説明

圧力容器、圧力容器を備えた浮体構造物及び圧力容器の設計方法

【課題】収容効率に優れるとともに取り扱いが容易な圧力容器、圧力容器を備えた浮体構造物及び圧力容器の設計方法を提供する。
【解決手段】本発明の圧力容器1は、円形断面の胴部と両端部に略半球形の鏡板部とを有する三つのシリンダー型圧力容器の各胴部が互いに交差するように配置した形状の外形からなる外殻を有し、外殻は、胴部2、上頭部3a、下頭部3bとから構成されている。また、圧力容器1の内部には、隣接するシリンダー型圧力容器の胴部の交点を結んだ線分上に配置される隔壁4が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガス等の貯留・運搬等に用いる圧力容器、圧力容器を備えた浮体構造物及び圧力容器の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化石油ガス(LPG)等の低温液化ガスを大量に貯留する場合には、陸上や船舶に据え付けられた大型の圧力容器(ガスタンク)に封入して貯留することが一般的である。かかる圧力容器は、低温・高圧の条件を満足するために鋼製とされ、また、圧力を考慮して球形又はシリンダー型の形状とされる。シリンダー型圧力容器は、円筒形の胴部と、該胴部の両端部に接続された半球形の鏡板部と、から構成される。このシリンダー型圧力容器には、複数の胴部を連設した双胴型や多胴型が既に知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これら双胴型や多胴型の圧力容器は、単胴型の圧力容器では、大規模になるほど径が大きくなったり鋼板の厚さが厚くなったりすることによって圧力容器の収容空間に対する液化ガスの収容効率が低下してしまうことに鑑み創案されたものである。
【0003】
特許文献1に記載された圧力容器は、並列配置した複数の円筒形のタンク胴を、隣接するタンク胴同士が互いに重なるように隔壁を介して一体に接合してなる液化ガスタンクにおける隔壁の上端に接合する部分の各タンク胴のシェル部の半径を、他の部分のシェル部の半径よりも大きくして、隔壁とシェル部との交差角を大きくした構成を有することを特徴とするものである。したがって、特許文献1に記載された圧力容器は、隣接したタンク胴の取り合い部の形状に着目して容積効率を改善したものであり、タンク胴をどのように配置することが容積効率の改善に最適であるか否かには言及していない。
【0004】
特許文献2に記載された圧力容器は、任意の曲率半径を持つ円筒面又は球面を複数連結した波形又はぶどう状の外殻をもってタンクの各面を構成し、かつ各円筒面又は球面の連結部に結合し、縦と横の方向に配列組み合わされた強度部材を設けたことを特徴とするものである。かかる圧力容器は、小径の円筒タンクを多数配列した外殻を有し、円筒タンクの配列は任意である旨が記載されているものの、隣接する2つの円筒タンクを重ね合わせることによって多数配列したもの及び外殻全体の概形が方形のものしか開示されていない。すなわち、特許文献2に記載された圧力容器は、複数の圧力容器を並列に配置したもの(例えば、双胴型)を複数並設したものに過ぎない。また、圧力容器の収容空間に対して小径の円筒タンクを多数配列した外殻を有する大型かつ単体の圧力容器を形成することを念頭にしている。
【特許文献1】特開平9−4795号公報
【特許文献2】特公昭37−4393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陸上やLNG船・LPG船のような船舶に圧力容器を据え付ける場合には、上述したような外殻の概形が方形のものを採用することもできるが、例えば、浮体構造物に圧力容器を据え付けるような場合には、陸上や船舶のように幅の広い収容空間を確保することが困難な場合がある。かかる場合に、単体の圧力容器を複数配置する方法では圧力容器間に無駄な空間ができてしまうし、特許文献2のように複数の圧力容器を並列に配置する方法では圧力容器全体が大型化してしまい製作及び搬送が困難になってしまう等の問題が生ずる。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、収容効率に優れるとともに取り扱いが容易な圧力容器、圧力容器を備えた浮体構造物及び圧力容器の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、略円形断面の胴部を備えた三つ以上の仮想圧力容器を想定し、該仮想圧力容器のうち少なくとも三つの各胴部が互いに交差するように配置した形状の外形からなる外殻を有する、ことを特徴とする圧力容器が提供される。また、前記外殻の内部には、隣接する前記胴部の交点を結んだ線分上に配置される隔壁が接続され、該隔壁には連通孔が形成されていてもよい。さらに、前記仮想圧力容器は両端部に略半球形の鏡板部を有し、前記外殻は前記胴部の配置に伴って定まる前記鏡板部の外形からなる一対の頭部を有していることが好ましい。
