圧縮機
【課題】ガスケットの幅の狭い部分にも突部を設けることのできる圧縮機を提供する。
【解決手段】ガスケット16の突部19aを弾性部材19に一体成型により突設するようにしたので、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの幅を小さくすることができる。これにより、各シリンダに対応する開口部16aが互いに近接している幅の狭い部分にも突部19aを設けることができ、突部19aによって気密性を高めることができる。また、突部19aが局所的に集中する場合でも、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの高さ寸法Hを大きくすることができるので、良好なシール性能を得ることができる。
【解決手段】ガスケット16の突部19aを弾性部材19に一体成型により突設するようにしたので、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの幅を小さくすることができる。これにより、各シリンダに対応する開口部16aが互いに近接している幅の狭い部分にも突部19aを設けることができ、突部19aによって気密性を高めることができる。また、突部19aが局所的に集中する場合でも、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの高さ寸法Hを大きくすることができるので、良好なシール性能を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用空気調和装置の冷媒回路に用いられる圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の圧縮機としては、冷媒を吸入及び吐出する圧縮機本体と、一端に冷媒吸入口及び吐出口を有する複数のシリンダと、各シリンダ内を往復動する複数のピストンと、ピストンに係合する傾斜板と、外部からの動力によって回転する駆動シャフトとを備え、傾斜板を駆動シャフトと共に回転させることにより、各ピストンを往復動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この圧縮機では、ハウジング、シリンダブロック、バルブプレート及びシリンダヘッドの間にそれぞれガスケットが介装されており、各ガスケットには各部品間を連通する少なくとも一つの開口部が設けられている。この場合、ハウジングとシリンダブロックとの間のガスケットにはハウジングの開口端面に対応する開口部が設けられ、シリンダブロックとバルブプレートとの間のガスケットには各シリンダに対応する複数の開口部が設けられている。また、バルブプレートとシリンダヘッドの間のガスケットには冷媒吐出口及び冷媒吸入口に対応する開口部が設けられ、冷媒吐出口及び冷媒吸入口はシリンダヘッド内の冷媒吐出室及び冷媒吸入室にそれぞれ連通している。
【0004】
各ガスケットには開口部の周囲に環状の突部が設けられ、突部と部品との圧接によって気密性を高めるようになっている。例えば、図9に示す突部1はガスケットを構成する金属板の一部を山形に変形させることによって形成されている。
【特許文献1】実開平4−125682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属板の一部を山形に変形させて突部1を形成する場合には、突部1の両側の平坦部分1aから頂上部までの間に傾斜部1bを必要とするため、突部1の高さHに対してその幅Wが大きくなる。このため、例えばシリンダに対応する開口部同士が近接している場合など、幅の狭い部分には突部1を設けることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガスケットの幅の狭い部分にも突部を設けることのできる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、互いに軸方向に連結された複数の部品からなる圧縮機本体と、圧縮機本体の各部品間に介装され、各部品間を連通する少なくとも一つの開口部を有するガスケットとを備え、ガスケットの表面には開口部を含む所定部分の周囲に沿って延びる突部を設けた圧縮機において、前記突部をガスケットの表面に一体成型により突設している。
【0008】
