説明

圧電発振器の製造方法、圧電発振器

【課題】圧電発振器の製造方法、及び圧電発振器を提供する。
【解決手段】圧電振動子12の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報54と、圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧52)を用いて温度補償量56を算出可能な温度補償回路32に、発振信号50と周波数温度特性情報54を出力する圧電発振器10において、周波数温度特性情報54は、圧電振動子12の温度と発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報に基づいて生成するもので、周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報を有するときは、離散周波数温度特性情報のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、近似曲線情報から第1の周波数温度情報と同一温度の第3の周波数温度情報を抽出し、第2の周波数温度情報に第3の周波数温度情報を加えた情報に基づいて生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Grobal Positioning System)衛星からの測位信号に基づいて位置計測を行う圧電発振器の温度補償に係り、温度補償機能を外部に委ねる圧電発振器であるTSXO(Temperature Sensor Xtal Oscillator)や、温度補償機能を搭載したTCXO(Temperature Compensated Xtal Oscillator)の温度補償の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS機能を備えた携帯電話機等の受信装置、及びGPS受信機能を備えた携帯電話器等は、複数のGPS衛星から送信される測位信号を復調・解析して現在位置を測定するものである。これらの受信装置に使用される基準発振器としては、温度による周波数変化の小さい温度補償型圧電発振器TCXOが、広く使用されている。その理由は、受信装置に内蔵された発振器の周波数精度が高いほど、GPS衛星から送信される測位信号を捕捉するためのサーチ範囲を狭めることができ、結果的にサーチ時間を短縮して、すなわちGPS衛星の測位信号を捕捉する時間を短縮して、短時間で測位を行うことができる。
【0003】
一方、上述の受信装置等は装置の電源投入時等の立ち上げ時において、装置全体で温度が短時間に上昇したり、携帯電話等においては屋外から屋内、屋内から屋外に移動したときに温度が急激に変動するため、発振器内での温度が安定するまで温度補償が不安定になる問題があった。この問題を解決するため、ユーザー側で温度変化に対して高速で応答できる温度補償回路を独自に構築し、発振器側から発振器に搭載された圧電振動子特有の3次曲線的な周波数温度特性を示す温度特性情報を取得して、これにより温度補償を適切に行なう要請がなされている。よって、これに対応するため、発振回路側として温度補償回路を不要とするTSXOが適用され、TSXOは、搭載された圧電振動子の現在温度をユーザー側に出力する温度センサーと、搭載された圧電振動子の温度特性情報(ある環境温度における圧電振動子の所定温度を示す温度センサー電圧と、温度係数)を記憶し、ユーザー側に温度特性情報を出力する記憶回路を搭載している(特許文献1参照)。
【0004】
厚みすべり振動を利用した水晶振動子を使用する場合、発振器から出力される発振信号は、正の3次曲線を描く温度依存性を有するが、上述のTSXOを搭載しユーザー側でTSXOに接続した温度補償回路を有するGPSシステム等においては、温度センサーから得た水晶振動子の温度と、記憶回路から得た周波数温度特性情報をもとに、どの温度においても周波数が一定となるように温度補償回路において温度補償量を算出して周波数補正を掛けている。
【0005】
同様にTCXOを搭載したGPSシステム等においても、温度センサーから得た水晶振動子の温度と記憶回路から得た電圧温度特性情報をもとに、どの温度においても周波数が一定となるようにTCXO内の温度補償電圧発生回路において温度補償電圧を算出して、温度補償電圧により温度補償を行うTCXO内の発振回路に温度補償電圧を印加して周波数補正を掛けている。
【0006】
ここで、記憶回路に記憶している周波数温度特性情報及び電圧温度特性情報は製造検査工程時に取得したものであるため、製造時のスループットの観点から、温度上昇時、または温度下降時のいずれか一方の温度変化した際の温度特性情報を取得し、記憶回路に記憶するのが一般的である。
【0007】
一方、TSXOにおいては温度補償回路側では周波数温度特性情報に基づいて水晶振動子の基準温度における発振周波数を基準とし温度変化に対して連続的に変化する周波数偏差の近似式を算出し、この近似式と水晶振動子の温度から温度補償量を算出している。同様にTCXOでは、温度補償電圧発生回路側では電圧温度特性情報に基づいて水晶振動子の基準温度における基準電圧を基準とし温度変化に対して連続的に変化する電圧偏差の近似式を算出し、この近似式と水晶振動子の温度から温度補償電圧を算出している。
【0008】
ところで、上述のGPS機能を搭載した携帯電話端末などの高精度の電子機器の分野においては、周波数偏差(Δf/f)の許容範囲が非常に狭く、例えば、−30℃〜85℃の温度範囲では周波数偏差(Δf/f)は0.5ppm以内であることが要求される。この条件を満たさないとサーチ時間が長くなり、結果的に測位誤差が生じたり、GPS衛星との同調が不調となる虞がある、といった問題があった。このため周波数温度特性情報及び電圧温度特性情報の情報数を多くすることにより近似式を高精度に算出して温度補償を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−324318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、周波数温度特性情報または電圧温度特性情報を取得する際は、任意の温度を設定可能な恒温槽に水晶振動子を有するTSXOまたはTCXOを配置し、水晶振動子の温度が恒温槽の設定温度になったところでTSXOであれば発振周波数を測定し、TCXOであれば水晶振動子の発振周波数が基準周波数となる理想補償電圧を測定する。このとき水晶振動子に電力を供給するプローブ、水晶振動子を接地するプローブ、水晶振動子からの発振信号を検出するプローブ、TCXOであれば理想補償電圧を印加するプローブが水晶振動子の外部に形成された各電極に接触する。
【0011】
しかし、これらのプローブの接触不良やプローブの結露・凍結等の理由により、発振周波数や理想補償電圧の検出不良が起きることがある。特にTSXO、TCXOをバッチ処理により行なう場合はこの問題が顕著となる。このとき検出不良になった温度点での発振周波数や理想補償電圧の検出を再度行なったり、再度はじめから発振周波数や理想補償電圧を測定することはコストや時間がかかるといった問題があった。
【0012】
そこで本発明は、上記問題点に着目し、周波数温度特性情報や電圧温度特性情報を生成する際の歩留を高めた圧電発振器の製造方法、圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動子の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報と、前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に、発振信号と前記周波数温度特性情報を出力する圧電発振器の製造方法であって、前記周波数温度特性情報は、前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報に基づいて生成するとともに、前記離散周波数温度特性情報において周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報を有するときは、前記離散周波数温度特性情報のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の周波数温度情報と同一温度の第3の周波数温度情報を抽出し、前記第2の周波数温度情報に前記第3の周波数温度情報を加えた情報に基づいて生成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【0014】
上記方法により、離散周波数温度特性情報において、周波数成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた周波数温度特性情報を生成することができる。そして第3の周波数温度情報は、第2の周波数温度情報に基づいて算出された近似曲線情報から抽出されたものであるので、周波数成分が全て許容範囲となる離散周波数温度特性情報に基づいて生成された周波数温度特性情報と遜色のない情報を生成することができ、周波数温度特性情報の生成時の歩留を高め、コストを抑制することができる。
