説明

圧電デバイスの製造方法、およびこの方法で製造した圧電デバイス

【課題】外部接続端子の形成プロセスでの圧電デバイスの特性劣化や良品率の低下をなくし、かつ外部接続端子の汎用性を実現した製造方法、およびこの方法で製造した圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス1を天井層18Aと共に封止してパッケージする前に当該素子中枢部分14Aを搭載する基板2Aに予め外部接続端子7Aとなる電極構造を設けておき、素子中枢部分14Aの形成後に天井層18Aと共に封止してパッケージする。基板の主面に再配線層を設けて、3D構造に対応させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに係り、特に、当該圧電デバイスに設ける外部接続端子を有する圧電基板の標準化を実現した圧電デバイスの製造方法、及びこの方法で製造した圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の移動通信機器に代表される種々の電子機器に使用される圧電デバイスは、SAWデュプレクサ、SAWフィルタ等として用いられる弾性表面波素子(SAWデバイスとも総称する)が一般的である。ここでは、弾性表面波素子を典型例として説明するが、本発明は他の同様の圧電デバイス、さらには絶縁性基板に機能を搭載する各種の電子部品にも適用できる。弾性表面波素子は、圧電基板の一方の面(主面、後述する実施例および特許請求の範囲では「他方の面」に相当)に一般的には櫛歯電極で構成されるIDT(inter digital transducer)を搭載し、該主面を天井層(封止層、あるいは封止板)で覆ってパッケージとしたものである。
【0003】
この種の弾性表面波素子では、その櫛歯電極部(IDT)の周囲(通常は上層)に所定の中空部を形成してその上層を前記した天井層(封止層または封止板)で圧電基板と共に封止し、パッケージ部品として需要者に供給している。
【0004】
このパッケージ部品には、その圧電基板側あるいは天井層側に実装する電子機器との接続を行うための外部接続端子が形成される。外部接続端子は、例えば特許文献1−3などに開示されているように、圧電基板あるいは天井層に櫛歯電極側(主面)に達する貫通孔を設け、この貫通孔に接続する電極柱(貫通電極柱)を形成し、この貫通電極柱の露出部分(圧電基板の主面と反対側:裏面)に外部接続電極を形成しておき、圧電基板に天井層を貼り合せて封止した後に、上記の外部接続電極に金(Au)バンプあるいは半田バンプを設けて外部回路の端子と接続している。以下では、上記の外部接続電極を外部接続端子と言う場合もある。なお、具体的には、外部接続端子と実装機器あるいはデバイスの接続端子に異方性導電膜、あるいは半田ボールなどを介在させて圧着、あるいは加熱圧着している。
【0005】
また、圧電基板の主面に再配線を設けて、CTC(Chip to Chip)、CTW(Chip to Wafer)、WTW(Wafer to Wafer)等の3D積層を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−81867号公報
【特許文献2】特開2009−225256号公報
【特許文献3】特開2010−10812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の製造方法では、複数のデバイスを同時形成するための圧電母基板(集合基板、ウェハとも称する)と天井層を貼り合せて封止してパッケージした後に外部接続端子を形成している。このような製造方法では、封止済み素子への外部接続端子形成プロセスにおけるIDT電極部等の素子中枢部分への熱負荷による特性劣化、素子構成層へのダメージ等、圧電デバイスの良品率の低下はもとより、類似の構造を持つ他種の電子部品にも転用できる外部接続端子構造を実現するという素子部品の標準化からは程遠く、汎用性の実現は難しい。
【0008】
