説明

地震センサ

【課題】地震による横揺れ(P波)および縦揺れ(S波)を確実に検知できる地震センサを提供する。
【解決手段】支持手段2により吊り下げられる第1の吊り棒3と、第1の吊り棒3に取り付けられた横揺れ用振子4と、横揺れ用振子4を取り囲むように、かつ、横揺れ用振子4と距離X離れて配置され、横揺れ用振子4が揺れたときに横揺れ用振子4が接触し得る第1接触子10と、第1の吊り棒3に対して上下に移動可能に設けられ、無振動時には所定の定位置にある縦揺れ用振子7と、定位置にある縦揺れ用振子7と距離H離れて第1の吊り棒に固定された第2接触子8と、第1接触子10に横揺れ用振子4が接触したことにより横揺れを検知し、第2接触子8に縦揺れ用振子7が接触したことにより縦揺れを検知する検知手段と、を含む地震センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震センサに関する。特に、この発明は、地震による横揺れ(P波)および縦揺れ(S波)を感知できる地震センサに関する。
【背景技術】
【0002】
地震を素早く検知し、建物の扉を自動的に開放して避難経路を確保することは極めて重要なことである。この種の内容に関し、先行技術として、特開平10−88933号公報には、地震センサが地震を感知すると、制御装置が施錠装置を解錠すると共に、開放装置が扉を開放するといった技術が示されている。
ところで、地震が発生すると、そのエネルギーは、波の一種である地震波となって地中から地表に伝わる。この地震波にはP波(ラテン語のprimae(primaryの語源)の頭文字をとって、P波と呼ばれている。)とS波(ラテン語のsecundae(secondaryの語源)の頭文字をとって、S波と呼ばれている。)とが含まれており、震源地からの距離によりP波とS波との到達時間が変わる。いずれにしろ、地表にいる人間や建造物は、最初に到達するP波により横揺れを感知し、次に到達するS波により縦揺れを感知する。なお、地震に関する専門文献等では、人間が感じる揺れの状態ではなく、地面を伝播する波の態様により、P波を縦波、S波を横波と説明しているものがあるが、この発明は、人間が感じる揺れ(地表において現象として現れる揺れ)に基づき地震を検知するセンサに関する技術であるから、この明細書、請求の範囲では、P波を横揺れ、S波を縦揺れとして説明をする。
【特許文献1】特開平10−88933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記先行技術に記載されているような装置では、地震センサが迅速かつ正確に地震を検知できることが前提となる。ところが、従来の地震センサは、正確かつ迅速に地震を検知できるものは、構造が極めて複雑であったり、大きさが大きいものであったり、取付操作が難しいものであったりするという課題があった。
一方、簡単な構成の、小型の地震センサは、地震を正確に検知できないという課題があった。
【0004】
この発明は、かかる背景技術のもとになされたもので、地震による横揺れ(P波)および縦揺れ(S波)を確実に検知できる地震センサを提供することを目的とする。
この発明は、また、小型で、かつ、感度調整が簡単にできる地震センサを提供することを目的とする。
さらに、この発明は、設置作業(取付作業)が容易に行える地震センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、支持手段により吊り下げられる第1の吊り棒と、上記第1の吊り棒に取り付けられた横揺れ用振子と、上記横揺れ用振子を取り囲むように、かつ、横揺れ用振子と距離X離れて配置され、横揺れ用振子が揺れたときに横揺れ用振子が接触し得る第1接触子と、上記第1の吊り棒に対して上下に移動可能に設けられ、無振動時には所定の定位置にある縦揺れ用振子と、上記定位置にある縦揺れ用振子と距離H離れて第1の吊り棒に固定された第2接触子と、上記第1接触子に横揺れ用振子が接触したことにより横揺れを検知し、上記第2接触子に縦揺れ用振子が接触したことにより縦揺れを検知する検知手段と、を含むことを特徴とする地震センサである。
【0006】
請求項2記載の発明は、上記横揺れ用振子および第1接触子は、上下方向に、両者の相対的な位置関係を変化させることにより、上記距離Xが変化することを特徴とする、請求項1記載の地震センサである。
請求項3記載の発明は、上記横揺れ用振子は、直円錐形状を有することを特徴とする、請求項2記載の地震センサである。
【0007】
請求項4記載の発明は、上記第1接触子は、内空間が直円錐台形状を有することを特徴とする、請求項2記載の地震センサである。