これにより、ガスケットの突部が一体成型により突設されることから、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部の幅を小さく形成することができ、突部の高さ寸法も大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部の幅を小さく形成することができるので、例えばガスケットの開口部同士が互いに近接している幅の狭い部分にも突部を容易に設けることができ、突部によってガスケットの気密性を高めることができる。また、突部が局所的に集中する場合でも、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部の高さ寸法を大きくすることができるので、良好なシール性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図8は本発明の一実施形態を示すもので、図1は圧縮機の側面断面図、図2は第1のガスケットの正面図、図3は第2のガスケットの正面図、図4は第3のガスケットの正面図、図5はその要部側面断面図、図6はバルブプレートの正面図、図7はバルブプレートの背面図、図8はガスケットの要部断面図である。
【0011】
同図に示す圧縮機は、冷媒を吸入及び吐出する圧縮機本体10と、圧縮機本体10内に設けられた複数のピストン20と、各ピストン20に係合する傾斜板30と、傾斜板30を回転させる駆動シャフト40と、外部からの動力によって回転するプーリ50とを備えている。
【0012】
圧縮機本体10は、図示しないボルトによって互いに軸方向に連結されたハウジング11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びバルブプレート14からなり、これらの部品間には第1、第2及び第3のガスケット15,16,17が介装されている。
【0013】
ハウジング11は一端側を閉塞した円筒状に形成され、その他端側はシリンダブロック12側に開口している。
【0014】
シリンダブロック12は圧縮機本体10の軸方向に延びる複数のシリンダ12aを有し、各シリンダ12aの両端はそれぞれハウジング11側及びバルブプレート14側に開口している。
【0015】
シリンダヘッド13は冷媒吐出室13a及び冷媒吸入室13bを有し、冷媒吐出室13a及び冷媒吸入室13bはそれぞれシリンダブロック12側に開口している。冷媒吐出室13aはシリンダヘッド13の中央部に設けられ、外部への吐出口(図示せず)に連通している。冷媒吸入室13bは冷媒吐出室13aの周囲に設けられ、外部からの吸入口(図示せず)に連通している。
【0016】
バルブプレート14はシリンダブロック12とシリンダヘッド13との間に配置され、各シリンダ12aに連通する複数の冷媒吐出孔14a及び冷媒吸入孔14bを有している。バルブプレート14の一方の面側(シリンダヘッド13側)には吐出側プレート14cが配置され、吐出側プレート14cには各冷媒吐出孔14aを開閉する吐出弁14dが設けられている。また、バルブプレート14の他方の面側(シリンダブロック12側)には吸入側プレート14eが配置され、吸入側プレート14eには各冷媒吸入孔14bを開閉する吸入弁14fが設けられている。
【0017】
各ガスケット15,16,17は、図8に示すように板状部材18の両面にそれぞれ弾性部材19を積層してなり、弾性部材19の表面には各ガスケット15,16,17の所定部分に沿って延びる断面半円形状の突部19aが突設されている。各ガスケット15,16,17は、例えば板状部材18の両面に弾性部材19となるフィルム状のゴム材料(例えば、厚さ50〜100ミクロン)を積層し、所定の金型で厚さ方向に圧縮してゴム材料を加硫することにより製造される。その際、突部19aに対応する凹部を設けた金型を用いることにより、弾性部材19の表面に所定高さH(例えば、0.2〜0.4mm)の突部19aが一体成型される。尚、板状部材18にはスチールやアルミニウム等の金属材料が用いられ、弾性部材19にはシリコン、EPDM、HNBR等のゴム材料が用いられる。
【0018】
第1のガスケット15はハウジング11とシリンダブロック12との間に配置され、ハウジング11の開口端面に対応する開口部15aを有している。この場合、第1のガスケット15の外周縁と開口部15aの周縁に沿ってそれぞれ突部19aが設けられている。
【0019】
第2のガスケット16はシリンダブロック12とバルブプレート14の吸入側プレート14eとの間に配置され、各シリンダ12に対応する複数の開口部16aを有している。この場合、第2のガスケット16の外周縁と各開口部16aの周囲に沿ってそれぞれ突部19aが設けられている。
【0020】
第3のガスケット17はバルブプレート14の吐出側プレート14cとシリンダヘッド13との間に配置され、バルブプレート14の冷媒吐出孔14a及び冷媒吸入孔14bにそれぞれ対応する複数の開口部17a,17bを有している。この場合、第3のガスケット17の外周縁及びボルト挿通用の孔17cの周囲に沿って突部19aが設けられるとともに、各冷媒吐出孔14aに対応する各開口部17aを含む部分と各冷媒吸入孔14bに対応する各開口部17bを含む部分との間に突部19aが設けられている。また、第3のガスケット17には吐出弁14dの開度を所定の開度に規制するバルブ当接部としての複数のリテーナ部17dが一体に設けられている。各リテーナ部17dはガスケット17の一部をシリンダヘッド13側に傾斜するように変形させることによって形成され、その傾斜方向先端側には吐出側の開口部17bが配置されている。即ち、吐出弁14dがリテーナ17dに当接することにより、吐出弁14dの開度が規制されるようになっている。
