説明

固着方法及び成形装置

【課題】クランクシャフト等の金属製部品の製造工程において、冷間鍛造を用いて金属製部品を成形すると同時に、簡易な構成により固着部品を固着することができる、固着方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】浮動型30及び固定型12における棒状素材W1のウェッブ部に該当する部分には、カウンターウェイト51・51を配置する配置部31d・12cがそれぞれ形成され、配置部31d・12cにカウンターウェイト51・51を配置した状態で、棒状素材W1に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、クランクシャフトC1を成形すると同時に、カウンターウェイト51・51の先端部を塑性流動しているウェッブ部に押込むことにより、カウンターウェイト51・51をクランクシャフトC1と固着して、クランクシャフトC1を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固着方法及び成形装置に関し、詳しくは、一個又は複数個の固着部品を金属製の被固着部品と固着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばクランクシャフト等の金属製部品の製造工程において、ジャーナル部、ウェッブ部、ピン部からなる芯金部とカウンターウェイトとを、熱間鍛造を用いて同時に成形する技術や、冷間鍛造を用いて芯金部を成形した後にカウンターウェイトを固着する技術が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記の如く熱間鍛造を用いてクランクシャフトを成形する場合は、芯金部と同時にカウンターウェイトを成形するために大きな荷重を加える必要があることから、大きな設備が必要となる。また、加工対象を加熱して鍛造することから、加熱装置の設備が必要となる。即ち、クランクシャフトを成形するための設備コストが増大するという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1の如く冷間鍛造を用いてクランクシャフトの芯金部を成形し、その後に芯金部にカウンターウェイトを固着する場合は、抵抗溶接、摩擦溶接、カシメ締結、焼ばめ等によって固着する方法が考えられる。しかし、いずれの方法を用いた場合でも、芯金部を成形する工程の後に別工程でカウンターウェイトを固着する工程が必要となるため、別途設備が必要となり、コストが増大するという問題があった。
【0006】
そこで本発明では、上記現状に鑑み、クランクシャフト等の金属製部品の製造工程において、冷間鍛造を用いて金属製部品を成形すると同時に、簡易な構成により固着部品を固着することができる、固着方法及び成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、一個又は複数個の固着部品を、金属製の被固着部品と固着する固着方法であって、前記被固着部品における前記固着部品との被固着部分を塑性流動させると同時に、塑性流動している前記被固着部分に前記固着部品の先端部を押込むことにより、前記固着部品を前記被固着部品と固着する、固着工程を備えるものである。
【0009】
請求項2においては、前記被固着部品は棒状素材であって、前記固着工程において、前記棒状素材に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、前記棒状素材を座屈させることにより、前記塑性流動を発生させるものである。
【0010】
請求項3においては、前記被固着部品は、クランクシャフトを成形するための棒状素材であって、前記被固着部分は、据え込み加工によって前記クランクシャフトに形成されるウェッブ部であって、前記固着部品は、前記クランクシャフトに固着されるカウンターウェイトであって、前記固着工程において、前記棒状素材に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、前記棒状素材を座屈させ、前記棒状素材において前記ウェッブ部に該当する部分を塑性流動させることにより、クランクシャフトを成形すると同時に、塑性流動している前記ウェッブ部に前記カウンターウェイトの先端部を押込むことにより、前記カウンターウェイトを前記クランクシャフトと固着するものである。
【0011】
請求項4においては、前記固着工程において、据え込み加工用型の内部で前記棒状素材に前記塑性流動を発生させて前記ウェッブ部を形成し、前記固着工程の前に、前記カウンターウェイトを、前記据え込み加工用型における前記ウェッブ部に該当する部分に設けられた凹部である配置部に予め配置するものである。
【0012】
請求項5においては、前記固着工程において、据え込み加工用型の内部で前記棒状素材に前記塑性流動を発生させて前記ウェッブ部を形成し、前記固着工程の前に、前記カウンターウェイトを、前記棒状素材において前記ウェッブ部に該当する部分に予め付着させるものである。
【0013】
請求項6においては、前記カウンターウェイトの先端部は、該カウンターウェイトの先端部が前記ウェッブ部に押込まれた際に前記ウェッブ部の端部に位置する部分よりも、前記ウェッブ部に対する押込み方向側の部分の方が、前記ウェッブ部に対する押込み方向と垂直な平面における断面積が大きくなるように予め形成されるものである。