請求項5記載の発明は、上記縦揺れ用振子の定位置を変化させ、上記第2接触子との距離Hを調整する調整手段が備えられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の地震センサである。
【0008】
請求項6記載の発明は、上記調整手段は、第1の吊り棒を上下させることにより、上記縦揺れ用振子の定位置を調整することを特徴とする、請求項5記載の地震センサである。 請求項7記載の発明は、上記縦揺れ用振子は、第1の吊り棒の所定位置に設けられた係止体の上にコイルばねを介して載置されており、その上方に上記第2接触子が配置されていることを特徴とする、請求項1記載の地震センサである。
【0009】
請求項8記載の発明は、上記支持手段は、水平面内において、第1の吊り棒を第1の軸回りに回動させる第1支持体と、第1支持体を水平面内において第1の軸と直交する第2の軸回りに回動させる第2支持体とを有する第1ジャイロ機構を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の地震センサである。
請求項9記載の発明は、上記第1ジャイロ機構を上記第1の軸回りに回動させる第3支持体と、第3支持体を上記第2の軸回りに回動させる第4支持体とを有する第2ジャイロ機構をさらに含み、上記第3支持体から第2の吊り棒がぶら下げられていて、その第2の吊り棒に上記第1接触子が保持されていることを特徴とする、請求項8記載の地震センサである。
【0010】
請求項10記載の発明は、上記第2の吊り棒は、第1の吊り棒よりも長いことを特徴とする、請求項9記載の地震センサである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、第1の吊り棒という1本の吊り棒を利用して、地震による横揺れ(P波)および縦揺れ(S波)の両方の揺れをそれぞれ検知することができる。すなわち、地震では、まず、横揺れが起こり、それに続いて縦揺れが起こる。最初の横揺れが生じると、第1の吊り棒が支持手段を中心に横に揺れ、横揺れ用振子が第1の接触子と接触することにより、横揺れが検知される。次いで、縦揺れが生じると、縦揺れ用振子が第1の吊り棒に沿って上下にスライド移動し、第2接触子と接触する。これにより、縦揺れを検知することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、横揺れ用振子と第1接触子との距離Xを変化させられるから、横揺れに対する検知感度を調整することができる。
請求項3の発明では、横揺れ用振子が直円錐形状を有するから、横揺れ用振子と第1接触子との相対的な上下方向位置を変化させるだけで、両者の距離Xが自動的に変化する。よって横揺れに対する感度調整が簡単にできる。
【0013】
請求項4の発明では、第1接触子の内空間が直円錐台形状を有する。それゆえこの場合にも、横揺れ用振子と第1接触子との上下方向の相対的な位置関係を変化させれば、自動的に距離Xが変化するので、横揺れの検知感度調整が容易に行える。
請求項5の発明では、縦揺れに対する検知感度を調整することができる。
請求項6の発明では、第1の吊り棒を上下させることにより、縦揺れ用振子の定位置が調整できる。またその際、第1の吊り棒に取り付けられた横揺れ用振子の上下位置も調整されるから、縦揺れおよび横揺れに対する感度調整を、1つの操作で同時に行うことができる。
【0014】
請求項7の発明では、第1の吊り棒に対する縦揺れ用振子の装着を、縦揺れ用振子が良好に上下方向に移動可能に設けることができる。すなわち、縦揺れ用振子は、係止体の上にコイルばねを介して上下に移動可能に載置されている。それゆえ縦揺れが生じたとき、コイルばねに乗せられた縦揺れ用振子は、縦揺れに伴って良好に上下移動し、コイルばねにより、その上下移動が増幅される。
【0015】
請求項8の発明では、第1の吊り棒を自動的に水平に吊り下げるための支持手段を提供できる。すなわち、支持手段は、第1ジャイロ機構を含むから、第1ジャイロ機構の中央にぶら下げられた第1の吊り棒は、第1ジャイロ機構によって垂直にぶら下げられる。
請求項9の発明では、第1の吊り棒に取り付けられた横揺れ用振子と第1接触子との位置関係が常に所望の距離X離れた状態でぶら下げることのできる支持手段を提供できる。
【0016】
なぜなら、第1の吊り棒は第1ジャイロ機構により第1ジャイロ機構の中心から垂直方向にぶら下がっている。そして第1ジャイロ機構を取り囲む第2ジャイロ機構から第2の吊り棒が垂直にぶら下げられている。第1ジャイロ機構および第2ジャイロ機構の作用により、第1の吊り棒と第2の吊り棒とは、互いに平行で、常に水平方向に一定の間隔をあけ、両者とも垂直にぶら下げられている。それゆえ、第1の吊り棒に取り付けられた横揺れ用振子と第2の吊り棒に保持された接触子とは、常に距離X離れてぶら下がった状態を保つ。
