説明

圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】圧電体能動部の端部における圧電体層の破壊を抑制できる圧電素子並びにそれを備える液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】第1電極60と、第2電極80と、第1電極60と第2電極80との間に設けられた圧電体層70と、第1電極60の圧電体層70とは反対側に設けられた振動板50と、を備え、圧電体層70が、第1電極60と第2電極80とで挟まれた実質的に駆動部となる圧電体能動部320を具備し、振動板50が、圧電体能動部320の端部において他の領域よりも厚さが厚くなっている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電素子、圧電素子を具備する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を2つの電極で挟んで構成し、これを振動板上に配置したものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードの圧電素子として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を変形させて圧力発生室のインクを振動させてノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−163387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に電圧を印加すると、圧電体層が2つの電極で挟まれた部分である圧電体能動部が実質的に駆動する。このため、圧電素子を駆動する際には、圧電体能動部とそれ圧電体能動部以外の部分とで、圧電体層の内部応力に大きな差が生じる。その結果、圧電素子の駆動時には、圧電体能動部の端部において圧電体層にクラック等の破壊が生じてしまう虞がある。
【0005】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限定されず、その他に用いられる圧電素子についても同様の問題を有する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧電体能動部の端部における圧電体層の破壊を抑制できる圧電素子並びにそれを備える液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた圧電体層と、前記第1電極の前記圧電体層とは反対側に設けられた振動板と、を備え、前記振動板は、前記圧電体層が前記第1電極と前記第2電極とで挟まれた実質的に駆動部となる圧電体能動部の端部において他の領域よりも厚さが厚いことを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、圧電体能動部とそれ以外の部分(圧電体非能動部)との境界に応力が集中するのを抑制することができ、圧電体層にクラック等の破壊が生じるのを抑制することができる。
【0008】
ここで、前記第2電極上に設けられた保護膜をさらに具備すると共に、前記保護膜には、前記第2電極を露出する開口部が前記圧電体能動部に対向して設けられていることが好ましい。これにより、保護膜によって圧電素子を保護でき、且つ保護膜によって圧電素子の変位が阻害されるのを抑制することができる。
【0009】
また前記振動板の厚い部分が、前記圧電素子の長手方向の端部まで延設されていることが好ましい。さらに前記振動板の厚い部分が、前記圧電素子の長手方向の端部外側まで延設されていることが好ましい。これにより、圧電体層にクラック等の破壊が生じるのをより確実に抑制することができる。
【0010】
また本願発明は、液体を噴射するノズルに連通する複数の圧力発生室と、各圧力発生室に圧力変化を生じさせる上記のような圧電素子と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、圧電体層に対するクラック等の破壊の発生を抑制でき、信頼性が向上した液体噴射ヘッドを実現できる。
【0011】
ここで、前記振動板の他の領域よりも厚さが厚い部分が、複数の前記圧電素子に亘って連続して設けられていることが好ましい。これにより、振動板の他の領域よりも厚さが厚い部分を、圧電素子毎にパターニングして位置決めする必要がなく、振動板の厚さが厚い部分の位置ズレによる変位特性のばらつきを抑えることができる。
【0012】
また前記第1電極の端部で規定される前記圧電体能動部の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内に位置していることが好ましい。これにより、圧電体能動部の端部が流路形成基板によって拘束されないため、圧電素子の変位量が向上する。
【0013】
また前記第1電極の端部で規定される圧電体能動部の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内に位置している場合、前記振動板の他の領域よりも厚さが厚い部分が、前記圧力発生室の端部を跨いで設けられていることが好ましい。これにより、圧力発生室の端部における振動板の剛性が高くなるため、圧電素子の駆動時に、圧力発生室の端部における圧電体層や振動板の破壊の発生をより確実に抑制することができる。
【0014】
また本願発明は、このような液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、圧電素子の破壊を抑制した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの平面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図10】本発明の実施形態4に係る記録ヘッドの平面図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る記録ヘッドの断面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係る記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断面図であり、図3は、図2の要部を拡大した断面図である。
