説明

圧電振動子

【課題】圧電振動素子を挟む容器体に硬脆材のガラスを使用しているので、外部から応力が加わった場合、仮にその応力が微小であっても、それら容器体に挟まれた圧電振動素板が歪んでしまい、圧電振動素子の振動特性に悪影響を及ぼす虞がある。
【解決手段】圧電振動素子を間に挟む形態で第1の容器体と第2の容器体が組み合わされており、且つ第1の凹部及び第2の凹部により形成された内部空間が気密となるよう、第1の容器体、第2の容器体及び圧電振動素子を相互に接合してなる圧電振動子において、上記第1の容器体及び第2の容器体を構成するガラス構造体内に、絶縁性のウィスカーが含有されている圧電振動子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年では、移動体通信機器等の機器類の著しい小型化に伴い、これら機器に用いられる圧電振動子等の電子部品についても更なる小型化が求められている。現在では、2.5mm×2.0mmの外形サイズの圧電振動子が主流になっており、それ以下のサイズの圧電振動子も各種開発されている。この圧電振動子内に搭載される圧電振動素子は、圧電素板の表裏主面上に、圧電素板を所望の振動モードで励振させる励振用電極と、圧電振動素子を収納する絶縁性容器に形成される各種電極パッドとの接続をとるための引出電極とを形成して構成されている。圧電振動素子形状として小型化に有利な正方又は矩形の平板形状が主流となってきた。
【0002】
図3は、従来技術の一例として、各種電極を形成した圧電振動素子の外周部をガラスの絶縁性容器体で挟み固着した形態で圧電振動素子の振動領域を気密封止した圧電振動子の幅方向の断面図である。即ち、圧電振動子30は、圧電振動素子31の上下にそれぞれ容器体32及び33が貼り合わされており、貼り合わされた容器体32及び33及び圧電振動素子の厚み方向の側面には、2つ容器体主面上にまで至る外部接続用電極端子34が形成されている。圧電振動素子31の表裏両主面には励振用電極35が形成されており、容器体には圧電振動素子の共振振動を妨げないように、圧電振動素子に対向する面に凹部36及び37が形成されている。
【0003】
前述のような圧電振動子については、以下のような先行技術文献に開示されている。
【特許文献1】特開2003−142748号公報
【特許文献2】特開2001−244775号公報
【0004】
尚、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような形態の圧電振動子では、圧電振動素子を挟む容器体に硬脆材のガラスを使用しているので、外部から応力が加わった場合、仮にその応力が微小であっても、それら容器体に挟まれた圧電振動素板が歪んでしまい、圧電振動素子の振動特性に悪影響を及ぼす虞がある。又、落下衝撃等の瞬間的な外部応力が容器体に加わった場合、ガラスなどの硬脆材のみで形成した容器体では、容器体にカケやヒビ等欠損を生じやすく、最悪の場合内部空間の気密を破壊してしまい、圧電振動素子の振動特性を不良にしてしまう可能性かある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、平板矩形状の圧電素板の表裏両主面の概略中央にそれぞれ励振用電極と、及び各々の励振用電極より圧電素板の対向する2辺縁部の一方の角部に向かって、各々の励振用電極と同じ主面上に引き出される引出電極と、圧電素板の対向する2辺縁部の一方の角部に、この引出電極と導通する容器体接続用電極とを有する圧電振動素子と、
この圧電振動素子と対向する主面に、上記励振用電極が開口部に位置する形態の第1の凹部が形成され、且つ圧電振動素子と同じ輪郭形状のガラスを主形成物とする第1の容器体と、
上記圧電振動素子と対向する一方の主面に、上記励振用電極が開口部に位置する形態の第2の凹部が形成され、且つ他方の主面上にグランド電極端子を含む外部接続用電極端子が形成され、この外部接続用電極端子のうちの所定の端子が、圧電振動素子に形成された容器体接続用電極と電気的に接続する、圧電振動素子と同じ輪郭形状のガラスを主形成物とする第2の容器体とが、
圧電振動素子を間に挟む形態で第1の容器体と第2の容器体が組み合わされており、且つ第1の凹部及び第2の凹部により形成された内部空間が気密となるよう、第1の容器体、第2の容器体及び圧電振動素子を相互に接合してなる圧電振動子において、
上記第1の容器体及び第2の容器体を構成するガラス構造体内に、絶縁性のウィスカーが含有されていることを特徴とする圧電振動子である。
【0007】
又、上記絶縁性ウィスカーがホウ酸アルミニウムウィスカーであることを特徴とする前段落記載の圧電振動子でもある。
【発明の効果】
【0008】
上記手段を施した本発明の圧電振動子より、圧電振動子を構成するガラスの容器体に絶縁性ウィスカーを、特にホウ酸アルミニウムウィスカーを含有させているので、容器体の剛性を、ガラスのみで構成する場合に比べ強化することができ、外部から応力が加わった場合であっても、それら容器体に挟まれた圧電振動素板を歪ませることが著しく小さく、圧電振動素子の振動特性に悪影響を及ぼすことがない。又、落下衝撃等の瞬間的な外部応力が容器体に加わった場合にも、容器体にカケやヒビ等欠損が生じることを防止でき、圧電振動素子の振動特性を良好のまま維持可能である。
