説明

圧電振動式慣性センサー素子とその製造方法及びレーザー加工装置

【課題】本発明の目的は、不要な振動成分を無くす為に圧電振動式慣性センサー素子の少なくとも2つの脚部にそれぞれ少なくとも1個所の角部に質量変化を加え脚部の質量バランスを相互に調整した圧電振動式慣性センサー素子を提供し、同時に圧電振動式慣性センサー素子のそれぞれの脚部の少なくとも1箇所の角部をレーザー光で除去する圧電振動式慣性センサー素子の製造方法を提供し、また電子部品の微小部分に複数のレーザー光を異なる角度から同時に照射して微小部分を除去するレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】目的を達成する為に、音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子のそれぞれの脚部の角部を除去することを特徴とし、振動子のそれぞれの脚部の角部をレーザー光で除去することを特徴とし、複数のレーザー光を異なる角度から照射し微小部分を除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子及び圧電振動式慣性センサー素子の製造方法及びそのレーザー加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウェットエッチング法により加工された音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子においては、水晶結晶のエッチング異方性によって図8のように圧電振動式慣性センサー素子の厚み方向、すなわちZ軸方向について非対称のエッチング残りがあらわれて、その為基部からY軸方向に突出したふたつの脚部の形状がそれぞれ互いに対称な形状をしたものが得られない。その為、図8にみられるような、厚み方向すなわちZ軸方向についてそれぞれの脚部の形状の非対称性によって音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子においては不要な振動成分が検出部から発生し、それが不要な信号として図7にあるような圧電振動式慣性センサー素子の検出電極に出力されてしまうという問題があった。
【0003】
上記の、図8に示すような脚部の形状の非対称性により、音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子で不要な振動成分が検出部から発生しそれが不要な信号として検出電極に出力されることを防止するために、本発明では圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部に水晶結晶のエッチング異方性によりできた脚部の非対称な部分に除去加工をくわえてそれぞれの圧電振動式慣性センサー素子脚部の互いの質量のバランスをとることにより不要な信号が検出電極から出力されることを回避できることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部の間隔は一例をあげれば約0.5mmと非常に狭く、その為圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部の形状に加工をくわえてそれぞれの圧電振動式慣性センサー素子脚部の互いの質量のバランスをとるといった加工作業は極めて微細な加工であり、かつ非常に多くの工数を費やすという問題があった。
【0005】
なぜならば、ひとたび手作業で圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部に水晶結晶のエッチング異方性によってできた脚部の非対称な部分に加工を行ってはその電気的な出力を測定して不要な振動成分が十分に抑制されているかを測定により確認をするといった作業を繰り返しつつ、許容できる電気的な出力が得られるまで前記の加工と測定を交互に行う必要があるからである。
【0006】
また、圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部に水晶結晶のエッチング異方性によってできた脚部の非対称な部分への加工をひとつのレーザー光を用いて行う場合、微小な部分へのひとつのレーザー光の照射時において、加工の対象であるレーザー照射を行う微小な部分の延長線上の電気部品にレーザー光があたり加工を行う対象以外の電気部品にレーザー光により損傷を与えその特性を変えてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は以上のような技術的背景のもとでなされたものであり、従がってその目的は、不要な振動成分を無くす為に圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部にそれぞれ少なくとも1個所の角部に除去を加えて脚部の質量のバランスを相互に調整した圧電振動式慣性センサー素子を提供することである。
【0008】