【0014】
請求項7においては、前記棒状素材における前記ウェッブ部に該当する部分のうち、前記カウンターウェイトが押込まれる部分に、予め孔部を形成し、該孔部は、前記カウンターウェイトが押込まれる方向と垂直な断面において、開口部の断面積よりも内部の断面積の方が大きく形成されるものである。
【0015】
請求項8においては、固定型と、固定型に対して近接離間可能に配置される可動型と、可動型と固定型との間に配置される浮動型とを備え、成形対象となる棒状素材の両端部のそれぞれを、前記可動型と前記固定型とで保持し、かつ、前記棒状素材の中途部を前記浮動型で挟持した状態で、前記可動型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材を軸方向に圧縮すると同時に、前記浮動型を棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に移動させることにより、前記棒状素材の中途部をピン部として、前記棒状素材のジャーナル部となる部分の軸心から偏芯させて、前記棒状素材を座屈させ、前記棒状素材を塑性流動させることにより、据え込み加工によってウェッブ部を形成して、クランクシャフトを成形する、成形装置であって、前記浮動型及び前記固定型における前記棒状素材の前記ウェッブ部に該当する部分には、前記カウンターウェイトを配置する凹部である配置部が形成され、前記配置部にカウンターウェイトを配置した状態で、前記棒状素材に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、クランクシャフトを成形すると同時に、前記カウンターウェイトの先端部を塑性流動している前記ウェッブ部に押込むことにより、前記カウンターウェイトを前記クランクシャフトと固着して、クランクシャフトを成形するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明により、クランクシャフト等の金属製部品の製造工程において、冷間鍛造を用いて金属製部品を成形すると同時に、簡易な構成により固着部品を固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態に係る成形装置における成形前の状態を示した概略断面図。
【図2】(a)は図1におけるA−A線断面図、(b)はカウンターウェイトの拡大平面図。
【図3】第一実施形態に係る成形装置における成形中の状態を示した概略断面図。
【図4】第一実施形態に係る成形装置における成形後の状態を示した概略断面図。
【図5】第二実施形態に係る成形装置を示した概略断面図。
【図6】第三実施形態に係る成形装置における成形前の状態を示した概略断面図。
【図7】第三実施形態に係る成形装置における成形後の状態を示した概略断面図。
【図8】第四実施形態に係る成形装置における成形前の状態を示した概略断面図。
【図9】第四実施形態に係る成形装置における成形後の状態を示した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0020】
[第一実施形態]
まず始めに、本発明の第一実施形態に係る成形装置について、図1から図4を用いて説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1における上側を上方、下側を下方とし、同じく左側を前方、右側を後方、同じく紙面奥側を右側方、紙面手前側を左側方として説明する。
【0021】
本実施形態に係る成形装置は冷間鍛造によるクランクシャフトの製造装置100であって、固定型12と、固定型12に対して近接離間可能に配置される可動型11と、を備えている。
具体的には、固定型12は図示しない基台の上面に固設されている。そして、同じく基台の上面には固定型12の周囲を取り囲む枠体であるスライドガイド21が配設されている。換言すれば、スライドガイド21は、固定型12を下部に嵌挿した状体で基台に固設されているのである。スライドガイド21は大きな外力を受けても変形しないように十分な厚さで形成された、上下面に開口部を有する四角筒状の中空部材である。
【0022】
また、スライドガイド21の上部には、平面視における外形がスライドガイド21の内周形状と略同一に形成された可動型11が、固定型12に対して上下方向に近接離間可能に嵌挿されている。
具体的には、固定型12の上方には図示しないプレスラムが基台及び固定型12に対して上下方向に近接離間可能に配設されており、該プレスラムの下部に可動型11が配設されているのである。そして、可動型11はプレスラムの上下動に伴って、スライドガイド21の内周面を摺動しながら固定型12に対して近接離間するのである。
【0023】
さらに、クランクシャフトの製造装置100は、可動型11と固定型12との間に、固定型12に対して近接可能かつ可動型11が固定型12に対して近接離間する上下方向に対して直交する前後方向にスライド可能に構成される浮動型30を備えている。
具体的には、スライドガイド21の外周面前部には上下方向にスライド可能に構成されたシリンダー60が配設されており、浮動型30はシリンダー60において伸縮するロッド63の一端に配設されている。さらに詳しくは、シリンダー60はケース62をガイド61・61で支持し、ケース62からロッド63を伸縮可能に延出して構成されているのである。このような状態で、ガイド61・61をスライドガイド21に沿って上下動させ、かつ、ケース62から延出したロッド63を伸縮させることにより、浮動型30を上下方向・前後方向にスライド可能に構成しているのである。
