説明

圧電アクチュエータ

【課題】平行配置された2つの圧電素子に接続された梁状本体部に形成された柱状突起の先端に楕円運動を生起させることで駆動対象に送りを掛けるようにした圧電アクチュエータの動作効率を向上させる。
【解決手段】第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の先端に固着された梁状本体部5の中央から左右に等しい間隔をおいて同一形状同一寸法の2つの柱状突起6,7を設けると共に、梁状本体部5の中央部には柱状突起6,7と逆方向に向けて突出する中央支持体8を設け、第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2および中央支持体8の基部をベースプレート11に固着し、何れかの圧電素子を正弦波または三角波からなる高速送り用駆動信号で駆動することにより、柱状突起6,7の先端に位相の異なる楕円運動を生起させ、圧電素子の1振動周期の内に柱状突起6,7を利用して2回の送り動作をかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電素子を組み合わせて駆動対象もしくは駆動対象の移動方向をガイドするガイド部材に形成された駆動力伝達面に駆動力を伝達することで駆動対象に送りを掛ける圧電アクチュエータの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの圧電素子を組み合わせて駆動対象に送りを掛ける圧電アクチュエータとしては、特許文献1に開示される超音波モータ,特許文献2に開示されるアクチュエータ,特許文献3に開示される超音波駆動装置等が既に公知である。
【0003】
これらの特許文献で開示される圧電アクチュエータは、何れも、軸方向に伸縮する圧電素子の先端部が近接するようにして2つの圧電素子を斜交させて配置し、その先端部にブロック状の変位合成部を固着し、この変位合成部自体あるいは変位合成部に突設された柱状突起を駆動対象の側面や外周部に一定の力で予圧して当接させ、少なくとも1つの圧電素子を共振状態で駆動するか(特許文献1)、もしくは、位相差をもって2つの圧電素子を同時に振動させる(特許文献2,3)ことによって変位合成部それ自体に楕円運動を生起させ、変位合成部と駆動対象との間の摩擦(特許文献1,2)、あるいは、変位合成部に突設された柱状突起と駆動対象との間の摩擦(特許文献3)と前述の楕円運動とを利用して駆動対象に一方的な送り(特許文献1,2)、もしくは、正逆の送り(特許文献3)を掛ける構成を有する。
【0004】
特許文献3記載の超音波駆動装置は変位合成部それ自体を駆動対象に当接させる代わりに変位合成部の柱状突起を駆動対象に当接させている点が特許文献1,2記載の超音波モータや特許文献2のアクチュエータと異なるが、この柱状突起の傾きは当該柱状突起が駆動対象と当接して弾性変形することによって生じるもので、圧電素子の伸縮運動によってもたらされる共振運動とは技術的な意味合いが相違する。
【0005】
特許文献1,2,3に開示される圧電アクチュエータは、何れも、2つの圧電素子の先端をブロック状の変位合成部を介して接続したものであるため、各圧電素子の先端と変位合成部との間の固着部に強力な曲げモーメントや剪断力が作用して圧電素子と変位合成部との間の接続箇所に破断が生じる可能性が高く、また、圧電素子それ自体も様々な方向に交番的に屈曲して疲労するため、圧電アクチュエータに十分な耐久性を持たせることが難しいといった不都合がある。
【0006】
また、これらの圧電アクチュエータは、専ら連続的な高速送りのみを実現するためのもので、精密な位置決めのための送りには適さないといった問題がある。
【0007】
これに対し、本出願人らは、圧電素子を不用意に屈曲させることなく圧電素子の直線的な伸縮動作のみを利用して駆動対象に送りを掛けることによって耐久性を向上させると共に、精密な位置決めのための送りにも十分に対処が可能な圧電アクチュエータを特許文献4の圧電アクチュエータとして提案しているが、このものは、4系統以上の圧電素子を連動させて駆動するために制御回路やアンプの構成が相対的に複雑化する傾向にあった。
【0008】
本出願人らは、更に、梁状本体部と1つの柱状突起とからなる略T字型の弾性体の両側に第1,第2の圧電素子を平行に配置し、第1,第2の圧電素子の何れか一方を選択して一定の周波数で高速振動させることによって柱状突起の先端に生じる楕円運動を利用して正逆の高速送りを選択的に実現できるようにした圧電アクチュエータを特許文献5として提案している。この圧電アクチュエータは、高速送りに際しても微動送りに際しても、何れか一方の圧電素子のみを駆動すればよく、1系統分の制御回路で正逆の送りが実現でき、しかも、正逆の高速送りを同一周波数で実現できることから、制御回路の構成の簡略化の面で有用性が高いが、柱状突起の先端が駆動力伝達面に当接している時間が短いために送り動作が間欠的となり、動作効率が芳しくない難点があった。
【0009】
また、非対称の2つの突起と1つの圧電素子を利用したマイクロ超音波リニアモータが非特許文献1として既に提案されているが、このものは、2つの突起の振動特性の相違を利用し、圧電素子の駆動周波数を変化させて送り方向を正逆に変化させるものであり、基本的な構成が特許文献5の圧電アクチュエータとは相違し、正逆の高速送りを同一周波数で実現するものではない。
【0010】
【特許文献1】特開2001−16879号公報
【特許文献2】特開2001−224187号公報(図3,図4,図11−14)
【特許文献3】特開2002−58266号公報(段落0021,0023−0024,図6)
【特許文献4】特許第3833166号
【特許文献5】特願2007−234447
【非特許文献1】合田泰之、“非対称二本突起構造を用いたマイクロ超音波リニアモータ”[online]、平成16年2月提出、東京工業大学工学部平成15年度学士論文、東京工業大学、[平成20年7月31日検索]、インターネット<URL:http://www-ueha.pi.titech.ac.jp/pdf/bachelor/h15b_gouda.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、圧電素子と他の部品との接続箇所に破断を生じたり圧電素子自体が疲労したりする可能性が低く、高速な送りと精密な位置決めのための送りが共に可能であって、制御回路やアンプの構成も簡便であり、更に、駆動対象の送りに関わる動作効率にも優れた圧電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電アクチュエータは、入力電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電素子を組み合わせて駆動対象もしくは駆動対象の移動方向をガイドするガイド部材に形成された駆動力伝達面に駆動力を伝達することで駆動対象に送りを掛ける圧電アクチュエータであり、前記課題を達成するため、特に、
柱状形態を有する梁状本体部と、前記梁状本体部の長手方向に沿って前記梁状本体部の中央から相反する方向に相互に等しい間隔をおいて前記梁状本体部の一側面から前記長手方向と直交する向きに突出する同一形状同一寸法の2つの柱状突起と、前記梁状本体部の前記一側面と並行する他の一側面において前記梁状本体部の中央から前記長手方向と直交する向きで前記2つの柱状突起と逆方向に向けて突出する中央支持体と、前記梁状本体部と前記中央支持体との連絡部において前記梁状本体部の姿勢変化を許容すべく前記中央支持体の側に設けられた縮径部とによって一体に形成された可撓性送り部材と、
前記可撓性送り部材の中央支持体と平行して前記梁状本体部の両端部に配置され、其の先端部を前記梁状本体部に固着された第1,第2の圧電素子と、
前記第1,第2の圧電素子の基部および前記中央支持体の基部を固着したベースプレートと、
前記梁状本体部が前記駆動対象の送り方向と平行となり且つ前記2つの柱状突起が前記駆動対象の送り方向と直交するような姿勢を保持した状態で前記ベースプレートを押圧することによって前記2つの柱状突起の先端を前記駆動力伝達面に向けて付勢する予圧手段と、
時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧を変化させる正弦波または三角波からなる高速送り用駆動信号と、直流電圧からなる微動送り用駆動信号とを選択的に生成する駆動信号生成手段と、
前記高速送り用駆動信号と微動送り用駆動信号のうち前記駆動信号生成手段が生成すべき信号の種別を前記駆動信号生成手段に指令する生成信号指定手段と、
前記駆動信号生成手段によって生成された駆動信号を何れか一方の前記圧電素子に対して選択的に入力する送り方向切替手段とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【0013】
以上の構成において、まず、送り方向切替手段を操作し、駆動信号生成手段が生成する駆動信号の入力先として第1,第2の圧電素子の何れか一方を選択する。
そして、駆動対象に連続的な高速送りを掛ける場合においては、生成信号指定手段を操作して高速送り用駆動信号を生成する旨の指令を駆動信号生成手段に入力し、また、駆動対象に対して微動送りを掛ける場合には、生成信号指定手段を操作して微動送り用駆動信号を生成する旨の指令を駆動信号生成手段に入力する。
駆動信号生成手段に高速送り用駆動信号を生成する旨の指令が入力された場合、駆動信号生成手段は、正弦波または三角波からなる高速送り用駆動信号を生成し、この高速送り用駆動信号を、駆動信号の入力先として選択された何れか一方の圧電素子に印加する。
高速送り用駆動信号は、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧を変化させる正弦波または三角波に類する信号である。
可撓性送り部材の梁状本体部と一体に形成された2つの柱状突起の動作原理について図1(a)〜図1(c)の作用原理図を参照して説明する。
第1,第2の圧電素子は入力電圧に応じて軸方向に伸縮する構造のものであるから、高速送り用駆動信号の入力対象として選択された何れか一方の圧電素子、例えば、図1(a)中で左側に位置する第1の圧電素子Eに正電圧が印加されると、この圧電素子Eが図1(a)に示されるような自然長の状態から、印加電圧に比例した長さで伸長する。この結果、当該圧電素子E寄りの柱状突起Cが図1(b)に示されるようにして上方に押し上げられ、柱状突起Cの先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、この伸長動作により、中央部を中央支持体Fの縮径部Gで支持された梁状本体部Bの中央から当該圧電素子Eの固着位置に至る区間において、梁状本体部Bが、梁状本体部Bと一体の柱状突起Cを伴って図1(a)中の時計方向に揺動し、柱状突起Cの先端に図1(b)に示されるような左から右に向かう方向の横移動が生じることになる。
一方、これとは逆に、高速送り用駆動信号としての負電圧が左側の圧電素子Eに印加されると、左側の圧電素子Eが印加電圧に比例した長さで短縮し、この結果、当該圧電素子E寄りの柱状突起Cが図1(c)に示されるようにして下方に引き下げられ、柱状突起Cの先端に下降方向の縦移動が生じる。また、この短縮動作により、中央部を中央支持体Fの縮径部Gで支持された梁状本体部Bの中央から当該圧電素子Eの固着位置に至る区間において、梁状本体部Bが、梁状本体部Bと一体の柱状突起Cを伴って図1(a)中の反時計方向に揺動し、柱状突起Cの先端に図1(c)に示されるような右から左に向かう方向の横移動が生じることになる。
高速送り用駆動信号は、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧が変化する正弦波または三角波であるから、この高速送り用駆動信号を左側の圧電素子Eに入力することにより、前述の縦移動および横移動が繰り返されて同期した縦振動および横振動からなる共振となり、この共振により、最終的に、柱状突起Cの先端が、図1(a)中で右回りの楕円軌跡に沿って運動することになる。
以上が、左側の圧電素子Eに高速送り用駆動信号が入力された場合に柱状突起Cの先端に生じる動作である。
しかも、前述のようにして高速送り用駆動信号としての正電圧が左側の圧電素子Eに印加された状況下では、中央部を中央支持体Fの縮径部Gで支持された梁状本体部Bの中央から当該圧電素子Eの固着位置に至る区間において、梁状本体部Bが、図1(b)のようにして時計方向に揺動する結果、この揺動動作に連動して、梁状本体部Bの中央から他方の圧電素子である第2の圧電素子Hの固着位置に至る区間の梁状本体部Bには、図1(b)に示されるように、下に凸となる屈曲動作が生じ、当該区間の中央部Iに生じる下降方向の位置変化により他方の柱状突起Dの先端に下降方向の縦移動が生じる。また、梁状本体部Bの中央から他方の圧電素子Hの固着位置に至る区間の梁状本体部Bが下に凸となる当該区間の姿勢変化に連動して、梁状本体部Bと一体の他方の柱状突起Dが図1(a)中の反時計方向に揺動し、柱状突起Dの先端に図1(b)に示されるような右から左に向かう方向の横移動が生じることになる。
一方、これとは逆に、高速送り用駆動信号としての負電圧が左側の圧電素子Eに印加された状況下では、中央部を中央支持体Fの縮径部Gで支持された梁状本体部Bの中央から当該圧電素子Eの固着位置に至る区間において、梁状本体部Bが、図1(c)のようにして反時計方向に揺動するので、この揺動動作に連動して、梁状本体部Bの中央から他方の圧電素子Hの固着位置に至る区間の梁状本体部Bに、図1(c)に示されるように、上に凸となるような屈曲動作が生じ、当該区間の中央部Iに生じる上昇方向の位置変化に伴って他方の柱状突起Dの先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、梁状本体部Bの中央から他方の圧電素子Hの固着位置に至る区間の梁状本体部Bが上に凸となる当該区間の姿勢変化に連動して梁状本体部Bと一体の他方の柱状突起Dが図1(a)中の時計方向に揺動し、柱状突起Dの先端に図1(c)に示されるような左から右に向かう方向の横移動が生じることになる。
高速送り用駆動信号は、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧が変化する正弦波または三角波であるから、この高速送り用駆動信号を左側の圧電素子Eに入力することにより、前述の縦移動および横移動が繰り返されて同期した縦振動および横振動からなる共振となり、この共振により、最終的に、柱状突起Dの先端が、図1(a)中で右回りの楕円軌跡に沿って運動することになる。
以上が、左側の圧電素子Eに高速送り用駆動信号が入力された場合に柱状突起Dの先端に生じる動作である。
そして、図1(b)あるいは図1(c)に示される通り、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧を変化させる高速送り用駆動信号を左側の圧電素子Eに入力した際の柱状突起Cの先端位置の高さと柱状突起Dの先端位置の高さ、および、柱状突起Cの揺動方向と柱状突起Dの揺動方向の少なくとも一方は各時点において相互に異なる。
つまり、柱状突起Cの先端の楕円運動と柱状突起Dの先端の楕円運動は位相の異なる楕円運動であり、例えば、図1(b)に示されるように柱状突起Cの先端が上死点にある状態で柱状突起Dの先端が下死点に位置し、また、図1(c)に示されるように柱状突起Cの先端が下死点にある状態で柱状突起Dの先端が上死点に位置し、この例では、柱状突起Cの先端の楕円運動と柱状突起Dの先端の楕円運動との間に180deg.相当の位相差が生じていることになる。
柱状突起Cの先端の楕円運動の軌跡の長軸を送り方向に沿った向き(図1の左右方向)に合致させることは、柱状突起Cの先端の縦移動量と柱状突起Cの先端の横移動量を適正化すること、つまり、梁状本体部Bの中央から圧電素子Eの固着位置に至る区間の長さ、および、この区間上における柱状突起Cの配設位置、ならびに、柱状突起Cの長さ等を適切に設計することにより実現が可能であり、同様に、柱状突起Dの先端の楕円運動の軌跡の長軸を送り方向に沿った向き(図1の左右方向)に合致させることは、柱状突起Dの先端の縦移動量と柱状突起Dの先端の横移動量を適正化すること、要するに、梁状本体部Bの中央から他方の圧電素子Hの固着位置に至る区間の長さ、および、この区間上における柱状突起Dの配設位置、ならびに、柱状突起Dの長さ等を適切に設計することにより実現可能である。
但し、本発明にあっては、例えば、圧電素子Eに高速送り用駆動信号を入力した際に柱状突起C,Dの先端に右回りの楕円運動を生起させて、図1に示されるように、駆動対象Lもしくは駆動対象Lをガイドするガイド部材の駆動力伝達面Jに対して図1中で左から右に向かう方向の送りを掛け、また、これとは逆に、圧電素子Hに高速送り用駆動信号を入力した際に柱状突起D,Cの先端に左回りの楕円運動を生起させて、図1とは逆に、駆動対象Lもしくは駆動対象Lをガイドするガイド部材の駆動力伝達面Jに対して図1中で右から左に向かう方向の送りを掛ける必要があるので、中央支持体Fの中心軸を基準とする左右の対称性を崩さずに上述の条件を満たす必要があり、特に、柱状突起Cの先端の楕円運動と柱状突起Dの先端の楕円運動との間に位相差を生じさせる必要上、梁状本体部B上における柱状突起C,Dの配設位置が重要となる。
