説明

圧電体薄膜素子及びその製造方法、インクジェットヘッド、並びにインクジェット式記録装置

【課題】圧電性能とともに耐電圧性能に優れた結晶構造の圧電体薄膜を用いて高性能で信頼性の高い圧電体薄膜素子を得ること。
【解決手段】圧電体薄膜層14は、成膜工程を例えば2回に分け、途中に混入異物除去の洗浄工程を組み込んで形成した。大部分の領域が所定膜厚の形成領域16となるが、一部の領域(異物が除去された領域)が所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17となる形で成膜される。所定膜厚の形成領域16では柱状結晶が膜厚方向に連続的に形成され、優れた圧電特性が得られる。所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17では、結晶粒界が不連続領域19を挟んで不連続となり、結晶粒径の大きい領域では粒界密度が低減される。この結晶粒界の不連続構造によってリークパスが途切れるので、耐電圧特性が向上する。トータルの領域として優れた圧電特性と耐電圧特性とを具備する結晶構造の圧電体薄膜14による圧電体薄膜素子10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換機能を呈する圧電体薄膜素子及びその製造方法、インクジェットヘッド、並びにインクジェット式記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機械変換機能を呈する圧電体薄膜素子は、一般に、圧電体薄膜をその厚み方向の両側を電極でそれぞれ挟んだ積層体構造をしている。以降では、厚み方向を上下方向と考えて、下側に設ける電極を下部電極と称し、上側に設ける電極を上部電極と称することとする。
【0003】
圧電体材料の代表的なものは、ペロブスカイト型結晶構造の酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)(以降、「PZT」という)や、このPZTにマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)などを添加したものなどがある。特に、ペロブスカイト型結晶構造の正方晶系PZTの場合には、<001>軸方向(C軸方向)に大きな圧電変位が得られ、菱面体晶系PZTの場合には、<111>軸方向に大きな圧電変位が得られる。
【0004】
多くの圧電体材料は、結晶粒子の集合体からなる多結晶体である。多結晶体では、各結晶軸がでたらめな方向を向いている。したがって、自発分極Psもでたらめに配列しているが、圧電体薄膜素子では、それらのベクトルの総和が電界と平行方向になるように作られているので、上記した大きな圧電変位が得られる。そして、この圧電体薄膜素子の1つの利用形態である圧電アクチュエータは、上記積層体に振動板を設けたものであるが、両電極間に電圧を印加すると、その印加電圧の大きさに比例した機械的変位が得られる。
【0005】
ところで、圧電体薄膜は、スパッタ法等の物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)、ゾルゲル法等のスピンコート法等で形成されている。これらの製法では従来の焼結体と比較して、圧電体薄膜の膜厚を精度良く、ばらつきが少なく形成できる。また、圧電体薄膜素子の製造では、フォトリソグラフィーやドライエッチング等による微細加工技術が適用できるので、その微細加工技術を適用して素子の小型化、高密度化が図られている。さらに、圧電体薄膜素子の製造では、最近、種結晶をアルカリ加熱水中で成長させる水熱合成法と呼ばれる技術も提案されている。
【0006】
圧電体薄膜の結晶構造は、本体部分である複数の結晶粒と、この結晶粒間に存在する結晶粒界とで構成されるが、圧電体薄膜は、下部電極側から形成する場合、下部電極の影響を少なからず受けて成長する。このとき、圧電体薄膜の本体部分である結晶粒は、柱状に成長するのが一般的である。柱状結晶における結晶粒界は、一般的に圧電体薄膜の下部電極側から上部電極側にかけて、すなわち圧電体薄膜の膜厚方向に連続的に形成される。特に、スパッタ法等の物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)で連続的に圧電体薄膜を形成した場合にはその傾向が顕著に表れる。
【0007】
ここで、圧電体薄膜素子では、本体部分である複数の結晶粒とこの結晶粒間に存在する結晶粒界との出来方を改良して圧電特性を高めるための種々の試みが提案されているが、この圧電特性の向上とともに重要な課題は、圧電体薄膜の薄膜化に伴う耐電圧特性の劣化対策である。
【0008】
圧電体薄膜での耐電圧特性の優劣の程度を決める要因には、結晶粒内の例えば酸素欠損等の欠陥による影響と、結晶粒径や結晶粒界の状態による影響とが考えられているが、後者については幾つかの知見と改良案とが提示されている。
【0009】
すなわち、(特許文献1〜3)では、圧電体薄膜の膜厚方向に連続的に形成される柱状結晶の結晶粒界は、上部電極と下部電極との間のリーク電流の通路(リークパス)になる可能性があるので、このリークパスを減らす構成や、結晶粒界を介して流れるリーク電流を減らす構成が提案されている。また、(非特許文献1)では、結晶粒をできるだけ大きくする等によって、圧電体薄膜の粒界密度を小さくするか、あるいは圧電体薄膜を単結晶化するなどの試みが行われている。
【0010】
なお、(特許文献4)では、成膜した圧電体薄膜の圧電定数を測定する技術が開示されている。また、(特許文献5)では、コンピューターの記憶装置等として用いられるディスク装置のディスクに対する情報の記録および再生に使用されるヘッドの支持機構に使用される薄膜圧電体アクチュエータが開示されている。
【特許文献1】特開2000−307163号公報
【特許文献2】特開2001−237468号公報
【特許文献3】特開平10−217458号公報
【特許文献4】特開2002−225285号公報
【特許文献5】特開2001−332041号公報
【非特許文献1】JAE−HYUN JOO、YOU−JIN LEE、SEUNG−KI JOO、Feroelecttrics,1997,vol.196,pp.1−4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、圧電体薄膜の耐電圧特性を改善するために、前述したような結晶構成を採った場合は、圧電性能の劣化が生じたり、圧電体薄膜素子の駆動時にクラックの発生や割れ等の破壊が生じたりすることが起こるという問題がある。
【0012】
圧電性能と耐電圧性能との相関については、未だ明確なことは解っていないが、圧電特性に関しては、柱状結晶が連続的に同一結晶軸で成長する方が一般的には好ましい。また結晶粒の大きさは一般的に形成温度を高くすると大きくなるが、PZTのようなPbを含む材料に関しては、高温での形成ではPbの欠損が起こり、圧電特性が大きく劣化する。
【0013】
また、膜厚方向に結晶成長の不連続な部分が多く存在することや膜の中に結合の弱い部分が存在することは、圧電体薄膜素子の駆動時に生じる機械的な振動に対してクラック発生の誘因となり、圧電体薄膜素子の割れや破壊といった現象につながる。それを防止するために圧電体薄膜を単結晶化することは、基板の制約等があり、実際問題としてかなり困難である。
【0014】
一方、圧電体薄膜の製造方法においても耐電圧性能を下げる場合が起こるという問題がある。すなわち、圧電体薄膜の形成中に圧電体として機能する成分以外の異物が混入した場合には、所定膜厚に掛かる電界強度よりも大きな電界が掛かる箇所が存在することになるので、その箇所で耐電圧性能が劣化する。