なお、本実施形態においては、浮動型30はシリンダー60の駆動によって上下方向・前後方向にスライドする構成としたが、シリンダー以外の他の駆動装置を用いる構成にすることも可能である。
【0024】
そして、成形前のクランクシャフトの製造装置100においては、図1に示す如く、棒状素材W1の上端部を可動型11における可動型側保持部11aで保持すると同時に、下端部を固定型12における固定型側保持部12aで保持する構成としている。そして、前記棒状素材W1の上下略中央部を浮動型30における挟持部31hで挟持する構成としている。
【0025】
クランクシャフトの製造装置100でクランクシャフトC1を成形するときは、上記の状態で可動型11を下降させる。そして、可動型11及び浮動型30を、固定型12と平行な状態のままで固定型12に近接させることにより、棒状素材W1を軸方向に圧縮するのである。それと同時に、シリンダー60を駆動させて浮動型30を棒状素材W1の軸方向と垂直な偏芯方向(図1においては後方)に移動させることにより、棒状素材W1の中途部をピン部として、棒状素材W1のジャーナル部となる部分の軸心から偏芯させる。さらに、棒状素材W1を座屈させて、棒状素材W1を塑性流動させることにより、据え込み加工によってウェッブ部を形成するのである(図3及び図4参照)。詳細には、クランクシャフトC1の成形中に、ピン部の偏芯方向と逆方向に棒状素材W1が流動するように、シリンダー60による横圧縮力、及び、横圧縮力のタイミングを制御している。
なお、本実施形態においては、上記の如く浮動型30を図1における後方に偏芯させるものとし、後方を偏芯方向、前方を反偏芯方向として説明する。
【0026】
さらに、本実施形態における浮動型30は、図2(a)に示す如く、割型31aと割型31bとをリング状の拘束部材32に嵌挿して構成されている。つまり浮動型30は、棒状素材W1の中途部を、割型31a・31bに形成された挟持部31hで左右から挟持した状態で、拘束部材32に嵌挿して構成されているのである。
【0027】
そして、浮動型30には、前記ウェッブ部を形成するために、ウェッブ部と同形状のウェッブ部溝31cが形成されている。つまり、図4に示す如く、塑性流動した棒状素材W1がウェッブ部溝31cに流入することにより、据え込み加工によってウェッブ部が形成されるのである。また、固定型12についても、浮動型30と同様にウェッブ部溝12bが形成されている。
【0028】
さらに、本実施形態における浮動型30には、ウェッブ部溝31cに隣接して配置部31dが形成されている。配置部31dはカウンターウェイト51と略同形状の凹部であり、クランクシャフトC1を形成した際のウェッブ部とカウンターウェイト51の位置関係、及び、ウェッブ部溝12bと配置部31dとの位置関係が同じになるように形成されているのである。つまり、クランクシャフトC1を成形した際に、カウンターウェイト51・51がクランクシャフトC1におけるウェッブ部の適正な位置に固着される箇所に、配置部31dが形成されているのである。また、固定型12についても、浮動型30と同様に配置部12cが形成されている。
【0029】
本実施形態に係るカウンターウェイト51は、図2(b)に示す如く、カウンターウェイト51の重量を発生させるウェイト部52と、棒状素材W1に押込まれる部分である挿入端部53とが、連結部54で連結されて形成されている。そして、挿入端部53の幅D2は、連結部54の幅D1よりも大きく形成されている。つまり、予め、連結部54よりも挿入端部53の方が、断面積が大きくなるように形成されているのである。
【0030】
そして、図1に示す如く、配置部31d・12cにカウンターウェイト51・51を配置した状態で、棒状素材W1に対して軸方向に圧縮荷重を加える。そして、図3に示す如く、シリンダー60により浮動型30を偏芯方向に移動させ、棒状素材W1の中途部をピン部として偏芯させるのである。同時にカウンターウェイト51の先端部を塑性流動しているウェッブ部に押込むことにより、棒状素材W1をカウンターウェイト51の先端部の周囲に流れ込ませる。そして、図4に示す如くカウンターウェイト51をクランクシャフトC1と固着して、クランクシャフトC1を成形するのである。
【0031】
上記の如く、本実施形態に係る固着方法は、固着部品であるカウンターウェイト51を、金属製の被固着部品である棒状素材W1と固着するものである。そして、棒状素材W1におけるカウンターウェイト51との被固着部分であるウェッブ部を塑性流動させると同時に、塑性流動しているウェッブ部にカウンターウェイト51の先端部を押込むことにより、カウンターウェイト51を棒状素材W1と固着するのである。
【0032】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、棒状素材W1のウェッブ部が塑性流動しているため、カウンターウェイト51の先端部をウェッブ部に埋め込ませることができ、強固に固着させることが可能となる。特に、カウンターウェイトにウェッブ部の周囲を嵌挿する構成に比べて、クランクシャフトC1の回転方向(軸心回りの方向)の結合力を高めることができるのである。