図1(b)および図1(c)から分かるように、伸縮させる側の圧電素子と中央支持体Fとの間、例えば、圧電素子Eと中央支持体Fとの間では梁状本体部Bが概ね直線の状態を維持して揺動する一方、伸縮させない側の圧電素子、例えば、圧電素子Hと中央支持体Fとの間では梁状本体部Bが大きく屈曲して下に凸または上に凸となり、専ら、伸縮しない側の圧電素子Hと中央支持体Fとの間で梁状本体部Bに生じる屈曲動作に伴う上下方向の位置変化と当該区間における梁状本体部Bの姿勢変化を利用して柱状突起Cの先端の楕円運動と柱状突起Dの先端の楕円運動との間に位相差を生じさせるようにしているので、図1(b)に示されるようにして圧電素子Hと中央支持体Fとの間の梁状本体部Bが下に凸となって中間位置Iが下降したときに柱状突起Dを反時計方向に揺動させる一方(このとき柱状突起Cは上昇して時計方向に揺動している)、図1(c)に示されるようにして圧電素子Hと中央支持体Fとの間の梁状本体部Bが上に凸となって中間位置Iが上昇したときに柱状突起Dを時計方向に揺動させる必要がある(このとき柱状突起Cは下降して反時計方向に揺動している)。
このため、図1(b)および図1(c)の作用原理図からも明らかなように、圧電素子Hと中央支持体Fとの間の中間位置Iよりも圧電素子H側に僅かに寄った位置、要するに、図1(b)の状態で下に凸となる梁状本体部Bの円弧部分の傾きが右上がりとなり、かつ、図1(c)の状態で上に凸となる梁状本体部Bの円弧部分の傾きが右下がりとなる位置に、柱状突起Dを配設することが望ましい。柱状突起Cの配設位置に関しても、これと同様である。つまり、圧電素子Hに正電圧を印加した際に下に凸となる梁状本体部Bの中央から圧電素子Eの固着位置に至る区間において梁状本体部Bの円弧部分の傾きが右下がりとなり、かつ、圧電素子Hに負電圧を印加した際に上に凸となる梁状本体部Bの中央から圧電素子Eの固着位置に至る区間において梁状本体部Bの円弧部分の傾きが右上がりとなる位置に柱状突起Cを配設する。
図1(a)中で右側に位置する圧電素子Hに高速送り用駆動信号を入力した場合には、前記とは全く逆に、柱状突起D,Cの先端に左回りの楕円運動が生起し、図1とは逆に、駆動対象Lもしくは駆動対象Lの移動方向をガイドするガイド部材に形成された駆動力伝達面Jに対して図1中で右から左に向かう方向の送りが掛けられ、また、柱状突起Dの先端の楕円運動と柱状突起Cの先端の楕円運動との間に180deg.相当の位相差が生じることになるが、その作用原理に関しては前記と全く同様である。
以上が、可撓性送り部材Aの梁状本体部Bと一体に形成された2つの柱状突起C,Dの相互的な動作の関係である。
そして、圧電素子E,Hおよび中央支持体Fの基部を固着したベースプレートKを押圧する予圧手段によって、柱状突起C,Dの先端が駆動力伝達面Jに向けて付勢された状態のままで前述のようにして柱状突起先端C,Dの先端に楕円運動が生起される結果、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面Jに近い側の楕円軌跡の部分では柱状突起C,Dの先端と駆動力伝達面Jとの当接力が増大する一方、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面Jから遠い側の楕円軌跡の部分では柱状突起C,Dの先端と駆動力伝達面Jとの当接力が減少する。あるいは、柱状突起C,Dの縦振動の周期と予圧手段の伸縮に係る応答性の関係によっては、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面Jに近い側の楕円軌跡の部分では柱状突起C,Dの先端と駆動力伝達面Jとが当接するが、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面Jに遠い側の楕円軌跡の部分では、予圧手段の伸長が間に合わずに柱状突起C,Dの先端が駆動力伝達面Jから離間したままの状態となるといった現象も生じ得る。
何れの場合においても、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面Jに近い側の楕円軌跡上に柱状突起C,Dの先端が位置する状況下では、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面Jに遠い側の楕円軌跡上に柱状突起C,Dの先端が位置する場合よりも駆動力伝達面Jに対して強い送りが掛けられることになるので、結果的に、楕円軌跡に沿って移動する柱状突起C,Dの先端の移動方向によって駆動対象Lの送り方向が決まる。例えば、左右方向に移動可能な駆動対象Lの下面に形成された駆動力伝達面Jに柱状突起C,Dの先端が当接し、柱状突起C,Dの先端が楕円軌跡に沿って右回りに移動するとした場合では駆動対象Lの送り方向は左から右へ向かう方向となり、また、同一条件下で柱状突起C,Dの先端が楕円軌跡に沿って左回りに移動するとした場合では駆動対象Lの送り方向は右から左へ向かう方向となる。
しかも、この際、柱状突起Cの先端の楕円運動の位相と柱状突起Dの先端の楕円運動の位相が異なっているので、圧電素子E,Hの何れか一方の1回の伸縮動作によって柱状突起Cと柱状突起Dを利用して都合2回の送りが交互に掛けられることになり、梁状本体部の中央部に1つの柱状突起のみを備えた従来型の圧電アクチュエータ(特許文献5参照)に比べ、動作効率が大幅に向上する。
圧電素子E,Hは相互に平行な状態で梁状本体部Bの両端部に配置されており、梁状本体部Bと2つの柱状突起C,Dと中央支持体Fとからなる可撓性送り部材Aは中央支持体Fの中心軸を基準として左右対称の構造であって、しかも、圧電素子Eを駆動信号の入力先として選択した場合であっても圧電素子Hを駆動信号の入力先として選択した場合であっても高速送り用駆動信号の特性自体は同一であるから、圧電素子Eを駆動信号の入力先として選択するか圧電素子Hを駆動信号の入力先として選択するかを送り方向切替手段によって切り替えることで、楕円軌跡に沿って移動する柱状突起先端C,Dの移動方向を反転することが可能であり、これにより駆動対象Lの送り方向を正逆に切り替えることができる。
圧電素子E,Hの間に可撓性の梁状本体部Bの全長に匹敵する間隔をおいて圧電素子E,Hを相互に平行な状態で配置しているので、何れか一方の圧電素子を伸縮させても他方の圧電素子を屈曲させる力は殆ど作用せず、圧電素子の屈曲による疲労の発生が大幅に軽減される。
また、圧電素子E,Hの先端に両端部を固着された可撓性の梁状本体部Bは、圧電素子E,Hの先端部が近接するようにして斜交配置した2つの圧電素子の先端の交差部分に設けられる従来型のブロック状の変位合成部とは相違し、スパンの長い梁状に形成されており、且つ、弾性変形が容易であるから、何れか一方の圧電素子を伸縮させても容易に弾性変形して応力を分散させることができるので、強い曲げモーメントや剪断力が作用することはなく、圧電素子E,Hと梁状本体部Bとの間の接続箇所に破断が生じる心配は殆どない。
従って、圧電アクチュエータに十分な耐久性を持たせることが可能である。
一方、駆動信号生成手段に微動送り用駆動信号を生成する旨の指令が入力された場合、駆動信号生成手段は、直流電圧からなる微動送り用駆動信号を生成し、この微動送り用駆動信号を、駆動信号の入力先として選択された何れか一方の圧電素子に印加する。
選択された何れか一方の圧電素子、例えば、第1の圧電素子Eは、入力電圧に応じて軸方向に伸縮する構造のものであるから、この微動送り用駆動信号を印加されることにより、入力電圧の大小に応じて伸縮し、例えば、図1(a)に示されるような自然長の状態から印加電圧に比例した長さで伸長する。この結果、当該圧電素子E寄りの柱状突起Cが図1(b)に示されるようにして上方に押し上げられ、柱状突起Cの先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、この伸長動作により、中央部を中央支持体Fの縮径部Gで支持された梁状本体部Bの中央から当該圧電素子Eの固着位置に至る区間において、梁状本体部Bが、梁状本体部Bと一体の柱状突起Cを伴って図1(a)中の時計方向に揺動し、柱状突起Cの先端に図1(b)に示されるような左から右に向かう方向の横移動が生じることになる。そして、これらの縦移動と横移動が合成されて柱状突起Cの先端が前述した楕円軌跡の一部に沿って図1中で右回りに移動する。この柱状突起Cの先端の移動のうち圧電素子Eの伸縮方向と直交する方向の移動量が、駆動対象Lの送り方向に沿った方向の直線運動である。
そして、圧電素子E,Hおよび中央支持体Fの基部を固着したベースプレートKを押圧する予圧手段によって柱状突起Cの先端が駆動力伝達面Jに向けて付勢された状態のままで前述のようにして柱状突起Cの先端に楕円軌跡の一部に沿った移動が生起される結果、前述の直線運動に相当する分だけ、図1中の左から右に向かう方向で駆動対象Lに微小な送りが掛けられ、同時に、駆動力伝達面Jと接離する方向の柱状突起Cの縦移動に相当する移動量だけ、予圧手段の付勢力に抗してベースプレートKが駆動力伝達面Jから離間する方向に移動することになり、駆動対象Lの移動量は、圧電素子Eの伸長限度に相当する電圧の範囲内で、微動送り用駆動信号の電圧に略比例する。
これとは逆に、図1(a)中で右側に位置する圧電素子Hに微動送り用駆動信号を入力した場合には、前記とは逆に、圧電素子Hが自然長の状態から印加電圧に比例した長さで伸長し、当該圧電素子H寄りの柱状突起Dが上方に押し上げられ、柱状突起Dの先端に縦移動が生じる。また、この伸長動作により、中央部を中央支持体Fの縮径部Gで支持された梁状本体部Bの中央から当該圧電素子Hの固着位置に至る区間において、梁状本体部Bが、梁状本体部Bと一体の柱状突起Dを伴って図1(a)中の反時計方向に揺動し、柱状突起Dの先端に右から左に向かう方向の横移動が生じ、これらの縦移動と横移動が合成されて柱状突起Dの先端が前述した楕円軌跡の一部に沿って図1中で左回りに移動し、図1中の右から左に向かう方向で駆動対象Lに微小な送りが掛けられることになる。その他の点に関しては前記と全く同様である。
既に述べた通り、圧電素子E,Hは相互に平行な状態で梁状本体部Bの両端部に配置されており、梁状本体部Bと2つの柱状突起C,Dと中央支持体Fとからなる可撓性送り部材Aは中央支持体Fの中心軸を基準として左右対称の構造であって、しかも、圧電素子Eを駆動信号の入力先として選択した場合であっても圧電素子Hを駆動信号の入力先として選択した場合であっても微動送り用駆動信号の特性自体は同一であるから、圧電素子Eを駆動信号の入力先として選択するか圧電素子Hを駆動信号の入力先として選択するかを送り方向切替手段によって切り替えることで、楕円軌跡に沿って移動する柱状突起C,Dの先端の移動方向を反転することが可能であり、これにより駆動対象Lの送り方向を正逆に切り替えることができる。また、この構成により精密な位置決めのための送りが実現される。
以上に述べた通り、連続的な高速送りに際しても精密な位置決めのための微動送りに際しても、送り方向切替手段の操作により圧電素子E,Hの何れか一方を駆動信号の入力先として選択し、信号波形生成器やアンプ等からなる単一の駆動信号生成手段で何れかの圧電素子に駆動信号を入力するようにしているので、基本的に1系統分の制御回路を設ければよく、簡便な構造の圧電アクチュエータを提供することができる。
【0014】
更に、一方の圧電素子が伸長限度に達した状態にある柱状突起の先端を駆動力伝達面から離間させるためのオフセット手段を備えると共に、
前記駆動信号生成手段は、目標移動量を含む微動指令を受け、前記一方の圧電素子に印加される微動送り用駆動信号の電圧と前記直線運動の量との関係に基いて、前記一方の圧電素子の伸長限度に相当する電圧の範囲内で、前記微動指令に略比例した電圧の微動送り用駆動信号を生成するものであって、
前記微動指令が前記一方の圧電素子の伸長限度に相当する前記直線運動の量を超える場合には、前記一方の圧電素子が伸長限度に達した時点で前記オフセット手段により前記柱状突起の先端を前記駆動力伝達面から離間させ前記駆動信号生成手段の作動を停止させて前記一方の圧電素子を初期状態に復帰させ、前記オフセット手段により前記柱状突起の先端を改めて前記駆動力伝達面に当接させて、前記微動指令と前記一方の圧電素子の伸長の度合いに相当する直線運動の量との差分を新たな目標移動量として前記駆動信号生成手段を再び作動させる連続微動送り用制御手段を併設した構成としてもよい。
【0015】
このような構成を適用した場合、駆動信号生成手段には目標移動量を含む微動指令を入力する。
前述した通り、選択された何れか一方の圧電素子、例えば、第1の圧電素子Eは、入力電圧に応じて軸方向に伸縮する構造のものであり、最終的に、微動送りに際しての駆動対象Lの移動量は、圧電素子Eの伸長限度に相当する電圧の範囲内で、微動送り用駆動信号の電圧に略比例する。
従って、微動指令に含まれる目標移動量が、選択された圧電素子Eの伸長限度に相当する駆動対象Lの移動量の範囲内であれば、当該圧電素子Eに印加される微動送り用駆動信号の電圧と駆動対象Lの直線運動の量との関係に基いて、圧電素子Eの伸長限度に相当する電圧の範囲内で微動指令に略比例した電圧の微動送り用駆動信号を生成することにより、目標移動量に相当する分の送りで駆動対象Lを移動させることができる。例えば、V1の微動送り用駆動信号を一方の圧電素子Eに印加した際に駆動対象Lが1(nm)移動し、V2の微動送り用駆動信号を一方の圧電素子Eに印加した際に駆動対象Lが2(nm)移動し、・・・、Viの微動送り用駆動信号を一方の圧電素子Eに印加した際に駆動対象Lがi(nm)移動し、・・・・、Vnの微動送り用駆動信号を一方の圧電素子Eに印加した際に駆動対象Lがn(nm)移動し、Vnの微動送り用駆動信号によって圧電素子Eが伸長限度に達するとすれば、微動送り用駆動信号となる直流電圧としてV1を入力すると1(nm)の送り、V2を入力すると2(nm)の送り、・・・、Viを入力するとi(nm)の送り、・・・、Vnを入力するとn(nm)の微動送りが実現されるということになる(但し、V1<V2<・・・Vi・・・<Vn)。
しかし、選択された圧電素子EにVnを越える電圧を印加しても圧電素子Eは其れ以上には伸張しないので、このままでは、n(nm)を超える送りは実現できない。
そこで、微動指令で指示される目標移動量が圧電素子Eの伸長限度に相当する駆動対象Lの送り量、例えば、前述のn(nm)を超える場合には、圧電素子Eが伸長限度に達した時点で連続微動送り用制御手段がオフセット手段を制御し、圧電素子Eが伸長限度に達した状態にある柱状突起Cの先端を駆動力伝達面Jから離間させる。柱状突起Cの先端の揺動状態を保持したまま柱状突起Cの先端を駆動力伝達面Jから離間させるようにしているので、柱状突起Cを駆動力伝達面Jから退避させる際に駆動対象Lに余計な送りが掛けられたり、駆動対象Lが送り方向と逆行する方向に引き戻されたりする弊害は生じない。
次いで、連続微動送り用制御手段は、駆動信号生成手段の作動を停止させることによって圧電素子Eの伸長状態を初期状態に復帰させるが、この時点では既に柱状突起Cの先端が駆動力伝達面Jから離間しているので、柱状突起先端Cの揺動状態を初期状態に復帰させても駆動対象Lが不用意に移動する心配はない。
そして、連続微動送り用制御手段は、オフセット手段により柱状突起Cの先端を改めて駆動力伝達面Jに当接させ、微動指令で指示される目標移動量と圧電素子Eの伸長の度合いに相当する駆動対象Lの直線運動の量との差分を新たな目標移動量として駆動信号生成手段に入力し、前記と同様にして駆動信号生成手段を再び作動させる。
従って、例えば、前記と同様にV1の微動送り用駆動信号で駆動対象Lが1(nm)移動し、V2の微動送り用駆動信号で駆動対象Lが2(nm)移動し、・・・、Viの微動送り用駆動信号で駆動対象Lがi(nm)移動し、・・・、Vnの微動送り用駆動信号で駆動対象Lがn(nm)移動し、Vnの微動送り用駆動信号によって圧電素子Eが伸長限度に達するとした場合において、目標移動量を2n+i(nm)とする微動指令が入力されたとすれば、圧電素子Eの伸長限度に相当するn(nm)の送りが2回と其の都度のオフセット手段の作動が都合2回、そして、Viの微動送り用駆動信号に相当するi(nm)の送りが1回実行されて、目標移動量に相当する送りが完了することになる。
このような構成を適用することで、圧電素子Eの伸長限度に相当する直線運動の量を超える目標移動量が微動指令として入力された場合であっても、その要求に確実に対処できるようになる。
第2の圧電素子Hに微動送り用駆動信号が入力された場合には駆動対象Lの送り方向が前記とは逆になるが、作用原理に関しては前記と全く同様である。
【0016】
前述のオフセット手段は、具体的には、ベースプレートを前記駆動力伝達面に対して接離する方向に移動させる第3の圧電素子によって構成することができる。
【0017】
このような構成を適用した場合、圧電素子が伸長限度に達した状態にある柱状突起の先端を駆動力伝達面から離間させるための手段として新たに第3の圧電素子が必要となる。
【0018】
更に、駆動信号生成手段が非作動となっている間だけ駆動対象の停止位置を保持するロック手段を併設してもよい。
【0019】
柱状突起の先端が駆動力伝達面から離間した状態であっても振動や衝撃で駆動対象が不用意に移動することはないので、駆動対象の微動送りを繰り返し実行するような場合でも微動指令による目標移動量を確実に達成することができ、また、駆動電力の供給を停止して駆動信号生成手段の作動を停止したような場合であっても最終的な位置決め完了位置を保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の圧電アクチュエータは、柱状形態を有する梁状本体部と,該梁状本体部から駆動力伝達面に向けて突出する2つの柱状突起と,前記梁状本体部の姿勢変化を許容する縮径部を有して該梁状本体部の中央から前記2つの柱状突起と逆方向に向けて突出する中央支持体とによって一体に形成された可撓性送り部材の両端部に第1,第2の圧電素子の先端部を固着し、第1,第2の圧電素子の基部および前記中央支持体の基部を固着したベースプレートを駆動力伝達面に向けて予圧した状態で、何れか一方の圧電素子に選択的に正弦波または三角波からなる高速送り用駆動信号を入力することにより、2つの柱状突起の夫々の先端に位相の異なる楕円運動を生じさせ、これら2つの柱状突起の先端の楕円運動を併用することで圧電素子の1回の伸縮動作により駆動力伝達面に対して都合2回の送りを交互に掛けるようにしたので、梁状本体部の中央部に1つの柱状突起のみを備えた従来型の圧電アクチュエータ(特許文献5参照)に比べ、高速送りの際の動作効率が大幅に改善することができる。