【0009】
このような作用により本発明は、耐応力及び耐衝撃性が優れ、且つ周波数特性が良好な圧電振動子を提供できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明における圧電振動子の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における圧電振動子の実施形態を、圧電振動子の一形態である水晶振動子で例示した概略分解斜視図である。図2は、図1記載の水晶振動子を組み立てた後、同図記載の仮想切断線A1−A2で切断した場合の概略断面図である。尚、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。又、各図では、説明を明りょうにするため構造体の一部を図示せず、また寸法も一部誇張して図示している。特に各部分の厚み寸法は誇張して図示している。
【0011】
即ち、図1及び図2において、矩形薄板状の外形形状の水晶素板11の両主面上は、水晶素板11のほぼ中央に略矩形の励振用電極12が両主面で対向するように蒸着法或いはスパッタリング法により形成されており、又、この表裏各々の主面の励振用電極12から、主面毎に異なる水晶素板の短辺方向へ延設した引出電極13が形成され、更に各々の引出電極13が延設した水晶素板11の短辺の一方の角縁部には、各々の引出電極13と電気的に接続した容器体接続用電極14が形成されている水晶振動素子10が用意されている。
【0012】
尚、両主面に形成した各引出電極13に電気的に接続した各々の容器体接続用電極14は、水晶振動素子10における後述する第2の容器体に対向する側の主面上に少なくとも形成されおり、後述する第1の容器体に対向する側に形成した励振用電極12及び引出電極13とは、水晶素板11内を貫通する導通スルーホール15などの導通手段により、電気的接続が確保されている。又、この水晶振動素子10を構成する水晶素板11は、人工水晶体より所望のカットアングルで切り出し外形加工されたものであり、例えば、所謂ATカットアングルの水晶素板で厚みすべり基本波振動モードで300MHz近辺の振動を得る場合では、水晶振動素子10を構成する水晶素板11の厚み寸法は約5.5μmにまで加工される。
【0013】
又、この水晶振動素子10と対向する主面に、水晶振動素子10と組み合わせた場合に励振用電極12が開口部に位置する形態の第1の凹部17が形成され、且つ水晶振動素子10と同じ輪郭形状のガラスを主形成物とする第1の容器体18が用意されている。この第1の容器体18を構成するガラス構造体内には、絶縁性のホウ酸アルミニウムウィスカーが含有されている。このように第1の容器体18を構成するガラス構造体内にホウ酸アルミニウムウィスカーを含有させることにより、ガラス単体の容器体に比べ、その剛性を強化することが可能となる。
【0014】
更に、上記水晶振動素子10と対向する一方の主面に、水晶振動素子10と組み合わせた場合に励振用電極12が開口部に位置する形態の第2の凹部20が形成され、且つ他方の主面上にグランド電極端子を含む外部接続用電極端子21が形成され、この外部接続用電極端子21のうちの所定の端子が、水晶振動素子10に形成された容器体接続用電極14と各々電気的に接続する、水晶振動素子10と同じ輪郭形状のガラスを主形成物とする第2の容器体22が用意されている。この第2の容器体22を構成するガラス構造体内にも、第1の容器体18と同様に絶縁性のホウ酸アルミニウムウィスカーが含有されている。このように第2の容器体を構成するガラス構造体内にホウ酸アルミニウムウィスカーを含有させることにより、ガラス単体の容器体に比べ、その剛性を強化することが可能となる。尚、上述した外部接続用電極端子21と水晶振動素子10の容器体接続用電極14との電気的接続には、第2の容器体22内に形成された導通スルーホール23により成されている。
【0015】
このような形態の水晶振動素子10、第1の容器体18及び第2の容器体22が、第1の容器体18の第1の凹部17開口部及び第2の容器体22の第2の凹部20開口部を水晶振動素子10側に向けた構成で、水晶振動素子10を間に挟むような形態で、且つ第2の容器体22に形成した導通スルーホール23が圧電振動素子の容器体接続用電極14と電気的に接続する位置で組み合わされ、第1の容器体18における第1の凹部17を囲う側壁部頂面、及び第2の容器体22における第2の凹部20を囲う側壁部頂面と、水晶振動素子10の表裏主面とは直接接合され、水晶振動子1を形成している。
【0016】
尚、この接合により、第1の凹部17及び第2の凹部20と水晶振動素子10により形成された、内部に励振用電極12及び引出電極13の一部を内包した内部空間が気密に形成される。又、第2の容器体22を水晶振動素子10に接合したとき、水晶振動素子10の励振用電極11と、第2の容器体22の外部接続用電極端子21のうちの所定の電極端子とが、第2の容器体22内部に形成した導通スルーホール23により電気的に接続している。