【0017】
図示するように、流路形成基板10には、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向の一端部側には、インク供給路13と連通路14とが隔壁11によって区画されている。連通路14の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部15が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が設けられている。
【0018】
インク供給路13は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路13は、マニホールド100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお本実施形態では流路の幅を片側から絞ることでインク供給路13を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また流路の幅を絞るのではなく、流路の高さを絞ることでインク供給路を形成してもよい。各連通路14は、インク供給路13の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路13の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路14を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
【0019】
また流路形成基板10の一方の面には、振動板50が形成されている。本実施形態に係る振動板50は、流路形成基板10上に形成された弾性膜51と、弾性膜51上に形成された絶縁体膜52とで構成されている。弾性膜51は、厚さが例えば、0.5〜2μm程度、本実施形態では約1.0μmの二酸化シリコンからなる。絶縁体膜52は、厚さが例えば、約0.4μmの酸化ジルコニウムからなる。なお圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を他方の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の一方面は、振動板50(弾性膜51)で構成されている。
【0020】
一方、流路形成基板10の圧力発生室12等の液体流路が開口する面には、各圧力発生室12のインク供給路13とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱用着フィルム等によって接合されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0021】
振動板50を構成する絶縁体膜52上には、厚さが例えば、約0.2μmの第1電極60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの第2電極80とが積層形成されている。そして、これら弾性膜51及び絶縁体膜52で構成された振動板50と、この振動板50の上に設けられた第1電極60、圧電体層70及び第2電極80とを含む構成を圧電素子300と称する。
【0022】
圧電素子300を構成する圧電体層70は、第1電極60及び第2電極80の2つの電極で挟まれた部分に両電極への電圧印加により電圧歪みが生じる。この圧電素子300の圧電歪みが生じる実質的な駆動部を圧電体能動部320と称する。圧電体層70の一方側にしか電極が形成されていない部分は、両電極の電圧の印加によって電圧歪みが生じない。この圧電素子300の圧電歪みが生じない部分を圧電体非能動部330と称する。
【0023】
また圧電素子300を構成する第1電極60と第2電極80とは、何れか一方の電極が複数の圧電素子300に共通する共通電極を構成し、他方の電極が圧力発生室12毎にパターニングされて圧電素子300毎に独立する個別電極を構成する。本実施形態では、第1電極60を複数の圧電素子300に共通する共通電極とし、第2電極80を圧電素子300毎に独立する個別電極としている。
【0024】
具体的には、第1電極60は、圧力発生室12の並設方向(圧電素子300の短手方向)において複数の圧力発生室12及び圧力発生室12の間の隔壁11に対向して連続して設けられて共通電極を構成している。なお第1電極60は、圧力発生室12の長手方向(圧電素子300の長手方向)においては、圧力発生室12の長さよりも短く形成されている。すなわち第1電極60の端部は、圧力発生室12に対向する領域の内側に位置している。また第2電極80は、圧電体層70と共に圧力発生室12毎に切り分けられて個別電極を構成している。
【0025】
このような第1電極60及び第2電極80の端部が、圧電素子300を構成する圧電体能動部320の端部を規定している。本実施形態では、圧電体能動部320は、第2電極80側からの上面視において長方形状で形成されている。また圧電体能動部320は、圧力発生室12の長方形状の長辺・短辺方向と同じ長辺・短辺方向となるように配置されている。そして圧力発生室12の長手方向(圧電体能動部320の長手方向と同一方向)において、第1電極60の端部は、第2電極80の端部よりも内側(圧力発生室12の中央側)に位置している。このため、圧力発生室12の長手方向における圧電体能動部320の端部は第1電極60によって規定されている。圧電体層70及び第2電極80は、圧力発生室12の長手方向において、第1電極60の端部の外側まで設けられている。本実施形態では、圧電体層70及び第2電極80は、圧力発生室12の長手方向において、圧力発生室12の外側の周壁上まで延設されている。
【0026】