また、第1,第2の圧電素子を平行に配置しているため、何れか一方の圧電素子を伸縮させても他方の圧電素子を屈曲させる力は殆ど作用せず、圧電素子の屈曲による疲労の発生が大幅に軽減され、しかも、第1,第2の圧電素子の先端に両端部を固着された梁状本体部はスパンの長い柱状形態に形成されており弾性変形が容易であるから、何れか一方の圧電素子を伸縮させても容易に弾性変形して応力を分散させることが可能であり、圧電素子と梁状本体部との間の接続箇所に強い曲げモーメントや剪断力が作用することがなくなるので、圧電素子と梁状本体部との間の破断を効果的に抑制することができ、圧電アクチュエータ全体としての構造に十分な耐久性を持たせることができる。
しかも、駆動対象に微動送りを掛ける際には何れか一方の圧電素子を伸縮させて中央支持体の縮径部を支点に弾性体を揺動させることで駆動対象の圧電素子の側に位置する柱状突起の先端を圧電素子の伸縮方向と交差する方向に移動させて駆動対象に送りを掛けるようにしているので、従来の此の種の圧電アクチュエータでは難しかった微小な精密送りも容易に実現できる。
更に、高速送りに際しても微動送りに際しても、何れか一方の圧電素子のみを駆動すればよく、送り方向切替手段の操作により第1,第2の圧電素子の何れか一方を駆動信号の入力先として選択し、信号波形生成器やアンプ等からなる単一の駆動信号生成手段で何れかの圧電素子に駆動信号を入力するようにしているので、基本的に1系統分の制御回路を設ければ十分であり特に回路関連のハードウェア面で簡便な構造の圧電アクチュエータを提供することができ、正逆の送り方向も自由に選択することができる。
【0021】
また、微動送りに際して入力される目標移動量が圧電素子の伸長限度に相当する駆動対象の送り量を超えている場合には、圧電素子が伸長限度に達した時点でオフセット手段を用いて柱状突起の先端を駆動力伝達面から離間させ、柱状突起先端と駆動力伝達面との不用意な接触による駆動対象の位置ずれを防止した状態で圧電素子の伸長状態を初期状態に復帰させ、改めて駆動力伝達面に柱状突起の先端を当接させて、微動指令で指示される目標移動量と圧電素子の伸長の度合いに相当する駆動対象の直線運動の量との差分を新たな目標移動量として駆動信号生成手段に入力するようにしているので、圧電素子の伸長限度に相当する直線運動の量を超える目標移動量が微動指令として入力された場合であっても、その要求に確実に対処することができる。
【0022】
柱状突起の先端を駆動力伝達面から離間させるためのオフセット手段は、ベースプレートを駆動力伝達面に対して接離する方向に移動させる第3の圧電素子によって簡素に構成することが可能であり、圧電素子の伸長限度に相当する直線運動の量を超えた目標移動量の微動指令に容易に対処することができる。
【0023】
更に、駆動信号生成手段が非作動となっている間だけ駆動対象の停止位置を保持するロック手段を併設することで、駆動対象の微動送りを繰り返し実行するような場合でも微動指令による目標移動量を確実に達成することができ、また、駆動電力の供給を停止して駆動信号生成手段の作動を停止したような場合であっても最終的な位置決め完了位置を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、実施形態を揚げて具体的に説明する。
【0025】
図2(a)および図2(b)は本発明の圧電アクチュエータをスライダ送り機構に適用した場合の一実施形態の構成の概略について示した模式図、図3(a)〜図3(c)は同実施形態の圧電アクチュエータの動作原理を簡略化して示した作用原理図、また、図4は同実施形態の圧電アクチュエータの制御部の構成を簡略化して示したブロック図である。
【0026】
この実施形態のスライダ送り機構1は、図2(a)に示される通り、概略において、駆動対象としてのスライダ2と、スライダ2の移動方向をガイドするガイド部材3、および、スライダ2に送りを掛けるための圧電アクチュエータ4によって構成される。
【0027】
圧電アクチュエータ4の構造上の主要部は、図2(a)に示されるように、柱状形態を有する梁状本体部5と、梁状本体部5の長手方向つまり図2(a)中の左右方向に沿って梁状本体部5の中央から相反する方向に相互に等しい間隔をおいて梁状本体部5の一側面つまり上面から梁状本体部5の長手方向と直交する向きに突出する同一形状同一寸法の2つの柱状突起6,7と、梁状本体部5の前記一側面と並行する他の一側面すなわち梁状本体部5の下面において梁状本体部5の中央から梁状本体部5の長手方向と直交する向きで2つの柱状突起6,7と逆方向に向けて突出する中央支持体8と、梁状本体部5と中央支持体8との連絡部において記梁状本体部5の姿勢変化を許容すべく中央支持体8の側に設けられた縮径部9によって一体に形成された可撓性送り部材10と、
可撓性送り部材10における中央支持体8と平行して梁状本体部5の両端部に配置され、其の先端部を梁状本体部5に固着された第1の圧電素子PZT1および第2の圧電素子PZT2と、
第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の基部および中央支持体8の基部を固着したベースプレート11と、
梁状本体部5の長手方向の向きがスライダ2の送り方向と平行となり且つ2つの柱状突起6,7がスライダ2の送り方向と直交するような姿勢を保持した状態でベースプレート11を押圧することによって2つの柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けて付勢する予圧手段12とによって構成される。
【0028】
ここでは、一例として、ベースプレート11の姿勢を保持して摺動自在にガイドするガイドピン13,13と当該ガイドピン13,13に遊嵌されて其の両端部をベースプレート11およびリジッドプレート14に当接させたコイルスプリング15,15とを利用して予圧手段12を構成しているが、この種の予圧手段の構成に関しては既に様々なものが公知であり、その構成は問わない。
【0029】
リジッドプレート14の下面側に設置された第3の圧電素子PZT3は入力電圧に応じて厚みを変化させる板状の圧電素子であり、微動送りの実行に際し、第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達したときに、伸長側の圧電素子に近接する側の柱状突起6や柱状突起7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aから離間させるためのオフセット手段として機能する。
具体的には、図2(b)に示されるように、第3の圧電素子PZT3が非通電状態となって厚みを減少させた状態で、リジッドプレート14およびリジッドプレート14に固設されたガイドピン13とガイドピン13の拡径部13aを介してベースプレート11がスライダ2の駆動力伝達面2aから離間する方向に引かれて柱状突起6や柱状突起7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aから引き離される一方、図2(a)に示されるように、第3の圧電素子PZT3が通電状態となって厚みを増大させた状態では、リジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11がスライダ2の駆動力伝達面2aに向けて押圧され、柱状突起6や柱状突起7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aに当接し、予圧手段12の主要部を構成するコイルスプリング15が圧縮されることになる。
【0030】
第4の圧電素子PZT4は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する。図2(a)では第4の圧電素子PZT4が非通電状態となって短縮した状態つまりスライダ2の移動が許容された状態を示し、また、図2(b)では、第4の圧電素子PZT4が通電された状態すなわち第4の圧電素子PZT4が伸長して其の先端部がスライダ2に押し付けられてスライダ2の移動が禁止された状態を示している。
【0031】
図2(a)および図2(b)では、説明の都合上、各部のスケールを無視してスライダ送り機構1や圧電アクチュエータ4の構造を記載しているが、実際には、可撓性送り部材10における梁状本体部5のスパンは概ね11.2(mm)で上下幅が3(mm)、柱状突起6,7の長さは概ね6.4(mm)で左右幅が2.1(mm)、第1の圧電素子PZT1および第2の圧電素子PZT2の長さは概ね10(mm)、これら各部の厚さは3.85(mm)程度であり、スライダ2の大きさは一辺が50〜100(mm)といった程度である。梁状本体部5と柱状突起6,7および中央支持体8からなる可撓性送り部材10を形成する弾性体の材質としては、例えば、炭素工具鋼のSK3や合金工具鋼のSKS3等の鋼材が適している。
【0032】
圧電アクチュエータ4の制御部16は、図4に示されるように、マイクロプロセッサ17と、マイクロプロセッサ17の制御プログラムを格納したROM18、および、演算データの一時記憶等に利用されるRAM19と、ユーザープログラム等を格納するための不揮発性メモリ20によって構成される。
【0033】
また、第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段21は、信号波形発生器22とアンプ23とによって構成される。
【0034】
アンプ23から出力される高速送り用駆動信号の一例を図5に示す。この高速送り用駆動信号は、第1の圧電素子PZT1もしくは第2の圧電素子PZT2の何れかを高速で伸縮運動させ、何れか一方の圧電素子の伸縮動作に伴う当該圧電素子寄りの柱状突起の縦振動と当該伸縮動作により梁状本体部5の中央から当該圧電素子の固着位置に至る区間で梁状本体部5にもたらされる揺動動作に連動して当該圧電素子寄りの柱状突起に生じる横振動とによってスライダ2の送り方向に沿った方向の長軸を有する楕円運動を当該圧電素子寄りの柱状突起の先端部に生起させ、更に、梁状本体部8の中央から当該圧電素子の固着位置に至る区間で梁状本体部5にもたらされる揺動動作に連動して梁状本体部5の中央から他方の圧電素子の固着位置に至る区間で梁状本体部5に発生する屈曲動作に応じて当該区間の中央部に生じる位置変化による他方の柱状突起の縦振動と当該区間の屈曲動作に伴う当該区間の姿勢変化に連動して他方の柱状突起に生じる横振動とによって、スライダ2の送り方向に沿った方向の長軸を有し、且つ、前記一方の柱状突起の先端部に生じる楕円運動とは位相の異なった楕円運動を他方の柱状突起の先端部に生起させるためのものである。
【0035】
高速送り用駆動信号は、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧を変化させる正弦波または三角波等のものであり(この実施形態では正弦波)、公知の信号波形発生器22およびアンプ23で生成し増幅することが可能である。高速送り用駆動信号の電圧や周波数は、第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2を振動させ、この振動と柱状突起6,7の共振運動とによって柱状突起6,7の先端に位相の異なる楕円運動を生起させるのに適した値に定める必要がある。前述した寸法および材質を有する可撓性送り部材10と第1の圧電素子PZT1および第2の圧電素子PZT2を対象とした場合、望ましい正弦波の電圧は60Vp−p,周波数は26kHz前後が適当であることが実験的に求められている。
【0036】
次に、アンプ23から出力される微動送り用駆動信号の一例を図6に示す。この微動送り用駆動信号は、第1の圧電素子PZT1もしくは第2の圧電素子PZT2の何れかを伸縮運動させることによって、何れか一方の圧電素子の伸縮動作に伴う当該圧電素子寄りの柱状突起の縦移動と該伸縮動作により梁状本体部5の中央から当該圧電素子の固着位置に至る区間で梁状本体部5にもたらされる揺動動作に連動して当該圧電素子寄りの柱状突起に生じる横移動とによってスライダ2の送り方向に沿った方向の長軸を有する楕円運動の一部を当該圧電素子寄りの柱状突起の先端部に生起させるための直流電圧である。第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2は入力電圧に応じて軸方向に伸縮する構造のものであるから、この微動送り用駆動信号を印加されることにより、入力電圧の大小に応じて第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2が伸縮させることができる。
【0037】
ここでは、図6に示されるように、例えば、V1,V2,・・・Vi・・・,Vn(但し、この実施形態ではn=5)のn段階の直流電圧を微動送り用駆動信号として利用し、V1の微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1もしくは第2の圧電素子PZT2の何れか一方に印加した際に駆動対象であるスライダ2が基準位置からのアブソリュート量で1(nm)移動し、V2の微動送り用駆動信号を一方の圧電素子に印加した際にスライダ2が基準位置からのアブソリュート量で2(nm)、要するに、V1からV2への切り替えによってインクリメンタル量で1(nm)移動し、・・・、Viの微動送り用駆動信号を一方の圧電素子に印加した際にスライダ2が基準位置からのアブソリュート量でi(nm)、要するに、Vi−1からViへの切り替えによってインクリメンタル量で1(nm)移動し、・・・・、Vnの微動送り用駆動信号を一方の圧電素子に印加した際にスライダ2が基準位置からのアブソリュート量でn(nm)、要するに、Vn−1からVnへの切り替えによってインクリメンタル量で1(nm)移動し、Vnの微動送り用駆動信号によって当該圧電素子が伸長限度に達するものとする。
【0038】
駆動信号生成手段21を構成する信号波形発生器22およびアンプ23は、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17から制御部16の入出力回路24を介して指令を受け、図5に示されるような高速送り用駆動信号、もしくは、図6に示されるようなn段階の微動送り用駆動信号の何れかの段の微動送り用駆動信号を生成し、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に出力する。
【0039】
送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0は、マイクロプロセッサ17から制御部16の入出力回路24を介して指令を受け、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第1の圧電素子PZT1もしくは第2の圧電素子PZT2に選択的に切り替える。
【0040】
制御部16の入出力回路24には、更に、オフセット手段として機能する第3の圧電素子PZT3の厚みを2値的に変化させるためのアンプ25と、ロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4の長さを2値的に変化させて伸長もしくは短縮させるためのアンプ26が接続されている。
【0041】
手動パルス発生器27は駆動対象であるスライダ2に微動送りを掛けるための微動指令と目標移動量とを入力するためのマン・マシン・インターフェイスである。手動パルス発生器27からのパルスは入出力回路24を介してマイクロプロセッサ17に入力され、手動パルス発生器27のハンドルの操作方向つまり正逆の送り方向に応じ、RAM19のレジスタの1つで構成されるパルスカウンタCに移動量の目標値が加算もしくは減算されていく。
【0042】
ジョグスイッチSW1は駆動対象であるスライダ2に正方向の高速送りを掛けるためのマン・マシン・インターフェイスであり、また、ジョグスイッチSW2は駆動対象であるスライダ2に逆方向の高速送りを掛けるためのマン・マシン・インターフェイスである。
【0043】
リニアスケール28は機械座標系上におけるスライダ2の現在位置をリアルタイムで検出し、この現在位置がモニタ29上に表示される。
【0044】
キーボード30はユーザープログラム等の入力に用いられるマン・マシン・インターフェイスである。
【0045】
圧電アクチュエータ4の制御部16は専用のハードウェアで構成してもよいし、パーソナルコンピュータ等にプログラムをインストールすることによって制御部16の機能を持たせるようにしてもよい。
【0046】
図3(a)〜図3(c)は同実施形態の圧電アクチュエータ4の動作原理を簡略化して示した作用原理図である。
【0047】
第1の圧電素子PZT1と第2の圧電素子PZT2は入力電圧に応じて軸方向に伸縮する構造のものであるから、高速送り用駆動信号の入力対象として選択された何れか一方の圧電素子、例えば、図3(a)中で左側に位置する第1の圧電素子PZT1に正電圧が印加されると、圧電素子PZT1が図3(a)に示されるような自然長の状態から、印加電圧に比例した長さで伸長する。この結果、圧電素子PZT1寄りの柱状突起6が図3(b)に示されるようにして上方に押し上げられ、柱状突起6の先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、この伸長動作により、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において、梁状本体部5が、梁状本体部5と一体の柱状突起6を伴って図3(a)中の時計方向に揺動し、柱状突起6の先端に図3(b)に示されるような左から右に向かう方向の横移動が生じることになる。
【0048】