【0017】
請求項10の発明では、第1の吊り棒よりも第2の吊り棒の方が長いので、地震が生じたとき、すなわち横揺れが生じたとき、両吊り棒の揺れ具合が異なる。より具体的には、第2の吊り棒が第1の吊り棒よりも長いので、第2の吊り棒が揺れる周期は、第1の吊り棒が揺れる周期よりも長くなる。それゆえ第1の吊り棒に取り付けられた横揺れ用振子と第2の吊り棒に保持された第1接触子との揺れる周期が異なる。このため、両者が常に平行に揺れて、両者が接触しないといった事態は生じない。つまり、横揺れが生じると、第1の吊り棒および第2の吊り棒は、それぞれ異なる周期で揺れるので、揺れの程度に応じて、横揺れ用振子が第1接触子と接触し、横揺れが正しくかつ迅速に検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る地震センサを示す斜視図である。地震センサ1には支持手段2と支持手段2から吊り下げられた2つの振子とが含まれている。
具体的には、支持手段2の中央から吊り下げられた第1の吊り棒3を有し、第1の吊り棒3の下端には横揺れ用振子4が取り付けられている。横揺れ用振子4は直円錐台形状をし、頂部に第1の吊り棒3の下端が固定されている。この横揺れ用振子4は導体(たとえば銅、アルミ、鉄等の金属体)で形成されている。
【0019】
横揺れ用振子4から垂直上方に延びる第1の吊り棒3には、コイルスプリング6が外嵌され、コイルスプリング6の上に縦揺れ用振子7が搭載されている。縦揺れ用振子7は第1の吊り棒3に対して上下に移動自在に設けられており、コイルスプリング6によって弾発的に受け止められ、無振動時にはコイルスプリング6によって受け止められた定位置に位置する。縦揺れ用振子7は、円環状をした導体(たとえば銅、アルミ、鉄等の金属体)である。
【0020】
第1の吊り棒3には、縦揺れ用振子7の定位置から上方に距離H離れた位置に、導体で構成された第2接触子8が備えられている。第2接触子8は、図示しない絶縁体を介して第1の吊り棒3に固定され、上下移動はしない。つまり、第1の吊り棒3に第2接触子8は電気的に絶縁状態で固定されている。
さらに、支持手段2から第2の吊り棒9が吊り下げられている。第2の吊り棒9は対をなす2本の吊り棒であり、第1の吊り棒3の両側に、第1の吊り棒3と一定間隔をあけて垂直に吊り下げられている。そして第2の吊り棒9により第1接触子10が保持されている。第1接触子10は、横揺れ用振子4を水平面内において取り囲むように配置された円環状の導体である。第1接触子10は、第2の吊り棒9から横方向に張り出した保持杆11により左右から保持され、水平方向に保たれている。そして第1接触子10の中央に横揺れ用振子4が上下方向にぶら下がっている。水平面内において横揺れ用振子4と第1接触子10との距離は、横揺れ用振子4の全周において、距離Xになっている。
【0021】
なお、第2の吊り棒9の下端は、第1の吊り棒3の下端に取り付けられた横揺れ用振子4の下端よりも下方に延びており、その下方部には振子用の重り12が備えられている。 以上のような振子構成であるから、地震発生時には、次のように動作をする。すなわち、横揺れに対しては、第1の吊り棒3の下端に取り付けられた横揺れ用振子4が第1の吊り棒3と共に左右に揺れる。このとき、第2の吊り棒9も左右に揺れるが、第1の吊り棒3は相対的に短く、第2の吊り棒9は相対的に長いので、両者の揺れ(単振動)は周期が異なる。よって第1の吊り棒3と第2の吊り棒9とが常に平行に揺れるわけではなく、横揺れ用振子4が所定量以上揺れることにより第1接触子10と接触する。接触の検知は極細リード線を横揺れ用振子4と第1接触子10とに電気的に接続しておくことにより行える。(詳しくは後述する)
縦揺れに対しては、コイルスプリング6の上に載せられた縦揺れ用振子7が第1の吊り棒3に沿って上下にスライドする。特に縦揺れ用振子7が下方へ移動してコイルスプリング6を縮めると、次に上方へ移動する際には、コイルスプリング6の弾発力が縦揺れ用振子7の上方への移動を助ける。よって、振子7は縦揺れに対してスムーズに上下動を繰り返す。そして上方向に距離H以上移動したときには、第1の吊り棒3に固定された第2接触子8と縦揺れ用振子7は接触する。接触の検知は、極細リード線を用いて行える。
【0022】
上述の構成では、横揺れ用振子4が直円台錐形状をしているから、横揺れ用振子4の上下方向の位置を調整することにより、第1接触子10との距離Xを変化させ、横揺れに対する検知感度を調整できる。