【0033】
また、本実施形態に係る固着方法は、棒状素材W1に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、棒状素材W1を座屈させることにより、前記塑性流動を発生させる構成としている。
【0034】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、カウンターウェイト51を棒状素材W1に押圧する際の押圧力を小さくすることができるため、押圧機構を小さくすることができ、全体的な装置構成をコンパクトにすることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係る固着方法は、クランクシャフトC1を成形すると同時に、塑性流動しているウェッブ部にカウンターウェイト51の先端部を押込むことにより、カウンターウェイト51をクランクシャフトC1と固着するのである。
【0036】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、冷間鍛造を用いてクランクシャフトC1を成形すると同時にカウンターウェイト51を強固に固着することができる。即ち、芯金部を成形する工程の後に別工程でカウンターウェイト51を固着する工程がないため、別途設備を設ける必要がなくなり、簡易な構成によってコストを低減させることが可能となるのである。
【0037】
また、本実施形態に係る固着方法は、据え込み加工用型である可動型11、固定型12、及び、浮動型30の内部で棒状素材W1に塑性流動を発生させてウェッブ部を形成する前に、カウンターウェイト51・51を、固定型12、及び、浮動型30に設けられた配置部31d・12cに予め配置する構成としている。
【0038】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、カウンターウェイト51・51の固定機構を別途設ける必要がなくなり、装置構成をコンパクトにすることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態に係るカウンターウェイト51は、連結部54よりも挿入端部53の方が、断面積が大きくなるように形成されている。即ち、カウンターウェイト51の先端部は、カウンターウェイト51の先端部がウェッブ部に押込まれた際にウェッブ部の端部に位置する部分である連結部54よりも、ウェッブ部に対する押込み方向側の部分である挿入端部53の方が、ウェッブ部に対する押込み方向と垂直な平面における断面積が大きくなるように予め形成されているのである。
【0040】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、カウンターウェイト51の挿入端部53を、塑性流動した棒状素材W1と係合させることができる。つまり、カウンターウェイト51をクランクシャフトC1により強固に固着することが可能となるのである。
【0041】
なお、本実施形態においては、カウンターウェイト51の挿入端部53の周囲に棒状素材W1を塑性流動により変形させる構成であるため、カウンターウェイト51は棒状素材W1よりも硬度の大きい素材(望ましくは、硬度差がHv=200以上となるもの)が用いられる。また、挿入端部53の形状としては、より強固に係合させるために、先端方向に向かって徐々に縮径される円錐又は円錐台の形状に形成されることが望ましい。
さらに、カウンターウェイト51・51をクランクシャフトC1に固着して成形した後で、バランスピースの点付け等を行い、更にバランス率を向上させることも可能である。
【0042】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る成形装置について、図5を用いて説明する。なお、以下の実施形態に係る成形装置の説明において、既出の実施形態と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る成形装置は、前記第一実施形態と同様に構成された冷間鍛造によるクランクシャフトの製造装置100である。
本実施形態における棒状素材W2については、図5に示す如く、棒状素材W2におけるウェッブ部に該当する部分のうち、カウンターウェイト51・51が押込まれる部分に、予め孔部H1・H2が形成されている。そして該孔部H1・H2は、カウンターウェイト51・51が押込まれる方向と垂直な断面において、開口部の断面積よりも内部の断面積の方が大きく形成されているのである。より具体的には、孔部H1・H2は、断面視で外側に向かって徐々に縮幅する形状に形成されるのである。
【0044】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、カウンターウェイト51の挿入端部53を、塑性流動した棒状素材W2と係合させ易くすることができる。つまり、カウンターウェイト51の挿入端部53が棒状素材W2の孔部H1・H2の内部形状にあわせて変形するため、カウンターウェイト51をクランクシャフトに対してより強固に固着することが可能となるのである。
【0045】