また、同時に前記のような圧電振動式慣性センサー素子のそれぞれの脚部における少なくとも1個所の角部をレーザー光を用いて除去することを特徴とする圧電振動式慣性センサー素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、電子部品の微小部分をレーザー光の照射により除去するレーザー加工装置において、前記の電子部品の微小部分に複数のレーザー光を異なる角度から照射して先の電子部品の微小部分を除去することを特徴とするレーザー加工装置を提供することを目的とする。ここで複数のレーザー光とはもともとひとつのレーザー光を光学的に分離したものである。
【0010】
また、複数のレーザー光のそれぞれは加工するには不十分なエネルギーであり、複数のレーザー光が同時に照射される部分で加工が可能となるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、Y軸に平行に基部から突出した少なくとも2つの脚部を持つ音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子において、先の音叉型振動子のそれぞれの脚部の少なくとも1箇所の角部を除去することを特徴とする。
【0012】
また、Y軸に平行に基部から突出した少なくとも2つの脚部を持つ音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子の製造方法において、先の音叉型振動子のそれぞれの脚部の少なくとも1個所の角部をレーザー光を用いて除去することを特徴とする。
【0013】
また、電子部品の微小部分をレーザー光の照射により除去するレーザー加工装置において、先述の微小部分に複数のレーザー光を異なる角度から同時に照射して電子部品の微小部分を除去することを特徴とする。
【0014】
また、先の微小部分に照射される複数のそれぞれのレーザー光はひとつのレーザー光を光学的に分離したものから成ることを特徴とする。
【0015】
また、複数のレーザー光の各々は加工するには不十分なエネルギーを有し、複数のレーザー光が同時に照射される部分で加工が可能となることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。
なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0017】
図1は本発明の角部を除去した圧電振動式慣性センサー素子の概略の斜視図である。音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子においては水晶結晶のエッチング異方性により図8のように圧電振動式慣性センサー素子の厚み方向、すなわちZ軸方向について、それぞれ音叉型振動子の基部からY軸方向に突出したふたつの脚部の形状が互いに対称な形状をしたものが得られなかった。その為に図8に示すような脚部の形状の非対称性により音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子においては不要な振動成分が検出部から発生して図7に有るような圧電振動式慣性センサー素子の検出電極に不要な信号として出力されてしまうという問題があった。
【0018】
そこで図1及び図2のように、不要な振動成分を無くす為に圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部にそれぞれ少なくとも1個所の部分的な除去を加えてそれぞれの脚部の質量のバランスをとり、純粋な振動モードになるように相互に調整する。
【0019】
圧電振動式慣性センサー素子のふたつの脚部にはそれぞれ図7のように電極が形成されて居り、この電極の電気的な出力を測定しながら除去を加えてそれぞれの脚部の質量のバランスをとり、純粋な振動モードになるように相互に調整する。
【0020】
図3は本発明の圧電振動式慣性センサー素子の脚部の角部をレーザー光を用いて除去する様子を示した圧電振動式慣性センサー素子の概略の斜視図である。図4は本発明の角部をレーザー光を用いて除去した圧電振動式慣性センサー素子をY軸方向からみた概略の側面図である。図3及び図4に示すように、それぞれの脚部の角部の少なくとも1箇所にレーザー光を照射してふたつの脚部に形成されている電極の電気的な出力を測定しながら除去を加える。
【0021】
なお、実施例では2脚の音叉振動子の例を示したが、2脚に限らず3脚や4脚の場合や、脚が平行ではない場合であっても同様の効果を奏する。
【0022】
図5は本発明の音叉型振動子のそれぞれの脚部の角部をレーザー光を用いて除去する装置の概略のブロック回路図である。検出系の電極の出力をチャージアンプ、作動アンプを通して同期検波回路に導く。一方駆動系の電極出力はI/V変換回路、90°位相器を通して先述の同期検波回路に導く。一方I/V変換回路の出力は制御用回路に導かれI/V変換回路の増幅をAGC回路によりコントロールする。作動アンプと90°位相器の双方の出力は同期検波された後平滑回路を通り位相を反転して出力Aとなる。出力Aはデジタルボルトメーターを通してデジタル信号としてCPUに入力され、CPUによりマルチビームスキャナー及びレーザー照射部をコントロールする。本ブロック回路図の構成を用いて、それぞれの脚部の角部の少なくとも1箇所にレーザー光を照射してふたつの脚部に形成されている電極の電気的な出力を測定しながら必要な除去を加えることが出来る。
【0023】