【0015】
[適用例2]前記周波数温度特性情報は、温度の情報と、前記温度に対応した発振周波数、若しくは前記温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、により生成したことを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器の製造方法。
【0016】
これにより、圧電発振器側で温度係数を生成する演算が不要となるため圧電発振器形成時の作業負担を抑制してコストを抑制することができる。この場合、ユーザー側で周波数温度特性情報のプロットに重なるべき級数の温度係数を演算して温度補償量を算出することになるが、ユーザー側で独自に正確な温度係数を演算することができる。
【0017】
[適用例3]前記周波数温度特性情報は、温度の情報と、前記温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、から求めた近似曲線情報から抽出される温度係数により生成したことを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器の製造方法。
【0018】
これにより、温度補償回路においては温度係数を算出するための演算が不要となるため、ユーザー側の負担を軽減して圧電発振器を搭載したシステムの構築を容易に行うことができる。
【0019】
[適用例4]前記離散周波数温度特性情報において、前記第1の周波数温度情報の温度が前記離散周波数温度特性情報の最低温度または最高温度であるとき、または前記第1の周波数温度情報が複数あるとき、前記離散周波数温度特性情報を再度生成することを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電発振器の製造方法。
【0020】
第1の周波数温度情報が離散周波数温度特性情報の最低温度と最高温度に挟まれた温度領域にある場合は、近似曲線情報を良好に算出することができるが、最低温度にある場合は、近似曲線情報の精度は最低温度領域にて低下し、最高温度にある場合は、近似曲線情報の精度は最高温度領域にて低下する。また第1の周波数温度情報が複数ある場合にも同様に近似曲線情報の精度が低下する。よって、このように離散周波数温度特性情報を再度生成することにより、第1の周波数温度情報が上述の最低温度や最高温度ではない場合や、複数ではない場合には高精度な近似曲線情報が算出可能となり、第1の周波数温度情報がない場合に近似曲線情報を介して第3の周波数温度情報を算出することなく周波数温度特性情報を生成することができるため、圧電発振器の歩留を高めることができる。
【0021】
[適用例5]圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した情報と、前記発振信号の発振周波数の温度特性を示す電圧温度特性情報と、に基づいて算出した前記温度補償電圧を前記発振回路に出力する温度補償電圧発生回路と、を有する圧電発振器の製造方法であって、前記電圧温度特性情報は、前記圧電振動子の温度と前記温度において前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う理想補償電圧との関係を離散的に示した離散電圧温度特性情報に基づいて生成するとともに、前記離散電圧温度特性情報において電圧成分が許容範囲外にある第1の電圧温度情報を有するときは、前記離散電圧温度特性情報のうち電圧成分が許容範囲内にある第2の電圧温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の電圧温度情報と同一温度の第3の電圧温度情報を抽出し、前記第2の電圧温度情報に前記第3の電圧温度情報に加えた情報に基づいて生成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【0022】
上記方法により、離散電圧温度特性情報において、電圧成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた電圧温度特性情報を生成することができる。そして第3の電圧温度情報は、第2の電圧温度情報に基づいて算出された近似曲線情報から抽出されたものであるので、電圧成分が全て許容範囲となる離散電圧温度特性情報に基づいて生成された電圧温度特性情報と遜色のない情報を生成することができ、電圧温度特性情報の生成時の歩留を高め、コストを抑制することができる。
【0023】
[適用例6]前記離散電圧温度特性情報において、前記第1の電圧温度情報の温度が前記離散電圧温度特性情報の最低温度または最高温度であるとき、前記第1の電圧温度情報が複数あるとき、前記離散電圧温度特性情報を再度生成することを特徴とする適用例5に記載の圧電発振器の製造方法。
【0024】
第1の電圧温度情報が離散電圧温度特性情報の最低温度と最高温度に挟まれた温度領域にある場合は、近似曲線情報を良好に算出することができるが、最低温度にある場合は、近似曲線情報の精度は最低温度領域にて低下し、最高温度にある場合は、近似曲線情報の精度は最高温度領域にて低下する。また第1の電圧温度情報が複数ある場合にも同様に近似曲線情報の精度が低下する。よって、このように離散電圧温度特性情報を再度生成することにより、第1の電圧温度情報が上述の最低温度や最高温度ではない場合や、複数ではない場合には高精度な近似曲線情報が算出可能となり、第1の電圧温度情報がない場合に近似曲線情報を介して第3の電圧温度情報を算出することなく電圧温度特性情報を生成することができるため、圧電発振器の歩留を高めることができる。
【0025】
[適用例7]前記許容範囲は、測定対象となる前記圧電振動子の温度ごとに独立して設定したことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電発振器の製造方法。
【0026】
上記方法により、離散周波数温度特性情報において第1の周波数温度情報の抽出を厳格化し、離散電圧温度特性情報において第1の電圧温度情報の抽出を厳格化することができ、これにより周波数温度特性情報及び電圧温度特性情報の精度を高めることができる。
【0027】
[適用例8]圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させて発振信号を出力する発振回路と、周波数温度特性情報が記憶された記憶回路と、を有し、前記周波数温度特性情報は、前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報に基づいて生成されるとともに、前記離散周波数温度特性情報において周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報を有するときは、前記離散周波数温度特性情報のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の周波数温度情報と同一温度の第3の周波数温度情報を抽出し、前記第2の周波数温度情報に前記第3の周波数温度情報を加えた情報に基づいて生成されたことを特徴とする圧電発振器。
【0028】
例えば、圧電振動子の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報と、前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に、本適用例の圧電発振器を接続した場合、離散周波数温度特性情報において、周波数成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた周波数温度特性情報を生成することができる。そして第3の周波数温度情報は、第2の周波数温度情報に基づいて算出された近似曲線情報から抽出されたものであるので、周波数成分が全て許容範囲となる離散周波数温度特性情報に基づいて生成された周波数温度特性情報と遜色のない情報を生成することができ、周波数温度特性情報の生成時の歩留を高め、コストを抑制することが可能な圧電発振器となる。
【0029】
[適用例9]圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した情報と、前記発振信号の発振周波数の温度特性を示す電圧温度特性情報と、に基づいて算出した前記温度補償電圧を前記発振回路に出力する温度補償電圧発生回路と、前記電圧温度特性情報を記憶し前記温度補償電圧発生回路に出力する記憶回路と、を有し、前記電圧温度特性情報は、前記圧電振動子の温度と前記温度において前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う理想補償電圧との関係を離散的に示した離散電圧温度特性情報に基づいて生成されるとともに、前記離散電圧温度特性情報において電圧成分が許容範囲外にある第1の電圧温度情報を有するときは、前記離散電圧温度特性情報のうち電圧成分が許容範囲内にある第2の電圧温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の電圧温度情報と同一温度の第3の電圧温度情報を抽出し、前記第2の電圧温度情報に前記第3の電圧温度情報を加えた情報に基づいて生成されたことを特徴とする圧電発振器。
