説明

固/液界面に形成された吸着ミセル膜を反応場として形成される単結晶質の貴金属超薄膜ナノ粒子及びその製造方法

【課題】触媒や電極などに使用しえる新規な形態、サイズ、配列を有する貴金属ナノ粒子を創出する。
【解決手段】担体基板上に半円筒形断面形状を有し、棒状に形成されたミセルを自己創出的に形成し、固定化し、貴金属イオンを加えてミセル内に拡散させて、ミセルと貴金属イオンとを複合させ、次いで、還元剤を作用させることによって、該固定化されたミセル内を反応場として貴金属の還元反応を進め、固定された前記形状のミセルを鋳型として担体基板上に単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属白金の化学的、電気化学的および磁気的特性を利用した燃料電池用触媒、自動車排ガス処理用触媒等の産業および環境分野における各種化学反応に対する触媒、電気分解用電極等の各種電気化学反応に対する電極、温度、圧力、ガスセンサ素子等のフォトニクス・エレクトロニクス・情報技術用基礎素材または機能素子などとして使用される白金を主成分とする新規な貴金属ナノ粒子・超薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属元素は、その優れた加工性、耐熱性、耐酸化性、耐食性、電気化学特性、およびそのd電子に起因する特異な磁性や分光学的および化学的性質を有し、古くから装飾用材料、るつぼ等の理化学器具用材料、熱電対や電気接点材料等の電気工業用材料、ペースト等の電子工業用材料、触媒、不溶解性電極、高性能磁石などとして利用されてきた。中でも白金は、他の白金族金属とともに、化学反応を促進する働きをもつ触媒として工業的に極めて重要であり、石油精製、石油化学、自動車・工場排ガス浄化、合成ガス製造、医薬・油脂製造等の分野で広く用いられてきた。
【0003】
白金触媒に代表される金属触媒は、一般に、シリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭等に、金属塩の水溶液を用いて、含浸法、イオン交換法、共沈法などによって金属成分を導入したのち、焼成、水素還元などの処理を行うことにより調製される(非特許文献1)。すなわち、金属触媒は、固体担体の表面に金属粒子を担持した複合粒子の形で反応に供され、その活性は、金属種はもとより、担持された金属微粒子の大きさ、結晶面の種類、担体の種類などによって変化し、微粒子の大きさの制御は特に重要である。金属微粒子の粒径は調製条件に依存し、例えば、テトラアンミンジクロロ白金を原料としてゼオライトに担持した白金微粒子の平均粒径は、空気焼成では6nm、真空焼成では1nm以下になる(非特許文献2)。
【0004】
さらに、金属触媒の活性と粒子サイズとの関係は、対象とする反応によって異なり、粒子サイズが大きくなるにつれて活性が低下する系(例:Pt/活性炭による2、3?ジメチルブタンの脱水素反応)、逆に増大する系(例:Pt/アルミナによるメチルシクロペンタンの水素化分解反応)、ある粒子サイズで活性が極大になる系(例:Pt/CaYによる n−ヘキサンの異性化反応)、さらには活性が粒子サイズによらない系(例:Pt触媒によるSO2およびH2の酸化反応)も報告されている(非特許文献3)。
【0005】
このため、白金触媒の調製法として、上記の一般的な方法を様々に工夫することに加えて、ポリビニールピロリドンなどの保護剤存在下で液相還元し貴金属コロイドを作製する方法(非特許文献4)なども開発されてきている。さらに最近、メソポーラスシリカの細孔内に導入した塩化白金酸を水素還元または光還元することにより、各々直径2.5nmの白金粒子と白金ワイヤが得られ、ブタン水素化反応に対して後者は前者の数10倍高い活性を示すことも報告されている(非特許文献5)。
【0006】
上述の球状、ワイヤ状などの形状を有する非多孔質金属微粒子に加えて、鋳型合成の手法を用いたメソポーラス金属の製造が、キャパシタやセンサ、電極等への応用を目指して行われている(非特許文献6)。鋳型法は、1992年にMobil社が界面活性剤を鋳型として2〜8nmのハニカム状メソ細孔を有するメソポーラスシリカを創製することに成功したのが始まりである(非特許文献7)。その後、同様の手法により、シリカ以外の種々の金属酸化物や硫化物を骨格成分とする多種類のメソ多孔体が相次いで合成された(非特許文献8)。
【0007】
金属についても、非イオン性界面活性剤のミセルを鋳型として、塩化白金酸をヒドラジン等で還元することにより3nm程度の細孔径をもつ粒状のメソポーラス白金(非特許文献9)が合成され、さらに金属塩と界面活性剤とのミセル液晶を電着することにより膜状のメソポーラス白金(非特許文献10)とスズ(非特許文献11)も作製された。
【0008】
上記の界面活性剤鋳型法により合成した、3次元細孔構造をもつメソポーラスシリカMCM−48に硝酸テトラアミン白金水溶液を含浸し、これを高温で水素還元することにより、直径3nmの白金ワイヤが3次元網目状に連結した骨格構造から成る外径50−400nmのポーラス白金粒子が得られている(非特許文献12)。同じくポーラス固体のアルミニウム陽極酸化膜を鋳型として約70nmの細孔径をもつメソポーラス白金および金(Au)(非特許文献13)、ポリスチレンラテックスを鋳型としてポーラス金(Au)(非特許文献14)が得られている。
【0009】
また、超臨界CO2を溶媒とし、黒鉛結晶子を鋳型とする方法により47m2/gの比表面積をもつメソポーラス白金も合成された(非特許文献15)。さらに、平均直径20nmのシリカ粒子表面にヘキサクロロ白金酸をコーテイングし加熱還元した後、シリカを除去することにより、150m2/gの比表面積と平均20nmの殻状細孔を有するメソポーラス白金も得られている(非特許文献16)。
【0010】
一方、外径数nm〜数百nm、内径数Å〜数十nmの中空管状の形態をもつ粒子はナノチューブと呼ばれ、1991年にアーク電極の析出物として発見されたカーボンナノチューブ(非特許文献17)が人工の無機ナノチューブの最初の例である。以後、高温合成による窒化物や硫化物に加えて、前述の鋳型法により合成された酸化バナジウム(非特許文献18)、シリカ(非特許文献19)、チタニア(非特許文献20)、本発明者らの手による希土類酸化物ナノチューブ(非特許文献21)などの酸化物系ナノチューブが相次いで報告されている。
【0011】
貴金属については、ポリカーボネート多孔質膜を鋳型として、二段階の無電解メッキ反応により約1nm以上のほぼ均一な内径を有する金ナノチューブ(非特許文献22、23)、厚さ4〜5nmのパラジウムナノチューブ(非特許文献24)が作製されている。さらに、本発明者らは、二種類の界面活性剤から成る液晶を鋳型として塩化白金酸を還元する手法を開発し、これにより外径6〜7nm、内径約3〜4nmの白金、パラジウムなどの貴金属ナノチューブを製造した(特許文献1、非特許文献25)。
【0012】
界面活性剤を用いて2次元または3次元の樹枝状に発達した白金粒子も報告されている(非特許文献26)。Y.Songらは、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)もしくはBrij−35(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、塩化白金酸、アスコルビン酸を含む水溶液に光照射を行うことにより、白金が三次元樹枝状に成長した直径10〜70nmの球形の白金粒子を合成した。さらに、微量のスズポリフィリンを添加すると、直径約10nmの樹脂状単結晶粒子が生成することも見いだした。また、界面活性剤の代わりにリポソームを用いた場合は、2次元樹枝状で、直径約50nmの円盤状白金粒子が得られている。
【0013】
グラファイトの層空間の隙間(0.335nm)に塩化白金酸を導入し、水素還元することにより、極めて薄い薄膜状粒子(白金ナノシート、厚み:2−3nm程度)の合成が報告されている(非特許文献27)。
【0014】
界面活性剤の存在している遷移金属イオンと貴金属イオンを含む溶液中で、還元剤の作用によって貴金属を含む金属ナノ粒子を液中から析出せしめることが報告されている(特許文献2)。
【0015】