つまり、横揺れ用振子4と第1接触子10との距離Xが大きければ、横揺れ用振子4が大きく振れなければ両者は接触しない。逆に、距離Xを狭めれば、横揺れ用振子4が少し振れれば両者は接触する。よって、横揺れに対する検知感度の調整は、距離Xの調整により行える。そして、横揺れ用振子4が直円錐台形状であるから、横揺れ用振子4と第1接触子10との上下方向の相対的な位置関係を調整することにより、感度調整ができるのである。
【0023】
なお、この実施形態では、横揺れ用振子4は頂部側が第1の吊り棒3の下端に固定されているので、横揺れ用振子4の重心が低く、振れがスムーズであるという利点がある。しかし、かかる構成に限定されるものではなく、横揺れ用振子4は、図1と逆方向、すなわち底面(円形平面)5が第1の吊り棒3の下端に連結され、その頂点が下方を向いた直円錐形状としてもよい。
【0024】
さらに、縦揺れ用振子7と第2接触子8との距離Hを調整することにより、縦揺れに対する検知感度の調整が可能である。
次に、支持手段2について説明する。支持手段2は、いわゆる二重ジャイロ構造を有している。
すなわち、支持手段2には、水平面内において、内側に配置された第1ジャイロ機構21と、その外側を取り囲むように設けられた第2ジャイロ機構22とが含まれている。そして第2ジャイロ機構22の外側には固定フレーム23が備えられている。
【0025】
第1ジャイロ機構21は、中央に位置し、第1の吊り棒3の上端が固定された第1支持体24と、第1支持体24を水平面内において取り囲んでいる第2支持枠25とを含んでいる。そして第1支持体24には、水平方向両側へ張り出した第1軸26aが設けられていて、第1軸26aを介して第2支持枠25に連結されている。そして第2支持枠25に対し、第1軸26a回りに回動自在にされる。
【0026】
第2支持枠25は、第1軸26aと直交する第2軸27aが水平方向両側へ張り出していて、第2軸27aを介して第2ジャイロ機構22の第3支持枠28に回動自在に連結されている。それゆえ第3支持枠28から観察すると、第1の吊り棒3は、第1軸26aおよび第2軸27aにより互いに直交する方向へ回動自在でり、常に垂直に吊り下げられた状態が保たれている。
【0027】
第3支持枠28には、第1軸26aの延長線上に位置する第1軸26bにより回動自在に保持され、その周囲を取り囲む第4支持枠29と連結されている。さらに、第4支持枠29は、第2軸27aの延長線上に位置する第2軸27bにより回動自在に保持されて固定フレーム23と連結されている。そして第3支持枠28には第2の吊り棒9が取り付けられている。
【0028】
このように、第1の吊り棒3は第1ジャイロ機構21により支持されており、第2の吊り棒9は第2ジャイロ機構22により支持されており、第1ジャイロ機構21および第2ジャイロ機構22が固定フレーム23内で回動自在に備えられた二重ジャイロ構造となっている。従って、固定フレーム23が厳密に水平方向ではなく、多少傾いた取り付け状態であっても、第1ジャイロ機構21および第2ジャイロ機構22により、第1の吊り棒3および第2の吊り棒9は、常時垂直に、かつ両者が一定の距離をあけて平行に吊り下げられた状態が保たれる。
【0029】
それゆえ、この地震センサ1を取り付ける際に、固定フレーム23は厳密に水平に取り付ける必要がなく、水準器等の器具を用いないで、容易に地震センサを配置できるという優れた利点がある。
図2は、この発明の別の実施形態に係る地震センサ30の構成を説明するための縦断面図であり、図3はその平面図である。
【0030】
図2、図3を参照して説明すると、地震センサ30は側面形状がコ字状のフレーム31を有する。そしてフレーム31の上板32に支持手段2が組み込まれ、支持手段2から第1の吊り棒3および第2の吊り棒9a,9bが吊り下げられているという基本構成をしている。これら基本構成は、先に説明した実施形態とほぼ共通している。この地震センサ30の特徴の1つは、縦揺れおよび横揺れの感度調整のための機構が組み込まれていることである。
【0031】
以下、地震センサ30の構成について、具体的に説明する。
フレーム31の上板32は、平面視で長方形状をし、その中央部には、隅が丸められた正方形の大きな窓33が開けられている。そしてこの窓33内に二重ジャイロ機構の支持手段2が組み込まれている。