【0021】
各ピストン20は各シリンダ12a内に摺動自在に設けられ、その一端には傾斜板30と係合する係合部21が形成されている。係合部21は互いに対向する一対の半球面を有し、各半球面間には半球状のシュー22が摺動自在に設けられている。
【0022】
傾斜板30は駆動シャフト40の軸方向に対して傾斜自在に設けられ、その周縁部には各ピストン20の係合部21がシュー22を介して摺動自在に係合している。傾斜板30は駆動シャフト40と一体に回転する回転板31に傾動自在に連結されており、回転板31によって駆動シャフト40を中心に回転し、その傾斜角度に応じたストローク量で各ピストン20を往復動させるようになっている。
【0023】
駆動シャフト40は一端側をハウジング11に回動自在に支持され、その他端側はシリンダブロック12に回動自在に支持されている。
【0024】
プーリ50はハウジング11の一端側に回動自在に支持され、図示しないVベルトを介して外部からの動力が伝達されるようになっている。また、図示していないが、駆動シャフト40の一端側とプーリ50との間にはトルクリミッタ付きの動力伝達機構51が設けられ、プーリ50の回転力は動力伝達機構51を介して駆動シャフト40に伝達される。尚、動力伝達機構51のトルクリミッタは、所定の大きさ以上のトルクが加わると、一部の部材を破断させて動力の伝達を遮断するように構成されている。
【0025】
以上のように構成された圧縮機においては、外部からの駆動力によって駆動シャフト40が回転すると、傾斜板30の傾斜角度に応じて各ピストン20が各シリンダ12a内を往復動する。これにより、冷媒吸入室13bの冷媒が各シリンダ12a内に吸入され、冷媒吐出室13aに吐出される。その際、図示しない圧力制御手段によってハウジング11内の圧力が調整され、冷媒吸入室13bとハウジング11内との間に生ずる差圧により、各ピストン20の他端側(ハウジング11側)に加わる圧力に応じて傾斜板30の傾斜角度が変化する。これにより、各ピストン20のストローク量が大きくまたは小さくなり、冷媒の吐出量が変化する。
【0026】
また、前記圧縮機では、ハウジング11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びバルブプレート14間にそれぞれ配置される各ガスケット15,16,17によって圧縮機本体10の気密性が保持される。その際、各ガスケット15,16,17には突部19aが突設されているため、突部19aの部分に圧接力が集中して気密性が高められる。
【0027】
本実施形態によれば、各ガスケット15,16,17の突部19aを弾性部材19に一体成型により突設するようにしたので、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの幅Wを小さくすることができる。これにより、例えば第2のガスケット16のように各シリンダ12に対応する開口部16aが互いに近接している幅の狭い部分にも突部19aを設けることができ、突部19aによって気密性を高めることができる。また、突部19aが局所的に集中する場合でも、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの高さ寸法Hを大きくすることができるので、良好なシール性能を得ることができる。
【0028】
この場合、各ガスケット15,16,17を板状部材18の表面に弾性部材19を積層することによって形成し、弾性部材19の所定部分に突部19aを突設するようにしたので、板状部材18によって強度を高めるとともに、成型の容易な弾性部材19に突部19aを設けることができ、耐久性及び生産性の向上を図ることができる。
【0029】
また、バルブプレート14の吐出側プレート14cとシリンダヘッド13との間に配置される第3のガスケット17に吐出弁14dの開度を所定の開度に規制するリテーナ部17dを一体に設けたので、別部品としてのリテーナを用いる必要がなく、部品点数を少なくすることができる。
【0030】
尚、前記実施形態では、板状部材18の表面に弾性部材19を積層することによって各ガスケット15,16,17を成形するようにしたものを示したが、例えばフェノール樹脂等の単一のプラスチック材料によってガスケット及び突部を一体成型するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を示す圧縮機の側面断面図
【図2】第1のガスケットの正面図
【図3】第2のガスケットの正面図
【図4】第3のガスケットの正面図