界面活性剤を含む溶液に無機金属塩類を溶解し、界面活性剤の還元作用によって直径nmオーダーレベルの金属ナノ粒子を溶液中で析出させることが報告されている(特許文献3)。
【0016】
界面活性を含有する非水有機溶媒と還元剤水溶液とを混合した逆ミセル溶液(I)に、界面活性剤を含有する非水有機溶媒と貴金属を含む各種金属塩溶液を混合した逆ミセル溶液(II)を添加し、還元反応させることにより、溶液中で金属ナノ粒子を生成させることが報告されている(特許文献4)。
【0017】
脂肪酸の有機金属化合物、アミンの金属錯体又はこれらの混合物を非極性溶媒に溶解し、還元剤を加えて還元処理し、溶液中でナノ粒子を得ることが報告されている(特許文献5)。
【0018】
さらに、界面活性剤を含む金属塩溶液に還元剤を添加し、光を照射し暗所に静置下に反応させることによって金属ナノロッドを溶液中で成長させることが報告されている(特許文献6)。
【0019】
さらにまた、基板上に架橋剤を使用することなく金属ナノ粒子を付着させ、基板上でナノ粒子を成長・被覆させることも報告されている(特許文献7)。
【0020】
【非特許文献1】富永博夫ほか1名、化学総説「触媒設計」、日本化学会編、1982年、p.50〜63
【非特許文献2】内田正之ほか2名、触媒、22、310(1977)
【非特許文献3】荒井弘通ほか1名、「超微粒子?その化学と機能」、朝倉書店、1993年、p.124〜128
【非特許文献4】N.Toshima ほか1名、Bull.Chem. Soc.Jpn.,65,400(1992)
【非特許文献5】A.Fukuoka ほか7名、Catalysis Today,66,23−31(2001)
【非特許文献6】福島喜章、セラミックス36、917?919(2001)
【非特許文献7】C.T.Kresge ほか4名、Nature、359、p.710〜712(1992)
【非特許文献8】木島剛 ほか1名、J.Soc.Inorg.Mater、8、p.3〜16(2001)
【非特許文献9】G.S.Attard ほか4名、Angew.Chem.Int.Ed、36、1315〜1317(1997)
【非特許文献10】G.S.Attard ほか5名、Science、278、838〜840(1997)
【非特許文献11】A.H.Whitehead ほか3名、Chem.Comm.、331〜332(1999)
【非特許文献12】H.J.Shin ほか3名、J.Am.Chem.Soc.,123,1246〜1247(2001)
【非特許文献13】H.Masuda ほか1名、Science、268、1466〜1468(1995)
【非特許文献14】O.D.Velev ほか3名、Nature、401、548(1999)
【非特許文献15】H.Wakayama ほか1名、Chem.Comm.、p.391〜392(1999)
【非特許文献16】浅井道博 ほか2名、工業材料、50、p.27?30(2002)
【非特許文献17】S.Iijima、Nature、364、p.56〜58(1991)
【非特許文献18】M.E.Spahr ほか5名、Angew.Chem.Int.Ed、37、p.1263〜65(1998)
【非特許文献19】M.Adachi ほか2名、Langmuir、15、7097(1999)
【非特許文献20】H.Imai ほか4名、J.Mater.Chem、9、2971、(1999)
【非特許文献21】M.Yada ほか4名、Adv.Mater.、14、309〜313(2002)
【非特許文献22】C.R.Martin ほか3名、J.Phys.Chem.B、105、p.11925〜11934(2001)
【非特許文献23】K.B.Jirage ほか2名、Anal.Chem.、71、4913〜4918(1999)
【非特許文献24】V.Badri ほか1名、Int.J.Hydrogen Energy、25、249〜253(2000)
【非特許文献25】木島 剛 ほか6名、Angew.Chem.Int. Ed.,43,228〜232(2004)
【非特許文献26】Y.Song ほか11名、J.Amer.Chem. Soc.,126、635〜645(2004)
【非特許文献27】M Shirai,他2名、Chem.Comm.、 p.623〜624(1999)
【0021】
【特許文献1】木島 剛、特開2004−034228号公報
【特許文献2】特開2000−54012号公報、「遷移金属ナノ粒子の製造方法」、出願人:IBMコーポレイション
【特許文献3】特開2003−105401号公報、「貴金属ナノ粒子の製造方法」、 出願人:長春石油化学股▲フン▼有限公司
【特許文献4】特開2003−239006号公報、「ナノ粒子およびナノ粒子の製造方法、並びに、磁気記録媒体」、出願人:富士フィルム株式会社
【特許文献5】特開2005−81501号公報、「金属ナノ粒子及びその製造方法、金属ナノ粒子分散液及びその製造方法、並びに金属細線及び金属膜及びその形成方法」、出願人:株式会社アルバックほか1名
【特許文献6】特開2005−97718号公報、「金属ナノロッドの製造方法と用途」、出願人:三菱マテリアル株式会社ほか1名
【特許文献7】特開2005−187915号公報、「金属ナノ粒子の固定化方法及び金属ナノ粒子固定化基板」、出願人:国立大学法人 京都大学
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以上のように、鋳型合成法を基礎に置いた白金をはじめとする貴金属に関する従来技術は、球状もしくは不定形の超微粒子のほか、ナノメートルサイズのワイヤ、ハニカム状または3次元網目状の細孔を有する粒状または膜状の多孔体、ナノチューブ、二次元または三次元樹枝状粒子、ならびに直径10nmの単結晶質球形を提供するに留まっている。これに対して、これらとは異なる新規な細孔形状、新規なサイズ、新規な形態、新規な物性を有する白金ナノ粒子を創出し、触媒や電極などとしての従来にない性能を実現することが望まれている。また、溶液中で形成される分子集合体構造を利用する鋳型合成法では、白金粒子の生成過程で生じる粒子が比較的凝集しやすい、並びに分子集合体の構造変化が生じる等の問題があり、これらを解決する新たな手法が望まれている。
【0023】
金属触媒は、一般的に固体担体表面に金属粒子を担持した複合粒子の形で反応に供され、その活性は、担持された金属微粒子の大きさ、結晶面の種類、担体の種類、及び分散性と被覆率によって変化する。そのため、金属粒子のサイズや形態制御のみならず、高分散性と高被覆率とを同時に実現しうる金属粒子担持法が望まれている。特に、近年注目されている固体高分子形燃料電池の実用化においては、高価な白金の多量使用が極めて大きな問題となっており、その利用効率を上げるために、金属触媒を大幅に減らした白金粒子担持物の開発が早急に望まれている。白金使用量の低減には、当然ながら白金担持法の工夫、特に白金ナノ粒子の形態制御が重要な事項である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、以上紹介した、白金ナノ粒子に関する多岐にわたる研究報告、先行技術を含めた従来技術を念頭に置きつつ、新規な形態の合成法、すなわち、固体/溶液界面に固定化された界面活性剤ミセルを鋳型とする新規な合成法により、既往とは異なる新規な形態を有する貴金属ナノ粒子を創出すべく、固体/溶液界面に界面活性剤ミセルを固定化する(固液界面2次元ミセル)ための方法、並びに用いる金属源と還元剤の種類、並びに反応条件についてさらに鋭意研究を進めた。
【0025】
その結果、二種類の界面活性剤を使用することによって、界面活性剤が形成する固液界面2次元ミセルに、予め加えられた塩化白金塩をヒドラジンで還元させることにより、グラファイト担体表面に固定化されたミセル内を反応場として白金を骨格とする極めて薄い単結晶質のデイスク状、棒状、板状の粒子、あるいはシート状薄膜粒子(厚さ:2〜5nm程度)が生成、あるいは成長させうることを究明した。