支持手段2は、中央に位置する下方に延びた円筒状の第1支持体24、ならびに、平面視において第1支持体24を取り囲むように同心に配置され、順にその径が大きくされている第2支持枠25、第3支持枠28および第4支持枠29を有する。そして第1支持体24の両側には一対の第1軸26aが突出しており、第2支持枠25と回動自在に係合している。第2支持枠25には両側外方に、かつ第1軸26aと直交方向に一対の第2軸27aが突出しており、第3支持枠28と回動自在に係合している。第3支持枠28には両側外方へ一対の第1軸26bが突出している。第1軸26bは平面視において第1軸26aと同一軸線上に存在する。そして第1軸26bは第4支持枠29と回動自在に係合している。さらに、第4支持枠29には外方へ一対の第2軸27bが突出しており、第2軸27bは平面視で第2軸27aと同一線上に位置する。そして上板32と回動自在に係合している。
【0032】
従って、第1支持体24および第2支持枠25によって第1ジャイロ機構が、第3支持枠28および第4支持枠29によって第2ジャイロ機構が構成され、二重ジャイロ構造となっている。
そして、第1支持体24に第1の吊り棒3が取り付けられ、第3支持枠28に第2の吊り棒9a,9bが取り付けられている。
【0033】
ところで上述のような二重ジャイロ機構を採用すると、第1支持体24、第2支持枠25、第3支持枠28および第4支持枠29を支える第1軸26a,26bおよび第2軸27a,27bが全て水平で同じ高さで、直交する軸上に存在しなければならない。仮に、内側の軸(26a,26b)が外側の軸(26b,27b)よりも水平方向に高い位置にあれば、内側のジャイロ機構はバランスを崩してしまう。そこでこの実施形態では、水平方向に見て、わずかではあるが、内側の軸が外側の軸よりも内側にいくほど低くなる構成にしている。すなわち、第1軸26a、第2軸27a、第1軸26b、第2軸27bの順に、水平方向にわずかにその位置が高くなっていくように、いわゆるオフセットが付けられている。これにより、第1支持体24に吊り下げられた第1の吊り棒3および第3支持枠28に吊り下げられた第2の吊り棒9a,9bをより安定して吊り下げられるという利点がある。
【0034】
図4は、図2に示される構成のうち、第1支持体24と第1吊り棒3とに関する部分を抜き出した図である。この図4を参照して、第1の吊り棒3に関する構成について説明する。
第1の吊り棒3は、鉄等の金属材料で形成され、その下端部3a、中央部3bおよび上端部3cはねじが切られたねじ軸である。第1支持体24は円筒状をし、上下に貫通する孔35を有する。その孔35内に第1の吊り棒3が挿通されている。孔35の上部はねじ孔36であり、第1の吊り棒3の中央のねじ軸3bが螺合している。第1の吊り棒3の上方のねじ軸3cには調整つまみ3が取り付けられ、下方のねじ軸3aには直円錐台形状の横揺れ用振子4が取り付けられている。
【0035】
さらに、横揺れ用振子4の上方には、第1の吊り棒3に外嵌するようにコイルスプリング6が嵌められ、その上方には縦揺れ用振子7が係合されている。縦揺れ用振子7は円筒状の金属体で、第1の吊り棒3に沿って上下方向に移動自在である。この縦揺れ用振子7は、非振動時には、コイルスプリング6で受け止められ、第1の吊り棒3に対して高さ方向に所定の定位置に存在する。
【0036】
調整つまみ38と第1支持体24との間には、第1の吊り棒3に外嵌するようにコイルスプリング43が嵌められている。調整つまみ38を回転させると、第1支持体24と第1の吊り棒3のねじ軸3bとの螺合位置が変化し、第1支持体24に対して第1の吊り棒3は上下に変位する。従って、横揺れ用振子4の上下方向位置および縦揺れ用振子7の上下方向位置を調整つまみ38を回転させることによって同時に調整することができる。
【0037】
第1支持体24の下端部外周には、ひとまわり細くなった段差部39が形成されている。そして段差部39には、図示しない絶縁シートを挟んでリング状の第2接触子8が嵌合されている。つまり第1支持体24は金属材料で構成されており、第2接触子8も金属材料で構成されているが、両者は電気的に絶縁された状態で固定されている。そして第2接触子8の下端と縦揺れ用振子7の上端との間隔は距離Hとなっている。
【0038】
そして、リード線41の一端が第1支持体24のたとえば上端面に接続され、その他端は電極端子Aに接続されている。また、第2接触子8にはリード線42の一端が接続され、その他端は電極端子Bに接続されている。従って、電極端子Aからリード線41を介して電圧を印加すると、電圧は第1支持体24、第1の吊り棒3、縦揺れ用振子7および横揺れ用振子4という電気的につながった各部材に与えられる。一方、リード線42を介して第2接触子8は端子Bと同電位に保たれる。
【0039】