【0030】
上記構成により、離散電圧温度特性情報において、電圧成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた電圧温度特性情報を生成することができる。そして第3の電圧温度情報は、第2の電圧温度情報に基づいて算出された近似曲線情報から抽出されたものであるので、電圧成分が全て許容範囲となる離散電圧温度特性情報に基づいて生成された電圧温度特性情報と遜色のない情報を生成することができ、電圧温度特性情報の生成時の歩留を高め、コストを抑制することが可能な圧電発振器となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】温度補償回路に接続された本実施形態の圧電発振器を備えた発振回路システムの模式図である。
【図2】本実施形態の圧電発振器と測定器との接続図である。
【図3】第1実施形態の圧電発振器の温度補償の様子を示す図である。
【図4】離散周波数温度特性情報及び周波数温度特性情報を生成する第1のフロー図である。
【図5】離散周波数温度特性情報において有効な情報の欠落する温度が異なる場合の発振信号の周波数温度特性(その1)である。
【図6】離散周波数温度特性情報において有効な情報の欠落する温度が異なる場合の発振信号の周波数温度特性(その2)である。
【図7】離散周波数温度特性情報及び周波数温度特性情報を生成する第2のフロー図である。
【図8】第2実施形態に係る圧電発振器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0033】
図1に第1実施形態に係る圧電発振器を温度補償回路に接続した発振回路システムを示す。本実施形態に係る圧電発振器10は、圧電振動子12と、前記圧電振動子12を発振させて発振信号50を出力する発振回路14と、周波数温度特性情報54が記憶された記憶回路18と、を有し、前記周波数温度特性情報54は、前記圧電振動子12の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報60に基づいて生成されるとともに、前記離散周波数温度特性情報60において周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報(図3参照)を有するときは、前記離散周波数温度特性情報60のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報62に基づいて近似曲線情報66を算出し、前記近似曲線情報66から前記第1の周波数温度情報(図3参照)と同一温度の第3の周波数温度情報64を抽出し、前記第2の周波数温度情報62に前記第3の周波数温度情報64を加えた情報に基づいて生成されたものである。
【0034】
また第1実施形態の圧電発振器10は、前記圧電振動子12の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報54と、前記圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧52)を用いて温度補償量56を算出可能な温度補償回路32に、発振信号50と前記周波数温度特性情報54を出力するものである。
【0035】
したがって第1実施形態に係る圧電発振器10の製造方法は、圧電振動子12の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報54と、前記圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧52)を用いて温度補償量56を算出可能な温度補償回路32に、発振信号50と前記周波数温度特性情報54を出力する圧電発振器10の製造方法であって、前記周波数温度特性情報54は、前記圧電振動子12の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報60に基づいて生成するとともに、前記離散周波数温度特性情報60において周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報(図3参照)を有するときは、前記離散周波数温度特性情報60のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報62に基づいて近似曲線情報66を算出し、前記近似曲線情報66から前記第1の周波数温度情報(図3参照)と同一温度の第3の周波数温度情報64を抽出し、前記第2の周波数温度情報62に前記第3の周波数温度情報64を加えた情報に基づいて生成するものである。
【0036】
第1実施形態の圧電発振器10は、温度補償回路32を内蔵しないTSXOである。第1実施形態の圧電発振器10は、半導体基板(不図示)上にパターニングにより、発振回路14、温度センサー16、記憶回路18、シリアルインターフェース回路20、電源端子28、グランド端子30等の各端子が形成され、発振回路14と圧電振動子12が接続された構造を有している。さらに図1に示すように、圧電発振器10の接続対象となる温度補償回路32は、周波数補正回路34、CPU36、メモリ38、A/D変換器40を有する。また周波数温度特性情報54を算出する際には図2に示すように、圧電発振器10は測定器42に接続され、測定器42は、周波数カウンター44、PC(パーソナルコンピューター)46、電圧マルチメーター48を有する。
【0037】
圧電振動子12は、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料であり、水晶であればATカットすることにより形成され、発振回路14から交流電圧を受けて、厚みすべり振動により所定の共振周波数で発振することができる。このATカットによる厚みすべり振動を用いた水晶振動子の共振周波数は、基準温度(25℃)を中心として正の3次曲線となる温度特性を有している。
【0038】
発振回路14は、圧電振動子12を発振源とする例えばコルピッツ型の発振回路であり、発振信号出力端子22を介して温度補償回路32、または測定器42に発振信号50を出力する。
【0039】
温度センサー16は、ダイオード構造を有しており、順方向電流を流し、温度によって変化する検出電圧52を温度センサー電圧出力端子24から温度補償回路32または測定器42に出力するものである。ここで検出電圧52は温度上昇とともに1次関数的に減少し、出力される検出電圧52は測定される温度に対応したものとなっている。なお、温度センサー16は圧電振動子12に隣接して配置することが望ましい。これにより圧電振動子12の温度を正確に測定することができ、後述の離散周波数温度特性情報60、第1の周波数温度情報(図3参照)、第2の周波数温度情報62、第3の周波数温度情報64、において温度と周波数、若しくは周波数変位との対応を正確に行ない、近似曲線情報66及び周波数温度特性情報54を高精度に算出することができる。このように本実施形態において圧電振動子12の温度は、温度センサー16からの検出電圧52に対応しており、後述の測定器42はこの検出電圧52に関連付けられた情報として離散周波数温度特性情報60、第1の周波数温度情報(図3参照)、第2の周波数温度情報62、第3の周波数温度情報64、周波数温度特性情報54を算出し、温度補償回路32は周波数温度特性情報54をこの検出電圧52に関連付けられた情報として扱い温度補償量56を算出している。
【0040】
シリアルインターフェース回路20は、外部からの指令を受けて記憶回路18に周波数温度特性情報54を記憶したり、外部に出力するものである。シリアルインターフェース回路20は記憶回路18に接続されるとともに、データ入出力端子26を介して温度補償回路32及び測定器42に接続される。
【0041】
記憶回路18は、EEPROM等で形成され、シリアルインターフェース回路20を介して周波数温度特性情報が54記憶され(書き込まれ)、または周波数温度特性情報54を出力することができる。周波数温度特性情報54は、有限個のデータにより構成されているが、それぞれ測定器42中のPC46、及び温度補償回路32中のCPU36が共通に認識できるアドレスが設けられているものとする。
【0042】
温度補償回路32は、発信回路14からの発振信号50を入力するとともに、周波数温度特性情報54に基づいて発振回路14から出力される発振信号50の発振周波数の温度特性を近似するための近似曲線情報68を算出し、近似曲線情報68と圧電振動子12の温度の情報となる検出電圧52を用いて温度補償量80を算出し、温度補償された発振信号58を出力するものである。温度補償回路32は、周波数補正回路34、CPU36、メモリ38等から構成される。周波数補正回路34は、CPU36から出力される温度補償量56に対応して出力信号の周波数を可変させる回路であって、発振信号出力端子22に接続されて発振信号50が入力され、CPU36の制御のもと温度補償を行った発振信号58を出力するものである。