【0008】
また、本発明によれば、略円形断面の胴部を備えた三つ以上の仮想圧力容器を想定し、該仮想圧力容器のうち少なくとも三つの各胴部が互いに交差するように配置した形状の外形からなる外殻を有する圧力容器を備えた浮体構造物であって、前記圧力容器を載置するための収容面と、該収容面の外周を囲う外壁と、前記収容面を複数の多角形状に分割した多角形状領域ごとに載置された前記圧力容器と、該圧力容器の外殻と前記外壁との間に配置された内壁と、前記収容面を覆う蓋部材と、を備え、前記外壁、前記内壁及び前記蓋部材により囲まれた空間はバラストタンクを形成している、ことを特徴とする圧力容器を備えた浮体構造物が提供される。ここで、前記圧力容器の外殻の内部には、隣接する前記胴部の交点を結んだ線分上に配置される隔壁が接続され、該隔壁には連通孔が形成されていてもよいし、前記仮想圧力容器は両端部に略半球形の鏡板部を有し、前記外殻は前記胴部の配置に伴って定まる前記鏡板部の外形からなる一対の頭部を有していてもよい。
【0009】
また、前記多角形状領域は、三角形状に分割されていることが好ましい。また、前記収容面は略水平面であって、前記圧力容器は長手方向が前記収容面に対して略垂直となるように載置するようにしてもよい。また、前記浮体構造物が、喫水上に配置される甲板と、該甲板の下部に接続されるとともに没水部を有する複数の脚部とを有する場合には、該脚部に前記蓋部材を接続するようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明によれば、圧力容器を載置するための収容面に適した圧力容器の外殻形状を設定する圧力容器の設計方法であって、略円形断面の胴部を備えた三つ以上の仮想圧力容器を想定し、該仮想圧力容器のうち少なくとも三つの各胴部が互いに交差するように前記収容面に配置し、その外形を外殻として設定する、ことを特徴とする圧力容器の設計方法が提供される。また、前記収容面を複数の多角形状領域に分割した後、該多角形状領域に前記仮想圧力容器を配置するようにしてもよい。なお、前記多角形状領域は、三角形状に分割されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明の圧力容器によれば、三胴型とも云える外殻を採用したことにより、単なる双胴型や多胴型の圧力容器に比して、特に三角形状の収容面に対する液化ガスの収容効率を向上させることができる。また、外殻の概形が三角形状であるため、圧力容器の配置に汎用性があり、複雑な形状や多角形状の収容面にも容易に対応することができる。したがって、液化ガスを大量に貯留したい場合であっても、本発明の圧力容器を複数配置することによって対応することができ、単体で大型の双胴型や多胴型の圧力容器を製作する場合よりも製作及び搬送が容易になる。また、三つの頭部により自立することができるので、圧力容器を容易に縦置することができ、圧力容器の載置・据付を容易に行うことができる。したがって、本発明の圧力容器は、収容効率を向上させることができるとともに、種々の場面における圧力容器の取り扱いを容易にすることができる。
【0012】
上述した本発明の圧力容器を備えた浮体構造物によれば、浮体構造物に形成された圧力容器の収容面を多角形状に分割して本発明の圧力容器を載置するようにしたので、液化ガスの収容効率を向上させることができる。また、圧力容器の収容空間が限られた浮体構造物に対しても本発明の圧力容器であれば容易に配置することができる。また、本発明の圧力容器を複数縦置した場合には、単体で大型の圧力容器を配置した場合よりも圧力容器の断面積を小さくすることができ、波によるスロッシング(圧力容器内の流体が揺動して圧力容器の外殻等に負荷がかかること)を低減することができる。
【0013】