本発明の目的は、外部接続端子の形成プロセスでの弾性表面波素子等の圧電デバイスの特性劣化や良品率の低下をなくし、かつIDTを構成要件としたものに限らず、類似の絶縁性基板を用いた類似の構造を有する他の電子素子への適用を可能として、汎用性を実現した弾性表面波素子の製造方法、およびこの方法で製造した弾性表面波素子等の圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、弾性表面波素子をパッケージに封止する以前に当該素子のIDT電極部で構成される素子中枢部分を搭載する圧電母基板(ウェハ)に予め外部接続端子となる電極構造を設けておき、素子中枢部分の形成後に天井層と共にパッケージ封止する。その後、電子機器への実装あるいは他の素子との接続のための金バンプあるいは半田バンプを前記電極に設けて実装するようにした。なお、圧電母基板の主面に再配線層を設けて、3D構造に対応させることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、製造過程におけるプロセス条件に起因する弾性表面波素子の特性劣化、あるいは良品率の低下が抑制されると共に、この製造方法で製造した弾性表面波素子を構成する外部接続端子形成用の電極(貫通電極柱)付圧電基板の構造は、類似の絶縁性基板を用いた類似の構造を有する他の電子素子への適用が可能であり、所謂、部品の汎用性を向上した標準化が容易となる。その結果、弾性表面波素子はもとより、類似の構造を有する各種電子素子の低コスト化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の弾性表面波素子の製造方法のプロセスフローの概要を説明する図である。
【図2】本発明の弾性表面波素子の製造方法の基本的なプロセスフローを説明する図1に続く図である。
【図3】本発明の弾性表面波素子の製造方法の基本的なプロセスフローを説明する図2に続く図である。
【図4】本発明の弾性表面波素子の製造方法を説明する圧電母基板の説明図である。
【図5】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図である。
【図6】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図5に続く図である。
【図7】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図6に続く図である。
【図8】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図7に続く図である。
【図9】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図8に続く図である。
【図10】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図9に続く図である。
【図11】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1のプロセスフローを説明する図10に続く図である。
【図12】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1で製造した弾性表面波素子の説明図である。
【図13】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2の要部プロセスフローを説明する図である。
【図14】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2の要部プロセスフローを説明する図13に続く図である。
【図15】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2で製造した弾性表面波素子を説明する模式断面図である。
【図16】本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2で製造した弾性表面波素子をウェハ段階での構成例を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による圧電デバイスの製造方法を弾性表面波素子の製造を例として説明する。本発明に係る弾性表面波素子の製造方法では、従来においては製造プロセスの最終段階で形成していた外部接続端子となる貫通電極柱などの電極構造を製造プロセスの初期段階で形成し、この電極を外部接続端子とする。
【0013】
図1−図3は、本発明の弾性表面波素子の製造方法のプロセスフローの概念を説明する図である。図1において、先ず、表面を洗浄した集合基板すなわち圧電母基板であるウェハの一方の面(裏面:素子の外部接続端子形成面)に感光性樹脂層(以下、ホトレジスト層、或いは単にレジストとも称する)を形成する(ステップ100、以下S−100のように表記)。ホトレジスト層は、ホトレジストシートの貼付、或いはホトレジスト溶液の塗布の何れでもよい。以下のホトレジスト形成プロセスでも同様。
【0014】