これらミセル内を反応場として生成する白金ナノ粒子等の形態は、ミセル内における金属塩濃度に強く依存することを知見した。本手法で粒子形態を支配するミセル内の金属塩濃度は、二種類の界面活性剤を使用し、その混合比を変えることによって、塩化白金酸等のミセル内の貴金属塩濃度を変えることができ、これによって、担体基板表面における形態、サイズ、配列を制御することができるものである。これに対して、一種類の界面活性剤の使用では、ミセル内の金属塩濃度を系統的、任意にコントロールすることは難しく、担体基板表面における粒子形態、サイズ、配列等、粒子の制御は極めて困難である。
【0026】
本手法による基板上に固定化されたミセルによって生成する白金超薄膜粒子は、溶液還元法によって液中から析出担持される不定形のバルクの粒子とは異なり、そしてまた、構造の変化する分子集合体鋳型である単にミセルのみによって生成する粒子とは異なり、基板に対して粒子形態、サイズ、配列が制御された粒子であることを知見した。
【0027】
この白金に基づく成果を他の金属でも研究を進めた結果、白金(Pt)以外に金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)等の他の貴金属でも同様に合成可能であることを知見した。本発明はこの知見に基づいてなされたものであり、その構成は以下(1)〜(22)の通りである。
【0028】
(1) 担体基板上に自己創出的に形成され、固定化されたミセル内で成長させて得られた、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属によってその骨格が形成された、厚さ2〜5nmの超薄膜状形態のデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
(2) 前記担体基板がグラファイト、雲母、シリカの何れかである、(1)に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
(3) 前記ミセル内での成長手段が、ミセル内を反応場とする還元反応によるものである、(1)に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
(4) 前記還元反応がヒドラジンによるものである、(3)に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
(5) 前記貴金属ナノ粒子が、還元反応後、担体基板を回収し、乾燥し、担体に担持されたままで回収される、(1)ないし(3)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
(6) 前記担体に担持されたままで回収されてなる該貴金属粒子が担体基板から分離、回収される(5)に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
(7) 前記貴金属が白金である、(1)ないし(6)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【0029】
(8)界面活性剤をミセル形成濃度で含むミセル形成溶液を調製する工程、 次いでミセル形成溶液に担体基板を浸漬し、担体基板上に半円形断面形状を有し、棒状に形成されたミセルを自己創出的に形成し、固定化する工程、貴金属イオンを含む溶液を加えてミセル内に貴金属イオンを拡散させる工程、次いで、還元剤を作用させることによって、該固定化されたミセル内を反応場として還元反応を進め、前記固定ミセルを鋳型として担体基板上に単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子を成長させる工程、からなることを特徴とする、厚さ2〜5nmのデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(9)前記基板上に生成する貴金属超薄膜ナノ粒子の厚み、形態、サイズを制御することを特徴とする、(8)に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(10) 前記貴金属イオンが、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)から選ばれる1種のイオンである、(8)に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(11) 前記ミセルを形成する界面活性剤が、少なくとも2種類であり、その種類及び二種類の界面活性剤の混合比を変えることによって、貴金属薄膜状粒子の厚さ、形態、サイズを制御する、(8)に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(12) 前記ミセル内の貴金属イオン濃度を変えることによって、単結晶白金薄膜状粒子の厚さやサイズを制御する、(8)記載の厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(13) 前記担体が、グラファイト、雲母、シリカから選ばれる1種の担体である、(8)に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(14) 前記還元反応がヒドラジンによるものである、(8)に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(15) 前記貴金属ナノ粒子が、一辺のサイズが50nm以上に発達した単一の二次元膜状を呈している、(8)ないし(14)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
(16) 前記貴金属が白金である、(8)ないし(15)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属粒子の製造方法。
(17) 前記ミセルを形成する界面活性剤が、ノナエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の有機硫黄酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等のアルキルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーよりなる群から選択された二種類の非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤一種とイオン性界面活性剤一種の合わせた二種類の界面活性剤である(8)または(11)に記載する単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【0030】
(18) 前記(1)ないし(7)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属ナノ粒子が触媒設計における有効成分として用いられることを特徴とした、貴金属触媒材料。
(19) 前記貴金属触媒材料が燃料電池用触媒設計用に用いられることを特徴とする、(18)に記載する貴金属触媒材料。
(20) 前記貴金属触媒材料が自動車排ガス浄化触媒設計用材料として用いられることを特徴とした、(18)に記載する貴金属触媒材料。
(21) 前記(1)ないし(7)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属ナノ粒子が電池用または電気分解用における電極設計材料として使用されることを特徴とした、貴金属電極材料。
(22) 前記(1)ないし(7)の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属ナノ粒子がセンサ設計用材料として使用されることを特徴とした、貴金属センサ材料。
【0031】
本発明によれば、デイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の厚さ2〜5nmの薄膜状の形態を有した制御された単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子を提供することが可能となった。すなわち、二種類の界面活性剤を使用しその混合比、塩化白金酸の濃度等出発貴金属塩濃度を変えることによって、担体基板表面に形態、サイズ、配列を容易に制御して担持することが可能となった。
【0032】