【0015】
具体的には、異物として、特に導電性材料の異物が混入した場合や、一度混入した異物が脱落した状態で上部電極を形成した場合には、所定膜厚よりも薄い領域が形成されるので、電圧印加時に容易に破壊につながる。
【0016】
薄膜形成時に製造過程の管理だけで異物の混入を防止することには限界があるので、圧電体薄膜の全領域において均一な膜を作成することは困難であり、どうしても耐電圧の低い領域ができてしまう。圧電体薄膜素子においては、圧電体薄膜の耐電圧性能を考慮して膜厚や印加電圧を設計するが、上記のような耐電圧性能が低下した領域が存在すると、著しく信頼性を損なうことになる。したがって、圧電体薄膜の製造方法においても耐電圧性能の低い領域を無くすための方策が求められている。
【0017】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、圧電性能とともに耐電圧性能に優れた結晶構造の圧電体薄膜を用いて、高性能で信頼性の高い圧電体薄膜素子を得ることを目的とする。
【0018】
また、本発明は、圧電性能を損なうことなく、耐電圧性能に優れた結晶構造の圧電体薄膜を有した圧電体薄膜素子の製造方法を得ることを目的とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明の圧電体薄膜素子を用いたインクジェットヘッド、および前記インクジェットヘッドを印字手段として装備したインクジェットヘッド式記録装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した目的を達成するために、本発明は、所定膜厚を有する圧電体薄膜層と、前記圧電体薄膜層の膜厚方向両側の層面それぞれに成膜した電極層とを備えている圧電体薄膜素子において、前記圧電体薄膜層は、大部分の領域が前記所定膜厚で形成され、一部の領域が前記所定膜厚よりも薄い膜厚で形成され、前記所定膜厚の形成領域は、結晶粒が膜厚方向に沿って一端から他端に渡って柱状に連続的に成長した柱状結晶で構成され、前記所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、結晶粒が膜厚方向の一端から他端に渡って連続的に柱状に成長するのではなく、途中に不連続領域が存在する構成であることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、所定膜厚が形成される大部分の領域では、優れた圧電特性が得られる。そして、所定膜厚よりも薄い膜厚で形成され一部の領域では、不連続領域の存在によってリークパスに途切れが生ずるので、耐電圧特性が向上する。したがって、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、駆動電圧を印加したとき実効電界が高く、絶縁破壊の起こり易い部分であるが、耐電圧特性が所定膜厚の形成領域と同等になるので、トータルの領域として優れた圧電特性と耐電圧特性とを具備する結晶構造の圧電体薄膜による圧電体薄膜素子が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、圧電性能とともに耐電圧性能に優れた結晶構造の圧電体薄膜を用いるので、高性能で信頼性の高い圧電体薄膜素子が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明にかかる圧電体薄膜素子及びその製造方法、インクジェットヘッド、並びにインクジェット式記録装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による圧電体薄膜素子の構成を示す断面図である。図1に示す圧電体薄膜素子10は、基板11の上面に、密着層12、下部電極層13、圧電体薄膜層14及び上部電極層15がこの順序で成膜された積層体構造をしている。
【0025】
基板11は、例えば、厚みが0.3mmで、径が4インチの円盤状をしている。基板11としては、シリコン基板、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板のいずれも同様に用いることができる。
【0026】
密着層12は、チタン、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれらの化合物が用いられる。膜厚は、0.005μm〜1μmの範囲内である。ここでは、膜厚0.02μmのチタン層としている。なお、密着層12は、基板11と下部電極層13との密着性を高める必要がある場合に設けられるもので、必須の構成ではない。
【0027】
下部電極層13は、白金(Pt)、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属又はそれらの化合物が用いられる。膜厚は、0.05μm〜2μmの範囲内である。ここでは、厚さが0.22μmのPt層としている。
【0028】
圧電体薄膜層14は、菱面体晶系又は正方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有するPZTを主成分とする圧電材料からなる。すなわち、圧電体薄膜層14の構成材料には、PZTにLa,Sr、Nb、Al等の添加物を含有したPMNやPZNも含まれている。厚みは、0.5μm〜10μmの範囲内である。ここでは、例えば3.5μmである。
【0029】
具体的には、この圧電体薄膜層14は、<111>面に、又は、<001>面に優先配向している。PZTの組成は、正方晶と菱面体晶との境界(モルフォトロピック相境界)付近のZr/Ti組成は、30/70〜70/30の範囲内である。ここでは、Zr/Ti=53/47である。
【0030】
上部電極層15は、導電性材料が用いられ、膜厚は、0.1μm〜0.5μmの範囲内である。ここでは、膜厚0.2μmのPt層としている。
【0031】
ここで、圧電体薄膜層14は、上部電極層15を積層形成する前に、成膜工程を例えば2回に分け、途中に混入異物除去の洗浄工程を組み込んで形成したので、大部分の領域が所定膜厚の形成領域16となるが、一部の領域(異物が除去された領域)が所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17となる形で成膜されていている。
【0032】
図1では、理解を容易にするため、外周縁部が所定膜厚の形成領域16となり、その内側が所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17となっていて、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17を誇張して示してあるが、SEMによる観察結果によれば、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17は、第1回目の成膜時での異物混入状況にもよるが、非常に限られた領域に形成されている。
【0033】
図2〜図7は、SEMによる観察結果を示す。図2は、図1に示す(イ)部の断面SEM観察像を示すSEM写真である。図3は、図1に示す(ロ)部の断面SEM観察像を示すSEM写真である。図4は、図1に示す(ハ)部の断面SEM観察像を示すSEM写真である。図5は、図1に示す(ニ)部から観察した境界部表面のSEM観察像を示すSEM写真であり、(ホ)部は、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17側にあり、(ヘ)部は、所定膜厚の形成領域16側にある。図6は、図5に示す(ホ)部を拡大して示す表面SEM観察像を示すSEM写真である。図7は、図5に示す(ヘ)部を拡大して示す表面SEM観察像を示すSEM写真である。