圧電母基板を貫通して一方の面(裏面)から他方の面(主面:素子の中枢部分となる櫛歯電極で構成されるIDT電極部形成面)に貫通する貫通孔の開孔パターンを有する露光マスクを介してホトレジストを露光し、現像して、レジスト開孔パターンを形成する(S−200)。
【0015】
次に、レジスト開孔パターンを介してサンドブラスト処理し、外部接続端子と接続するための貫通孔を形成する(S−300)。サンドブラスト処理では、開孔の径は裏面側で大きく、主面側で小さい。なお、本実施例では、貫通孔の形成にサンドブラスト法を採用したが、他の既知の加工法であってよい。以上が貫通孔形成工程である。
【0016】
貫通孔の形成後、ホトレジスト層を除去し、圧電母基板の主面に保護フィルムを貼付あるいは塗布し、該圧電母基板の裏面に後段工程でのメッキ層を形成するためのシード層をスパッタする(S−400)。
【0017】
シード層の上にホトレジスト層を形成し、露光マスクを介して露光し、現像して外部接続端子用のレジスト開孔パターンを形成する(S−500)。
【0018】
図2において、外部接続端子用のレジスト開孔パターンを覆って導電材のメッキを行う。このメッキには電解メッキが好適である。このとき、貫通孔の内部を満たして主面の出口に達する柱状となるようにメッキがなされる(S−600)。圧電母基板の裏面におけるレジスト開孔パターンの間にメッキされた部分は外部接続端子となる電極である。
【0019】
次に、ホトレジストを除去する。このとき、ホトレジスト層の上にあるメッキ層もホトレジスト層と共にリフトオフで除去される。続いて、圧電母基板の裏面で互いに隣接する部分に残留していたメッキ層をエッチングして除去する(S−700)。このエッチングはウエットエッチングが好適である、以上が貫通電極柱・外部接続電極形成工程である。
【0020】
次に、圧電母基板の主面にホトレジスト層を形成し、露光マスクを介して露光し、現像して、櫛歯電極の形成位置に対応した開孔で構成したレジスト開孔パターンを形成する(S−800)。
【0021】
レジスト開孔パターンの上に櫛歯電極用の金属層(アルミニウム等)を蒸着する。金属層はレジスト開孔パターンの開孔の底部すなわち圧電母基板の主面とレジストの上に形成される。この金属層の蒸着後、ホトレジストを膨潤させる剥離剤を用いてレジスト層を圧電母基板面から剥離し、リフトオフする。ホトレジスト上の金属層はホトレジスト層と共に除去されて圧電母基板の主面に蒸着された金属層のみが残り、櫛歯電極が形成される(S−900)。以上が櫛歯電極形成工程である。
【0022】
図3において、圧電母基板の主面に、上記櫛歯電極を覆って絶縁性薄膜(SiO2等)の保護膜を形成し、その上に外囲壁形成用のホトレジスト層を設け、外囲壁の配置位置に開孔パターンを持つ露光マスクを介して露光し、現像して、素子中枢部分の周囲にホトレジスト層からなる外囲壁を形成する(S−1000)。
【0023】
この外囲壁の上に蓋をするように外囲壁形成用のホトレジスト層と同様のレジストのシート(あるいは、レジストのフィルム)からなる天井層を貼り合せて封止し、各外囲壁の間の空間に櫛歯電極からなる中枢部分を有する多数の弾性表面波素子を得る。最後に、圧電母基板(ウェハ)から個別の素子に分割して圧電基板と天井層を外囲壁で一体にパッケージとした個々の弾性表面波素子とする(S−1100)。以上が封止・分離工程である。
【0024】
なお、櫛歯電極の形成後、圧電母基板の主面に櫛歯電極を保護する保護膜を形成し、ホトレジストの形成と露光マスクを用いた露光現像処理、すなわち、ホトリソグラフィー法と、金属層の蒸着、リフトオフで再配線を設けることもできる。
【0025】
以下、本発明による弾性表面波素子の製造方法の実施例につき図面を用いて説明する。なお、感光性樹脂の露光・現像で形成する樹脂のパターンを、それぞれのステップでは、貫通開孔樹脂パターン、外部端子開孔樹脂パターン、櫛歯開孔樹脂パターン等のように記載する。
【0026】
図4は、本発明の弾性表面波素子の製造方法を説明する圧電母基板の説明図である。太矢印で示す弾性表面波素子1は、その素子中枢部分(IDT部分)を圧電母基板2の上に複数個形成し、天井層で覆い、これを分割して個々の素子とする。図4において、符号1は弾性表面波素子(分割後に個々の素子となる)。符号14Aは中枢部分(IDT部分)、7Aは外部接続端子、2Aは個々の弾性表面波素子の圧電基板を示す。
【実施例1】
【0027】
図5−図11は、本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1に係るプロセスフローを説明する図である。図5−11の符号順(a)(b)・・・を参照して本実施例に係る弾性表面波素子の製造方法をプロセス順に説明する。
