説明

地中構造物

【課題】想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手の止水機能が損なわれた場合でも、躯体同士の繋ぎ目における止水構造を簡易迅速に回復させることが可能な地中構造物を提供することを課題とする。
【解決手段】地盤G中に埋設された複数の躯体10と、隣り合う躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手22と、を具備する地中構造物1であって、可撓止水継手22は、両躯体10の境界部分の内空N側に設けられた溝状空間21内に配置されており、溝状空間21内には、可撓止水継手22を覆い隠すように後付けされる非常用止水継手の設置スペース24が確保されており、溝状空間21に臨む各躯体10の端部には、非常用止水継手を取り付ける際に使用される取付部13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水構造を具備した地中構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の躯体(例えば、ボックスカルバート、セグメントリング、推進管など)を連設して構築した地中構造物であって、躯体同士の繋ぎ目に可撓止水継手を設けた地中構造物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の可撓止水継手は、十分な柔軟性(追従性)を具備しているが、地震や地盤沈下などによって地中構造物の周辺地盤に想定外の地盤変形が発生すると、躯体間に想定以上の目開き量やズレが生じ、止水機能が損なわれる場合がある。止水機能を回復すべく可撓止水継手を補修する場合には、躯体間に設けられていた可撓止水継手を一旦取り除く必要があるが、可撓止水継手を取り除くと、地下構造物内への地下水や土砂の流入が懸念されることから、可撓止水継手の周辺地盤に対して、地上や立坑内から地盤改良を施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−353225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば地中構造物が大深度に構築されている場合や地上に作業用地を確保できない場合には、地上からの地盤改良が困難なものとなり、補修工事の長期化を招くとともに補修費用の増大化を招くことになる。また、地中構造物の陰に隠れてしまうような箇所(例えば、地中構造物の下側の地盤など)に対しては、地盤改良を行えない場合もある。
【0006】
なお、前記した問題は、想定外の火災等により可撓止水継手の止水機能が損なわれた場合にも同様にあてはまる。
【0007】
このような観点から、本発明は、可撓止水継手を介して複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手の止水機能が損なわれた場合でも、躯体同士の繋ぎ目における止水を簡易迅速に復旧することが可能な地中構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、地盤中に埋設された複数の躯体と、隣り合う前記躯体同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手と、を具備する地中構造物であって、前記可撓止水継手は、前記両躯体の境界部分の内空側に設けられた溝状空間内に配置されており、前記境界部分に、前記可撓止水継手を覆い隠すように後付けされる非常用止水継手の設置スペースが確保されていることを特徴とする。
また、前記溝状空間に臨む前記各躯体の端部には、前記非常用止水継手を取り付ける際に使用される取付部が形成されていてもよい。
【0009】
本発明によれば、境界部分に確保された設置スペースに非常用止水継手を配置し、これを各躯体の端部に形成した取付部に取り付けるだけで、可撓止水継手の内側(躯体の内空側)に新たな止水構造を形成することができるので、想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手の止水機能が損なわれた場合でも、繋ぎ目部分の止水を簡易迅速に復旧することが可能になる。
【0010】
また、前記取付部の側面に、溝状の作業空間が形成されていれば、地中構造物内の配線や配管等により地下構造物の内空断面が狭くなっていても、地中構造物内における非常時の止水処理を行う作業スペースを確保することが可能となる。
【0011】
取付部の構成に制限はないが、前記躯体に固着されたネジ部品を具備させるとよい。ネジ部品(例えば、インサートナットやアンカーボルトなど)を取付部に具備させておけば、ネジ締結により非常用止水継手を取付部に固定することができるので、非常用止水継手の設置作業をより簡易かつ迅速に行うことが可能になる。
また、溝状空間に設置される外枠板にネジ部品を具備させておけば、ネジ締結により躯体のコンクリートに固定することができるので、溝状の外枠板が止水継ぎ手の変形によって剥離することを防止することができる。
【0012】
前記溝状空間内に前記設置スペースを複数段確保するとともに、前記溝状空間に臨む前記各躯体の端部に前記取付部を複数段形成してもよい。このようにすると、非常用止水継手を設置した後にその変形性能を超えるような想定外の地盤変形等が発生し、当該非常用止水継手の止水機能が損なわれたような場合であっても、当該非常用止水継手の内側(躯体の内空側)に新たな非常用止水継手を取り付けるだけで、新たな止水構造を形成することができるので、2回目以降も繋ぎ目部分の止水を簡易迅速に復旧することが可能になる。
【0013】
前記溝状空間に形成した幅広部および幅狭部それぞれに、前記設置スペースを確保し、前記幅広部に臨む前記各躯体の端部および前記幅狭部に臨む前記各躯体の端部のそれぞれに、前記取付部を形成してもよい。この場合、前記幅広部は、溝状空間の開口部分に形成し、前記幅狭部は、前記幅広部よりも深い位置に形成する。このようにすると、幅狭部よりも浅い位置に幅狭部よりも幅の広い空間が確保されるようになるので、非常用止水継手の幅狭部への設置作業を行い易くなる。