【図5】第3のガスケットの要部側面断面図
【図6】バルブプレートの正面図
【図7】バルブプレートの背面図
【図8】ガスケットの要部断面図
【図9】従来例を示す突部の断面図
【符号の説明】
【0032】
10…圧縮機本体、11…ハウジング、12…シリンダブロック、13…シリンダヘッド、14…バルブプレート、15…第1のガスケット、15a…開口部、16…第2のガスケット、16a…開口部、17…第3のガスケット、17a,17b…開口部、17d…リテーナ部、18…板状部材、19…弾性部材、19…突部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用空気調和装置の冷媒回路に用いられる圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の圧縮機としては、冷媒を吸入及び吐出する圧縮機本体と、一端に冷媒吸入口及び吐出口を有する複数のシリンダと、各シリンダ内を往復動する複数のピストンと、ピストンに係合する傾斜板と、外部からの動力によって回転する駆動シャフトとを備え、傾斜板を駆動シャフトと共に回転させることにより、各ピストンを往復動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この圧縮機では、ハウジング、シリンダブロック、バルブプレート及びシリンダヘッドの間にそれぞれガスケットが介装されており、各ガスケットには各部品間を連通する少なくとも一つの開口部が設けられている。この場合、ハウジングとシリンダブロックとの間のガスケットにはハウジングの開口端面に対応する開口部が設けられ、シリンダブロックとバルブプレートとの間のガスケットには各シリンダに対応する複数の開口部が設けられている。また、バルブプレートとシリンダヘッドの間のガスケットには冷媒吐出口及び冷媒吸入口に対応する開口部が設けられ、冷媒吐出口及び冷媒吸入口はシリンダヘッド内の冷媒吐出室及び冷媒吸入室にそれぞれ連通している。
【0004】
各ガスケットには開口部の周囲に環状の突部が設けられ、突部と部品との圧接によって気密性を高めるようになっている。例えば、図9に示す突部1はガスケットを構成する金属板の一部を山形に変形させることによって形成されている。
【特許文献1】実開平4−125682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属板の一部を山形に変形させて突部1を形成する場合には、突部1の両側の平坦部分1aから頂上部までの間に傾斜部1bを必要とするため、突部1の高さHに対してその幅Wが大きくなる。このため、例えばシリンダに対応する開口部同士が近接している場合など、幅の狭い部分には突部1を設けることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガスケットの幅の狭い部分にも突部を設けることのできる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、互いに軸方向に連結された複数の部品からなる圧縮機本体と、圧縮機本体の各部品間に介装され、各部品間を連通する少なくとも一つの開口部を有するガスケットとを備え、ガスケットの表面には開口部を含む所定部分の周囲に沿って延びる突部を設けた圧縮機において、前記突部をガスケットの表面に一体成型により突設している。
【0008】
これにより、ガスケットの突部が一体成型により突設されることから、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部の幅を小さく形成することができ、突部の高さ寸法も大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部の幅を小さく形成することができるので、例えばガスケットの開口部同士が互いに近接している幅の狭い部分にも突部を容易に設けることができ、突部によってガスケットの気密性を高めることができる。また、突部が局所的に集中する場合でも、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部の高さ寸法を大きくすることができるので、良好なシール性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図8は本発明の一実施形態を示すもので、図1は圧縮機の側面断面図、図2は第1のガスケットの正面図、図3は第2のガスケットの正面図、図4は第3のガスケットの正面図、図5はその要部側面断面図、図6はバルブプレートの正面図、図7はバルブプレートの背面図、図8はガスケットの要部断面図である。
【0011】
同図に示す圧縮機は、冷媒を吸入及び吐出する圧縮機本体10と、圧縮機本体10内に設けられた複数のピストン20と、各ピストン20に係合する傾斜板30と、傾斜板30を回転させる駆動シャフト40と、外部からの動力によって回転するプーリ50とを備えている。