かかるリード線の接続構造を採用すると、次のようなメリットがある。すなわち、横揺れ用振子4および縦揺れ用振子7の上下位置を調整するために、調整つまみ38を回転させると、第1の吊り棒3、縦揺れ用振子7および横揺れ用振子4が回転する。(縦揺れ用振子7は第1の吊り棒3に上下方向にスライド自在に係合しているが、第1の吊り棒3が回転すれば、外力が働いていない限り一緒に回転する。)このため、縦揺れ用振子7や横揺れ用振子4に電圧を印加しようと、縦揺れ用振子7や横揺れ用振子4に直接リード線を接続した場合、感度調整のために調整つまみ38を回転すると、リード線が縦揺れ用振子7や横揺れ用振子4のまわりに巻きついたり、第1の吊り棒3に巻きついたりする可能性がある。
【0040】
これに対し、上述のように、第1支持体24および第2接触子8という、固定配置されていて、調整つまみ38を回しても回転しない部材にリード線41,42を接続すれば、感度調整時にリード線41,42が絡まないという利点がある。
図2,図3を再び参照して、第2の吊り棒9a,9bに関連する構成について説明をする。
【0041】
第2の吊り棒9a,9bは、横揺れ用振子4の周囲に水平方向の距離X隔てて第1接触子10を配置するために必要な構成である。第1接触子10は図に現れていないが、平面視が円形の金属製の環状体である。第1接触子10は、両端外方に保持杆11a,11bが備えられ、保持杆11a,11bによってそれぞれ第2の吊り棒9a,9bに連結されている。
【0042】
第2の吊り棒9a,9bの両端は、前述したように、第3支持枠28に取り付けられている。その取り付け位置は、図3に示すように、平面視で、第1軸26bと第2軸27bとの中間の角度位置に取り付けられている。かかる位置に取り付けることにより、ジャイロ機構によって第2の吊り棒9a,9bが良好に垂直下方に吊り下げられる。
具体的には、第2の吊り棒9aの上端は第3支持枠28に嵌められ、ナット44により固定されている。この第2の吊り棒9の下方部は垂直方向から水平方向に90度湾曲されていて、水平方向部分51に重り12が取り付けられている。重り12の位置は第2の吊り棒9aと9bとの真ん中、すなわち第1の吊り棒3の下方にされている。こうすると、一対の第2の吊り棒9a,9bが同期して一体的に振れる。
【0043】
第2の吊り棒9bの上部はねじ軸45になっていて、ねじ軸45の上端には調整つまみ46が固定されている。ねじ軸45は第3支持枠28に形成されたねじ孔に螺合されている。それゆえ調整つまみ46を回転させることにより、ねじ軸45と第3支持枠28との螺合位置が変わり、第2の吊り棒9bは上下移動する。第2の吊り棒9bの下端には止めナット47が嵌められている。そして、保持杆11bは止めナット47で受け取められるように、第2の吊り棒9bに回動自在に嵌められている。また、第2の吊り棒9bに外嵌されたコイルスプリング48により上方から弾力的に押し下げられている。一方、保持杆11aは、第2の吊り棒9aに摺動自在に嵌められている。よって調整つまみ46を回転させると、第2の吊り棒9bが上下に動き、それに伴って保持杆11a,11bで保持された第1接触子10が上下に変位する。振動が生じたとき(横揺れが生じたとき)は、第2の吊り棒9a,9bは揺れるが、第2の吊り棒9bが上下方向に位置調整されても、第2の吊り棒9aの長さは常に一定であるから、一対の第2の吊り棒9a,9bは一定の周期で一体的に揺れる。
【0044】
また、縦揺れが生じたとき、第1接触子10および保持杆11a,11bは、第2の吊り棒9a,9bに沿って上下に移動しようとするが、保持杆11bがコイルスプリング48により押し下げられているため、縦揺れが生じても第1接触子10および保持杆11a,11bは上下に移動することはない。
さらに、調整つまみ46を回し、第2の吊り棒9bを上下に変位させる際、保持杆11bと第2の吊り棒9bとは回動自在に嵌合しているから、第2の吊り棒9bの回転に伴い保持杆11bおよび第1接触子10が回転することはない。
【0045】
そして、回転することのない第1接触子10には、リード線49の一端が接続され、リード線49の他端は電極端子Cに接続されている。リード線49は、回転しない第1接触子10に接続されているから、感度調整時等に部材に絡まる等の心配はない。
なお、保持杆11b、第2の吊り棒9b、コイルスプリング48、第4支持枠29などを導体で構成し、第1接触子10に接続するリード線49を、第2の吊り棒9bの上端に、ワッシャなどを介して接続してもよい。
【0046】