【0034】
以下に、実施例1として、圧電体薄膜層14を途中に混入異物除去の洗浄工程を組み込んだ2回の成膜工程によって形成した図1に示す圧電体薄膜素子の製造方法を示し、実施例2として、圧電体薄膜層14を1回の成膜工程によって形成した圧電体薄膜素子の製造方法を示し、図1に示す本実施の形態による圧電体薄膜素子の特性優位性を示す。SEMによる観察結果(図2〜図7)から得られる内容は、実施例1にて説明する。
【0035】
(実施例1)
図1に示す本実施の形態による圧電体薄膜素子は、基板11上に、密着層12、下部電極層13、圧電体薄膜層14および上部電極層15をスパッタ法によって順次成膜するが、上部電極層15を成膜する前に、圧電体薄膜層14は、2回に分けて成膜し、第1回目にはある膜厚に成膜し、真空槽から成膜済みの基板を取り出して異物除去を行うための洗浄工程を実施し、第2回目の成膜で最終的な所定膜厚まで成膜する。ここでは、2回に分けているので、例えば、圧電体薄膜層14は、最終の所定膜厚を3μmとすると、それを2等分割し、第1回目と第2回目とで共に1.5μmの成膜を行った。勿論、第1回目と第2回目とで同じ厚さである必要はない。
【0036】
密着層12は、チタン(Ti)ターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中において基板11を400℃に加熱しながら100Wの高周波電力を1分間印加して厚さ0.02μmに成膜した。
【0037】
下部電極層13は、白金(Pt)ターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において基板11を400℃に加熱しながら200Wの高周波電力を12分間印加して厚さ0.22μmに成膜した。
【0038】
さて、圧電体薄膜層14は、スパッタ装置を用いて作製した。ターゲットには、化学量論組成からPb量の多いPZT(Zr/Ti=53/47で、Pbが20モル%過剰)の焼結体ターゲットを用いた。
【0039】
第1回目の成膜では、真空度0.3Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=18:2)において、基板11を温度580℃に加熱しながら250Wの高周波電力を90分間印加して厚さ1.5μmに成膜した。この状態の圧電体薄膜を圧電体薄膜層14aと称することにする。
【0040】
その後、真空槽から成膜済み基板11を取り出し圧電体薄膜層14aの洗浄を行った。まず、成膜済み基板11をアルカリ洗剤の入った洗浄槽に10分浸漬した後、純水のシャワー洗浄装置に入れて表面の洗剤、付着物を洗い落とした。その後、流水をかけながら回転するブラシによるこすり洗いを行い第1回目の成膜時に混入した異物の除去を行った。こすり洗いを行った後は、純水の流水によってリンスを行い、スピンドライヤーによって成膜済み基板11の乾燥処理を行った。このように、物理的な洗浄方法を取り込むと、耐電圧特性を劣化させる異物の除去をより確実に実施することができる。
【0041】
乾燥までの洗浄工程を終了すると、成膜済み基板11を再びスパッタ装置にセットし、圧電体薄膜層14aに対して第2回目の成膜を行った。第2回目の成膜では、圧電体薄膜層14aを成膜したターゲットを用いて、真空度0.3Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=15:5)において、成膜済み基板11を温度620℃に加熱しながら200Wの高周波電力を95分間印加して厚さ1.5μmを積層し、膜厚3μmの最終的な圧電体薄膜層14を得た。このように、第2回目の成膜条件を第1回目と異ならせると、より広範囲に圧電体薄膜の結晶性や膜質を制御することができる。
【0042】
その後、圧電体薄膜層14の上面に、膜厚0.2μmの上部電極層15を、Ptターゲットを用いて、室温において真空度1Paのアルゴンガス中で200Wの高周波電力を10分間印加して形成するが、上部電極層15を形成する前に、圧電体薄膜層14をSEMによって観察し、また圧電体薄膜層14の結晶構造、結晶配向性をX線回折およびsin2φ法によって調べた。その結果、得られた圧電体薄膜層14は、菱面体晶系ペロブスカイト型結晶構造を有しており、<111>配向をしていた。また、SEMによる観察結果(図2〜図7)から次のようなことが判明した。
【0043】
図2に示されるように、圧電体薄膜層14の断面部(イ)を走査して観察すると、ほぼ全ての領域が所定膜厚の形成領域16であり、そこでの結晶粒は、膜厚方向に柱状に成長した柱状構造を有し、層面に略垂直方向に連続して成長している。結晶粒界も同様に一方の電極と他方の電極との間に連続的に形成されていている。このことは、所定膜厚の形成領域16は、優れた圧電特性を有していることを示している。柱状結晶の粒子径は、図2や図7に示されるように、その多くが0.02μm〜0.3μmの範囲内に入っている。
【0044】
一部に観察される所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17は、第1回目の成膜中に異物が混入し、その後の洗浄工程によって異物が除去された領域に第2回目の成膜を行って続けて堆積された部分に相当するが、成膜時の異物発生状況にもよるが、非常に限られた領域に形成されている。
【0045】
図3に示されるように、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17では、膜厚方向に成長する柱状結晶に不連続領域19が存在し、結晶粒界の成長も不連続領域19を境に成長方向の両側で異なっていることが解る。図1では誇張して示したが、下部電極層13から不連続領域19まで成長した柱状結晶の結晶粒径と、不連続領域19から上部電極層15まで成長した柱状結晶の結晶粒径とは異なり、後者の結晶粒径の方が大きくなっている。
【0046】
具体的には、図6に示されるように、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17の上部電極層15側から観察した結晶粒径は、その多くが0.06μm〜0.8μmの範囲内に入っており、所定膜厚の形成領域16での結晶粒径よりも大きくなっている。そして、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17における上部電極層15側である不連続領域19の上部側領域は、径の大きい結晶粒によって構成されている。
【0047】
このことは、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17では、不連続領域19の上部側で粒界密度が低減されるので、本来的には厚膜方向に連続的に形成されるリークパスとなる結晶粒界が、不連続領域19で途切れることを示している。つまり、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17は、リーク電流の発生を抑制できる構造になっているのであり、耐電圧特性を向上させることができる。
【0048】