【0012】
圧縮機本体10は、図示しないボルトによって互いに軸方向に連結されたハウジング11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びバルブプレート14からなり、これらの部品間には第1、第2及び第3のガスケット15,16,17が介装されている。
【0013】
ハウジング11は一端側を閉塞した円筒状に形成され、その他端側はシリンダブロック12側に開口している。
【0014】
シリンダブロック12は圧縮機本体10の軸方向に延びる複数のシリンダ12aを有し、各シリンダ12aの両端はそれぞれハウジング11側及びバルブプレート14側に開口している。
【0015】
シリンダヘッド13は冷媒吐出室13a及び冷媒吸入室13bを有し、冷媒吐出室13a及び冷媒吸入室13bはそれぞれシリンダブロック12側に開口している。冷媒吐出室13aはシリンダヘッド13の中央部に設けられ、外部への吐出口(図示せず)に連通している。冷媒吸入室13bは冷媒吐出室13aの周囲に設けられ、外部からの吸入口(図示せず)に連通している。
【0016】
バルブプレート14はシリンダブロック12とシリンダヘッド13との間に配置され、各シリンダ12aに連通する複数の冷媒吐出孔14a及び冷媒吸入孔14bを有している。バルブプレート14の一方の面側(シリンダヘッド13側)には吐出側プレート14cが配置され、吐出側プレート14cには各冷媒吐出孔14aを開閉する吐出弁14dが設けられている。また、バルブプレート14の他方の面側(シリンダブロック12側)には吸入側プレート14eが配置され、吸入側プレート14eには各冷媒吸入孔14bを開閉する吸入弁14fが設けられている。
【0017】
各ガスケット15,16,17は、図8に示すように板状部材18の両面にそれぞれ弾性部材19を積層してなり、弾性部材19の表面には各ガスケット15,16,17の所定部分に沿って延びる断面半円形状の突部19aが突設されている。各ガスケット15,16,17は、例えば板状部材18の両面に弾性部材19となるフィルム状のゴム材料(例えば、厚さ50〜100ミクロン)を積層し、所定の金型で厚さ方向に圧縮してゴム材料を加硫することにより製造される。その際、突部19aに対応する凹部を設けた金型を用いることにより、弾性部材19の表面に所定高さH(例えば、0.2〜0.4mm)の突部19aが一体成型される。尚、板状部材18にはスチールやアルミニウム等の金属材料が用いられ、弾性部材19にはシリコン、EPDM、HNBR等のゴム材料が用いられる。
【0018】
第1のガスケット15はハウジング11とシリンダブロック12との間に配置され、ハウジング11の開口端面に対応する開口部15aを有している。この場合、第1のガスケット15の外周縁と開口部15aの周縁に沿ってそれぞれ突部19aが設けられている。
【0019】
第2のガスケット16はシリンダブロック12とバルブプレート14の吸入側プレート14eとの間に配置され、各シリンダ12に対応する複数の開口部16aを有している。この場合、第2のガスケット16の外周縁と各開口部16aの周囲に沿ってそれぞれ突部19aが設けられている。
【0020】
第3のガスケット17はバルブプレート14の吐出側プレート14cとシリンダヘッド13との間に配置され、バルブプレート14の冷媒吐出孔14a及び冷媒吸入孔14bにそれぞれ対応する複数の開口部17a,17bを有している。この場合、第3のガスケット17の外周縁及びボルト挿通用の孔17cの周囲に沿って突部19aが設けられるとともに、各冷媒吐出孔14aに対応する各開口部17aを含む部分と各冷媒吸入孔14bに対応する各開口部17bを含む部分との間に突部19aが設けられている。また、第3のガスケット17には吐出弁14dの開度を所定の開度に規制するバルブ当接部としての複数のリテーナ部17dが一体に設けられている。各リテーナ部17dはガスケット17の一部をシリンダヘッド13側に傾斜するように変形させることによって形成され、その傾斜方向先端側には吐出側の開口部17bが配置されている。即ち、吐出弁14dがリテーナ17dに当接することにより、吐出弁14dの開度が規制されるようになっている。
【0021】
各ピストン20は各シリンダ12a内に摺動自在に設けられ、その一端には傾斜板30と係合する係合部21が形成されている。係合部21は互いに対向する一対の半球面を有し、各半球面間には半球状のシュー22が摺動自在に設けられている。
【0022】
傾斜板30は駆動シャフト40の軸方向に対して傾斜自在に設けられ、その周縁部には各ピストン20の係合部21がシュー22を介して摺動自在に係合している。傾斜板30は駆動シャフト40と一体に回転する回転板31に傾動自在に連結されており、回転板31によって駆動シャフト40を中心に回転し、その傾斜角度に応じたストローク量で各ピストン20を往復動させるようになっている。