【0043】
CPU36は、温度補償回路32の中核をなすものであって、記憶回路18から入力した周波数温度特性情報54から圧電振動子12の発振周波数の温度特性を近似する近似式曲線情報68を算出し、近似曲線情報68と温度センサー16から入力される検出電圧52(温度の情報)に基づいて温度補償量56を算出して周波数補正回路34に出力するものである。
【0044】
CPU36は、データ入出力端子26、周波数補正回路34、さらに温度センサー16にA/D変換器40を介して接続されている。CPU36は、起動時に、プログラムによりデータ入出力端子26に記憶回路18に記憶された周波数温度特性情報54を読み出すためのシリアルデータを出力し、記憶回路18内の周波数温度特性情報54をシリアルインターフェース回路20を介して出力させ、CPU36に付属するメモリ38に記憶する。
【0045】
記憶回路18に記憶された周波数温度特性情報54が圧電振動子12の使用温度範囲の複数の温度の情報と、前記複数の温度中の各温度に対応した周波数偏差の情報との組み合わせ(第1の組み合わせ)である場合、CPU36は、
【数1】

となる近似式を用いて温度Tと、温度Tに対応する周波数偏差Δf/fを代入し、最小二乗法等を用いて温度係数A、B、C、D、Eを算出してCPU36に付属するメモリ38に記憶可能な構成を有するものとする。周波数温度特性情報54が上述の複数の温度の情報と各温度に対応した周波数(絶対値)の情報の組み合わせ(第2の組み合わせ)である場合は、CPU36は周波数温度特性情報54中の基準温度の情報と基準温度で測定した周波数の情報のアドレスを識別可能とし、周波数温度特性情報54と数式1を用いて、温度係数を算出し、付属のメモリ38に記憶可能な構成を有するものとする。また記憶回路18に記憶された周波数温度特性情報54が温度係数であれば(第3の組み合わせ)、CPU36は、そのまま付属のメモリに記憶する構成を有するものを用いる。
【0046】
またCPU36は、プログラムにより所定時間ごとに温度センサー16からの検出電圧52(温度の情報)をA/D変換器40を介してデジタルデータ化して入力し、付属のメモリ38に記憶する。そしてメモリ38から温度係数を読み出して近似曲線情報68を算出し、さらにメモリ38から検出電圧52(温度の情報)を読み出して、近似曲線情報68と検出電圧52から温度補償量56を算出し、温度補償量56を周波数補正回路34に出力する。よってCPU36は所定時間ごとに温度補償量56を算出して周波数補正回路34に出力する。これにより周波数補正回路34は、温度補償後の発振信号58を常時出力するが、発振信号58は所定時間ごとに温度補償が行われることになる。
【0047】
上述のように、CPU36においては周波数温度特性情報54を必要とするため、圧電発振器10においてCPU36に出力すべき周波数温度特性情報54を予め記憶回路18に記憶する必要がある。このため圧電発振器10を測定器42に接続し、圧電発振器10の設定最低温度から設定最高温度の範囲の離散的な温度の情報と、前記温度の情報における発振信号の発振周波数の情報により構成された離散周波数温度特性情報60を生成し、これに基づいて周波数温度特性情報54を生成する必要がある。
【0048】
図2に圧電発振器10と測定器42との接続図を示す。測定器42は、温度補償回路32が必要とする周波数温度特性情報54を算出して記憶回路18に書き込むものである。測定器42は、周波数カウンター44、PC46(パーソナルコンピューター)、電圧マルチメーター48により構成される。周波数カウンター44は、発振信号出力端子22に接続され、発振回路14から出力される発振信号50の周波数を測定してPC46に出力することができる。電圧マルチメーター48は、温度センサー16からの検出電圧52をデジタルデータに変換してPC46に出力することができる。
【0049】
PC46は、キー操作等により周波数カウンター44や電圧マルチメーター48を起動可能であるとともに、温度センサー16からの検出電圧52(温度の情報)を入力してPC46に付属する記憶領域(不図示)に記憶することができる。
【0050】
本実施形態においては、圧電発振器10を温度調整が可能なチャンバー(不図示)内に配置し、圧電発振器10を第1温度点(設定最低温度、例:−30℃)と第2温度点(例:−15℃)、第3温度点(例:0℃)、第4温度点(基準温度、例:+25℃)、第5温度点(例:+50℃)、第6温度点(例:+70℃)、第7温度点(設定最高温度、例+85℃)の環境下におき、PC46はプログラム等により各温度点において圧電発振器10が出力する発振信号50の発振周波数を測定する。
【0051】
そして温度補償回路32が用いる周波数温度特性情報54が上述の第1の組み合わせである場合は、各温度点における温度の情報(検出電圧52に対応した情報)と、温度の情報に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報により離散周波数温度特性情報60を生成し、これをそのまま用いる形で周波数温度特性情報54を生成する。また上述の第2の組み合わせである場合は、各温度点における温度の情報(検出電圧52に対応した情報)と、温度の情報に対応した基準周波数からの周波数の絶対値の情報により離散周波数温度特性情報60を生成し、これをそのまま用いる形で周波数温度特性情報54を生成する。さらに上述の第3の組み合わせである場合は、各温度点における温度の情報(検出電圧52に対応した情報)と、温度の情報に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報により離散周波数温度特性情報60を生成し、離散周波数温度特性情報60を数式1に代入して最小二乗法等により温度係数を算出し、この温度係数を周波数温度特性情報54として生成する。
【0052】
ところで、上述の離散周波数温度特性情報60の生成の際には、圧電発振器10の各電極に電源用のプローブ、発振信号を検出するプローブ、グランド用のプローブ等が接触させている。よって従来技術で述べたような接触不良により、離散周波数温度特性情報60の一部において有効な情報を取得できていない状態で離散周波数温度特性情報60を生成してしまうことがある。このような離散周波数温度特性情報60に基づいて生成された周波数温度特性情報54が温度補償回路32において用いられると、温度補償の精度が低下することになる。そこでPC46においては、以下の工程を行なうことにより無効な情報を包含する離散周波数温度特性情報60であっても、これに基づいて有効な周波数温度特性情報54を算出することができる。
【0053】
すなわち、PC46が有するプログラム等においては周波数の値の許容範囲が設定され、各温度点において測定された発振信号50の周波数が許容範囲を超えた場合には、その温度点における温度の情報と、周波数の情報の組み合わせを第1の周波数温度情報(図3参照)として抽出し、残りの温度点における温度の情報と、周波数の組み合わせを第2の周波数温度情報62として抽出する。この第2の周波数温度情報62は、第1の周波数温度情報(図3参照)に係る温度点において有効な情報が欠落した状態となる。そして第2の周波数温度情報62を数式1に代入して温度係数を算出することにより近似曲線情報66を算出する。そして近似曲線情報66から第1の周波数温度情報(図3参照)と同一温度の第3の周波数温度情報64を抽出し、第2の周波数温度情報62に第3の周波数温度情報64を加えた情報を生成する。この情報は周波数が全て許容範囲内にある離散周波数温度特性情報60に相当する。そしてこの情報に基づいて周波数温度特性情報54を生成する。もちろん、このように生成された周波数温度特性情報54は上述同様に第1の組み合わせ、第2の組み合わせ、第3の組み合わせ、のいずれかの形にすることができる。なお、設定最低温度から設定最高温度の範囲において、発振信号50の発振周波数の変動幅はある程度決まっているので、上述の許容範囲は基準温度における基準周波数を中心として上述の変動幅と同程度の大きさに設定すればよい。
【0054】
最後にPC46は、以上の工程を経て得られた周波数温度特性情報54をシリアルデータ化しシリアルインターフェース回路20を介して記憶回路18に記憶する。その後圧電発振器10を温度補償回路32に接続すると、記憶回路18に記憶された周波数温度特性情報54は上述のように温度補償回路32のCPU36に入力され、この周波数温度特性情報54に基づいて近似曲線情報68(近似曲線情報66と同じ)を算出し、近似曲線情報68と検出電圧52により温度補償量56を算出し、周波数補正回路34に温度補償量56を出力して温度補償後の発振信号58を出力することになる。