また上述のように、圧力発生室12の短手方向、すなわち圧電素子300の並設方向において、第1電極60は複数の圧力発生室12に対向して連続して設けられている。つまり圧力発生室12の短手方向において、第2電極80の端部は、第1電極60よりも内側(圧力発生室12の中央側)に位置している。このため圧力発生室12の短手方向における圧電体能動部320の端部は第2電極80によって規定されている。本実施形態では、圧力発生室12の短手方向において、第2電極80及び圧電体層70の端部、すなわち圧電体能動部320の端部は、圧力発生室12に対向する領域内に位置している。
【0027】
このように、圧電体能動部320の各端部を圧力発生室12に対向する領域内に配置することで、圧電体能動部320の変位量を向上することができる。なお圧電体能動部320の端部を圧力発生室12の周壁上に配置すると、周壁上に設けられた圧電体能動部320が流路形成基板10に拘束されて、変位量が低下してしまう。
【0028】
ところで圧電素子300を構成する振動板50は、圧電体能動部320の端部、特に、圧電素子300の長手方向の端部、において他の領域よりも厚さが厚くなっている。本実施形態では、振動板50が、圧電体能動部320の端部を跨いで設けられて他の領域よりも厚さが厚い厚肉部53を備えている。なお、ここでいう他の領域とは、厚肉部53よりも内側(圧電体能動部320の中央部側)の領域をいう。
【0029】
本実施形態に係る厚肉部53は、絶縁体膜52の厚さが他の部分よりも厚くなっている。なお厚肉部53は、弾性膜51の厚さが他の部分よりも厚くなっていてもよいし、弾性膜51と絶縁体膜52との両方の厚さが他の部分よりも厚くなっていてもよい。
【0030】
このように振動板50に厚肉部53が設けられていることにより、圧電体能動部320の端部における応力集中を抑制することができる。詳細には、圧電体能動部320には、第1電極60及び第2電極80の両方が形成されているものの、圧電体非能動部330には、第1電極60が形成されておらず、第2電極80のみが形成されている。このため、圧電体能動部320の端部、すなわち圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界において、圧電素子300の剛性が大きく変化する。したがって、圧電体能動部320を駆動すると、圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界の圧電体層70に、圧電体能動部320と圧電体非能動部330の剛性の違いに起因するクラック等の破壊が発生してしまう虞がある。しかしながら本実施形態では、振動板の厚肉部53が、圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界を跨いで設けられているため、圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界における剛性の急激な変化が抑えられる。すなわち圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界における応力集中の発生が抑えられる。したがって、圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界において圧電体層70にクラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
【0031】
また本実施形態では、厚肉部53は、圧力発生室12の長手方向の端部を跨いで設けられている。すなわち厚肉部53は、圧力発生室12の外側の周壁上まで延設されている。これにより、圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界における圧電体層70の破壊をより確実に抑制することができる。
【0032】
また本実施形態では、厚肉部53は、圧電体能動部320の長手方向の両端部に、圧電体能動部320の短手方向に亘って設けられている。すなわち、圧電体能動部320の長手方向中央部において、圧電体能動部320の短手方向の両端部に厚肉部53は設けられていない。これにより圧電素子300を良好に変位させることができる。
【0033】
ちなみに圧電体能動部320は、短手方向に凸球面又は凹球面状に撓み変形し易い。このため、圧電体能動部320の短手方向の端部に、圧電体能動部320の長手方向に沿って厚肉部53が延設されていると、圧電体能動部320の変形を著しく低下させてしまう虞がある。
【0034】
また本実施形態では、厚肉部53は、圧電素子300(圧電体能動部320)の並設方向に沿って連続して設けられている。すなわち厚肉部53は、圧力発生室12及び圧力発生室12の間の隔壁11に対向して連続して設けられている。これにより、各圧力発生室12に対向する領域のみに厚肉部53を設けるのに比べて、パターニングによる位置ズレが生じ難い。したがって、各圧電体能動部320の変位特性の均一化、つまりインク滴(液体)の噴射特性の均一化を図ることができる。
【0035】
なお圧電体能動部320に対向する部分の振動板50が全面に亘って厚くなっていると、圧電体能動部320の変位を必要以上に阻害してしまうことになる。このため、振動板50の圧電体能動部320の端部に対向する領域のみが、他の領域よりも厚さが厚くなっていることが好ましい。
【0036】
このような圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。
【0037】
また圧電素子300は、保護膜200によって覆われている。保護膜200は、耐湿性を有する絶縁材料からなる。本実施形態では、保護膜200が、圧電体層70の側面と第2電極80の側面及び上面の周縁部を覆い、且つ複数の圧電素子300に亘って連続して設けられている。すなわち、第2電極80の上面の略中心領域である主要部は、保護膜200が設けられておらず、第2電極80の上面の主要部を開口する開口部201が設けられている。
【0038】
開口部201は、保護膜200を厚さ方向に貫通して圧電素子300の長手方向に沿って矩形状に開口するものである。この開口部201は、例えば、流路形成基板10上の全面に亘って保護膜200を形成した後、保護膜200を選択的にパターニングすることで形成することができる。