図4に示されるように、所定膜厚の形成領域16と所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17との境界付近では、所定膜厚の形成領域16側での柱状結晶は、膜厚方向に連続的に成長しているが、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17側の柱状結晶は、成長方向が膜厚方向に対して斜めになっており、成長の仕方も乱れた状態になっている。また、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17では、境界近傍部の結晶粒の成長方向は膜厚方向に対して斜めになっているが、境界部から離れるに従って成長方向が膜厚方向に平行する向きに変化している。
【0049】
このことは、膜厚が異なった領域の境界では、結晶粒の結合が強くなっていて、駆動時の機械振動によるクラックや割れの発生が起こらず、駆動信頼性に優れていることを示している。
【0050】
なお、圧電体薄膜層14の成膜法としては、スパッタ法を用いた場合を示したが、その他の真空蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンプレーティング法、MBE法、MOCVD法、プラズマCVD法等の気相成長法を用いても同様に、圧電特性と耐電圧特性とに優れた圧電体薄膜を形成することができる。また、ゾルゲル法や最近着目されている水熱合成法なども用いることができる。
【0051】
次に、耐電圧特性を評価するために、上記のように形成した圧電体薄膜層14上に上部電極層15を積層した圧電体薄膜素子において、上部電極層15にフォトレジストをスピンコーターによって塗布し、露光、現像を行い、所定のパターンを形成した。その後、ドライエッチング装置によって上部電極層15をパターニングして、400個の圧電体薄膜素子を形成した。
【0052】
各圧電体薄膜素子は、1.5mm×0.2mmの個別パターンで形成されているが、400個の圧電体薄膜素子の全てに、上下の電極間にDC400Vの電圧を200時間連続して印加して耐電圧特性を評価した。その結果、リーク電流は400個の圧電体薄膜素子の全てで、5×10-7(A)以下であり、測定開始前と同じ値であった。
【0053】
また、上部電極層15の個別パターンの外観を詳細に観察すると、絶縁破壊やクラック等の異常部は観察されず、駆動前の外観と同じであった。
【0054】
このことは、実施例1での圧電体薄膜素子は、所定膜厚の形成領域16では、欠陥の発生がなく、本来の耐電圧特性を維持しているので、絶縁破壊やクラック等の発生がなかったことを示している。また、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域17では、耐電圧特性が上っている一方、圧電特性が所定膜厚の形成領域よりも下がっているので、所定膜厚の形成領域16と同じ電圧が加わっても、つまり、実効電界が大きくなっても、所定膜厚の形成領域との間での機械的な変位量の差が小さいので、絶縁破壊やクラックが生じないと考えられる。このように、圧電体薄膜層14の駆動部全域に渡って高い耐電圧特性と駆動信頼性が得られていることが解る。
【0055】
次に、上部電極層15を積層する前の圧電体薄膜層14をダイシングによって15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、それぞれに0.2μm厚の上部電極層15をスパッタ法によって形成し、圧電定数d31の測定を行った。その結果,カンチレバーの圧電定数d31は、平均152pC/Nであり,ばらつきはσ=3.4%であった。なお、圧電定数d31測定は、例えば(特許文献4)に示される方法を用いた。
【0056】
(実施例2)
実施例2では、圧電体薄膜素子は、実施例1と同様に、基板11上に、密着層12、下部電極層13、圧電体薄膜層14および上部電極層15をスパッタ法によって順次成膜するが、本実施例2では、圧電体薄膜層14を1回の成膜で所定膜厚まで形成し、成膜途中の洗浄工程を行うことなく形成した。
【0057】
圧電体薄膜層14の形成前までは実施例1と同様に形成し、圧電体薄膜層14は実施例1での第1回目の成膜条件を用いて180分間連続で形成した。圧電体薄膜層14の膜厚は、3.0μmであり、菱面体晶系ペロブスカイト型結晶構造を有しており、<111>に優先配向していた。
【0058】
SEM観察の結果、圧電体薄膜層14は、全ての領域で柱状構造を有しており、膜厚方向に連続的に成長していた。また、所定膜厚よりも薄い膜厚の領域も実施例1と同様に存在するが、その領域での柱状結晶の成長は、実施例1とは異なり連続であり、結晶粒の成長は、所定膜厚の形成領域と同一であった。さらに、一部領域では成膜中に混入した異物が埋め込まれていて、所定膜厚よりも厚い膜厚の領域となっていた。
【0059】
次に、実施例1と同様に、上部電極層15を形成した後に、400個の圧電体薄膜素子を形成した。各圧電体薄膜素子は、同様に1.5mm×0.2mmの個別パターンで形成されている。この400個の圧電体薄膜素子の全てに、上下の電極間にDC400Vの電圧を200時間連続して印加して耐電圧特性を評価した。
【0060】
その結果、本実施例2での圧電体薄膜素子では、電圧印加後直ぐにリーク電流が発生し始め、200時間後には26個の圧電体薄膜素子で1×10-5(A)以上のリーク電流が観察され、測定開始前と比較してリーク電流が増えていた。
【0061】
また、上部電極層15の個別パターンの外観を詳細に観察すると、リーク電流が増加した圧電体薄膜素子では、黒化した絶縁破壊部やクラック等の外観異常が観察され、圧電体薄膜素子に故障が生じていた。傾向として初期にリーク電流が発生した圧電体薄膜素子は絶縁破壊が多く観察され、駆動時間が長くなるに伴ってクラックや割れが発生したものが殆どを占めていた。
【0062】
このことは、実施例2での圧電体薄膜素子は、所定膜厚の形成領域では、実施例1と同様に欠陥の発生がなく、本来の耐電圧特性を維持しているので、絶縁破壊やクラック等の発生がなかったことを示している。しかし、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域においては、実施例1とは異なり所定膜厚の形成領域と同様の連続して成長した柱状結晶であるので、同じ印加電圧に対して電界強度が増加した分、耐電圧特性が劣化し絶縁破壊を引き起こしたことを示している。特に駆動初期においてはこのモードが多くを占めている。
【0063】
つまり、実施例2での圧電体薄膜素子では、連続的に駆動を行うと、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、結晶構造が膜厚方向において同じであり、膜の圧電特性は変わらないが、実効電界が大きくなるので、所定膜厚の形成領域との間に機械的な変位量の差が出る結果、境界部で応力の発生等によってクラックが生じる。そのため、連続駆動時間が長いと、このモードが殆どを占めるようになると考えられる。
【0064】
また、実施例2での圧電体薄膜素子では、異物等の噛み込みがあって所定膜厚よりも厚い膜厚となっている領域では、異物によって膜厚方向に空隙が生じている。そのため、異物が導電性材料の場合は実効膜厚が薄くなるので、膜厚が薄い領域と同様にクラックや絶縁破壊等が起こると考えられる。
【0065】
そして、上部電極層15を積層する前の圧電体薄膜層14をダイシングによって15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、それぞれに0.2μm厚の上部電極層15をスパッタ法によって形成し、圧電定数d31の測定を行った。その結果,カンチレバーの圧電定数d31は、平均156pC/Nであり,ばらつきはσ=3.6%であった。
【0066】