【0028】
図5において、(a)表面を洗浄した集合基板である圧電母基板2をウェハとして準備する。圧電母基板2は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)あるいはニオブ酸リチウム(LiNb3)等の無機材料からなる。太矢印は、分割後に弾性表面波素子となる部分を示す。(b)完成素子では裏面(搭載機器等への実装面となる)当該圧電基板の背面に第1の感光性レジスト(第1のホトレジスト)層3を形成する。この第1のホトレジスト層3は、ホトレジストシート(フィルム状のホトレジスト)を当該圧電母基板2の裏面に貼付するか、あるいはホトレジスト溶液を当該圧電母基板の裏面に塗布することで形成する。これは、以下の各プロセスでのホトレジストの形成についても同様である。本実施例では、旭化成社製のレジストシート「商品番号CX−8040」を用いた。
【0029】
圧電母基板に設ける貫通孔の開孔パターンを有する露光マスク4を介して第1のホトレジスト層3を紫外線(UV)5の照射で露光し(c)、現像してレジスト開孔パターン3Aを形成する(d)。本実施例で使用するホトレジストは露光部分が現像液に可溶となるタイプのレジスト(ポジ型ホトレジスト)である。露光部分が現像液に不溶となるタイプのホトレジスト(ネガ型ホトレジスト)を用いる場合は、露光マスクの開孔パターンは上記の露光マスクとは逆の開孔パターンを形成したものとする。以下のプロセスでも同様である。なお、現像液としては、炭酸ナトリウム溶液を用いた。
【0030】
図6において、レジスト開孔パターン3A側からサンドブラスト6による処理を施し(e)、圧電母基板2の裏面に設ける外部接続端子形成面から櫛歯電極からなる素子中枢部分を設ける主面まで貫通する貫通孔7を形成する。サンドブラストに用いる砥粒には500番を用いた。
【0031】
貫通孔7の形成後、ホトレジストパターン3Aを除去し(f)、圧電母基板2の主面に保護フィルム8を貼付する(g)。本実施例では、この保護フィルム8としてポリイミドフィルムを用いた。また、圧電母基板2の裏面にはメッキ金属との良好な接着性を確保するためのシード層9をスパッタにより形成する(h)。シード層9としては、膜厚750オングストローム(Å)のTiWをスパッタ後、同じく膜厚4000ÅでCuをスパッタした。
【0032】
図7において、シード層9をスパッタした圧電母基板2の裏面に前記第1のホトレジストと同じ材料の第2の感光性樹脂(第2のホトレジスト)層10を形成し(i)、外部接続端子用の電極パターンを有する露光マスク11を介して紫外線5で露光し、現像して、外部接続端子用のレジスト開孔パターン10Aを形成した(j)。本実施例においては、第2のホトレジスト層10もポジ型ホトレジストである。
【0033】
レジスト開孔パターン10Aを形成した面に電解メッキにより20ミクロン(μm)以上の膜厚となるようにCuを形成して外部接続用端子7Aを形成した。外部接続用端子7Aの膜厚は、実装先の端子に半田ボールを介在させて圧着する際にダメージを受けずに電気的導通を確保できる程度の厚みが必要であることから、経験的に20ミクロン以上とした。このCuメッキにNi−BメッキとPdメッキ及び金(Au)メッキをこの順で施し(k)、レジスト開孔パターン10Aを剥離除去し、その後、裏面の外部接続用端子7Aの下層を除く部分に残存するシード層9をエッチング除去した(l)。
【0034】
図8において、圧電母基板2の主面に形成してあった保護フィルム8を剥離し、貫通孔と外部接続用端子の電極を備えた圧電母基板ウェハ2を作成した(m)。圧電母基板2の主面に第3の感光性樹脂(第3のホトレジスト)層12を塗布する(n)。この第3のホトレジスト層12としては、紫外線照射部分が硬化して現像液に不溶となるポジ型のホトレジスト(例えば、ヘキスト社製の商品名「AZ5214E」)を用いた。櫛歯電極の電極位置13Aに開孔を有する第3の露光マスク13を介して第3のホトレジスト層12を紫外線5で露光する(o)。
【0035】
図9において、露光した第3のホトレジストを現像して櫛歯電極の電極形成位置のホトレジストが除去されたホトレジストパターン12Aを形成する(p)。ホトレジストパターン12Aの上から電極用の金属膜としてアルミニウム(Al)薄膜14を蒸着する(q)。
【0036】
その後、ホトレジストパターン12Aを剥離剤を用いリフトオフにより除去する(r)。このホトレジストパターン12Aの除去時、その上に蒸着されていたアルミニウム薄膜14も一緒に除去され、素子中枢部分に圧電母基板2の主面に蒸着されたアルミニウム薄膜が残り、これが櫛歯電極14Aとなる。なお、櫛歯電極14の端部には、信号入出力要の端子14Bも同時に形成される(s)。