【0039】
このように圧電素子300の圧電体層70が保護膜200で覆われていることにより、大気中の水分等に起因する圧電体層70の破壊を抑制することができる。保護膜200の材料としては、耐湿性を有する材料であればよく、無機絶縁材料や有機絶縁材料などを用いることができる。
【0040】
保護膜200として利用できる無機絶縁材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(TaO)、酸化アルミニウム(AlO)及び酸化チタン(TiO)から選択される少なくとも一種が挙げられる。保護膜200の無機絶縁材料としては、特に、無機アモルファス材料である酸化アルミニウム(AlO)、例えば、アルミナ(Al)を用いるのが好ましい。なお、無機絶縁材料からなる保護膜200は、例えば、MOD法、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、CVD法等により形成することができる。また無機絶縁材料からなる保護膜200は、例えば、30nm以上の厚さで形成されていることが好ましい。これにより、圧電体層70の大気中の水分等の外部環境から確実に保護することができる。
【0041】
一方、保護膜200として利用できる有機絶縁材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、珪素系樹脂及びフッ素系樹脂から選択される少なくとも一種が挙げられる。なお、有機絶縁材料からなる保護膜200は、例えば、スピンコート法、スプレー法等により形成することができる。また有機絶縁材料からなる保護膜200は、例えば、100nm以上の厚さで形成されていることが好ましい。これにより、圧電体層70の大気中の水分等の外部環境から確実に保護することができる。
【0042】
また、保護膜200に開口部201が設けられていることにより、保護膜200が圧電素子300(圧電体能動部320)の変位を阻害するのを抑制でき、インク吐出特性を良好に維持することができる。
【0043】
なお、保護膜200は、圧電素子300の少なくとも圧電体層70の露出された表面(側面)を覆うように設けられていればよい。例えば、保護膜200は、圧電素子300毎にそれぞれ独立して設けられていてもよい。
【0044】
また保護膜200の開口部201の端部は、圧電体能動部320の端部よりも当該圧電体能動部320の中央側に位置していることが好ましい。すなわち、圧電体能動部320の端部と、保護膜200の開口部201の端部とが、厚さ方向で重ならない位置に配置されていることが好ましい。これにより圧電素子300の剛性を緩やかに変化させて、圧電体能動部320の端部への応力集中を低減することができる。
【0045】
ちなみに、圧電体能動部320の端部と開口部201の端部とが厚さ方向で重なる位置に配置されていると、圧電素子300及び保護膜200全体の剛性が圧電体能動部320の端部で急激に変化することになる。すなわち圧電体能動部320と圧電体非能動部330との境界と、保護膜200に覆われた領域と開口部201によって保護膜200に覆われていない領域との境界と、が一致し、圧電素子300及び保護膜200全体の剛性が圧電体能動部320の端部で急激に変化することになる。このため圧電体能動部320の端部において、圧電体層70に応力集中が発生し、圧電体層70にクラック等の破壊が生じる虞がある。
【0046】
保護膜200上には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が設けられている。リード電極90の一端部は、保護膜200に設けられた連通孔202を介して第2電極80に接続されている。リード電極90の他端部は、流路形成基板10のインク供給路13側まで延設されて、後述する圧電素子300を駆動する駆動回路120と接続配線121を介して接続されている。
【0047】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜51及びリード電極90上には、保護基板30が接着剤35によって接合されている。保護基板30には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31が設けられている。マニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0048】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0049】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましい。本実施形態では、保護基板30の材料として、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いている。
【0050】
また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。各圧電素子300から引き出されたリード電極90は、その他端部が貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0051】
また、保護基板30上には、並設された複数の圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0052】
また保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0053】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加する。これにより振動板50、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80がたわみ変形して各圧力発生室12内の圧力が高まり、ノズル21からインク滴が噴射される。
【0054】
ここで、このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIの製造方法について詳細に説明する。なお、図4〜図7は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【0055】