本発明の厚さ2〜5nmのデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の超薄膜形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子は、グラファイト等単体基板上にミセルを固定化する工程と、その固定化されたミセル内で還元反応を行って、単結晶質の薄膜状白金粒子を成長させると同時に基板上でナノ粒子の配列制御を行うことを特徴としている。
【0033】
本発明でミセルを形成するのに用いられる界面活性剤は、ノナエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の有機硫黄酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等のアルキルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド類、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーよりなる群から選択された二種類の非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤一種とイオン性界面活性剤一種の合わせた二種類の界面活性剤が使用される。
【0034】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類を選択する場合、ポリオキシエチレン鎖の重合度が大きい程、生成する薄膜状白金粒子の厚さは増大する傾向があり、目安としては前記重合度は40以上である。二種類の界面活性材料の混合設定は、例えばポリオキシエチレンソルビタンエステルとポリオキシエチレンアルキルエーテル類の二種類の非イオン界面活性剤混合系の場合、ポリオキシエチレンソルビタンエステルの混合割合を50%以下に設定すると塊状の白金粒子が得られ、単結晶薄膜状白金粒子の調整には適さない。
【0035】
他方、ポリオキシエチレンソルビタンエステルの割合が60%以上では、その割合が多い程生成する薄膜状白金粒子の厚さは増大する。
【0036】
また、アルキルアミンオキシドを用いる場合、アルキルアミンオキシドのプロトン化度は、0.3以下が望ましい。アルキルアミンオキシドのプロトン化度が0.3を超えると塊状の白金粒子が基板上に生成し、薄い粒子の生成が困難になる。
【0037】
上記選択、混合調整した界面活性剤水溶液にヘキサクロロ白金酸塩等の白金錯化合物よりなる群から選択された一種類の白金錯化合物を添加する。好ましい白金錯化合物の濃度範囲は1mM〜10mMである。白金錯化合物の濃度を調整することにより、生成する薄膜状白金粒子の厚さ、並びに表面被覆率を制御することができる。なお、この白金溶液は、ミセル形成後に加えても良い。
【0038】
界面活性剤濃度は、臨界ミセル形成濃度(CMC)付近が適当であり、0.1mMから10mMの範囲である。この反応溶液にグラファイト基板を浸すことにより、グラファイト/溶液界面において半円筒状のミセルが自発的に形成する。このミセルは白金錯化合物と複合体を形成し、薄膜状白金粒子の成長のための鋳型となる(図1中、A)。
【0039】
上記の界面活性剤と白金塩の混合水溶液にヒドラジン等の還元剤を添加して白金塩を還元させることにより、グラファイト基板上に固定化されたミセル内で薄膜状白金粒子を成長させる(図1中、B)。これにより、貴金属元素である白金(Pt)を骨格とする極めて薄い単結晶質の薄膜状粒子(厚み:2〜5nm程度)で、かつ単結晶体であることを特徴とする白金薄膜状ナノ粒子を生成する(図1中、C)。本発明では金属クラスター(ナノ粒子の成長核)の生成効率が高い還元剤を用いる。好ましくは化学還元剤であるヒドラジンが使用される。
【0040】
前述したように、上記の製造方法は、白金(Pt)以外にも金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)の一群からなる貴金属薄膜状粒子を製造することが可能である。
【0041】
所定濃度の金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)の硝酸塩、塩化物、塩化金属酸等の貴金属塩または貴金属錯化合物よりなる群から選択された一種以上の金属塩又は金属錯化合物を含む水溶液に、所定の混合比、濃度の二種類の界面活性剤を加える。
【0042】
界面活性剤は、ノナノエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の有機硫黄酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等のアルキルアンモニウム塩、 ドデシルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド類、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーよりなる群から選択された二種類の非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤一種とイオン性界面活性剤一種とを合わせた二種類の界面活性剤が用いられ、前記溶液に添加してミセル形成溶液を調製する。
【0043】
前記ミセル形成溶液にグラファイト等任意の担体を浸し、あるいは分散し、静置下におくと担体基板表面に半円等型ミセルが自立的に配列、形成される。
【0044】
次いで出発反応溶液にヒドラジン等の還元剤水溶液を添加することによってグラファイト基板上で還元反応が生じ、貴金属元素であるAu、Ag、Pd、Rh、Ir、Ruよりなる群から選択された一種以上の元素を任意の割合で混和した組織によってその骨格が構成され、これら貴金属を骨格とする極めて薄いデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の薄膜状粒子(厚さ:2〜5nm)が生成する。なお、貴金属塩溶液ミセル形成溶液調製の段階で加えたが、この溶液はミセルを形成後に加えても良い。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、その貴金属ナノ粒子が前述のような特有な合成プロセスによって、これまでの貴金属粒子とは異なり、制御された形態、サイズ、配列を有する特有且つ新規な超薄膜を呈したnmレンジの厚みの超微細な精度で制御された白金をはじめとした貴金属の単結晶質超薄膜ナノ粒子を担体基板に担持させた複合体を提供することでき、これらのものは、貴金属ナノ粒子を分離しなくても、その複合体のままで水素と酸素を反応させて電気エネルギーと熱を取り出す燃料電池用触媒や、自動車排ガス浄化、石油化学、合成ガス製造、医薬・油脂製造等における触媒、さらには、超微細センサ材料、電極材料等として使用することができ、産業の発展に大いに寄与するものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下、本発明を実施例及び添付した図面に基づき、具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、あくまでも本発明の一つの態様を開示するものであり、決して本発明を限定する趣旨ではない。すなわち、本発明のねらいとするところは、グラファイト等単体基板上に固定化されたミセル内で単結晶の薄膜状白金粒子を成長させることを特徴とする単結晶薄膜状白金粒子の製造方法にあることは、前述したとおりである。 本発明の製造方法は、白金以外にも他の貴金属(Au、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru)へも適用可能であり、多様な薄膜状貴金属粒子を許容するものである。ミセルを固定化する基板としては、グラファイト以外に、雲母、シリカ、などの無機物からなる基板でも可能である。
【0047】