【0037】
図10において、櫛歯電極14Aを形成した圧電母基板2の主面に保護膜15としてSiO2を塗布する(t)。保護膜15の上に第4の感光性樹脂(第4のホトレジスト)層16を形成する。外囲壁形成部分に開孔パターンを持つ露光マスク17を用いて紫外線(UV)5露光を施し、露光し(u)、現像して外囲壁16Aを形成する(v)。本実施例では、第4のホトレジスト層16として、ネガ型ホトレジスト(例えば、東京応化社の商品名「TMMR−S2000」)を用いた。
【0038】
図11において、圧電基板2の主面上を覆い、外囲壁16Aの上に樹脂シートあるいは樹脂フィルムの天井層18を乗せて封止する(w)。天井層18としては、外囲壁16Aと同系の樹脂シ−トを用いることで外囲壁16Aとの接合性が良好となる。しかし、天井層18は、IDTを搭載する中空部を確保することが重要であり、天井層18の封止工程における熱圧着で中空部の押し潰しや圧壊を回避し、リフロー工程での熱に耐える材料でなければならない。そのため本実施例では、ガラスの微小箔片、所謂ガラスフレークをフィラーとして混入した樹脂シートを天井層として用いた。樹脂材料には、耐熱かつ硬質の樹脂、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、さらにそれらの高密度化樹脂を用いることができる。
【0039】
また、樹脂に混入するフィラーは上記のガラスフレークに限るものではなく、水晶の微小フレーク、セラミックの微小フレーク、ポリカーボネートの微小フレークなど、硬質、耐熱材料を用いることも可能である。なお、フレーク形状以外の、例えばビーズ状、繊維状のフィラーを用いることも可能であるが、本発明者の試作実験ではフレーク状のフィラーが最も良好な結果が得られた。
【0040】
天井層18の材料は上記した樹脂を母材としたものに限るものではなく、ガラス板やセラミック板などの絶縁性単一シートを用いることもできる。こうして製作した圧電素子基板(ウェハ、すなわち集合基板)2をダイシングにより個別の素子に分割して複数の弾性表面波素子とする
【0041】
図12は、本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例1で製造した弾性表面波素子の説明図であり、図12(a)は全体構造を示す断面図、同図(b)は同(a)の天井層の構成を説明する模式図である。図12(a)において、個別に分割して得た弾性表面波素子1は、圧電基板2Aの主面に、素子中枢部分を構成する櫛歯電極(IDT)14Aを有し、その両端には信号入出力端子14Bを有する。圧電基板2Aの主面から裏面に至る貫通孔7にはメッキによる貫通電極柱7Bが形成されている。この貫通電極柱7Bの主面側は信号入出力端子14Bに接続し、裏面側は外部接続端子7Aに接続している。
【0042】
圧電基板2Aの主面に設けられた櫛歯電極とその信号入出力端子14Bを有する素子中枢部分を覆って保護膜15が形成されている。圧電基板2Aの主面の周囲で保護膜15の上に外囲壁16Aを介して天井層18Aが設けられて、パッケージとして封止されている。
【0043】
図12(b)に示した天井層18Aは、本実施例では母材としての高密度エポキシ樹脂180に微小ガラスフレーク181をフィラーとして混入した樹脂シートを用いた。微小ガラスフレークのサイズは、長軸方向で6μm〜150μm程度、厚みが0.1μm〜0.5μm程度とするのが好適である。母材に対するフィラーの混入比は、体積比で10%〜65%程度とするのが好適である。なお、ガラスフレークのサイズや母材に対する混合比は弾性表面波素子の素子サイズ、具体的には母材のサイズや厚み、前記中空部の容積、天井高さ等に応じて適宜に選択すべき事項である。
【0044】
このように、弾性表面波素子をパッケージに封止する以前に当該素子のIDT電極部で構成される素子中枢部分を搭載する圧電基板に予め外部接続端子となる電極構造を設けておき、素子中枢部分の形成後に天井層と共にパッケージ封止するものであるため、製造過程におけるプロセス条件に起因する弾性表面波素子の特性劣化、あるいは良品率の低下が抑制される。
【実施例2】
【0045】
図13―図14は、本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2の要部プロセスフローを説明する図である。本実施例においては、図13は前記実施例1を説明する図9のステップ(s)で櫛歯電極14Aとその信号入出力端子14Bを形成し、図10のステップ(t)で圧電母基板2の主面に保護膜15を形成するまでは実施例1と同様である。以下、図13の符号(t'),(u'),(v')―図14の符号(X)―(Z)の順に説明する。