【0017】
上述したような形態の水晶振動子1を形成することにより、絶縁性ウィスカーを含有したことにより剛性が強化された第1の容器体18及び第2の容器体22により圧電振動素子10を挟む形態のため、水晶振動子外部から応力が加わった場合であっても、それら容器体に挟まれた水晶振動素子10を歪ませることが著しく小さく、水晶振動素子10の振動特性に悪影響を及ぼすことがない。又、落下衝撃等の瞬間的な外部応力が容器体に加わった場合にも、容器体にカケやヒビ等欠損が生じることを防止でき、水晶振動素子10の振動特性を良好のまま維持可能である。
【0018】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、上記実施例では、圧電素板の材料として水晶を用いた水晶振動子を例示したが、本発明は実施例開示の材質に限定されるものではなく、他にタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム又は圧電セラミックスなどを使用した場合でも本発明は有効である。又、圧電素板の材料として水晶を使用した場合、その水晶素板の形成方法としては、上記記載の研削研磨加工の他に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜形成した水晶素板でも良い。更に、絶縁性ウィスカーについても、上述したホウ酸アルミニウムウィスカーに限定するものではなく、本発明と同様の作用効果を奏するのであれば、他の材質の絶縁性ウィスカーでも構わない。
【0019】
更に、上記実施例では、水晶振動子を構成する容器体の主材料がガラスであるものを開示したが、上述した実施形態と同等の形態(絶縁性ウィスカーの含有)が可能であり、且つ外部からの応力を緩和し、内部の振動素子の振動特性を何ら阻害しない物質であれば、上述したガラスに限定するものではない。例えば、水晶振動素子10を形成する材料と同じ水晶材(更に同じカットアングルで形成されている)であることにより、水晶振動素子10と容器体の熱膨張率の違いによる加熱時に固着接合部分に生じる熱ストレスの発生が抑制でき、そのストレスによる水晶振動子の諸特性の悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明における圧電振動子の一実施形態を、圧電振動子の一形態である水晶振動子で例示した概略分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に図示した水晶振動子を組み立て、同図記載の仮想切断線A1−A2で切断した場合の概略断面図である。
【図3】図3は、従来の圧電振動子の一実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・圧電振動子(水晶振動子)
10・・・圧電振動素子(水晶振動素子)
11・・・圧電素板(水晶素板)
12・・・励振用電極
13・・・引出電極
14・・・容器体接続用電極
15,23・・・導通スルーホール
17・・・第1の凹部
18・・・第1の容器体
20・・・第2の凹部
21・・・外部接続用電極端子
22・・・第2の容器体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板矩形状の圧電素板の表裏両主面の概略中央にそれぞれ励振用電極と、及び各々の該励振用電極より該圧電素板の対向する2辺縁部の一方の角部に向かって、各々の該励振用電極と同じ主面上に引き出される引出電極と、該圧電素板の対向する2辺縁部の一方の角部に、該引出電極と導通する容器体接続用電極とを有する圧電振動素子と、
該圧電振動素子と対向する主面に、該励振用電極が開口部に位置する形態の第1の凹部が形成され、且つ該圧電振動素子と同じ輪郭形状のガラスを主形成物とする第1の容器体と、
該圧電振動素子と対向する一方の主面に、該励振用電極が開口部に位置する形態の第2の凹部が形成され、且つ他方の主面上にグランド電極端子を含む外部接続用電極端子が形成され、該外部接続用電極端子のうちの所定の端子が、該圧電振動素子に形成された該容器体接続用電極と電気的に接続する、該圧電振動素子と同じ輪郭形状のガラスを主形成物とする第2の容器体とが、
該圧電振動素子を間に挟む形態で該第1の容器体と該第2の容器体が組み合わされており、且つ該第1の凹部及び該第2の凹部により形成された内部空間が気密となるよう、該第1の容器体、該第2の容器体及び該圧電振動素子を相互に接合してなる圧電振動子において、
該第1の容器体及び該第2の容器体を構成するガラス構造体内に、絶縁性のウィスカーが含有されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
該絶縁性ウィスカーがホウ酸アルミニウムウィスカーであることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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