また、製造方法の骨子は、グラファイト基板上に固定化されたミセル内で金属塩を還元することによって特定寸法のデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の薄膜状貴金属粒子を誘導し、基板上で生成する薄膜状貴金属粒子の形態、サイズ、配列を制御するものである。具体的には界面活性剤の種類や組み合わせ、濃度等によって変化させることが出来、これらの態様によることを含むものである。したがって、以下に示す実施例は、あくまでも具体的に説明するためにその一例を示すものにすぎず、本発明は、この実施例によって限定されない。
【0048】
本発明によって得られたシート状の白金薄膜状粒子は、先に紹介した先行文献(非特許文献27)に記載されたシート状の白金薄膜状粒子と形態上の類似がある。しかし、同報告によって得られたシート状の白金薄膜状粒子は、単結晶質であることの証明も言及もされていない。
【0049】
これに対して本発明では、以下に述べる実施例1の電子顕微鏡像(図3)で明らかなように、一辺が50nm以上のシート状の白金薄膜状粒子でも単結晶であることがその格子パターンによって証拠付けられており、この点で基本的に大きな違いがある。原子間力顕微鏡像では、さらに、一辺が1000nm以上の白金薄膜状粒子ドメインの生成も確認された。その白金薄膜状粒子の製造方法も本発明と先行文献とでは全く異なっている。
【0050】
先行文献では、グラファイト層間の空間を利用しているのに対して、本発明ではグラファイト基板上に固定化されたミセルを反応場として利用している。そして、この反応手法の違いにより、先行文献の場合は、グラファイト層間中で生成した白金薄膜状粒子を回収することは困難であるのに対し、本発明の場合は、グラファイト表面で白金薄膜状粒子が生成しているために、超音波照射等により容易に白金薄膜状粒子を回収できる。
【0051】
また、固体表面で白金薄膜状粒子が生成するために、固体表面への白金の担持厚みは、ナノレベルで極めて薄く担持させることが可能であり、さらに被覆率も、低い状態から高い状態の任意の担持が可能である。これによって、白金等の高価な貴金属は有効に利用されうる。
【0052】
本件発明は、前記したように界面活性剤の存在している貴金属イオンを含む液相に基板を浸して界面活性剤ミセルを基板上に固定して形成し、基板によって規制されたミセル内で還元反応によって薄膜状貴金属結晶を成長させるものであり、その生成する薄膜状貴金属粒子は、単なるナノ粒子ではなく、デイスク状、棒状、板状、あるいはシート状に形成される。本発明は、このことを発明の要旨としているものではある。
【0053】
対して、上記特許文献(特許文献7)にも、界面活性剤の存在している貴金属イオンを含む液相から、還元剤の作用によって溶液中で貴金属ナノ粒子を析出せしめることが記載されている。しかしながら、同報告によって得られた貴金属ナノ粒子の形態は、バルクの塊状粒子であり、しかも単結晶質であるとの証明も言及もされていない。これに対して、本発明では、以下に述べる実施例1、7、8の電子顕微鏡像で明らかなように、単なるナノ粒子ではなく、デイスク状、棒状、あるいはシート状の任意に制御可能に形成される厚さ2〜5nmの薄膜状貴金属ナノ粒子であり、この点で基本的に大きな違いがある。この極めて薄い薄膜状形態とすることによって、単なる粒子形態と比較して、薄膜状貴金属ナノ粒子の周囲部分の表面エネルギーが高くなる作用効果が奏せられ、その結果として高い触媒能を有する触媒材料として期待される。
【0054】
また、本発明では、ナノ粒子を基板上に自己創出的に析出せしめるために、上記特許文献7に比べ、貴金属ナノ粒子を基板上に担持するのに必要な白金使用量は極めて少ないという利点がある。加えて、本発明では、ナノ粒子を基板上に自己創出的に析出せしめるだけでなく、同時に基板上でのナノ粒子の配列も制御できることを特徴とする。これは、ナノ粒子を液中から基板上に還元、析出せしめるにすぎない特許文献7とも大きな違いがある。
【0055】
以下、本発明を、図面及び実施例に基づいて具体的に説明する。
【0056】
図1は、既に詳述したように白金を例にして説明した本発明による薄い白金ナノ粒子ないしナノーシートが形成されるプロセスを概念的に説明している。
図2は、グラファイト/溶液界面において形成された棒状ミセルの形態についての原子間力顕微鏡(AFM)による液中観察像を示している。図中、白色の縞状ドメインがTween60棒状ミセルであり、(a)は塩化白金塩添加なし、(b)は塩化白金塩添加してなるものであり、塩化白金塩と棒状ミセルとの相互作用により、棒状ミセルの形態が変化していることが認められる。
【0057】
図3は、グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成した薄膜状白金粒子の(a)AFM像及び(b)高分解能の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。AFM像から、薄膜状白金粒子の厚さ2〜5nmであり、その表面の自乗平均面粗さは0.15nmであることが認められた。TEM像から、幅0.23nm(Pt111面間隔)の格子縞とフーリエ像が観察され、この薄膜状白金粒子は、粒子全体が一つの単結晶体で構成されていることが認められる。
【0058】
図4は、(b)グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルのAFM像と(a)この棒状ミセルを反応場として生成した薄膜状白金粒子(白金ナノシート)のAFM像を示す。AFM像から、厚さ2〜5nmの薄膜状白金粒子が高分散状態で基板上に生成している。そして、白金ナノシートは、棒状ミセルの長軸方向に成長する特性を有しているために、反応場となる棒状ミセルの配向と同様に、生成した薄膜状白金粒子もお互いに60度ずつ異なる方向に配向しているのが観察される。
【0059】
図5は、グラファイト/溶液界面のTween60/C12EO9混合棒状ミセルを反応場として生成した薄膜状白金粒子のAFM像であり、Tween60のモル分率γが0.7以上で白金薄膜状粒子の生成が認められた。白金薄膜状粒子の厚さはγに依存することが確認された(すなわち、γが0.7で0.5〜1nm、γが0.8で2〜4nm、γが1で2〜5nm)。他方、γが0.5以下では白金薄膜状ナノ粒子の生成は確認することができず、棒状ミセルを表す縞状ドメインが観察される。
【0060】
図6は、グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成した、(a)薄膜状パラジウム粒子及び(b)薄膜状金粒子のAFM観察における位相像を示している。
【0061】
図7は、グラファイト/溶液界面のドデシルジメチルアミンオキシドの棒状ミセル(プロトン化度 0.2)の(a)AFM像、それを反応場として基板上に生成した棒状白金ナノ粒子の(b)AFM像及び(c)透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。AFM像から、厚さ約3〜4nm、直径約10nmの棒状(或はネックレス状)の白金粒子が基板上に生成している。そして、棒状ミセルの配向(黒矢印)と同様に、生成した棒状白金粒子もお互いに60度ずつ異なる方向に配向(黒矢印)していることが観測される。この時、基板上に生成する白金粒子のサイズや形態は、棒状ミセルのプロトン化度αで制御できることが見いだされた(図8)。すなわち、図8によると粒子のサイズ等は、プロトン化度αに依存していることが示されている。ここで、プロトン化度αは、α=[ 陽イオン型アミンオキシド界面活性剤]/[陽イオン型アミンオキシド界面活性剤+非イオン型アミンオキシド界面活性剤]と定義される。δは、白金粒子の厚さ、Dは直径を表す。プロトン化度が0.3以下の場合のみ、白金ナノ粒子が生成することが示されている。
【0062】
図9は、グラファイト/溶液界面のヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドのナノファイバー状ミセルを反応場として基板上に生成したデイスク状の白金ナノ粒子の(a)AFM像及び(b)透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。この図によると、AFM及びTEM像から、厚さ約3nmのデイスク状の白金ナノ粒子が基板上に高分散状態で生成していることが示されている。