【0014】
また、前記溝状空間の開口幅を、前記溝状空間の底部分の幅よりも大きくしてもよい。このようにしても、非常用止水継手の設置作業を行い易くなる。
【0015】
前記可撓止水継手よりも地盤側に、前記躯体同士の繋ぎ目を止水する止水部材を配置してもよい。このようにすると、止水部材と可撓止水継手とによって二重の止水構造が形成されることになるので、止水部材が正常に機能している間は、躯体内への漏水を伴わずに、可撓止水継手を補修あるいは交換することが可能になる。
【0016】
前記止水部材が膨縮可能なチューブ材により構成されていれば、躯体同士が離隔した場合であっても、止水部材を膨張させることで止水機能を維持することが可能となる。
【0017】
また、躯体の内部に埋め込まれ、躯体の内空から躯体同士の継ぎ目であって止水部材と可撓止水継手との間まで連通する排水管を配管してもよい。これにより、止水部材や可撓止水継手等に破損が生じた場合に、止水部材および可撓止水継手が破損することで躯体同士の継ぎ目部分から流入する水を、排水管から抜くことで、可撓止水継手の補修や非常用止水継手の設置作業等を行うことが可能となり、止水構造を復旧することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、躯体同士の繋ぎ目部分に構築しておいた止水構造が想定外の地盤変形や災害等により損傷したような場合であっても、繋ぎ目部分の止水を簡易迅速に復旧することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る地中構造物を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る止水構造を示す断面図である。
【図3】図2の止水構造の一部を示す拡大断面図である。
【図4】(a)および(b)は図2の止水構造の補修状況を示す断面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る止水構造を示す断面図である。
【図6】図5の止水構造の一部を示す拡大断面図である。
【図7】第3の実施の形態に係る止水構造を示す断面図である。
【図8】(a)乃至(d)は図7の止水構造の補修状況を示す図である。
【図9】第4の実施の形態に係る止水構造を示す断面図である。
【図10】(a)は第5の実施の形態に係る止水構造を示す断面図、(b)は(a)のの止水構造の補修状況を示す断面図である。
【図11】(a)は第6の実施の形態に係る止水構造を示す断面図、(b)および(c)は(a)の止水構造の補修状況を示す断面図である。
【図12】(a)は図11の止水構造の変形例を示す断面図、(b)は(a)の止水構造の補修状況を示す断面図である。
【図13】その他の好適な実施の形態に係る止水構造を示す断面図である。
【図14】(a)および(b)は図13の止水構造の補修状況を示す断面図である。
【図15】(a)および(b)は止水部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
本実施形態では、図1に示すように、地盤G中に複数のボックスカルバート(躯体2)を連設することにより形成された地中構造物1について説明する。
【0021】
第1の実施の形態に係る地中構造物1は、地中に連設された複数の躯体10と、隣り合う躯体10同士の繋ぎ目を止水する止水構造20と、を具備している。
【0022】
躯体10は、断面矩形のコンクリート製のボックスカルバートである。なお、躯体10の形状寸法等は限定されるものではない。
【0023】
躯体10の軸方向端面には、図2に示すように、止水構造20の溝状空間21を形成するための切欠部11が形成されている。なお、符号30は、エラスチックフィラー等からなる目地材である。
【0024】
切欠部11は、図3に示すように、隣接する他の躯体10の切欠部11と組み合わせることにより、断面矩形状の溝状空間21を躯体同士の繋ぎ目に形成する。
【0025】
切欠部11の表面は、断面L字状に形成された外枠板12により覆われている。外枠板12の材質は限定されるものではないが、本実施形態では鋼板等により構成する。外枠板12は、後記する取付部13やアンカーボルト14等を介して躯体10に固定されている。なお、外枠板12は必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。
【0026】
切欠部11の側面(他の躯体10に対向する面)には、後記する非常用止水継手25を取り付ける際に使用される取付部13が形成されている。
【0027】
取付部13は、溝状空間21側に開口するように埋設されたアンカーナット13aと、溝状空間21側からアンカーナット13aに螺着(固着)されたボルト(ネジ部品)13bと、により構成されている。なお、取付部13の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
本実施形態では、取付部13を切欠部11に対して2段形成するが、取付部13の数量(段数)は限定されるものではない。また、取付部13の構成は、非常用止水継手25の設置が可能であれば、限定されるものではない。
【0028】
切欠部11の底面(内空Nに面する面)には、後記する可撓止水継手22を固定するためのアンカーボルト14が設置されている。
【0029】
本実施形態では、外枠板12の背面(溝状空間21と反対側の面)に止水材15を設置することで、外枠板12の背面からの地下水の浸透を防止する。
【0030】
止水構造20は、躯体10同士の繋ぎ目部分に形成されており、当該繋ぎ目からの地下水や土砂等の浸入を防止する。
【0031】
止水構造20は、図2に示すように、躯体10同士の繋ぎ目部分に形成された溝状空間21と、溝状空間21の内部において躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手22と、溝状空間21の外側(地山側)に配設されて、躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように埋設された止水板(止水部材)23と、を備えている。
