を制御する圧力制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記加圧制御手段により前記第1の容器を加圧すると共に、前記加圧制御手段及び前記圧力制御手段により、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記第2の容器内部に、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の対流を防止する対流防止板を設けたことを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項4】
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記固液二相流体と同種の低温の気体を生成する低温気体生成手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第1の容器を加圧する第1の加圧制御手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第2の容器を加圧する第2の加圧制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の加圧制御手段及び前記第2の加圧制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を加圧すると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記低温気体生成手段は、
前記固液二相流体と同種の気体を冷却して低温の気体を生成する熱交換器、又は、前記固液二相流体と同種の液体を気化して低温の気体を生成する熱交換器から構成したことを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項6】
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記移送配管を分岐する分岐配管と、
前記分岐配管に流れる前記固液二相流体を気化して低温の気体を生成する低温気体生成手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第1の容器を加圧する第1の加圧制御手段と、
前記低温気体生成手段で生成された気体を用いて、前記第2の容器を加圧する第2の加圧制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の加圧制御手段及び前記第2の加圧制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を加圧すると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記移送配管を前記第1の容器及び前記第2の容器の底部に接続し、
前記第1の容器内部の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項8】
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器内部及び前記第2の容器内部を2つに分離して、前記第1の容器内部の分離された一方側に前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵し、前記第1の容器内部の分離された他方側に前記固液二相流体を貯蔵し、前記第2の容器内部の分離された一方側に前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記第1の容器内部の分離された一方側に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体を気化する第1の加熱手段と、
前記第1の加熱手段で気化された気体を用いて、前記第1の容器を加圧する第1の加圧制御手段と、
前記第2の容器内部の分離された一方側に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体を気化する第2の加熱手段と、
前記第2の加熱手段で気化された気体を用いて、前記第2の容器を加圧する第2の圧力制御手段とを設けて、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第1の加圧制御手段及び前記第2の加圧制御手段により、前記第1の容器及び前記第2の容器を加圧すると共に、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器内部の分離された他方側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記移送配管を、前記第1の容器内部の分離された他方側の底部と前記第2の容器内部の分離された他方側の底部に接続し、
前記第1の容器内部の分離された他方側の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部の分離された他方側にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記固液二相流体を移送する際には、前記第2の容器内部の分離された他方側に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項10】
固液二相流体を貯蔵する第1の容器から第2の容器に移送配管を通して前記固液二相流体を移送する固液二相流体の移送装置において、
前記第1の容器内部の前記固液二相流体を、前記固液二相流体と同種の液体の下層に貯蔵しておくと共に、前記固液二相流体が移送される前記第2の容器内部にも、前記固液二相流体と同種の液体を貯蔵しておき、
前記移送配管を、前記第1の容器の底部と前記第2の容器の底部に接続し、
前記第1の容器を加圧する加圧制御手段と、
前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の上層を気化する局所加熱手段と、
前記局所加熱手段で気化された気体を用いて、前記第2の容器の圧力を制御する圧力制御手段とを設け、
前記固液二相流体を移送する際には、前記加圧制御手段により前記第1の容器を加圧すると共に、前記加圧制御手段及び前記圧力制御手段により、一定の差圧で前記第1の容器の圧力を前記第2の容器の圧力より大きくして、前記第2の容器内部に貯蔵された前記固液二相流体と同種の液体の下層側に前記固液二相流体を移送することを特徴とする固液二相流体の移送装置。
【請求項11】
請求項10に記載の固液二相流体の移送装置において、
前記局所加熱手段として、超電導体からなるヒータを用いたことを特徴とする固液二相流体の移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−204040(P2009−204040A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45446(P2008−45446)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年7月20日付け 平成17年度、平成18年度、平成19年度 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素安全利用等基盤技術開発:水素に関する共通基盤技術開発:ボイルオフガス低減を目指したスラッシュ水素製造/供給装置の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】