まず、図4(a)に示すように、流路形成基板10が複数一体的に形成されるシリコンウエハーである流路形成基板用ウエハー110の表面に弾性膜51を構成する二酸化シリコン(SiO)からなる二酸化シリコン膜151を形成する。
【0056】
次いで、図4(b)に示すように、弾性膜51(二酸化シリコン膜151)上に、絶縁体膜52を構成する酸化ジルコニウム(ZrO)からなる酸化ジルコニウム膜152を形成する。これにより弾性膜51及び絶縁体膜52で構成される振動板50が形成される。なお絶縁体膜52を構成する酸化ジルコニウム膜152は、振動板の厚さが厚肉部53の厚さとなるように所定の厚さで形成する。
【0057】
次いで、図4(c)に示すように、絶縁体膜52である酸化ジルコニウム膜152の一部を、その表面から厚さ方向の途中までエッチング、例えば、ドライエッチングすることにより除去して厚肉部53を形成する。
【0058】
また本実施形態では、厚肉部53を、後の工程で形成する複数の圧電素子300(圧電体能動部320)の並設方向に沿って連続して設けるようにした。これにより、各圧力発生室12に対向する領域のみに厚肉部53を設けるのに比べて、厚肉部53と圧電素子300(圧電体能動部320)や圧力発生室12との位置ズレが生じにくい。したがって、各圧電体能動部320の変位特性の均一化、つまりインク滴(液体)の噴射特性の均一化を図ることができる。
【0059】
次いで、図4(d)に示すように、振動板50を構成する絶縁体膜52上に、白金及びイリジウムからなる第1電極60を形成した後、所定形状にパターニングする。第1電極60の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法や化学蒸着法(CVD法)などが挙げられる。なお、本実施形態では、第1電極60の材料として白金及びイリジウムを用いているが、第1電極60の材料は、これに限定されず、白金又はイリジウムだけであってもよく、またその他の金属材料を用いるようにしてもよい。
【0060】
次に、図5(a)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる第2電極80とを流路形成基板用ウエハー110の全面に形成する。なお、圧電体層70の形成方法は、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。なお、圧電体層70の形成方法は、特に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、スパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。
【0061】
次に、図5(b)に示すように、第2電極80及び圧電体層70を順次エッチングすることにより各圧力発生室12に対応する領域に圧電素子300を形成する。ここで、第2電極80及び圧電体層70のエッチング方法としては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
【0062】
次に、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の全面に亘って保護膜200を形成すると共に保護膜200をパターニングして開口部201等を形成する。保護膜200の材料としては、本実施形態では、酸化アルミニウム(Al)を用いた。
【0063】
次に、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の全面に亘って金(Au)からなるリード電極90を形成後、圧電素子300毎にパターニングする。
【0064】
次に、図6(b)に示すように、保護基板用ウエハー130を、流路形成基板用ウエハー110上に接着剤35によって接着する。ここで、保護基板用ウエハー130は、保護基板30が複数一体的に形成されたものである。保護基板用ウエハー130には、マニホールド部31及び圧電素子保持部32が予め形成されている。保護基板用ウエハー130を接合することによって流路形成基板用ウエハー110の剛性は著しく向上することになる。
【0065】
次いで、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110を所定の厚みに薄くする。
【0066】
次いで、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110上にマスク55を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウエハー110を、マスク55を介してKOH等のアルカリ溶液を用いて異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、各圧電素子300に対応する圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。
【0067】
その後は、流路形成基板用ウエハー110の表面のマスク55を必要であれば除去し、流路形成基板用ウエハー110及び保護基板用ウエハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130とは反対側の面にノズル21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウエハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。
【0068】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドを示す平面図である。なお、上述した実施形態1の構成と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、本実施形態では、振動板50の厚肉部53Aが、圧力発生室12に対向する領域と、圧力発生室12の長手方向の外側の領域とに設けられている。すなわち、厚肉部53Aは、複数の圧電素子300(圧電体能動部320)に亘って連続して形成されておらず、圧電素子300毎に切り分けられて設けられている。