図10は、後述するようにグラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成する薄膜状白金粒子(白金ナノシート)の合成プロセスを模式的に示したものである。
【実施例1】
【0063】
秤量瓶に、秤り取ったポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60;米国 Atlas Powder社 商品名)水溶液(0.5mM)を、10mL添加する。この溶液に高配向性グラファイト基板(HOPG)を浸すことにより、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルが自発的に形成する。
【0064】
次いで、ヘキサクロロ白金酸塩水溶液(0.1M)を1mL加えて反応溶液とした。このとき、グラファイト表面に吸着している棒状ミセルは白金錯化合物と複合体を形成し、薄膜状白金粒子の成長のために鋳型となる。図2にグラファイト/溶液界面において形成された棒状ミセルの形態についての原子間力顕微鏡(AFM)による液中観察像を示す。
【0065】
次いで、25℃に保持した反応溶液に塩化白金酸の1.5モル当量のヒドラジンを加え、塩化白金塩の化学還元を行い、そのまま48時間静置した。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で薄膜状白金粒子を成長させた。このとき、グラファイト基板表面に溶液中で生成した塊状白金粒子(バルクの粒子)が沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定する。その理由は、白金塩を含む溶液からは、ミセルを反応場として担体基板に制御されて形成される白金粒子以外にも、その一部はヒドラジンの作用によって直接還元され、バルクの塊状白金粒子として析出し、これが担体基板に沈降し、析出する場合があり、これを防ぐためにグラファイト基板は、下に向けて固定する。ミセルを反応場とする還元反応は、下に向けられた基板に自己創出的に形成された下向きのミセル内において還元され、前記塊状粒子の析出とは区分され、その沈降による堆積を防ぐことが出来る。数日経過後、ヒドラジンの作用による白金粒子の析出、沈降が終了した段階でグラファイト基板を溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面に薄膜状白金粒子を得ることが出来た(図10)。
【0066】
こうしてグラファイト基板表面に生成されたシート状の薄膜白金粒子のAFM像は図3(a)に示されているとおりである。薄膜状白金粒子に由来する球状のドメインが観察され、AFM像で得られる薄膜白金粒子の断面図から、薄膜状白金粒子の厚さ2〜5nmであることがわかった。また、薄膜状白金粒子表面の自乗平均面粗さは0.15nmであり、その表面は原子レベルで平滑であることが確認できた。透過型電子顕微鏡による観察では(図3(b))、幅0.23nm(Pt111面間隔に相当)の格子縞とフーリエ像が観察され、この薄膜状白金粒子は、粒子全体が一つの単結晶体で構成されていることが確認された。これにより、本発明にかかる単結晶性の白金薄膜状粒子が得られたことが分かった。
【実施例2】
【0067】
[シート状の白金薄膜状粒子の生成に及ぼす塩化白金酸水溶液の濃度効果]
実施例1と同様な操作、同一条件で、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルが自発的に形成させた。ついで、このグラファイト表面に前駆体棒状ミセルが形成した水溶液に、塩化白金酸水溶液濃度が0.02mM、0.1mM、1mMそして10mMになるように加えた。
【0068】
次いで、25℃に保持した反応溶液に塩化白金酸の2モル当量のヒドラジンを加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で薄膜状白金粒子を成長させた。このとき、グラファイト基板表面に溶液中で生成した塊状白金粒子が沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定した。溶液中で生成した塊状白金粒子が沈降した後に、グラファイト基板を溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面に薄膜状白金粒子を得た。
【0069】
塩化白金酸水溶液濃度が0.1mM、1mMの場合では、グラファイト基板表面で白金粒子が得られ、AFM像で得られる薄膜状白金粒子の断面図から、その厚さ2〜5nm程度の白金薄膜状粒子であることが確認された。他方、塩化白金酸水溶液濃度が10mMの場合では、厚さ4nm程度の白金薄膜状粒子が積層した構造を有する、厚さ10nm以上の3次元積層構造をもつ白金薄膜状粒子の生成がAFM像で確認された。他方、塩化白金酸水溶液濃度が0.02mMでは、白金薄膜状粒子の生成は確認できなかった。
【実施例3】
【0070】
[2種混合系界面活性剤を用いたシート状の白金薄膜状粒子の生成]
実施例1と同様な操作・条件で、界面活性剤Tween60の代わりに、Tween60とノナエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C12EO9;日本、和光社 商品名:ニッコールBL−9EX)の2種混合系でグラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルを自発的に形成させた。界面活性剤の全濃度は、0.5mMに固定し、上記2種混合系のTween60のモル分率(γ)を変えた。
【0071】
次いで、25℃に保持した反応溶液に塩化白金酸の1.5モル当量のヒドラジンを加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で薄膜状白金粒子を成長させた。このとき、グラファイト基板表面に溶液中で生成した塊状白金粒子が沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定した。溶液中で生成した塊状白金粒子が沈降した後に、グラファイト基板を溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面に薄膜状白金粒子を得た。
【0072】
AFM観察により、γが0.7以上で白金薄膜状粒子の生成が確認された(図5)。AFM像で得られる薄膜状白金粒子の断面図から、白金薄膜状粒子の厚さはγに依存することが確認された(γ=0.7で1〜2nm、γ=0.8で2〜4nm、γ=1で2〜5nm)。他方、γが0.5以下では、白金薄膜状粒子の生成は確認されなかった。
【実施例4】
【0073】
[シート状の白金薄膜状粒子の生成に及ぼすポリオキシエチレンアルキルエーテル類のポリオキシエチレン鎖長の効果]
実施例1と同様な操作・条件で、界面活性剤Tween60の代わりに、Polyoxyethlene DodecylEther(C12EO23、日本、関東化学、商品名;Brij 35)、Polyoxyethlene 40 Stearate(C18EO40、米国、SIGMA社、商品名:Myrh52)、並びにPolyoxyethlene 100 Stearate (C18EO100、米国、SIGMA社、商品名:Myrh59)を用いて、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルを自発的に形成させた。界面活性剤濃度は、1mMに固定した。
【0074】
次いで、25℃に保持した反応溶液に塩化白金酸の1.5モル当量のヒドラジンを加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で薄膜状白金粒子を成長させた。このとき、グラファイト基板表面に溶液中で生成した塊状白金粒子が沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定した。溶液中で生成した塊状白金粒子が沈降した後に、グラファイト基板を溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面に薄膜状白金粒子を得た。
【0075】