【0032】
溝状空間21は、隣り合う躯体10の切欠部11同士が突き合わされることにより、躯体10同士の突合せ部分の幅が拡幅された空間である。
溝状空間21は、作業員が手や工具を入れて作業を行うことが可能な程度の幅を有している。
【0033】
溝状空間21内には、可撓止水継手22を覆い隠すように後付けされる非常用止水継手25(図4参照)の設置スペース24が確保されている。
本実施形態では、非常用止水継手25の設置スペース24を溝状空間21の深さ方向に2段形成する。各躯体10の端部の切欠部11には、設置スペース24の位置に対応して、それぞれ取付部13が2段配置されている。なお、設置スペース24の段数は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。また、設置スペース24同士の間隔も限定されるものではない。
【0034】
可撓止水継手22は、アンカーボルト14,14を介して溝状空間21の底部に固定されている。
可撓止水継手22は、図3に示すように、一端が一方の躯体10に設置されたアンカーボルト14により固定され、他端が他方の躯体10に設置されたアンカーボルト14により固定されることで、躯体10同士の繋ぎ目を塞ぐように配設されている。
【0035】
可撓止水継手22は、合成ゴム等の板材により構成されており、中央部(躯体同士の繋ぎ目)においてたわんだ状態で配設されている。これにより、可撓止水継手22は、伸縮することで躯体10同士の間に所定量のずれや目開き(変位)が生じた場合であっても、止水性を維持することを可能としている。
【0036】
止水板23は、樹脂製の板材であって、図2に示すように、一端が一方の躯体10に、他端が他方の躯体10に埋設されていることで、躯体10同士に跨って配設されて、繋ぎ目を塞いでいる。
【0037】
止水板23は、管状部23aと管状部23aから前後に延設された埋設部23b,23bとを備えている。
【0038】
管状部23aは、ボックスカルバート10同士の間に配置されている。管状部23aは、ボックスカルバート10,10の繋ぎ目にズレや目開きが生じた際に、伸長・変形することで所定量分追従するように構成されている。また、管状部23aは、所定量分以上のズレや目開きが生じた際は引き裂かれる。
【0039】
止水板23は、一方の埋設部23bが一方の躯体に埋設されており、他方の埋設部23bが他方の躯体に埋設されていることで繋ぎ目を塞いでいる。
なお、止水板23の構成や固定方法等は限定されるものではない。
【0040】
設置スペース24は、想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手22や止水板23の止水機能が損なわれた場合に、非常用止水継手25を設置する箇所である(図4参照)。
【0041】
非常用止水継手25は、止水構造20の止水性能を復元させるために可撓止水継手22を覆うように設置される部材であって、本実施形態では、可撓性止水材25aとスペーサ25bとを備えて構成されている。
【0042】
可撓性止水材25aは、可撓性止水部材22と同様の材料により構成されており、スペーサ25bと共に、可撓性止水部材22に内空側を覆うように配置される。
可撓性止水材25aは、たわんだ状態で設置されることで、躯体10同士のさらなるずれが生じた場合でも、伸長することで止水性能を維持するように構成されている。
【0043】
スペーサ25bは、断面コ字上に形成された鋼製等の部材である。可撓性止水材25aの幅寸法を小さくして、材料費の低減化を図る。なお、スペーサ25bは必要に応じて使用すればよい。
また、スペーサ25bの形状は限定されるものではなく、例えば、矩形やL型であってもよい。また、スペーサ25bの取付方法は限定されるものではなく、例えば、ボルトを介して螺着する方法や溶接等により行うなど、適宜行えばよい。
【0044】
地中構造物1によれば、可撓止水継手22および止水板23が、それぞれ躯体10同士の繋ぎ目に跨って配設されているため、地下水や土砂等が躯体10同士の繋ぎ目から地中構造物1内に入り込むことを防止している。
【0045】
また、可撓止水継手22および止水板23により、止水材が二重に配設されているため、地震等の応力が作用することで躯体10同士にずれが生じ、いずれか一方が破損した場合であっても、止水構造20の止水性を維持することができる。
【0046】
また、可撓止水継手22は、溝状空間21の底部に設置されているため、可撓止水継手22の交換作業を簡易に行うことができる。このとき、可撓止水継手22の地山側には、止水板23が配設されているため、止水性を維持した状態で、交換作業を行うことができる。
【0047】
また、止水構造20には、非常用止水継手25の設置スペース24が確保されているため、図4(a)に示すように、躯体10同士の繋ぎ目にずれが生じることで、止水板23(図2参照)に破損が生じた場合であっても、設置スペース24を利用して非常用止水継手25を設置することで、可撓止水継手22と非常用止水継手25による二重の止水構造を復旧することができる。
そのため、さらなる応力が地中構造物1に作用することで可撓止水継手22に破損が生じたとしても、非常用止水継手25による止水性が確保されている。
【0048】
また、可撓止水継手22に可とう性能は保証されないが、漏水(浸水)は防止できている状態が生じた場合には、図4(b)に示すように、非常用止水継手25の内空N側に設けられた設置スペース24に、さらに非常用止水継手25を設置することで、二重の止水構造を再度復旧することができる。
【0049】
また、可撓止水継手22に破損が生じた場合には、コンクリートの合せ端面から水ならびに水圧を抜く排水管31(図2参照)によって排水を行い、図4(b)に示すように、非常用止水継手25の内空N側に設けられた設置スペース24に、さらに非常用止水継手25を設置することで、二重の止水構造を再度復旧することができる。止水構造の復旧後は、図示しないバルブを閉じ、排水管31による排水を停止する。