なお、本実施形態においては、カウンターウェイト51の挿入端部53を孔部H1・H2の内部で変形させる構成であるため、カウンターウェイト51は棒状素材W1よりも硬度の小さい素材(望ましくは、硬度差がHv=200以上となるもの)が用いられる。また、孔部H1・H2の形状としては、より強固に係合させるために、棒状素材W2の軸心に向かって徐々に縮径される円錐又は円錐台の形状に形成されることが望ましい。
さらに、カウンターウェイト51・51をクランクシャフトに固着して成形した後で、バランスピースの点付け等を行い、更にバランス率を向上させることも可能である。
【0046】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る成形装置について、図6及び図7を用いて説明する。
本実施形態に係る成形装置は、前記第一実施形態と同様に構成された冷間鍛造によるクランクシャフトの製造装置100である。
本実施形態における成形装置については、棒状素材W3に塑性流動を発生させて前記ウェッブ部を形成する前に、図6に示す如く、カウンターウェイト51・51を、棒状素材W3におけるウェッブ部に該当する部分に予め付着させるのである。具体的には、クランクシャフトC3を成形した際に、カウンターウェイト51・51がクランクシャフトC3におけるウェッブ部の適正な位置に固着される箇所に、成形中に外れない程度の強度でカウンターウェイト51・51を棒状素材W3に仮止めしておくのである。
【0047】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、カウンターウェイト51・51を固着する際の精度を向上させることができる。具体的には、棒状素材W3におけるウェッブ部に該当する部分に予め付着させることで、クランクシャフトC3の成形後における作業者の所望の位置に、カウンターウェイト51・51を固着することが可能となるのである。さらに、成形終期には図7に示す如く、浮動型30及び固定型12のそれぞれに形成された配置部31d・12cにカウンターウェイト51・51がはまり込むことにより、カウンターウェイト51・51の位置決め精度をより高めることができるのである。
【0048】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る成形装置について、図8及び図9を用いて説明する。本実施形態に係る成形装置は、4気筒のクランクシャフトC4を冷間鍛造で成形するためのクランクシャフトの製造装置200である。なお、本実施形態においては4気筒のクランクシャフトC4を成形する場合について説明するが、気筒の個数は限定されるものでなく、本発明は他の気筒数のクランクシャフトを成形する場合についても適用することができる。
【0049】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置200は、固定型12と可動型11との間に、固定型12に対して近接可能に構成された3個のジャーナル型40・40・40を備えている。そして、可動型11、ジャーナル型40・40・40、及び、固定型12のそれぞれの間に、固定型12に対して近接可能かつ可動型11が固定型12に対して近接離間する上下方向に対して直交する前後方向にスライド可能に構成される4個の浮動型30・30・・・を備えているのである。
【0050】
上記の如く構成されたクランクシャフトの製造装置200でクランクシャフトC4を成形するときは、可動型11を下降させる。そして、可動型11、ジャーナル型40・40・40、及び浮動型30・30・・・を、固定型12と平行な状態のままで固定型12に近接させることにより、棒状素材W4を軸方向に圧縮するのである。それと同時に、シリンダー60を駆動させて浮動型30・30・・・を棒状素材W4の軸方向と垂直な偏芯方向(図8においては前方及び後方)に移動させることにより、棒状素材W4の中途部をピン部として、ジャーナル部である棒状素材W4の軸心から偏芯させる。さらに、棒状素材W4を座屈させて、棒状素材W4を塑性流動させることにより、図9に示す如く据え込み加工によってウェッブ部を形成するのである。
【0051】
さらに、本実施形態にいては図8に示す如く、浮動型30・30・・・、固定型12と同様に、ジャーナル型40・40・40にもウェッブ部溝が形成されており、該ウェッブ部溝に隣接して配置部がそれぞれ形成されている。
【0052】
そして、各配置部にカウンターウェイト51・51・・・を配置した状態で、棒状素材W4に対して軸方向に圧縮荷重を加えるのである。同時にカウンターウェイト51・51・・・の先端部を塑性流動しているウェッブ部に押込むことにより、図9に示す如くカウンターウェイト51・51・・・をクランクシャフトC4と固着して、多気筒のクランクシャフトC4を成形するものである。
【0053】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、冷間鍛造を用いてクランクシャフトC4を成形すると同時にカウンターウェイト51・51・・・を強固に固着することができる。即ち、多気筒のクランクシャフトC4を成形する場合であっても、芯金部を成形する工程の後に別工程でカウンターウェイト51・51・・・を固着する工程がないため、別途設備を設ける必要がなくなり、簡易な構成によってコストを低減させることが可能となるのである。
【符号の説明】
【0054】
11 可動型
12 固定型
12c 配置部
21 スライドガイド
30 浮動型
31d 配置部
51 カウンターウェイト