一方、これとは逆に、高速送り用駆動信号としての負電圧が圧電素子PZT1に印加されると、圧電素子PZT1が印加電圧に比例した長さで短縮し、この結果、圧電素子PZT1寄りの柱状突起6が図3(c)に示されるようにして下方に引き下げられ、柱状突起6の先端に下降方向の縦移動が生じる。また、この短縮動作により、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において、梁状本体部5が、梁状本体部5と一体の柱状突起6を伴って図3(a)中の反時計方向に揺動し、柱状突起6の先端に図3(c)に示されるような右から左に向かう方向の横移動が生じることになる。
【0049】
高速送り用駆動信号は、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧が変化する正弦波または三角波であるから、この高速送り用駆動信号を圧電素子PZT1に入力することにより、前述の柱状突起6の縦移動および横移動が繰り返されて同期した縦振動および横振動からなる共振となり、この共振により、最終的に、柱状突起6の先端が、図3(a)中で右回りの楕円軌跡に沿って運動することになる。
【0050】
しかも、前述のようにして高速送り用駆動信号としての正電圧が圧電素子PZT1に印加された状況下では、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において梁状本体部5が図3(b)のようにして時計方向に揺動する結果として、この揺動動作に連動して、梁状本体部5の中央から他方の圧電素子である第2の圧電素子PZT2の固着位置に至る区間の梁状本体部5には、図3(b)に示されるように、下に凸となる屈曲動作が生じ、当該区間の中央部に生じる下降方向の位置変化により他方の柱状突起7の先端に下降方向の縦移動が生じる。また、梁状本体部5の中央から圧電素子PZT2の固着位置に至る区間の梁状本体部5が下に凸となる当該区間の姿勢変化に連動して、当該区間の中央部よりも僅かに圧電素子PZT2側に配置された他方の柱状突起7が図3(a)中の反時計方向に揺動し、柱状突起7の先端に図3(b)に示されるような右から左に向かう方向の横移動が生じることになる。
【0051】
一方、これとは逆に、高速送り用駆動信号としての負電圧が圧電素子PZT1に印加された状況下では、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において梁状本体部5が図3(c)のようにして反時計方向に揺動するので、この揺動動作に連動して、梁状本体部5の中央から他方の圧電素子である圧電素子PZT2の固着位置に至る区間の梁状本体部5に、図3(c)に示されるように、上に凸となるような屈曲動作が生じ、当該区間の中央部に生じる上昇方向の位置変化に伴って他方の柱状突起7の先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、梁状本体部5の中央から圧電素子PZT2の固着位置に至る区間の梁状本体部5が上に凸となる当該区間の姿勢変化に連動して、当該区間の中央部よりも僅かに圧電素子PZT2側に配置された他方の柱状突起7が図3(a)中の時計方向に揺動し、柱状突起7の先端に図3(c)に示されるような左から右に向かう方向の横移動が生じることになる。
【0052】
高速送り用駆動信号は、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧が変化する正弦波または三角波であるから、この高速送り用駆動信号を圧電素子PZT1に入力することにより、前述の柱状突起7の縦移動および横移動が繰り返されて同期した縦振動および横振動からなる共振となり、この共振により、最終的に、柱状突起7の先端が、図3(a)中で右回りの楕円軌跡に沿って運動することになる。
【0053】
図3(b)あるいは図3(c)に示される通り、時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧を変化させる高速送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に入力した場合の柱状突起6の先端位置の高さと柱状突起7の先端位置の高さ、および、柱状突起6の揺動方向と柱状突起7の揺動方向の少なくとも一方は各時点において相互に異なる。つまり、柱状突起6の先端の楕円運動と柱状突起7の先端の楕円運動は位相の異なる楕円運動である。
【0054】
図3(b)および図3(c)から分かるように、伸縮させる側の圧電素子PZT1と中央支持体8との間では梁状本体部5が概ね直線の状態を維持して揺動する一方、伸縮させない側の圧電素子PZT2と中央支持体8との間では梁状本体部5が大きく屈曲して下に凸または上に凸となり、この実施形態では、専ら、伸縮しない側の圧電素子PZT2と中央支持体8との間で梁状本体部5に生じる屈曲動作に伴う上下方向の位置変化と当該区間における梁状本体部5の姿勢変化を利用して柱状突起6の先端の楕円運動と柱状突起7の先端の楕円運動との間に位相差を生じさせるようにしているので、図3(b)に示されるようにして圧電素子PZT2と中央支持体8との間の梁状本体部5が下に凸となって当該区間の中間位置Iが下降したときに柱状突起7を反時計方向に揺動させる一方(このとき柱状突起6は上昇して時計方向に揺動している)、図3(c)に示されるようにして圧電素子PZT2と中央支持体8との間の梁状本体部5が上に凸となって当該区間の中間位置Iが上昇したときに柱状突起7を時計方向に揺動させる必要がある(このとき柱状突起6は下降して反時計方向に揺動している)。このため、図3(b)および図3(c)の作用原理図からも明らかなように、圧電素子PZT2と中央支持体8との間の中間位置Iよりも圧電素子PZT2側に僅かに寄った位置、要するに、図3(b)の状態で下に凸となる梁状本体部5の円弧部分の傾きが右上がりとなり、かつ、図3(c)の状態で上に凸となる梁状本体部5の円弧部分の傾きが右下がりとなる位置に、柱状突起7を配設している。
【0055】
柱状突起6の配設位置に関しても同様であり、圧電素子PZT2に正電圧を印加した際に下に凸となる梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において梁状本体部5の円弧部分の傾きが右下がりとなり、かつ、圧電素子PZT2に負電圧を印加した際に上に凸となる梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において梁状本体部5の円弧部分の傾きが右上がりとなる位置に柱状突起6を配設する。
【0056】
図7(a)は60Vp−p,27kHzの正弦波を高速送り用駆動信号として第1の圧電素子PZT1に印加した場合に柱状突起6の先端に形成される楕円運動と柱状突起7の先端に形成される楕円運動との間に生じる位相差について示した実験結果、また、図7(b)は60Vp−p,27kHzの正弦波を高速送り用駆動信号として第1の圧電素子PZT1に印加した場合に柱状突起6の先端に形成される楕円運動の軌跡と柱状突起7の先端に形成される楕円運動の軌跡について示した実験結果であり、この例では、柱状突起6の先端の楕円運動と柱状突起7の先端の楕円運動との間に107deg.相当の位相差が生じていることが分かる。
【0057】
図7(b)に示される通り、柱状突起6の先端に形成される楕円運動の軌跡と柱状突起7の先端に形成される楕円運動の軌跡とでは形状が相違するが、その原因は、専ら、柱状突起6が第1の圧電素子PZT1の伸縮動作を直接的に受けて上下動する一方、柱状突起7は梁状本体部5の中央から第2の圧電素子PZT2の固着位置に至る区間の梁状本体部5の屈曲に伴う上下方向の僅かな位置変位に伴って上下動するために、柱状突起6の先端に形成される楕円運動の軌跡の上下幅の方が柱状突起7の先端に形成される楕円運動の軌跡の上下幅よりも大きくなり、また、柱状突起6の先端は、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において直線状態を保持したまま微小角度で揺動する梁状本体部5の姿勢変化に連動して左右方向に移動する一方、柱状突起7の先端は、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から第2の圧電素子PZT2の固着位置に至る区間において凸状に強く屈曲する梁状本体部5の姿勢変化に連動して振られるかたちで左右方向に移動するために、柱状突起7の先端に形成される楕円運動の軌跡の横幅の方が柱状突起6の先端に形成される楕円運動の軌跡の横幅よりも大きくなるものと考えられる。
【0058】
柱状突起6の先端に形成される楕円運動の軌跡と柱状突起7の先端に形成される楕円運動の軌跡とは近似しているに越したことはないが、2つの楕円運動の間に位相差さえあれば、1振動周期内で柱状突起6の先端と柱状突起7の先端を併用してスライダ2に対して都合2回の送りを交互に掛けることが可能である。
【0059】
図3(a)中で右側に位置する第2の圧電素子PZT2に高速送り用駆動信号を入力した場合には、前記とは全く逆に、柱状突起7,6の先端に左回りの楕円運動が生起し、図3とは逆に、スライダ2の駆動力伝達面2aに対して図3中で右から左に向かう方向の送りが掛けられることになるが、その作用原理に関しては前記と全く同様である。
【0060】
以上が、第1の圧電素子PZT1もしくは第2の圧電素子PZT2の何れか一方に高速送り用駆動信号を入力した場合に2つの柱状突起6,7に同時に生じる楕円運動の相互的な関係である。
【0061】
なお、図3(a)〜図3(c)では記載を省略しているが、第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2には其の伸縮動作に伴って横倒れ方向の弾性変形が発生するため、第1の圧電素子PZT1が伸長した場合には、第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の中央部が共に左側に凸の状態となる湾曲が生じ、第1の圧電素子PZT1が短縮した場合には、第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の中央部が共に右側に凸の状態となる湾曲が生じる。同様に、第2の圧電素子PZT2が伸長した場合には、第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の中央部が共に右側に凸の状態となる湾曲が生じ、第2の圧電素子PZT2が短縮した場合には、第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の中央部が共に左側に凸の状態となる湾曲が生じる。
【0062】
図8〜図9はROM18に格納された制御プログラムに従ってマイクロプロセッサ17が実行する処理の概略について示したフローチャートである。
【0063】
次に、図8〜図9のフローチャートを参照して、生成信号指定手段および連続微動送り用制御手段等として機能するマイクロプロセッサ17の処理動作、および、スライダ送り機構1と圧電アクチュエータ4の動作について具体的に説明する。
【0064】
圧電アクチュエータ4の制御部16に電源が投入されると、マイクロプロセッサ17は、まず、微動送りの実行中を記憶する微動送り実行フラグFをリセットし(ステップS1)、微動送りの目標移動量を記憶するパルスカウンタCの値を0に初期化すると共に(ステップS2)、信号波形発生器22およびアンプ23からなる駆動信号生成手段21に指令する微動送り用駆動信号の電圧値を特定する電圧指定指標iの値を0に初期化する(ステップS3)。
【0065】
次いで、マイクロプロセッサ17は、ジョグスイッチSW1の操作が検知されているか否か(ステップS4)、ジョグスイッチSW2の操作が検知されているか否か(ステップS11)、手動パルス発生器27からのパルス信号の入力が検知されているか否か(ステップS16)、パルスカウンタCの現在値が0に保持されているか否かを判定するが(ステップS20)、電源投入直後の現時点では、必然的に、ステップS4,ステップS11,ステップS16の判定結果は偽、また、ステップS20の判定結果は真となるので、マイクロプロセッサ17は、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20の判定処理のみを繰り返し実行して、ジョグスイッチSW1,ジョグスイッチSW2,手動パルス発生器23に対するユーザの操作を待つ待機状態に入る。
【0066】
ここで、ユーザがジョグスイッチSW1を操作した場合、つまり、ステップS4の判定結果が真となった場合には、駆動対象であるスライダ2に対して正方向の高速送りを掛ける意図がユーザ側にあることを意味するので、マイクロプロセッサ17は、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3にアンプ25を介して駆動電圧を印加し、第3の圧電素子PZT3の厚みを増大させて図2(b)に示されるような退避位置にあるリジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けてニガシ量相当分だけ移動させ、可撓性送り部材10の柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに当接させると共に、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4への駆動電圧の印加を解除して第4の圧電素子PZT4の先端をスライダ2から離間させ、スライダ2の移動を許容する(ステップS5)。
【0067】
このようにして、柱状突起6,7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aに当接する結果、予圧手段12の主要部を構成するコイルスプリング15,15が図2(a)のようにして圧縮され、可撓性送り部材10における梁状本体部6,7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aに向けて付勢された状態となる。
【0068】
次いで、マイクロプロセッサ17は、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に対し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第1の圧電素子PZT1に切り替える旨の指令を入出力回路24を介して出力し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先として第1の圧電素子PZT1をリレースイッチSW0に選択させ(ステップS6)、更に、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17が、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して高速送り用駆動信号の出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を開始させ(ステップS7)、ジョグスイッチSW1の操作が解除されたことが確認されるまでの間、この状態を維持する(ステップS8)。
【0069】
第1の圧電素子PZT1に高速送り用駆動信号を印加した場合に柱状突起6,7の先端に発生する楕円運動については既に述べた通りである。
【0070】
この段階では、既に、予圧手段12の働きによって柱状突起6,7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aに向けて付勢された状態となっているので、楕円運動の長軸L1,L2(図7(b)参照)を基準として駆動力伝達面2aに近い側の楕円軌跡の部分では柱状突起6,7の先端と駆動力伝達面2aとの当接力が増大する一方、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面2aから遠い側の楕円軌跡の部分では柱状突起6,7の先端と駆動力伝達面Jとの当接力が減少する。あるいは、柱状突起6,7の縦振動の周期と予圧手段12におけるコイルスプリング15の伸縮に係る応答性の関係によっては、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面2aに近い側の楕円軌跡の部分では柱状突起6,7の先端と駆動力伝達面2aとが当接するが、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面2aに遠い側の楕円軌跡の部分では、予圧手段12の伸長が間に合わずに柱状突起6,7の先端が駆動力伝達面2aから離間したままの状態となるといった現象も生じ得る。何れの場合においても、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面2aに近い側の楕円軌跡上に柱状突起6,7の先端が位置する状況下では、楕円運動の長軸を基準として駆動力伝達面2aに遠い側の楕円軌跡上に柱状突起6,7の先端が位置する場合よりも駆動力伝達面2aに対して強い送りが掛けられることになるので、結果的に、楕円軌跡に沿って移動する柱状突起6,7の先端の移動方向つまり図3(a)に示されるような右回りの楕円運動に従って、スライダ2には図2(a)中で左から右に向かう方向の送りが掛けられることになる。
【0071】
しかも、この際、柱状突起6の先端の楕円運動の位相と柱状突起7の先端の楕円運動の位相が異なっているので、第1の圧電素子PZT1の1回の伸縮動作によって柱状突起6と柱状突起7を利用して都合2回の送りが交互に掛けられることになるので、梁状本体部の中央部に1つの柱状突起のみを備えた従来型の圧電アクチュエータ(特許文献5参照)に比べて高速送りの動作効率を大幅に向上させることができる。
【0072】