【0050】
排水管31は、躯体10に埋設された管材であって、図2に示すように、一端が止水板23の内側であって可撓止水継手22の外側の躯体10同士の突合せ部に開口し、他端はボックスカルバート10の内空Nまたは溝状空間21に開口するように配管されている。なお、排水管31の設置箇所や設置本数等は限定されるものではない。
【0051】
このように、本実施形態の地中構造物1によれば、想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手の止水機能が損なわれた場合でも、躯体10同士の繋ぎ目における止水構造20を、簡易迅速に復旧することができる。
【0052】
第2の実施の形態に係る地中構造物2は、図5に示すように、躯体10同士の繋ぎ部に形成された溝状空間26が、その開口部分に形成された幅広部26aと、幅広部26aよりも深い位置に形成された幅狭部26bとを有している点で、第1の実施の形態に係る地中構造物1と異なっている。
【0053】
第2の実施の形態に係る躯体10には、軸方向端面に止水構造20の溝状空間26を形成するための切欠部16が形成されている。
【0054】
切欠部16は、図6に示すように、階段状に形成されており、隣接する他の躯体10の切欠部16と組み合わせることにより断面凸字状の溝状空間26を形成する。
本実施形態では、切欠部16を2段に形成したが、切欠部16の段数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0055】
切欠部16の表面は、切欠部16の断面形状に応じて形成された階段状の外枠板17により覆われている。外枠板17の材質は限定されるものではないが、本実施形態では鋼板により構成する。なお、外枠板17は必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。
【0056】
切欠部16には、各段の側面(他の躯体10に対向する面)に、非常用止水継手25を取り付ける際に使用される取付部13が形成されている。つまり、切欠部16の幅広部26aに臨む各躯体10の端部および幅狭部26bに臨む各躯体10の端部のそれぞれに、取付部13が形成されている。
取付部13の構成は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0057】
この他の躯体10の構成は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0058】
止水構造20は、図5に示すように、躯体10同士の繋ぎ目部分に形成された溝状空間26と、溝状空間26の内部において躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手22と、溝状空間26の外側(地盤G側)に配設されて、躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように埋設された止水板(止水部材)23と、を備えている。
【0059】
溝状空間26は、隣り合う躯体10の切欠部16同士が突き合わされることにより、躯体10同士の突合せ部分の幅が拡幅された空間であって、内空N側の幅広部と地盤G側の幅狭部とにより断面凸字状に形成されている。
溝状空間26は、内空N側の幅寸法が大きいことにより、作業員の手や工具を入れやすく、作業がしやすくなるように構成されている。
【0060】
溝状空間26内には、可撓止水継手22を覆い隠すように後付けされる非常用止水継手25の設置スペース24が幅広部26aおよび幅狭部26bのそれぞれに確保されている。
【0061】
この他の第2の実施の形態に係る地中構造物2の止水構造20の内容は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0062】
第2の実施の形態に係る地中構造物2によれば、溝状空間26が、内空N側に幅広部26aを有しているため、可撓止水継手22を交換する際や、非常用止水継手25を設置する際等において、溝状空間26内における作業をしやすい。
【0063】
なお、第2の実施の形態では、切欠部16を階段状とし、溝状空間26の内空N側に幅広部26aを形成し、地山G側に幅狭部26bを形成するものとしたが、溝状空間26の開口幅が、溝状空間26の底部分の幅よりも大きくなっていれば、その断面形状は限定されるものではない。
また、幅広部26aおよび幅狭部26bに配置される設置スペースの数はそれぞれ1箇所ずつに限定されるものではなく、複数段設置してもよい。
【0064】
この他の第2の実施の形態に係る地中構造物2の作用効果は、第1の実施の形態の地中構造物1と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0065】
第3の実施の形態に係る地中構造物3は、図7に示すように、取付部13’の背面に、溝状の作業空間が形成されている点で、第1の実施の形態に係る地中構造物1と異なっている。
【0066】
躯体10,10’は、断面矩形のコンクリート製のボックスカルバートである。なお、躯体10,10’の形状寸法等は限定されるものではない。
【0067】
躯体10,10’の軸方向端面には、止水構造20の溝状空間21を形成するための切欠部11,11’が形成されている。
【0068】
一方の躯体10’の切欠部11’は、隣接する他方の躯体10の切欠部11よりも軸方向に長く形成されている。
一方の躯体10’の端部には取付部13’が形成されており、他方の躯体10の端部に形成された切欠部11と組み合わせることにより溝状空間21を形成している。
【0069】
取付部13’は、軸方向に直交するように立設された取付板13cと、取付板の背面に立設されたリブ13dとを備えて構成されている。
【0070】
取付板13cは、固定治具27が固定される鋼板である。固定冶具27により、可撓性止水継手22または非常用止水継手25が取付板13cに固定される。取付板13cには、ボルト孔が形成されており、治具27の固定が可能となるように構成されている。