上述した本発明の圧力容器の設計方法によれば、少なくとも三つの仮想圧力容器を近接させて外殻を設計できるため、双胴型や双胴型を複数連接した多胴型よりも、収容面と外殻との隙間を狭くすることができ、収容効率を向上させることができる。特に、三角形状の収容面に対して効果的であり、多角形状に収容面を分割してから仮想圧力容器を配置することによって、収容効率に優れ、製作容易かつ搬送容易な圧力容器を設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の圧力容器の第一実施形態を示す図であり、(A)は側面図、(B)は図1(A)におけるB−B断面図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の圧力容器1は、円形断面の胴部と両端部に略半球形の鏡板部とを有する三つのシリンダー型圧力容器の各胴部が互いに交差するように配置した形状の外形からなる外殻を有し、外殻は、胴部2、上頭部3a、下頭部3bとから構成されている。すなわち、シリンダー型圧力容器の胴部が形成する外殻が胴部2であり、シリンダー型圧力容器の鏡板部が形成する外殻が上頭部3a及び下頭部3bである。なお、ここでは、圧力容器1を縦置(収容面に対して圧力容器1の長手方向を垂直に載置すること)している場合を想定しているため、便宜上、両端部の頭部を上頭部3a、下頭部3bと称している。
【0016】
また、圧力容器1の内部には、図1(B)に示すように、隣接するシリンダー型圧力容器の胴部の交点を結んだ線分上に配置される隔壁4が接続されている。本実施形態においては、隔壁4はY字状に配置される。また、各隔壁4には、圧力容器1の長手方向に所定の間隔で連通孔4aが形成されており、圧力容器1に収容された液化ガスが互いに行き来できるように構成されている。なお、図示していないが、胴部2、上頭部3a、下頭部3b及び隔壁4には、補強材を適宜配置するようにしてもよいし、上頭部3aの三つの頂部に液化ガスを圧力容器1内に封入するためのバルブを必要数設けるようにしてもよい。
【0017】
次に、圧力容器1の設計方法について、図2を参照しつつ説明する。ここで、図2は、図1に示した圧力容器の設計方法の説明図であり、(A)は準備工程、(B)は外殻設計工程、(C)は隔壁設計工程、(D)は完成体を示す図である。
【0018】
図2(A)に示すように、ここでは、圧力容器1の収容面5が正三角形状の場合について説明する。なお、収容面5とは、圧力容器1が載置される収容空間を圧力容器1の長手方向に垂直な面で切断した断面をいう。そして、所定の半径を有する円形断面の胴部2aを備えた三つの仮想圧力容器を用意する。
【0019】
図2(B)に示すように、収容面5に仮想圧力容器の胴部2aを隣接する二辺に接するようにそれぞれ配置する。このとき、仮想圧力容器の胴部2aの半径を適宜調整し、少なくとも三つの各胴部2aが互いに交差するように胴部2aの位置を決定する。好ましくは、三つの胴部2aの外形からなる形状の面積の総和が最大となるように胴部2aの半径を設定する。その結果、圧力容器1の胴部2の形状が定まる。また、仮想圧力容器の胴部2aの配置が決まれば、仮想圧力容器の鏡板部(図示せず)の配置も自動的に定まり、圧力容器1の上頭部3a及び下頭部3b(図示せず)の形状が定まる。胴部2、上頭部3a及び下頭部3bの形状が定まれば、圧力容器1の外殻の形状が定まる。
【0020】
図2(C)に示すように、隣接する仮想圧力容器の胴部2aの交点を結んだ線分L1,L2,L3を描き、三本の線分L1,L2,L3の交点と胴部2aの外形上に存在する交点とを結び、隔壁4の配置を決定する。
【0021】
図2(D)に示すように、外殻設計工程で定まった圧力容器1の外殻と、隔壁設計工程で定まった隔壁4とを結合すれば、最終的な圧力容器1(完成体)の形状が定まる。なお、外殻の厚さ、補強材、バルブ、隔壁4の連通孔等については、別途設計される。
【0022】
次に、圧力容器1の異なる形状の設計方法について、図3を参照しつつ説明する。ここで、図3は、本発明の圧力容器及びその設計方法を示す説明図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態を示している。
【0023】
図3(A)に示す第二実施形態は、収容面31の底辺が他の二辺よりも短い二等辺三角形状の場合を示している。この場合、角度の大きい底辺側に円形断面の胴部32a,32aを有する仮想圧力容器を配置することが好ましい。そして、残りの空間は細長いため、ここでは楕円断面の胴部32bを有する仮想圧力容器を配置している。このように仮想圧力容器を配置することによって、第一実施形態の場合と同様に圧力容器1の外殻32の形状を設計することができる。また、第一実施形態の場合と同様にして、線分L1,L2,L3上にY字状の隔壁33を設計することができる。なお、本願において、「略円形断面」とは、円形断面のみならず、本実施形態のごとき楕円断面、その他の円形に類似する断面を含む意味である。