【0046】
図13において、(t')圧電母基板2の主面に保護膜15を形成した圧電母基板2の主面に、第5のホトレジスト層19を形成する。本実施例では、このホトレジスト19としてポジ型レジストを用いる。櫛型電極の全部とその信号入出力端子の一部以外を含む大きさの開口を有する第5の露光マスク20を介してホトレジスト19を紫外線(UV)で露光する。
【0047】
次いで、ホトレジスト19の露光された部分を現像により除去し(u')、残留したホトレジストパターン19Aを250℃で1時間ベーキングして硬化させる(v')。
【0048】
図14において、硬化したホトレジストから露出した保護膜15をドライエッチングして除去する(x)。本実施例では、このドライエッチングにCF4とO2の混合ガスを用い、10分間エッチング処理した。これにより、圧電母基板(ウェハ)上で隣接する信号入出力端子の一部(ホトレジストからはみ出した部分)の保護膜15が除去される。
【0049】
硬化したホトレジストから露出した保護膜15を除去した主面にCr(クロム)とAl(アルミニウム)を順次蒸着して再配線用のCr/Al金属膜21とする(y)。その後、ホトレジストパターン19Aをリフトオフして、上層に蒸着されたCr/Al層21と共に除去する(z)。これにより、圧電母基板(ウェハ)上で隣接する信号入出力端子の一部(ホトレジストからはみ出した部分)を連結する再配線層(後述する図15における再配線層23)となる金属膜部分21が形成される。
【0050】
図15は、本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2で製造した弾性表面波素子の構造例を説明する模式断面図である。個別に分割して得た弾性表面波素子1は、圧電基板2Aの主面に櫛歯電極14Aの両端には信号入出力端子14Bを有する。この信号入出力端子14B接続した配線層を有している。この配線層(前記図14で形成した金属膜部分21A)が再配線層23である。また、圧電基板2Aの主面から裏面に至る貫通孔にはメッキによる貫通電極柱7Bが形成されている。この貫通電極柱7Bの主面側は信号入出力端子14Bに接続し、裏面側は外部接続端子7Aに接続している。
【0051】
圧電基板2Aの主面に設けられた櫛歯電極14Aと信号入出力端子14Bに接続する再配線層23の上に保護膜15が形成されている。圧電基板2Aの主面の周囲で保護膜15の上に外囲壁16Aを介して天井層18Aが設けられて、パッケージとして封止されている。
【0052】
このように、弾性表面波素子をパッケージに封止する以前に当該素子のIDT電極部および再配線層23で構成される素子中枢部分を搭載する圧電基板に予め外部接続端子となる電極構造を設けておき、素子中枢部分の形成後に天井層と共にパッケージ封止するものであるため、製造過程におけるプロセス条件に起因する弾性表面波素子の特性劣化、あるいは良品率の低下が抑制される。
【0053】
図16は、本発明の弾性表面波素子の製造方法の実施例2で製造した弾性表面波素子のウェハ段階での構成例を説明する模式断面図である。圧電母基板2の主面に形成した再配線層23と、他の圧電母基板(ウェハ)24の再配線層25に半田ボール26を介在させて圧着あるいは加熱圧着する。太矢印で示す弾性表面波素子1は、その素子中枢部分(IDT部分)を圧電母基板2の上に複数個形成し、天井層で覆い、これを分割して個々の素子とする。
【0054】
なお、圧電母基板2の主面に形成した再配線層25に応力緩和のためのバンプを設け、このバンプと他の基板ウェハ24の再配線層25の間に半田ボール26を介在させて圧着あるいは加熱圧着することもできる。このバンプ23として銅(Cu)層を用いることができる。
【0055】
上記した各実装例において、他の基板ウェハ24は本発明に係る弾性表面波素子を構成する圧電母基板、あるいは他の同様の基板ウェハ、半導体ベアチップ、その他の素子基板あるいは他の素子でよい。このような構造を採用することで、所謂3D積層などの高密度素子を容易に実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
基板に貫通する孔を設けて、外部接続端子あるいは他の基板等と電気的接続を行うためのビアホール等の孔を有する電子部品であれば、圧電デバイスに限らず、種々の電子デバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・圧電デバイス