【0023】
駆動シャフト40は一端側をハウジング11に回動自在に支持され、その他端側はシリンダブロック12に回動自在に支持されている。
【0024】
プーリ50はハウジング11の一端側に回動自在に支持され、図示しないVベルトを介して外部からの動力が伝達されるようになっている。また、図示していないが、駆動シャフト40の一端側とプーリ50との間にはトルクリミッタ付きの動力伝達機構51が設けられ、プーリ50の回転力は動力伝達機構51を介して駆動シャフト40に伝達される。尚、動力伝達機構51のトルクリミッタは、所定の大きさ以上のトルクが加わると、一部の部材を破断させて動力の伝達を遮断するように構成されている。
【0025】
以上のように構成された圧縮機においては、外部からの駆動力によって駆動シャフト40が回転すると、傾斜板30の傾斜角度に応じて各ピストン20が各シリンダ12a内を往復動する。これにより、冷媒吸入室13bの冷媒が各シリンダ12a内に吸入され、冷媒吐出室13aに吐出される。その際、図示しない圧力制御手段によってハウジング11内の圧力が調整され、冷媒吸入室13bとハウジング11内との間に生ずる差圧により、各ピストン20の他端側(ハウジング11側)に加わる圧力に応じて傾斜板30の傾斜角度が変化する。これにより、各ピストン20のストローク量が大きくまたは小さくなり、冷媒の吐出量が変化する。
【0026】
また、前記圧縮機では、ハウジング11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びバルブプレート14間にそれぞれ配置される各ガスケット15,16,17によって圧縮機本体10の気密性が保持される。その際、各ガスケット15,16,17には突部19aが突設されているため、突部19aの部分に圧接力が集中して気密性が高められる。
【0027】
本実施形態によれば、各ガスケット15,16,17の突部19aを弾性部材19に一体成型により突設するようにしたので、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの幅Wを小さくすることができる。これにより、例えば第2のガスケット16のように各シリンダ12に対応する開口部16aが互いに近接している幅の狭い部分にも突部19aを設けることができ、突部19aによって気密性を高めることができる。また、突部19aが局所的に集中する場合でも、金属板を変形させて突部を形成するようにしたものに比べ、突部19aの高さ寸法Hを大きくすることができるので、良好なシール性能を得ることができる。
【0028】
この場合、各ガスケット15,16,17を板状部材18の表面に弾性部材19を積層することによって形成し、弾性部材19の所定部分に突部19aを突設するようにしたので、板状部材18によって強度を高めるとともに、成型の容易な弾性部材19に突部19aを設けることができ、耐久性及び生産性の向上を図ることができる。
【0029】
また、バルブプレート14の吐出側プレート14cとシリンダヘッド13との間に配置される第3のガスケット17に吐出弁14dの開度を所定の開度に規制するリテーナ部17dを一体に設けたので、別部品としてのリテーナを用いる必要がなく、部品点数を少なくすることができる。
【0030】
尚、前記実施形態では、板状部材18の表面に弾性部材19を積層することによって各ガスケット15,16,17を成形するようにしたものを示したが、例えばフェノール樹脂等の単一のプラスチック材料によってガスケット及び突部を一体成型するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を示す圧縮機の側面断面図
【図2】第1のガスケットの正面図
【図3】第2のガスケットの正面図
【図4】第3のガスケットの正面図
【図5】第3のガスケットの要部側面断面図
【図6】バルブプレートの正面図
【図7】バルブプレートの背面図
【図8】ガスケットの要部断面図
【図9】従来例を示す突部の断面図
【符号の説明】
【0032】
10…圧縮機本体、11…ハウジング、12…シリンダブロック、13…シリンダヘッド、14…バルブプレート、15…第1のガスケット、15a…開口部、16…第2のガスケット、16a…開口部、17…第3のガスケット、17a,17b…開口部、17d…リテーナ部、18…板状部材、19…弾性部材、19…突部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに軸方向に連結された複数の部品からなる圧縮機本体と、圧縮機本体の各部品間に介装され、各部品間を連通する少なくとも一つの開口部を有するガスケットとを備え、ガスケットの表面には開口部を含む所定部分の周囲に沿って延びる突部を設けた圧縮機において、