【0024】
図3(B)に示す第三実施形態は、収容面34の底辺が他の二辺よりも長い二等辺三角形状の場合を示している。ここでは、半径の等しい円形断面の胴部35aを有する仮想圧力容器を隣接する二辺に接するように配置している。そして、底角近傍の空間には、まだ十分な隙間が余っているため、小径の円形断面の胴部35bを有する仮想圧力容器を配置している。したがって、第三実施形態では五つの仮想圧力容器を使用し、主たる部分に本発明の設計方法を適用している。このように仮想圧力容器を配置することによって、第一実施形態の場合と同様に圧力容器1の外殻35の形状を設計することができる。また、第一実施形態の場合と略同様にして、線分L1,L2,L3上にY字状の隔壁36を設計することができ、線分L4,L5上に平板状の隔壁37を設計することができる。なお、底角部分に配置される仮想圧力容器の胴部35a及び/又は胴部35bには、楕円断面のものを使用してもよい。
【0025】
図3(C)に示す第四実施形態は、収容面38が菱形の四角形状の場合を示している。ここでは、半径の等しい円形断面の胴部39aを有する仮想圧力容器を隣接する二辺に接するように配置している。そして、図の上側に配置された三つの仮想圧力容器の胴部39aが互いに交差し、図の下側に配置された三つの仮想圧力容器の胴部39aも互いに交差するように配置している。すなわち、本実施形態においては、四つの仮想圧力容器を使用し、二ヶ所において本発明の設計方法を適用している。このように仮想圧力容器を配置することによって、第一実施形態の場合と同様に圧力容器1の外殻39の形状を設計することができる。また、第一実施形態の場合と同様にして、線分L1,L2,L3,L4,L5上に、二つのY字状部材を上下反転させて互いに接続した形状の隔壁40を設計することができる。
【0026】
続いて、圧力容器1の収容面が大きい場合における圧力容器1の設計方法について、図4を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の圧力容器及びその設計方法を示す説明図であり、(A)は第五実施形態、(B)は第六実施形態、(C)は第七実施形態を示している。
【0027】
図4(A)に示す第五実施形態は、収容面41が六角形状の場合を示している。このような多角形状の場合、全体を一つの収容面として考えて圧力容器を設計すると、無駄な空間ができてしまって収容効率が低下したり、圧力容器が大型化してしまい製造や搬送等の労力が増大したり、船舶や浮体構造物に配置した場合には波によるスロッシングの影響が大きくなったりしてしまう。そこで、本発明では、収容面41をまず複数の三角形状領域41a〜41fに分割している。その後、図2に示した設計方法を適用して三角形状領域41a〜41fごとに圧力容器1の形状を設計している。この場合、中央部に隙間ができるが、この部分には、さらに円形断面の圧力容器を配置してもよいし、収容面41の補強部材を配置したり、配管等を配置する空間として使用したりしてもよい。
【0028】
図4(B)に示す第六実施形態は、収容面42が台形形状の場合を示している。この場合も、第五実施形態の場合と同様に、収容面42を複数の三角形状領域42a〜41cに分割している。その後、図2に示した設計方法を適用して三角形状領域42a〜41cごとに圧力容器1の形状を設計している。この収容面42は、例えば、船舶等に圧力容器1を横置する場合に想定される。
【0029】
図4(C)に示す第七実施形態は、収容面43が正方形状の場合を示している。この場合も、第五実施形態の場合と同様に、収容面43を複数の三角形状領域43a〜43dに分割している。その後、図2に示した設計方法を適用して三角形状領域43a〜43dごとに圧力容器1の形状を設計している。なお、ここでは、図3(B)に示した第三実施形態の圧力容器1を使用している。
【0030】
上述したように、収容面を複数の三角形状領域に分割する場合には、圧力容器1の製作上の観点から、できるだけ同じ形状の三角形状となるように均等に分割することが好ましいが、収容面が複雑な形状の場合には、部分的に異なる形状の三角形状や四角形状の領域を混在させてもよい。また、分割された多角形状領域の形状によっては、図3(A)に示した第二実施形態の圧力容器1や図3(C)に示した第四実施形態の圧力容器1を使用するようにしてもよい。
【0031】