2・・・集合基板である圧電母基板(ウェハ)
2A・・・圧電基板
3・・・第1の感光性レジスト(第1のホトレジスト)
3A・・・レジストパターン
4・・・第1の露光マスク
5・・・紫外線(UV)
6・・・砥粒
7・・・貫通孔
7A・・・外部接続端子
7B・・・貫通電極柱
8・・・保護フィルム
9・・・シード層
10・・・第2の感光性レジスト(第2のホトレジスト)
10A・・・レジストパターン
11・・・第2の露光マスク
12・・・第3の感光性レジスト(第3のホトレジスト)
12A・・・レジストパターン
13・・・第3の露光マスク
14・・・アルミニウム蒸着膜
14A・・・櫛歯電極(IDT)
15・・・保護膜
16・・・第4の感光性レジスト(第4のホトレジスト)
16A・・・外囲壁
17・・・第4の露光マスク
18・・・天井層
19・・・第5の感光性レジスト(第5のホトレジスト)
20・・・第5の露光マスク
21・・・金属膜
21A・・・再配線層となる金属膜部分
23・・・再配線層
26・・・半田ボール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極柱・外部接続電極形成工程と、櫛歯電極形成工程と、封止・分離工程とを含む圧電デバイスの製造方法において、
前記貫通電極柱・外部接続電極形成工程は、
集合基板一方の面に感光性樹脂層を形成し、露光マスクを介して前記感光性樹脂層を露光し現像して、貫通開孔樹脂パターンを形成するステップと、
前記貫通開孔樹脂パターンの開孔部分を加工し、前記集合基板を貫通して前記一方の面から他方の面に達する貫通孔を形成するステップと、
前記貫通孔の形成後、前記貫通開孔樹脂パターンの樹脂層を除去するステップと、
前記集合基板の前記他方の面に保護フィルムを設け、前記集合基板の前記一方の面に後段工程でのメッキ層を形成するためのシード層をスパッタするステップと、
前記シード層の上に感光性樹脂層を形成し、露光マスクを介して前記感光性樹脂層露光し現像して外部接続端子用の外部端子開孔樹脂パターンを形成するステップと、
前記外部接続端子用の外部端子開孔樹脂パターンを覆い、前記貫通孔の内部を満たして主面の出口に達する柱状となるように導電材のメッキを行うことで外部接続端子となる電極を形成するステップと、
前記外部端子開孔樹脂パターンを、その上にあるメッキ層と共に除去するステップと、
前記集合基板の前記一方の面において互いに隣接する部分に残留していたメッキ層を除去するステップとからなり、
前記櫛歯電極形成工程は、
前記集合基板の前記他方の面に感光性樹脂層を形成し、露光マスクを介して露光し現像して、圧電デバイスの中枢部分を構成する櫛歯電極の形成位置に対応した開孔を有する櫛歯開孔樹脂パターンを形成するステップと、
前記櫛歯開孔樹脂パターンの上に前記櫛歯電極用金属層を蒸着するステップと、
前記櫛歯電極用金属層の蒸着後、前記櫛歯開孔樹脂パターンを、その上の金属層と共に除去するステップとからなり、
前記封止・分離工程は、
前記集合基板の前記他方の面に、前記櫛歯電極からなる中枢部分を覆って絶縁性薄膜の保護膜を形成した後、その上に感応性樹脂層を設け、外囲壁の配置位置に開孔パターンを持つ露光マスクを介して露光し現像して、素子中枢部分の周囲に樹脂層からなる外囲壁を形成するステップと、
前記外囲壁の上に蓋をするように樹脂からなる天井層を貼り合せて封止し、各外囲壁の間の空間に櫛歯電極からなる中枢部分を有する多数の圧電デバイスを形成し、該集合基板から個別の圧電デバイスに分割して圧電基板と天井層を外囲壁で一体にパッケージとした複数の圧電デバイスとするステップと、
からなることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記櫛歯電極形成工程での櫛歯電極形成後、該櫛歯電極を覆って絶縁性の保護膜を形成し、配線層の開孔樹脂パターンを有する露光マスクを介して露光し、現像して前記櫛歯部分と当該櫛歯電極の端子部分に架る保護膜に開孔を有する配線開孔樹脂パターン形成するステップと、
開孔部分の前記保護膜をエッチングで除去した後、配線層を形成するための金属膜を蒸着するステップと、
前記櫛歯電極の端子部分に架る配線層を残して、前記配線開孔樹脂パターンの樹脂とその上の金属膜を除去して配線層とするステップと、
その後に、前記外囲壁を形成し、該外囲壁の上に蓋をするように樹脂からなる天井層を貼り合せて封止し、各外囲壁の間の空間に櫛歯電極からなる中枢部分を有する多数の圧電デバイスを形成し、該集合基板から個別の圧電デバイスに分割して圧電基板と天井層を外囲壁で一体にパッケージとした複数の圧電デバイスとするステップと、
からなることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記櫛歯電極の端子部分に架る配線層を残して、前記配線開孔樹脂パターンの樹脂とその上の金属膜を除去して配線層とした後、該配線層を再配線層として該配線層に半田ボールを介して天井層または他の集合基板の再配線層と接続するプロセスを含むことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記配線層は、クロム(Cr)とアルミニウム(Al)の蒸着膜であることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記シード層がTiWであることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記貫通孔の加工がサンドブラスト法であることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記貫通電極柱・外部接続電極形成工程でのメッキは電解メッキであり、前記エッチングはウエットエッチングであることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2において、
前記櫛歯電極形成工程での前記櫛歯電極用の金属層はアルミニウムの蒸着膜であることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2において、
前記櫛歯電極形成工程での前記櫛歯電極用の金属層は、前記開孔樹脂パターンの開孔の底部と該開孔樹脂パターンの上に形成されることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2において、
前記封止・分離工程での前記保護膜は、前記櫛歯電極からなる中枢部分を覆って形成されることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項2において、
前記保護膜は、SiO2であることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項1又は2において、
前記封止・分離工程での前記天井層は、前記外囲壁形成用の感光性樹脂層と同様の樹脂のシートあるいはフィルムであることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記天井層として、ガラスフレークをフィラーとして混入した樹脂のシートあるいはフィルムを用いることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項14】
圧電基板と天井層、および前記圧電基板に有する中枢部分の周囲に設けられて前記天井層の間に介挿された外囲壁とを有する圧電デバイスにおいて、
前記圧電基板の一方の面に該圧電基板の他方の面に至る貫通孔を備え、
前記貫通孔を通って前記一方の面と前記他方の面を接続する貫通電極柱が形成されており、
前記圧電基板の他方の面に前記中枢部分を構成する櫛歯電極と該櫛歯電極の両端に接続した信号入出力端子を備え、
前記貫通電極柱の前記一方の面に外部接続端子が接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項15】
圧電基板と天井層、および前記圧電基板に有する中枢部分の周囲に設けられて前記天井層の間に介挿された外囲壁とを有する圧電デバイスにおいて、
前記圧電基板の一方の面に該圧電基板の他方の面に至る貫通孔を備え、
前記貫通孔を通って前記一方の面と前記他方の面を接続する貫通電極柱が形成されており、
前記圧電基板の他方の面に前記中枢部分を構成する櫛歯電極と該櫛歯電極の両端に接続した信号入出力端子および再配線用の配線層を備え、
前記貫通電極柱の前記一方の面に外部接続端子が接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項16】
請求項14又は15において、
前記天井層は、ガラスフレークをフィラーとして混入した樹脂のシートあるいはフィルムであることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−217136(P2012−217136A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285386(P2011−285386)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】