そして、ユーザがジョグスイッチSW1から手を離し、ジョグスイッチSW1の操作が解除されたことが確認されると(ステップS8)、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して高速送り用駆動信号の出力を停止する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を停止させて第1の圧電素子PZT1の伸縮運動によってもたらされる柱状突起6,7の先端の楕円運動を終了させて駆動対象であるスライダ2の送りを停止させる(ステップS9)。
【0073】
次いで、マイクロプロセッサ17は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4へ駆動電圧を印加して伸長させることによってスライダ2の不用意な移動を防止し、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3への駆動電圧の印加を停止して第3の圧電素子PZT3の厚みを減少させて、リジッドプレート14をニガシ量相当分だけ縮退させ、柱状突起6,7の先端を図2(b)に示されるようにしてスライダ2の駆動力伝達面2aから退避させる(ステップS10)。
【0074】
一方、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20の判定処理のみが繰り返し実行される間にステップS11の判定結果が真となった場合、つまり、ユーザによるジョグスイッチSW2の操作が検知された場合には、駆動対象であるスライダ2に対して逆方向の高速送りを掛ける意図がユーザ側にあることを意味する。
【0075】
この場合、マイクロプロセッサ17は、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3にアンプ25を介して駆動電圧を印加し、第3の圧電素子PZT3の厚みを増大させて図2(b)に示されるような退避位置にあるリジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けてニガシ量相当分だけ移動させ、可撓性送り部材10の柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに当接させると共に、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4への駆動電圧の印加を解除してスライダ2の移動を許容する(ステップS12)。
【0076】
次いで、マイクロプロセッサ17は、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に対し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第2の圧電素子PZT2に切り替える旨の指令を入出力回路24を介して出力し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先として第2の圧電素子PZT2をリレースイッチSW0に選択させ(ステップS13)、更に、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17が、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して高速送り用駆動信号の出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を開始させ(ステップS14)、ジョグスイッチSW2の操作が解除されたことが確認されるまでの間、この状態を維持する(ステップS15)。
【0077】
第2の圧電素子PZT2に高速送り用駆動信号を印加した場合に柱状突起7,6の先端に発生する楕円運動については既に述べた通りであり、この場合、楕円軌跡に沿って移動する柱状突起7,6の先端の移動方向は図3(a)中で左回りの方向となるので、スライダ2には図2(a)中で右から左に向かう方向の送りが掛けられることになる。
【0078】
前記と同様、柱状突起7の先端の楕円運動の位相と柱状突起6の先端の楕円運動の位相が異なるので、第2の圧電素子PZT2の1回の伸縮動作によって柱状突起7と柱状突起6を利用して都合2回の送りが交互に掛けられることになり、梁状本体部の中央部に1つの柱状突起のみを備えた従来型の圧電アクチュエータ(特許文献5参照)に比べて高速送りの動作効率を大幅に向上させることができる。
【0079】
なお、第2の圧電素子PZT2に高速送り用駆動信号を印加した場合では、柱状突起7の先端の楕円運動の軌跡は図7(b)で左側に示される軌跡を左右に鏡像変換したものと同等となり、また、柱状突起6の先端の楕円運動の軌跡は図7(b)で右側に示される軌跡を左右に鏡像変換したものと同等となる。つまり、スライダ2の送り方向が反転した場合であっても、スライダ2の送り方向の前方に位置する柱状突起の先端の移動軌跡は常に上下幅が薄く横幅の長い楕円となり、スライダ2の送り方向の後方に位置する柱状突起の先端の移動軌跡は常に上下幅が厚く横幅の短い楕円となるので、正逆いずれの方向に送りを掛ける場合であっても、方向性に関わりなく完全な対称性を保持した送り動作が可能である。
【0080】
第1の圧電素子PZT1と第2の圧電素子PZT2は相互に平行な状態で梁状本体部5の両端部に配置されており、柱状突起6,7は梁状本体部5の中央から相反する方向つまり左右方向に向けて相互に等しい間隔をおいて梁状本体部5に形成され、梁状本体部5の長手方向中央部に中央支持体8が形成されているので、中央支持体8から見れば柱状突起6,7および第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の配設位置は完全に左右対称であり、第1の圧電素子PZT1を駆動信号の入力先として選択した場合であっても第2の圧電素子PZT2を駆動信号の入力先として選択した場合であっても高速送り用駆動信号の特性自体は同一である。従って、第1の圧電素子PZT1を駆動信号の入力先として選択するか第2の圧電素子PZT2を駆動信号の入力先として選択するかを送り方向切替手段であるリレースイッチSW0によって切り替えることで、楕円軌跡に沿って移動する柱状突起6,7の先端の移動方向を反転することが可能であり、これにより駆動対象であるスライダ2の送り方向を正逆に切り替えることができる。
【0081】
そして、ユーザがジョグスイッチSW2から手を離し、ジョグスイッチSW2の操作が解除されたことが確認されると(ステップS15)、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して高速送り用駆動信号の出力を停止する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を停止させて第2の圧電素子PZT2の伸縮運動によってもたらされる柱状突起7,6の先端の楕円運動を終了させて駆動対象であるスライダ2の送りを停止させる(ステップS9)。
【0082】
次いで、マイクロプロセッサ17は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4へ駆動電圧を印加してスライダ2の不用意な移動を防止し、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3への駆動電圧の印加を停止して第3の圧電素子PZT3の厚みを減少させて、リジッドプレート14をニガシ量相当分だけ縮退させ、柱状突起6,7の先端を図2(b)に示されるようにしてスライダ2の駆動力伝達面2aから退避させる(ステップS10)。
【0083】
これに対し、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20の判定処理のみが繰り返し実行される間にステップS16の判定結果が真となった場合、つまり、ユーザによる手動パルス発生器27のハンドル操作が検知された場合には、マイクロプロセッサ17は、手動パルス発生器27のハンドルの操作方向つまり正逆の送り方向に応じ(ステップS17)、RAM19のレジスタの1つで構成されるパルスカウンタCの値を1インクリメントし(ステップS18)、または、1ディクリメントする(ステップS19)。
【0084】
手動パルス発生器27のハンドルが連続的に正方向に操作されればパルスカウンタCの値は連続的にインクリメントされ(ステップS17,ステップS18,ステップS4,ステップS11,ステップS16参照)、また、手動パルス発生器27のハンドルが連続的に逆行方向に操作されればパルスカウンタCの値は連続的にディクリメントされる(ステップS17,ステップS19,ステップS4,ステップS11,ステップS16参照)。
【0085】
手動パルス発生器27のハンドル操作で出力されるパルスが実質的な微動指令であり、パルスカウンタCに記憶される符号は駆動対象であるスライダ2の送り方向を表す値である。また、パルスカウンタCに記憶されるパルス数の絶対値が実質的な目標移動量であり、この実施形態では、1パルス分に相当する目標移動量は1(nm)である。
【0086】
手動パルス発生器27が操作され、パルスカウンタCに0以外の値が微動送りの目標移動量としてセットされると、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20の判定処理を繰り返し実行しているマイクロプロセッサ17は、ステップS20の判定処理で、正逆いずれかの微動指令が入力されたことを検知する。
【0087】
パルスカウンタCに0以外の値がセットされたことを検知したマイクロプロセッサ17は(ステップS20)、まず、パルスカウンタCの値が正の値であるか否か、つまり、この微動指令がスライダ2に正方向の微動送りを掛けるためのものであるか否かを判定する(ステップS21)。
【0088】
ステップS21の判定結果が真となって正方向の微動送りであることが明らかとなった場合には、マイクロプロセッサ17は、まず、微動送り実行フラグFがセットされているか否か、すなわち、この時点で既に正方向へのスライダ2の微動送りが開始されているか否かを判定する(ステップS22)。
【0089】
ステップS22の判定結果が真となり、現時点では未だスライダ2の微動送りが開始されていないことが明らかとなった場合には、マイクロプロセッサ17は、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3にアンプ25を介して駆動電圧を印加し、第3の圧電素子PZT3の厚みを増大させて図2(b)に示されるような退避位置にあるリジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けてニガシ量相当分だけ移動させ、可撓性送り部材10の柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに当接させると共に、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4への駆動電圧の印加を解除してスライダ2の移動を許容する(ステップS23)。
【0090】
次いで、マイクロプロセッサ17は、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に対し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第1の圧電素子PZT1に切り替える旨の指令を入出力回路24を介して出力し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先として第1の圧電素子PZT1をリレースイッチSW0に選択させ(ステップS24)、微動送り実行フラグFをセットすることにより、スライダ2の微動送りが開始されたことを記憶する(ステップS25)。
【0091】
そして、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17が、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS26)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値n(この実施例ではn=5)に達しているか否かを判定する(ステップS27)。
【0092】
ここで、ステップS27の判定結果が偽となり、指標iの現在値が伸長限度に相当する電圧の指標値nに達していないことが明らかとなった場合には、この時点では未だ微動送り用駆動信号Viを出力することで第1の圧電素子PZT1を伸長させてスライダ2に正方向の送りを掛けることが可能であることを意味するので、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標iの現在値に対応する微動送り用駆動信号Viの出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧Viの微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に印加する(ステップS28)。
【0093】
微動送り実行フラグFをセットした直後の現時点では電圧指定指標iの値は0から1に更新されているから、第1の圧電素子PZT1には電圧V1の微動送り用駆動信号が印加され、この微動送り用駆動信号V1に略比例して第1の圧電素子PZT1が伸長し、第1の圧電素子PZT1寄りの柱状突起6が例えば図3(b)に示されるようにして上方に押し上げられ、柱状突起6の先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、この伸長動作により、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から第1の圧電素子PZT1の固着位置に至る区間において、梁状本体部5が梁状本体部5と一体の柱状突起6を伴って図3(a)中の時計方向に揺動し、柱状突起6の先端に図3(b)に示されるような左から右に向かう方向の横移動が生じることになる。そして、これらの縦移動と横移動が合成されて柱状突起6の先端が前述した楕円軌跡の一部に沿って図3中で右回りに移動する。この柱状突起6の先端の移動のうち第1の圧電素子PZT1の伸縮方向と直交する方向の移動量がスライダ2の送り方向に沿った方向の直線運動である。
【0094】
この段階では、既に、予圧手段12の働きによって柱状突起6,7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aに向けて付勢された状態となっているので、スライダ2の駆動力伝達面2aにはV1の電圧の印加に対応した1(nm)相当の正方向の送りが掛けられ、同時に、柱状突起6の縦移動に相当する移動量だけ、予圧手段12のコイルスプリング15,15の付勢力に抗してベースプレート11が駆動力伝達面2aから離間する方向に移動する。
【0095】
次いで、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの値を1ディクリメントして、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の正方向の微動送りが行なわれたことを記憶する(ステップS29)。これにより、目標移動量と第1の圧電素子PZT1の伸長の度合に対応したスライダ2の直線移動量との差分が新たな目標移動量としてパルスカウンタCに更新して記憶されることになる。
【0096】
そして、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの現在値が0までディクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS30)。
【0097】
パルスカウンタCの現在値が0となっていなければ、スライダ2の微動送りを継続して行なう必要があることを意味するので、マイクロプロセッサ17は、再びステップS4の判定処理に復帰し、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21の判定処理を実行した後、改めて、微動送り実行フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS22)、この時点では既に正方向へのスライダ2の微動送りが開始されており微動送り実行フラグFがセットされているので、ステップS22の判定結果は偽となる。
【0098】
従って、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS26)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値nに達しているか否かを判定する(ステップS27)。
【0099】
電圧指定指標iの現在値が指標値nに達していなければ、前記と同様、この時点では未だ微動送り用駆動信号Viを出力することで第1の圧電素子PZT1を伸長させてスライダ2に正方向の送りを掛けることが可能であることを意味するので、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標iの現在値に対応する微動送り用駆動信号Viの出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧Viの微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に印加させる(ステップS28)。
【0100】
このようにして、ステップS26の処理で逐次的に更新される電圧指定指標iの現在値に基いて電圧Viの微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に対してステップ状に増加させて印加していくことにより、Vi−1からViへの切り替えの度に、インクリメンタル量にして1(nm)相当の正方向の送りがスライダ2に掛けられることになる。