前記突部をガスケットの表面に一体成型により突設した
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ガスケットを板状部材の表面に弾性部材を積層することによって形成し、
弾性部材に前記突部を一体に設けた
ことを特徴とする請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記板状部材を金属材料によって形成した
ことを特徴とする請求項2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記弾性部材をゴム材料によって形成した
ことを特徴とする請求項2または3記載の圧縮機。
【請求項5】
圧縮機本体の構成部品としてのハウジング及びシリンダヘッド間に介装されるガスケットにハウジングの開口端面に対応する開口部を設け、
ガスケットには開口部の周縁に沿って前記突部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の圧縮機。
【請求項6】
圧縮機本体の構成部品としてのシリンダブロック及びバルブプレート間に介装されるガスケットにシリンダブロックのシリンダに対応する複数の開口部を設け、
ガスケットには各開口部の周縁に沿って前記突部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の圧縮機。
【請求項7】
圧縮機本体の構成部品としてのバルブプレート及びシリンダヘッド間に介装されるガスケットにバルブプレートの冷媒吐出孔及び冷媒吸入孔に対応する複数の開口部を設け、
ガスケットには冷媒吐出孔に対応する開口部を含む部分と冷媒吸入孔に対応する開口部を含む部分との間に前記突部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の圧縮機。
【請求項8】
前記ガスケットにバルブプレートの吐出バルブの開度を所定開度に規制するバルブ当接部を一体に設けた
ことを特徴とする請求項7記載の圧縮機。
【請求項1】
互いに軸方向に連結された複数の部品からなる圧縮機本体と、圧縮機本体の各部品間に介装され、各部品間を連通する少なくとも一つの開口部を有するガスケットとを備え、ガスケットの表面には開口部を含む所定部分の周囲に沿って延びる突部を設けた圧縮機において、
前記突部をガスケットの表面に一体成型により突設した
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ガスケットを板状部材の表面に弾性部材を積層することによって形成し、
弾性部材に前記突部を一体に設けた
ことを特徴とする請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記板状部材を金属材料によって形成した
ことを特徴とする請求項2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記弾性部材をゴム材料によって形成した
ことを特徴とする請求項2または3記載の圧縮機。
【請求項5】
圧縮機本体の構成部品としてのハウジング及びシリンダヘッド間に介装されるガスケットにハウジングの開口端面に対応する開口部を設け、
ガスケットには開口部の周縁に沿って前記突部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の圧縮機。
【請求項6】
圧縮機本体の構成部品としてのシリンダブロック及びバルブプレート間に介装されるガスケットにシリンダブロックのシリンダに対応する複数の開口部を設け、
ガスケットには各開口部の周縁に沿って前記突部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の圧縮機。
【請求項7】
圧縮機本体の構成部品としてのバルブプレート及びシリンダヘッド間に介装されるガスケットにバルブプレートの冷媒吐出孔及び冷媒吸入孔に対応する複数の開口部を設け、
ガスケットには冷媒吐出孔に対応する開口部を含む部分と冷媒吸入孔に対応する開口部を含む部分との間に前記突部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の圧縮機。
【請求項8】
前記ガスケットにバルブプレートの吐出バルブの開度を所定開度に規制するバルブ当接部を一体に設けた
ことを特徴とする請求項7記載の圧縮機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−63870(P2006−63870A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246735(P2004−246735)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]