この実施形態に係る地震センサ30では、調整つまみ38を回転させることにより、横揺れ用振子4および縦揺れ用振子7を同時に上下移動させることができる。従って、調整つまみ38は、横揺れ(P波)および縦揺れ(S波)に対する感度調整を同時に行うための調整つまみとなっている。さらに、調整つまみ46は、調整つまみ38により調整した感度のうち横揺れ(P波)の感度補正を行うためのつまみとなっている。
【0047】
図5は、上述した実施形態における電気的な信号の流れを説明するための図解図である。たとえば端子Aに対し電源電圧(たとえば3V)を印加する。すると、電源電圧はリード線41を通って第1支持体24へ与えられ、第1支持体24と電気的につながっている第1の吊り棒3により縦揺れ用振子7および横揺れ用振子4に電源電圧が与えられる。
そして横揺れが生じ、横揺れ用振子4が揺れて第1接触子10と接触すると、リード線49を介して端子Cに接触に伴うパルス電流が流れる。
【0048】
また、縦揺れにより縦揺れ用振子7が上下に揺れて第2接触子8と接触すると、リード線42を通って端子Bに接触に伴うパルス電流が流れる。それゆえ端子C,Bに流れるパルス電流を検知することによって、横揺れの発生および縦揺れの発生を、電気的に検知することができる。
そしてこの検知信号は、地震発生の警報、地震発生時の逃げ道を確保するためのドアの開閉制御、ガス器具、石油器具その他の火を用いる装置の動作停止制御、その他の制御信号として有効活用が可能である。
【0049】
なお、検知信号を利用するに当たり、必要があれば、検知されたパルス信号のチャタリング防止や自己保持等の信号処理が行われてもよい。
図6は、この発明のさらに他の実施形態に係る地震センサ60の構成を説明するための斜視図である。この地震センサ60の特徴は、フレーム61に単一のジャイロ機構(二重ジャイロ機構ではない)からなる支持手段2が備えられ、該支持手段2によって第1の吊り棒3が吊り下げられている。第1の吊り棒3にはその下端部にコイルスプリング62が外嵌され、コイルスプリング62の上に、第1の吊り棒3に対して上下方向にスライド自在に嵌合された円筒状の横揺れ兼縦揺れ振子63が備えられている。そしてこの振子63の上端と距離H離れた上方位置に、第2接触子8が設けられている。第2接触子8は支持手段2の中心に取り付けられ、上下に長手の筒状をした第1支持体24の下端に固定されている。そして第1の吊り棒3は第1支持体24内を上下に貫通するように嵌められており、その内方で一部がねじ係合している。
【0050】
第1の吊り棒3の上端には調整つまみ64が取り付けられている。調整つまみ64を回転させることにより、支持手段2に取り付けられた第1支持体24に対して第1の吊り棒3を上下に変位させることができるから、第2接触子8と振子63との距離Hを調整することができる。
さらに、フレーム61には、フレーム61に沿って上下にスライド移動可能に第1接触子10が備えられている。すなわち、フレーム61にねじ係合され、上下に延びるねじ軸65が備えられていて、ねじ軸65の上端には調整つまみ66が取り付けられている。ねじ軸65の下方部には、保持杆67がねじ係合されている。保持杆67は横方向に長手で、その先端には第1接触子10が固定されている。それゆえ調整つまみ66を回転させることにより、ねじ軸65と保持杆67との係合位置が変化し、保持杆67が上下に移動して、第1接触子10の上下方向位置を調整できる。
【0051】
第1接触子10は、金属材料で構成されており、逆直円錐台形状の内空間を備え、その内空間内に第1の吊り棒3およびその吊り棒3に嵌合された横揺れ兼縦揺れ用振子63が挿通されている。第1接触子10はその内空間が略直円錐台形状をしているから、振子63と第1接触子10との相対的な上下方向位置関係を調整することにより、振子63とそれを取り囲む第1接触子10の内周面との距離Xを調整することができる。
【0052】
つまりこの実施形態では、調整つまみ64を回して振子63を上下に変位させることにより、横揺れおよび縦揺れの感度調整が同時に行える。また、調整つまみ66を回転させることにより、第1接触子10を上下に移動させ、横揺れに対する感度を調整(補正)できる。
この地震センサ60は、支持手段2が単一のジャイロ機構であるから、構成を簡易化できる。しかも、第1接触子10はフレーム61に対して上下に位置が変位するだけであるから、地震センサ60を取り付ける場合、フレーム61の取り付け方向を調整し、第1の吊り棒3が第1接触子10の内空間の真ん中にぶら下がるように取り付ければ、正しい取り付けが可能である。よって、この地震センサ60も、取り付けの際に、水準器等を用いる必要がなく取り付けが行える。
【0053】
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の一実施形態に係る地震センサの構成を説明するための斜視図である。