【0070】
このような厚肉部53Aが設けられた圧電素子300であっても、上述した実施形態1と同様に、圧電体能動部320の端部における圧電体層70の応力集中を抑制して、圧電体層70にクラック等の破壊が生じるのを抑制することができる。
【0071】
(実施形態3)
図9は、本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドを示す平面図及び圧電素子の長手方向の構成を示す断面図である。なお、上述した実施形態の構成と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
図9に示すように、本実施形態では、圧電素子300を構成する圧電体能動部320及び圧電体非能動部330が圧力発生室12に対向する領域に設けられている。すなわち圧電素子300の長手方向(圧力発生室12の長手方向)において、圧電体非能動部330の端部が圧力発生室12の端部よりも内側に位置している。
【0073】
また圧電素子300の長手方向において、振動板50の厚肉部53Bが、圧電素子300の端部、すなわち圧電体非能動部330の端部まで延設されている。
【0074】
さらに、この厚肉部53Bは、圧電素子300の長手方向の端部外側まで延設されている。換言すれば、圧電素子300の長手方向の端部外側の振動板50の厚さは、圧電体能動部320の中央部の振動板50の厚さよりも厚くなっている。ここでは、厚肉部53Bが圧電素子300の長手方向の端部外側まで延設された部分を厚肉延設部54という。
【0075】
本実施形態のように厚肉部53Bが圧電素子300の長手方向端部まで、さらには端部外側まで延設されていることで、圧電素子300の長手方向端部近傍における振動板50の剛性が向上する。したがって、圧電素子300の駆動時に、圧電素子300の長手方向端部近傍における圧電体層70や振動板50にクラック等が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0076】
ところで、厚肉延設部54における振動板50の厚さt1は、圧電体能動部320の中央部における振動板50の厚さt2よりも厚くなっていればよく、本実施形態では、厚肉部53Bの厚さt3よりも薄くなっている。これにより、圧電素子300の駆動による振動板50の変形量を良好に確保しつつ、振動板50にクラック等が発生するのを抑制することができる。
【0077】
なお、圧電素子300の長手方向の端部外側の振動板50は、圧電体層70をエッチングする際に、同時にエッチング(オーバーエッチング)される。結果として、厚肉延設部54の厚さt1は、圧電体能動部320の中央部における振動板50の厚さt2よりも厚いが、厚肉部53Bの厚さt3よりも薄くなっている。言い換えれば、圧電素子300の長手方向の端部外側に厚肉部53Bが延設されていることで、圧電体層70をエッチングする際に振動板50がオーバーエッチされた場合でも、振動板50の厚さが薄くなり過ぎることを防止できる。すなわち厚肉延設部54が設けられていることで、圧電素子300の長手方向の端部外側における振動板50の剛性の低下を抑制することができる。
【0078】
(実施形態4)
図10は、本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドを示す平面図であり、図11は、圧電素子の構成を示す断面図である。
【0079】
本実施形態は、圧電素子300の構成の変形例であり、上述の実施形態の構成と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0080】
上述の実施形態では、圧電素子300の第1電極60が共通電極であり、第2電極80が個別電極である構成を例示したが、本実施形態は、圧電素子300の個別電極と共通電極とを逆にした例である。すなわち、図10及び図11に示すように、圧電素子300を構成する第1電極60Aは、圧力発生室12毎に切り分けられて各圧電素子300の個別電極を構成している。第1電極60Aにはリード電極91が接続されている。リード電極91は、第1電極60Aから保護基板30の貫通孔33まで延設されている。
【0081】
一方、第2電極80Aは、圧力発生室12の並設方向(圧電素子300の短手方向)において複数の圧力発生室12及び圧力発生室の間の隔壁11に対向して連続して設けられて共通電極を構成している。
【0082】
ここで、圧電素子300の長手方向における第2電極80Aの端部は、第1電極60Aの端部よりも内側(圧力発生室12の中央側)に位置している。つまり本実施形態では、圧電体能動部320の端部が第2電極80Aによって規定されている。一方、第1電極60Aは、圧電体層70と共に第2電極80Aの端部の外側まで延設されている。本実施形態では、第1電極60A及び圧電体層70は、圧力発生室12の外側の周壁上まで延設されている。
【0083】
そして本実施形態においても、振動板50は、圧電体能動部320の端部に対向する部分に厚肉部53Bを備えている。また厚肉部53Bは、圧電素子300の長手方向の端部外側まで延設されている。すなわち振動板50が、圧電素子300の長手方向の端部外側に厚肉延設部54を備えている。
【0084】
このような本実施形態の構成においても、上述した実施形態と同様に、圧電体能動部320の端部等における圧電体層70や振動板50にクラック等の破壊が生じるのを抑制することができる。
【0085】
なお本実施形態では、圧電体能動部320を構成する圧電体層70が第2電極80Aで実質的に覆われているため保護膜は設けられていないが、勿論、保護膜は設けられていてもよい。
【0086】