このように、実施例2での圧電体薄膜素子では、配向は同じであり、圧電特性もほぼ同様であるが、耐電圧特性を劣化させる異物の混入を防止できず耐電圧特性が劣化した領域が存在するので、圧電体薄膜層の駆動部全域に渡って高い耐電圧特性を得ることができない。また、長期の連続駆動では、クラックや割れ等が発生するので、駆動信頼性が確保できない。
【0067】
それに対して、実施例1にて説明した圧電体薄膜素子の製造方法、つまり、本実施の形態1による圧電体薄膜素子の製造方法では、圧電体薄膜層を、少なくと2回に分けた成膜工程の各成膜工程の間に混入異物の除去工程を組み込む形で所定膜厚に形成するので、耐電圧特性を劣化させる異物の混入を防止できる。
【0068】
加えて、圧電体薄膜層には、大部分の所定膜厚が形成領域の他に、一部領域であるが、異物が除去された領域に、その所定膜厚よりも薄い膜s厚の領域が形成される。この薄い膜厚の形成領域は、結晶粒界が不連続領域を挟んで不連続となり、結晶粒径の大きい領域では粒界密度が低減されるという結晶粒界の不連続構造を有する。つまり、薄い膜厚の形成領域では、結晶粒界の不連続構造によってリークパスが途切れるので、耐電圧特性が向上する。そして、大部分の所定膜厚が形成された領域では、良好な圧電特性が維持される。
【0069】
すなわち、本実施の形態1による圧電体薄膜素子は、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、駆動電圧を印加したときに実効電界が高く、絶縁破壊が起こりやすい箇所であるが、上記の結晶粒界の不連続構造によって電圧印加時の結晶粒界を通じて流れる電流リークパスの形成を防止できるので、耐電圧特性が向上する。
【0070】
このように、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、所定膜厚の形成領域と同様の耐電圧特性を備えているので、トータルの領域として優れた耐電圧特性と圧電特性とを具備した圧電体薄膜素子が得られる。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、実施の形態1による圧電体薄膜素子をインク吐出の駆動源となる振動子として用いるインクジェットヘッドの構成例を示す。端的には、このインクジェットヘッドは、実施の形態1による圧電体薄膜素子のいずれか一方の電極層側の面に設けた振動板層と、前記振動板層の前記圧電体薄膜素子とは反対側の面に接合され、インクを収容する圧力室を有する圧力室部材とを備え、前記圧電体薄膜素子の圧電効果によって前記振動板層を層厚方向に変位させて前記圧力室のインクを吐出させるように構成される。以下、具体的な構成例(図8〜図10)とその製造手順(図11〜図16)とを示す。
【0072】
まず、図8〜図10を参照して構成を説明する。なお、図8は、本実施の形態2によるインクジェットヘッドの全体構成を示す外観図である。図9は、図8に示すインクジェットヘッドの要部の構成を示す斜視図である。図10は、図8に示すインクジェットヘッドの要部のうち圧力室部材及びアクチュエータ部の構成を示す断面図である。
【0073】
図8、図9に示すように、インクジェットヘッド100は、主な要素として、圧力室部材Aとアクチュエータ部Bとインク流路部材Cとノズル板Dとを備えている。なお、図8では、制御手段としてのICチップEも示されている。これらの要素は、図示例で言えば上下方向の下側から上側に向かって、ノズル板D、インク流路部材C、圧力室部材A、アクチュエータ部Bと積層配置され、アクチュエータ部Bの上部にICチップEが配置される。
【0074】
図8、図9において、圧力室部材Aには、その厚み方向(上下方向)に貫通する多数の圧力室開口部101が千鳥状に形成されている。個別の圧力室102は、この多数の圧力室開口部101のそれぞれが、その上端開口部を共通に被覆するように配置されるアクチュエータ部Bと、その下端開口部を共通に被覆するように配置されるインク流路部材Cとによってその上下端が閉塞されることで構成される。
【0075】
アクチュエータ部Bの上端面には、多数の個別電極103が圧力室102と1対1の関係で千鳥状に配置され、各個別電極103に対してICチップEからボンディングワイヤBWを通して電圧をそれぞれ供給するようになっている。個別電極103は、ここでは、第2の電極層103と称することもある。
【0076】
インク流路部材Cは、インク供給方向に並ぶ圧力室102間で共用する共通液室105と、この共通液室105のインクを圧力室102に供給するための供給口106と、圧力室102内のインクを吐出させるためのインク流路107とを有している。ノズル板Dには、インク流路107に連通するノズル孔108が形成されている。
【0077】
次に、図10では、図8に示したインク供給方向とは直交する方向でのアクチュエータ部Bの断面構成が示され、アクチュエータ部Bの直下に上記の直交方向に並ぶ4個の圧力室102を持つ圧力室部材Aが参照的に示されている。4個の圧力室102は、区画壁102aで仕切られている。
【0078】
図10に示すように、アクチュエータ部Bは、各圧力室102に共通の天井面を構成する部材として、区画壁102aの上端面に接着剤114にて接着される中間層(区画壁102aの側壁面と面一に形成される)113と、その上に積層される振動層111と、その上に積層される共通電極112とを備えている。
【0079】
そして、アクチュエータ部Bは、圧力室102毎に、共通電極112の上面における各圧力室102の直上位置に設けられる圧電体薄膜層110と、その上に積層される上記した個別電極103とを備えている。共通電極112は、ここでは、第1の電極層112と称することもある。
【0080】
つまり、アクチュエータ部Bは、圧力室102毎の駆動手段として、第1の電極層112、圧電体薄膜層110及び第2の電極層103が順に積層される構成の圧電体薄膜素子に加えて、振動層111が共通電極である第1の電極層112側に設けられている。
【0081】
ここで、第1の電極層112、圧電体薄膜層110及び第2の電極層103は、実施の形態1にて説明した下部電極層13、圧電体薄膜層14及び上部電極層15のそれぞれと対応し、各構成材料も、構成元素の含有量が異なるものもあるが、下部電極層13、圧電体薄膜層14及び上部電極層15のそれぞれと同様である。
【0082】
つまり、圧電体薄膜層110は、圧電体薄膜層14と同様に、第2の電極層103を積層形成する前に、成膜工程を例えば2回に分け、途中に混入異物除去の洗浄工程を入れて形成されているので、その成膜構造は、大部分の領域が所定膜厚の形成領域であるが、その中に所定膜厚よりも薄い膜厚の小領域が点在等の形で混在する構造であり、両者間では結晶粒の成長が異なり、所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域では結晶粒界が不連続構造をしている。
【0083】
アクチュエータ部Bでは、この構成によれば、1つの圧力室102に対する圧電体薄膜層110の圧電効果によって振動層111が層厚方向に変位し振動することで、各圧力室102の容積を個別に変化させることができる。
【0084】
なお、圧力室部材Aとアクチュエータ部Bとは、接着剤114によって接着されているが、各中間層113は、この接着剤114を用いた接着時に、その一部の接着剤114が区画壁102aの外方にはみ出した場合でも、この接着剤114が振動層111に付着しないで振動層111が所期通りの変位及び振動を起こすように、区画壁102aの上端面である圧力室102の上面と振動層111の下面との距離を拡げる役割を有している。したがって、中間層113を設けずに、区画壁102aの上端面に直接振動層111を支持させる構成を採る場合もある。