図6は本発明の音叉型振動子のそれぞれの脚部の角部を、ひとつのレーザー光を分離した複数のレーザー光を同時に用いて除去する装置の構成を示す概略図である。除去を加える音叉型振動子が搭載された圧電振動式慣性センサー素子はX−Yステージ上に載置される。X−Yステージとレーザー照射部は前述のマルチビームスキャナーによりコントロールされる。
【0024】
図6にあるようにレーザー照射部から出射するひとつのレーザー光はハーフミラーで複数のそれぞれでは加工を行うに十分ではないエネルギーを有したレーザー光に分離され、それぞれ集光レンズを通して微小な除去する部分に同時に照射される。同時に特定の波長のみ反射してその他の波長は透過させる働きをもつダイクロックミラーをレーザー光の光路に設けて除去する部分をカメラでモニターすることが出来る。圧電振動式慣性センサー素子はX−Yステージ上に載置されているので圧電振動式慣性センサー素子の位置を変化させレーザー光を走査するように除去する部分をレーザートリミングすることが出来る。
【0025】
同じく図6にあるように、レーザー照射部から出射するひとつのレーザー光はハーフミラーで複数のレーザー光に分離されて異なった角度でそれぞれ集光レンズを通して微小な除去する部分に照射され、それぞれの分離された複数のレーザー光は各々では加工を行うに十分ではないエネルギーを有したレーザー光である為、圧電振動式慣性センサー素子の加工の対象であるレーザー照射を行う音叉型振動子の除去される微小な部分の延長線上の電気部品にレーザー光があたった場合においても、分離されたそれぞれのレーザー光の照射エネルギーは充分に小さい為レーザー光により損傷を与えてその特性を変えてしまうことがない。
【0026】
【発明の効果】
本発明により圧電振動式慣性センサー素子の検出電極から出力される不要な振動成分を無くすことが出来る。
【0027】
また、本発明により圧電振動式慣性センサー素子の音叉型振動子の加工の工数を著しく短縮し、かつその歩留まりを高めることが出来る。
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、角部を除去した圧電振動式慣性センサー素子の概略の斜視図である。
【図2】本発明の、角部を除去した圧電振動式慣性センサー素子をY軸方向からみた概略の側面図である。
【図3】本発明の、角部をレーザー光を用いて除去した圧電振動式慣性センサー素子の概略の斜視図である。
【図4】本発明の、角部をレーザー光を用いて除去した圧電振動式慣性センサー素子をY軸方向からみた概略の側面図である。
【図5】本発明の、音叉型振動子のそれぞれの脚部の角部をレーザー光を用いて除去する装置の概略のブロック回路図である。
【図6】本発明の、音叉型振動子のそれぞれの脚部の角部をひとつのレーザー光を分離した複数のレーザー光を用いて除去する装置の構成を示す概略図である。
【図7】従来の圧電振動式慣性センサー素子の電極構造を示す概略の模式図である。
【図8】従来の圧電振動式慣性センサー素子をY軸方向からみた概略の側面図である。
【図9】従来の圧電振動式慣性センサー素子の概略の斜視図である。
【符号の説明】
1 基部
2 脚部
3 圧電振動式慣性センサー素子
4 角部
5 レーザー光
6 電子部品の微小部分
7 複数のレーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y軸に平行に基部から突出した少なくとも2つの脚部を持つ音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子において、
該音叉型振動子のそれぞれの脚部の少なくとも1箇所の角部に質量変化を加えて不要な振動成分を排除して質量バランスを調整されたことを特徴とする圧電振動式慣性センサー素子。
【請求項2】
Y軸に平行に基部から突出した少なくとも2つの脚部を持つ音叉型振動子を用いた圧電振動式慣性センサー素子の製造方法において、
該音叉型振動子のそれぞれの脚部の少なくとも1個所の角部をレーザー光を用いて除去することを特徴とする圧電振動式慣性センサー素子の製造方法。
【請求項3】
電子部品の微小部分をレーザー光の照射により除去するレーザー加工装置において、
該電子部品の該微小部分に複数のレーザー光を異なる角度から同時に照射して該電子部品の該微小部分を除去することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー加工装置において、
該微小部分に照射される複数のそれぞれのレーザー光はひとつのレーザー光を分離したものから成ることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項5】
請求項3に記載の複数のレーザー光の各々は加工するには不十分なエネルギーを有し、複数のレーザー光が同時に照射される部分で加工が可能となるレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2004−93158(P2004−93158A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−250810(P2002−250810)
【出願日】平成14年8月29日(2002.8.29)
【出願人】(000104722)キンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】