【0071】
取付板13cの背面(他の躯体10と反対側の面)には、作業空間18が形成されている。
【0072】
リブ13dは、取付板13cを補強するための鋼板であって、取付板13cの背面において、取付板13cと直交するように配置されている。
なお、取付部13’の構成は限定されるものではない。
【0073】
また、他方の躯体10には、固定治具27を固定するための取付板14’が固定されている。
取付板14’は、軸方向に直交するように立設されており、治具27を固定するためのボルト孔が形成されている。
【0074】
また、他方の躯体10には、非常用止水継手25を固定するためのアンカーボルト13”が予め設置されている。
【0075】
止水構造20は、躯体10,10’の繋ぎ目部分に形成された溝状空間21と、溝状空間21の内部において躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手22と、溝状空間21の外側(地山側)に配設されて、躯体10,10’の繋ぎ目を跨ぐように埋設された止水板(止水部材)23と、を備えている。
【0076】
溝状空間21は、隣り合う躯体10の切欠部11同士が突き合わされることにより、躯体10同士の突合せ部分の幅が拡幅された空間である。
溝状空間21は、作業員が手や工具を入れて作業を行うことが可能な程度の幅を有している。
【0077】
本実施形態では、溝状空間21に隣接して作業空間18が形成されており、作業員が入り込むスペースが確保されている。
【0078】
可撓止水継手22は、溝状空間21の底部に配置されており、取付板13c,14’に治具27,27を介して固定されている。可撓止水継手22は、躯体10,10’の繋ぎ目を塞ぐように配設されている。
可撓止水継手22に関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0079】
治具27は、可撓止水継手22の端部を取付板13c(14’)とともに挟持する部材である。
【0080】
治具27は、ボルト27aとナット27bとS字状の押圧板27cとを備えて構成されている。
可撓止水継手22の端部を押圧板27cにより取付板13c(14’)に押し付け、ボルト27aおよびナット27bにより締め付けると、可撓止水継手22が取付板13c(14’)に固定される。
【0081】
図8(a)〜(d)に示すように、想定外の地盤変形や災害などにより可撓止水継手22や止水板23の止水機能が損なわれた場合には、非常用止水継手25を設置する。
【0082】
非常用止水継手25は、止水構造20の止水性能を復元させるために可撓止水継手22を覆うように設置される部材であって、本実施形態では、可撓性止水材25aとスペーサ25bとを備えて構成されている。
【0083】
可撓性止水材25aは、可撓性止水部材22と同様の材料により構成されており、可撓性止水部材22の内空側を覆うように配置される。また、可撓性止水材25aは、可撓性止水部材22と同様に治具27,27を介して固定される。
この他、可撓性止水材25aに関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
【0084】
スペーサ25bは、鋼製部材である。スペーサ25bを配置すると、変位が発生しても可撓性止水材25aの寸法(幅)を変更することなく設置できるので、可撓性止水材25aの幅寸法を変更することによる金型の製作費や材料費の低減化を図ることが可能になる。なお、スペーサ25bは必要に応じて使用すればよい。
また、スペーサ25bの形状は限定されるものではなく、適宜形成すればよい。また、スペーサ25bの取付方法は限定されるものではなく、例えば、ボルトを介して螺着する方法や溶接等により行うなど、適宜行えばよい。
【0085】
本実施形態では、非常用止水継手25を設置する際に、可撓性止水部材22と非常用止水継手25との間に目地材28を配置する。目地材28の地山G側には、必要に応じて板材28aを配置する。
【0086】
また、スペーサ25bの地山G側に、必要に応じて充填材25cを充填して止水性の向上を図ってもよい。
【0087】
以上、第3の実施の形態に係る地中構造物3によれば、止水構造20に隣接して作業空間18が形成されているため、ダクト、配線、配管等により内空断面内に作業スペースが確保できない場合であっても、作業員が作業を行うことが可能である。
【0088】
また、治具27を介して可撓性止水部材22および非常用止水継手25を固定するため、可撓性止水部材22および非常用止水継手25にボルト孔を形成する必要がなく、止水性が向上する。
【0089】
また、せん断変位(図8(a)および(b))、伸び変位(図8(c))、縮み変位(図8(d))等の各種変位に応じて溝状空間21の寸法形状が変化するが、スペーサ25bの形状を変更することにより吸収することが可能である。
【0090】
また、非常用止水継手25の地山G側に、目地材28を配置するため、さらなる止水性の向上を期待できる。
【0091】
また、スペーサ25bの地山G側には充填材25cが充填されているため、スペーサ25b側からの地下水に浸透が防止されている。
【0092】
この他の第3の実施の形態に係る地下構造物3の作用効果は第1の実施の形態に係る地下構造物1と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0093】
第4の実施の形態に係る地下構造物4は、図9に示すように、止水部材23’がチューブ材により構成されている点で、第1の実施の形態乃至第3の実施の形態に係る地下構造物1〜3と異なっている。
【0094】
止水部材23’は、ゴムチューブからなり、一方の躯体10の端面に接着されている。
【0095】
一方の躯体10には内空N側から止水部材23’につながる注入管29が配管されている。
【0096】
止水部材23’は、注入管29を介して注入された液体や気体などにより膨張し、躯体10同士の隙間を遮蔽する。