【0055】
図3に第1実施形態の圧電発振器10を温度補償回路32に接続した場合の作用効果について説明する。図3(a)に示すように、第1の周波数温度情報(図3(b)参照)が存在しない離散周波数温度特性情報60から周波数温度特性情報54を生成し、温度補償回路32において周波数温度特性情報54に基づいて近似曲線情報68を算出する(本来の結果A)。そして近似曲線情報68と検出電圧52を用いて温度補償量56を算出し、この温度補償量56を用いて温度補償された発振信号58の周波数温度特性は図3(d)のようになる。
【0056】
一方、図3(b)においては、−15℃において周波数を正確に測定することができず、−15℃において第1の周波数温度情報(○で囲った−15℃のプロットの欠落部分)が生成された形となっている。そこで図3(c)に示すように、残りの第2の周波数温度情報62を用いて近似曲線情報66を算出し、近似曲線情報66において第1の周波数温度情報(○で囲った−15℃のプロットの欠落部分)が生成された−15℃の温度点から第3の周波数温度情報64を抽出し、第2の周波数温度情報62に第3の周波数温度情報64を加えた情報を周波数温度特性情報54として生成し、この周波数温度特性情報54から近似曲線情報68を生成する(補正結果B)。そして近似曲線情報68と検出電圧52を用いて温度補償量56を算出し、この温度補償量56を用いて温度補償された発振信号58の周波数偏差は図3(d)のようになる。このように有効な情報が一部欠落した離散周波数温度特性情報に基づいて温度補償を行っても、全て有効な情報により構成された離散周波数温度特性情報60に基づいて温度補償を行った場合と遜色のない結果を得ることができる。
【0057】
図4に離散周波数温度特性情報及び周波数温度特性情報を生成する第1のフロー図を示す。ところで、上述の処理においては、有効な情報を欠落する部分が一箇所であることを前提として述べてきたが、複数の温度点において有効な情報を欠落する場合があり、この場合には高精度な近似曲線情報66を生成することが困難となる。
【0058】
そこで、図4に示す第1のフロー図のように、PC46において複数の温度点(2点以上)において有効な情報が欠落すると判断した場合には、近似曲線情報66を生成せず、再びはじめから離散周波数温度特性情報60を生成する作業を行うことが好ましい。
【0059】
図5、図6に離散周波数温度特性情報において有効な情報の欠落する温度が異なる場合の発振信号の周波数温度特性(その1、その2)を示す。図5(a)は0℃において有効な情報が欠落した場合、図5(b)は+25℃において有効な情報が欠落した場合、図5(c)は+50℃において有効な情報が欠落した場合、図5(d)は+70℃において有効な情報が欠落した場合、図6(a)は−30℃で有効な情報が欠落した場合、図6(b)は+85℃において有効な情報が欠落した場合を示す。比較のため、図5、図6のいずれのグラフにおいても図3(d)に示す本来の結果Aが載せてある。
【0060】
図5(その1)に示すように、0℃、25℃、50℃、70℃において有効な情報が欠落した離散周波数温度特性情報に基づいて温度補償を行うと、有効な情報の欠落のない離散周波数温度特性情報60に基づいて温度補償と遜色のない結果を得ることができたが、図6(その2)に示すように、−30℃(設定最低温度)では最低温度付近での温度補償が良好ではなく、+85℃(設定最高温度)においては最高温度付近での温度補償が良好ではないことがわかった。
【0061】
図7に離散周波数温度特性情報及び周波数温度特性情報を生成する第2のフロー図を示す。よって、PC46において複数の温度点(2点以上)において有効な情報が欠落すると判断した場合、または有効な情報が欠落する温度点が一箇所であってもその温度点が温度方向の末端の温度点(設定最低温度、設定最高温度)であると判断した場合には、近似曲線情報66を生成せず、再びはじめから離散周波数温度特性情報60を生成する作業を行うことが好ましい。
【0062】
第2実施形態に係る圧電発振器を図8に示す。第2実施形態に係る圧電発振器110は、圧電振動子112と、前記圧電振動子112を発振させて発振信号148を出力し、温度補償電圧166により前記発振信号148の発振周波数の温度補償を行う発振回路114と、前記圧電振動子112の温度に対応した情報(検出電圧164)と、前記発振信号148の発振周波数の温度特性を示す電圧温度特性情報152と、に基づいて算出した前記温度補償電圧164を前記発振回路114に出力する温度補償電圧発生回路118と、前記電圧温度特性情報152を記憶し前記温度補償電圧発生回路118に出力する記憶回路132と、を有し、前記電圧温度特性情報152は、前記圧電振動子112の温度と前記温度において前記発振信号148の発振周波数の温度補償を行う理想補償電圧150との関係を離散的に示した離散電圧温度特性情報154に基づいて生成されるとともに、前記離散電圧温度特性情報154において電圧成分が許容範囲外にある第1の電圧温度情報(不図示、図3(b)の−15℃のプロットの欠落部分)を有するときは、前記離散電圧温度特性情報154のうち電圧成分が許容範囲内にある第2の電圧温度情報156(図3(b))に基づいて近似曲線情報160を算出し、前記近似曲線情報160(図3(b))から前記第1の電圧温度情報(不図示)と同一温度の第3の電圧温度情報158(図3(c))を抽出し、前記第2の電圧温度情報156に前記第3の電圧温度情報158を加えた情報に基づいて生成されたものである。
【0063】
したがって、第2実施形態に係る圧電発振器110の製造方法は、圧電振動子112を発振させて発振信号148を出力し、温度補償電圧166により前記発振信号148の発振周波数の温度補償を行う発振回路114と、前記圧電振動子112の温度に対応した情報(検出電圧164)と、前記発振信号148の発振周波数の温度特性を示す電圧温度特性情報152と、に基づいて算出した前記温度補償電圧166を前記発振回路114に出力する温度補償電圧発生回路118と、を有する圧電発振器110の製造方法であって、前記電圧温度特性情報152は、前記圧電振動子112の温度と前記温度において前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う理想補償電圧150との関係を離散的に示した離散電圧温度特性情報154に基づいて生成するとともに、前記離散電圧温度特性情報154において電圧成分が許容範囲外にある第1の電圧温度情報(不図示、図3(b)の−15℃のプロットの欠落部分)を有するときは、前記離散電圧温度特性情報154のうち電圧成分が許容範囲内にある第2の電圧温度情報156(図3(b))に基づいて近似曲線情報160(図3(b))を算出し、前記近似曲線情報160から前記第1の電圧温度情報(不図示)と同一温度の第3の電圧温度情報158(図3(c))を抽出し、前記第2の電圧温度情報156に前記第3の電圧温度情報158に加えた情報に基づいて生成するものである。
【0064】
図8に示すように圧電発振器110は、半導体基板(不図示)上にパターニングにより、発振回路114、温度検出手段でなる温度センサー116、温度補償電圧発生回路118、記憶回路132、切替回路134、シリアルインターフェース回路136、電源端子138、グランド端子140等の各端子が形成された半導体回路基板を備え、発振回路114と圧電振動子112が接続された構造を有している。
【0065】
圧電振動子112は、第1実施形態の圧電振動子12と同様に、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料から形成され、水晶であれば周波数温度特性に優れるATカット振動子が望ましい。このようなATカット水晶振動子は、発振回路114から交流電圧を受けて、厚みすべり振動により所定の発振周波数で発振することができる。このATカットによる厚みすべり振動を用いた圧電振動子の発振周波数は、基準温度(25℃近辺)を中心として3次曲線となる温度特性を有している。
【0066】
発振回路114は、圧電振動子112を発振源とする例えばコルピッツ型の発振回路であるとともに、発振回路114には可変容量が内蔵され、この可変容量に印加する温度補償電圧166または外部からの理想補償電圧150を入力して圧電振動子112の発振周波数の温度補償を行い、発振信号148を発振信号出力端子142に出力する。ここで温度補償電圧166及び理想補償電圧150は発振回路114の発振周波数の変化がリニアに応答する範囲(線形応答する範囲)で用いるものとする。
【0067】
温度センサー116は、第1実施形態の温度センサー16と同様にダイオード構造を有しており、順方向電流を流し、温度によって変化するダイオードの端子間電位であるアナログの検出電圧164を温度補償電圧発生回路118に出力することができる。また温度センサー116は電源電圧が供給される限り常時検出電圧164を出力するものとする。ここで検出電圧164は温度上昇とともに1次関数的に減少し、出力される検出電圧164は測定される温度に対応したものとなっている。なお、温度センサー116は圧電振動子112に隣接して配置することが望ましい。これにより圧電振動子112の周囲温度を測定誤差を抑制して測定することができ、温度補償電圧166の出力誤差を抑制することができる。