【0101】
そして、マイクロプロセッサ17は、前記と同様、パルスカウンタCの値を1ディクリメントし、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の正方向の微動送りが行なわれたことを記憶した後(ステップS29)、パルスカウンタCの現在値が0までディクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS30)。
【0102】
以下、前記と同様にして、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20〜ステップS22,ステップS26〜ステップS30の処理が繰り返し実行され、第1の圧電素子PZT1の伸長限度に相当する電圧Vnの範囲を限度としてスライダ2に正方向の微動送りが掛けられる。
【0103】
従って、この実施形態では、第1の圧電素子PZT1の1サイクル分の伸長動作でn(nm)=5(nm)の微動送りが可能である。
【0104】
しかし、第1の圧電素子PZT1の1サイクル分の伸長動作が完了してn(nm)=5(nm)の微動送りが行なわれて第1の圧電素子PZT1が伸長限度に達してもパルスカウンタCの現在値が0までディクリメントされない場合、つまり、パルスカウンタCにn=5パルスを超える目標移動量の微動指令が記憶されているといった場合もあり得る。
【0105】
このような場合、第1の圧電素子PZT1を更に伸長させてスライダ2に正方向の送りを掛けるといったことはできない。
【0106】
そこで、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20〜ステップS22,ステップS26〜ステップS30の処理を繰り返し実行してスライダ2に正方向の微動送りを掛ける間にステップS27の判定結果が真となった場合、つまり、第1の圧電素子PZT1が伸長限度に達しているにも関わらず更にスライダ2に正方向の微動送りを掛ける必要があることが判明した場合においては、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4へ駆動電圧を印加してスライダ2の不用意な移動を防止し、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3への駆動電圧の印加を停止して第3の圧電素子PZT3の厚みを減少させて、リジッドプレート14をニガシ量相当分だけ縮退させ、第1の圧電素子PZT1が伸長限度に達した状態にある柱状突起6の先端を図2(b)に示されるようにしてスライダ2の駆動力伝達面2aから退避させる(ステップS31)。
【0107】
この際、柱状突起6の先端は第1の圧電素子PZT1が伸長限度に達した際の揺動姿勢を保持したまま駆動力伝達面2aから離間することになり、スライダ2の送り方向に沿って柱状突起6の先端が移動することはないので、柱状突起6の退避動作に際して駆動力伝達面2aに柱状突起6の先端が干渉してスライダ2に余計な送りが掛けられたり、スライダ2が送り方向と逆行する方向に引き戻されたりするといった弊害は生じない。
【0108】
次いで、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号Vn=V5の出力を停止する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を停止させて第1の圧電素子PZT1の伸長状態を完全収縮の初期状態に復帰させる(ステップS32)。
【0109】
この時点では既に柱状突起6の先端が駆動力伝達面2aから図2(b)に示されるようにして離間しているので、柱状突起6先端の揺動状態を初期状態に復帰させても、駆動力伝達面2aに柱状突起6の先端が干渉してスライダ2に余計な送りが掛けられたり、スライダ2が送り方向と逆行する方向に引き戻されたりするといった心配はない。
【0110】
次いで、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、微動送り用駆動信号の電圧値を特定する電圧指定指標iの値を0に初期化すると共に(ステップS33)、微動送り実行フラグFをリセットし(ステップS34)、再びステップS4の判定処理に復帰して、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21の判定処理を実行した後、改めて、微動送り実行フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS22)、この場合は、前述したステップS34の処理で微動送り実行フラグFがリセットされているため、ステップS22の判定結果は真となる。
【0111】
従って、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、改めてオフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3にアンプ25を介して駆動電圧を印加し、第3の圧電素子PZT3の厚みを増大させて図2(b)に示されるような退避位置にあるリジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けてニガシ量相当分だけ移動させ、可撓性送り部材10の柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに当接させると共に、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4への駆動電圧の印加を解除してスライダ2の移動を許容する(ステップS23)。
【0112】
次いで、マイクロプロセッサ17は、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に対し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第1の圧電素子PZT1に切り替える旨の指令を入出力回路24を介して出力し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先として第1の圧電素子PZT1をリレースイッチSW0に選択させ(ステップS24)、微動送り実行フラグFを改めてセットする(ステップS25)。
【0113】
次いで、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17が、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS26)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値n(この実施例ではn=5)に達しているか否かを判定する(ステップS27)。
【0114】
この時点では、前述したステップS33の処理で一旦0に初期化された電圧指定指標iの値が改めて1に更新されているのでステップS27の判定結果は偽となり、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標i=1に対応する微動送り用駆動信号V1の出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧V1の微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に印加し(ステップS28)、スライダ2の駆動力伝達面2aに更に1(nm)相当の正方向の送りを掛ける。
【0115】
次いで、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの値を1ディクリメントし、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の正方向の微動送りが行なわれたことを記憶する(ステップS29)。つまり、目標移動量と第1の圧電素子PZT1の伸長の度合に対応したスライダ2の直線移動量との差分が新たな目標移動量としてパルスカウンタCに更新して記憶される。
【0116】
そして、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの現在値が0までディクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS30)。
【0117】
パルスカウンタCの現在値が0となっていなければ、スライダ2の微動送りを継続して行なう必要があることを意味するので、マイクロプロセッサ17は、再びステップS4の判定処理に復帰し、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21の判定処理を実行した後、改めて、微動送り実行フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS22)、この時点では既に微動送り実行フラグFがセットされているので、ステップS22の判定結果は偽となる。
【0118】
従って、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS26)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値nに達しているか否かを判定する(ステップS27)。
【0119】
電圧指定指標iの現在値が指標値nに達していなければ、前記と同様、この時点では未だ微動送り用駆動信号Viを出力することで第1の圧電素子PZT1を伸長させてスライダ2に正方向の送りを掛けることが可能であることを意味するので、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標iの現在値に対応する微動送り用駆動信号Viの出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧Viの微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に印加する(ステップS28)。
【0120】
このようにして、ステップS26の処理で逐次的に更新される電圧指定指標iの現在値に基いて電圧Viの微動送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に印加していくことにより、Vi−1からViへの切り替えの度に、インクリメンタル量にして更に1(nm)相当の正方向の送りがスライダ2に掛けられることになる。
【0121】
そして、マイクロプロセッサ17は、前記と同様、パルスカウンタCの値を1ディクリメントし、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の正方向の微動送りが行なわれたことを記憶した後(ステップS29)、パルスカウンタCの現在値が0までディクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS30)。
【0122】
微動送りが完了しておらずパルスカウンタCの現在値が0までディクリメントされていいない場合には、前記と同様にして、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20〜ステップS22,ステップS26〜ステップS30の処理が繰り返し実行され、第1の圧電素子PZT1の伸長限度に相当する電圧Vnの範囲内でスライダ2に正方向の微動送りが掛けられる。
【0123】
そして、第1の圧電素子PZT1が伸長限度に達した場合には、既に述べたようにして、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17がステップS31〜ステップS34の処理を実行し、柱状突起6の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aから離間させ、第1の圧電素子PZT1の伸長状態を初期状態に復帰させてから、第1の圧電素子PZT1の新たな1サイクル分の伸長動作によってn(nm)=5(nm)の範囲でスライダ2に微動送りを掛ける。
【0124】
このような処理を繰り返し実行することにより、手動パルス発生器27の連続操作でパルスカウンタCに大きな値の目標移動量が設定された場合であっても、スライダ2に対する連続的な正方向の微動送りを継続して行なうことが可能となる。
【0125】
つまり、信号波形発生器22およびアンプ23からなる駆動信号生成手段21それ自体は、第1の圧電素子PZT1に印加される微動送り用駆動信号の電圧Viと最終的なスライダ2の直線運動の量i(nm)との関係に基いて、第1の圧電素子PZT1の伸長限度に相当する電圧Vnの範囲を上限とし、微動指令の目標移動量Cのうち第1の圧電素子PZT1の1サイクルの伸長動作で達成可能な送り量n(nm)の範囲で、送り量i(nm)(但し、i≦n)に略比例した電圧の微動送り用駆動信号Viを生成するに過ぎないが、微動指令の目標移動量Cが第1の圧電素子PZT1の1サイクルの動作の伸長限度に相当する最終的なスライダ2の直線運動の量n(nm)を超える場合には、第1の圧電素子PZT1が伸長限度に達した時点で、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17からの指令により、柱状突起6の先端を駆動力伝達面2aから離間させ、アンプ23からの駆動信号Viの出力を停止させて第1の圧電素子PZT1の伸長状態を初期状態に復帰させ、柱状突起6の先端を改めて駆動力伝達面2aに当接させて、当初の微動指令Cと第1の圧電素子PZT1の伸長限度に相当する最終的なスライダ2の直線運動の量n(nm)との差分C−nを新たな目標移動量Cとした上で、駆動信号生成手段21を再び作動させるといった処理操作をC≦nとなるまで繰り返し実行することで、スライダ2に対する連続的な正方向の微動送りが実現されるということである。但し、この実施形態では、図6に示す通り、微動送り用駆動信号Viを第1の圧電素子PZT1に対してステップ状に増加させて印加していく構成、つまり、目標移動量Cの大小に関わりなくスライダ2の微動送り速度(単位時間当たりの送り量)を一定とする構成を採用しているので、実際には、当初の微動指令Cとスライダ2の直線運動の量n(nm)との差分C−nを求める処理は、ステップS29に示されるように、C←C−1の処理をn回続けて繰り返すことで実現している。
【0126】
そして、最終的に、パルスカウンタCの値が0にまでディクリメントされたことがステップS30の判定処理で検知され、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了したことが確認されると、マイクロプロセッサ17は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4へ駆動電圧を印加してスライダ2の不用意な移動を防止し、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3への駆動電圧の印加を停止して第3の圧電素子PZT3の厚みを減少させて、リジッドプレート14をニガシ量相当分だけ縮退させ、第1の圧電素子PZT1が伸長した状態にある柱状突起6の先端を図2(b)に示されるようにしてスライダ2の駆動力伝達面2aから退避させ(ステップS31)、更に、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号Viの出力を停止する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を停止させて第1の圧電素子PZT1の伸長状態を初期状態に復帰させて(ステップS32)、電圧指定指標iの値を0に初期化し(ステップS33)、微動送り実行フラグFをリセットして(ステップS34)、スライダ2に対する正方向の微動送りを終了する。
【0127】
パルスカウンタCの値が0に復帰した後はステップS21以降の処理は非実行とされるので、スライダ2に不用意な送りが掛けられることはない。
【0128】
一方、パルスカウンタCに0以外の値が目標移動量としてセットされたことがステップS20の判定処理で検出され、更に、ステップS21の判定結果が偽となってパルスカウンタCの値が負の値であることが明らかとなった場合には、ユーザがスライダ2に対して逆方向の微動送りを掛けようとしていることを意味する。
【0129】
この場合、マイクロプロセッサ17は、まず、微動送り実行フラグFがセットされているか否か、すなわち、この時点で既に逆方向へのスライダ2の微動送りが開始されているか否かを判定する(ステップS35)。
【0130】
ステップS35の判定結果が真となり、現時点では未だスライダ2の微動送りが開始されていないことが明らかとなった場合には、マイクロプロセッサ17は、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3にアンプ25を介して駆動電圧を印加し、第3の圧電素子PZT3の厚みを増大させて図2(b)に示されるような退避位置にあるリジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けてニガシ量相当分だけ移動させ、可撓性送り部材10の柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに当接させると共に、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4への駆動電圧の印加を解除してスライダ2の移動を許容する(ステップS36)。
【0131】