次に、本発明の圧力容器1を備えた浮体構造物について、図5を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の圧力容器を備えた浮体構造物を示す図であり、(A)は浮体構造物の第一実施形態における水平断面図、(B)は同第一実施形態における側面概略断面図、(C)は浮体構造物の第二実施形態における側面概略断面図である。
【0032】
図5(A)及び(B)に示すように、本発明の圧力容器1を備えた浮体構造物51は、圧力容器1を載置するための収容面52と、収容面52の外周を囲う外壁53と、収容面52を六つの三角形状に分割した三角形状領域ごとに載置された圧力容器1と、圧力容器1の外殻と外壁53との間に配置された内壁54と、収容面52の上部を覆う蓋部材55とを備え、外壁53、内壁54及び蓋部材55により囲まれた空間はバラストタンク56を形成している。なお、圧力容器1及び外壁53の内周には補強材1a,53aがそれぞれ配設されている。
【0033】
この浮体構造物51は、収容面52の外形が六角形状であるため、実際に圧力容器1を載置する実収容面52aを収容面52と相似形状の六角形状に設定し、図4(A)に示した第五実施形態の圧力容器1の設計方法を適用して六つの圧力容器1を収容面52に配置している。このように圧力容器1を設計して配置することにより、圧力容器1の外殻と外壁53との間に空間を形成することができ、上述したバラストタンク56を配置することができ、必要に応じて浮体構造物51を浮沈させることができる。また、圧力容器1を配置した中央部の空間には、円筒形状の筒壁57が接続されており、筒壁57の内部は閉鎖空間としてバラストタンクに使用してもよいし、上下に開放した空間として海底から天然ガス等を汲み上げたりする作業用の空間としてもよい。また、図5(B)に示すように、外壁53には係留索58が接続されており浮体構造物51を海底に固定している。なお、図示していないが、圧力容器1は台座を介して収容面52に固定されており、外壁53にはバラストタンク55に海水を給排水するバルブが設けられており、蓋部材55の上部には適宜必要な機材や配管が配設される。
【0034】
図5(C)に示す浮体構造物59は、喫水上に配置される甲板60と、甲板60の下部に接続されるとともに没水部を有する複数の脚部61とを有し、脚部61に図5(A)及び(B)に示した浮体構造物51の蓋部材55が接続されている。この第二実施形態の浮体構造物59では、波の影響を最小限にするために喫水部分に略円形断面の脚部61を設けて抵抗を少なくしている。また、脚部61の喫水部近傍には、径方向に膨らんだベルト部61aを形成してもよい。ベルト部61aを設けることにより、波周期の短い領域では波浪中での上下揺れを小さくすることができ、波周期の長い領域では上下揺れの同調周期を長くすることができる。また、甲板60の中央部には、筒壁57と連結される筒壁62が設けられており、甲板60上から海中に挿入される配管等を波から保護するようにしている。なお、外壁53の外周部にフィン63を設けて浮体構造物59の揺動を低減するようにしてもよい。
【0035】
上述した浮体構造物51,59では、圧力容器1は縦置されている。すなわち、圧力容器1の収容面52が略水平面であり、圧力容器1は長手方向が収容面52に対して略垂直となるように載置されている。本発明の圧力容器1は、少なくとも三つの頂部を有するため、圧力容器1のみで自立することができ、縦置に適している。また、図5に示したような浮体構造物51,59の場合には、水平方向よりも鉛直方向に圧力容器1の収容空間を確保し易い。本発明の圧力容器1では、収容面52を複数の多角形状領域に分割し、多角形状領域ごとに圧力容器1の形状を設計しているため、収容効率を向上させつつ、圧力容器の断面積を小さくすることができる。したがって、海上のように揺動が生じる場所に浮体構造物51,59を配置したとしても、圧力容器1内に収容された液化ガスのスロッシングによる影響を低減することができる。
【0036】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、本発明の圧力容器を陸上や船舶に適用してもよいし、圧力容器の設置スペースに応じて横置にしてもよいし、仮想圧力容器に球形の圧力容器を適用して圧力容器を設計してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の圧力容器の第一実施形態を示す図であり、(A)は側面図、(B)は図1(A)におけるB−B断面図である。
【図2】図1に示した圧力容器の設計方法の説明図であり、(A)は準備工程、(B)は外殻設計工程、(C)は隔壁設計工程、(D)は完成体を示す図である。