【0068】
温度補償電圧発生回路118は、4次電圧発生回路120、3次電圧発生回路122、2次電圧発生回路124、1次電圧発生回路126、0次電圧発生回路128、加算回路130により構成されている。
【0069】
本実施形態の圧電振動子112は、第1実施形態の圧電振動子12と同様に、発振周波数の温度特性Δf/fは数式1の近似曲線情報より表わすことができる。よってこのような温度特性を有する発振回路114(圧電振動子112)の温度補償を行うために、温度補償電圧166(理想補償電圧)Vhは、以下のような温度特性を有する必要がある。
【数2】

【0070】
ここで、Vc、Vc、Vc、Vc、Vcは、それぞれ数式1の−A、−B、−C、−D、−Eに対応する。またTは基準温度である。このため4次電圧発生回路120には係数(Vc)の情報が、3次電圧発生回路122には係数(Vc)の情報が、2次電圧発生回路124には係数(Vc)の情報が、1次電圧発生回路126には係数(Vc)の情報が、0次電圧発生回路128には係数(Vc)の情報がそれぞれ入力される構成を有している。
【0071】
そして0次電圧発生回路以外の各電圧発生回路に圧電振動子112の温度の情報、すなわち検出電圧164入力されると、4次電圧発生回路120は圧電振動子112の温度の情報(検出電圧56と基準温度における検出電圧との差分)の4乗と係数(Vc)の情報との積に対応する電圧を出力し、3次電圧発生回路122は、温度の情報の3乗と係数(Vc)の情報の積に対応する電圧を出力し、2次電圧発生回路124は周囲温度の2乗と係数(Vc)の積に対応する電圧を出力し、1次電圧発生回路126は、周囲温度と係数(Vc)の積を出力し、0次電圧発生回路128は、係数(Vc)の値に対応する電圧を出力する。さらにこれらの電圧は加算回路130において加算され温度補償電圧166(Vh)が生成される。
【0072】
記憶回路132は、EEPROM等で形成され、シリアルインターフェース回路136を介して入力される電圧温度情報152を記憶するとともに、電圧温度情報152を温度補償電圧発生回路118に出力するものである。ここで、電圧温度情報152は、圧電振動子112の所定の温度点において、発振回路114の発振周波数が基準周波数となるにように印加された後述の理想補償電圧150の情報と、前記理想補償電圧150を印加時の圧電振動子112の温度の情報(検出電圧164)を用いて数式1に代入して、その係数(Vc、Vc、Vc、Vc、Vc)を算出したものである。
【0073】
よって記憶回路132は、係数(Vc)の情報を4次電圧発生回路120に出力し、係数(Vc)の情報を3次電圧発生回路122に出力し、係数(Vc)の情報を2次電圧発生回路124に出力し、係数(Vc)の情報を1次電圧発生回路126に出力し、係数(Vc)(オフセット量)の情報を0次電圧発生回路128に出力する。これらの係数、すなわち電圧温度情報152は後述のPC176において算出される。なお記憶回路132は新たな電圧温度情報152が入力されるともとの電圧温度情報152に上書きする形で記憶するとともに、新たな電圧温度情報152を温度補償電圧発生回路118に出力する。
【0074】
切替回路134は、温度補償電圧発生回路118と発振回路114との間に介装されている。切替回路134は、一方が発振回路114に接続され、他方が温度補償電圧発生回路118及び電圧入力端子144に接続されている。切替回路134はシリアルインターフェース回路136から入力される切替信号162により、温度補償電圧発生回路118側及び電圧入力端子144側に切替接続することができる。
【0075】
シリアルインターフェース回路136は、信号入力端子146に接続され、外部からのシリアルデータ(電圧温度特性情報152、切替信号162)をデコードし、デコードした情報が電圧温度特性情報152である場合は、電圧温度特性情報152を記憶回路132に出力し、デコードした情報が切替信号162の情報である場合は切替信号162を切替回路134に出力する。
【0076】
本実施形態における電圧温度情報152の算出過程においては、圧電発振器110を測定器168に接続する。測定器168は、周波数カウンター170、電圧発生回路172、電圧マルチメーター174、PC176(パーソナルコンピューター)により構成されている。周波数カウンター170は、発振信号出力端子142に接続され、発振回路114から出力される発振信号148の発振周波数の情報を所定時間ごとに測定してPC176に出力するものである。電圧発生回路172は電圧入力端子144に接続され、任意に電圧値を調整可能な理想補償電圧150を、切替回路134を介して発振回路114に出力するものである。電圧マルチメーター174は、電圧発生回路172が出力する理想補償電圧150の値を測定し、理想補償電圧150の情報をPC176に出力するものである。PC176は信号入力端子146に接続され、切替信号162の情報、及び上述の工程により電圧温度情報152を算出するとともに、これらの情報をシリアルデータ化してシリアルインターフェース回路136に出力するものである。
【0077】
理想補償電圧150の値の調整は、例えば作業者がPC176のディスプレイ上に表示される発振周波数の値を見ながら手動で調整し、PC176のキー操作により理想補償電圧150の情報と温度の情報を入力してもよい。また電圧発生回路172をPC176に接続し、PC176にインストールされたプログラム等にしたがって発振周波数が基準周波数となるように電圧発生回路172の出力を調整し、理想補償電圧150の情報と温度の情報を入力する構成としてもよい。いずれの場合でもPC176においては、温度の情報を温度センサー116から出力される検出電圧164に換算する構成を有するものとする。
【0078】
本実施形態における電圧温度情報152の算出工程について説明する。本実施形態においては圧電発振器110を測定器168に接続した状態で温度調整が可能なチャンバー(不図示)内に収めた後、圧電振動子112の温度を設定最低温度(−30℃)から設定最高温度(+85℃)まで上昇させつつ、各温度点において発振回路114から出力される発振信号148の発振周波数が基準周波数(F)となるように理想補償電圧150の値Vhを調整する。そして本実施形態においては、第1実施形態と同様に圧電発振器110を第1温度点(設定最低温度、例:−30℃)、第2温度点(例:−15℃)、第3温度点(例:0℃)、第4温度点(基準温度、例:+25℃、基準温度)、第5温度点(例:+50℃)、第6温度点(例:+70℃)、第7温度点(設定最高温度、例:+85℃)の環境下におき、発振信号148の発振周波数が基準周波数となるように理想補償電圧150の値Vhを調整する。ここでチャンバー(不図示)の温度設定は高精度に行なわれていることを前提とし、PC176には各温度点における温度の情報が記憶されているものとする。よって各温度点における温度の情報(検出電圧164)と、理想補償電圧150(Vh)の情報により離散電圧温度特性情報154を生成し、離散電圧温度特性情報154を数式2に代入することにより電圧温度特性情報152を生成することができる。
【0079】
ところで、第1実施形態と同様に、上述の離散電圧温度特性情報154の生成の際にも、圧電発振器110の各電極に電源用のプローブ、発振信号を検出するプローブ、グランド用のプローブ、さらには理想補償電圧150印加用のプローブ等を接触させている。よって従来技術で述べたような接触不良により、離散電圧温度特性情報の一部において有効な情報を取得できていない状態で離散電圧温度特性情報154を生成してしまうことがある。このような離散電圧温度特性情報154に基づいて生成された電圧温度特性情報152が温度補償電圧発生回路118で用いられると、温度補償の精度が低下した温度補償電圧166を発生させることになり、発振信号148の温度補償の精度が低下することになる。そこでPC176においては、以下の工程を行なうことにより無効な情報を包含する離散電圧温度特性情報154であっても、これに基づいて有効な電圧温度特性情報152を算出することができる。
【0080】