【0085】
次に、図11〜図16を参照して、図8に示すICチップEを除く要部、つまり、図9に示す圧力室部材A、アクチュエータ部B、インク流路部材C及びノズル板Dからなるインクジェットヘッドの製造方法について説明する。
【0086】
図11は、積層工程、圧力室用開口部の形成工程及び接着剤の付着工程を説明する断面図である。図11(a)に示すように、Si基板120上に、順次、密着層121、第2の電極層103、圧電体薄膜層110、第1の電極層112、振動層111、中間層113をスパッタリング法によって成膜して積層する。
【0087】
なお、中間層113は、最終的には区画壁102aの縦壁になる。また、密着層121は、実施の形態1にて説明した密着層12と同様であって、Si基板120と第2の電極層103との密着性を高めるために両者間に介在させてある。つまり、密着層121は、必須のものではない。後述するように、密着層121は、Si基板120と同様に除去される。
【0088】
ここで、Si基板120は、成膜用の基板、つまり、1つの圧電体薄膜素子を作製する単位となる基板である。このSi基板120は、実施の形態1にて説明した基板11と同様であって、シリコン(Si)基板や、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板のいずれで構成してもよい。そして、形状は、実施の形態1にて示したように適宜厚さの円盤状でもよいが、ここでは、Si基板120には、例えば厚さ18mmの4角形状に切り落としたSi基板を用いた。
【0089】
そして、密着層121、第1の電極層112、圧電体薄膜層110、および第2の電極層103は、上記した実施例1と同様の方法で作製し、圧電体薄膜層110は、実施例1にて説明した内容の不連続構造を有する構成になっている。ここでは、追加要素である振動層111及び中間層113の材料と作製方法とを説明する。
【0090】
即ち、振動層111は、クロム(Cr)、ニッケル、アルミニウム、タンタル、タングステン、シリコン等の単体又はこれらの酸化物若しくは窒化物(例えば二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化シリコン)等のいずれか一つ、例えばCrターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中においてSi基板120を室温に維持して200Wの高周波電力を6時間印加して膜厚3μmに成膜した。振動層111の膜厚は、1μm〜10μmの範囲内であればよい。
【0091】
また、中間層113は、TiやCr等の導電性金属、例えばTiターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中においてSi基板120を室温に維持して200Wの高周波電力を5時間印加して膜厚5μmに成膜した。中間層113の膜厚は、3μm〜10μmの範囲内であればよい。
【0092】
次に、図11(b)、(c)及び図16に示すように圧力室部材Aを形成する。なお、図16は、製造過程で成膜された基板(成膜用基板)と圧力室部材で用いる基板(圧力室部材用基板)との関係を説明する平面図である。図16に示すように、圧力室部材Aで使用するSi基板130は、必要数のSi基板120が搭載できる程度に大きいサイズのSiウェハ基板である。具体的には、Si基板130は、径が2インチ〜10インチの範囲内の適宜直径(ここでは4インチとした)の円盤状をしている。
【0093】
圧力室部材Aは、このSi基板130を使用して形成される。具体的には、まず、Si基板130に対して複数の圧力室開口部101をパターンニングする。このパターンニングは、図11(b)から解るように、4つの圧力室開口部101を1組とし、各組の間に区画壁102bが介在するように行われる。この各組を区画する区画壁102bの幅厚は、各組内の圧力室開口部101を区画する区画壁102aの幅の約2倍に設定される。
【0094】
その後、上記パターンニングされたSi基板130をケミカルエッチング又はドライエッチング等で加工して各組で4個の圧力室開口部101を形成することで、圧力室部材Aを得る。
【0095】
その後は、図11(c)に示すように、圧力室部材AとSi基板130とを接着剤にて接着する。この接着剤の形成は電着による。図11(c)において、まず、圧力室部材A側の接着面として圧力室の区画壁102a,102bの上面に接着剤114を電着によって付着させる。具体的には、図示してないが、区画壁102a,102bの上面に、下地電極膜として、光が透過する程度に薄い数百ÅのNi薄膜をスパッタ法によって形成し、その後、当該Ni薄膜上に、パターニングされた接着剤114を形成する。
【0096】
ここで、電着液としては、アクリル樹脂系水分散液に0〜50重量部の純水を加え、良く攪拌混合した溶液を使用する。また、Ni薄膜の膜厚を光が透過するほど薄く設定するのは、Si基板130に接着樹脂が完全に付着したことを容易に視認できるようにするためである。電着条件は、実験によると、液温約25℃、直流電圧30V、通電時間60秒が好適である。この条件下で約3μm〜10μmのアクリル樹脂を、圧力室部材用Si基板130のNi薄膜上に電着形成する。
【0097】
次に、図12は、成膜後の基板(成膜用基板)と圧力室部材との接着工程及び縦壁の形成工程を説明する断面図である。図12(a)に示すように、上記のように積層された成膜用Si基板120の所定数と圧力室部材A(つまりSi基板130)とを上記のように電着された接着剤114を用いて接着する。この接着は、Si基板120に成膜された中間層113の端面を基板側接着面として行う。
【0098】
図16に示す例では、Si基板120は18mm角の矩形状であるのに対し、Si基板130の盤面は、4インチサイズという大きな円形状をしているので、14個の成膜用Si基板120が圧力室部材Aで使用する1つのSi基板130に貼り付けられている。
【0099】
この貼り付けは、図12(a)に示すように、各Si基板120の中心が圧力室部材Aの区画壁102bの中心に位置するように位置決めした状態で行われる。貼り付け後、圧力室部材AをSi基板120側に押圧、密着させて、両者の接着を液密性高くする。さらに、上記接着したSi基板120及び圧力室部材Aを加熱炉において徐々に昇温加熱して接着剤114を完全に硬化させる。
【0100】
次いで、図12(b)に示すように、プラズマ処理を行って接着剤114のうち、圧力室開口部101内にはみ出した断片を除去する。また、圧力室部材Aの各区画壁102a,102bをマスクとして中間層113をエッチングし、各区画壁102a,102bの縦壁に連続するような所定形状に仕上げる。
【0101】
なお、図12(a)では、成膜後のSi基板120と圧力室部材Aとを接着したが、圧力室開口部101を形成しない段階の圧力室部材用Si基板130を成膜後のSi基板120と接着してもよい。
【0102】
次に、図13は、成膜後の成膜用基板及び密着層の除去工程及び第1の電極層の個別化工程)を説明する断面図である。図13(a)に示すように、図12(b)とした後に、成膜後の成膜用Si基板120及び密着層121をエッチングによって除去する。その後は、図13(b)に示すように、圧力室部材A上に位置する第1の電極層103について、フォトリソグラフィー技術を用いてエッチングして、各圧力室102に個別化する。
【0103】