次いで、マイクロプロセッサ17は、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に対し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第2の圧電素子PZT2に切り替える旨の指令を入出力回路24を介して出力し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先として第2の圧電素子PZT2をリレースイッチSW0に選択させ(ステップS37)、微動送り実行フラグFをセットすることにより、スライダ2の微動送りが開始されたことを記憶する(ステップS38)。
【0132】
そして、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17が、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS39)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値n(この実施例ではn=5)に達しているか否かを判定する(ステップS40)。
【0133】
ここで、ステップS40の判定結果が偽となり、指標iの現在値が伸長限度に相当する電圧の指標値nに達していないことが明らかとなった場合には、この時点では未だ微動送り用駆動信号Viを出力することで第2の圧電素子PZT2を伸長させてスライダ2に逆方向の送りを掛けることが可能であることを意味するので、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標iの現在値に対応する微動送り用駆動信号Viの出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧Viの微動送り用駆動信号を第2の圧電素子PZT2に印加する(ステップS41)。
【0134】
微動送り実行フラグFをセットした直後の現時点では電圧指定指標iの値は0から1に更新されているから、第2の圧電素子PZT2には電圧V1の微動送り用駆動信号が印加され、この微動送り用駆動信号V1に略比例して第2の圧電素子PZT2が伸長し、第2の圧電素子PZT2寄りの柱状突起7が上方に押し上げられ、柱状突起7の先端に上昇方向の縦移動が生じる。また、この伸長動作により、中央部を中央支持体8の縮径部9で支持された梁状本体部5の中央から第2の圧電素子PZT2の固着位置に至る区間において、梁状本体部5が梁状本体部5と一体の柱状突起7を伴って図3(a)中の反時計方向に揺動し、柱状突起7の先端に右から左に向かう方向の横移動が生じることになる。そして、これらの縦移動と横移動が合成されて柱状突起7の先端が前述した楕円軌跡の一部に沿って図3中で左回りに移動する。この柱状突起7の先端の移動のうち第2の圧電素子PZT2の伸縮方向と直交する方向の移動量がスライダ2の送り方向に沿った方向の直線運動である。
【0135】
この段階では、既に、予圧手段12の働きによって柱状突起6,7の先端がスライダ2の駆動力伝達面2aに向けて付勢された状態となっているので、スライダ2の駆動力伝達面2aにはV1の電圧の印加に対応した1(nm)相当の正方向の送りが掛けられ、同時に、柱状突起7の縦移動に相当する移動量だけ、予圧手段12のコイルスプリング15,15の付勢力に抗してベースプレート11が駆動力伝達面2aから離間する方向に移動する。
【0136】
第1の圧電素子PZT1と第2の圧電素子PZT2は相互に平行な状態で梁状本体部5の両端部に配置されており、柱状突起6,7は梁状本体部5の中央から相反する方向つまり左右方向に向けて相互に等しい間隔をおいて梁状本体部5に形成され、梁状本体部5の長手方向中央部に中央支持体8が形成されているので、中央支持体8から見れば柱状突起6,7および第1,第2の圧電素子PZT1,PZT2の配設位置は完全に左右対称であり、第1の圧電素子PZT1を駆動信号の入力先として選択した場合であっても第2の圧電素子PZT2を駆動信号の入力先として選択した場合であっても微動送り用駆動信号の特性自体は同一である。従って、第1の圧電素子PZT1を駆動信号の入力先として選択するか第2の圧電素子PZT2を駆動信号の入力先として選択するかを送り方向切替手段であるリレースイッチSW0によって切り替えることで、駆動対象であるスライダ2の送り方向を正逆に切り替えることができる。
【0137】
次いで、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの値を1インクリメントして、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の逆方向の微動送りが行なわれたことを記憶する(ステップS42)。これにより、目標移動量と第2の圧電素子PZT2の伸長の度合に対応したスライダ2の直線移動量との差分が新たな目標移動量としてパルスカウンタCに更新して記憶されることになる。
【0138】
そして、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの現在値が0までインクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS43)。
【0139】
パルスカウンタCの現在値が0となっていなければ、スライダ2の微動送りを継続して行なう必要があることを意味するので、マイクロプロセッサ17は、再びステップS4の判定処理に復帰し、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21の判定処理を実行した後、改めて、微動送り実行フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS35)、この時点では既に逆方向へのスライダ2の微動送りが開始されており、微動送り実行フラグFがセットされているので、ステップS35の判定結果は偽となる。
【0140】
従って、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS39)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値nに達しているか否かを判定する(ステップS40)。
【0141】
電圧指定指標iの現在値が指標値nに達していなければ、前記と同様、この時点では未だ微動送り用駆動信号Viを出力することで第2の圧電素子PZT2を伸長させてスライダ2に逆方向の送りを掛けることが可能であることを意味するので、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標iの現在値に対応する微動送り用駆動信号Viの出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧Viの微動送り用駆動信号を第2の圧電素子PZT2に印加させる(ステップS41)。
【0142】
このようにして、ステップS39の処理で逐次的に更新される電圧指定指標iの現在値に基いて電圧Viの微動送り用駆動信号を第2の圧電素子PZT2に対してステップ状に増加させていくことにより、Vi−1からViへの切り替えの度に、インクリメンタル量にして1(nm)相当の逆方向の送りがスライダ2に掛けられることになる。
【0143】
そして、マイクロプロセッサ17は、前記と同様、パルスカウンタCの値を1インクリメントし、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の逆方向の微動送りが行なわれたことを記憶した後(ステップS42)、パルスカウンタCの現在値が0までインクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS43)。
【0144】
以下、前記と同様にして、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21,ステップS35,ステップS39〜ステップS43の処理が繰り返し実行され、第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧Vnの範囲を限度としてスライダ2に逆方向の微動送りが掛けられる。
【0145】
従って、この実施形態では、第2の圧電素子PZT2の1サイクル分の伸長動作でn(nm)=5(nm)の微動送りが可能である。
【0146】
しかし、第2の圧電素子PZT2の1サイクル分の伸長動作が完了してn(nm)=5(nm)の微動送りが行なわれて第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達してもパルスカウンタCの現在値が0までインクリメントされない場合、つまり、パルスカウンタCに−n=−5パルスの絶対値を超える目標移動量の微動指令が記憶されているといった場合もあり得る。
【0147】
このような場合、第2の圧電素子PZT2を更に伸長させてスライダ2に逆方向の送りを掛けるといったことはできない。
【0148】
そこで、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21,ステップS35,ステップS39〜ステップS43の処理を繰り返し実行してスライダ2に逆方向の微動送りを掛ける間にステップS40の判定結果が真となった場合、つまり、第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達しているにも関わらず更にスライダ2に逆方向の微動送りを掛ける必要があることが判明した場合においては、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4へ駆動電圧を印加してスライダ2の不用意な移動を防止し、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3への駆動電圧の印加を停止して第3の圧電素子PZT3の厚みを減少させて、リジッドプレート14をニガシ量相当分だけ縮退させ、第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達した状態にある柱状突起7の先端を図2(b)に示されるようにしてスライダ2の駆動力伝達面2aから退避させる(ステップS31)。
【0149】
この際、柱状突起7の先端は第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達した際の揺動姿勢を保持したまま駆動力伝達面2aから離間することになり、スライダ2の送り方向に沿って柱状突起7の先端が移動することはないので、柱状突起7の退避動作に際して駆動力伝達面2aに柱状突起7の先端が干渉してスライダ2に余計な送りが掛けられたり、スライダ2が送り方向と逆行する方向に引き戻されたりするといった弊害は生じない。
【0150】
次いで、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号Vn=V5の出力を停止する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を停止させて第2の圧電素子PZT2の伸長状態を完全収縮の初期状態に復帰させる(ステップS32)。
【0151】
この時点では既に柱状突起7の先端が駆動力伝達面2aから図2(b)に示されるようにして離間しているので、柱状突起7先端の揺動状態を初期状態に復帰させても、駆動力伝達面2aに柱状突起7の先端が干渉してスライダ2に余計な送りが掛けられたり、スライダ2が送り方向と逆行する方向に引き戻されたりするといった心配はない。
【0152】
次いで、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、微動送り用駆動信号の電圧値を特定する電圧指定指標iの値を0に初期化すると共に(ステップS33)、微動送り実行フラグFをリセットし(ステップS34)、再びステップS4の判定処理に復帰して、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21の判定処理を実行した後、改めて、微動送り実行フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS35)、この場合は、前述したステップS34の処理で微動送り実行フラグFがリセットされているため、ステップS35の判定結果は真となる。
【0153】
従って、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17は、改めてオフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3にアンプ25を介して駆動電圧を印加し、第3の圧電素子PZT3の厚みを増大させて図2(b)に示されるような退避位置にあるリジッドプレート14およびコイルスプリング15を介してベースプレート11をスライダ2の駆動力伝達面2aに向けてニガシ量相当分だけ移動させ、可撓性送り部材10の柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aに当接させると共に、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4への駆動電圧の印加を解除してスライダ2の移動を許容する(ステップS36)。
【0154】
次いで、マイクロプロセッサ17は、送り方向切替手段として機能するリレースイッチSW0に対し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先を第2の圧電素子PZT2に切り替える旨の指令を入出力回路24を介して出力し、アンプ23から出力される駆動信号の入力先として第2の圧電素子PZT2をリレースイッチSW0に選択させ(ステップS37)、微動送り実行フラグFを改めてセットする(ステップS38)。
【0155】
次いで、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17が、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS39)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値n(この実施例ではn=5)に達しているか否かを判定する(ステップS40)。
【0156】
この時点では、前述したステップS33の処理で一旦0に初期化された電圧指定指標iの値が改めて1に更新されているのでステップS40の判定結果は偽となり、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標i=1に対応する微動送り用駆動信号V1の出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧V1の微動送り用駆動信号を第2の圧電素子PZT2に印加し(ステップS41)、スライダ2の駆動力伝達面2aに更に1(nm)相当の逆方向の送りを掛ける。
【0157】
次いで、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの値を1インクリメントし、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の逆方向の微動送りが行なわれたことを記憶する(ステップS42)。つまり、目標移動量と第2の圧電素子PZT2の伸長の度合に対応したスライダ2の直線移動量との差分が新たな目標移動量としてパルスカウンタCに更新して記憶される。
【0158】
そして、マイクロプロセッサ17は、パルスカウンタCの現在値が0までインクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS43)。
【0159】
パルスカウンタCの現在値が0となっていなければ、スライダ2の微動送りを継続して行なう必要があることを意味するので、マイクロプロセッサ17は、再びステップS4の判定処理に復帰し、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21の判定処理を実行した後、改めて、微動送り実行フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS35)、この時点では既に微動送り実行フラグFがセットされているので、ステップS35の判定結果は偽となる。
【0160】
従って、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、電圧指定指標iの値を1インクリメントし(ステップS39)、該指標iの現在値が第1の圧電素子PZT1や第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧の指標値nに達しているか否かを判定する(ステップS40)。
【0161】
電圧指定指標iの現在値が指標値nに達していなければ、前記と同様、この時点では未だ微動送り用駆動信号Viを出力することで第2の圧電素子PZT2を伸長させてスライダ2に逆方向の送りを掛けることが可能であることを意味するので、生成信号指定手段として機能するマイクロプロセッサ17は、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号のうち指標iの現在値に対応する微動送り用駆動信号Viの出力を開始する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23を作動させ、アンプ23から出力される電圧Viの微動送り用駆動信号を第2の圧電素子PZT2に印加する(ステップS41)。
【0162】
このようにして、ステップS39の処理で逐次的に更新される電圧指定指標iの現在値に基いて電圧Viの微動送り用駆動信号を第2の圧電素子PZT2に印加していくことにより、Vi−1からViへの切り替えの度に、インクリメンタル量にして更に1(nm)相当の逆方向の送りがスライダ2に掛けられることになる。
【0163】