【図2】この発明の別の実施形態に係る地震センサの構成を説明するための側面図で、一部の構成は断面で示されている。
【図3】この発明の別の実施形態に係る地震センサを説明するための平面図で、一部構成が省略された図である。
【図4】この発明の別の実施形態に係る地震センサに備えられた第1の吊り棒を中心とする構成を説明するための図である。
【図5】この発明の別の実施形態に係る地震センサの電気的な信号の流れまたは接続状態を説明するための図解図である。
【図6】この発明のさらに別の実施形態に係る地震センサの構成を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1、30、60 地震センサ
2 支持手段
3 第1の吊り棒
4 横揺れ用振子
7 縦揺れ用振子
8 第2接触子
9、9a、9b 第2の吊り棒
10 第1接触子
11、11a、11b、67 保持杆
12 重り
21 第1ジャイロ機構
22 第2ジャイロ機構
23 固定フレーム
24 第1支持体
25 第2支持枠
26a、21b 第1軸
27a、27b 第2軸
28 第3支持枠
29 第4支持枠
31 フレーム
38、46、64、66 調整つまみ
41、42、49 リード線
63 横揺れ兼縦揺れ振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持手段により吊り下げられる第1の吊り棒と、
上記第1の吊り棒に取り付けられた横揺れ用振子と、
上記横揺れ用振子を取り囲むように、かつ、横揺れ用振子と距離X離れて配置され、横揺れ用振子が揺れたときに横揺れ用振子が接触し得る第1接触子と、
上記第1の吊り棒に対して上下に移動可能に設けられ、無振動時には所定の定位置にある縦揺れ用振子と、
上記定位置にある縦揺れ用振子と距離H離れて第1の吊り棒に固定された第2接触子と、
上記第1接触子に横揺れ用振子が接触したことにより横揺れを検知し、上記第2接触子に縦揺れ用振子が接触したことにより縦揺れを検知する検知手段と、
を含むことを特徴とする地震センサ。
【請求項2】
上記横揺れ用振子および第1接触子は、上下方向に、両者の相対的な位置関係を変化させることにより、上記距離Xが変化することを特徴とする、請求項1記載の地震センサ。
【請求項3】
上記横揺れ用振子は、直円錐形状を有することを特徴とする、請求項2記載の地震センサ。
【請求項4】
上記第1接触子は、内空間が直円錐台形状を有することを特徴とする、請求項2記載の地震センサ。
【請求項5】
上記縦揺れ用振子の定位置を変化させ、上記第2接触子との距離Hを調整する調整手段が備えられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の地震センサ。
【請求項6】
上記調整手段は、第1の吊り棒を上下させることにより、上記縦揺れ用振子の定位置を調整することを特徴とする、請求項5記載の地震センサ。
【請求項7】
上記縦揺れ用振子は、第1の吊り棒の所定位置に設けられた係止体の上にコイルばねを介して載置されており、その上方に上記第2接触子が配置されていることを特徴とする、請求項1記載の地震センサ。
【請求項8】
上記支持手段は、
水平面内において、第1の吊り棒を第1の軸回りに回動させる第1支持体と、
第1支持体を水平面内において第1の軸と直交する第2の軸回りに回動させる第2支持体とを有する第1ジャイロ機構を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の地震センサ。
【請求項9】
上記第1ジャイロ機構を上記第1の軸回りに回動させる第3支持体と、
第3支持体を上記第2の軸回りに回動させる第4支持体とを有する第2ジャイロ機構をさらに含み、
上記第3支持体から第2の吊り棒がぶら下げられていて、その第2の吊り棒に上記第1接触子が保持されていることを特徴とする、請求項8記載の地震センサ。
【請求項10】
上記第2の吊り棒は、第1の吊り棒よりも長いことを特徴とする、請求項9記載の地震センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−3231(P2006−3231A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180241(P2004−180241)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(593209301)家研販売株式会社 (30)
【Fターム(参考)】