次に、図14は、圧電体薄膜層の個別化工程及び圧力室部材用基板の切断工程を説明する断面図である。図14(a)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて圧電体薄膜層110をエッチングして第2の電極層103と同様の形状に個別化する。これらエッチングでは、第2の電極層103及び圧電体薄膜層110が、圧力室102の各々の上方に位置し、かつ第2の電極層103及び圧電体薄膜層110の幅方向の中心が対応する圧力室102の幅方向の中心に対し高精度に一致するように形成される。
【0104】
このように第2の電極層103及び圧電体薄膜層110を圧力室102毎に個別化した後、図14(b)に示すように、圧力室部材用基板(Si基板130)を各区画壁102bの部分で切断し、4つの圧力室102を持つ圧力室部材Aとその上面に固定されたアクチュエータ部Bとの組(図10)の複数組(図11の例では4組)が完成する。
【0105】
次に、図15は、インク流路部材及びノズル板の生成工程、インク流路部材とノズル板との接着工程、圧力室部材とインク流路部材との接着工程及び完成したインクジェットヘッドを説明する断面図である。
【0106】
その後、図15(a)に示すように、インク流路部材Cに共通液室105、供給口106及びインク流路107を形成するとともに、ノズル板Dにノズル孔108を形成する。次いで、図15(b)に示すように、インク流路部材Cとノズル板Dとを接着剤109を用いて接着する。
【0107】
その後、図15(c)に示すように、圧力室部材Aの下端面又はインク流路部材Cの上端面に接着剤(図示せず)を転写し、圧力室部材Aとインク流路部材Cとのアライメント調整を行ってこの両者を上記接着剤によって接着する。以上によって、図15(d)に示すように、下から上に、ノズル板D、インク流路部材C、圧力室部材A、アクチュエータ部Bと一体的に積層されたインクジェットヘッドが完成する。
【0108】
以上のようにして作製したインクジェットヘッドは、実施の形態1における実施例1にて説明した成膜工程を少なくとも2回に分け、途中に異物除去工程を挿入する方法で所定膜厚に形成した圧電体薄膜層を有する圧電体薄膜素子を用いているので、インクの吐出不良を発生することなく、長期間の耐久性能に優れたものになることが容易に理解できる。
【0109】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、実施の形態2によるインクジェットヘッドを用いたインクジェット式記録装置の構成例を示す。端的には、このインクジェット式記録装置は、実施の形態1における実施例1にて説明した成膜工程を少なくとも2回に分け、途中に異物除去工程を挿入する方法で所定膜厚に形成した圧電体薄膜層を有する圧電体薄膜素子を用いる実施の形態2によるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とを備え、前記相対移動手段にて前記インクジェットヘッドが記録媒体に対して相対移動しているときに、前記インクジェットヘッドにおいて圧力室に連通するように設けたノズル孔から前記圧力室のインクを記録媒体に吐出させて記録を行うように構成される。以下、具体的な構成例(図17)を示す。
【0110】
図17は、本発明の実施の形態3によるインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図である。図17に示すインクジェット記録装置200は、実施の形態2によるインクジェットヘッド201を備えている。このインクジェットヘッド201において圧力室(実施の形態2における圧力室102)に連通するように設けたノズル孔(実施の形態2におけるノズル孔108)から当該圧力室内のインクを記録用紙等の記録媒体202に吐出させて記録を行うように構成されている。
【0111】
インクジェットヘッド201は、主走査方向Xに延びるキャリッジ軸203に設けられたキャリッジ204に搭載され、このキャリッジ204がキャリッジ軸203に沿って往復動するのに応じて主走査方向Xに往復動するように構成されている。つまり、キャリッジ204は、インクジェットヘッド201と記録媒体202とを主走査方向Xに相対移動させる相対移動手段を構成している。
【0112】
また、このインクジェット式記録装置200は、記録媒体202をインクジェットヘッド201の主走査方向X(幅方向)と略垂直方向の副走査方向Yに移動させる複数のローラ205を備えている。つまり、複数のローラ205は、インクジェットヘッド201と記録媒体202とを副走査方向Yに相対移動させる相対移動手段を構成している。なお、図17中、Zは上下方向である。
【0113】
そして、インクジェットヘッド201がキャリッジ204によって主走査方向Xに移動しているときにインクジェットヘッド201のノズル孔からインクを記録媒体202に吐出させ、この一走査の記録が終了すると、上記ローラ205によって記録媒体202を所定量移動させて次の一走査の記録を行うように、上記相対移動手段が制御される。
【0114】
このように、実施の形態3によるインクジェット式記録装置は、実施の形態1における実施例1にて説明した成膜工程を少なくとも2回に分け、途中に異物除去工程を挿入する方法で所定膜厚に形成した圧電体薄膜層を有する圧電体薄膜素子を用いる実施の形態2によるインクジェットヘッドを備えるので、良好な印字性能及び耐久性を有することができる。
【0115】
なお、この明細書では、実施の形態1による圧電体薄膜素子の好適な適用例として、インクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置への適用例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薄膜コンデンサ、不揮発性メモリ素子の電荷蓄積キャパシタ、各種アクチュエータ、赤外センサー、超音波センサー、圧力センサー、角速度サンセー、加速度センサー、流量センサー、ショックセンサー、圧電トランス、圧電点火素子、圧電スピーカー、圧電マイクロフォン、圧電フィルタ、圧電ピックアップ、音叉発振子、遅延線等にも適用可能である。特に、例えば(特許文献5)に開示されるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上のように、本発明にかかる圧電体薄膜素子は、長期間に渡って電圧を印加して駆動しても絶縁性を低下させずに高い信頼性を得るのに有用であり、特に、インクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置の耐久性能を向上させるのに好適である。
【0117】
また、以上のように、本発明にかかる圧電体薄膜素子の製造方法は、圧電性能を損なうことなく、耐電圧性能に優れた圧電体薄膜の結晶構造を有した圧電体薄膜素子の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態1による圧電体薄膜素子の構成を示す断面図
【図2】図1に示す(イ)部の断面SEM観察像を示すSEM写真を示す図
【図3】図1に示す(ロ)部の断面SEM観察像を示すSEM写真を示す図
【図4】図1に示す(ハ)部の断面SEM観察像を示すSEM写真を示す図
【図5】図1に示す(ニ)部から観察した境界部表面のSEM観察像を示すSEM写真であり、(ホ)部は所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域側にあり、(ヘ)部は所定膜厚の形成領域側にある写真を示す図