そして、マイクロプロセッサ17は、前記と同様、パルスカウンタCの値を1インクリメントし、手動パルス発生器27の1パルス分の指令に対応する1(nm)の逆方向の微動送りが行なわれたことを記憶した後(ステップS42)、パルスカウンタCの現在値が0までインクリメントされているか否か、つまり、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了しているか否かを判定する(ステップS43)。
【0164】
微動送りが完了しておらずパルスカウンタCの現在値が0までインクリメントされていいない場合には、前記と同様にして、ステップS4,ステップS11,ステップS16,ステップS20,ステップS21,ステップS35,ステップS39〜ステップS43の処理が繰り返し実行され、第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧Vnの範囲内でスライダ2に逆方向の微動送りが掛けられる。
【0165】
そして、第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達した場合には、既に述べたようにして、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17がステップS31〜ステップS34の処理を実行し、柱状突起7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aから離間させ、第2の圧電素子PZT2の伸長状態を初期状態に復帰させてから、第2の圧電素子PZT2の新たな1サイクル分の伸長動作によってn(nm)=5(nm)の範囲でスライダ2に微動送りを掛ける。
【0166】
このような処理を繰り返し実行することにより、手動パルス発生器27の連続操作でパルスカウンタCに−n=−5パルスの絶対値を超える大きさの目標移動量が設定された場合であっても、スライダ2に対する連続的な逆方向の微動送りを継続して行なうことが可能となる。
【0167】
つまり、信号波形発生器22およびアンプ23からなる駆動信号生成手段21それ自体は、第2の圧電素子PZT2に印加される微動送り用駆動信号の電圧Viと最終的なスライダ2の直線運動の量i(nm)との関係に基いて、第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する電圧Vnの範囲を上限とし、微動指令の目標移動量Cのうち第2の圧電素子PZT2の1サイクルの伸長動作で達成可能な送り量n(nm)の範囲で、送り量i(nm)(但し、i≦n)に略比例した電圧の微動送り用駆動信号Viを生成するに過ぎないが、微動指令の目標移動量Cの絶対値が第2の圧電素子PZT2の1サイクルの動作の伸長限度に相当する最終的なスライダ2の直線運動の量n(nm)を超える場合には、第2の圧電素子PZT2が伸長限度に達した時点で、連続微動送り用制御手段として機能するマイクロプロセッサ17からの指令により、柱状突起7の先端を駆動力伝達面2aから離間させ、アンプ23からの駆動信号Viの出力を停止させて第2の圧電素子PZT2の伸長状態を初期状態に復帰させ、柱状突起7の先端を改めて駆動力伝達面2aに当接させて、当初の微動指令Cと第2の圧電素子PZT2の伸長限度に相当する最終的なスライダ2の直線運動の量n(nm)との差分C+n(但し、Cの符号はマイナス)を新たな目標移動量Cとした上で、駆動信号生成手段21を再び作動させるといった処理操作を|C|≦nとなるまで繰り返し実行することで、スライダ2に対する連続的な逆方向の微動送りが実現されるということである。前述した通り、この実施形態では、図6に示すように、微動送り用駆動信号Viを第2の圧電素子PZT2に対してステップ状に増加させて印加していく構成を採用しているので、実際には、当初の微動指令Cとスライダ2の直線運動の量n(nm)との差分C+nを求める処理は、ステップS42に示されるように、C←C+1の処理をn回続けて繰り返すことで実現している。
【0168】
そして、最終的に、パルスカウンタCの値が0にまでインクリメントされたことがステップS43の判定処理で検知され、手動パルス発生器27で指令された微動送りが全て完了したことが確認されると、マイクロプロセッサ17は、スライダ2の停止位置を保持するためのロック手段として機能する第4の圧電素子PZT4へ駆動電圧を印加してスライダ2の不用意な移動を防止し、オフセット手段を構成する第3の圧電素子PZT3への駆動電圧の印加を停止して第3の圧電素子PZT3の厚みを減少させて、リジッドプレート14をニガシ量相当分だけ縮退させ、第2の圧電素子PZT2が伸長した状態にある柱状突起7の先端を図2(b)に示されるようにしてスライダ2の駆動力伝達面2aから退避させ(ステップS31)、更に、駆動信号生成手段21の主要部を構成する信号波形発生器22に対して微動送り用駆動信号Viの出力を停止する旨の指令を入出力回路24を介して出力し、信号波形発生器22およびアンプ23の作動を停止させて第2の圧電素子PZT2の伸長状態を初期状態に復帰させて(ステップS32)、電圧指定指標iの値を0に初期化し(ステップS33)、微動送り実行フラグFをリセットして(ステップS34)、スライダ2に対する正方向の微動送りを終了する。
【0169】
パルスカウンタCの値が0に復帰した後はステップS21以降の処理は非実行とされるので、スライダ2に不用意な送りが掛けられることはない。
【0170】
このようにして、第1の圧電素子PZT1あるいは第2の圧電素子PZ2に微動送り用駆動信号として機能するV1,V2,・・・Vi・・・,Vn(但し、この実施形態ではn=5)のn段階の直流電圧を順に印加していくことで、1(nm)を刻み幅とする僅かな移動量でスライダ2に正逆各方向の微小な送りを掛けて精密な位置決めを行なうことができる。
【0171】
以上に述べたように、この実施形態では連続的な高速送りに際しても精密な位置決めのための微動送りに際しても、送り方向切替手段であるリレースイッチSW0の操作により第1の圧電素子PZT1もしくは第2の圧電素子PZT2の何れか一方を駆動信号の入力先として選択し、信号波形生成器22やアンプ23からなる単一の駆動信号生成手段21で何れかの圧電素子に駆動信号を入力するようにしているので、基本的に1系統分の制御回路を設ければよく、特に、電気的な構成において簡便な構造の圧電アクチュエータ4を提供することができる。
【0172】
しかも、リジッドプレート14の下面側に設置された第3の圧電素子PZT3をオフセット手段として利用し、特に、先端が大きく揺動した状態にある柱状突起6や柱状突起7の姿勢を保持したまま柱状突起6,7の先端をスライダ2の駆動力伝達面2aから離間させるようにしているので、微動送りに際して柱状突起6,7の先端を駆動力伝達面2aから離間させる場合であっても柱状突起6,7の先端が駆動力伝達面2aと干渉してスライダ2を不用意に移動させることがなく、精密な微動送りを実現できる。無論、第3の圧電素子PZT3に代わる別のアクチュエータやカム機構あるいはリンク機構等の公知手段を利用してオフセット手段を構成するといったことも可能である。
【0173】
同様に、第4の圧電素子PZT4からなるロック手段に代えて別のアクチュエータやカム機構あるいはリンク機構等の公知手段を利用してロック手段を構成してもよく、更には、ウェッジスライドギアやブレーキパッド等を利用したクランプ装置、あるいは、本出願人らが特願2006−312581として提案しているリニアステージ用現位置保持機構等を利用してロック手段を構成してもよい。
【0174】
何れの場合も、柱状突起6,7の先端が駆動力伝達面2aから離間した状況下において振動や衝撃の作用でスライダ2が不用意に移動する不都合を解消することができ、スライダ2の微動送りを繰り返し実行するような場合でも微動指令による目標移動量を確実に達成することができる。また、駆動電力の供給を停止して駆動信号生成手段21の作動を停止したような場合であっても最終的な位置決め完了位置を確実に保持することができる。
【0175】
図2および図3を参照して説明した実施形態では、駆動対象であるスライダ2の側に駆動力伝達面2aを形成し、スライダ送り機構1の本体側に圧電アクチュエータ4を配備した例について述べたが、これとは逆に、駆動対象であるスライダ2の側に圧電アクチュエータ4を配備し、スライダ送り機構1の本体側の固定部分、例えば、スライダ2の移動方向をガイドするガイド部材3等にスライダ2の移動方向に沿った駆動力伝達面を形成し、この駆動力伝達面にスライダ2側から突出する柱状突起6,7の先端を当接させるような構成としてもよい。この場合も、前述した実施形態と同様の機能および作用・効果を達成することができる。
【0176】
なお、段落0031で述べた寸法で形成された可撓性送り部材10を使用し、予圧手段12による付勢力を20(N)として、無負荷状態で最大の移動速度300(mm/s)が得られる条件である60Vp−p,24kH,5Wの高速送り用駆動信号を第1の圧電素子PZT1に入力し、負荷となる錘の重量m(kg)を様々に変化させて、
e=(vmg/Vrms Irms cosφ)×100
v:スライダ移動速度(m/s)
Vrms:電圧実効値(V)
Irms:電流実効値(A)
φ:電圧と電流の位相差(rad)
m:錘の重量(kg)
の式で効率e(%)を求めたところ、効率が最大となるのは、負荷が2.5(N)でスライダ移動速度が128(mm/s)となるときで、その値は6.3(%)となることがわかった。
梁状本体部の中央部に1つの柱状突起のみを備え、梁状本体部のスパンが11(mm),柱状突起の長さが6(mm),第1の圧電素子および第2の圧電素子の長さが9(mm),これらのパーツの厚さが3(mm)である同等の大きさの従来型の圧電アクチュエータ(特許文献5参照)を使用した場合の効率e(%)は0.6(%)前後であるから、動作効率は十分に改善されたことになる。
【0177】
以上、連続的な高速送りに際しては柱状突起6,7を併用した交互の送りを掛ける一方、精密な位置決めを必要とする微動送りに際しては、何れか一方の柱状突起、より具体的には、スライダ2の送り方向の後方に位置する柱状突起(正方向送りの場合は柱状突起6/逆方向送りの場合は柱状突起7)のみを利用して送りを掛ける例について説明したが、微動送りに際しても高速送りの場合と同様に柱状突起6,7を併用した送りを掛ける構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】可撓性送り部材の梁状本体部と一体に形成された2つの柱状突起の動作原理について簡略化して示した作用原理図であり、図1(a)は電圧を印加しない初期の状態について示した図、図1(b)は一方の圧電素子に正電圧を印加した状態について示した図、図1(c)は同じ圧電素子に負電圧を印加した状態について示した図である。
【図2】本発明の圧電アクチュエータをスライダ送り機構に適用した場合の一実施形態の構成の概略について示した模式図であり、図2(a)は柱状突起を駆動力伝達面に当接させた状態について示した図、図2(b)は柱状突起を駆動力伝達面から離間させた状態について示した図である。
【図3】同実施形態の圧電アクチュエータの動作原理を簡略化して示した作用原理図であり、図3(a)は電圧を印加しない初期の状態について示した図、図3(b)は一方の圧電素子に正電圧を印加した状態について示した図、図3(c)は同じ圧電素子に負電圧を印加した状態について示した図である。
【図4】同実施形態の圧電アクチュエータの制御部の構成を簡略化して示したブロック図である。
【図5】高速送り用駆動信号の一例を示した概念図である。
【図6】微動送り用駆動信号の一例を示した概念図である。
【図7】一方の圧電素子に高速送り用駆動信号を入力した場合の実験結果について示した線図で、図7(a)は各柱状突起の先端に形成される楕円運動の位相差について示した線図、また、図7(b)は各柱状突起の先端に形成される楕円運動の軌跡について示した線図である。
【図8】制御部のマイクロプロセッサが実行する処理の概略について示したフローチャートである。
【図9】制御部のマイクロプロセッサが実行する処理の概略について示したフローチャートの続きである。
【符号の説明】
【0179】
1 スライダ送り機構
2 スライダ(送り対象)
2a 駆動力伝達面
3 ガイド部材
4 圧電アクチュエータ
5 梁状本体部
6,7 柱状突起
8 中央支持体
9 縮径部
10 可撓性送り部材
11 ベースプレート
12 予圧手段
13 ガイドピン
13a 拡径部
14 リジッドプレート
15 コイルスプリング
16 制御部
17 マイクロプロセッサ(生成信号指定手段,連続微動送り用制御手段)
18 ROM
19 RAM
20 不揮発性メモリ
21 駆動信号生成手段
22 信号波形発生器
23 アンプ
24 入出力回路
25,26 アンプ
27 手動パルス発生器
28 リニアスケール
29 モニタ
30 キーボード
PZT1 第1の圧電素子
PZT2 第2の圧電素子
PZT3 第3の圧電素子(オフセット手段)
PZT4 第4の圧電素子(ロック手段)
SW0 リレースイッチ(送り方向切替手段)
SW1,SW2 ジョグスイッチ
L1,L2 楕円運動の長軸
A 可撓性送り部材
B 梁状本体部
C 一方の柱状突起
D 他方の柱状突起
E 一方の圧電素子(第1の圧電素子)
F 中央支持体
G 縮径部
H 他方の圧電素子(第2の圧電素子)
I 梁状本体部の中央から他方の圧電素子の固着位置に至る区間の中央部
J 駆動力伝達面
K ベースプレート
L 駆動対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電素子を組み合わせて駆動対象もしくは駆動対象の移動方向をガイドするガイド部材に形成された駆動力伝達面に駆動力を伝達することで駆動対象に送りを掛ける圧電アクチュエータであって、
柱状形態を有する梁状本体部と、前記梁状本体部の長手方向に沿って前記梁状本体部の中央から相反する方向に相互に等しい間隔をおいて前記梁状本体部の一側面から前記長手方向と直交する向きに突出する同一形状同一寸法の2つの柱状突起と、前記梁状本体部の前記一側面と並行する他の一側面において前記梁状本体部の中央から前記長手方向と直交する向きで前記2つの柱状突起と逆方向に向けて突出する中央支持体と、前記梁状本体部と前記中央支持体との連絡部において前記梁状本体部の姿勢変化を許容すべく前記中央支持体の側に設けられた縮径部とによって一体に形成された可撓性送り部材と、
前記可撓性送り部材の中央支持体と平行して前記梁状本体部の両端部に配置され、其の先端部を前記梁状本体部に固着された第1,第2の圧電素子と、
前記第1,第2の圧電素子の基部および前記中央支持体の基部を固着したベースプレートと、
前記梁状本体部が前記駆動対象の送り方向と平行となり且つ前記2つの柱状突起が前記駆動対象の送り方向と直交するような姿勢を保持した状態で前記ベースプレートを押圧することによって前記2つの柱状突起の先端を前記駆動力伝達面に向けて付勢する予圧手段と、
時間の経過に応じて一定のパターンでサイクリックに電圧を変化させる正弦波または三角波からなる高速送り用駆動信号と、直流電圧からなる微動送り用駆動信号とを選択的に生成する駆動信号生成手段と、
前記高速送り用駆動信号と微動送り用駆動信号のうち前記駆動信号生成手段が生成すべき信号の種別を前記駆動信号生成手段に指令する生成信号指定手段と、
前記駆動信号生成手段によって生成された駆動信号を何れか一方の前記圧電素子に対して選択的に入力する送り方向切替手段とを備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記一方の圧電素子が伸長限度に達した状態にある前記柱状突起の先端を前記駆動力伝達面から離間させるためのオフセット手段を備えると共に、
前記駆動信号生成手段は、目標移動量を含む微動指令を受け、前記一方の圧電素子に印加される微動送り用駆動信号の電圧と前記直線運動の量との関係に基いて、前記一方の圧電素子の伸長限度に相当する電圧の範囲内で、前記微動指令に略比例した電圧の微動送り用駆動信号を生成するものであって、
前記微動指令が前記一方の圧電素子の伸長限度に相当する前記直線運動の量を超える場合には、前記一方の圧電素子が伸長限度に達した時点で前記オフセット手段により前記柱状突起の先端を前記駆動力伝達面から離間させ前記駆動信号生成手段の作動を停止させて前記一方の圧電素子を初期状態に復帰させ、前記オフセット手段により前記柱状突起の先端を改めて前記駆動力伝達面に当接させて、前記微動指令と前記一方の圧電素子の伸長の度合いに相当する直線運動の量との差分を新たな目標移動量として前記駆動信号生成手段を再び作動させる連続微動送り用制御手段を併設したことを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記オフセット手段は、前記ベースプレートを前記駆動力伝達面に対して接離する方向に移動させる第3の圧電素子によって構成されていることを特徴とする請求項2記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動信号生成手段が非作動となっている間だけ前記駆動対象の停止位置を保持するロック手段を併設したことを特徴とする請求項2または請求項3のうち何れか一項に記載の圧電アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−57225(P2010−57225A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217347(P2008−217347)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(592004404)中央精機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】