そのため、可撓性止水継手22の変更や、可撓性止水継手22に破損が生じた場合に、止水部材23’を膨らませて、隙間を遮蔽することで、地下構造物4の止水性を維持することができる。
なお、止水部材23’の内部に充填される材料は限定されるものではない。また、止水部材23’の形状寸法等も限定されるものではない。
【0097】
この他の第4の実施の形態に係る地下構造物4の作用効果等は、前記各実施形態の内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0098】
第5の実施の形態に係る地中構造物5は、図10(a)に示すように、他方の躯体10の切欠部11を省略、または、小断面化している点で、第3の実施の形態に係る地中構造物3と異なっている。
【0099】
躯体10,10’は、断面矩形のコンクリート製のボックスカルバートである。なお、躯体10,10’の形状寸法等は限定されるものではない。
【0100】
一方の躯体10’の軸方向端面には、図10(a)に示すように、止水構造20の溝状空間21を形成するための切欠部11’が形成されている。切欠部11’は、作業空間18を確保することが可能な大きさを有している。
【0101】
本実施形態では、止水構造20の補修等の作業を一方の躯体10’側のみから行うものとし、他方の躯体10の切欠部11は、固定冶具27を固定するために必要な程度の大きさに形成されている。なお、他方の躯体10の切欠部11は省略してもよい。
【0102】
一方の躯体10’の端部には、取付部13’が形成されている。
取付部13’は、軸方向に直交するように立設された取付板13cと、取付板13cの背面に立設されたリブ13dとを備えて構成されている。取付部13’の背面(他の躯体10と反対側の面)には、作業空間18が形成されている。
【0103】
取付板13cは、固定治具27が固定される鋼板である。固定冶具27により、可撓性止水継手22が取付板13cに固定される。取付板13cには、ボルト孔が形成されており、治具27の固定が可能となるように構成されている。
【0104】
リブ13dは、取付板13cを補強するための鋼板であって、取付板13cの背面において、取付板13cと直交するように配置されている。
なお、取付部13’の構成は限定されるものではない。
【0105】
他方の躯体10は、可撓性止水継手22(非常用止水継手25)を固定するための固定冶具27を躯体10の端面に固定する。他方の躯体10の端部には、固定冶具27を固定するための雌ネジアンカー(取付部13、アンカーボルト14)が一方の躯体10’側に開口するように設置されている。
【0106】
止水構造20は、一方の躯体10’の取付部13’と他方の躯体10の端面との間に形成された溝状空間21と、溝状空間21の内部において躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手22と、溝状空間21の外側(地山側)に配設されて、躯体10,10’の繋ぎ目を跨ぐように埋設された止水板(止水部材)23と、を備えている。
【0107】
可撓止水継手22は、溝状空間21の底部に配置されており、取付部13と取付板13c4’に固定冶具27,27を介して固定されている。可撓止水継手22は、躯体10,10’の繋ぎ目を塞ぐように配設されている。
可撓止水継手22に関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。また、固定冶具27に関する事項は、第3の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0108】
地中構造物5において、想定外の地盤変形や災害などにより可撓止水継手22や止水板23の止水機能が損なわれた場合には、図10(b)に示すように、非常用止水継手25を設置する。
【0109】
非常用止水継手25は、止水構造20の止水性能を復元させるために可撓止水継手22を覆うように設置される部材であって、本実施形態では、可撓性止水材25aとスペーサ25bとを備えて構成されている。
【0110】
可撓性止水材25aは、可撓性止水部材22と同様の材料により構成されており、可撓性止水部材22の内空側を覆うように配置される。また、可撓性止水材25aは、可撓性止水部材22と同様に固定冶具27,27を介して固定される。
この他、可撓性止水材25aに関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
【0111】
スペーサ25bは、一方の躯体10’に設置された鋼製部材である。スペーサ25bは、取付部13’の内空側に固定されている。本実施形態では、スペーサ25bの表面と、取付部13’の表面とが面一となるように配置するものとする。
【0112】
スペーサ25bは、その背面側に固定されたスペーサ固定部材25dとボルト25eとを介して一方の躯体10’に固定されている。
なお、スペーサ25bの構成は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、スペーサ25bの固定方法も限定されるものではなく、スペーサ25bの形状等に応じて適宜行えばよい。
【0113】
本実施形態では、非常用止水継手25を設置する際に、可撓性止水部材22と非常用止水継手25との間に目地材28を配置する。目地材28の地山G側には、必要に応じて板材28aを配置する。
【0114】
以上、第5の実施の形態に係る地中構造物5によれば、他方の躯体10の端面に、特別な加工を施す必要がないため、製造コストを削減することが可能となる。
【0115】
また、止水構造20の設置や補修は、一方の躯体10’(作業スペース18)側のみから行うことができるため、止水構造20の設置または補修と並行して、他方の躯体10内での作業を行うことが可能である。
【0116】
また、地中構造物5の変位に対しては、スペーサ25bの形状を変更させることにより吸収することが可能である。
【0117】
この他、第5の実施の形態に係る地中構造物5の作用効果は第3の実施の形態に係る地下構造物3と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0118】