【図6】図5に示す(ホ)部を拡大して示す表面SEM観察像を示すSEM写真を示す図
【図7】図5に示す(ヘ)部を拡大して示す表面SEM観察像を示すSEM写真を示す図
【図8】本発明の実施の形態2によるインクジェットヘッドの構成を示す外観図
【図9】図8に示すインクジェットヘッドの要部の構成を示す斜視図
【図10】図8に示すインクジェットヘッドの要部のうち圧力室部材及びアクチュエータ部の構成を示す断面図
【図11】図8に示すインクジェットヘッドの製造手順(積層工程、圧力室用開口部の形成工程及び接着剤の付着工程)を説明する断面図
【図12】図8に示すインクジェットヘッドの製造手順(成膜後の基板(成膜用基板)と圧力用部材との接着工程及び縦壁の形成化工程)を説明する断面図
【図13】図8に示すインクジェットヘッドの製造手順(成膜用基板及び密着層の除去工程、及び第1の電極層の個別化工程)を説明する断面図
【図14】図8に示すインクジェットヘッドの製造手順(圧電体薄膜層の個別化工程及び圧力室部材用基板の切断工程)を説明する断面図
【図15】図8に示すインクジェットヘッドの製造手順(インク流路部材及びノズル板の生成工程、インク流路部材とノズル板との接着工程、圧力室部材とインク流路部材との接着工程及び完成したインクジェットヘッド)を説明する断面図
【図16】図11に示す製造過程で成膜された基板(成膜用基板)と圧力室部材で用いる基板(圧力室部材用基板)との関係を説明する平面図
【図17】本発明の実施の形態3によるインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図
【符号の説明】
【0119】
10 圧電体薄膜素子
11 基板
12 密着層
13 下部電極層
14 圧電体薄膜層
15 上部電極層
16 所定膜厚の形成領域
17 所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域
18 結晶粒界
19 不連続領域
100 インクジェットヘッド
101 圧力室開口部
102 圧力室
102a,102b 区画壁
103 個別電極(第2の電極層)
105 共通液室
106 供給口
107 インク流路
108 ノズル孔
109 接着剤
110 圧電体薄膜層
111 振動層
112 共通電極(第1の電極層)
113 中間層(縦壁)
114 接着剤
120 基板(成膜用)
121 密着層
130 基板(圧力室部材用)
200 インクジェット式記録装置
201 インクジェットヘッド
202 記録媒体
203 キャリッジ軸
204 キャリッジ(X方向での相対移動手段)
205 ローラ(Y方向での相対移動手段)
A 圧力室部材
B アクチュエータ部
C インク流路部材
D ノズル板
E ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定膜厚を有する圧電体薄膜層と、前記圧電体薄膜層の膜厚方向両側の層面それぞれに成膜した電極層とを備えている圧電体薄膜素子において、
前記圧電体薄膜層は、
大部分の領域が前記所定膜厚で形成され、一部の領域が前記所定膜厚よりも薄い膜厚で形成され、
前記所定膜厚の形成領域は、結晶粒が膜厚方向に沿って一端から他端に渡って柱状に連続的に成長した柱状結晶で構成され、前記所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、結晶粒が膜厚方向の一端から他端に渡って連続的に柱状に成長するのではなく、途中に不連続領域が存在する構成である、
ことを特徴とする圧電体薄膜素子。
【請求項2】
前記所定膜厚の形成領域では、前記柱状結晶における結晶粒界が、一方の前記電極層の層面側から略垂直に他方の前記電極層に向かって成長していることを特徴とする請求項1に記載の圧電体薄膜素子。
【請求項3】
前記所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域において、最初の前記不連続領域に至るまでの粒径は、前記所定膜厚の形成領域での粒径と略同様の大きさであり、以降の各不連続領域の前後での粒径は、前記所定膜厚の形成領域での粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の圧電体薄膜素子。
【請求項4】
前記所定膜厚よりも薄い膜厚の形成領域は、前記所定膜厚の形成領域との境界近傍では柱状結晶の成長方向が膜厚方向から外れた斜め方向に向いているが、前記境界近傍から離れるに従って柱状結晶の成長方向が膜厚方向に平行する向きに変化していく構造であることを特徴とする請求項1に記載の圧電体薄膜素子。
【請求項5】
前記圧電体薄膜層は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンプレーティング法、MBE法、MOCVD法、プラズマCVD法等の気相成長法を用いて成膜されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電体薄膜素子。
【請求項6】
所定膜厚を有する圧電体薄膜層と、前記圧電体薄膜層の膜厚方向両側の層面それぞれに成膜した電極層とを備えている圧電体薄膜素子の製造方法において、
前記圧電体薄膜層を少なくとも2回に分けた成膜工程によって前記所定膜厚に形成するとともに、各成膜工程の間において、前の成膜工程での成膜中に混入した異物の除去工程を実施することを特徴とする圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項7】
前記異物の除去工程には、物理的な洗浄工程が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも2回に分けた成膜工程での成膜条件は、1回目とそれ以降とで異なっていることを特徴とする請求項6に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも2回に分けた成膜工程では、スパッタ法、真空蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンプレーティング法、MBE法、MOCVD法、プラズマCVD法等の気相成長法を実施することを特徴とする請求項6に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の圧電体薄膜素子と、
前記圧電体薄膜素子のいずれか一方の電極層側の面に設けられた振動板層と、
前記振動板層の前記圧電体薄膜素子とは反対側の面に接合され、前記圧電体薄膜素子の圧電効果による前記振動板層の層厚方向への変位に応じてインク吐出を行う圧力室と、
を備えていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段と、
前記相対移動手段によってインクジェットヘッドが記録媒体に対して相対移動しているときに、前記インクジェットヘッドにおいて圧力室に連通するように設けたノズル孔から前記圧力室のインクを記録媒体に吐出させて記録を行うように前記インクジェットヘッドが備える請求項1に記載の圧電体薄膜素子を駆動する手段と、
を備えていることを特徴とするインクジェット式記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−187092(P2008−187092A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20854(P2007−20854)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】