W1 棒状素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一個又は複数個の固着部品を、金属製の被固着部品と固着する固着方法であって、
前記被固着部品における前記固着部品との被固着部分を塑性流動させると同時に、塑性流動している前記被固着部分に前記固着部品の先端部を押込むことにより、前記固着部品を前記被固着部品と固着する、固着工程を備える、
ことを特徴とする、固着方法。
【請求項2】
前記被固着部品は棒状素材であって、
前記固着工程において、前記棒状素材に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、前記棒状素材を座屈させることにより、前記塑性流動を発生させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の固着方法。
【請求項3】
前記被固着部品は、クランクシャフトを成形するための棒状素材であって、
前記被固着部分は、据え込み加工によって前記クランクシャフトに形成されるウェッブ部であって、
前記固着部品は、前記クランクシャフトに固着されるカウンターウェイトであって、
前記固着工程において、前記棒状素材に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、前記棒状素材を座屈させ、前記棒状素材において前記ウェッブ部に該当する部分を塑性流動させることにより、クランクシャフトを成形すると同時に、塑性流動している前記ウェッブ部に前記カウンターウェイトの先端部を押込むことにより、前記カウンターウェイトを前記クランクシャフトと固着する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の固着方法。
【請求項4】
前記固着工程において、据え込み加工用型の内部で前記棒状素材に前記塑性流動を発生させて前記ウェッブ部を形成し、
前記固着工程の前に、前記カウンターウェイトを、前記据え込み加工用型における前記ウェッブ部に該当する部分に設けられた凹部である配置部に予め配置する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の固着方法。
【請求項5】
前記固着工程において、据え込み加工用型の内部で前記棒状素材に前記塑性流動を発生させて前記ウェッブ部を形成し、
前記固着工程の前に、前記カウンターウェイトを、前記棒状素材において前記ウェッブ部に該当する部分に予め付着させる、
ことを特徴とする、請求項3に記載の固着方法。
【請求項6】
前記カウンターウェイトの先端部は、該カウンターウェイトの先端部が前記ウェッブ部に押込まれた際に前記ウェッブ部の端部に位置する部分よりも、前記ウェッブ部に対する押込み方向側の部分の方が、前記ウェッブ部に対する押込み方向と垂直な平面における断面積が大きくなるように予め形成される、
ことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の固着方法。
【請求項7】
前記棒状素材における前記ウェッブ部に該当する部分のうち、前記カウンターウェイトが押込まれる部分に、予め孔部を形成し、
該孔部は、前記カウンターウェイトが押込まれる方向と垂直な断面において、開口部の断面積よりも内部の断面積の方が大きく形成される、
ことを特徴とする、請求項4から請求項6の何れか1項に記載の固着方法。
【請求項8】
固定型と、固定型に対して近接離間可能に配置される可動型と、可動型と固定型との間に配置される浮動型とを備え、成形対象となる棒状素材の両端部のそれぞれを、前記可動型と前記固定型とで保持し、かつ、前記棒状素材の中途部を前記浮動型で挟持した状態で、前記可動型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材を軸方向に圧縮すると同時に、前記浮動型を棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に移動させることにより、前記棒状素材の中途部をピン部として、前記棒状素材のジャーナル部となる部分の軸心から偏芯させて、前記棒状素材を座屈させ、前記棒状素材を塑性流動させることにより、据え込み加工によってウェッブ部を形成して、クランクシャフトを成形する、成形装置であって、
前記浮動型及び前記固定型における前記棒状素材の前記ウェッブ部に該当する部分には、前記カウンターウェイトを配置する凹部である配置部が形成され、前記配置部にカウンターウェイトを配置した状態で、前記棒状素材に対して軸方向に圧縮荷重を加えて、クランクシャフトを成形すると同時に、前記カウンターウェイトの先端部を塑性流動している前記ウェッブ部に押込むことにより、前記カウンターウェイトを前記クランクシャフトと固着して、クランクシャフトを成形する、
ことを特徴とする、成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121091(P2011−121091A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280722(P2009−280722)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(597000755)株式会社MEG (8)
【Fターム(参考)】