また本実施形態では、圧電体能動部320に対応する部分の振動板50は、圧電素子300の短手方向において略一定の厚さで形成されていたが、この部分の振動板50の構成は特に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、圧電素子300の短手方向において、圧電素子300の端部外側の振動板50の厚さt4が、圧電体能動部320に対応する部分の振動板50の厚さt2よりも厚くなっていてもよい。すなわち振動板50が、隔壁11に対向する部分に厚肉延設部54を備えるようにしてもよい。
【0087】
これにより、圧電素子300の駆動に伴う圧電体層70や振動板50の破壊をより確実に抑制することができる。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1及び2について説明したが、本発明の基本的構成は上述した
ものに限定されるものではない。
【0089】
例えば、上述の実施形態では、弾性膜51、絶縁体膜52が振動板50を構成するが、振動板の構成はこれに限定されるものではない。例えば、振動板は、弾性膜又は絶縁体膜の何れか一方のみで構成されていてもよい。
【0090】
また上述した実施形態では、流路形成基板10として、結晶面方位が(110)面、(112)面のシリコン単結晶基板を例示したが、例えば、結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
【0091】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図13は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0092】
図13に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0093】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0094】
また、上述したインクジェット式記録装置IIでは、インクジェット式記録ヘッドI(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドIが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0095】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0096】
また、本発明は、液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子に限定されず、その他のデバイスにも用いることができる。その他のデバイスとしては、例えば、超音波発信器等の超音波デバイス、超音波モーター、圧電トランス等が挙げられる。また、センサーとして用いられる圧電素子にも本発明は適用可能である。圧電素子が用いられるセンサーとしては、例えば、赤外線センサー、超音波センサー、感熱センサー、圧力センサー及び焦電センサー等が挙げられる。
【符号の説明】
【0097】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録
装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 50 振動板、 51 弾性膜、 52 絶縁体膜、 53 厚肉部、 54 厚肉延設部、 55 マスク、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 200 保護膜、 201 開口部、 300 圧電素子、 320 圧電体能動部、 330 圧電体非能動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた圧電体層と、
前記第1電極の前記圧電体層とは反対側に設けられた振動板と、を備え、
前記振動板は、前記圧電体層が前記第1電極と前記第2電極とで挟まれた実質的に駆動部となる圧電体能動部の端部において他の領域よりも厚さが厚いことを特徴とする圧電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電素子において、
前記第2電極上に設けられた保護膜をさらに具備すると共に、前記保護膜には、前記第2電極を露出する開口部が前記圧電体能動部に対向して設けられていることを特徴とする圧電素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電素子において、
前記振動板の厚い部分が、前記圧電素子の長手方向の端部まで延設されていることを特徴とする圧電素子。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電素子において、
前記振動板の厚い部分が、前記圧電素子の長手方向の端部外側まで延設されていることを特徴とする圧電素子。
【請求項5】
液体を噴射するノズルに連通する複数の圧力発生室と、
各圧力発生室に圧力変化を生じさせる請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電素子と、
を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記振動板の他の領域よりも厚さが厚い部分が、複数の前記圧電素子に亘って連続して設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1電極の端部で規定される前記圧電体能動部の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内に位置していることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記振動板の他の領域よりも厚さが厚い部分が、前記圧力発生室の端部を跨いで設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−178558(P2012−178558A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23538(P2012−23538)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】