AFM観察により、C18EO40では白金薄膜状粒子の生成が確認された。AFM像で得られる薄膜状白金粒子の断面図から、白金薄膜状粒子の厚さは、5〜25nm程度であった。C18EO100では、その厚さは数百ナノメートル以上にまで増大していることが確認された。他方、C12EO23を用いた場合には、白金薄膜状粒子の生成は確認されなかった。このようにして、白金薄膜状粒子の厚さは、使用するポリオキシエチレンアルキルエーテル類のポリオキシエチレン鎖長と伴に増大することが確認された。
【実施例5】
【0076】
[本発明の他貴金属粒子生成への適用:パラジウム薄膜状粒子の生成]
実施例1と同様な操作・条件で、ヘキサクロロ白金酸塩の代わりに、塩化パラジウム2ナトリウムを用いて、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルを自発的に形成させた。
【0077】
次いで、25℃に保持した反応溶液に塩化白金酸の1.5モル当量のヒドラジンを加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で薄膜状パラジウム粒子を成長させた。このとき、グラファイト基板表面に溶液中で生成した塊状パラジウム粒子が沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定した。溶液中で生成した塊状パラジウム粒子が沈降した後に、グラファイト基板を溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面に薄膜状パラジウム粒子を得た。
【0078】
グラファイト基板表面に生成した薄膜状パラジウム粒子のAFM像を図6(a)に示す。黒色に見えるドメインが薄膜状パラジウム粒子であり、AFM像で得られる薄膜状パラジウム粒子の断面図から、薄膜状パラジウム粒子の厚さ5nm程度であることが分かった。
【実施例6】
【0079】
[本発明の他貴金属粒子生成への適用:金薄膜状粒子の生成]
実施例1と同様な操作・条件で、ヘキサクロロ白金酸塩の代わりに、テトラクロロ金酸塩を用いて、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルを自発的に形成させた。
【0080】
次いで、25℃に保持した反応溶液に塩化金酸の1.5モル当量のヒドラジンを加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で薄膜状金粒子を成長させた。このとき、グラファイト基板表面に溶液中で生成した塊状金粒子が沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定した。 溶液中で生成した塊状金粒子が沈降した後に、グラファイト基板を溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面に薄膜状金粒子を得た。
【0081】
グラファイト基板表面に生成した薄膜状金粒子のAFM像を図6(b)に示す。白色に見えるドメインが薄膜状金粒子であり、AFM像で得られる薄膜状金粒子の断面図から、薄膜状金粒子の厚さ2〜5nmであることがわかった。但し、薄膜状金粒子以外にも、塊状に成長した金粒子も確認された。
【実施例7】
【0082】
[棒状形態を有する薄膜状白金粒子の生成]
実施例1と同様な操作・条件で、界面活性剤Tween60の代わりに、ドデシルジメチルアミンオキシド(Fulka社)を用いて、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルを自発的に形成させた。界面活性剤濃度は、10mMに固定した。
【0083】
次いで、25℃に保持した反応溶液にドデシルジメチルアミンオキシドの0.1モル当量(1mM)の塩化白金酸を加えて、棒状ミセルと白金イオンとの複合体を形成させた。ついで、25℃に保持した反応溶液にヒドラジン(10mM)を加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化された棒状ミセル内で棒状形態を有する薄膜状白金粒子を成長させた。このとき、溶液中で生成した塊状白金粒子がグラファイト基板表面上に沈着しないように、グラファイト基板は下に向けて固定した。溶液中で生成した塊状白金粒子が沈降した後に、グラファイト基板を溶液から取り出し乾燥して、グラファイト基板表面に棒状形態(或はネックレス状形態)を有する薄膜状白金粒子を得た(図7(b))。
【0084】
AFM像から、厚さ約2〜4nm、直径約10nmの棒状白金粒子が基板上に生成している。そして、棒状ミセルの配向(図7(a)の矢印)と同様に、生成した棒状白金粒子もお互いに60度ずつ異なる方向に配向(図(7b)の矢印)していることが観測された。この時、基板上に生成する白金粒子のサイズは、プロトン化度で制御できることが見いだされた(図8)。
【実施例8】
【0085】
[デイスク状形態を有する薄膜状白金粒子の生成]
実施例1と類似した操作・条件で、界面活性剤Tween60の代わりに、セチルトリメチルアンモニウム ヒドロキシド(東京化成 社)を用いて、グラファイト/溶液界面において半円筒状の棒状ミセルを自発的に形成させた。界面活性剤濃度は、10mMに固定した。ついで、25℃に保持した反応溶液にセチルトリメチルアンモニウム ヒドロキシドの1.2モル当量(12mM)の塩化白金酸を加えた。
【0086】
次いで、この溶液を濾過して得られた反応溶液にグラファイト基板を浸すことにより、グラファイト表面に白金イオンと複合化したファイバー状ミセルを自発的に形成させた(図9a)。次いで、ファイバー状のミセルを担持したグラファイト基板を純水に浸した。25℃に保持したこの反応溶液にヒドラジン(10mM)を加え、そのまま24時間反応させた。このようして、グラファイト基板上に固定化されたファイバー状ミセル内でデイスク状形態を有する薄膜状白金粒子を成長させた。溶液から取り出し、乾燥してグラファイト基板表面にデイスク状形態を有する薄膜状白金粒子を得た(図9)。AFM及びTEM像から、厚さ約2〜4nm、直径約3〜10nm程度のデイスク状白金粒子が基板上に生成していることが確認された(図9b)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、上述記載で述べたように、白金を始めとする貴金属元素さらには卑金属を含む貴金属元素に対し、全く新しい極めて特異な形態、すなわち、単結晶質の薄膜状白金粒子形態を有するナノ粒子を提供するもので、その特異な形態を有し且つ、ナノ領域の厚さを呈していることから、触媒設計、電極設計、センサ設計において極めて有意な活性を有し、これによって極めて高価な貴金属材料を使用する材料設計において、材料節減効果を有することは勿論、高レベルの性質、機能を発現するものと期待される。稀少且つ高価な貴金属元素は、今後ますます需要が増える傾向にあり、これを考慮すると、本発明の位置づけは極めて高く、重要度は最高レベルといっても過言でない。特に燃料電池の開発の重要性を考えると、本発明の特異な形態、特異な間隙を有してなる白金を始めとする貴金属粒子の意義は、極めて大である。今後、触媒や燃料電池以外にも、各種技術分野において大いに利用されるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成する薄膜状白金粒子(白金ナノシート)の生成過程を模式的に示した図。
【図2】グラファイト/溶液界面において形成された棒状ミセルの形態についての原子間力顕微鏡(AFM)による液中観察像であり、(a)は塩化白金塩無添加の場合、(b)は、塩化白金塩添加した場合を示した図。
【図3】グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成したシート状の薄膜形態白金粒子の(a)AFM像と(b)高分解能の透過型電子顕微鏡(TEM)像とを示す図。
【図4】グラファイト/溶液界面において形成された(b)Tween60棒状ミセルの形態についての原子間力顕微鏡(AFM)による液中観察像と(a)棒状ミセルを反応場として生成した薄膜状白金粒子のAFM像および、(c)棒状ミセルの長軸方向(矢印)と薄膜状白金粒子の配向を示している図。