第6の実施の形態に係る地中構造物6は、地中に連設された複数の躯体10と、隣り合う躯体10同士の繋ぎ目を止水する止水構造20と、を具備している。
【0119】
躯体10は、断面矩形のコンクリート製のボックスカルバートである。なお、躯体10の形状寸法等は限定されるものではない。
【0120】
躯体10の軸方向端面には、図11(a)に示すように、止水構造20の溝状空間21を形成するための切欠部11が形成されている。
【0121】
切欠部11は、隣接する他の躯体10の切欠部11と組み合わせることにより、断面矩形状の溝状空間21を躯体10同士の繋ぎ目に形成する。
【0122】
切欠部11の表面(躯体10の端面)は、外枠板12により覆われている。外枠板12の材質は限定されるものではないが、本実施形態では鋼板により構成する。外枠板12は、後記する取付部13等を介して躯体10に固定されている。なお、外枠板12は必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。
【0123】
切欠部11の側面(他の躯体10に対向する面)には、可撓止水継手22を固定するためのアンカーボルト14と、非常用止水継手25を取り付ける際に使用される取付部13が形成されている。なお、本実施形態では、取付部13が形成されている場合について説明するが、図12(a)に示す地中構造物6’のように取付部13は省略してもよい。この場合に非常用止水継手25を取り付ける場合は、図12(b)に示すように、第二取付部19を介して固定すればよい。
【0124】
取付部13は、溝状空間21側に開口するように埋設されたアンカーナット13aと、溝状空間21側からアンカーナット13aに螺着(固着)されたボルト(ネジ部品)13bと、により構成されている。なお、取付部13の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0125】
また、本実施形態の躯体10は、躯体10の内空側に開口するように埋設されたアンカーナットを備える第二取付部19を備えている。
【0126】
止水構造20は、躯体10同士の繋ぎ目部分に形成されており、当該繋ぎ目からの地下水や土砂等の浸入を防止する。
【0127】
止水構造20は、躯体10同士の繋ぎ目部分に形成された溝状空間21と、溝状空間21の内部において躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手22と、溝状空間21の外側(地山側)に配設されて、躯体10同士の繋ぎ目を跨ぐように埋設された止水板23(図示省略)と、を備えている。
【0128】
溝状空間21内には、可撓止水継手22を覆い隠すように後付けされる非常用止水継手25の設置スペース24が確保されている。
各躯体10の端部の切欠部11には、設置スペース24の位置に対応して、それぞれ取付部13が配置されている。なお、設置スペース24の段数は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。また、設置スペース24同士の間隔も限定されるものではない。
【0129】
可撓止水継手22は、固定治具27,27を介して溝状空間21の底部に固定されている。固定冶具27の構成は、第3の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
固定冶具27は、躯体10に設置されたアンカーボルト14に固定されることで、可撓止水継手27を躯体10同士の繋ぎ目を塞ぐように配設する。
【0130】
可撓止水継手22の構成は、第3の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
また、止水板23の構成は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0131】
設置スペース24は、想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手22や止水板23の止水機能が損なわれた場合に、非常用止水継手25を設置する箇所である(図11(b)参照)。
【0132】
非常用止水継手25の構成は、止水構造20の止水性能を復元させるために可撓止水継手22を覆うように設置される部材であって、本実施形態では、可撓性止水材25aを備えて構成されている。
【0133】
可撓性止水材25aは、たわんだ状態で設置されることで、躯体10同士のさらなるずれが生じた場合でも、伸長することで止水性能を維持するように構成されている。
この他、可撓性止水材25aに関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0134】
また、止水構造20には、非常用止水継手25の設置スペース24が確保されているため、図11(b)に示すように、設置スペース24を利用して非常用止水継手25を設置することができる。
そのため、応力が地中構造物1に作用することで可撓止水継手22に破損が生じたとしても、非常用止水継手25による止水性が確保されている。
【0135】
さらに、可撓止水継手22に破損が生じた場合には、図11(c)に示すように、非常用止水継手25を、第二取付部19,19を利用して設置することが可能である。非常用止水継手25の内空N側に、さらに第二取付部19,19を利用して非常用止水継手25を設置することで、二重の止水構造を再度復旧することができる。
【0136】
第二取付部19への非常用止水継手25(可撓性止水材25a)の取付は、スペーサ25bを介して行う。スペーサ25bの構成は限定されるものではなく、適宜形成すればよい。
【0137】
このように、第6の実施の形態の地中構造物6によれば、想定外の地盤変形や災害等により可撓止水継手の止水機能が損なわれた場合でも、躯体10同士の繋ぎ目における止水構造20を、簡易迅速に復旧することができる。
【0138】