すなわち、PC176が有するプログラム等においては理想補償電圧150の値の許容範囲が設定され、各温度点において発振信号が基準周波数となるように調整された理想補償電圧150の値が許容範囲を超えた場合には、その温度点における温度の情報(検出電圧164)と、理想温度電圧150の情報の組み合わせを第1の電圧温度情報(不図示)として抽出し、残りの温度点における温度の情報と、理想補償電圧150の組み合わせを第2の電圧温度情報156として抽出する。そして第2の電圧温度情報156を数式2に代入して係数を算出することにより近似曲線情報160を算出する。そして近似曲線情報160から第1の電圧温度情報(不図示)と同一温度の第3の電圧温度情報158を抽出し、第2の電圧温度情報156に第3の電圧温度情報158を加えた情報を生成する。この情報は理想補償電圧150が全て許容範囲内にある離散電圧温度特性情報154に相当する。そしてこの情報に基づいて電圧温度特性情報152を生成する。なお、設定最低温度から設定最高温度の範囲において、理想補償電圧150の変動幅はある程度決まっているので、上述の許容範囲は基準温度における理想補償電圧150の値を中心として上述の変動幅と同程度の大きさに設定すればよい。
【0081】
最後にPC176は、以上の工程を経て得られた電圧温度特性情報152をシリアルデータ化しシリアルインターフェース回路136を介して記憶回路132に記憶する。その後、温度補償電圧発生回路118は入力された電圧温度特性情報152と検出電圧164を用いて温度補償電圧166を算出して発振回路114に出力することにより温度補償がなされた発振信号148を出力することになる。
【0082】
第2実施形態の圧電発振器110の温度補償に関する作用効果は、第1実施形態の圧電発振器110と同様であり、第1実施形態の作用効果の説明及び図2乃至図5において、離散周波数温度特性情報60を離散電圧温度特性情報154に、第1の周波数温度情報(図3参照)を第1の電圧温度情報(不図示)に、第2の周波数温度情報62を第2の電圧温度情報156に、第3の周波数温度情報64を第3の電圧温度情報158に、周波数温度特性情報54を電圧温度特性情報152にそれぞれ置き換えて説明したものに等しいため説明を省略する。
【0083】
いずれの実施形態においても許容範囲は一律に設けられていたが、測定対象となる圧電振動子の温度ごとに独立に設けてもよい。これにより無効となる第1の周波数温度情報(図3参照)、第1の電圧温度情報(不図示)の抽出精度が向上し、各実施形態において温度補償の精度を向上させることができる。
【0084】
以上述べたように本実施形態にかかる圧電発振器10の製造方法によれば、第1には、第1実施形態で述べたように、離散周波数温度特性情報60において、周波数成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた周波数温度特性情報54を生成することができる。そして第3の周波数温度情報64は、第2の周波数温度情報62に基づいて算出された近似曲線情報66から抽出されたものであるので、周波数成分が全て許容範囲となる離散周波数温度特性情報60に基づいて生成された周波数温度特性情報54と遜色のない情報を生成することができ、周波数温度特性情報54の生成時の歩留を高め、コストを抑制することができる。
【0085】
第2には、第1実施形態で述べたように、周波数温度特性情報54は、温度の情報(検出電圧52)と、前記温度に対応した発振周波数、若しくは前記温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、により生成した。これにより、圧電発振器10側で温度係数を生成する演算が不要となるため圧電発振器10形成時の作業負担を抑制してコストを抑制することができる。この場合、ユーザー側で周波数温度特性情報54のプロットに重なるべき級数の温度係数を演算して温度補償量56を算出することになるが、ユーザー側で独自に正確な温度係数を演算することができる。
【0086】
第3には、第1実施形態で述べたように、周波数温度特性情報54は、温度の情報(検出電圧52)と、前記温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、から求めた近似曲線情報66から抽出される温度係数により生成した。これにより、温度補償回路32においては温度係数を算出するための演算が不要となるため、ユーザー側の負担を軽減して圧電発振器10を搭載したシステムの構築を容易に行うことができる。
【0087】
第4には、第1実施形態で述べたように、離散周波数温度特性情報60において、第1の周波数温度情報(図3参照)の温度が離散周波数温度特性情報60の最低温度または最高温度であるとき、または第1の周波数温度情報(図3参照)が複数あるとき、離散周波数温度特性情報60を再度生成することとした。第1の周波数温度情報(図3参照)が離散周波数温度特性情報60の最低温度と最高温度に挟まれた温度領域にある場合は、近似曲線情報66を良好に算出することができるが、最低温度にある場合は、近似曲線情報66の精度は最低温度領域にて低下し、最高温度にある場合は、近似曲線情報66の精度は最高温度領域にて低下する。また第1の周波数温度情報(図3参照)が複数ある場合にも同様に近似曲線情報66の精度が低下する。よって、このように離散周波数温度特性情報60を再度生成することにより、第1の周波数温度情報(図3参照)が上述の最低温度や最高温度ではない場合や、複数ではない場合には高精度な近似曲線情報66が算出可能となり、第1の周波数温度情報(図3参照)がない場合に近似曲線情報66を介して第3の周波数温度情報64を算出することなく周波数温度特性情報54を生成することができるため、圧電発振器10の歩留を高めることができる。
【0088】
第5には、第2実施形態で述べたように、離散電圧温度特性情報154において、電圧成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた電圧温度特性情報152を生成することができる。そして第3の電圧温度情報158は、第2の電圧温度情報156に基づいて算出された近似曲線情報160から抽出されたものであるので、電圧成分が全て許容範囲となる離散電圧温度特性情報154に基づいて生成された電圧温度特性情報152と遜色のない情報を生成することができ、電圧温度特性情報152の生成時の歩留を高め、コストを抑制することができる。
【0089】
第6には、第2実施形態で述べたように、離散電圧温度特性情報154において、第1の電圧温度情報(不図示)の温度が離散電圧温度特性情報154の最低温度または最高温度であるとき、第1の電圧温度情報(不図示)が複数あるとき、離散電圧温度特性情報154を再度生成することとした。第1の電圧温度情報(不図示)が離散電圧温度特性情報154の最低温度と最高温度に挟まれた温度領域にある場合は、近似曲線情報160を良好に算出することができるが、最低温度にある場合は、近似曲線情報160の精度は最低温度領域にて低下し、最高温度にある場合は、近似曲線情報160の精度は最高温度領域にて低下する。また第1の電圧温度情報(不図示)が複数ある場合にも同様に近似曲線情報160の精度が低下する。よって、このように離散電圧温度特性情報154を再度生成することにより、第1の電圧温度情報(不図示)が上述の最低温度や最高温度ではない場合や、複数ではない場合には高精度な近似曲線情報160が算出可能となり、第1の電圧温度情報(160)がない場合に近似曲線情報160を介して第3の電圧温度情報158を算出することなく電圧温度特性情報152を生成することができるため、圧電発振器の歩留を高めることができる。
【0090】
第7には、測定される圧電振動子12の発振周波数及び、理想補償電圧150の許容範囲は、測定対象となる圧電振動子12、112の温度ごとに独立して設定したことにより、離散周波数温度特性情報60において第1の周波数温度情報(不図示)の抽出を厳格化し、離散電圧温度特性情報154において第1の電圧温度情報(不図示)の抽出を厳格化することができ、これにより周波数温度特性情報54及び電圧温度特性情報152の精度を高めることができる。
【0091】
一方、本実施形態の係る圧電発振器10は、第1実施形態で述べたように、例えば、圧電振動子12の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報54と、圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧52)を用いて温度補償量56を算出可能な温度補償回路32に、圧電発振器10を接続した場合、離散周波数温度特性情報60において、周波数成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた周波数温度特性情報54を生成することができる。そして第3の周波数温度情報64は、第2の周波数温度情報62に基づいて算出された近似曲線情報66から抽出されたものであるので、周波数成分が全て許容範囲となる離散周波数温度特性情報60に基づいて生成された周波数温度特性情報54と遜色のない情報を生成することができ、周波数温度特性情報54の生成時の歩留を高め、コストを抑制することが可能な圧電発振器となる。
【0092】