【図5】グラファイト/溶液界面のTween60/C12EO9混合棒状ミセルを反応場として生成した薄膜状白金粒子のAFM像を示した図。
【図6】グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成した(a)薄膜状パラジウム粒子(黒色部分)及び(b)薄膜状金粒子(白色部分)のAFM観察における位相像とを示した図。
【図7】グラファイト/溶液界面のドデシルジメチルアミンオキシド(プロトン化度α=0.2)による棒状ミセルを反応場として生成した棒状状白金粒子のAFM像及び透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図。
【図8】グラファイト/溶液界面のドデシルジメチルアミンオキシドによる棒状ミセルを反応場として生成した棒状状白金粒子のサイズのプロトン化度(α)依存性を示す図。
【図9】グラファイト/溶液界面のヘキサデシルトリメチルアンモニウム ヒドロキシドの棒状ミセルを反応場として基板上に生成したデイスク状の白金ナノ粒子のAFM像及び透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図。
【図10】グラファイト/溶液界面のTween60棒状ミセルを反応場として生成する薄膜状白金粒子(白金ナノシート)の合成プロセスを模式的に示している図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体基板上に自己創出的に形成され、固定化されたミセル内で成長させて得られた、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属によってその骨格が形成された、厚さ2〜5nmの超薄膜状形態のデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項2】
前記担体基板がグラファイト、雲母、シリカの何れかである、請求項1に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項3】
前記ミセル内での成長手段が、ミセル内を反応場とする還元反応によるものである、請求項1に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項4】
前記還元反応がヒドラジンによるものである、請求項3に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項5】
前記貴金属ナノ粒子が、還元反応後、担体基板を回収し、乾燥し、担体に担持されたままで回収される、請求項1ないし3の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項6】
前記担体に担持されたままで回収されてなる該貴金属粒子が担体基板から分離、回収される、請求項5に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項7】
前記貴金属が白金である、請求項1ないし6の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの超薄膜状形態の単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子。
【請求項8】
界面活性剤をミセル形成濃度で含むミセル形成溶液を調製する工程、 次いでミセル形成溶液に担体基板を浸漬し、担体基板上に半円形断面形状を有し、棒状に形成されたミセルを自己創出的に形成し、固定化する工程、貴金属イオンを含む溶液を加えてミセル内に貴金属イオンを拡散させる工程、次いで、還元剤を作用させることによって、該固定化されたミセル内を反応場として還元反応を進め、前記固定ミセルを鋳型として担体基板上に単結晶質貴金属超薄膜ナノ粒子を成長させる工程、からなることを特徴とする、厚さ2〜5nmのデイスク状、棒状、板状、あるいはシート状の単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記基板上に生成する貴金属超薄膜ナノ粒子の厚み、形態、サイズを制御することを特徴とする、請求項8に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記貴金属イオンが、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)から選ばれる1種のイオンである、請求項8に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ミセルを形成する界面活性剤が、少なくとも2種類であり、その種類及び混合比を変えることによって、貴金属薄膜状粒子の厚さ、形態、サイズを制御する、請求項8に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記ミセル内の貴金属イオン濃度を変えることによって、単結晶白金薄膜状粒子の厚さやサイズを制御する、請求項8に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記担体が、グラファイト、雲母、シリカから選ばれる1種の担体である、請求項8に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記還元反応がヒドラジンによるものである、請求項8に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記貴金属ナノ粒子が、一辺のサイズが50nm以上に発達した単一の二次元膜状を呈している、請求項8ないし14の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記貴金属が白金である、請求項8ないし15の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属粒子の製造方法。
【請求項17】
前記ミセルを形成する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、有機硫黄酸塩、アルキルアンモニウム塩、アミンオキシド類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーよりなる群から選択された二種類の非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤一種とイオン性界面活性剤一種の合わせた二種類の界面活性剤である請求項8または11に記載する単結晶質貴金属超薄膜状ナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし7の何れか1項にする厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属ナノ粒子が触媒設計における有効成分として用いられることを特徴とした、貴金属触媒材料。
【請求項19】
前記貴金属触媒材料が燃料電池用触媒設計用に用いられることを特徴とした、請求項18に記載する貴金属触媒材料。
【請求項20】
前記貴金属触媒材料が自動車排ガス浄化触媒設計用材料として用いられることを特徴とした、請求項18に記載する貴金属触媒材料。
【請求項21】
請求項1ないし7の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属ナノ粒子が電池用または電気分解用における電極設計材料として使用されることを特徴とした、貴金属電極材料。
【請求項22】
請求項1ないし7の何れか1項に記載する厚さ2〜5nmの単結晶質超薄膜状貴金属ナノ粒子がセンサ設計用材料として使用されることを特徴とした、貴金属センサ材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−278312(P2006−278312A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313412(P2005−313412)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】