この他の第6の実施の形態に係る地中構造物6の作用効果は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0139】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、設置スペース(取付部)の段数は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0140】
また、前記各実施形態では、止水性能を復元させることを目的として、予め溝状空間内に設置された取付部を介して非常用止水継手25を固定するものとしたが、非常用止水継手の固定方法は限定されるものではない。
例えば、図13に示す地中構造物7のように、取付部を備えていない溝状空間21について、地中構造物3に変位が生じた場合は、図14(a)に示すように、取付鉄板25c,25cを溝状空間21内の設置スペース24に溶接した後、この取付鉄板25c,25cに跨って可撓性止水材25aを取り付けることにより、可撓止水継手22の内空側を非常用止水継手25により覆う。これにより、止水構造20の止水性能の復元が実現される。さらなる変位が生じた場合には、図14(b)に示すように、前記と同様の方法により非常用止水継手25を内空側に設置すればよい。
【0141】
また、前記各実施形態では、止水部材を溝状空間21の外側(地山G側)であって、躯体10の外周面よりも内側に配設するものとしたが、図15(a)および(b)に示す地中構造物8ように、止水部材23”を地山Gに面して配設してもよい。
【0142】
また、スペーサ25bの地山側には、図15(a)および(b)に示すように、必要に応じて充填材25cを充填してもよい。なお、充填材25cを構成する材料は限定されるものではない。
【0143】
また、溝状空間21(26)内には、必要に応じて断熱材を設置(充填)してもよい。断熱材は、可撓止水継手22または非常用止水継手25の内空N側に設置するものとし、地中構造物内の温度変化等による破損(劣化)から可撓止水継手22や非常用止水継手25を保護する。なお、断熱材を構成する材料等は限定されるものではない。
また、断熱材を設置する場合において、断熱材が溝状空間21内から落下することや抜け出すことを防止するために、溝状空間21(26)の内空N側に蓋材を設置してもよい。蓋材の構成は限定されるものではないが、例えば、鋼板等の板状の蓋材を、溝状空間21(26)の内空N側を覆うように配設し、予め躯体10の内空側に開口するように形成された第二取付部19(図11参照)等を介して固定すればよい。
【符号の説明】
【0144】
1,2,3,4,5,6,7,8 地中構造物
10 躯体
11 切欠部
13 取付部
13a アンカーナット
13b ボルト(ネジ部品)
20 止水構造
21 溝状空間
22 可撓止水継手
23 止水板(止水部材)
24 設置スペース
25 非常用止水継手
26 溝状空間
26a 幅広部
26b 幅狭部
G 地盤
N 内空


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に埋設された複数の躯体と、
隣り合う前記躯体同士の繋ぎ目を跨ぐように配置された可撓止水継手と、を具備する地中構造物であって、
前記可撓止水継手は、前記両躯体の境界部分の内空側に設けられた溝状空間内に配置されており、
前記境界部分に、前記可撓止水継手を覆い隠すように後付けされる非常用止水継手の設置スペースが確保されている、ことを特徴とする地中構造物。
【請求項2】
前記溝状空間に臨む前記各躯体の端部には、前記非常用止水継手を取り付ける際に使用される取付部が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の地中構造物。
【請求項3】
前記取付部の側面に、溝状の作業空間が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の地中構造物。
【請求項4】
前記取付部は、前記躯体に固着されたネジ部品を備えて構成されている、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の地中構造物。
【請求項5】
前記溝状空間内に、前記設置スペースが複数段確保されており、
前記溝状空間に臨む前記各躯体の端部には、前記取付部が複数段形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の地中構造物。
【請求項6】
前記溝状空間は、その開口部分に形成された幅広部と、当該幅広部よりも深い位置に形成された幅狭部とを有し、
前記幅広部および前記幅狭部のそれぞれに、前記設置スペースが確保されており、
前記幅広部に臨む前記各躯体の端部および前記幅狭部に臨む前記各躯体の端部のそれぞれに、前記取付部が形成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の地中構造物。
【請求項7】
前記溝状空間の開口幅が、前記溝状空間の底部分の幅よりも大きくなっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の地中構造物。
【請求項8】
前記可撓止水継手よりも地盤側に、前記躯体同士の繋ぎ目を止水する止水部材が配置されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の地中構造物。
【請求項9】
前記止水部材が膨縮可能なチューブ材により構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の地中構造物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−265683(P2010−265683A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118484(P2009−118484)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】