【図3】本発明の圧力容器及びその設計方法を示す説明図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態を示している。
【図4】本発明の圧力容器及びその設計方法を示す説明図であり、(A)は第五実施形態、(B)は第六実施形態、(C)は第七実施形態を示している。
【図5】本発明の圧力容器を備えた浮体構造物を示す図であり、(A)は浮体構造物の第一実施形態における水平断面図、(B)は同第一実施形態における側面概略断面図、(C)は浮体構造物の第二実施形態における側面概略断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 圧力容器
2,32,35,39 胴部
2a,32a,32b,35a,35b,39a 仮想圧力容器の胴部
3a 上頭部
3b 下頭部
4,33,36,37,40 隔壁
4a 連通孔
5,31,34,38,41,42,43,52 収容面
41a〜f,42a〜c,43a〜d 三角形状領域
51,59 浮体構造物
52a 実収容面
53 外壁
53a,1a 補強材
54 内壁
55 蓋部材
56 バラストタンク
57,62 筒壁
58 係留索
60 甲板
61 脚部
61a ベルト部
63 フィン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形断面の胴部を備えた三つ以上の仮想圧力容器を想定し、該仮想圧力容器のうち少なくとも三つの各胴部が互いに交差するように配置した形状の外形からなる外殻を有する、ことを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記外殻の内部には、隣接する前記胴部の交点を結んだ線分上に配置される隔壁が接続され、該隔壁には連通孔が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記仮想圧力容器は両端部に略半球形の鏡板部を有し、前記外殻は前記胴部の配置に伴って定まる前記鏡板部の外形からなる一対の頭部を有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の圧力容器を備えた浮体構造物であって、前記圧力容器を載置するための収容面と、該収容面の外周を囲う外壁と、前記収容面を複数の多角形状に分割した多角形状領域ごとに載置された前記圧力容器と、該圧力容器の外殻と前記外壁との間に配置された内壁と、前記収容面を覆う蓋部材と、を備え、前記外壁、前記内壁及び前記蓋部材により囲まれた空間はバラストタンクを形成している、ことを特徴とする圧力容器を備えた浮体構造物。
【請求項5】
前記多角形状領域は、三角形状に分割されている、ことを特徴とする請求項4に記載の圧力容器を備えた浮体構造物。
【請求項6】
前記収容面は略水平面であって、前記圧力容器は長手方向が前記収容面に対して略垂直となるように載置されている、ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の浮体構造物。
【請求項7】
前記浮体構造物は、喫水上に配置される甲板と、該甲板の下部に接続されるとともに没水部を有する複数の脚部とを有し、該脚部に前記蓋部材が接続されている、ことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の圧力容器を備えた浮体構造物。
【請求項8】
圧力容器を載置するための収容面に適した圧力容器の外殻形状を設定する圧力容器の設計方法であって、略円形断面の胴部を備えた三つ以上の仮想圧力容器を想定し、該仮想圧力容器のうち少なくとも三つの各胴部が互いに交差するように前記収容面に配置し、その外形を外殻として設定する、ことを特徴とする圧力容器の設計方法。
【請求項9】
前記収容面を複数の多角形状領域に分割した後、該多角形状領域に前記仮想圧力容器を配置する、ことを特徴とする請求項8に記載の圧力容器の設計方法。
【請求項10】
前記多角形状領域は、三角形状に分割されている、ことを特徴とする請求項9に記載の圧力容器の設計方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−215481(P2008−215481A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53315(P2007−53315)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】