また本実施形態に係る圧電発振器110は、第2実施形態で述べたように、離散電圧温度特性情報154において、電圧成分が許容範囲外となる情報がなくなるため、これに基づいた電圧温度特性情報152を生成することができる。そして第3の電圧温度情報158は、第2の電圧温度情報156に基づいて算出された近似曲線情報160から抽出されたものであるので、電圧成分が全て許容範囲となる離散電圧温度特性情報154に基づいて生成された電圧温度特性情報152と遜色のない情報を生成することができ、電圧温度特性情報152の生成時の歩留を高め、コストを抑制することが可能な圧電発振器となる。
【符号の説明】
【0093】
10………圧電発振器、12………圧電振動子、14………発振回路、16………温度センサー、18………記憶回路、20………シリアルインターフェース回路、22………発振信号出力端子、24………温度センサー電圧出力端子、26………データ入出力端子、28………電源端子、30………グランド端子、32………温度補償回路、34………周波数補正回路、36………CPU、38………メモリ、40………A/D変換器、42………測定器、44………周波数カウンター、46………PC、48………電圧マルチメーター、50………発振信号、52………検出電圧、54………周波数温度特性情報、56………温度補償量、58………発振信号、60………離散周波数温度特性情報、62………第2の周波数温度情報、64………第3の周波数温度情報、66………近似曲線情報、68………近似曲線情報、110………圧電発振器、112………圧電振動子、114………発振回路、116………温度センサー、118………温度補償電圧発生回路、120………4次電圧発生回路、122………3次電圧発生回路、124………2次電圧発生回路、126………1次電圧発生回路、128………0次電圧発生回路、130………加算回路、132………記憶回路、134………切替回路、136………シリアルインターフェース回路、138………電源端子、140………グランド端子、142………発振信号出力端子、144………電圧入力端子、146………信号入力端子、148………発振信号、150………理想補償電圧、152………電圧温度特性情報、154………離散電圧温度特性情報、156………第2の電圧温度情報、158………第3の電圧温度情報、160………近似曲線情報、162………切替信号、164………検出電圧、166………温度補償電圧、168………測定器、170………周波数カウンター、172………電圧発生回路、174………電圧マルチメーター、176………PC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子の発振周波数の温度特性を示す周波数温度特性情報と、前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に、発振信号と前記周波数温度特性情報を出力する圧電発振器の製造方法であって、
前記周波数温度特性情報は、
前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報に基づいて生成するとともに、
前記離散周波数温度特性情報において周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報を有するときは、前記離散周波数温度特性情報のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の周波数温度情報と同一温度の第3の周波数温度情報を抽出し、前記第2の周波数温度情報に前記第3の周波数温度情報を加えた情報に基づいて生成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項2】
前記周波数温度特性情報は、温度の情報と、前記温度に対応した発振周波数、若しくは前記温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、により生成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項3】
前記周波数温度特性情報は、温度の情報と、前記温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、から求めた近似曲線情報から抽出される温度係数により生成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項4】
前記離散周波数温度特性情報において、前記第1の周波数温度情報の温度が前記離散周波数温度特性情報の最低温度または最高温度であるとき、または前記第1の周波数温度情報が複数あるとき、前記離散周波数温度特性情報を再度生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項5】
圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した情報と、前記発振信号の発振周波数の温度特性を示す電圧温度特性情報と、に基づいて算出した前記温度補償電圧を前記発振回路に出力する温度補償電圧発生回路と、を有する圧電発振器の製造方法であって、
前記電圧温度特性情報は、
前記圧電振動子の温度と前記温度において前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う理想補償電圧との関係を離散的に示した離散電圧温度特性情報に基づいて生成するとともに、
前記離散電圧温度特性情報において電圧成分が許容範囲外にある第1の電圧温度情報を有するときは、前記離散電圧温度特性情報のうち電圧成分が許容範囲内にある第2の電圧温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の電圧温度情報と同一温度の第3の電圧温度情報を抽出し、前記第2の電圧温度情報に前記第3の電圧温度情報に加えた情報に基づいて生成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項6】
前記離散電圧温度特性情報において、前記第1の電圧温度情報の温度が前記離散電圧温度特性情報の最低温度または最高温度であるとき、前記第1の電圧温度情報が複数あるとき、前記離散電圧温度特性情報を再度生成することを特徴とする請求項5に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項7】
前記許容範囲は、測定対象となる前記圧電振動子の温度ごとに独立して設定したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項8】
圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させて発振信号を出力する発振回路と、周波数温度特性情報が記憶された記憶回路と、を有し、
前記周波数温度特性情報は、
前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散周波数温度特性情報に基づいて生成されるとともに、
前記離散周波数温度特性情報において周波数成分が許容範囲外にある第1の周波数温度情報を有するときは、前記離散周波数温度特性情報のうち周波数成分が許容範囲内にある第2の周波数温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の周波数温度情報と同一温度の第3の周波数温度情報を抽出し、前記第2の周波数温度情報に前記第3の周波数温度情報を加えた情報に基づいて生成されたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項9】
圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した情報と、前記発振信号の発振周波数の温度特性を示す電圧温度特性情報と、に基づいて算出した前記温度補償電圧を前記発振回路に出力する温度補償電圧発生回路と、前記電圧温度特性情報を記憶し前記温度補償電圧発生回路に出力する記憶回路と、を有し、
前記電圧温度特性情報は、
前記圧電振動子の温度と前記温度において前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う理想補償電圧との関係を離散的に示した離散電圧温度特性情報に基づいて生成されるとともに、
前記離散電圧温度特性情報において電圧成分が許容範囲外にある第1の電圧温度情報を有するときは、前記離散電圧温度特性情報のうち電圧成分が許容範囲内にある第2の電圧温度情報に基づいて近似曲線情報を算出し、前記近似曲線情報から前記第1の電圧温度情報と同一温度の第3の電圧温度情報を抽出し、前記第2の電圧温度情報に前記第3の電圧温度情報を加えた情報に基づいて生成されたことを特徴とする圧電発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−142444(P2011−142444A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1225(P2010−1225)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】